IFで似たような使い方をしましたね。ただあれもヒロインは響でしたけど(汗
「た、立花、そのギアは……」
「えっと、セミエクスドライブって要さんは呼んでました。これ、飛行出来るそうです」
あの後軽くシャワーを浴びた響は翼達へ自分の状況を知ってもらうために大広間へ戻り、そこで再度ギアを展開した。すると、まだ生命のスープの効果が残っていたらしくギアが通常とは異なる形態となったのだ。
ギアが再度展開出来るようになっただけでも驚きなのに、ギアがまさかのエクスドライブに近い状態となるという事実に翼達は生命のスープの凄さを目の当たりにした。
ただそこで響は彼女達へハッキリと告げるのだ。何をして自分がこうなったのかを。
「ちょ、直接口で受け止めて飲まないといけない……」
「はい。じゃないと効果が落ちるそうです」
「そ、そんな事で変わるのかよ……」
「響、貴方はそれで本当に……」
「はい。おかげで最悪でも何とかなるって分かりました。ただ、みんなにはあんな事させたくないです」
握り拳を作って凛々しく告げる響は、誰もが普段の彼女らしさを宿しているように見えた。ただ一人未来だけは違った。
(何だろう……。今の響、ちょっと何かが違う気がする……)
本来の響であれば、いくら凛々しい内容だとしても、それがやや下世話な方面であればそこまで平然とは出来ないはずだと未来は思った。
つまり、何か今の響には普段と違うところがある。それが未来には伝わったのだ。だがしかしそんな未来でも何が響を変えたのかまでは分かるはずがなかった。
と、そこで未来は気付いた。微かに響の方から漂う匂いに。
「あれ……?」
それは響が口内へもらった生命のスープの匂い。濃厚なその残り香が近くにいた未来の鼻腔をくすぐったのだ。
(ふわぁ……すっごく良い匂い……っ。これ、生命のスープの匂い、だね。本当に響、要さんのおちんちんを咥えちゃったんだ……)
瞬間脳裏に浮かぶ淫靡な想像。シキの股間に顔を埋めるようにしてペニスをしゃぶる響という構図を思い浮かべ、未来は下腹部が熱を持つのを感じて息を呑む。
「ね、ねぇ響」
「ん? どうしたの未来?」
ここがある種の運命の分かれ道。そうとは知らず、未来も響も互いの顔を見つめる。
「えっと、生命のスープってどんな味?」
間違いなくその瞬間響の目が一瞬泳いだ。それを未来は見逃さなかった。
「……未来、生命のスープって要するにせ、精液だから。そこで察して?」
「うん、分かった。ごめんね、変な事聞いて」
ニッコリと笑みを浮かべる未来だが、もうその内心ではとある決意を持っていた。
(この家にいる私に聞いてみよう。きっと教えてくれるはずだ)
響の目が泳いだ瞬間、未来は察したのだ。それは気まずいから逸らしたのではなく、何か言いたくない事があるからこその反応だと。
既にこの時の未来は生命のスープに魅入られ始めていた。かつてのクリスがそうなったように、体が疲弊している時程生命のスープはその効果を発揮し、中毒に近い状態にしてしまう。
昨夜響を心配して過ごした未来は、その体と心に疲労を溜め込んでしまったのだ。そこへ嗅がされた生命のスープの匂いは、見事に未来の心を捉えて離さなくなったのである。
そして、それは未来だけではなかった。
(先程から微かに香るこれは……あの日要さんの部屋で嗅いだものだ。だが、それよりも濃厚で芳しい……。こんな匂いをさせるものが本当に酷い味なのだろうか? そもそも要さんのそれは普通の物と異なる上、匂いもここまで異なる以上味なども違っているのでは?)
クリスやマリアと違い翼はあの夜にシキから軽く生命のスープの匂いを教えてもらっている。そのため響から漂う残り香が何かを察する事が出来た。
クリスやマリアも感じ取っているそれだが、二人はそれが何かを知らぬため内心で小首を傾げていた。
(さっきから感じるこの匂いは何だ? この部屋に入った時から感じてたものより強い気がするけど、あの男の匂いみたいなもんか?)
(一体何かしらこの匂い。とても好きな匂いだけど……消臭剤などではなさそうね。じゃあ……もしかしてこの家の匂い?)
彼女達がいる大広間は裏の顔はプレイルーム、つまり乱交部屋。つまりこの部屋にもシキの部屋程ではないにせよ淫臭とも呼ぶべき物が染み付いていると言っても良かった。
とにかく響が治った事。それによりマリアさえも生命のスープの凄さを理解した。
それでも響は念のために体を休めるよう翼から言われ、大人しく割り当ての部屋へと向かい、マリアはその翼やクリスと共に本部へと向かった。謎の黒い影についての情報を得るのと同時に今後の事を話し合うためであった。
「じゃあ行ってくるわね」
「小日向、立花の事を頼む」
「はい」
「まぁさすがのあいつも今日は大人しくしてると思うけどな」
ただ未来は響の世話と見張りを兼ねてシャトーへ残る事とし三人を見送った。
誰もいなくなった転送ポートで息を吐き、未来は意を決して歩き出す。
その目指す先はリビングでありダイニングでもあるかつての玉座の間。そこなら必ず要家の者が一人はいるはずだと考えてだ。
(出来ればこっちの私がいいけど、最悪要さんの奥さんしてる人なら誰でもいい)
もう今の未来の思考は生命のスープの事で占められていた。ここでシキ本人へ行かないのはどこかで彼女は分かっているからだ。そんな事をしてもシキは生命のスープをくれないと。
今は一足飛びに動くのではなく少しずつ目的の物へ近付こう。それが未来の行動の根底にある考えだった。
そうしてリビングへ行った未来はそこにいた妊婦の奏とマリアに話を聞く事にした。
「「生命のスープの味?」」
「はい。やっぱり変な味なんですか?」
そこで二人は未来が既に生命のスープに堕ちかかっている事を察した。何故なら今の未来はかつての小日向未来にそっくりだったからだ。
それでも二人は嘘を吐く事をせず素直な感想を述べた。美味しいと。その答えを聞いた瞬間、未来の目が微かにだが細くなった。
二人へ感謝を述べ、未来が次に向かったのは響の割り当ての部屋――ではなくシキの部屋。ただシキは生憎留守にしていた。今後の事を考え、ドリンク製作のために本部へ向かった後だったのだ。
「どうしよう……」
そんな事を知る由もない未来はどうしたものかとシキの部屋前で考え込む事となる。
その頃シキはと言えば、了子の研究室でとある思いつきを試していた。
「……どう?」
「…………凄いわ。中身の成分が変化してる。本当に神の力でドリンクの効果を上げられるのね」
既に製作済みのドリンクへ神の力を込める事で効力を上げられないかと実験していたのである。それはかつてシェム・ハや彼が転送結晶へやった事からの思いつき。神の力がその物の持つ効果や能力を上昇させるのではと踏んだシキは、試しにと新しくドリンクを製作する前に既存のそれを強化出来ないかと了子へもちかけたのだ。
結果としてそれは成功し、ならばとある分全てのドリンクを強化していくシキ。そして次に新しいドリンクの原料を用意しようとした時だ。
「あら? 誰かしら?」
了子の研究室を訪れる者がいたらしく呼び出し音が鳴ったのである。ただその時点で了子やシキは知り合いではないと察していた。何故なら彼らは呼び出しボタンなど押さずノックするからだ。
故にシキはズボンのファスナーを下げようとしていた手を止めていた。ただドアを開けただけでは見えない位置とはいえ、何かあっては不味いからだ。
「はい? って、あら」
『お忙しいところ申し訳ありません櫻井女史。少しお願いしたい事があります』
確認用モニターに表示された相手を見て了子が小首を捻る。そこに映し出されたのは翼だったからだ。
了子が手元のキーを操作してロックを解除すると扉が開き、翼の視界にシキが映った。
「要さん? こちらにいらしていたんですか」
「まあね。っと、俺はここにいてもいい? もし不味いなら」
「構いません。私は可能ならこちらのギア稼働データをもらえないかと」
「「ギア稼働データ?」」
「はい。既に風鳴司令には許可を頂いています。こちらのデータも次回渡す事になりました」
「成程ねぇ。こっちとそっちじゃギアを使ってる頻度から何から違う事だらけだものね。うん、分かったわ。ちょっと待っててくれる?」
「分かりました」
こうして了子がデータをコピーする間、翼はシキからドリンクについての説明を受ける事となる。
「これが……飲むリンカー、ですか」
「そう。それの強化版かな」
「強化版?」
「えっと、実は初期型は……」
そこで明かされるドリンク開発に関わる話に翼は驚くやら苦笑するやらと反応を見せる。フィーネがほんの試しに作り出した物が後々あちこちへ影響を与えた事を聞いた時など、あまりの事に唖然とするしかなかったのだ。
「では私はこれで。櫻井女史、要さん、ありがとうございます」
「いいって事よん」
「向こうのエル達によろしく」
「はい」
了子からデータを、シキから強化ドリンクを渡され、翼は報告がてら根幹世界へと向かう。
そしてデータもエルフナイン達の興味を惹いたが、一番はやはりドリンクだった。
「これが飲むリンカーデスか……」
「どんな味なんだろう?」
「副作用などはないのか?」
「向こうでマリア達旧F.I.Sの者達が使用し、奏達も栄養ドリンクの感覚で使用していたそうです。何よりあのフィーネが自分のために作った物ですから」
「成程なぁ。安全性が確立されてるって言う説得力が凄いな、それ」
「そうね。司令、もし可能なら向こうからこれをいくつかもらえないでしょうか? そうすれば将来的にもしもの際の助けになります」
「絶唱を気軽に使用出来るようになる物、でしたか。たしかに皆さんの人数分あれば、今後の出動や戦闘に役立ちます」
エルフナインの発言に弦十郎は深く頷き翼へ顔を向けた。彼女も弦十郎の方を向いており、その真っ直ぐな眼差しがかち合う。
「翼、どうだ? このドリンクとやらはこちらへ融通が利きそうか?」
「多少の譲渡は難しくはないと思います。ただ最初に話したように要さんしか原料を用意出来ないため、不定期になる可能性があります」
「そこは仕方がないだろう。だがあれば心強い。正直平行世界関係の問題が残り続けている今、いざと言う時の備えはいくらあってもいい。可能ならば平行世界の奏やセレナ君の分も用意したいぐらいだ」
世界蛇を倒した今もまだ安心出来ないと弦十郎は考えていた。何しろ今回のような世界が存在していたのだ。九人の装者が勢揃いし、それだけでなく亡くなるはずのフィーネ達敵対した者達さえも手を取り合い、シェム・ハまでも味方にしている可能性など弦十郎だけでなく誰もが有り得ないと思っていたのだ。
つまり、それとは逆の世界も存在しておかしくないと言える。全ての装者が死ぬもしくは何らかの事情で人類へ敵対する存在となるという可能性だ。
(ないと思いたいが、例の響君の世界の例もある。翼さえも今のようにならない可能性があった以上、全ての可能性を考慮し備えておかねばな……)
その後翼はエルフナインの手からギャラルホルン関係やギア関係のデータを受け取り、再びシキ達の世界へと戻っていった。
さて、残されたドリンクは少量が分析へ回され、残りは試しにと切歌と調が飲んでみる事となったのだが……
「えへへ、楽しみデス」
「美味しいとは思わない方がいいよ切ちゃん」
「それはそうかもしれないデスが、もしかしてがあるかもデスよ?」
「どうしてそう思うの?」
「向こうのアタシが飲んでたからデス!」
「……何だろう、妙に説得力がある気がする……」
胸を張って自慢げな切歌に調は若干頭を抱えるような体勢でそう呟いた。ドリンクが苦みや渋みに溢れる味であれば暁切歌がリンカー要らずとなるまで飲めるだろうかと、そう調も思ったのである。
こうして二人はドリンクを半分ずつ分け合って飲み……
「「美味しい(オイシイデス)……」」
その味に目を見開いて驚いたのだった。そしてギアをすぐに展開してみたところ、強化されたドリンクの効果もあってか二人のギアはセミエクスドライブとなったのだ。
「これって……」
「初めて見るギアデスね……」
その様子をモニタリングしていたエルフナインは興奮を抑えきれないでいた。
『凄いですっ! 今のお二人のギア出力はかつてのイグナイトを超えています!』
「イグナイトを……」
「超えてる、デスか」
『それに背部には翼もありますし、飛行も可能だとするとアマルガムよりも汎用性が上ですっ!』
「じゃあやっぱりこれ、エクスドライブ?」
「う~ん……近い感じはするデスけどあれ程の力強さは感じないデスよ?」
『ならそれに近いという事でセミエクスドライブと名付けましょう! やはりそのドリンクは凄い効果を持っているようですねっ!』
切歌と調は聞こえてくるエルフナインの声に何度も瞬きをした。普段は落ち着いているエルフナインがここまで興奮しているのが珍しいためである。
何故ここまでエルフナインが興奮しているかと言えば、神の力というものがギアへ作用するとどうなるかという答えの一つが目の前にあったからであった。
(もし、もし神の力を直接注がれた場合、エクスドライブを超えるギアが出現するかもしれない! デュオレリックさえも超える、ギアの見知らぬ姿がっ!)
知的好奇心の強いエルフナインにとって、神の力はこれまで恐怖の対象でしかなかった。それがまさか研究出来るかもしれないという事に久々の探究者モードとなっていたのだ。
そうして根幹世界でドリンクの凄さが報告されている頃、未来は部屋で休んでいた響と向かい合って話をしていた。ただし響の表情は苦いものであり、未来の表情は険しいものとなっている。
「どういう事なの響。どうして嘘吐いたか教えてくれる?」
「そ、それは……」
「この世界の奏さんもマリアさんも生命のスープは美味しいって言ってたけど、何で響はそれを隠したの? その理由を教えて?」
そう、二人の空気がぎくしゃくしている理由はそれだった。何故生命のスープに関して嘘を吐いたのか。それを追及され響は苦い顔をしていたのだ。
そこで未来へ何も言い返せなかった時点で響に勝ち目はなかった。結局響はこの後未来へ真実を話す事となる。
そこで教えられた事に未来は自身の内に生まれつつあったものがハッキリと形を持ったのを実感する。
それは自分も生命のスープを飲んでみたいというもの。何しろ親友の響がこう言ったのだ。
――ずっとおちんちんしゃぶっていたいって思った。
ただ響は何故味を教えなかったのかをこう告げた。味を正しく伝えるとどこかで気になってしまって気持ちが乱れてしまうのではないかと。実際未来が気になった事で普段らしからぬ行動を取っている。それを考えれば響の言葉はあながち間違っているとは言えなかった。
例えその意見が、響による口から出まかせだと分かっていたとしても。
「で、俺の帰りを待ってた訳だ」
「……はい」
そして今、未来はシキの部屋にいた。ドリンク製作や成分献血などを終えて部屋で休憩しようと戻ったシキを未来が出迎えたのだ。
――あの、要さんに生命のスープに関してお願いがあります。
その出だしでシキはある予感を抱きながら部屋へ未来を招き入れ、どういう事を問い質した。そこで未来の口から出たのは今後の事に備えておきたい事と、自分は周囲に比べて錬度が低いためギアが強化出来た方が助かるという話だった。
ただし、これを聞いたシキは直感で気付いていた。
(これ、きっと建て前だよなぁ。本音は生命のスープに興味が出ちゃって、それを味わってみたいってやつだろう)
これまで愛する妻達が辿った道の一つ。それを目の前の少女が辿っている事を察したシキはどうするべきかと考える。
かつての彼ならば性欲に正直に未来をものにしようと動いただろうが、今や彼は実子や養子を持つ立派な父である。故に生命のスープの効果や危険性も最初に明らかにし、興味を惹くだろう要素を隠していたのだから。
「うん、小日向さん。ハッキリ言うよ。今の君は平静さを失ってる」
「っ」
「それとこれも伝えておく。今の状態で君が生命のスープ、いや俺の精液を飲んだら確実に坂から転がり落ちるように性欲に負けるよ?」
敢えて精液と言う表現を使ってシキは未来の頭と心へ訴えかけた。本当に君は好きでもない男の精液を、飲まなくてもいい状態で飲むのかと。
それがまだ恋人を得た事のない少女にどれだけ強く響くかを理解していたからだ。響は飲まないといけない状態だった。だからシキも動く事が出来た。だが未来はそうではない以上シキは毅然とした対応を取る事にしたのだ。
「そして今後君に好きな相手が出来た時、嫌でも思い出すんだ。自分は好きでもない男と、キスどころかデートさえした事ない相手の精液を、必要もないのに飲んだんだって」
シキの言葉に何も言えない未来は軽く俯いてしまう。そんな彼女を見てシキは深く頭を下げた。
「本当にすまない。今の君をそうしてしまったのはきっと俺の不注意だ。俺が君達のいる場所で了子といやらしい事をしなければこんな事には……」
「そんなっ! 要さんが、その、エッチな気分になったのは一晩中響に力を使ってくれたから、なんですよね。だから頭上げてください」
「小日向さん……」
「そ、そもそも要さんは沢山奥さんがいる人です。なら、きっとそういう欲求が強い人なんだと思いますし、私達がいる方が普通じゃないんです。そこで疲れ果てちゃったら、そういう風になるのが男の人ですから」
「……ありがとう小日向さん。君は、その、俺みたいな男に引っかからないようにね」
「それ、こっちの私に言っても?」
「あっ……い、今のは君の胸の内にしまっておいてくれると……」
情けなく頭を掻くシキを見つめ、未来は小さく笑みを浮かべた。目の前の男性から年上らしさを感じなかったためだ。
(考えてみたら、目の前の人はある意味私が旦那さんにしようと思ってる人なんだよね……。そう思って見ると、何となく不思議な気分かも……)
もう未来の中にあった謎の熱は勢いを失っていた。ただ、別の、熱に似た何かが生まれ始めていたが。
それは響があの風呂場でのやり取りで抱いたものと似ていた。それよりは弱く微かな火種ではあるが、けれどもたしかに生まれたものである。
不思議な話だが、響も未来もある意味ではこの世界の自分達と真逆の関わり方でシキへ好意を抱き始めていた。
生命のスープなしにシキへ心惹かれていった響とドリンクを飲まされた事で潜在的にシキへ心惹かれる素養を持った未来。それが、根幹世界の二人は真逆だったのだから。
その後少しだけ二人は会話をし、昼寝するシキと別れて未来は部屋の外へ出たところでクリスと出くわしたのだ。
「クリス? 帰ってきたんだ」
「おう。まぁマリアの奴は先輩と一緒に戻るために残ってるけどな」
「そうなんだ。どうして?」
「何でも後輩達がどうしてるかを聞きたいんだと。で、何でここに?」
「えっと……」
一瞬どう話したものかと考えた未来だが、一部を隠して事実を話し始めた。響が生命のスープを摂取したからそれに関しての詳しい話を聞いていたと。
それに関してクリスは何の疑いも抱かなかった。未来が響の事を心配して動くなど当たり前すぎたのだ。
ただ……
(あの影みたいな奴の狙いがこっちの無力化からの衰弱死だとすれば、あたしらも念のために生命のスープをもらっておいた方がいいかもしれねぇな)
謎の黒い影。それとの再戦を見据えて前準備をしておくべきと考えるクリスだが、すぐにその頬が朱に染まる。
(けど……なぁ……)
思い出すのは生命のスープの正体。性的な方面には初心な反応を示すクリスとしては、やはり精液を飲むという事には抵抗しかない。それでも、実際目の当たりにした響の衰弱速度とその後の対処内容を考えれば打てる手を打っておかないのは危険だとも分かっていた。
「先輩達が戻ってきたらあのバカ抜きで相談したい事がある」
その真剣みを帯びた声に未来は息を呑んだ。考えた流れはどうであれ、目の前の相手もまた自分と同じ結論を出したのだと察して。
当然未来は先程シキから言われた事をクリスへ告げた。勿論自分が生命のスープを飲みたがった事は伏せてだ。だが未来とは違い、今後の戦闘を見据えただけのクリスはシキの言葉に異を唱えた。
「焦るのが当然だろ。いいか? あいつが触れた相手を衰弱させるだけか、あるいは適合係数を低下させるならまだいい。だけどな? あいつはその両方を行い、しかも本来ならそのまま死ぬんだ。こっちの世界の奴らは定期的に生命のスープとやらをもらってるからいいかもしれねぇ。でもあたしらはそうじゃねぇんだ。だったら焦るのが普通なんだよ」
正論だった。先程までの未来には言えない正論であった。欲望から動いた未来と理性から動こうとしているクリスにはそれだけの差があったのだ。
何も言えなくなった未来へクリスは強く言い過ぎたと感じたのだろう。やや申し訳なさそうな表情を見せた。
「とにかくだ。あの野郎が寝てちまった以上、今すぐって訳にはいかねぇ。先輩達が何て言うかは分からないが、あたしはいざとなる前に摂取しておくべきと思うぜ」
「そう、だね」
話はそこで終わった。未来はクリスと共にリビングへ向かいそこにいたスコア達やミラアルクと談笑する事となる。
その時間は穏やかであり、また新鮮さと驚きにも満ちていた。戦う事しか出来なかった者達と笑い合い、言葉を交わす事。未来もクリスも初めてではないが、やはりまだ慣れない時間である。
けれど、それがとても愛おしく、また嬉しく、少し切ないのだ。ずっと抱き締めていたいようなあたたかさと微かな悲しさに満ちた時間はそこへ翼がマリアと共に現れた事で幕となった。
「小日向、雪音もここにいてくれたか」
「翼さん、おかえりなさい」
「何か進展があったんですか先輩」
「進展、と呼べるかは分からないが、こちらへ今後ドリンクを少し分けてもらえる事となった」
「ドリンクって……生命のスープを使った?」
未来の問いかけに翼とマリアが揃って頷く。了子だけでなく弦十郎からの許可もあっさりと出た事を思い出したのか、その表情はどこか意外そうなものであったが。
「シキさんの仕事が増えますね」
そこへ苦笑交じりに告げられた言葉に異邦人四人の顔が動く。それを言った張本人であるファラはどこか温かみを感じる笑みを浮かべてこう続けた。それが貴方達の役に立つならと張り切るでしょうけど、と。
その意味する事を思い浮かべ、四つの赤い花が咲くのを見て残りの者達が小さく苦笑した。もうこんな事で赤面する程初心な者は要家にはいなかったためだ。
「まぁあんた達の話を聞いてると色々厄介な事多そうだし、あいつだけでなくガリィちゃん達も可能な限り手を貸してあげなくもないわよ」
「平行世界というものが無数に存在し、そこでの出来事が私達にも影響するかもしれないなら当然ですね」
響達の話で知った世界蛇関連の出来事は要家の者達にとっても他人事ではなかった。ただ世界蛇が様々な世界に影響力を見せた時でもシキ達の世界にそれらしい影響はなかったのだ。
だが、知った以上は見過ごせない。それがシキであり、彼に関わっている者達である。お人よしという表現が相応しい者達なのだから。
その“あったかさ”に翼達は複雑な心境となる。視界に映る者達の多くは、彼女達が戦い、倒してきた者達でもあるのだ。
それが見せる優しい笑みや心遣いは否応なく彼女達の心を締め付け、苦しめ、癒す。なかった可能性と分かっていながらも、もしかしたらと考えずにはいられないためだ。
要シキがいればこその光景と分かっている。それでも、人は“もしかしたら”を思わずにはいられない。何かが違っていれば、何かが変わっていれば、目の前の光景に近いものがあり得たかもしれないと。
翼達が穏やかだけれど心騒ぐ時間を過ごしている頃、響は一人部屋のベッドの上で横になっていた。
「……どうしよう? 私、あれからずっと要さんの事考えてる……」
未来から問い詰められた際、咄嗟に誤魔化すような意見を述べた響。その背景には芽生えだした淡い恋心があった。
それは無理もないと言えた。立花響の青春は、その出だしから大きく躓いたと言っても過言ではないからだ。
ツヴァイウィングライブでの悲惨な出来事から始まる不幸の連鎖。それにより彼女の中学生時代はほぼ陰鬱で辛いものとなった。当然男子に好意を寄せられるはずもなく、進んだ進学先は女子校ともなれば異性との接点など有り得るはずはない。
自然響は同年代どころか異性そのものとの関わりを失った。街中で声をかけられる事もなく、万一あったとしてもシンフォギア装者としての役目を胸に秘めた響が応じる事はなかっただろう。
そんな彼女へ、装者としての苦労や辛さを理解し寄り添える年上男性が現れたのだ。それも、ある意味で立花響が惚れてしまった実績を持つ、そんな存在が。
(私を可愛いって、魅力的って言ってくれて、それが嘘じゃないのはこっちの私を奥さんにしようとしてる事が証明してる。しかも、その気になったら要さんは神の力で戦ってもくれる……)
ギアがないからこそ装者よりも強い風鳴弦十郎や緒川慎次は戦場へ出られない。しかしシキはギアがなくても神の力でノイズと戦う事が可能である。それも、響がシキへ心惹かれる要素の一つであった。
(いざとなったら……要さんは……)
思い出されるのはあの謎の黒い影と戦った時の事。打つ手がなくなった自分達を助けるように現れ、一撃の下に黒い影を撤退させたシキの姿だった。
(私を……助けてくれる。ううん、助けに来てくれて、しかもそれが無理じゃないんだ……)
キュンと響の胸が高鳴る。忘れがちになるが、立花響は何も夢見る乙女と縁遠い存在ではない。むしろ内にはそういう顔を秘めている、年頃の少女なのだ。
故にこの世界へ来てからのシキとの接触はある意味で少女漫画のようでもあった。ふとした事で知り合い、それが自分の持つ別の可能性が選んだ男性であり、それも本来なら矢面に立つ自分を守る事が可能な力を持つ存在。それが要シキという男だ。
「世界を敵に回しても、きっと要さんは……」
あの発令所での弦十郎の説教を聞いて響は察したのだ。シキが神の力を有している事は国家機密に類する事なのだろうと。それがシキの事情を知らぬ者に知れれば大問題になる事も。
それでもあの時のシキは守りたい者達を守るために動いた。それもまた響が心惹かれてしまう要素。いざとなれば国ではなく人を取る覚悟。それは立花響と近い選択であり決意でもある。
「いいなぁ……」
その呟きは一体何に対してのものだったのだろうか。世界よりも愛する者を迷う事なく選べるシキに、だろうか? それとも、そんな男が傍にいるもう一人の自分に、だろうか?
ただ一つ言えるのは、何かを羨む響の手がゆっくりと下半身へ、股間の辺りへ伸びている事だ。そこは静かに熱を持ち始めている。原因は簡単、響がシキの事を考え、生命のスープをもらった時の事を思い出しているからだった。
「んっ……」
クチュっという音が微かに響の鼓膜を揺らす。自慰などこれまで響はした事がなかった。
何せ寮生活では未来と常に床を同じにしていたのだ。そんな行為を行えるはずもない。それにその頃の響にとっては食事や睡眠こそが一番のストレス解消の手段だった事もある。
「……こんなになってる」
自分の性器を触った手を持ち上げて視界に入れた響は、どこか遠い事のような声でそう呟いた。指を中へ入れた訳でもなければ、ましてや掻き回したり刺激した訳でもない。
ただ触れただけ。それだけで響の手は愛液でベッタリと濡れていた。それが意味する事を思い、響は頬を赤め、また股を濡らす。
そこから響は自分を慰めた。拙い手付きでただシキの名を呼びながら。
「要さぁん……んんっ……切ないよぉ要さぁん……」
クチュクチュと音を立てる事も気にせず、響は無心で快楽を貪った。脳裏に浮かぶのはシキの逞しく雄々しいペニス。それを口に咥えた時の味と匂い、そして硬さと熱さを思い出し、響は自ら深みへと堕ちていく。
それはある意味でもう一人の立花響と似た流れ。生命のスープを一舐めし、マッサージで感じた快楽を切っ掛けに自慰を始めてしまった立花響。それと同じ展開を今響は辿っていたのだ。
今までの根幹世界の装者達を例えるのなら、それは花咲く時期を待つ蕾が正しいだろう。故に響は花開こうとしていた。蕾をノック出来る存在と出会い、その開花を誘う栄養をもらった事で。
「要さんっ♡ 要さんっ♡ ああっ! そのオチンチンで私もお母さんにしてぇ♡」
瞬間脳裏に浮かぶのは大きなお腹をした自分とそれを優しい笑顔で見つめるシキ。
「~~~~~っ♡♡♡」
それが、合図だった。響の指が微かにクリトリスへ触れてしまい、その強烈な刺激に響は絶頂を迎えたのである。
(あぁ……そっかぁ……そうなんだぁ……。こっちの私が何で要さんの傍にいるか分かっちゃったぁ……)
朦朧とする意識の中で響はだらしなく笑みを浮かべていた。何故シキの周囲にあれだけの女性達が侍っているのか。それはこれなのだと。みなシキの子を産み、彼の愛情を感じていたいのだろうと。
こうして響はそのまま意識を手放してしまう。その頃未来達根幹世界からの来訪者四人は揃ってシキの部屋にいた。
「って訳だ」
仮眠から目覚めたシキは水を飲もうとキッチンへ向かい、そこで未来達から話があると言われ現状となっていた。
必ず現れるだろう謎の黒い影。それに対する対策として自分達は前もって生命のスープを摂取しておきたい。それがクリスが告げた内容である。
「……話は分かった。でも、本当にいいのか?」
困り顔で尋ねるシキには明確な迷いがあった。響は事情もあって性行為に近い形での摂取となったが、クリス達はまだ健康なままだ。ならばドリンクでも十分なのではと思ったのである。
だがそれを察した翼がやや赤い顔で頷いた。
「は、はい。立花も言っていたではありませんか。もしもドリンクなどで効果がなかった場合……」
「私達は貴方の精液を二度も口にしないといけなくなるの。なら、一度で確実に済む方法を選ぶわ」
「そういうこった」
平然としているように見えるが翼だけなくマリアもクリスもその顔は若干赤みを帯びている。そこに懐かしさにも似たものを感じてシキは笑みを浮かべた。
「そっか……」
そして彼も覚悟が決まった。やろうとしている事は最低かもしれないが、それで守れる命が、未来があるならと。
「じゃあ、場所を変えよう。ここじゃいくら何でも、ね」
それが夫婦の営みを行うように思えてしまうという事だと気付き、四人の乙女は赤面した。
男湯と書かれた暖簾の先にある、大浴場と言うには些か狭い空間。それが現状シキ以外に使う者はいない男性用の浴室だった。
そこに今、彼の妻でも家族でもない女性達が四人いた。しかも全員水着姿である。ただし、それは普通の水着などではない。シンフォギアであった。心象変化によって彼女達が会得した、ギアの局地適応型の一つがそれである。
「は~……確かに水着ギアだな。まさか君達も出来るなんてなぁ」
感心するようにまじまじと四人の格好を見つめるシキには一切の邪心がなかった。何せ彼も水着ギアは見た事があったためである。
ただし、だからと言って見られる側が平気と言う訳ではない。仕事でそういう格好をする事もあった翼やマリアはともかく、クリスと未来はそんなシキの視線に気恥ずかしそうに体を隠していたのだ。
「そ、それで、何で風呂なんかに?」
「あ~……それはね」
訝しむようなクリスへシキは響にもした説明を始める。その性的な内容に四人の乙女はそれぞれ濃淡こそあれ頬に朱を入れる事となった。
そしてシキは間断なく次の手を打つ。響相手には緊張を解そうと動いたが、今回はあくまで今後のための対策であるという意識から四人への配慮は最低限として。
「それじゃあまず目を閉じてくれ」
言われるままに目を閉じる四人だが、既に翼と未来はその後の事を予想して心臓の鼓動を速めていた。
(お、おそらく要さんは自分の履いている水着を脱ぐのだろう。そうなったらあの匂いが……っ)
(い、いよいよなんだ……。わ、私、これからとってもエッチな事する事になるんだ……っ)
もう生命のスープの匂いを教えられた二人は、これから待つ事へ不安ではなく期待や興奮をしていた。響が危惧していた事はとっくに起きていたのである。
対してまだ生命のスープの匂いを知らないクリスとマリアはと言うと……
(な、何だか自分から言い出した事なのに止めたくなってきたぜ……。でも、あの黒い奴はやべぇ。このままじゃ死ぬかもしれないってんなら……)
(彼の持つ能力がなければ死ぬ可能性が高い。だからそれを前もって受けておく……これは分かる。で、でも、それがふぇ、フェラチオなんて……っ)
複雑な心境で目を閉じる二人。そこへ漂い始める、いや急に出現する匂いがあった。それは翼と未来には待望の、クリスとマリアには疑問の匂い。
「じゃあ、始める前に質問に答えて欲しい。手を挙げるだけでいいからね。その、おそらく君達はまだ異性とキスをした事はないと思うけど、その前に唇に触れるのがチンポでいい? いいと思うなら手を挙げて」
その質問に四人が同時に息を呑み、手を動かそうとはしなかった。
「はい、もういいよ。なら次だ。チンポにキスをしないでスープを飲めるならそうしたい? そうなら手を挙げて」
そこで四人が同時に手を挙げた。それを見届け、シキはある事を決意する。
「ありがとう。もう目を開けていいよ」
言われるまま四人は目を開けた。するとそこには小さく笑みを浮かべるシキがいた。
「君達の意見は同じだったよ。なので俺の言う通りに移動してくれるかい?」
シキが頼んだのは、未来達に浴室の四隅へ分散してもらい、その場へ座ってもらう事だった。それが何を意図してなのかは分からぬものの、あの質問をしたシキを信じて四人はそれに従った。
更にシキは決して目を開けないようにと告げる。普通ならば何かいかがわしい行為をするつもりではと思うクリスやマリアも、自分そっくりであり、より女性として魅力を増している存在と仲睦まじいシキがそんな事をするはずないと判断し、何も言う事無くその通りに行動した。
「……よし」
それぞれの距離がある程度離れた事を見届け、シキは静かに動き出す。まずは未来へと接近したシキは、彼女の耳元へ顔を寄せるとこう囁いた。
――そのまま口を開けて舌を伸ばして。
言われるままに間抜けな状態を晒す未来だが、その事が彼女に性的興奮を覚えさせていた。
(今私、とっても情けない事してる……。しかもそれを要さんに見られてる……っ)
ジュンと股を濡らし、乳首が主張を始める未来。それは今未来の目の前に接近しつつある物から出ている液体による効果。生命のスープの先走りの匂いがそうさせていたのだった。
「いいかい小日向さん。そのままでいるんだよ」
「ふぁ、ふぁい……」
舌を伸ばしたままで答える未来。その事に気付く事もなく翼達はそれぞれの場所で目を閉じて座っている。これもシキなりの配慮。何をするかは分かっているが、それを他者に見られたくはないだろうという配慮と同時に、自身のペニスを見たくないだろうという配慮でもあったのだ。
手早く済ませようと思ってシキが履いている水着を脱ぐ。そうなれば当然……
「ふわ~……」
外気に完全に触れる事となったペニスから強い匂いが流れ、より一層未来の思考を変えていく事となる。
今までで一番濃い匂いと思う程のそれに未来の本能が疼き出したのだ。この男の子を産むべきだと。
その内なる声に未来は悶える。そう、響よりも強く未来は生命のスープに魅入られてしまっていると言えた。その理由はただ一つ。彼女がシェム・ハの依り代となったためだ。
(何だろう……頭がぼ~っとする。フワフワしてきて、でもそれが凄く幸せで心地良くって……このままその感覚に体を任せちゃいたいぐらいに……)
神の力を宿した今のシキの生命のスープ。それを未来の中で眠ったシェム・ハが感じ取っていたのだ。
「……いくよ、小日向さん……っ!」
勃起したペニスを手で支え、伸ばされた未来の舌先へ亀頭を接近させるやシキは彼女への想いとその無事を願って射精した。熱く濃い精液が未来の舌や口内へと吐き出されていく。その生命のスープを受け止め、味わい、未来は静かに体を震わせた。
(美味しい……っ♡ 美味しいよぉ♡ これが、これが生命のスープなんだっ♡ 響はこれを知ったから独り占めしようとしたんだねっ♡ 精液がこんなに美味しいのは要さんだけ……要さんだけなんだ……っ♡)
うっとりとした表情で舌を口内へと戻す未来だったが、その舌の上にある精液を味わうように転がし始めて二度目の絶頂を迎える事となる。
(ああっ! 凄いっ! これ凄いよぉ♡ 舌の上で転がしてみたらもっと美味しいって分かったぁ♡ もっと、もっと欲しい……。いっそ直接もらったらもっと美味しいのかな? 美味しいスープを、美味しいヌルヌルを、もっと私に飲ませて欲しいよぉ♡)
水着の下を愛液でぐっしょりと濡らしながら未来はシキの精液を味わって悦に浸る。
それを見る事無くシキは既に動き出しており、次はマリアの前に立っていた。
勿論彼女へも未来へ告げたのと同じ内容を囁き、それを聞いたマリアは内心で覚悟を決めた。
(始まるのね……。おそらく舌の上に射精するんだわ……)
その予想通りシキはマリアの舌の上へ射精する。ただ、当然全てがそこへ乗り切る訳もなくある程度は口内へ直接侵入する事となり……
(っ?! な、何よこれっ!? い、今私が味わってるのは精液なのよ、ね? な、なのに、なのにっ! どうしてこんなに美味しいのっ!? それにこの匂いはあの時嗅いだものっ!? ああっ! ダメっ! ダメぇ♡ こんな物を味わうなんて変態よぉ♡ けど、勝手に体がそう動いてしまう……っ♡ 要シキの精液を味わうように舌や口が動いてしまうのぉ♡)
かつてヴァネッサがシキと関係を持った際、一番最後の加入にも関わらず奏達と大差がない程に彼へ入れ込んでしまった。その理由は生命のスープに加えて神の力が宿った事だった。
であるのなら、その頃よりも神の力を増した今のシキはどれ程女性を魅了するスープを作り出せるのだろうか。しかも、それを味わうのはこれまで男と深い仲になった事などない上にドリンクさえ飲んだ事のない装者達である。
その答えがここにあった。初めて味わう生命のスープ。その味とあったかさにマリアは最年長である事も忘れ、ただただ恍惚の表情のままじっくりと口の中にある生命のスープを味わい、股を濡らし、乳首を勃起させ、しまいにはそのまま失禁してしまったのだ。
(あぁ、だめ……体に力が入らないわ……っ♡ 情けないと、いつもならそう思うはずなのに思えないのは、この味と匂い、そして温もりが私の全身を包み、癒しているからかしら……っ♡ リンカー使用で知らず傷付いていた部分を埋めて治している。そんな気がするわね……)
すると少し熱い液体が臀部や足元を流れていくのをマリアは感じた。先程までとは違い、染み出しているのではなく勢いを感じるそれで、彼女はそれがお湯であると察して目を開ける。
「っ♡」
そこでまず目に入ったのは風呂桶を手にして少し申し訳なさそうな顔をするシキ。その次が雄々しく反り返ったペニスであった。
「ごめん。驚かせたかな」
「え、ええ……」
「すまない。でも、そのままにしておくと色々と、さ」
それが自分の粗相を誤魔化すためと理解し、マリアは一瞬にして顔を赤くした。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして。それと、また目を閉じてくれると助かるよ。まだ終わってないから」
「わ、分かったわ……」
再び目を閉じるマリアだが、その心は今までにない程騒がしくなっていた。
(だ、ダメよっ! 狼狽えてはダメっ! ……見せてはいけないところを見せた。けど彼はそれを意にも介していないように振舞ってくれた。……もし本当に気にしてないとしたらそれはそれで思うところはあるけど、今はその配慮に感謝しましょう。それにしても、あ、あんな風になるのね、男性器って……っ)
脳裏に焼き付いた勃起したペニスの残像。それを思い出し、先程までとは違った意味で顔を赤くするマリアを後目にシキは次の相手の前へと移動していた。
その相手であるクリスにも未来やマリアと同様の事を囁き、シキは勃起したペニスを伸ばされた舌の上へ触れるか触れないかの位置へ近付ける。
(く、来るんだよ、な? ああっくそっ! 何でこんな目にって……あの頃に比べればマシってもんか)
脳裏に一瞬浮かんで消える幼少期の忌まわしい記憶。それを無理矢理記憶の底へ押し込めるようにクリスが思考を切り換えようとしたその瞬間だった。
(っ?! あ、あったけぇもんが舌の上に……っ!?)
そう認識した次の瞬間には、クリスの体が大きく震えた。絶頂したのである。実はマリアが失禁してしまった理由とクリスがすぐ絶頂した理由は同じであった。
忘れられているかもしれないが、生命のスープは特定の相手を強くイメージして出した場合、その相手用の特別仕様となってより効果が上昇する。更に言えば、マリアは本人も感じ取っていたようにかつてのリンカー使用による体への見えないダメージがあったためによりスープが染み渡り、クリスは誰よりも温もりに飢えている体質のためにスープが染み渡ったのだ。
シキの、愛する女性達にそっくりな少女達への想いと願いが込められた生命のスープは、強力になった神の力も相まって凄まじい程の効果を発揮していた。その結果が未来の完全なる堕落であり、マリアの失禁であり、クリスの即時絶頂だった。
(う、うめぇ……♡ あったかくて、優しくて、ずっとこうしていたいぐらいだぜ……。こんなもん知っちまったら、味わっちまったらぁ、もうあたしは……あたしはぁ♡)
目を閉じたまま口を閉じて精液をゆっくりと味わい続けるクリス。きっと目を開けていても同じ表情を続けただろう程の幸せな、満ち足りた笑みを浮かべ、彼女は白濁の粘液を愛おしく思って味わっていた。
ギアでもある水着の下部分を変色させ、クリスは夢中でシキの愛情がこもった精液をじっくりと嚥下していく。
それを見る事なくシキは最後の一人である翼の前へと移動完了していた。
「ぁ……」
そして翼はシキから漂う生命のスープの匂いでそれに気付いて知らず笑みを浮かべた。
その反応にシキは記憶の中にあるかつての翼を思い返して苦笑いを浮かべる。彼が現状を築く事となる切っ掛けは、翼が生命のスープの匂いに我を失い欲した事にあるのだから。
(やっぱり翼はどこでも翼、か……)
そう思ったのがいけなかったのか、今までの三人よりも強く想いを込めた生命のスープが翼の舌の上を襲う事となる。それは同時にもう一人の風鳴翼が女性らしく生きる事を誓うに至った愛情を受け止める事でもあった。
(な、何っ!? こ、この温かさはっ! この優しい味は何なのっ!?)
精液だと分かっているのに嫌悪などなく、むしろ安心や幸福を感じる事に翼は戸惑う。だが、それもすぐに消えていった。
(あぁ……この安らぎは何? 愛されてると、思われていると感じてしまう……。もしや、これが神の力? いや違う……。きっとこれは要さんの想いだ。私への、強く深い想い。あの謎の相手と相対しても無事で済むようにとの願いと、こんな事をさせてしまった事への謝罪。そして、妻とするもう一人の私達に似ているからこその、強い愛……っ♡)
ブルリと体を震わせ、翼は一気に口の中の精液を飲み下した。その味に翼も失禁し、しかも意識を失ったのである。
「っと……」
グラッと倒れそうになる翼の体を咄嗟に右腕で受け止め、シキは苦笑しつつ左手に持った風呂桶の中に神の力で湯船の湯を転送させるや翼の股間へとかける。更に翼へ神の力を少量流して意識を覚醒させたのだ。
「……わたしは……」
「気が付いた?」
ぼんやりと目を開けて顔を上向ける翼。当然視界の中に映るのは優しく微笑むシキの顔だった。
「……かなめさん?」
「そう。さて、じゃあ俺はこれで失礼させてもらうよ。君達は軽く汗を流して温まってから出てくるといい。すぐタオルを用意してくるから」
「あっ、はい……っ!?」
そこで翼も見てしまう。シキの雄々しいペニスを。しかも亀頭には射精の名残があった。それを確認した瞬間、翼は思わずシキを呼びとめてしまった。
「あ、あのっ」
「ん?」
「その……」
綺麗にします。そう消え入るような声で告げた翼にシキは驚く。その隙を突く形で翼はシキへ接近すると彼が止める間も無く口を開けて……
「うあっ……か、風鳴さん……」
躊躇う事もなく亀頭を含んだだけでなく舌を使って舐め回し始めたのだ。
(美味しいっ♡ 心なしか先程よりも美味しいと感じる……っ♡ これが、これが立花の言っていた意味か。直接もらうとは、こうして口に摩羅を含み奉仕する事なのだ♡♡)
(ま、不味いっ! 今の風鳴さんはいつかの翼状態だ! こうなったら……っ)
もうペニスに付着していた精液を全て舐め取ったにも関わらず、翼はフェラチオを続けていた。それが何を意味するかを瞬時に理解しシキは翼を鋭くにらみ付けると低い声を発した。
「そこまでにしようか」
「っ!?」
シキから放たれたのは声だけではない。翼だけに向けて威圧するような空気までも発したのだ。それに翼が正気を取り戻してペニスから口を離す。それを見てシキはすぐに表情を緩めた。
「じゃあ、後はごゆっくり」
「は、はい……」
静かに風呂場を後にするシキを見送り、翼はそっと胸へ手を当てた。
「……速い、ね」
心音は早鐘のように速度を上げていて、それが何からくる結果かを理解して翼は熱っぽい吐息を漏らした。
「要シキさん、か……。先程の鋭い雰囲気は、どこか叔父様のようだった……」
(それだけではない。こちらで見たお父様のような柔らかい雰囲気もあった……)
翼は知らぬがその二人は共にシキが目標とする者達である。シキにとっての父であり兄でもある弦十郎と、翼のような複雑な出生の存在を実の娘として深い愛情を持って育てた八紘。
今や四児の父になったシキにとっては、二人はいつまでも目指すべき目標なのだ。だからこそ神の力という人知を超えた力を持った今でも、己を厳しく律していられるのだから。
この後翼によって未来達はそれぞれ目を開け、ギアを解除してシャワーを済ませて体を湯船で温めて浴室を後にする。ただし、それぞれが決して口にしなかった事があった。
(体が、熱い……。これはやはり……)
(くそっ……体の奥がざわついてやがる。これってつまり……)
(下腹部の疼きと渇きにも似た感覚がある。間違いなくこれは……)
(さっきからずっとお腹の下がムズムズする……。じゃあ響が黙っておこうとした理由って、生命のスープの味だけじゃなくて……)
体をバスタオルで拭きながら四人は心の中で呟く。
――セックスしたいって、そういう事か……。
何も進展していないかもしれませんがご容赦を(汗
じ、次回は色々動く予定ですので……。