元パヴァリアの研究員にして実験素体となっていた女性。
両親がパヴァリアの構成員だったため、自身も組織の一員としてファウストローブ研究にその才を見せたが、実験中の事故によりその体をサイボーグとせざるを得なくなる。
その結果、両親から突き放され実験動物扱いされた故に両親と組織に絶望しながら、そこで出会ったエルザとミラアルクを姉的存在として守る事を決意する。
シキへの初対面での感情はこれまでの女性達の中でもトップクラスに好意的。それ故に抱かれる事へと繋がってしまった。
エルザ・ベート
パヴァリアによって実験素体とされていた少女。
幼い頃から虐待を受けていた事から潜在的に愛情に飢えている。それもあってヴァネッサやミラアルクの事を誰よりも大事に思っている。
シキと了子が夢子という我が子を持っていた事もあり、二人の事を密かに両親と思って接している内に無意識で自己催眠をかけてしまった。
キャロルとエル、夢子の三人から姉として呼ばれる事に今まで感じた事のない喜びを覚え、日々姉らしくなろうと悪戦苦闘中だが、精神的なものは当然キャロルの方が圧倒的に姉である。
ミラアルク・クランシュトウン
パヴァリアに拉致されて実験素体とされてしまった少女。
二人に比べて一般的な環境で育った事もあり、エルザとヴァネッサのバランサー的立場をする事が多い。
その言動や性格が似ているためかクリスと衝突する事があり、互いにケンカ友達のように思い始めている。
シキの妻や子として立ち位置を決めた二人に倣うように自身も妹分として彼へ迫り、そのせいでキャロルから時折叔母さん呼びでからかわれる事となる。
「れろれろれろ……れぇ~っ」
下半身から感じる快感で目を覚ます。エルザを娘として扱うと決めた翌日、俺の部屋には必ずメイドが毎朝一人やってくる事になってしまったのだ。
エルザと共に寝るため、俺はキャロルにファラ達への説明をお願いしたのだが、当然待ちに待った時が来たと待機していた四人はそれはもう凄まじい落胆を見せたそうだ。
―――私、あの時実感したんだからね。もうファラ達は私よりも父さんなんだって。
翌朝、食事前にキャロルに拗ねた声で言われた言葉に俺は申し訳なさと同時に大きな喜びを覚えたもんだ。
で、みんながそれぞれ動き出した後、レイアが俺にこう耳打ちしてきた。
―――明日から毎朝ご奉仕に行くから。
その言葉通り、それから俺の目覚ましはスコアの誰かによるモーニングフェラとなったのだ。
「……やぁガリィ。今朝は君か」
「はぁい。おはようございますご主人様」
嬉しそうに笑みを浮かべ、チンポへ頬擦りするガリィを見つめる。何というか、メイド服へ着替えるようになってからスコアの四人は本当に変わった。
一番顕著なのがキスをねだるようになった事。ミカやガリィだけじゃなくレイアとファラさえもだ。しかもディープをねだるんだから変わったよ。
きっと契機はあの神の力を得た後の四人フェラ。あれで彼女達は味を占めたのだ。それと同時に体の渇きにも似た感覚も。
「はぁ~……とってもいい匂いがするぅ。ご主人様ぁ、ガリィちゃんのお口に美味しいスープをくださぁい」
舌をいやらしくチンポへ這わせ、こちらを見つめるガリィは中々いい。が、今の俺はご主人様モード。そう簡単に思う通りにはさせないのだ。
「それだけか? ガリィならもっとその気にさせられるだろう?」
「ああんっ、ご主人様のぉ、い・じ・わ・る。でもそんなところも今は好きぃ」
「それは嬉しいな。さぁ、ガリィの可愛いところを見せておくれ」
「はい、ご主人様ぁ」
そう言ってガリィは土下座をした。まるでチンポへひれ伏すように。
「ご主人様の熱くて濃厚な子種汁で生まれ変わらせていただいたガリィに、もう一度生まれ変わる機会をお与えくださいませ。この世に一人しかいらっしゃらない神の力を宿した貴方様の子種を、貴重な遺伝子を、ガリィめにくださいませ」
正直言おう。ゾクゾクっとした感覚が背中を走った。本当に従えている感じがしたのだ。それと、チンポへ平伏させている雰囲気もくるものがある。
「……舐めろ」
「ありがとうございます、ご主人様。喜んで舐めさせていただきまぁす」
小悪魔的なガリィでこれなら、レイアやファラならどれ程興奮出来るだろうか。俺はチンポへ舌を這わせ始めたガリィを眺めながらそんな事を考えていた。
そしてその想像はスコア達で留まるはずもなく、自然と奥さん達にまで及んだ。
まずマリアは嬉々としてやってくれる。翼も、最近の傾向を考えると嫌がりはしないだろう。
調は言うまでもないだろうし、切歌も嫌がる事はないな。アンジェも意外とエッチな事には素直だから俺が望めば拒否はないか。
クリスは、ちょっと分からないなぁ。未来や響は抵抗感を覚えそう。レティもそれはありそうだし、リオも少し読めない。
セレナは……嫌がりつつもやってくれるはずだ。奏は俺が頼めば断らないだろうし、了子は意外とノリノリでやってくれそう。で、フィーネはふざけるなと一喝した後で……
―――あ、アナタがどうしてもと言うなら仕方ないが……。
とか言ってやってくれそうだ、うん。ヴァネッサは、さすがにまだそういうのは早いだろうからパス。
「チュパっ! レロレロ、ハムっ! ジュルルッ!」
「ああ、いいぞガリィ。その調子だ」
「んふっ♡」
声をかけながら頭を撫でてやれば、途端にガリィの機嫌は最高潮。きっとエロマンガとかなら瞳にハートが浮かんでいるに違いない。
神の力が宿ってからというもの、先走りでも一舐めすればみんなその気になるそうだ。いや、下手をすればその気どころじゃないか。
あの翼やクリスがあっさりと股を開き、アンジェでさえもチンポをねだるんだもんなぁ。あの夜は本当に凄かった。
チンポである程度ビンタしていたら、全員が目付きを妖しくして挿入を望むようにこっちを見てきて、そこからはまぁまさに大乱交。
手始めに奏へ挿入しながら両手はマリアとセレナのおっぱいを揉み、俺の乳首を切歌と調が舐めながらそのマンコを響と未来が愛撫し、クリスと翼と舌を絡め、レティとリオが背中へ体をすり寄せたかと思うとアンジェが何とアナル舐めだもんなぁ。
「っぷはっ♡ ご主人様ぁ? 今、絶対他の女の事考えてますよね?」
で、当然こんな事を思い出していればガリィに気付かれる訳で。だけど今の俺はご主人様。
「それが何だ? 文句があるなら他の女の事を考えられないぐらいの奉仕をしろ」
「ああんっ♡ 自分の非を棚上げしてのご命令、今のガリィちゃんはゾクゾクしますぅ♡」
「そうか。ならその口マンコを使ってさっさと射精させろ」
「はい、ご主人様♡ ガリィちゃんのダメダメお口マンコへ好きなだけ射精してくださいませぇ♡ あむぅ♡」
すっかり気分は淫乱メイドらしい。それが可愛くて勝手に手がガリィの頭を撫でてしまう。
チンポを嬉しそうにしゃぶり、舌を這わせて亀頭や尿道を刺激するガリィはもう本当にチンポの僕と言った感じだ。下手を、いやきっとチンポのためなら俺の命令を喜んで実行するだろう。
裏筋を丁寧に舐め上げ、カリ首へ舌を這わせ、これでもかとばかりに熱のこもったフェラをするガリィ。これが最初は嫌々していたなんて思えない成長ぶりだ。
「美味いか?」
もう何度同じ問いかけをしただろうか分からない事を聞く。すると、ガリィは目を細めて頷いた。だが今はそれではダメだと分からせるように冷たく見つめた。
俺が望むのは声を出しての反応だ。今のガリィは俺専属メイドなのだからな。そう思っての眼差しにガリィが目を見開いてチンポから口を離した。
「も、申し訳ありませんご主人様っ! ご主人様のオチンポが美味しくてつい……」
「へぇ、俺の問いかけはお前の欲望以下なのか?」
「っ!? め、滅相もございませんっ! ガリィちゃんのバカバカっ! ご主人様以上の優先事項はございませんわ」
「なら、先程の問いかけをもう一度してやる。美味いか、ガリィ」
「はぁい♡ この世にご主人様のオチンポ以上のものなどございませんわぁ♡」
これがお世辞じゃないのが今の俺の凄いところだろうな。ま、でも気分は悪くない。エロマンガのような事が俺には日常なのだと思うと滾らざるを得ない。
「よし、いいだろう。ガリィ、次はないぞ?」
「勿論ですぅ♡ では、ご奉仕を再開させていただきまぁすっ♡」
こういうところがガリィはスコアの中でトップクラスだ。要はなり切り方が上手いのだ。ノリがいいと言うのか、スコア達の中で色んな事に対応出来るのはガリィが真っ先に挙がる。
それと、エロに関しても真っ先に覚えてくれる。この辺りは多分最初に俺のスープで壊れた影響かもしれない。
「んむっ……っぱ♡ チロチロ、レェ~ッ……はぁんっ♡ オチンポ美味しいですぅ♡」
この淫乱メイドらしい感じ、きっとミカには無理。レイアにも厳しいかな。ファラは……やれば出来そう。ただし、方向性はガリィと違うだろうけど。
チンポをまるで涎塗れにするかのように舐め回し、しゃぶり、こちらを見つめながらフェラを続けてくれる。正直エロくて可愛い。
「ガリィ、そろそろ情けをくれてやる。しっかり飲め」
そう言った瞬間、ガリィが待ってましたとばかりにバキュームフェラを始めた。そのみっともない顔さえ愛おしく思い、俺は我慢する事もなく射精する。
勢いよく出て行く精液をガリィは目を閉じて味わうように飲み下していく。そして全て飲み終わるとそのままチンポを舌が這い回る。残っている精液を吸い取るのと同時に掃除までしているんだ。
「ガリィ、良かったぞ」
「お褒め頂きありがとうございますご主人様♡」
「本当ならチンポをぶちこんでやりたいところだが、時間もある。仕事に戻れ」
「はい、かしこまりましたぁ♡」
蕩けた顔で立ち上がり、ガリィはその場で優雅に一礼するや部屋を出て行く。
「……あー、ヤバいなぁ。本気でガリィ達もティキみたいにしたくなってくる」
だけどそれはダメだ。だって、理由がただセックスしたいだけなんて、なぁ。ティキみたいに純粋な願いじゃないんだ。俺は欲望だけでファラ達を生身にしたいと思ってる。
まぁ、既にクリスやヴァネッサでやったように神の力をエッチに利用はしてるけど、あれはあくまでローターやバイブの代わりみたいなもんだから良し。
……いいよね? 使った後、しばらく母乳出るようになるけど問題ないよね? そういえば、その状態になったヴァネッサのおっぱいは破壊力が凄かった。
褐色のおっぱいにあるピンクの乳首から白いミルクが流れ出て、それをまき散らすようにしながら俺の上でブルンブルン胸を揺らしたもんなぁ。クリスもエロかったけど、やっぱ色のコントラストって凄いわ。
「あ~、いかん。全然スケベモードが抜けてないぞ」
とはいえ、時間を見ればそろそろ朝食の時間になる。エルザはいつものようにファラの手伝いをしているだろうか? 見に行ってみた方がいいかな?
「……おーっ、エルザの事を考えたらムラムラが治まった」
我ながらどれだけ単純なんだか。ま、でも良しとしよう。さて、なら着替えてリビングへと向かいますかね。
で、着いてみればエプロン姿のエルザがせっせと働いていた。その表情はとてもいい笑顔。何というか、お姉ちゃんになったからなのかエルザの張り切り方が凄い。手伝いだけでなく、いよいよ簡単な料理を覚え始めていたのだ。
そんな風に頑張るエルザを眺める妹三人。キャロル、エル、夢子は忙しく動くエルザを見つめて微笑んでいた。ここで手伝おうと出来ないのが我が家の困ったところだなぁ。
キッチンは狭くはないものの、ファラやレイアにエルザがいればもう十分な人手だ。なので無理に手伝う事はないのである。
ただ、エルを見てるとエルザと一緒にお手伝いをしたそうではある。キャロルは、何かを思い出すような目をしてるので、きっとパパとの暮らしを思い出しているのだろうな。
「あら、シキじゃない。おはよう」
そろそろ娘達に声をかけようとしたところで後ろから声をかけられる。振り向けばそこには寝間着姿のリオ達三人がいた。クリスもいるのできっと廊下で出くわしたのだろうか。
「おはようリオ。アンジェ、レティ、クリスもおはよう」
「ああ、おはよう」
「おはよう。いい朝なワケダ」
笑顔のアンジェとレティだけど、何というかパヴァリア三人の最近家の中での過ごし方が凄い。何と朝食までは寝間着姿で過ごすのだ。
最初の頃はちゃんと着替えていた事を考えるに、それ程までに寛いでいるのだろうと思う。クリスもそうなのできっと最早気を張る事がないと考えられたんだ。
「おはようさん。で、何でんなとこで突っ立てるんだよ?」
「うん、我が家の新しい長女の頑張りを眺めてた」
そう答えた瞬間四人が納得するように声を上げる。お姉ちゃんとなったエルザの頑張りはみんなの知るところであり、それが主に炊事で発揮されている事は周知の事実なのだ。
「本当に大したものね。以前からキッチンでの手伝いに注力していたのは知ってたけど、今じゃ作る事へも手を出しているみたいだし」
「あーしもエプロン着けてやってみようかしら?」
「で、シキに料理されるワケダ」
「レティ?」
「さすがにシキもんな事しねーよ。まぁ、昔ならそうだったろうけどな」
「あー、そこは否定出来ない」
クリスのフォローに見せかけたフレンドリーファイア。ただ、残念ながら当たっている。それこそ了子が夢子を出産する前なら確実だ。
そんな会話をしながら五人でテーブルへと近付くとエルザがこちらに気付いて嬉しそうな顔を見せる。うん、イイ笑顔です。
「あっ! 父さん、おはようでありますっ!」
「おはようエルザ。今日も朝食の手伝いかい?」
「はいっ! お姉ちゃんですからっ!」
お気づきだろうか。何とエルザはちょこちょこと口癖が直りつつあるのだ。まぁ、本人曰く余計おかしくなっている気がすると言っているものの、俺達には切歌という先駆者のような存在がいるので気にしていない。
「アンさん達もおはようであります!」
「はーい、おはよう」
「エルザ、私達に手伝える事はあるか?」
「特にないで……あっ、なら誰か母さんを部屋まで行って呼んできて欲しいであります」
「分かったワケダ。私が引き受けよう。丁度話したい事もあったワケダし」
「お願いするであります」
「じゃ、あたしらは座って待ってるとするか」
レティがエルザの頼みに頷き、来た道を戻っていく。何というか、本当にお姉ちゃん効果は凄いもんだ。エルザは完全にアンジェ達への接し方が奏達とほぼ同じになっている。
ミラやヴァネッサも最初の頃のような不自然さはなくなっているし、挨拶も普通に交わしているのでもうわだかまりのようなものはないと思う。
椅子に座ってキャロルの腕の中にいる夢子と戯れる。途中でエルがキャロルと交代して夢子を抱っこ。お姉ちゃん二人に交互で抱っこされて夢子はご機嫌である。
「ホント夢子はいい子だよな。あたしがママになったら、ちゃんと産んだ子の面倒見てやれるか少し不安になっちまうぜ」
「夢子は色々と不思議な子だからねぇ。あーしもこれを普通と思い出してて怖いわよ」
クリスとリオが夢子を話題にそう言い合っているが、実はそれは奏達全員の共通見解である。俺と了子の、というかフィーネの子供の夢子。
その成長ぶりは明らかに異常だ。言葉を使い出す速さといい、こちらの言葉をまるで最初から理解していたかのような素振りといい、普通では考えられない部分が多々見られる。
いつだったかお義母さんも言っていたが、夢子を基準に考えてはいけないのだ。本来であれば、赤ちゃんはまだ言葉はおろか喋る事さえままならないはずなんだから。
ただ、おかげで奏達年上組が、かなり早いマタニティブルーになりかかっている。ツヴァイウイングはそのツアーも佳境に入っており、本格的に春を迎えた後にはツアーファイナルだ。
だからかもしれないが、奏と翼はいよいよとばかりに妊活をほのめかしているのだが、そこで問題となってくるのが子育てである。
当たり前だが奏達は赤ちゃんと接した事がないに等しい。そんな中での初体験が夢子なのだ。それが彼女達の中でどうしても基準になってしまっているらしい。
勿論奏達も頭では分かっている。夢子は普通の赤ちゃんと違うと言う事は。だけど、どうしても夢子で慣れてしまっているため、自分達が産んだ子に対して苛立ちを覚えないかと不安になってしまっているそうだ。
「大丈夫だと私は思ってるわ。以前はともかく、今のシキはあの力が宿っている。なら、多少は普通の赤子と異なるはずだから」
「あー……可能性は高いかも」
アンジェの言葉の説得力たるや、現状だと凄まじい。何せ神の力を乳首へ流しただけで母乳が出るようになるのだ。今の俺の精子が受精させると夢子と近い赤ちゃんが産まれても不思議はない。
了子の次は奏ってどこかで勝手に思ってたけど、下手するとフィーネが産むかもしれないんだよなぁ。吹っ切れた後のフィーネの甘え方は正直かなりくるものがあるし。
「でもよ、正直ちょっと残念なところはあるんだよな。あの夜、てっきりママになれたと思ったのによ」
少しだけ声量を落としてのクリスの言葉。そう、あのハーレムエッチで誰も見事に妊娠しなかったのだ。
まぁ、俺の感知能力が正しければって注釈がつくけど。だけど、本当に不思議なんだよなぁ。何せ奏だけじゃなくマリアも調も切歌でさえ精液が一発で吸収し切れず流れてたんだ。
「そうねぇ。もしかすると、本当にプレラーティの言った通りかもしれないわ」
「シキの精子が神の力を宿しているために受精し辛くなっているかもしれない、か。もしそうなら困った話ね」
アンジェとリオが若干苦い顔をする。クリスもだ。ホントだよなぁ。神の力でスープの効果が上がったと思ったら、肝心要の受精能力は下がったなんて目も当てられない。
まぁ、そもそも受精確率って一般的にも思った程高くはないから偶然かもしれないんだけど、やっぱりどうしても不安にはなる。
「まぁまぁ、まだそういう意味じゃデータが少なすぎるから。それに子宝は天からの授かりものっていうぐらいだし、気長に構えておこうよ。大丈夫。きっとその内こうのとりが運んできてくれるさ。豊作のキャベツ畑からね」
ちょっとだけ軽い感じで締め括るとアンジェ達が小さく苦笑してくれた。どうやら俺の気持ちは伝わったらしい。
焦ってもいい事はないし、俺は性欲が旺盛だ。今でこそ大人しくしてるけど、その気になったらとんでもないのはあの夜全員にしっかりと分からせている。
つまり、心配せずとも妊娠するまで子作りするからと、そう言ったのだ。それこそ、彼女達が止めてと言っても止めないぐらい中出ししてあげるよ、と。
「父さん、どうしてキャベツとこうのとりなんて出てくるんですか? 受精から誕生に至るまでの流れにそんなものは関わってこないけど……」
そんな可愛い疑問をぶつけてくるのはエル。キャロルは知ってはいるのかやや苦笑気味。
「エル、それは双子の姉に教えてもらいなさい」
「え? キャロルに?」
「知ってるんだろ?」
「まぁ、一応」
そこから始まるキャロルによる赤ちゃん関連の童話にも似た話。何というか、こうしているとやっぱりエルはキャロルよりも中身が幼いというか知識が偏っているんだと思う。
さて、キャロルは純粋無垢なエル相手に大人の考えた子供のデキ方の誤魔化しを教えて苦戦中。本来なら逆だもんなぁ。誤魔化しが先で事実は後なのに、エルは事実を知ってから誤魔化しを聞いている。
だからか、エルがずっと不思議そうに小首を傾げていた。何でこうのとりなのか。どうしてキャベツなのかと、まさかの質問にキャロルが逆に困っていた。
そうこうしている間に了子を連れてレティが戻ってきた。そしてミカとミラ、ヴァネッサとガリィもやってきて朝食の時間となる。
ちなみにエルへの説明はキャロルが「何でも誰かに聞いているばかりじゃダメ」という逃げ方で終わらせていました。何だかキャロルも順調に力が抜けてきたなぁ。
「おはようさん、兄貴」
「シキさんおはようございます」
「おはよう、ミラ、ヴァネッサ」
妹分となったミラは俺の事を兄貴と呼ぶようになった。何て言うか、結構嬉しかったりする。今まで切歌や調にされた事のあった兄扱いだけど、それをずっとしてくる相手が出来ると思い込みの激しい俺は本気でミラを妹と思えるんだと思った。
ただ、実妹ではなく義妹なんだよなぁ。要するに奥さんの妹って感じ。まぁ、何が言いたいかと言えば……
「ん? 何だよ兄貴。ウチの顔に何かついてるか?」
「いや、ミラはやっぱり可愛いなってね」
「なっ……そういうのはヴァネッサに言ってやれよ。う、ウチを褒めたって何もないんだぜ」
こうやってちょっとからかいたくなるって事。ミラの反応はどことなくクリスに似てるけど、クリスより素直なので楽しくて嬉しくなってしまうんだ。
それと、からかいと言ってはいるけど嘘や冗談ではない。ミラは本当に可愛い。自慢の義妹だ。クリスもそうだけど、言葉遣いが若干荒い女の子は面倒見がいいとかあるんだろうか?
「いいや、あるよ。女の子は見られたり褒められる事で綺麗になるんだ。ミラが俺の義妹になってくれたから、俺は義兄として君を綺麗にしたいんだよ」
「うっ……あ、兄貴って本当に分からないぜ。も、もしかしてウチまで嫁にしようとか思ってるのか?」
「むしろミラはなってもいいのか?」
「えっ? あー……」
思わぬ返しだったのかミラは瞬きすると、腕を組んで思案顔。対するこっちはニコニコ顔。で、周囲はそんな俺に呆れ顔。
「……まぁ、貰い手がなかったら」
「あ、それはないから大丈夫だよ。ミラみたいな子なら男が放っておかないから」
断言出来る。我が家で家事を学び、少しずつだけど花嫁修業しているようなものなのだ。容姿もいいしスタイルだって悪くない上に性格までいいミラが独り身で終わるのは考えられない。
「だ、断言だぜ。ま、まぁ? ウチもそこまで言われて嬉しくない訳じゃないぜ」
そう言いながら定位置へと向かうミラ。と……
「そ、そっか。ウチは男が放っておかないかぁ」
そんな風に嬉しそうに呟いてくれました。うん、本当に可愛い義妹です。
そんなこんながありましてからの朝食は、あいも変わらず賑やかに進む。アンジェ達が加わって、そこにヴァネッサ達もいるようになって、それが日常となりつつあるからだ。
クリスもそろそろ本気で住んでるマンションの解約を考えているらしく、奏と翼もゆっくりと引っ越しを進めている。我が家の居住人数は増える一方なのだ。
幼い命が増える可能性も高いしね。それが一斉に、とならない事を願おう。そう思いながら俺は一度テーブルに座る家族達の顔を見ていった。
誰もが楽しそうに、あるいは幸せそうに食事をしている。これがずっと続いていけるといいなと思い、そのためにも頑張っていかないとと、そう思い直す。
―――他力本願じゃなく、自分がまず何とかしないとだもんな。
朝食が終わり、それぞれがそれぞれの予定に合わせて動き出した後、シキはエルザに肩たたきをされていた。
「とんとん御肩を叩きましょ~」
上機嫌で歌を歌いながらシキの両肩を優しく叩くエルザ。教えてもらった歌を楽しそうに口ずさみ、笑顔でシキの肩を叩く様はまさしく父と娘である。
「あ~、良い感じだよエルザ。その調子で頼む」
「は~い」
脱力したシキの声にエルザも楽しげな声を返す。シキから言われた口調を砕けたものへという願いに、エルザが取ったのはまず”はい”という返事はそれだけにする事を心がけるというものだった。
これが一定の効果を上げ、今や返事だけならエルザは砕けた口調をする事が出来ていた。ただしそれ以外はまだまだなのでおかしな言葉遣いになってしまう事が多々あるのだが、それはまあ愛嬌の範疇だろう。
そんなエルザを見ている者が今日の要家にはいなかった。了子達は言うまでもなくそれぞれの職場や学院へ行き、スコア達は家事であちこち動き回っているのだ。
そして、ヴァネッサとミラアルクもまたいない。そう、二人もS.O.N.G本部へ行っているためである。居候から家族へと本格的になったため、ヴァネッサは研究員として、ミラアルクはベビーシッターとしてそれぞれ勤務を始めたからだった。
それもあってエルザの精神は余計に子供らしくなっていたのだ。
「父さん、他に何かして欲しい事ありますか?」
「そうだなぁ……」
ニコニコ笑顔でシキへ問いかけるエルザ。それを声で察して笑みを浮かべるシキ。本当に仲良し親子のような光景である。
実は、シキもエルザとのこの時間は新鮮だった。彼の娘であるキャロルとエルは錬金術師兼研究員として働いているため、シキとの時間が基本的に多くない上にその育ちや生まれもあってか子供らしからぬ面が多々ある。
だから、今のこの触れ合いはシキにとって初めての世に言う父親らしい時間だった。娘から肩を叩いてもらい、何かして欲しい事はないかと聞かれるという、とても平和的で優しい時間が。
(こういうのは息子とって思ってたけど、娘とでもいいもんだなぁ。他にして欲しい事、か)
まず考えるのは、キャロルやエルとでは出来ない事かしてもらえないだろう事。だがそんな事はエルザとも出来ない。色々と考えてシキが出したのは、意外な事だった。
「じゃ、献血が終わったら散歩に付き合ってくれるかい?」
「散歩、でありますか?」
「うん。ま、娘とデートって感じだね」
「で、デート?」
シキの例えにエルザの頬が赤くなる。ここでシキの悪いところというか、欠点が出た。彼はエルザを娘と思い込み父親としての心境でいるがエルザはそうではない。
エルザはまだ年頃の少女であり、シキのように自分は娘であると思い込める訳ではないのだ。そのため、どうしてもシキの事を父親のように思いつつも異性として捉えてしまった。
「そう。嫌かい?」
「そ、そんな事ないでありますっ! 父さんとならデートでも何でも望むところでありますっ!」
「あははっ、それは嬉しいな。じゃ、父さんはまずやらなきゃいけない事を終わらせてくるよ。エルザは父さんからの連絡が来るまでファラ達の手伝いを頼むな?」
「ぁ……はいっ!」
優しく大きな手で頭を撫でられ、エルザは心からの笑顔で頷いた。以前男は子に心から父と呼ばれて父親になると言ったが、もしかすると子供もそうなのかもしれない。
例え実の親でなくても心から子供として扱われ愛を注がれる事でその相手の子となれるのだろう。今のエルザはそうだった。シキの言葉と笑顔、そしてその頭に置かれた手から伝わる温もりに、エルザはやっと普通の子供らしくなったのだ。
その後エルザは本部へ向かうシキを見送り、意気揚々とファラを探して動き出す。
(父さんとデート、でありますか。あっ、ついでにお買い物をしてくるのはどうでありましょう? うん、その方がいいであります。ファラさんへ相談でありますね)
きっとシキが聞けば苦笑しながら頷いただろう発想だ。
そうやってエルザがシキとの散歩を楽しみにしながらファラを探し出した頃、ミラアルクは夢子を抱っこしてキャロルとエルの研究室にいた。
「お姉ちゃん達頑張って。ほら」
「おねーちゃんたちがんばってー」
ミラアルクの言葉に続いて夢子が発声する。今、ミラアルクは夢子へ言葉を教えていた。
とはいえ、それは暇潰しのようなものであり、真剣に教えるつもりはない。
ただ、夢子からの棒読みの励ましも姉二人には何よりも嬉しいものだ。
「うん、頑張るよ」
「夢子はミラとそこで見ててね」
エルは満面の笑顔を、キャロルも柔らかい笑みをそれぞれ浮かべて夢子へ返事をする。かつてと違い今の夢子は言葉を発する事が出来る。それもあり、より一層頑張る姿を見せる意味があると二人は感じていた。
「みらー」
「ん? どうしたんだぜ?」
姉二人が再び仕事へと意識を向けたのと同時に、夢子がミラアルクの名を呼びながら手を伸ばす。それに小さく笑みを返してミラアルクは夢子の手を優しく握る。
「すきー」
「っ」
無垢な笑顔と声で告げられる、純粋な好意。それは女性には母性を、男性には父性をそれぞれ活性化させるものだ。
ミラアルクもその言葉に胸を打たれ、今まで見せた事のないような慈愛に満ちた表情で夢子の事を見つめる。
「そっか。ウチもだぜ」
「えへー」
手から伝わる小さな温もり。その頼りなさとか弱さに守ってやらなきゃと、そう思うミラアルク。まさにそれは母の気持ち。目の前の幼い命を愛おしく思い、自分が守らねばどうするという気持ちだ。
(あー、ヤバいぜこれ。何で誰もが赤ちゃん欲しいって言い出してるか分かっちまった。ウチも、今、欲しいってなってるぜ)
無邪気に笑みを向けて甘えてくる夢子の姿に慈母の微笑みを浮かべていると知らず、ミラアルクは握った小さな手を優しく握り返す。
さて、ミラアルクが母性に目覚めだしている頃、ナスターシャの研究室では久方ぶりに白衣姿となったヴァネッサがナスターシャの傍でモニタを見つめていた。
「と、こんな感じで現代の錬金術も科学とそこまで変わらないんです」
「キャロルから簡単に聞いていたのとはまた違うのですね」
「はい。シンフォギアの詳しいデータは知りませんが、おそらくファウストローブとそこまで変わらないかと思います」
「そうですね。きっとそうでしょう」
どうやらファウストローブに関しての話をしていたようだ。キャロルのファウストローブとサンジェルマン達のファウストローブは、ヴァネッサからすれば似ているが異なる物と認識していた。
その一番の理由はその展開法にある。ダウルダブラは手元にない状態から展開出来、しかも身に纏うだけのいわば防具だ。
それに対してラピス・フィロソフィカスは手元にスペルキャスターと呼ばれる物がなければ展開出来ず、しかも鎧と同時に武器でもあるため、展開した後スペルキャスターが破壊されるもしくは破損する可能性がある。
どちらが優れているかと言えばラピス・フィロソフィカスだが、欠点が少ないという点ではダウルダブラに軍配が上がる。
よって、キャロルの方が本当の意味でファウストローブであり、サンジェルマン達の方はローブだけではないというのがヴァネッサの考えだった。
「でも、そのファウストローブの技術がシンフォギアへ組み込まれているなんて」
「ですが、それもエルやキャロルがいればこそです。そして今は貴女が来てくれました。もうギアなどの力が必要ない事を願っていますが、逆に言えば必要となった際に備えておく事も重要です」
「はい。私がパヴァリアで得た事の全てをここで出し切ります」
凛とした表情で言い切るヴァネッサへナスターシャも静かに頷く。と、その時ドアが開いた。
「お義母さん、今大丈夫ですか?」
「シキさん?」
「ああ、今日は早いのですね」
やってきたのは日課となっている成分献血などをしに来たシキだった。まだそれが頭に入っていないのでヴァネッサは小首を捻るも、ナスターシャはいつもの事だとばかりに笑みを浮かべていた。
と、そこでナスターシャは良い事を思い付いたとばかりにヴァネッサへ視線を向ける。
「丁度いいですね。ヴァネッサ、貴女もついてきてください。意見も聞いてみたいですし、何より私や了子さんよりも効果を実感出来そうですから」
「はい?」
理解出来ないヴァネッサと違い、シキはそれだけでナスターシャが何を考えているかをある程度察していた。
(ああ、ヴァネッサをこれからあの人の代わりにしたいんだろうな)
献血を受ける際、ナスターシャと医療スタッフが一人の二人体制なのだが、ある意味個人的な試みにも近い事へスタッフの手を借りる事にナスターシャは申し訳なさも感じてはいたのだ。
こうしてヴァネッサはナスターシャの助手としてシキの献血作業を手伝う事になる。これが、思わぬ事態への切っ掛けになると知らずに。
「では、後は任せました」
「はい」
ナスターシャ教授が出て行ったのを見届けて、私は小さく息を吐いて後ろを振り返る。そこには眠るようにベッドで横になるシキさんがいる。
私は、今後ナスターシャ教授の助手としてここS.O.N.Gで働く事となっている。ナスターシャ教授も優しい人格者で、私の事を了子さんから聞いている事もあってか開口一番こう言われたのだ。
―――了子さんから貴女が優秀な研究者だと聞いています。ですが、私は貴女を特別扱いしません。しない上で助手として来てもらっています。その意味を分かってもらえますね?
あれに勝る信頼と責任の与え方はないだろう。ちゃんと話した事などそこまでない。勿論会った事はあるし自己紹介などもしている。だけど、研究者としての話なんて一度もした事ない。
それでも、了子さんからの評判と意見に私と接した時の印象から受け入れてくれたのだ。あの最後の意味を分かってもらえるかとは、了子さんの私への信頼と、ナスターシャ教授の私への信頼を裏切らないで欲しいという事だろう。
「……厳しいけど優しい人、か。シキさん達の言う通りの人だわ」
みんながマムと呼ぶ訳が分かる。何て母性に溢れた人なんだろう。ただ優しくするのではなく、本当に相手の事を考えて接するんだ。例えそれで自分が嫌われ憎まれてもいいと。
「私も、いつかマムと呼ばせてもらえるかしら?」
きっとエルザちゃんはすぐにでも呼べるはずね。ミラアルクちゃんは、まだ無理かしら。そういえばキャロルやエルちゃんはグランマって呼んでたから、エルザちゃんも呼ぶならそっちかしらね。
そんな事を考えて、私はシキさんへ近寄った。
「シキさん、気分はどうですか?」
「ん~……悪くはないよ」
そう言ってシキさんは優しく笑みを見せた。その笑顔に私の胸が高鳴る。ああ、本当に恋すると人ってこんなにも変わってしまうのね。今の私は、シキさんと一緒にいるだけで幸せを感じるもの。
すると、シキさんが私を見つめて小さく苦笑した。そして左腕を動かして手招きしてくる。何かしら?
「どうかしました?」
「ん。もうちょっと近くへ。で、耳を貸してくれる?」
言われるまま近付いて顔を寄せた瞬間、シキさんの左腕が私の顔の向きを変える。直後に触れる唇。
「……な、何するんですか」
「嫌だったかな?」
悪戯を成功させたように笑われると、怒る事なんか出来ない。それどころか嬉しくなってしまうのが今の私。顔が熱を持ってくるし、胸の鼓動は早くなってしまう。
「ズルいです、それ。そんな事をそんな顔で言われて、嫌なんて言えるはずないじゃないですか」
「言えるんだよね、それが。例えばクリス」
「それ、照れ隠しなだけで本音じゃないって分かってますよね?」
「勿論」
「もうっ!」
本当に不思議な人だ。大人に見える時もあるのにこうして子供みたいに見える時もある。本当に、不思議で大好きな人になってしまった。
肌を重ねたからって言うのもある。だけど、それ以前にやっぱり第一印象もあるんだと思う。
私達の事を聞いて怒りを抱いてくれた事。それを何とかするために神の力を迷う事なく使ってくれた事。そして、それが上手くいった時に自分の手柄じゃなく私達のこれまでの頑張りの結果だと言ってくれた事。
それらに私はきっと心惹かれ始めていたんだと思う。だって、そうじゃなかったらあんな光景を見て抱かれたいなんて思わないもの。
「あの、シキさん?」
「ん?」
子供のように笑うシキさんへ、今度は私から悪戯を仕掛ける。ふふっ、そんな油断した顔してるとこうですよ?
「んっ……」
唇ではなく頬へキス。顔を離すと意外そうな顔で瞬きしているシキさんがいる。成功、みたいね。
「どうですか?」
「うん、ヴァネッサも結構積極的なんだなぁって驚いた。あと、嬉しいよ」
「……今度さっきみたいな事したら舌入れちゃいますからね?」
さらっと笑顔と共に嬉しいと告げられて、気が付いたら私はそんな事を言い返してた。でも、それが良かったのかもしれない。シキさんは驚く事もなく、むしろニヤッと笑ったのだ。
「さっきみたいな事しないと舌を入れてはくれない?」
ドクンと、鼓動が脈打った時、何故か妙な感覚に陥った。例えるなら、そう、喉が凄く乾いて仕方ないみたいな感じだろうか。
気付いたら私はシキさんへ近付いて舌を伸ばしていた。するとシキさんも舌を伸ばして絡めてくれる。
二人きりの室内に響く淫らな水音。それを聞いていると勝手に体がシキさんを求めるように準備を始めてしまう。
唾液を交換しているだけで私の子宮は疼き出し、乳首が勃起を始める。ヴァギナは愛液を流してペニスを、いえチンポを入れて欲しいと叫んで私を急かすのだ。
キスを切り上げると私とシキさんの間に透明な糸が出来て落ちる。見つめ合う私とシキさん。その眼差しは、多分熱くて粘ついている。
「シキさん、私、はしたない女になっちゃったみたいなんです」
「そうなんだ。でも、気にしないよ。俺はどんなヴァネッサでも受け止めるし大好きでいられる自信があるから」
「っ! シキさん……」
ほんの少し前まで子供のように笑っていた人は、もう大人の男の顔をしていた。私は静かにドアへ近付きロックをかける。施錠した事を告げる電子音を聞くと同時に私は着ている物を脱いでいく。
白衣を、上着を、スカートを、身に着けている物を一枚一枚脱いでいく度にシキさんからあの匂いが強くなる。それは私の好きなあの匂い。女を狂わせるあの雄の匂い。
「綺麗だよ、ヴァネッサ」
裸になった私を見て、シキさんが噛み締めるようにそう褒めてくれる。この肌の色を嫌がった時もあったけど、今は良かったと胸を張れる。
だって、シキさんの回りには私のような肌の女はいない。それが私の強み。シキさんは私を精液で化粧しながら言っていたもの。
―――褐色肌へ射精するのってヤバい程テンション上がるなぁ。
私がゆっくりと近付いていくと、シキさんはさっきみたいに手招きしてくれる。だけど、それが狙っているのはさっきのようなキスじゃない。
「んっ……ああっ……」
私の胸をシキさんの大きな手が揉みしだく。やわやわと優しく、だけどしっかりと揉んでくるの。時々乳首を触って私をより感じさせようとするのを忘れないで。
「あっ……ああっ!」
しばらく胸を揉んでいたシキさんだったけど、舌を這わせてきた。それが乳首へ触れて声が抑えられずに思わず大きな声を出しちゃった。
それにシキさんが気を良くしてそこから舌が乳輪を舐め回し始める。要は焦らして焦らして不意を突く形で乳首を舐めるつもりだ。
「レェ~……ヴァネッサのおっぱいは甘いなぁ」
「そ、そんな事ないですからぁ。ひゃんっ! あ、甘噛みズルいですっ。声出ちゃう……っ!」
「出しちゃえ出しちゃえ。ほら……カリッ」
「あああああっ!! ……ぁ」
甘噛みと同時に流される神の力。されてもいいように心構えしてたけど、こんな合わせ技耐えられるはずがない。
快感と同時に感じる温もりと喜び。それが脱力させてきて、更に恥ずかしい行為を私へ強いる。チロチロと始まったそれは、凄まじい解放感と共に強い快楽を与えてくれた。
そして、漂うアンモニア臭。そう、私は失禁させられてしまったのだ。
「あーあ、ヴァネッサ? もう大人なのにおもらしなんてダメじゃない……かっ」
「んひぃっ!」
い、いきなり乳首を強く引っ張られたぁ! なのに、なのに気持ちいいのぉ! 恥ずかしくて痛くて泣きそうなのに、私の顔は勝手に笑みを浮かべてしまう。
だって、乳首を引っ張りながらシキさんがあのあったかいものを流してくるんだものぉ。痛いのに幸せなんて感覚があるなんて知らなかった。知っちゃダメな事教えられちゃったぁ♡
シキさんはそんな私の反応で心の中を察したのか、痛みと快楽を同時に与えてきた。私をダメにして、自分だけの女に、雌にするように。
あの時言われた言葉が甦る。私の運命の相手がいるとしても、シキさんはその相手へ私が行かないようにしてみせると言った事を。
それが、きっと今の行為なんだ。シキさんしか出来ない快感を覚え込ませ、私が離れられないように快楽の鎖で縛りつけているのね。でも、ああ、その締め付けが心地良い。
「し、シキさぁん♡」
勝手に声に甘さが乗る。媚びるような声が出る。でも、それは当然だ。だって、シキさんは最愛の人で、私にとっては運命の人だもの♡
「何かな、おもらしヴァネッサ」
「ああんっ♡ そんな酷い呼び方しないで♡ それと、乳首クリクリしながら神の力流しちゃ嫌ぁ♡」
(どうせ流すのなら子宮へ流してもらえ)
ふと頭の中で声がした。私のようで違う声。でも、不思議とそれに抗う気が起きない。それどころかその声に促されるまま、私はシキさんへ見えるようにヴァギナを見せつける。
ラビアを指で開いてシキさんのオチンポを誘う。ああ、分かる。シキさんの視線が私のヴァギナの、ううんオマンコの奥へと注がれてるのが。
(さあ、そのままそこへ子種を注いでもらえ)
「シキさん、オチンポ入れてぇ♡」
言いながらシキさんへお尻を向けて吐き出すようにすると、後ろで唾を飲み込む音が聞こえた。それと同時にファスナーを下げるような音と、あの堪らなく好きな匂いも。
―――たっぷり中に注いでもらわないと。シキさんの精液でお腹いっぱいにしたいわぁ♡
ギシギシという音に紛れてジュプジュプという音やパンパンという音が室内に響く。
その音を出している一番の原因であるヴァネッサは、ベッドに横たわるシキの上に馬乗りとなり、その乳房を大きく揺らしながらだらしない表情で喘いでいた。
「あっあっあっあっ♡ ち、チンポ凄いぃ♡ ずっとぉ♡ ずっとオマンコの奥当たってぇ、子宮をガンガン揺らしてくれるのっ♡ 好きぃ♡ このオチンポ大好きぃぃぃぃぃっ♡」
白目を剥きそうなぐらいに快楽を貪るヴァネッサだが、そんな彼女をシキはただ眺めるだけ。それがヴァネッサの興奮を煽ると思っていたのだ。
「すっかりドスケベになったねヴァネッサ。オマンコやオチンポって言うのを恥らってたと思えないよ」
「だ、だってぇ♡ 全部シキさんチンポがいけないのぉ♡ こんな気持ちいい事を教えられたら、女なんて簡単にスケベになっちゃうのっ♡ チンポの事しか考えられない女になるしかないんだからぁ♡」
「そうだね。初めての時に妹分二人を忘れてチンポへ夢中になったもんな」
「そうなのっ♡ 私、チンポの事しか考えられない女にあっさりされちゃったのぉ♡」
「そうだね。今のヴァネッサはどんな女なのかな?」
「っ♡」
「おっ……」
その瞬間、ヴァネッサの動きが止まる。それと同時に膣壁が痙攣するかのような強烈な締め付けを起こした。
シキの問いかけにヴァネッサが強い快感を得た証拠である。それは即ち、彼女がその問いの答えに性的快楽を覚えるという事でもあった。
「さ、ヴァネッサ、答えるんだ。今の自分がどんな女なのかを」
細かに震えるだけで中々口を開こうとしないヴァネッサへ、シキはSっ気たっぷりの笑みを浮かべてそう迫る。それにまたヴァネッサの膣壁が動き、シキのペニスを締め上げる。
「わ、私は……」
「私は?」
「今の私はぁ、シキさんとセックスする事が一番の幸せのドスケベ女です♡ いつでもチンポを咥え込んで、ズコズコパコパコして欲しいって、そんな事ばかり考えてしまう女になったのぉ♡ 許されるなら、誰にもシキさんを渡さず独占したいぐらいっ♡」
「俺を? チンポじゃなくて? 他の男の中には俺よりもチンポ凄いのいると思うけど?」
「いやぁ♡ 他の男じゃ嫌なのっ♡ チンポが凄いだけじゃダメぇ♡ シキさんが、シキさんじゃなきゃダメなんですっ♡ チンポも心も大きい人じゃなきゃ、あったかい人じゃなきゃ私は嫌ぁ♡」
「そっか。ありがとうヴァネッサ。お礼に、ほらっ」
「ああんっ♡ 出てるぅ……私の中にシキさんのチンポミルクいっぱい出てるのぉ♡」
子宮へと放たれる精液の熱に嬉しそうな声を出してヴァネッサは笑みを浮かべる。そこに才女の彼女はいない。いるのは、男を、雄を教えられて堕落した一匹の雌だけである。
騎乗位にも関わらず、しっかりと子宮内へ届くシキの射精にヴァネッサの本能は歓喜の咆哮を上げ、もっと出せとばかりにペニスを締め上げた。
(まだだ。まだ足りぬ。お前はこの者の子が欲しいのだろう? ならばその身を我に委ねよ。さすればその望み、叶えてやる)
ぼんやりとした思考のヴァネッサに聞こえる不思議な声。それに応じるようにヴァネッサは目を閉じて体を倒すとシキへ顔を近付ける。
「ヴァネッサ? 大丈夫?」
「ええ。ねぇ、シキさん? 神の力って、あると色々と面倒ですよね?」
「え? まぁ、そうじゃないとは言えないけど……」
「じゃあ……私に任せてください」
少し様子がおかしい。そうシキが思った次の瞬間だった。
―――全て吸い尽くしてやろう、その力……っ!
ヴァネッサらしからぬ口調で彼女が喋ったかと思うと、膣壁によるシキのペニスをねじ切らんとするような締め付けが始まったのだ。
「ヴぁ、ヴァネッサ!?」
「ふふっ、何も心配はいらぬ。心置きなく吐精せよ。お前とこの者の子と引き換えに、その身に宿した過ぎたる力を吐き出してな」
そう告げるヴァネッサの額には、見慣れぬ紋章のようなものが浮かび上がっていた。
それを見たシキは自身の中にある神の力を解放するように強く意思を働かせると、右腕に刺さっていた針を念動力で抜き取ってヴァネッサの事を睨み付ける。
「お前は誰だっ! ヴァネッサに何をしたっ!」
「答える義務などない」
「そうかよ……っ! ならっ!」
「何をするつもりだ?」
会話では事態が進展しないと踏んだシキは、ならばとヴァネッサの胸へ両手を伸ばして人差し指と親指で二つの乳首を摘んだ。
「こうするんだよっ!」
「ん? はぁん♡」
両乳首から流れる神の力。それが快感と同時に強い幸福感をヴァネッサの体へ与える。シキはヴァネッサの体を操っている存在の正体を薄々勘付いていた。
(きっとあの腕輪の持ち主だ。どうやってヴァネッサの体を乗っ取ったのか分からないけど、多分俺が神の力を使って体を元に戻したのが原因だと思う。どうやって追い出すかは分からないけど、このまま好きにさせるのは不味い!)
ヴァネッサの体へ神の力を流すのは逆効果かと思われたが、シキはそれでも何とか出来ると考えていた。
それは、これまでやってきたその行為の結果にある。神の力を流されたヴァネッサの乳房は、やがてその乳首から母乳を流し始めたのだ。
神の力を宿した母乳を。
「はむっ」
「なっ……ああっ! す、吸われる……力が吸われてしまう……っ♡」
ヴァネッサの体を操っている存在は一つ失念していた事があった。それは、シキと事を構える状況に二人きりで邪魔の入らない場所を選ばない事だ。
でなければ、今のようにスケベな行為に持ち込まれてシキが主導権を握り続けてしまう。更に、女の体では床でシキに勝てるはずもない。
だが、ヴァネッサの体を乗っ取っている存在はその事を知らなかった。ヴァネッサがシキと交わり感じていた快感などを共有出来なかったためである。よって、もう既に結果は決まっていた。
「っぷは、何を考えてるか知らないけど、俺の大事な人を返してもらうぞっ!」
(シキさん……っ!)
「っ!?」
シキの力強い言葉にヴァネッサの深層意識が反応し、体を乗っ取っている存在へ動揺を与える。完全にヴァネッサの体を制御している訳ではないが、それでもたった一言で深層意識を揺さぶるシキに驚きを抱いたのは間違いない。
それは神の力に関係ない想いの力だったのだ。まだ深い仲となって間もないに近いシキとヴァネッサだが、それでさえもその繋がりが強い事を示す出来事だ。ヴァネッサにとってシキがどれ程大きな存在となっているかが分かるだろう。
隙を見せた相手にシキはここだとばかりに上半身を起こした。体位が騎乗位から対面座位へと変わり、シキの顔がヴァネッサへと迫る。
「んっ?!」
思いがけないシキの行動に反応が遅れるヴァネッサ。そんな彼女へシキはすかさずキスを、それもディープキスをした。更に神の力を流し込みながら。
(こ、小癪な真似を……っ!)
だが、反撃らしい事は出来ない。何せヴァネッサの中にある性的行為の情報や知識はそう多くはなく、しかもシキから教えられた事が中心だった。故に受動的な事ばかりだったのだ。
受け身ではなくヴァネッサから出来る行為は交わっている時点でほとんどないのもある。これもヴァネッサを操っている存在の失態であった。せめて挿入していない時に行動を起こすべきだったのだ。
シキのペニスと舌、そして手から送り込まれる愛情たっぷりの神の力。その快楽はヴァネッサの中にいる謎の存在へ、生まれて初めての女としての快楽と幸せを否応なく叩きつけて刻み付けて行く。
馬鹿な。こんなはずでは。そんな焦りと恐怖がヴァネッサを操る存在を包んでいく。かつてはその力で地球を我が手にしようと迫った存在も、閨事、それも多くの女性をものにしてきたシキ相手ではまさしく生娘同然だった。
「んんっ♡ や、止めろっ♡ ち、乳首を摘むなぁ♡ ぼ、母乳となって力が抜けていくぅぅぅぅっ♡」
威圧しようと出す声は、艶と甘さを含んでシキを興奮させる要素にしかならず、無意識の内に自らに起きている事を教えてしまう。
子宮の入口を捉えて離さないペニスはゆっくりとその入口を緩めており、彼女が気付かぬ内に最後のトドメを迎えようとしていた。
「可愛い声出すじゃないか。腕輪の主さん?」
「ぶ、無礼者ぉ♡ 我と知っていながらこのような振る舞いをするにゃぁぁぁぁっ♡」
「はい、おっぱいビュービューしような」
言葉を途中で遮るようにシキがヴァネッサの乳首を弄る。まるで乳搾りをするかのようなそれに、勢いよく母乳が噴出してヴァネッサの中に流れた神の力を排出させた。
その際に強烈な快楽を生じさせ、ヴァネッサの口から何とも情けなく甘い声を上げさせて。
「で? 何だって?」
「き、貴様ぁ♡ 調子に乗るなよ……所詮貴様など我が完全に復活すれば敵ではないのだぁ♡」
「そっか。じゃ、絶対に阻止しよう。て訳で、よっと」
「何をするつもりっ?!」
まるで太い杭を打ち込まれたかのような感覚がヴァネッサの体へ走った。そしてそれを認識した時に、図ったかのように熱い何かが放たれる。
ヴァネッサの体の中から溶かすようなそれは、シキの精液であり神の力をたっぷりと宿したエネルギーでもある。それを待っていたはずの謎の存在は、何故か吸収する事も出来ず白目を剥いて絶頂していた。
(ダメっ! これは貴方なんかには渡さないっ! これはシキさんの愛だものっ! 私への想いの結晶だものぉ!)
(な、何だと言うのだ!? この体が、私の意とは別の形でこの遺伝子情報を欲している、だとっ!?)
エネルギーとして取り込もうと企てていた謎の存在だったが、ヴァネッサ自身はそれを精子として受け止め受精を望んでいた。そのため、二つの意思がぶつかり合いケンカをしていたのだ。
それも、本来であれば起こり得ない現象。ヴァネッサがシキに愛され、また愛するようになったからこその強い想いが起こした小さな、けれど大きな奇跡だった。
その結果、ヴァネッサの中に注がれた精液は子宮内で留まり吸収されていくも、それは急激な速度ではなくむしろ味わうかのようなゆっくりとしたものとなった。
それは、ヴァネッサを操っていた存在にも予想外の影響を与える事となる。
(な、何だこの温かさは? これが、これが愛情と呼ばれるものなのか?)
精液に込められたシキの想い。ヴァネッサを守りたいという想いや夢子のような可愛い子を産んで欲しいという想い。それらの強い気持ちがヴァネッサを通じて謎の存在にも流れ込んだのだ。
―――よかろう。ならばそれさえも飲み込んでくれる。
ただし、その熱はまだその存在の考えや気持ちを変えるまでには至らない。だが、結果としてヴァネッサの額から謎の紋章のようなものは消え、シキの腕の中へ彼女は戻る。
その体内に蠢く不穏な者を宿したままで……。
「ミラさん、どうですか?」
「ん? ん~……」
シキがヴァネッサに起こった事の顛末を弦十郎へ報告していた頃、ミラアルクはキャロルやエルと共に本部内にある食堂にいた。
時刻は昼時ともあり、食堂は活気と熱気に包まれている。その一角に座り、三人は食事を取っていたのだ。
「美味しいけど家で食べる方がいい?」
「んっ」
我が意を得たりとばかりに頷くミラアルク。キャロルはそんな反応に笑みを浮かべて隣のエルへと顔を向けた。
「やっぱりそう思うみたいだよ」
「そっか。でも、嬉しいな」
「ごくんっ……どうしてだぜ?」
食べていた豚の生姜焼きを飲み込んで、ミラアルクは目の前で笑うエルへ問いかける。何が嬉しいのかと。食堂の食事よりもシャトーでの食事がいいという自分の感想の何がエルの笑顔に繋がったのか。それがミラアルクにはまだ察する事が出来なかったのだ。
「えっと、ミラさんも僕らと同じで家のご飯が一番だって思ってくれてるんだなぁって」
「母さんやグランマもそうなんだ。勿論、私や父さんも」
そこでミラアルクも気付いた。食堂の方がメニューは豊富で味もいい。だけど、それでもシャトーで食べる食事の方がいいと思う事。その理由は何か。そうなれば今のミラアルクはちゃんと理解出来たのだから。
「……そっか。みんなで同じ物食べるってだけじゃない。色々話しながら楽しく過ごせる。それはここじゃ難しいんだぜ」
「そうなんです。母さんとグランマは今日は一緒には食べられないって言われてしまいましたし」
「夢子がこういう食事をするのはまだまだ先だしね」
「でも、夢子だったらそれも普通より早く実現させそうで怖いぜ」
ミラアルクがそう言って白米の上へ豚の生姜焼きを乗せて笑う。キャロルとエルも彼女の意見に賛成のようで、苦笑しながら頷いて手にした箸を動かす。
一方、了子とナスターシャは医務室で眠るヴァネッサの傍にいた。
「あの南極で見つかった遺体の主が、人の中で復活の機会を窺っていたとは」
「それも、あの人の中にある力を狙ってくるなんて。まぁ、ただ不幸中の幸いだったのは行為を利用しようとした事ですわね」
その瞬間、了子とナスターシャは同時に苦笑する。多少マシになったとはいえ、まだ医務室内には情事の残り香があったのだ。
「まったくです。シキさんが言うには、どうもヴァネッサからそういう事を望んだようですし」
「もしかすると、そこから既にカストディアンの制御下だったのかもしれませんわ」
「それで、フィーネは何と?」
「……一つだけ不可解な点があると」
その言葉にナスターシャが無言で続きを促した。今回起きた事に似た事を行ったフィーネ。それが不可解と述べる事にナスターシャは心当たりがなかったのである。
「何故ヴァネッサの魂を塗り潰さなかったのか。フィーネはそこが理解出来ないと言っています。それだけの力がなかったのか。もしくは塗り潰さないあるいは塗り潰せない理由があったのかと」
「……言われてみればそうですね。フィーネでも出来た事が何故カストディアンとみられる存在に出来ないのか。たしかに不可解です」
「なのでフィーネはこう言っています。ヴァネッサを使って復活しようとしていたのではないのかもしれない、と」
「復活に使う存在は別にいる? では、ヴァネッサを使ったのは……」
「ええ。おそらく神の力を集めるための器。だから塗り潰す必要がなかったのかもしれません」
感情を殺して告げられた一言にナスターシャは言葉がなかった。分かっていても、やはりそこに神と呼ばれる所以があるのだと感じてしまったのだ。
人を人として扱わず、自分達の便利な道具程度にしか見ていない。その傲慢さこそが神話の時代から描かれてきた神の持つ面の一つであり、一種の事実でもあるのだとナスターシャは改めて痛感していた。
「んっ……」
そんな時、意識を失っていたヴァネッサが小さく身じろきをしてゆっくりと目を開けた。
「気が付きましたか?」
「……ナスターシャ教授? それに了子さんも……」
「貴女はカストディアンと思われる存在に体を乗っ取られてたの。覚えてる?」
「……何となくですけど」
ぼんやりとした口調で返すヴァネッサだったが、そこで目を見開いて体を起こす。
「し、シキさんは!? シキさんは無事なんですか!?」
「大丈夫よ。あの人がスケベな事で負けるものですか」
「了子さん、その言い方はどうかと思いますよ。まぁ、私も同意ですが」
「マムもいいますね」
「どれだけの付き合いになると思っていますか? それに、義理とは言え私はシキさんの母にもなりましたから。これぐらいは言っても構わないでしょう」
さらりとそう言い切るナスターシャに了子とヴァネッサは揃ってキョトンとした顔をしたかと思うと、すぐに笑い出した。口元を隠すように笑う二人にナスターシャも小さく笑みを浮かべる。
室内に三つの笑い声が小さく響く。そうして笑いも収まったところでヴァネッサがふと思い出したかのように了子へ顔を向けた。
「あの、夢子ちゃんは?」
「夢子ならおねむになったらしくて私の研究室で寝てるわ。でもどうして?」
「あ、その、実は……」
そこでヴァネッサが教えたのは神の力を流された影響で母乳が出る事。そのため、可能なら夢子に飲んでもらいたいとヴァネッサは告げた。
初めて聞く内容に了子だけでなくナスターシャも驚いたものの、何故それをシキが黙っていたかを瞬時に察して苦笑いを見せる。
そしてならばと了子が夢子を研究室から医務室へ連れてきたのだ。すると、医務室へ入るなり夢子は目を覚まして不思議そうに周囲を見回した。
初めて訪れる場所に興奮しているのだろうと思い、三人はその周囲をキョロキョロと見回す夢子を微笑ましく見つめていたが。
「じゃ、ここで面倒見ててくれる?」
「はい」
「何かあればすぐに呼んでください」
「ありがとうございます」
検査の結果ヴァネッサに異常が見られなかった事もあり、了子とナスターシャはヴァネッサに夢子を預けて医務室を後にした。
二人を見送り、ヴァネッサは検査着をはだけさせて胸を露出させると夢子の口を乳首へと近付ける。その瞬間、夢子が嬉しそうに乳首へと吸い付きそこから出る母乳を飲み始めたのだ。
その額に謎の紋章のようなものを浮かび上がらせて。そしてそれはヴァネッサもだ。
―――ふふっ、たっぷりと飲むといい。お前の願い、叶えるために……。
やはり潜伏していた腕輪のカストディアン。その目的がシキの中にある神の力である事から復活にはそれが不可欠であると結論が出る。
ただ、何故ヴァネッサの体を使って復活しなかったのかという疑問は尽きず、シキ達は頭を悩ませる事となる。
そんな中、遂にラストを迎えるツヴァイウイングのツアー。そのファイナルにマリアがゲストとして現れ、ドライディーヴァのライブをシキ達も観劇する。
そしてアンコールで歌われたAppleに誰もが息を呑む中、遂に潜んでいた悪意が目を覚ますのだった。
淫姫絶頂したいフォギア「今、もつれた糸を断ち切って」
「そんなの、そんな事ってないよっ!」