「中毒性はない、か」
今、俺の部屋に雪音さんがいた。理由は以前言われた事についての答えが出たから教えようと思ってだ。勿論了子からの許可も得ている。ま、俺の予想が当たった訳なんだけど、約束した以上は話しておこうと思ったんだ。
「うん、雪音さん以外にも同じ状態になってないかと奏や翼にも聞いたけど、二人も別に絶対毎日飲みたい訳じゃないって」
「じゃ、あたしのこれは?」
「了子さん曰く、雪音さんがドリンクを飲んだ状況が原因じゃないかって。例えるなら、砂漠で喉が渇いて死にそうな時に飲み物をもらって、しかもそれが美味しかった。その状況と味の相乗効果で今も体が似た状態になると欲しがってるんだよ」
「……じゃ、ギアを纏って激しく戦ったら」
「きっと今以上に欲しくなるんじゃないかな。ま、断言は出来ないけどね」
俺の言葉で雪音さんは複雑な顔を浮かべていた。そりゃそうだ。あの一口を摂取した日から、雪音さんはそれとなく俺との接触を増やしてる。本人が意識してかは知らないけれど、結構会話したりする事が増えた。後、よく匂いを嗅いでいる。それに気付いてからは、俺もあえて奏や翼との事後に消臭せず部屋へ入れたり、またはこっそりチンポを扱いて匂いをさせるようにしたりしているけど。
「でも、今は雪音さんよりも立花さんの方が心配だよ」
「あ? 何でだ?」
「……これ、二人だけの秘密にしてよ?」
そう言うと雪音さんは少しだけ顔を赤めて頷いた。俺の声のトーンから内容を察したのだろう。本当に勘の良い子だな。まぁ、内容はこうだ。あの一口の一件以来、立花さんは時間を見つけては俺へまた一口だけとお願いしてくるようになっていた。勿論あの時以降はちゃんと断っている。いるのだが、それでも立花さんはある意味賢いようで俺が押しに弱い事を見抜き、涙目+上目遣いのコンボで懇願してくるのだ。もし雪音さんや奏達がいれば確実に失敗するようなそんな攻撃も、俺一人ではやはり防ぎ切れずに許してしまう事既に五回以上。
「……それで舐める度に分かり易く強くなってるんだってね」
「このところのバカがやけに好調なのはそのせいか。どうりで両翼が渋い顔をしてた訳だぜ」
「うん、まだ確信は持ってないけど時間の問題だろうね。立花さんには感謝されっぱなしでさ」
「あー、まぁそうだろうな。あたしが見る限り、あのバカは両翼が片方ずつで相手にしても勝った事なさそうだし」
その通り。立花さんは今まで一度も模擬戦で奏や翼に勝てた試しがないのだ。本人も負けて当然と頭では分かっているが、どこかで悔しいとも感じていたはずだ。せめて一度ぐらい。その気持ちもあって余計生命のスープに手を出してしまったのだろう。ある意味で負けん気が強くなければ、この前の戦いで先史の巫女相手に戦い続けたり出来ないし。
「だから、どうしようかと思ってて。こういうのってさ、一度許すと歯止めかけにくくなっちゃうんだよね。それに、最近は一口じゃなくて全部飲みたいって言い出してて」
「…………ならあたしが同席してやるよ」
雪音さんが告げた言葉に俺は一瞬思考が止まる。えっと、つまりどういう事だ? 俺だけだと止められないから雪音さんが立花さんを止めてくれるって事かな。でも、そのためにわざわざ時間を割いてもらうのも悪い気がする。そんな事を考えていると、雪音さんが小さく息を吐いたかと思うなり顔を俺から背けて告げた。
「両翼じゃ、あのバカを止めたとしても同じ事してるのにズルいとか言われかねないし、あの女はやる事が多すぎて時間がとれねー。その点、あたしは基本あのバカと同じようなもんだ。だから説得出来る上に融通も利く」
「そうだけど……本当にいいの?」
「ああ、構わねえ。その、お前にはいらねー心配をかけちまったし」
「それこそ構わないのに。でも助かるよ。じゃ、今度からは雪音さんと一緒に来るようにって伝えておく。雪音さんからもそう言っておいて」
「おう」
こうして立花さん対策は終わった。でも、これこそが始まりだったのだ。この日から立花さんは本当に一人で部屋を訪れなくなる。ただし、来なくなった訳ではない。そう、本当に雪音さんを連れて現れたのだ。
「クリスちゃん、一緒に舐めさせてもらおうよ!」
「バカっ! あれはあん時だけって約束だったろ!」
こんなやり取りから始まり……。
「翼さんに聞いたら、装者たるもの常に駐在参上の気持ちでいなければいけないって」
「それを言うなら常在戦場だろ。何だよ、駐在参上って。自己顕示欲のつえーおまわりさんだな」
「あっ、駐在っておまわりさんの事なんだ」
「はぁっ?! お前、そんな事も知らねえのかよ!」
こんな漫才もやりつつ……。
「とにかく、私達もいつもノイズに備えるべきだと思うんだ」
「うっ……いや、それはそうだけどよ」
「クリスちゃん、生命のスープに問題はなかったんだよね? じゃ、どうして飲むのダメなの?」
「そ、それは……あの女や両翼がダメって言ってんだろ。じゃ、そっちに聞けよ」
こんな流れになり……。
「聞いたよ。でも、理解出来ても納得出来ないんだ。だってね? 今の私が生命のスープに頼るようになったら成長出来なくなる。その効力に頼り切ってダメになるからって」
「……間違ってはねえだろ」
「じゃあじゃあ、クリスちゃんはどうしてダメなんだろ? 私より十分強いのにさ」
こんな疑問を提起されて話題をすり替えられ……。
「…………そういえばそうだよな」
「ねっ!」
こうなってしまいました。止めてくれるはずの存在は、むしろ言いくるめられてしまい、一人部屋の隅でうんうん唸っている。で、立花さんと言えばキラキラした目で俺を見つめていた。ある意味では立花さんは雪音さんの扱い方を知っているのだろう。でなければ、ここまで見事に雪音さんが自分は何故飲む事がダメなのかと悩まないはずだ。でも気付いて雪音さん。奏達は立花さんに飲むなって言ったけど、君にはそんな事言ってないよ。ま、聞いたら言うだろうけど。
「シーキさんっ」
「ダメ。本当にダメ。奏や翼に気付かれたら俺はともかく立花さんが……」
「いいんです。それに、私は別に強くなりたいんじゃない。いざって時にみんなを守れるようになりたいんです。だから、一度だけでも翼さんや奏さんに勝っておきたかった。私も二人を助けられるんだって、守られるだけじゃないんだって、そう思って欲しかったから」
立花さんの言葉は俺が予想していた事をある意味で否定していた。彼女は勝ちたかった。でも、その理由は負けん気ではなく二人へのメッセージだったのだ。後輩で素人だった立花さん。それを大事に守ろうとしている奏と翼。その二人に感謝しつつ、自分だってその背を守る事が出来るのだと知って欲しかった。いや、守れるようになりたかったのだろう。例えそれが生命のスープという手段を使ったブースト効果であろうとも。
「立花さん……」
「たしかに今の私は、シキさんのスープ飲まないと奏さんや翼さんどころかクリスちゃんにだって中々勝てません。でも、私は誰にも生きるのを諦めて欲しくない。そのためならダメになってもいいから、私はスープを飲みます。みんなの未来を、笑顔を守りたいから」
優しい笑みを浮かべる立花さん。でも、俺はそこで気付いた。これって良い事言って飲みたいだけじゃないだろうかと。だけど、きっと今のも本心ではあるんだと思う。……しょうがないか。俺が二人に怒られればいいだけの事だし。いつか真実を知られて嫌われるかもしれないが、それでも彼女達の命には代えられないから。
「分かった。じゃ、条件がある」
「条件?」
「一日一回。それも飲みに来ていいのは訓練前だけ」
「わっかりました! シキさん、ありがとうございますっ!」
「いや、いいんだ。考えてみれば、立花さん達が頑張ってくれたから俺もこうして生きてるんだしさ」
奏や了子の話だと、完全聖遺物二つを相手に勝てたのは、立花さんがフォニックゲインを束ねる事が出来たかららしい。それは同じギアの奏でも出来ない事。そう考えると、立花さんがギアの能力をもっと引き出して制御出来ればみんなの安全に繋がる可能性は高い。さっきの立花さんじゃないけど、俺も怒られ嫌われてもいいからみんなの命を守りたいのだ。
「じゃ、明日から訓練前においで」
「はいっ!」
こうして立花さんは足取りも軽く部屋を出て行った。さて、じゃあ俺はシャワーでも浴びるか。実は二人が来る前、いつものようにツヴァイウイングを相手にしたので汗を流したいのだ。なので俺は未だ悩む雪音さんを放置し、替えのシャツなどを手に一人シャワールームへ向かう。
「あー、生き返るなぁ」
熱めのお湯が体を流れるだけでさっぱりしていく感覚がする。でも、出来れば風呂に入りたいな。銭湯に行きたい。だが、そのためだけに護衛の人達を働かせるのも、なぁ。にしても今日は疲れた。立花さんの事もあってか、昨夜も奏や翼が絞りつくしてやるとばかりに誘惑してきたのだ。……おそらく最高記録は更新した。そのおかげで今日はすごく眠い。ドリンク用の採取と訓練後の襲撃さえなければなぁ。シャワーを浴びたまま寝そうだし、さっさと上がって寝てしまおう。晩飯は……いいや、面倒だ。そうしてシャワーから出て体を拭き着替えてベッドへ向かう。もう眠気が限界だ。そのままベッドへダイブ。するとすぐさま瞼が閉じる。何かいい匂いがするけど二人の残り香だろうと思い、気にせず意識を手放した。どこか遠くで戸惑い困るような声が聞こえた気がした……。
「どーすんだよ、この野郎め」
あたしは目の前で眠りこける奴を見つめ、呆れるしかなかった。何も動けない訳じゃねえ。でも、ある意味じゃそうとも言える。何せこのままだとこいつはドアロックもせず眠る事になるからだ。男だから構わないかもしれねーが、一応こいつは要人と言ってもおかしくねぇ。
「……しかもあのバカはいなくなってやがるし」
気付けばあたしとこいつだけが部屋に残されていた。どうもあたしが頭を悩ませている間にあのバカの事は片付いちまったようだ。ま、きっとこいつが折れる形で片付いたんだろうがよ。と、そこであたしは息を吐いた。この状況で一番手っ取り早くて確実なのはこいつを起こす事だ。でも、それは出来ればしたくない。
「よく見りゃクマできてやがる。……そこまで大変なんだな、生命のスープの生成ってやつは」
それを毎日最低でも二杯はやらなきゃならねー。両翼の分だ。しかもそこから他国への提供分や下手すりゃフィーネの研究分とかも用意しなきゃいけないらしい。こう考えるとこいつも大変なんだな。あたしらは毎日ノイズが出る訳でもねーし、装者が四人いれば全員で動く必要もよっぽどじゃないとねー。でも、こいつは一人きりだ。自分しか作れないし、他の奴に作られちゃいけないもんを用意してる。
「……そういう意味じゃ、あんたはあたしよりも孤独だよな」
あたしは同じ装者の連中がいる。境遇だって探せばいるだろう。でも、こいつはいない。同じ能力を持つ奴も、それを教えていい奴も。そもそもあのフィーネでさえ真似出来ない時点でとんでもねえもんだ。ある意味で生きる聖遺物かもな。だからこそ、余計こいつは孤独なんだ。それをあたしらや自分へ感じさせてないだけで。
「なら、感じないままでいられるようにしてやるしかねえよな」
あたしがあったかい場所へ辿り着けた一因は、こいつの生命のスープで作られたドリンクだ。なら、その恩返しじゃねえけどある程度は寂しくないようにしてやるか。そう思ってあたしは小さく息を吐いた。
「さて、どうすっかな」
この分だとこいつはこのまま朝までぐっすりだ。起こすのはナシ。となるとここに一泊するしかねえ。とはいえ、あたしは着替えとかねえしなぁ。と、そこである馬鹿な解決法を思い付いた。こいつの服を借りずとも済むが、もし仮に誰かに見られたら恥ずかしくて死にたくなるようなもんだけど。
「……背に腹は代えられない、よな」
とりあえずドアロックをしシャワーを浴びに行く。服を脱ぎ、下着だけ洗濯しておく。さて、これであとは乾くまで何とかアレで過ごすだけだ。そう考えながらあたしはシャワーを浴びた。と、そこでふと目につくもんがあった。それはあの日、生命のスープが注がれていたコップ。無意識で手に取り、中の匂いを嗅いだ。
「……すげぇいい匂いだ。洗っても残るもんなんだな」
そのままシャワーを浴びながらコップの匂いを嗅ぐ。気が付くと中にお湯が入って少しだけ色がついた。どうやら今日もこれを使ったらしい。そこであたしの中に悪魔が生まれた。
―――飲んじゃえよ。これもスープみたいなもんだ。
思わず首を横に振る。バカな事言ってんじゃねぇ! そう思ってコップを逆さにして中身を捨てようとした。でも、何故か手が止まる。
―――いいじゃねえか。護衛代みたいなもんだよ。それに、あいつのせいで飯抜きになったんだ。ならこれぐらいもらって当然だろ。
悪魔の声がやけに頭に響きやがる。でも、あたしにそれを振り払う力はもうなかった。だってよ、こんないい匂いがすんだ。それにきっと薄いだろうがウマいはず。
「……そう、だよな。晩飯抜きなんだ。水分ぐらい取っておかねえとな」
そう呟いた次の瞬間には、あたしはコップの中身を飲み干していた。口の中に広がるあの味。でも、この前の方が当然だけど味が濃いし、もっとあったかいって感じた。もっと、もっと欲しい。気付くとあたしはコップへお湯を入れて飲み干した。でも、もう味もしないし匂いさえ薄くなっちまった。
「違う。あたしが好きなのは、欲しいのはこんなんじゃねえ」
シャワーを止め、あたしは頭をバスタオルで拭きながら、体の奥底から熱みたいなもんが生まれてくる感覚を覚えていた。まるであたしの中で獣が叫んでるみてえな感じを。その獣に導かれるようにあたしはその場でギアを纏う。とはいえ、物騒な感じじゃなく体を覆う部分だけ纏った感じだ。思いつきでやってみたけど、案外上手くいくもんだぜ。でも、よく見りゃ露出が普段よりも多い気もする。大事な部分は隠されているが、そこ以外は結構露わになってるな。
「まぁ、いい。これで寝れる」
これなら洗濯しなくて済むな。そんな馬鹿な事を考えながらあたしは洗濯機を見た。まだ当然だけど洗い終わってない。仕方ねえから終わるまで待つか。そう思ってベッドに向かった。あいつは死んだように眠ってる。と、そこであたしの鼻へあの匂いがしてきた。
「どういうこった……?」
何度も鼻を動かし匂いの元を探る。するとこいつの体から漂ってくるのが分かった。で、一体どこだと思いながら更に匂いを辿ると、その、何だ……とんでもねえ場所から強い匂いがしてきた。と、そこであたしは一つの恐ろしい仮説を思い付いた。生命のスープは白濁液でこいつにしか作れない。あのフィーネさえ真似出来ず、生成する様子や材料は見せられずにシャワールームで行う。そして、その匂いが強くするのが股間近く。
「……まさか、生命のスープってのはこいつの」
そう考えた瞬間、あたしの中で天使が囁く。
―――確かめてみないとわかんねーだろ? もし違ってたらどうする?
確かめる? 何を? こいつのどこに何をして? 色んな事が頭の中を駆け巡る。でも、そこであたしは思い出した。あの日、生命のスープを見せてくれって言った時の事を。こいつはあたしらを一応遠ざけようとしてた。それはあたしらの事を心配してだけじゃねえ。生命のスープの正体を知って嫌われるのを怖がってたんだ。だから両翼もフィーネもあのバカへ出来る限り飲むなって言ってたんだ。全てはこいつの心へ傷を付けないために。
「そっか。お前があの時見せてくれたり触らせてくれたりしたのも、飲むのを止めたり舐める事を嫌がってたのも、あたしらにそれとなく気付いてくれって合図だったんだな」
不器用な優しさだ。そう思うも人の事は言えねえかと思い直して苦笑する。んだよ。似た者同士か、あたし達。そう思うと妙な気分になる。ま、こいつの場合は素直に言っていいもんじゃねえから同じではないけど、そういう意味じゃあたしも素直に話せない事が沢山ある。パパとママの事やフィーネに会う前とかな。
「……それにしても、って事は両翼はこいつの精子飲んでんのか。それも、あの様子じゃ嬉々として」
想像するととんでもない光景になりそうなので慌てて頭を振る。あと、あのバカにはどう教えてやればいいんだ? それを考えた時、こいつが既にそこは手を打ってるだろう事を思いだした。なら、あたしが下手な事しない方がいいだろ。それに、他人から教えられるより本人からの方が傷は浅くて済むし。一番はあのバカが自分で気付く事だけどそれは望み薄だ。何せバカだし。
「ん? ああ、洗濯終わったか」
聞こえてきた音であたしは立ち上がる。洗濯機から下着を取り出し、悪いと思ったがハンガーを借りて脱衣所で干す事にした。これであとは朝あいつより先に起きて回収すればいいだけだ。そこで気が抜けたのか欠伸が出る。もう寝よう。そう思ってあたしは再びベッドへ戻る。丁度あいつは寝返りを打ったのか。ベッドの左側へ寄っていたので右側へ寝転んだ。そこで香る匂いが両翼のものと気付き、あたしは大きくため息を吐いて目を閉じた。
「ったく、ここで何してんだよ。あいつらトップアーティストだろうが」
普段なら浮かぶだろうエッチな想像も眠気には勝てず、結局浮かばないままあたしは意識を手放そうとした。と、その時だった。あいつが寝返りを打ったかと思うと、あたしの体に手が触れて、あろう事かそのまま抱き締めてきやがった。
「んなっ!?」
「ん~、奏ぇ」
「ち、違うっての。目ぇ……」
慌てて振り払おうとした瞬間、あいつの目元のクマが視界に入った。起こす訳にはいかねえ。でも、このままじゃ。そんな風に少し悩んだ揚句、あたしは諦めるように目を閉じた。別に人の温もりが嬉しかったとか、初めて男に抱き締められてドキドキするとかじゃない。……ま、それもないとは言わねえけど。安心、しちまったんだよな。遠い記憶の中にあるパパの胸に近かったからかもしれない。まぁ、これも強制宿泊代としてもらっといてやる。そう思って、あたしはこいつの胸の中に顔を埋めた。
―――いい匂いがする。それに、あったかい……。
夢を、懐かしい夢を見た。パパとママが笑っていて、あたしがその視線の先で歌っているそんな夢。あたしが一番愛おしくて、そして二度と手に入らないあったかさ。この夢は見た事が何度かある。でも、いつもこの後が嫌で見たくない夢。そのはずなのに、どうしてか今回はそのままだった。
―――クリス、歌うの楽しいかい?
―――うん、たのしい!
こんな問いかけはなかったはずだ。なのにどうして? 忘れかけてたパパの顔が浮かぶ。そこにあいつの顔が重なった気がして目が覚めた。
「……ここは?」
ぼんやりとした視界に映ったのは白いシャツ。感じるのは人肌のあったかさと静かな寝息。そこで思い出す。あたしはあいつの部屋のベッドで眠った事を。
「…………パパ、な訳ないもんな」
顔を上げてあいつの顔を見つめる。ぜんっぜん似てねえ。でも、何故か安心する。おっさんはいかにも大人って感じで、こいつは雰囲気や体格でパパを思い出させるからだろうな。そこでまた軽い眠気が戻ってきた。時計を見ればまだ早朝だ。このままもう一度寝直すか。そう思った時、あたしのお腹辺りに何か当たるもんがあるのに気付いた。
「なんだ?」
視線を下へ向けて確認する。そこにあったのは、よりにもよって大きくなったあいつのおちんちんだった。そしてそれを理解した瞬間、あたしの鼻に漂う匂いがあった。とても強くて濃いそれ。それがあたしの中で眠ってたはずの獣を叩き起こす。その咆哮があたしの何かを突き動かした。気付けばあたしの手が大きくなったアレを掴んでいた。
「熱い……それに硬てぇ……」
知らずごくりと喉が鳴る。ここからあのウマいもんが出るんだと、そう考えると余計に喉が鳴った。ああ、そういえば何も食べてなかったっけ。じゃ、こいつから食べるもんもらっていいよな。どうせいつも両翼に飲ませてんだ。こいつのためにこの部屋に残ったあたしだって飲む権利はある。
「はぁ……はぁ……っ!」
「んっ……んんっ……」
扱いてやるとどんどん匂いが強くなる。もどかしい。きっとあそこから出てるもんは全部ウマいはずなんだ。そう思って一旦手を放して指を舐める。そこにはあの味に近いものが付いていた。それが嬉しくてウマくて、あたしはもっと欲しくなった。再び扱く。どんどんこいつの下着が変色していき、あたしの指にぬめりがついていく。それに比例して匂いも強くなってきた。また手を放して指を舐める。ウマい。舐めきって手を伸ばそうとして、あたしの中の獣が叫ぶ。もう直接舐めちまえって。
「……そうだよ。このままじゃ下着も汚れちまうしな」
誰に対しての言い訳か分からねえけど、あたしはそう呟いて静かに体を動かす。顔がおちんちんに近付くにつれ、匂いが強くなってきて頭ん中が真っ白になりそうになる。何とか顔をトランクスまで近付けたところで本当に頭ん中が真っ白になった。
「すげぇいい匂いがする。たまんねえ……」
トランクスの中心辺りから漂う匂いがあたしを誘う。ああ、分かってる。そこにウマいもんをくれる場所があるんだよな。そう思いながらあたしはトランクスを下へずり下ろそうとした。でも中々上手く出来ない。力強くやれば出来そうだが、それでこいつを起こしたらウマいもんが食べられない。でもこのままじゃ……と、そう考えたところである事に気付いた。
「そうだ。このまま舐めちまえばいい」
そうと決まれば即実行。あたしはトランクスの中心辺りへ舌を這わす。その瞬間あたしの口の中に駆け抜ける味と匂い。前飲んだ原液とは違うけど、これはこれでウマい。そのままあたしはトランクスがびちゃびちゃになるまで舐め回す。硬いおちんちんが一番ウマくて、気が付けば舐めるじゃなくしゃぶりついてた。
「んっんっんっ」
「翼ぁ……出すよぉ」
「んむっ!? ……んくっ」
うめぇ。本当にうめぇ。それにあったかい。トランクス越しで味わう生命のスープは、あの時の比じゃなくウマかった。ああ、これを直接飲めたら幸せなのに。それにもっと、もっと飲みたい。もっと欲しい。あたしは一旦口をトランクスから離して口元を拭う。
「やっぱり。こんなとこに残ってたぜ」
手についたスープの残りを舐め取り、ふとある事に気付いた。
「おちんちんが……トランクスから少し出てる……」
どうやらあたしがしゃぶったからもっと大きくなったらしい。これなら直接舐めたりしゃぶったり出来る。あ、やべぇ。考えただけでよだれが出やがる。またあのあったかい味をもらえるんだって。
「へへ、いただきまーす。あむっ、ジュルルッ!」
「…………雪音さん? 何、してるの?」
聞こえてきた声に、あたしは急速に頭が冷えてくのを感じた……。
これは一体どういう事だろう? チンポが気持ちいいから奏か翼か来たのかと、そう思って目を覚ますと視界に映ったのは予想とはまったく違う髪色。でも、感じる快感はよく知っているものだった。というか、雪音さんはどうしてここにいて、何故フェラをしてるんだろう? あと、いつまでチンポを咥えてるんだろうか? 上目遣いでそんな事されると寝惚けた頭には凄まじい威力なんだけど。
「雪音さん、まずは説明してもらっていい? どうしてこんな事になったのかを」
「…………ふぉへぇふぁ」
「うん、まずチンポから口を離して。俺も正直名残惜しいけど」
「………………ん」
そこでやっと雪音さんがチンポから口を離した。うわ、これ絶対一度出してる。それとトランクスが酷い事になっていた。おそらく俺の我慢汁と精液、そして雪音さんの唾液でぐちょぐちょになっている。気持ち悪いから脱ぎたいけど、さすがに雪音さんの前でそんな事する訳にはいかない。……仕方ない。応急処置だ。
「雪音さん、まずは一度後ろ向いて」
「わ、分かった……」
「よっと……」
トランクスを脱いでシャワールームのある方へ投げると同時に、下半身を掛布団の下へ隠す。これなら大丈夫。雪音さんもわざわざ中を覗いたりしないだろう。
「もういいよ。ごめんね」
「いや、いい。それで、説明……だよな?」
「う、うん。出来ればお願いしたいかな」
そこから雪音さんが話してくれた内容は申し訳なさと困惑が半分半分だった。とにかく分かったのは、俺が眠気に任せて考える事とか放棄した結果だって事。本当に雪音さんには迷惑かけたなぁ。まずは謝っておこう。そう思ってその場で頭を下げた。
「ごめん、雪音さん。俺のせいで色々面倒かけたね」
「……もういいんだって。あたしが自分で選んだ事だしよ」
「それでもさ。それに、生命のスープの事も」
「あっ、いや、その……」
「最低でしょ? 雪音さん達に黙って精子触らせたり舐めさせたりしたんだ。奏達の事を思い出してエロい事出来るかもって、そんな下心ありありでさ」
本当に死にたい。立花さんの時は開き直れたけど、いざこうなるとヘタレになるのがより情けない。雪音さんに嫌われたくないからだろう。あー、寝る前は嫌われたっていいとか思えたのにな。色々考え落ち込むように項垂れる俺を、雪音さんはどう思って見つめてるんだろ。きっといい印象はないはず。おそらく自分を騙しておいてよくもまぁって、そんな感じじゃないだろうか。
「……いいぜ。許してやるよ」
「へ?」
聞こえてきた声に顔を上げる。そこには照れた顔の雪音さんがいた。でも顔をいつものようにこちらから背けていない。しっかり俺を見つめていた。
「お前がどんな事考えて隠してたか分かるつもりだ。だからその事を責めるつもりねえよ。それに、気付くチャンスはちゃんとあったしな」
「雪音さん……?」
何だろう。何かが雪音さんとずれてる気がする。でも、言ってる事は間違ってない。男なら可愛い女の子とエロい事したがるのは当然だって、そう雪音さんも分かってくれてるって事かな? とりあえずこれで解決か。そう思って俺は下を向いて安堵の息を吐き、改めて雪音さんへ感謝を告げようと思って顔を上げる。
「あれ?」
でも何故かそこに雪音さんはいない。出てったのかなと思うも、ドアはロックされたままだし何より音がしなかった。じゃ、シャワーかなと視線を動かすけど水音などはしない。どこにいったのだろうと首を傾げると、突然ぬるっとした温かい感触がチンポを包んだ。
「っ?! ……雪音さん!?」
「チュっ! レロォ……あむっ」
掛布団をどけるとそこにはチンポへ舌を這わす雪音さんがいた。こちらの言葉を無視するように熱っぽい顔でフェラを続ける。その光景はこちらの性欲を否応なく高めてくる。それにあの雪音さんが自発的にフェラしてくれているのだ。
「っ……すごい気持ちいいっ……けどっ!」
「んんっ!? っぷは!」
強引に雪音さんをチンポから引き離すために腰を思いっきり引いた。雪音さんの口から勢い良くチンポが引き抜かれ唾液が飛び散った。それと我慢汁が雪音さんの顔へ飛ぶ。
「何すんだよ?」
「ど、どうしたの雪音さん。何でフェラチオなんて……」
「分かんだろ。その……あたしも両翼みたいに原液が飲みたいんだ」
「……嘘」
「こ、こんな事嘘で言うかよ! いいからあたしにも飲ませやがれっ!」
そう恥ずかしさ全開で叫ぶと、雪音さんは再びチンポへしゃぶりついた。もう俺にそれを止めさせる気はなくなっていた。気付いたのだ。もう無意味だと。雪音さんは既に原液をたっぷり飲んでしまっている。もう味を占めてしまったのだ。と、ならばである。こちらも腹を括って雪音さんを、いやクリスを可愛がるしかない。
「ジュルッ……ジュポジュポっ!」
「雪音さん、クリスって呼んでもいい?」
「ん? …………ん」
俺の目を見つめて小さく頷くクリス。その頬は淫欲ではないもので赤く染まり、それもまた俺を喜ばせてくれる。俺はフェラをするクリスの頭を優しく撫でた。するとよりクリスのフェラが熱っぽくなる。それが俺の撫でる手を一層優しくさせ、それがまたクリスのフェラを……となっていく。それに伴いクリスの表情もどんどん緩んだ、そしてエロいものへ変わっていった。
「すごく可愛くてエロいよクリス。そろそろ出しそうだ」
「んっんっんっ……っぷは、じゃあ口にくれ」
「いいけど、出来ればもっと可愛い言い方して欲しいな。ダメ?」
「…………お、お口に頂戴?」
「うん、絶対あげる。クリス、咥えて?」
「っ! あむっ」
俺の言葉に嬉し恥ずかしの反応を見せ、クリスは真っ赤な顔でチンポを咥えて舌を動かし亀頭を優しく舐め回す。その瞬間、俺は込み上げていた感覚へ身を任せた。チンポから吐き出される生命のスープ。それをクリスは恍惚の表情で飲み下していく。その様子ですぐにチンポが硬さを戻し、クリスが更に淫らで可愛い顔を浮かべる。
「どう? 美味しい?」
「……ああ、すごくウマい。原液直飲み最高だ」
「もっと飲む?」
「いいのか?」
「クリスが飲みたいならいくらでも。ただ、可愛くおねだりして欲しいかな」
「こ、このバカ。し、しょうがねえな……」
そう恥ずかしそうに言うけれど、もうクリスの目は俺のチンポへ釘付けだ。今もその鈴口から出ている我慢汁を見つめ舌なめずりをしている。
「お、お前のおちんちんから出るあったかいスープ、あたしにいっぱい飲ませて?」
「……クリスって本当にエロ可愛いな」
「っ! い、いいからどうなんだよ!」
「勿論いいよ。好きなだけ飲んで」
そう言ってあげるとクリスは蕩けた顔で頷いてチンポへ熱っぽくしゃぶりついた。この後、クリスは二度も俺の精子を飲み、満足そうに眠ってしまった。それに呼応するようにクリスは全裸となる。最初は驚いたけど、おそらくギアを下着のように展開させていたんだろうと思い、その応用力に感心した。そして今は俺はその寝顔を見つめ、いつこのエロボディを抱かせてもらおうかを考え始めていた。きっとクリスはまだそれに抵抗感があるはずだ。なら、しばらくはフェラだけで我慢しよう。それと、了子にお願いして俺の精子じゃ妊娠し辛い事だけ伝えてもらおう。そして、俺の精子を子宮へ注がれるのが一番効力が高い事も。
「このおっぱいで今度は挟んでもらおうかな?」
「んっ……」
すやすや眠るクリスの爆乳をやわやわと揉み、俺は軽く乳首をいじる。と、そこである事に思い至ってクリスのマンコへ目を動かした。そこは予想通り愛液で十分な程濡れている。思わず喉が鳴った。心はどうか知らないが、体の方はとっくに抱かれていいと告げているのだ。
「初めてが睡眠姦って、さすがにどうだろう」
俺が女性ならいくら好きな相手でも嫌だ。なので仕方なく横になって眠るクリスのマンコへチンポを擦りつけて素股をする事にした。クリスのむちむちとした太ももとマンコの感触、それに挟まれるように扱かれるチンポ。更に言うならクリスの桃尻も感じる事が出来る。
「ああっ……これはこれでいい」
「んんっ……ふみゅ……」
寝息を立てて眠るクリスを使っての贅沢なオナニー。今度奏や翼にもさせてもらおう。あっ、了子さんにもお願いしよう。そんな事を考えつつ、俺は打ち付けるように腰を振る。クリスのマンコから出てくる愛液にチンポが塗れていく。それに負けじと我慢汁がクリスのマンコと太ももを汚していく。俺の左手はクリスの桃尻を揉みながら右手はおっぱいを揉みしだいていた。
「はぁ……っはぁ……クリスっ! クリスっ!」
「ん……? 何だぁ? 股の辺りがムズムズする……?」
「うっ!」
「んあ?」
射精の瞬間、クリスの太ももから引き抜き桃尻へチンポを近付ける。可愛い桃尻を汚していく白濁液。その温度でクリスも目を覚ましたのか、目元をクシクシと擦りながら起き上がった。
「何してたんだ?」
「えっと、素股って言って……」
可愛く寝惚けたクリスを相手に先程までしていた事を説明し、俺はその後の事を予想して身構えていた。その予想通り、俺は怒りを爆発させたクリスに引っ叩かれてベッドへ転がる。その俺を尻目に、クリスはシャワーを浴びて乾いた下着と元々着ていた服を身に着けドアへ向かう。でも最後に一言だけ。
―――……また来る。
そう真っ赤な顔で呟くように言い残し、クリスは俺の部屋から出て行った。さて恐ろしいのはここからだ。それとほとんど入れ替わりで部屋へ奏が姿を見せたのだ。
「シキ? 今、そこでクリスとすれ違ったんだけど何で?」
「えっと……彼女にアレの正体を気付かれまして」
「……そ。だからあんたに見事なもみじが出来てる訳か」
そう言いながら奏は満面の笑みでこちらへ近付いてくる。うん、これは間違いない。物理的には痛みを感じないけど、精神的にはものすごく痛い事をされるやつだ。
「で、どうして下半身丸出し?」
「…………想像通りかと思います」
こうして俺は奏にその場で正座させられ、お小言をたっぷり言われた後、昼過ぎまで意識を手放すぐらい絞られる事となる。それと、今度二人でデートに行く約束をしました。何でも、近くマリア・カデンツァヴナ・イヴなんて舌を噛みそうな名前のアーティストとの合同ライブがあるそうで、それが終われば長めのオフが取れるらしいとの事。
―――じゃ、風鳴さんに言って外出許可もらうよ。それと外泊許可も。お泊りデートにしないか? 部屋に露天風呂付いてる温泉宿とかどう?。
―――いいね。じゃ、楽しみにしとく。
そう言って奏はキスをした後、文字通り絞りつくす獣へと変わったのだ。でもきっとデートを約束しなければもっと酷かっただろうと思う。そういう意味では奏は優しいのかもしれない。普通ならとっくに愛想尽かされてるだろうし。