あちこちから煙や火の手が上がる中、六人の女性達が険しい表情で前を睨むように見つめていた。
「一体何だ、あれは。響達のギアが以前の形状へ変わったが……」
「分からない。私達も見た事がない存在だ」
二人の翼が同じようでどこか異なる天羽々斬のギアを纏って前を見据える。そこには不気味に揺らめく黒い影がいた。
形状はどこかノイズを模しているが、カルマ・ノイズとは違い影でしかない。斬り付けてみた事もあるが感触はなく、ダメージさえも与えらなかったために二人の翼は気味悪そうな表情を浮かべている。
そしてそれは二人の響も同様だった。打撃も当然効果なく、しかも殴った瞬間に一気に全身の毛穴が開いて鳥肌が立った上に寒気までしてきたのだから。
しかもギアとの適合率が勝手に低下してしまい、根幹世界の響は一気に一番初期の頃のギアへ戻り、もう一人の響さえキャロルとぶつかった時の頃のギアへ退化していた。
「よく分からないけどあれは不味いと思いますっ!」
「翼さんっ! 直接触れるのは絶対止めた方がいいですっ!」
脱力感にも近い寒気を感じ、二人の響は注意喚起を行った。アームドギアで攻撃した翼は今のところ自分達のようになっていないからこその注意だ。
「神獣鏡の攻撃も効いてないみたい……」
「錬金術もだ。一体何だあいつは」
未来と共に後方支援を行っていたキャロルはダウルダブラを展開しつつも見た目を変化させていなかった。つまり思い出の焼却をするつもりはないという事なのだが、その判断は正しかったと彼女はどこかで感じていた。
(あいつは直接攻撃では倒せない気がする。あるいは、今の状態は不安定かもしれない。底知れない不気味さもあるし確実にまともな存在じゃない)
じっとりと流れる汗を感じ、キャロルは睨むように前を見つめる。すると謎の黒い影へ一斉に銃弾やミサイルが殺到した。
「これは……」
「こっちのクリスは待機しているはずだから……」
「向こうのクリスが戻ってきたかっ!」
「っと、待たせたな」
後衛二人の前に降り立ち、黒い影へアームドギアを向けるクリス。だが先程の攻撃が一切ダメージとなっていない事を見るやその目付きを鋭くした。
「チッ……やっぱノーダメか」
「雪音っ!」
「クリスちゃん、セレナさんは?」
「あいつは向こうに残ってる。後輩達と一緒だっ!」
銃弾の雨が黒い影を直撃するも、それが全て吸収されるように消えてしまう。まるで底なし沼かブラックホールだ。そんな風に思いながらクリスは表情を歪めたままアームドギアを下ろした。
「雪音、あれをどう見る?」
「忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
「はっきり言うなら動く無ってやつだ。何をやっても意味がねぇ」
「成程動く無か。言い得て妙だね」
キャロルはそう言いつつ右手をかざして黒い影へ足止めを試みる。だがその錬金術の足かせとなる物は黒い影に触れた途端力を失うように消えた。
「……どうやら奴はある意味ノイズなどと似ているらしい」
「似ている?」
「存在が固着していないんだ。あるはずなのにない。いるはずなのにいない。奴はおそらく攻撃している時だけ完全にこの場に固着している。それ以外はあいつの体らしき部分は虚無の入口のような状態のはずだ」
「では立花の言った直接触れるのが不味いというのは当たっていたのか……」
ゆらゆらと動く黒い影を見つめ、七人はどうしたものかと攻めあぐねる。そんな彼女達を嘲笑うように黒い影はその場にあった車や電灯などに触れては、その触れた部分だけを綺麗に消滅させていく。
その不気味な現象に誰もが表情を歪め、けれど下手に手を出せば被害が大きくなるだけと分かっているため何も出来ない。
「っ!? ギアが……」
「立花のギアが……解除された?」
「分解されたのか!?」
「それなら私もそうなるはずだけど……」
「響の方はギアがまた変わっただけだね」
何故か根幹世界の響のギアが消えてしまい、もう一人の響はギアが初期状態へと退化してしまったのだ。
と、その時黒い影が何かに気付いたように顔に当たる部分を上へ向ける。それに気付いて響達もそちらへ顔を向けて……
「これならどうだっ!」
そこにいたシキの姿に目を見開いたのだ。彼はその右手から神の力と思われる光線を黒い影目掛けて放つ。それは黒い影に吸い込まれてこれまでと同じ結果に終わる――かと思われたのだが……
――邪魔が入ったわね……。でもこれで響は……。
その白い輝きを吸収した黒い影が急によろめいたと思うとその場から薄れて消えていったのだ。
あまりの事に誰もが言葉を失う中、シキが響達の目の前へ降り立って息を吐いた。
「どうやらシェム・ハの言った通りだったみたいだな」
「シェム・ハ? 父さん、シェム・ハは何て言ってたの?」
「うん、みんなの攻撃が通じてないってのは報告されてたからね。それを了子達が話し合ってるのを聞いてシェム・ハが提案してくれたんだ。神の力を使った攻撃なら通じる可能性があるって」
「そうか。埒外物理攻撃」
「成程なぁ。この世の枠にはまらねぇ奴には常識はずれの攻撃をってか」
「じゃあ今ので倒せたんですか?」
「いや、それはどうだろう? 何となく今ので撤退しただけな気もするよ」
一度として目の前から視線を外す事無くシキはそう告げ、その手に光を集束し始める。そしてそれを地面へ押し当てると光が周囲へ広がり、その場を見事に元通りにしてみせたのだ。
まさかの光景に言葉を失う旧二課の三人に対し、キャロル達はシキらしい行動に笑みを浮かべていた。
「さっすがシキさん。被害ゼロにしちゃった」
「疲れてません?」
「さすがに疲れてはいるよ。でも歩けない程じゃないから」
妻でもある響と未来がシキへ駆け寄る中、翼は本部からの通信を受けていた。
「はい、現場はシキさんが修復してくれました。なので物的被害はゼロに等しいかと」
『そうか。後の事はこちらに任せてお前達はシキと共に一旦帰還してくれ』
「了解。……シキさん、司令が私達と共に本部へ来て欲しいと」
「了解。そっちもいい?」
「は、はい。立花達も構わないな?」
「おう」
「勿論です」
こうしてシキ達と共に響達三人もS.O.N.G本部へと向かう事になった。そこの発令所でまず彼らを待っていたのは弦十郎によるシキへの説教だった。
「まったく、すぐに飛び出していくとはな。一応お前の力は極秘だと言う事を忘れたか」
「……すみません」
深々と頭を下げるシキを見て要家の者達は苦笑するも響達三人は困り顔をするしかなかった。何せシキがこなければもっと被害が拡大していたのだから。
「結果としてアンノウンは撤退もしくは撃破出来たが、お前の事が他国に露見すれば面倒になっていたんだぞ」
「はい、重ね重ね申し訳ありません」
「まぁ八紘兄貴やあの人が裏で手を回したから良かったものの……」
「は~い弦十郎君、そこまでにしてあげて。この人も反省してるから」
「了子君……」
このままでは夫がどんどん小さくなっていくと察し、了子が微笑みながら弦十郎とシキの間へ割って入った。
その行動にナスターシャやエルフナインが小さく笑みを零し、朔也やあおいも苦笑を浮かべる。それでもシキは頭を下げたままだったのはさすがと言うしかない。
「たしかにあの力が現存するって思われるのは面倒よ。でも、あれを使わないとどうなっていた事か。エルやマムとも話してたけど、あいつはこれまでの相手とは何かが違うわ。得体の知れない存在って言うと簡単だけど、キャロルが感じたように根本から何かが異なってるのよ」
「それはそうだろうが……」
「最悪、あそこでこの人が動かなかったら、人類は取り返しのつかない代償を支払っていたかもしれない。シンフォギア装者を失うだけじゃなく、ね」
「むっ……」
暗に要シキを始めとする要家の者達が黙っていなかったぞと了子の言葉から察し、それに関係する者として弦十郎は腕を組んだ。
何せあの場には響と翼、そして未来とキャロルがいた。更に平行世界の響と翼にクリスだ。それらが死んでしまった場合シキ達がどうするかなど考えるまでもなかった。
黙り込んだ弦十郎を見て了子は説教は終わったと判断しその場で振り返るやシキの頭を優しく上げさせた。
「了子……」
「もう終わりよ。アナタもあまり他者の目がある場所で簡単にあの力を使わないで頂戴。余計な問題が起きる可能性があるんだからね?」
「……ああ」
「うん、これでよし。じゃ、アナタはその子達と一緒に家に帰ってくれていいわ。あっ、キャロルだけ悪いんだけど」
「残るから。父さん、きっと私達もすぐ帰れると思うからミカ達にそう言っておいて」
「分かった。じゃあ先帰ってるな」
「うん」
優しく頭を撫でるシキへキャロルも笑みを返す。その親子らしい光景を見て誰もが笑みを浮かべる。
だが響達来訪者三人はすぐにその胸を無意識に押さえて複雑な表情を浮かべていた。
(キャロルちゃん、幸せそう……。要さんを本当にお父さんって思ってるんだね。何だか胸があったかいや。私達の世界でもキャロルちゃんにああいう顔をさせてあげたかったな……)
(本当にここでは見た目相応の少女と、そういう事か。そしてそうしたのは要シキさん、か。普通の父親、らしいのかもしれないな、あの人は。……何故貴方は私達の世界にはいなかったのですか? もしいてくれればこちらとほとんど変わりない未来があったかもしれないのに……)
(くそっ、あいつが普通の子供してるの見ると泣きそうになっちまう。あたし、自分をどっかで重ねてるんだろうな……。血の繋がりじゃなくて心の繋がり、か。あたしらの世界のあいつにも、そういうあったかさをくれる奴が一人でもいれば……)
先頭を歩くシキの背中を見つめながら三人は自分達と似て非なる世界の残酷さを噛み締める。届かなかった手、掴めなかった可能性。それらを全て届けさせ、掴み取った要因である男を見つめて。
自宅へ帰ったシキは出迎えに現れたエルザへ事情を説明し、その彼女の口からファラ達四人へキャロルの伝言は伝えられる事となった。
サンジェルマン達も黒い影の事を聞き、すぐさまアダムへ報告するとプレラーティとカリオストロが動き、待機していた要クリス達は再度の出現があると睨んで険しい表情を浮かべた。
「手応えはなかったんだろ?」
「ああ。やったって言うよりは効いたって感じだったし」
そう言いながらシキは腕を組む。あの最後の瞬間、彼だけがあの影の不気味な声なき声を聞いていたのだ。
(邪魔が入ったって言ってた、よな。それに響がどうのって言ってた気がするし……)
ただそれはシキ以外は聞こえていなかった。あの後軽く聞いてみたのだが彼以外は不気味な声が欠片として聞こえていなかったのだ。
ちなみに戦闘に参加していた装者達と根幹世界の未来は風呂へ向かっていてここにはおらず、シキだけがリビングに残って家族と会話をしていた。
というのも根幹世界の響が戻ってくるなり寒いと言い出したため、疲れをとるのも兼ねて入浴する事にしたのである。それに根幹世界の未来もシキに言われて同行したと言う訳だ。
「そうなると次は対応してくる可能性もあるわね」
「神の力にか? もしそうなら勘弁願いたいね。あたしやマリアは完全に戦線離脱状態なんだ」
「アンさんもデスよ。今のアタシ達は全員勢揃いが難しいデス」
「うん。ヴァネッサさんも妊婦さんだし、もうエルザやミラさんは戦場へ出ちゃいけないから」
「ウチらは別にいいんだけどなぁ」
「でもあの頃のような凄い能力はもうないでありますし、ここは調の言う通りだと思うのであります」
「私も戦えない訳じゃないけど、このお腹では……」
「止めた方がいいでしょう。もしアンのお腹の子に何かあれば皆悲しみます」
「派手に泣く事になるのは勘弁して欲しいわ。そういう事は地味な方がいい」
「そうね。敵を派手に泣かせるのは楽しいけど、身内がそうなるのは今のガリィちゃんは嫌ね」
「だナ。ミカも夢子をお姉ちゃんにしてやりたいゾ」
こうして最初こそ謎の相手についての話だったが、途中から妊娠している者達や戦闘能力を失った者達の話となり、シキは笑みを浮かべてこう切り出したのだ。
「それにさ、今のヴァネッサ達は戦う能力はなくなっても戦う力は残ってるよ。みんなが帰ってくる場所を守るっていう事も大切な戦いだし、何よりここが、家があるからみんな頑張れるんだ。だからマリアも奏もアンジェも気にしないでいい。今の君達の戦いはそのお腹の子を無事に産み落とす事なんだから」
「「「シキ……」」」
「おおっ、さすがシキだゾ。だいこくばしらだナ!」
「ありがとう。って、そういえば今夢子は?」
「子供部屋でぐっすりよ。シェム・ハと代わった事もあって疲れたみたいね」
「そっか。今夜はガリィが当番だっけか」
「そ。さて、じゃあガリィちゃんは夜勤に入るわ」
椅子から立ち上がり歩き出そうとするガリィだったが、その肩へシキがそっと手を置いた。
「俺も一緒に行くよ。寝顔を見ておきたい」
「はいはい。じゃ、行くわよ」
「行ってらっしゃ~い、だゾ。でぇ」
連れ立って去っていく二人を見送り、ミカは顔をマリア達妊婦四人へ向けた。
四人の大きくなり始めた腹部を見つめてミカは嬉しそうに頷く。誰よりもミカが夢子を始めとする幼い命へ夢中となっている。それは彼女がスコアの中で末っ子である事と、ただ破壊行為しか出来なかった頃がある事が関係していた。
今のミカは手をキャロルによって可変式に改造された事もあり、洗濯だけでなく畳む事なども出来るようになった。更にその手で夢子を抱き抱えてあやす事も出来、それによって夢子が楽しげに笑ってくれる事もあってすっかり赤子の素直さにやられてしまったのだ。
「なぁなぁ、みんなの赤ちゃんもミカ達がお世話していいのカ? それともミカ達は夢子だけカ?」
「ふふっ、そうね……私はお願いしたいわ」
「あたしも頼めるか?」
「私もお願いしたいわね。ヴァネッサは?」
「勿論私もお願いするわミカ。この子を産んだら仕事に戻りたいもの」
「了解だゾ。ミカにお任せだゾ~」
嬉しそうにはしゃぐミカに誰もが笑顔を浮かべていた。壊す事しか出来なかったミカが守る事も出来るようになり、支え助ける事も出来るようになった。それがミカも周囲も嬉しかったのだ。
その頃、女湯では二つの世界の装者七人が湯に浸かりながら意見交換を行っていた。
「では、二人共かなりの脱力感を覚えたのか?」
翼の問いかけに二人の響が同時に頷く。直接攻撃をした故に響達だけが直感的にあの黒い影の恐ろしさを感じ取っていた。
「そんなのに触って大丈夫なの響」
「う、うん。触った時はめまいもしたけどね。だからあれは絶対に良くないものだと思います。その、存在しちゃいけないって思いました……」
「そこまでか……」
「こっちの響も同意見?」
「うん。私も同じ感想かな。あれは、本当に怖いって思った」
奇しくも二人の響は揃ってその手へ視線を落としていた。まだ微かに残る黒い影を殴った瞬間の感覚を思い出すかように。
そんな二人を横目にしながらクリスが二人の翼へ問いかけるのだ。響とは違った手段で直接攻撃をしかけた二人なら何か別の事を感じ取ったのではないかと。
それに対する二人の反応はクリスが予想したよりも鈍いものだった。
「そうは言われても、な……」
「私達はアームドギアがすり抜けただけで何かを感じた訳ではないのだ」
「そうか……。でも、それである意味確信出来た。アームドギアで攻撃してもすり抜けるなら、先輩達も下手すりゃ触ってたかもしれないんだよな?」
「可能性はあったな。それが?」
「こっちと接触する。それがあの影みたいな奴の目的なんじゃねーか?」
クリスの指摘にその場の全員が絶句した。何よりこの中で唯一接触した二人の響は顔面が蒼白になっていたのだ。
「あたしが思うに、だ。あいつが撤退したのはある意味目的を達してたのもあるんじゃねーか?」
「つまり、装者との接触……」
「だがそれだけでは理由が弱い。何故こちらへ接触する必要が?」
「待ってください。えっと、この場合あの影が接触したかったのは誰なんでしょうか?」
未来の指摘にクリスが息を呑んだ。
「……そういう事か。直接攻撃じゃねーと触れる可能性は低い」
「ああ。そして無手で攻撃する立花はこちらでも私達の方でもここぞと言う時の決め手となる存在だ。それを潰そうとしていたか、あるいは無力化しようとしていたか」
その仮説を聞いて要家の未来が自分の親友へ顔を向けた。
「響、何か体に異常はない? 響ちゃんはギアを解除されてたけど」
「え、えっと、私は特には」
「響っ!?」
大きな水音を立てて未来が動く。視線の先では青白い顔をした響が目を閉じて湯船に沈みそうになっていたのだ。
すぐさま彼女は体を湯船から出されたのだが、その際響の体へ触れた者達が揃って冷たいと感じたのだ。まるで体温が失われているような、そんな感じを。
「どうなってんだよ……。さっきまで熱い湯に浸かってたんだぞ?」
「ああ、これは異常だ」
「そういえば響だけ寒いって言ってたんですよね? しかもギアが一人だけ解除されたし……」
「ならあの黒い影のせい?」
「だがそれなら何故こちらの立花は影響を受けていないのだ?」
「分かりませんけど、このままじゃ不味い気がします!」
「シキさん達を呼んできますっ!」
「私も共に行こう! 事情を他のみんなにも説明しなければならん!」
慌ただしく脱衣所を出て行く要家の未来と翼。残されたのは根幹世界からの来訪者ともう一人の響だけとなる。
「……何で私は大丈夫なんだろ」
「それが謎だよな……」
「響……」
青白い顔で長椅子に横たわる響の手を握る未来。その肩へそっと翼が手を置いた。
「小日向、案ずるな。要さんは神の力が使える上、ここにはフィーネどころかシェム・ハまでいる。きっと立花を何とか出来るはずだ」
「……はい」
そのすぐ後現れたシキが神の力を冷たくなった響へ注いだ結果、多少ではあるが体温が上がり血色も良くなった。ただ、それも最悪の状態は脱した程度であり、未だ健常とは言えないままであったが。
そのまま響はシキによって脱衣所から運び出されて大広間の布団へ寝かされた。そこへ了子達が顔を出し響の容態を確認して黙り込んだ。
「あ、あの、響はどうなんですか?」
「正直言えばまだ判断出来る程のデータがないってとこね」
「私も了子さんと同様の意見です」
代表して答えた了子へヴァネッサも同調する。シキは今も響の手を握って神の力を注ぎ続けていた。そうしていないと状態が安定しないと感じ取っているのである。
「ただ、これだけ神の力を注いでも回復しない以上危険って事は確実ね」
「本部の医務室へ運びますか?」
「いえ、それは悪手かもしれません。ずっとシキさんがこうしていないといけないのならここの方が色々と楽でしょうし」
「マムの言う通りよ。それで、シキ君の意見は?」
「俺もそうしてくれると助かるよ。本部内なら力を使うのは問題ないとしても、周囲の目もあるからまた厄介な噂や面倒事が生まれそうだし」
小さく苦笑して放った言葉だったが、それに内心で疑問符を浮かべるクリス達三人。ただそれを口にする事は出来なかった。今後のために色々と運び込まなければならなくなったために慌ただしくなったためである。
そこで本来ならシキ以外は大広間を出た方がいいのだが、未来は響の傍にいたいだろうと考えたシキが彼女の分の布団も敷いて傍で過ごす事を提案し、響が横になっている布団の左右に布団が敷かれる事となった。
ある意味で二人きりとなった部屋で未来は響の手を握ったままシキへと目を向けた。
(真剣な顔してる……。やっぱり響の状態、良くならないんだ……)
凛々しい表情で響へ視線を向け続けるシキを見て、未来は容体が好転しない事を悟って顔を曇らせて俯いた。
「気持ちは分かるけどそんな顔はしないでやって」
「え……?」
聞こえた声に未来が顔を上げると、シキは凛々しい表情のままで響を見つめていた。ただ、その目が少しだけ自分の方へ向いている事に未来は気付いた。
「俺も一度生死の境を彷徨った事がある。そこで俺を生きる側へ引っ張り上げたのは夢子の声だった」
「夢子ちゃんの……」
「そう。だから小日向さんが立花さんの事をこっち側へ、生きる側へ引っ張り続けてあげないと。一緒に落ちたら助けられるものも助けられないよ?」
最後に少しだけ笑みを見せてシキは再び響へ意識を集中する。その横顔と言葉に未来は無意識に響と繋いでない方の手を胸へ当てた。
(響を助けたいなら、私も一緒になって戦わないといけない、か……)
自分がしている事も存在も無力じゃない。そう暗に告げてきたシキに未来は力を得た気がして、再び握っていた手へ少しだけ力を込める。
「響、負けないで。私も一緒に戦うから」
その言葉にシキが小さく頷いた。
――絶対死なせないから。
自分への誓いでもあり、未来や響への誓いでもある言葉を呟き、シキは静かに告げるのだ。
「小日向さん、今夜は立花さんと寄り添って寝てくれるかな。もしかしたらそれで少しは状況が良くなるかもしれない」
「分かりました」
その少し後、夜食のおにぎりなどを持って手伝いや見張りも兼ねてファラが姿を見せる。
そこでおにぎりを食べながらシキは小さく笑みを浮かべる事になる。寄り添って眠る響と未来の寝顔を眺める事で……。
「そうか。響君が……」
あの黒い影との交戦から一夜明けた翌朝、根幹世界のS.O.N.G本部発令所に翼の姿があった。響が謎の存在との接触により危険な状態である事を弦十郎へ報告に来ていたのである。
「はい。幸い向こうには神の力を御せる方がいるので何とかなりそうですが」
「それもまた驚きではあるのだが、あの写真を撮れるような世界と考えれば受け入れざるをえんな」
「現在あちらの総力を挙げて立花の治療及びその原因を調査してくれています。ですが、問題は」
「ああ、そのアンノウンの事だな。直接触れてはならん上にこちらの攻撃を全て吸収してしまうとは……」
「そうなると絶唱でさえも効果がない可能性が高いですね」
「それだけじゃないわ。今回撤退したのが埒外物理による攻撃を受けたためじゃなく神の力を吸収した反動だとしたら……」
「次回出現した際には、それさえも無効化する可能性がある、か……」
そこで場の空気が重くなる。神の力の恐ろしさはこの場の誰もがよく知っているからだ。それさえも無力化ないし無効化するとなれば、もうそれはシェム・ハや世界蛇以上の恐ろしい存在。想像もつかないような脅威としか言いようがなかったからだ。
「とりあえず私はまた向こうへ戻ります。何の役に立てるか分かりませんが、それでも何かしていないと気が治まらないので」
「分かった。また何かあった時は報告を頼む」
「はい。では失礼します」
発令所を後に翼は一人ギャラルホルンへと向かう。その道中頭に浮かぶのは相対した謎の黒い影についてだった。
(あれは一体何だったのだ? 手応えはないが、こちらに対する敵意のようなものは感じ取れた。目的はこちらと接触する事だとすれば、それは何故だ? もしやあれは私達と関係があるものなのか?)
答えなど出るはずもなく、それでも考えずにはいられないとばかりに翼は思考に耽る。と、そんな時だった。
「翼っ!」
「……マリアか」
振り返った翼が見たのは自分を真剣な表情で見つめるマリアの姿だった。マリアは足を止めた翼の気落ちした表情を見るとやや急ぎ気味に歩み寄った。
「向こうで何かあったの?」
「……おそらく司令から話があると思うが、立花が謎の存在と交戦した結果危険な状態となった」
「何ですって?」
そこで翼が簡単に何があったかを話すとマリアは軽く俯いた。
(私達が向こうのセレナと楽しく過ごしている裏側で、そんな事が起きていたなんて……)
別にそれが悪い事ではない。何せマリア達は知らなかったのだ。だが、やはり自分が幸せで平和な時間を過ごしている裏で仲間が苦しんでいたと聞いて、それをまったく気にしないとはならないのがマリアという女性だった。
セレナと過ごした事でマリア達も要シキがいる世界へ持っていた何とも言えない感情の壁は消えたと言ってもよかった。だからだろう。マリアは何かを決意するように顔を上げると翼へこう告げたのだ。
「翼、少し待ってて。もう少しするとセレナも来ると思うの」
「ああ、そうか。なら」
「それと私も一緒にそっちへ行くわ。司令の許可をもらってくるから待ってて頂戴」
有無を言わせないような力強さをその眼差しと声から感じ取り、翼は何も言えなかった。分かったのだ。マリアが何を考えているのかが。
(マリアも、なのか。立花が死に瀕している時に平時に自分を置いていられないのだろうな)
自分に背を向けて歩き出すマリアの背中を見つめながら翼はそう思ってため息を吐く。今までにない類の底知れぬ敵。それと再戦する際にどうなるのかと、漠然とした不安を吐き出すように。
その頃シキは未だ復調しない響の隣で死んだように眠っていた。一晩中響へ力を注ぎ続けた彼は遂に限界を迎えて寝落ちしてしまったのである。
その響は顔色は幾分良くなったもののまだ本来の状態には戻っておらず、今も死んだように眠っていて未来と手を握り合ったままだった。
傍から見ればある意味で微笑ましさがある光景かもしれない。ただ、眠っているシキの股間がハッキリと盛り上がっていなければ、だろうが。
神の力を使い過ぎたために身体が生存本能を働かせた結果の勃起現象だった。しかも、ただ勃起しているだけでなく俗に言う先走りも既に流れ出していたのだ。
だからか、微かに響と未来の鼻が動いていた。特に体が弱っている響はその匂いを敏感に感じ取るように。
――このにおい……すき……。
蕩けたような声で漏らす寝言。ただ、その声は一つではないと言う事がシキにとってはある意味恐ろしさに満ちている。今はそれを誰も知る事なく、三人は静かに眠るのみだった……。
今あたしは徹夜したファラの代わりにエプロンを着けて家事手伝いとして働いてた。
先輩じゃねーけど、あたしも動いていないと気が滅入りそうだったからな。
あのバカが死にかけるのは初めてじゃねーけど、今回は神の力なんてもんを使ってんのにヤバいってのがヤバいからだ。
「この規模の風呂掃除ってのは新鮮だな……」
「だろ? まぁ、あたしも最初にやった時は面食らったけどな」
デッキブラシを手にして女湯の掃除をしていたあたしとあいつは手を止めるとブラシの柄の部分を支えにするようにして小休憩を始めた。
大人が十人以上入っても平気な作りのそこは、あたしら二人でも掃除が大変な程だ。さすがに体力に自信がねぇあたしは疲れ切るかもしれないって思ってたんだが、さすがにあたしだけあってか向こうが定期的に小休憩を入れてくれる。
何だか姉ちゃんみたいでむず痒い。
「こ、これを毎日か?」
「おう。結構大変だろ?」
「ああ……」
「普段はこれをガリィやミラと一緒にやってんだ」
「三人で? ならどうして今日は」
「お前とゆっくり話をしたくてな」
あたしの言葉を遮ってあいつはそう言って笑う。何だかそれがあたしよりもあったけぇ笑顔な気がして心が騒ぐ。
「話だぁ?」
「ん。まぁ簡単にいやぁ……」
そこであいつはブラシの柄に乗せていた顎を浮かしてあたしを見つめてきた。
「今のお前は結構心がぐらついてんだろうと思ってさ。それを少しでも和らげてやろうって思ってよ」
その言葉へ咄嗟に何か言う事が出来なかったのは、相手が自分と同じ顔をしてるからか。あるいは、あたしが手に入れたくても入れられないものを持ってる奴だからか分からなかった。
要は反論する気が起きなかった。今のあたしはたしかに心が落ち着いてねーし、な。その沈黙を肯定と察して向こうは苦笑した。それにもあたしにはないあったかさがある、ように思えた。
「そっちの響がああなったのが心配なのは分かるけどな、それでお前さん達まで沈んだら不味いだろ?」
「……それは分かってる。だけど、だからってヘラヘラ出来る程あたしは神経図太くねぇ」
「そうだな。どっちかって言えば神経細いもんな、あたし様は」
普段なら色々と反応する言葉なのに、もう一人のあたしって思うと何も言えない。ホント、ある意味やりにくい相手だぜ……。
「ならいっそその細い神経のままであの子達と接しろよ。どっちつかずなままじゃ、いつか疲れちまうぞ」
「っ……てめぇがそう出来たからってこっちまでそう出来ると思うんじゃねえっ!」
内側に溜まってた色んなもんが一気に噴き出した気がした。それぐらい今のあいつの言葉はあたしの何かを逆撫でしたんだ。
「大体何だっ! 一人の男に対して一体何人の女が群がってやがるっ! おかしいだろどう考えてもっ! 不倫を容認してるようなもんだっ!」
「そうだな。で、それの何が問題だ?」
だってのに、あたしの言葉にあいつはまったく動じる事もなく、淡々とそう返してきやがった。そしてあたしはその反論に返す言葉がなかった。言葉に詰まったあたしへ向こうはそのまま冷静な口調で問いかけてきた。
「不倫が問題になるとすれば、だ。それは当事者達だろ。部外者が何で一々口出しする理由がある?」
「そ、それは……ど、道徳的に問題だから」
「あたしらは不倫を受け入れろなんて周囲に頼んでねぇし言うつもりもねぇよ。実際、シキの奴は本部じゃ若干白い眼で見られてるしな」
完全に頭が冷える一言だった。思い出したからだ。あのバカへあの男が神の力を注いでる時、本部内でも面倒になるって言ってた事を。
それはきっとそこに関係してるはずだと、そう察した。きっと目の前のあたしそっくりの奴は、その事を知ってる。知ってて受け入れてるんだ。
「気付いたか? シキの奴は昔から両翼の先輩達と特別な関係だった。それだけなら良かったんだが、フィーネを始めとしてあたしらまで手を出したせいで、それを勘付かれた後は一部の事情を知ってる奴以外は夢子を産ませておいて他の女達に手を出し続ける最低男って思われてる」
「……そうかよ」
「シキはあたしらへ変な目が向くぐらいなら自分の方がって言ってるから、あたしらは特にそういう奴らへ何か言う事はねぇ。だけどな、これだけは言っておく。あたしらの事情を何も知らない癖に一般論を絶対正しいとばかりに振りかざすんじゃねぇ。雪音クリスならこの言葉の意味、分かってくれるよな?」
「…………ああ」
何て言うか、おっさんや先輩を前にしている気分だぜ。声を荒げる訳じゃないのに、ズンっと腹の底まで響くような言葉だった。
そうだ。時には正論が間違ってる時がある。それをあたしはあの頃に思い知らされた。事情を知らずに吐かれる一般論程腹が立つ事もないって事も。
ああ、そうか。今のあたしはそういう事をしてんだ。あの男がどういう奴かは何となく分かった。あいつが女にいい加減なだけの奴ならきっとこんな風に慕われたりしない。特にあの子や先輩はそういうのを許せないだろうし。
それがあたしら装者連中が全員受け入れてる上にフィーネやらパヴァリアの幹部連中やらまでが妻になってるってのは、あたしの想像も出来ない何かがあるんだろう。
……ただお人よしってだけでこの状況は無理だろうしな。
「さてと、少しはスッキリ出来たか?」
その一言で全てが分かった。今までの話はあたしの中に溜まってた感情の吐き出し口にするためだったんだって。何だか全部向こうの掌って感じで若干嫌気もするがそこの辺りも分かった上だろうな。
「いつか、そういうのを吐き出せるようになれるといいな」
でも、向こうの笑顔はあたしよりもあったかくて優しい。見た目が同じなのに向こうの方が大人だ。
「……そうだな」
だからあたしも少しだけ大人になる。今は、今だけは素直に言葉を吐き出そう。
「まぁ、処女の間は無理かもしれねぇけど」
「っ!? はぁ!?」
まさかの言葉に目を見開く。あたしの向かいにいる奴はそんなあたしに楽しげに笑ってやがる。
「要は壁みたいなもんを張り続けてるみたいな感じだろって事だ」
「ぐっ……」
否定はし辛い。で、でもだからってスケベな事をするってのも違うし……。
「まっ、あたしが言ったのは一つの方法みたいなもんだ。スケベな事をしなくたって心の壁を薄くしたり取り除く事は出来るしな」
何だろうな。何となくだけど、まぁそんな事は無理だろうがなって言われてる気がする。
きっと目の前の奴はあの男とスケベな事をして今みたいになれたんだろうな。あのバカや先輩達と名前で呼び合えるような、そんな関係に。
……それをすげぇと思わない訳でもない。パヴァリアの連中やノーブルレッドの連中まで名前で呼び合って笑い合ってるのは心に響くもんがあった。
名前で呼び合う、か。そういやこっちの先輩も名前で呼んでたな。それもやっぱあの男が理由の一つなんだろうな。
「さて、じゃあ掃除の続きをやるぞ」
「……おう」
やっぱ向こうの方が年上感がある。まるで双子の姉が出来たみてぇだ。
そんな事を思いながらあいつを、クリスを見つめる。その背中はやっぱり何だか大きく見えた。
「神の力を体内から吸収させる?」
エルフナインは双子の姉となったキャロルの意見に小首を傾げた。
場所は本部内にある二人の研究室だ。そこでキャロルは神の力関係の資料を見返していて思い付いたのがそれだったのだ。
「そう。今は父さんが肌へ触れて力を注いでいるけど、それでは水をスポンジにかけているようなものだと思う。だから力を凝縮した物を体内から吸収させた方が効果が高いはず」
そう言ってキャロルがエルフナインへ見せたのは、かつて融合症例と呼ばれていた頃の響がそれを脱した際の報告書だった。
「……直腸から生命のスープを何度も吸収させた?」
「いかにも父さんらしい発想だけど、これが響の命を救いガングニールのギアをペンダントへ変えた。つまり……」
「そっか。普通ならガングニールの欠片が排出されるだけなのにギアとして排出されたのは、その頃の父さんの生命のスープには微弱な神の力が宿っていたって事か」
「おそらくね。だから、これと同じ事をすれば今のやり方よりは効果が望めるはず」
ただそこでキャロルもエルフナインも表情を暗くした。
「でもキャロル。これは……」
「分かってる。あちらの響の同意が得られるとは思えないし、父さんも進んでやろうと思わない」
「そうだね。昔の父さんなら違ったかもしれないけど……」
「何て言うか、昔のエッチでだらしない父さんの方が良かったって思う時が来るなんて思わなかった……」
「本当だね……」
そこで揃って苦笑する二人。少しだけ明るい空気が室内に流れ、その空気感のまま二人はナスターシャがいる研究室へと向かった。
ナスターシャも二人の意見を聞き同意を示した後、やはり苦笑してキャロルとエルフナインを笑顔にさせた。
そこへ丁度了子からの連絡が入り、シキの夜を徹しての行動で響が多少でも回復した事を聞いた三人は、話し合った仮説を試してみるべきかと思い始める事となる。このままではシキの体が持たないと察したためだ。
そしてキャロルの口から思い付いた治療法を聞いた了子は遠い目になった。
(あの時もそうだったわね……。シキ君ったら、響ちゃんの処女を守るためにって斜め上の発想をしたんだっけ)
自分としかしようとしてはいけないとかつて言っていたアナルセックス。それをよりにもよって人命救助の手段として提案したシキ。それらのもう懐かしいと思うようになった記憶を呼び戻し、了子は一人苦笑する。
「何笑ってるの?」
そこへ若干寝惚けたような柔らかい声が聞こえてきて了子は顔を声のする方へ向けた。そこには寝惚けた顔のシキがいた。
「起こしちゃった?」
「ん~? いや、何となく目が覚めたんだ。それと多分これも原因じゃないか?」
「これって……」
苦笑いしながらシキが自身の股間を指さすと、了子もそれにつられて視線を動かしていく。
「……溜まってる?」
「かなぁ。あるいは、力の使い過ぎで体が危険だと判断した?」
シキの股間が盛り上がっており、勃起している事が容易にわかる状態となっていた。その理由を二人はやや苦笑気味に話す。それでも了子はそこへ手を伸ばしていくのをシキは止める事はしなかった。
「あら、カウパーまで出てる」
「俺、これで起きた気がするよ」
「かもしれないわね。で、どうするの?」
今この大広間には響と未来が寝ている。この場で性行為はどうだろうと了子は考えた。シキもそれは分かるのだが、もし自分達が行為に及んでいる間に響に何かあったらと思うと離れる事は出来ない。
結局彼らが選んだのは……
「お~……これはこれでいいかも」
(隠れていけない事をするって、やっぱ一種の興奮材料なんだなぁ)
掛布団の中に了子を隠しての行為。ただ繋がると色々と問題だろうと思って了子にフェラチオをしてもらう事で落ち着いていた。
ただ了子の大きな乳房でペニスを挟んでもらってのフェラチオなのでより興奮度は高いと言える。大きく柔らかな感触に包まれ、亀頭を温かな口内に納められて、更に舌先で優しく刺激されるそれにシキは幸福感に満たされていた。
未だ夢子のための母乳を出すために元々よりも大きくなっている乳房でもシキのペニスは隠れる事なく反り返り、その胸の谷間から顔を出す先端部を了子は蕩けた表情でしゃぶっていた。
(もうっ、何て凶悪なのかしら。こんなもの初心なあの子達に見せる訳にはいかないもの。ちゃ~んとヌキヌキして元通りにしておかないとね)
久しぶりのペニス。久しぶりの味。それに了子の思考は一瞬でスケベ一色となる。
シキの方も平行世界からの来訪者があってからは、それまでと生活スタイルを若干変えて軽く禁欲していたようなものだ。故に自然二人の熱量は高まっていく。
「りょ、了子……っ。そろそろ……出すよ……っ!」
久々の射精で解き放たれた精液は濃厚でゼリー状の固形に近い物だった。それが一気に了子の口内を襲い、その匂いと味で彼女は絶頂を迎えてしまう程だ。
そして、ここで二人が思いもしない事が起きた。その濃厚な生命のスープの匂いが了子の口内から漏れ出てしまい、その匂いで寝ていた響と未来がそれぞれ鼻を動かしながら目を覚ましたのである。
((なんだろ……。とってもいい匂いがする……))
おぼろげな意識で二人は漂う匂いを嗅ぎ続け、その表情をだらしないものへと変えていく。
神の力さえも加わってより強力になった生命のスープ。その匂いを一番無防備な状態で嗅いだ事で二人の乙女はその体に疼きが生まれるのを感じた。
(……何だかお腹の下がムズムズしてきた……)
(この匂い……要さんの部屋で嗅いだものよりも濃くて好き……)
ふにゃっとした顔で涎さえ流す響と、ぼんやりとではあるが匂いの正体に近付いていく未来。けれど二人して寝惚けた頭は目覚めていき、段々その目を開けて匂いのする場所へと意識を向けていく。
するとその場所であるシキの布団の中から了子が姿を見せたのだ。そのたわわな乳房を丸出しにしたままで。
その眼鏡を外して胸を出したまま、口の端に白濁液を垂らした姿の妖艶さに二人の少女は息を呑んだ。
((了子さん、エッチな格好だけど綺麗……))
二人の視線に気付かぬまま、了子の口の端に垂れていた白濁液をシキが指で掬い取って彼女の口の中へと戻した。その行為さえも初心な二人には妖艶なものに映って目を見開いた。
「了子、ありがとな。おかげで少しはスッキリ出来たよ」
「ふふっ、本当はまだ出したいんでしょ?」
「そりゃね。今だってこんな魅力的なものを見せられてるし」
言いながらシキが両手で了子の乳房を揉み始める。優しい愛撫に了子はくすぐったさを感じて笑みを返した。
「もうっ、エロ親父みたいよ?」
「俺はもう十分そういう分類だよ」
「やんっ……も~、あまり強く揉まないでよ? ミルク出ちゃうから」
「出たら吸ってやるよ」
「吸いたいだけでしょ? このスケベ」
「そんな事ないって」
「あんっ……こらっ、悪戯しないの」
「ごめんごめん。じゃお詫びに……」
「んっ……んふっ」
イチャイチャし始める二人を眺め、響と未来は漠然とそのやり取りを羨ましいと思っていた。
(了子さん、幸せそうだなぁ……。やっぱり赤ちゃん産む程好きな人と愛し合うって幸せなんだろうな)
(何だかああいうのってもっとエッチなイメージだったけど、要さんと了子さんのはエッチな感じよりもじゃれあいって感じていいなぁって思えるかも……)
胸を触りながらも何度も軽いキスを繰り返す様は新婚夫婦のようでもあり、どこかでそういうものへの憧れを秘めている響へ強烈な好印象を与えた。
が、そこで見られている事に気付いたのか了子が顔を二人のいる方へ向けたのだ。
「「っ!?」」
「あらら、アナタ、二人共起きちゃったわよ」
「えっ? ……本当だ」
やっとシキも響と未来に見られていると気付き、心底申し訳なさそうな顔を浮かべた。
了子はここが潮時と察してシキから離れて服装を整え始める。それを横目にしつつシキは二人の少女へ頭を下げた。
「申し訳ない。見苦しいものを」
「「い、いえいえ……」」
両手を左右に振るという揃った動きを見せる響と未来。だがそこで響の体がぐらりと揺れた。
「あ、あれ……」
「っ!? 響っ!」
「っと!」
すかさずシキがその体を受け止めたのだが、そこで響は生命のスープの匂いを強く吸い込んでしまった。
(あっ……これってさっきの良い匂いだ……)
途端にぼやける思考。そして急速に感じる渇きにも似た感覚。それらに響は浮かされるように顔を上げてシキを見上げた。
潤んだ瞳と緩んだ頬。それだけでシキは何かを察して苦い顔をする。同じだったのだ。かつて初心だった頃の翼が初めて生命のスープの匂いを嗅いだ時と。
「要さぁん……私、何か変なんです……」
「変って……どういう感じ?」
「頭がふわふわしてて、体が熱い感じなんです」
「……やっぱりか」
シキの苦い声で了子は察した。響がどうなっているのかと。
「ねぇアナタ。その子、多分だけど体が求め出してるんじゃない?」
「だとは思うけど、だからって」
「いえ聞いて。キャロル達から連絡があったんだけど、昔響ちゃんを助けた時の方法がその子を一気に回復させるのにうってつけじゃないかって」
その言葉にシキが表情を歪めた。いくら状況が状況とはいえ、性的な知識がほとんどなく、しかも自分へ若干悪感情を抱いてる可能性が高い響へあの時のような提案を出来る訳がないと思って。
何せこの世界の立花響はシキと深く関わり、可愛いなどの女性として自信となる言葉や態度を向けられていた中でのあの一件だったのだ。
対して目の前の立花響は第一印象から若干のマイナスを抱く要素だらけであり、例え好印象を持っていたとしても関わった時間は圧倒的に短い。
そこまで考えたところでシキはある覚悟を固めた。
「……了子、悪いけどお客さん達をここへ集めてくれるか?」
「全員?」
「ああ。あの影みたいな奴が今度現れた時、もっと厄介になってる可能性もあるんだろ? じゃあ、立花さんのような状態にされないとも限らない。そうなったら最悪どういう手段を講じる事になるかを教えておくべきだ」
「……分かったわ。本当に今のアナタは大人になったわね」
響だけに話せばいい事を来訪者全員へする。それが意味するのはそうならないように気を付けて欲しいという事だ。それと同時に、死なないで済む可能性がたしかにあるのだと教える事も出来る。ただしそれはシキのイメージが悪くなるというものがついてくる事でもある。
事情があるとはいえ、既に複数の女性と深い仲であるのに初心な少女と淫行をした事に変わりはないのだから。
小さく笑みを浮かべながら部屋を出て行く了子を見送る事もせず、シキは抱き止めていた響の体を優しく引き離して未来へ顔を向けた。
「小日向さん、君ももしかして体が少しおかしくなってない? 頭がボ~っとするとか、熱い気がするとか」
「え、えっと……あります」
「そっか。うん、ちょっと待ってて」
言うや否やシキが片手を動かす。すると室内の空気が一瞬にして澄んだものへ変わった。
「これって……」
「この部屋の空気を入れ替えたんだ。ああ、安心して。入れ替えた先はゲートがある公園だから」
「そうなんですね……」
(す、凄いけど力の無駄遣いなような気が……)
神の力を空気清浄機のような使い方をする辺りにシキらしさがあるが、それを未来も感じ取って内心で苦笑いを浮かべる。シキも未来の反応からそれを察して苦笑しながら頬を掻いた。
そこへドアを開ける音が聞こえ、三人が揃ってそちらへ顔を向ける。そこには翼とクリス、そしてもう一人マリアがいた。
「え? マリアさん?」
「ええ、私よ」
「お前、もう起きて平気なのかよ?」
「う、うん……」
「櫻井女史から聞いてはいたが、本当に回復してきたのか……」
最後に見た時に比べて顔色がかなり良くなった事に軽い驚きを見せるクリスと翼。マリアは聞いていたのと異なる状況にやや困惑気味に視線を響からシキへと向けた。
「それで、貴方が要シキさん?」
「ああ、そうだよマリアさん。まさか君まで来るとはね。まぁいいか。今から俺がする話をよく聞いて欲しい。それと出来れば来なくてもいいように願うけど、もしこちらへ来るのなら月読さんや暁さんにも伝えて欲しいんだ。まぁ無理ならまた俺から話す事にするから出来るだけでいいよ」
その切り出し方で響達五人が表情を不安げにしながらシキの向かい側へ座っていく。それを見届けてからシキは淡々と話し始めるのだ。あのフロンティア事変の際にあった響の生存に関わる一件を。
そしてその内容と結果に五人の乙女は赤面しつつも噛み締めるのだ。やはり目の前の男こそがこの有り得ない状況を掴み取った最大の要因なのだと……。
話を終えたシキが一旦退出した後の大広間で響達は何とも言えない表情を浮かべていた。
響の顔色は心なしか赤面した事もあってか良くなっているように見えるものの、気疲れもあってか俯き気味であった。
未来達も響程ではないが疲れが顔に浮かんでいる。どうしても性的な方面に弱い彼女達。しかもそこで聞かされたのが若干アブノーマルな内容だった事もあり、すっかり気疲れしてしまったのだ。
「ま、まさか平行世界とはいえ立花のあんな話を聞く事になるとはな……」
「そう、ね……。でも、嘘を言ってるとは思えなかったわ。それに生命のスープという物が存在し、それがこの世界の状況を作り上げたのは間違いないもの」
赤い顔で言葉を交わす翼とマリア。ただその頭の中ではシキの口から語られた淫靡な内容が繰り返されていた。
「で、でもよ、今のこいつは結構元気になったじゃねーか」
「えっと、クリスちゃん? でもこれは要さんが徹夜で神の力を注ぎ続けてくれたからなんだけど……」
「それで今は大丈夫なの?」
「そういえばギアはどうだ? 適合率が下がったようになっていたが……」
「そうですね。試してみます」
聖詠を唱える響。だが一向にギアが展開される気配がない。響が何度も聖詠を唱えるも、一切ギアペンダントは反応を示さなかったのだ。
「これって……」
「まさか、あの黒い影の影響か?」
「適合率が低下したようになったのよね? じゃあ、今の響は適合率が無くなってるんじゃないの?」
マリアの推測に誰も反論出来なかった。実際装者の中でもトップクラスの適合率を誇っていた響。そんな彼女がギアを展開出来ないなど有り得ない事態だった。それを納得させるには、昨夜起こった出来事から導き出された仮説しかなかったのである。
「だが瀕死の状態は何とか脱した。それだけは良かったと言えるな」
「それにここまで回復出来たんだ。やっぱ神の力は凄まじいぜ」
「けど、そんな力を沢山使わないと危なかったんだよ? 要さんが言った最悪の場合の手段は間違ってないと思う」
静かにだがハッキリとした未来の口調に誰も言葉がなかった。特に翼とクリスは実際目の前で死相が出ていた響を見ている。それが今は多少疲れているように見える程度までなっているのだ。それが何故かは誰よりも強く理解していた。
「……私、ちょっと経験してみようと思います」
「ま、まさか、その先程の話をか?」
「はい。生命のスープには適合率を上げる効果もあるって聞きました。なら、ギアを使えるように出来るかもしれません」
ポツリと響が告げた言葉にさしもの翼も動揺を隠せなかった。クリスやマリアも表情に驚きを浮かべて目を見開いている。ただ未来だけがやや呆れ顔をしていた。
「響、ちゃんと伝えないと誤解されるよ。えっと、エッチじゃなくて生命のスープを飲んでみるって事でしょ?」
「あっ、えっと、うん」
「お前なぁ……」
「立花らしい……」
「ちょっと待って! 何だか安心したみたいになってるけど十分問題よっ!?」
「「ぁ……」」
マリアの冷静なツッコミにクリスと翼が思わず沈黙する中、未来だけがやや真剣な表情で響を見つめていた。
「本気なの?」
「……うん。もしそれで今の私の状態が良くなったり、あるいは治ったら安心出来るから」
響も直感的に感じ取っていたのだ。謎の黒い影は必ずまた現れると。その際にもし自分のように触れてしまっても何とかなると確証が得られれば。その一心で響は自身の手を見つめる。
しかし、その決意の裏には微かに生命のスープを飲んでみたいという欲望が秘められていた。もう彼女はかつての翼と同じ道を歩き始めていたのだ。
「はい」
「俺だけど入ってもいいかい?」
聞こえてきたノックの音へ未来が反応を返すと、当然ながら聞こえてくるのはシキの声だった。
少しの間をあけて入室を促す返事を未来が返し、シキが室内へと入ると全員の視線が彼へ向いた。
「えっと?」
何かあった。それがシキにも分かる程室内の雰囲気が変わっていたのだ。
「あのっ、要さん。私に、生命のスープをください」
どこか恥じらいを秘めた凛々しさにシキは何度か瞬きをした。言われた事が分からないのではない。思いもしなかった事を言われたための驚きであった。
「……それ、どういう意味か分かってる?」
「はい。えっと、でも出来れば口に欲しい……です」
「ああ、そういう事ね。うん、ならまだ理解出来るかも」
シキの脳裏に浮かぶこれまで深く関わった女性達の精飲をした際の思い出。誰もが虜となった己が精液の魔力を思い出し、シキは息を吐くと先程話さなかった事を話し出した。
それは生命のスープを口で摂取する事の問題点。女性にとって生命のスープはとても美味であり、依存性はないがそれに近しい効果を持つ事があると。
「それでも君は飲むの?」
「…………はい」
「響……」
「これで私の状態が良くなったら、いえ治ったら、その、え、エッチしなくてもいいってなりますから」
「そういう事か。うん、分かった。じゃあちょっと待ってて。それを原料に使って作った飲むリンカーみたいなものがあるんだ。それを持ってくるから」
響の覚悟を感じ取り、自分のよく知る立花響らしさを感じ取って、シキはならばと動き出そうとしたのだが……
「あ、あのっ! 出来ればそのままの方がいいんですけど……」
「へ?」
思わぬ言葉にその場で足を止めた。シキの視線の先では響が真っ赤な顔で彼を見つめていた。
そこで響はギアを展開出来なくなっている事を告げた。それだけでなく、何故原液のままで摂取したいのかも最後に説明したのだ。
「それにそれで治らなかったら、私、その、二度も……」
「あ~……そういう事か」
ドリンクで効果がなくても原液なら効果があるかもしれない。そうなった時、響はある意味二度もシキの精液を摂取する事になる。それを避けるのなら、最初から効果の高い物を摂取しておく方がいい。
そこまで考え、シキはどうしたものかと思考を巡らせた。精液を飲ませるとしても普段妻達にしてもらっているようには出来ない。そうなるとかつてドリンク用の原料として採取していたように別の入れ物へ射精する必要がある。
(でも正体を知ってる以上、何に入れてきても変な感じになりそうだなぁ)
そんな風にシキが考えていると響がおずおずと手を上げた。何かと思ってシキが目を向けると響は赤い顔でこう告げたのだ。
――く、口でおちんちん咥えればいいんですよね?
ざわつき始める未来達とは違い、シキは思い出すように天井を見上げていた。
前のめりの姿勢を見せる平行世界の響の発言に、かつてクリスや響が言っていた事を思い出していたのだ。
直に飲むのはコップで飲むよりも効くという、その言葉を。
「……分かった。それと小日向さん達はこれだけは忘れないで。今回の相手と戦う時は最大限の注意を払う事を。そうじゃないと俺と女性としてとても嫌な事をする羽目になるって」
凛々しい表情でそう告げるやシキは響の体を優しく抱き上げた。
「へ?」
「色々な事を考えるとここじゃない方がいいんだ。それと着替えた方がいいしね。移動するよ」
「は、はい……」
俗に言うお姫様抱っこをされ、響は恥じらいを覚えながらも若干胸が高鳴るのを覚えていた。
(要さん、やっぱり男の人、なんだ。師匠程じゃないけど逞しい感じがする……)
見上げる先には優しくもどこか凛々しさを感じさせる男の顔がある。
(……こっちの私が好きになって、奥さんになろうとしてる人、かぁ……)
顔の熱を感じながら響は心の中で呟くのだ。
――この人となら、エッチな事も平気、かもしれない……。
普段使ってたお風呂場とは違うお風呂場に私はいた。格好は水着。こっちの私から要さんが受け取ってきてくれた物だ。要さんも水着を着てるけど、そっちはよくあるトランクスタイプだ。
ちなみに、ここは要さんが入る男湯でもあり家族風呂でもあるって教えてもらった。家族風呂って向こうは違うんですかって聞いたら、こっちはえ、エッチな事にも使う場所だからって事みたい。
「へ、変じゃないですか?」
「えっと、響と同じだからね。似合ってないはずがないよ」
「あっ……」
要さんの言い方で顔が熱くなる。そうだよね。これはこっちの私が持ってる水着だから私に似合わないはずないんだ。
「でも、うん。こうして見るとちょっと違うのが良く分かるよ」
「そ、そうですか?」
「うん。立花さんの方が響よりも鍛えてるよね。引き締まってて健康美って感じだ。可愛くてカッコイイし、十分魅力的だよ」
「そ、そうですか。な、何だか照れちゃうな……」
思わず笑って頬を掻く。面と向かって男の人に可愛いって、魅力的って言われちゃった。
これだけでちょっとだけドキッとしちゃう。思えば家族以外の男の人と一緒にお風呂なんて初めてだ。裸じゃないけど、それに近いからドキドキする。
「さて、じゃあ始めようか?」
「っは、はいっ!」
そこで要さんが小さく笑った。何だか本当に年上の彼氏みたいに思えて顔がまた熱くなる。
「そんなに緊張しなくてもいいよって、そう言いたいけどそうなるよなぁ。うん、じゃあ軽く緊張を解そうか」
そう言って要さんは湯船の中へ足を入れた。
「立花さんも同じようにしてごらん。足湯みたいにさ」
「あっ、は、はい……」
言われるまま要さんの隣へ座ってお湯へ足を入れてみる。
「はぁ~……」
あったかいお湯に足をつけるとじんわりとあったかくなって思わず声が出た。そんな私を見て要さんが微笑んだ。それがくすぐったくて、でもあったかい。
そこから要さんとお喋りした。要さんが私の学院生活を教えて欲しいって言われたので、入学してから今まであった事を話した。どうしてもフィーネさん達と戦った事も混ざってくるんだけど、そこは要さんが知ってるからいいよって言ってくれて、ただただ学院での楽しい事や大変だった事を話せた。
何だか、不思議な感じがした。未来とは学院じゃほとんど一緒だからこんな事を話す事はないし、クリスちゃん達もこういう事を聞いてくる事はない。だからかな? まるで本当に彼氏が出来たみたいな気分になった。
「そっかぁ。やっぱり響とは似てるようで違うんだなぁ」
私の話を聞き終えて要さんはそう言って嬉しそうに笑った。それはお父さんみたいに感じた。
「違うんですか?」
「うん。そりゃ細かなところまで同じになるはずないと思ってたけど、こうやって聞いて安心した。やっぱり君は君だ。同じ立花響だとしても別人でもあるんだって確信出来たよ」
「同じ立花響だけど別人でもある……」
その言葉が何だかストンっと心に落ちて、何だか不思議であったかくて、そして嬉しくなった。
隣で嬉しそうに微笑む人は、とっても優しく笑っていて、こうやって一緒にいると不思議と落ち着く。未来とは違う安心感があるように思える。
例えるなら……お日様? うん、要さんは私をあったかくしてくれるお日様かもしれない。
「立花さん、少しそっちへ近寄ってもいい?」
「え? はい、構いませんよ?」
「じゃあ……」
ピタッと要さんの腕が私の腕に触れた。ちょっと驚いたけど、でも嫌じゃない。見上げれば要さんもこっちを見つめてて目が合った。
けどそのまま要さんは何も言わずに黙って、私もつられるように黙った。そのまま多分五分ぐらいは見つめ合ってたと思う。要さんはずっと笑顔で、私もそれを見てたからか笑顔になってた。
「うん、やっぱり笑顔はそっくりだ。俺が大好きになったのと同じ太陽の笑顔だよ」
ふとそんな事を言われた瞬間、私は息が止まるかと思った。私を見つめる要さんの眼差しは真っ直ぐで、とても優しい輝きを秘めてたから。
胸が苦しくなって、心臓の鼓動が速くなって、顔がとっても熱くなる。なのに目を逸らせない。ううん、逸らしたくなかった。
「あのっ!」
「何?」
喉がカラカラに乾いてくる。声を出すのが苦しいって感じる。でも、でもっ! 伝えたい言葉があるっ!
「わ、私も要さんの事、大好きになりそうですっ!」
何とか声が裏返る事なく言えた。すると要さんは一瞬驚いた顔をした後ですぐに困ったような笑顔を返して……
「なら、大好きって言ってもらえるようにエッチな事しないでおきたいなぁ」
なんて、そう言って頬を掻いた。そうだ。私、これから要さんのお、おちんちんを口で咥えるんだってそこで思い出した。
なら、せめてその前にキスを済ませておきたい。だ、だって初めてキスしたのがおちんちんなんて嫌だし……。
「あの……」
「止めたくなった?」
「い、いえ、そうじゃないんです。えっと、その前に……その……」
そこで一回深呼吸。うん、よし大丈夫。要さんとなら、違う、要さんだからきっと言える。
「キス、してくれませんか?」
きっと、要さんは驚いたはずだ。だって突然キスして欲しいなんて言ったから。なのに、なのに要さんは私の言葉を聞いて何も言わずに微笑むと、そっと頬へ手で触れて軽く触れるようなキスをしてくれた。
「ありがとう立花さん。光栄だよ、君みたいな可愛い子のキスの相手になれるなんてね」
「要さん……」
私、今、キスしちゃったんだ……。それも、夢子ちゃんのお父さんと、了子さんの旦那さんとキスしちゃった……。
あと、要さんとのキス、ちょっと甘い気がした。レモンって言うよりミルクかも。ほんのり甘くて、優しい味だった。
「あの……も、もう一回キっ!?」
私が言い終わる前に要さんがキスしてくれてビックリした。でも嬉しくてつい要さんを抱き締めちゃった。
そんな私を要さんも抱き締め返してくれて、それだけで心があったかくなる。これが、キスなんだ。これが愛されるって事なんだって、そう感じながら私は離れてくあったかさを目で追いかけた。
「これでいい?」
「……はい」
頭がボ~っとしてくる。だけど胸はあったかくて心が弾んでる。
「それじゃあ、始めようか」
そう言って要さんが水着を下げた瞬間、私は意識がふわ~っとなった。
とっても強い生命のスープの匂いがしてきたって、そう思った瞬間にとっても幸せな感じになったからだ。
そのままボ~っとしてると視界の中に何か大きな物が現れる。それが大きくなったおちんちんだって分かったけど、何故か私は目を逸らす事が出来なかった。
先っぽのところから透明な液が出ていて、それがトロ~って感じで流れてく。それが何だか美味しそうに見えて私は気付いたらそれを舐め取ってた。
「立花さん、大丈夫?」
心配そうな顔で要さんがこっちを見つめてくるけど、私はそれに答える事は出来なかった。だって、だってぇ、とっても美味しかったんだもんっ♡
あっ、また出てきてるっ! このままじゃ流れ落ちちゃう! もったいないっ! そうだっ! どうせおちんちんを咥えないといけないだからそうしちゃおうっ!
「うおっ、立花さん落ち着いてっ!」
無理だよぉ♡ だっておちんちん美味しいんだもんっ♡ こんなに美味しいんだったらもっと早くこうしたかったぁ♡
トロトロの液体は美味しくて、おちんちん自体もとっても美味しい♡ ちょっとしょっぱくて、だけど強いお肉のような味がするもん♡
ずっと、ずっとこうしていたい……。ずっとおちんちんをしゃぶっていたいよぉ……。
そんな風に思ってると優しく頭を撫でられた。あったかくて大きな手からじんわりとした熱を感じて、私は目を閉じる。
「そうそう、一旦落ち着いて。ゆっくり、ゆっくりと歯を立てないようにしゃぶってみて」
歯を立てないように……ゆっくりと……。
「うん、その調子でお願い」
優しい声が頭の上から聞こえてきて、口の中に美味しいヌルヌルしたものがどんどん流れてくる。あぁ、今、私……幸せ……。
おちんちんの先っぽを舌でレロレロしてると沢山ヌルヌルが出てきてくれるし、心なしかもっと味が良くなってく気がする……。
そのまま舌でおちんちんを舐め回してる間、ずっと要さんが頭を撫でてくれて、私はフワフワとした気分のまま幸せの中に浸っていられた。
どれぐらいそうしていたかは分からないけど、舐めれば舐めただけ、しゃぶればしゃぶっただけおちんちんの味は良くなって、ヌルヌルは増えてくれて、気付けば私の頭を要さんの両手が押さえてた。
「くっ……た、立花さん……そろそろ出すよ? いい?」
出す……? 何を? でも要さんがそう言った途端ヌルヌルがもっと美味しくなったので頷いておく。
「あぁ……ごめんね立花さん……っ! うっ!」
「んぐっ!?」
いきなり要さんが腰を突き出してきて、おちんちんが喉の奥まで当たったと思ったら熱くてドロドロとした何かがむせそうなぐらいの勢いで出てきた。
でも苦しいはずなのに、辛いはずなのにっ、何で、何でこんなに美味しくて幸せなんだろうっ♡ もっと、もっとこのドロドロしたゼリーみたいな物を味わいたいよぉ♡
「っ♡」
もっと欲しいって思って目を開いたら視界に映ったのは申し訳なさそうな要さんの顔だった。でも、目が合った瞬間口の中でおちんちんがピクンって動いてまた美味しい物が出てきてお腹の下がキュンってなった。
「はぁはぁ……っ立花さん、どう、かな? ギア、展開出来そう?」
言われて思い出す。そうだ、これはギアが展開出来るかどうか確かめるものだった。
う~っ……ホントは放したくないけどおちんちんから口を離す。そしてギアを展開しようと思って胸の歌を唄ってみた。
「……出来た」
するとあっさりギアが展開出来た。それだけじゃない。ギアが初めて見る形態になってた。
「セミエクスドライブ、か。うん、それなら飛べるんだよ」
「そうなんですね」
言われてみると翼みたいな物が背中にある。たしかに一番最初になったエクスドライブにどこか似てる気がする。
「でも、これで安心出来ました。最悪でも生命のスープで何とかなるって」
「あ~、うん。それなんだけどね」
そこで要さんに教えられたのは、直接お口でもらうのと何かの入れ物でもらうのじゃ効果が違うって事だった。
つまり未来達が私と同じ事になったら、おっきなおちんちんを口で咥えて舌で舐めたり歯を立てないようにしゃぶったりしないといけない。
……何とかしてそんな事がないようにしないと。だってこんな事みんなにはさせられないから。
「とりあえず俺はもう出るから。そっちは浸かるなりシャワーを浴びるなり好きにしてくれていいよ」
そう言って要さんはお風呂場を出て行った。その背を見送って私は深呼吸一つ。
絶対みんなが同じ事にならないようにするんだって強く思って。
私だけ、私だけでいい。生命のスープがあんなに美味しいなんて事、知ってるのは。じゃないとみんなが要さんのおちんちんをしゃぶりたくなっちゃうから。
お腹の下辺りの疼きを感じながら、私はお湯に映った自分の姿を見つめて頬を赤めた。
見慣れないギアを展開した私の太ももを、透明な液体が伝って落ちるのを見つけたから。
――エッチって、どんな感じなんだろう……。ちゃんとした形で生命のスープをもらったら、どうなっちゃうんだろう……。
エクスドライブにもなれるとしたらいっそもらっておくべきかもしれない。そう思ったらまたお腹の下辺りが熱くなった。
まるでそこにあのドロドロした物をもらって欲しいって、体が言ってるみたいに……。
以前のIF編ではここぞという時に活躍した響ですが、今回は別の意味で活躍する事になります。
今回の敵は以前の相手よりも厄介さを増しています。以前の能力に加えて、適合率を急激に低下させ時間経過で無くしてしまうというものです。
どうすればそれをある程度抑えられるか、あるいは回復出来るかはこの作品なら一つです(汗