※この作品はR-18です。

The Unlimited Horizon   作:白臼

12 / 102
第十話 隠し部屋(※)

 

 

 

 よっしゃ、竿ゲット。

 私は心の中で人知れずガッツポーズをしていた。

 新しい男(あるいは女)を引っ掛けてベッドに連れ込むのは、新作のエロ本やAVを買って封を解くのにも似た高揚感がある。

 無論地雷を踏んで爆死する危険性も考慮しなくてはいけないが、その辺りは己の審美眼が問われるところだ。

 

 私の前方を歩くその男――――――キムロを観察する。

 武士らしく少々お堅い性格をしているということは先ほどの会話からある程度読み取ることができた。

 だが、それと同時にこの私の美少女ぶり(自賛)と色香に心が揺れているのも同時に分かった。

 少し上目遣いでおねだりしたり、満面の笑みで微笑みかけたりしたときに顔が赤くなったり目が泳いだりしていたのがその証拠だ。

 まぁ、私は見ての通りの完璧美少女(自賛)なので靡かないやつはホモで確定なのだが(名推理)。

 

 先ほど握った手の感触を思い出す。

 数えきれないほど刀を振り続けたのだろう、硬くてゴツゴツとした皮膚の感触。岩のような拳………。

 自分の掌を開閉してその触り心地を反芻していると、にやにやとだらしなく頬が緩んでしまう。

 無論、手だけではなく体全体も素晴らしい。あの鎧の下にある引き締まった筋肉を指先でなぞることを想像するとワクワクする。

 というか鎧の面積少なすぎで、肌見せすぎだろうと思う。

 あれは誘っているのか?狼人(リカント)なのに食われたいのか?兎さんなのか?

 

 惜しむらくは彼が発情期ではないことだろうか………。

 狼人(リカント)には定期的に発情期が発生して、その時のセックスはまさに『貪る』とい表現すべき激しいものになる。

 愛撫とかそのあたりの細かいテクニックなどが雑になるのが少し勿体ないが、本能のままに性を貪るあの荒々しい『交尾』は一度味わうとちょっと癖になる。

 

 彼が発情期でないのは少し残念だが、リカントは元々性欲が強めの種族なのでセックスまで持ち込めないということにはなるまい。

 靡かなかったとしても、最悪、薬を盛ればよろしい。

 

 ちなみにキムロが発情期でないと判断したのは匂いだ。

 発情するとなんとなく体から男臭い………もとい雄的な匂いがするのでなんとなくわかる。

 香水でも使ったのかと訊きたくなるような香りで、ずっと嗅いでいると頭がふやけそうになる。そして濡れる。

 こういう嗅覚への作用はゲーム時代にはなかったもので、現実になったこの世界の神秘を強く実感する。

 

 「リオ殿。」

 「えぇ、わかっていますよ。」

 

 キムロを背後から観察………もとい視姦していると声を掛けられた。

 気配を消すのには慣れているので、いやらしい視線を向けていることを咎められたわけではないだろう(覗きがバレるのは二流)。

 

 通路の曲がり角の当たりに魔物の姿が見えている。

 既にキムロは刀を鞘から抜いて臨戦態勢に入っていた。

 私は思考を切り替え、弓を構えた。

 この階層の魔物くらいなら私が弓を使えば一瞬で仕留められる………のだが、それではキムロにとっての鍛錬にならないということである程度加減する。

 

 敵の群れの中で注意するべきは鉄棍蟹(メイスハンズ)二体だろうか。

 普通に射ったら胴体を貫通して背後の壁に矢が突き刺さるため、後で回収するのが面倒だ。

 なので弦を引き絞る―――というよりは弦を軽く弾くくらいの力加減で矢を放つ。

 二体のメイスハンズの肩関節の隙間を矢が串刺しにした。これであの二体は腕を満足に振れなくなる。

 攻撃に気付いた魔物の群れ――――――既にそこへキムロが踏み込んでいる。

 

 「フッ!」

 

 『縮地』の一歩によって一瞬のうちに間合いを詰めて切りかかる。

 踏み込みの勢いを十全に生かした剣閃がメイスハンズの無事な側の腕を切り落とした。

 魔物の群れとキムロとの乱戦が始まる――――――だが、近距離での一体多の戦いにおいてキムロの連牙斬は猛威を振るい、次から次へと敵を切り伏せていく。

 私も同行者としてそれを黙って見ているわけにはいかない。気配を殺しながら、キムロと呼吸を合わせるように彼の死角や射程範囲外の敵を撃ち落としていく。

 

 

 ――――――コンビネーションで重要なのは呼吸だ。

 息を合わせるという言葉、その文字の通りに。

 呼吸とはただ酸素を体内に取り入れる行為ではなく、当人の無意識が作る命のリズムだ。

 

 吸うという行為は緊張。

 吐くという行為は弛緩。

 緊張と弛緩の繰り返しが連なって波となり、一つのリズムを形作る。

 だからその命の波長を理解するということが、相手を理解することに直結する。

 

 その波長に自分を重ね合わせれば相生し合う。

 その波長を消すように重ねるなら相克となる。

 

 息を合わせて生かすこと、息の根を止めて殺すこと。

 全ては呼吸を知ることから始まる――――――私は師匠からそう教えられた。

 

 今やっていることも同じことだ。

 キムロの行う呼吸を腹筋の収縮、肋骨の上下、肩の挙行に目を凝らして理解する。

 そのペースに自分の呼吸を合わせることで、キムロのペースを自分のものにする。

 彼の剣の延長に私の弓があるように、彼の刀の延長に自分の矢があるように――――――私の波長を彼の波長に重ね合わせていく。

 

 難しいことではない。

 難しく考えること――――――考えること自体が呼吸を理解するうえで逆に枷となる。

 私は彼の呼吸を感じるままに受け入れ、感じるままに弦を弾いていった。

 

 

 やがて魔物の群れは掃討しつくされ、残っているものはいなかった。

 ドロップアイテムを回収した後、キムロと共にダンジョンの踏破を再開した。

 

 「見事な腕前だ。」

 「ありがとうございます。私としても前衛がいると心強いですね。」

 「拙者では役者が不足しているやも知れんが………。」

 「そんなことは無いでしょう。フロラントの街でも貴方ほどの実力者はそうはいないでしょう………ってキムロさんをお見かけしたことは今までありませんでしたね………。」

 「うむ。拙者はこの街を拠点としているわけではないからな。」

 

 話によると、キムロは武者修行のために様々な町や国を跨いで各地で活動しているようだ。

 今回この地下都市を訪れたのは一年ほど前に敗れたドラゴンゾンビへのリターンマッチのためらしい。

 

 「竜(ドラゴン)系の討伐は上級冒険者への登竜門の一つとされていますからね………。ドラゴンゾンビでもその辺りは問題ないでしょう。

 それでも普通ならパーティを組んで討伐を目指します。単独(ソロ)でやろうという方は殆ど見かけませんね………。」

 「うむ、そうだろうな。ただ………拙者は冒険者の等級を上げたいわけではない。

あくまで一人の剣士として武士として――――――ただひたすらに己の強さを高めていきたいのだ。それがたまたま冒険者という生業になっただけの事。」

 

 そう語るキムロの横顔は男の誇り高さと、少年のように無垢な熱意があった。

 そういうのを見ると「あぁ、良い表情をするなぁ」と私は思ってしまう。

 

 冒険者の等級の話で思い出したが………………彼は私の二つ名をどこまで知っているのだろうか。

 『鮮血の青(ブラッドブルー)』、『生首配達人』、『獣食らいの獣』ならまだしも、『青い色情狂(ニンフォマニア)』、『ガチ両刀ロリビッチ』、『ノンケ殺し』、『三紳士・名誉の四人目』とか知られていたらちょっとへこむ。

 

 『生首配達人』と言われるようになったのは、冒険者組合に最初に登録に行ったときに最初から上級で登録してもらいたいがために、ドラゴンの生首を持ち込んでいったのが始まりだったか………。

 それと『生死問わず(デッドオアアライブ)』の賞金首の生首を持ち込んだときから一気に広まったと思う。塩漬けにして防腐処理をして、しっかり死化粧までサービスしてやったのに、組合の職員が引きつった顔になっていたのをよく覚えている。

 「どうせなら生かしておいてくれた方がよかった………」などと言っていたが何のための『生死問わず(デッドオアアライブ)』指定なのか。どっちでも良いなら殺して完全に無力化した方が良いに決まっているだろうに………。

 

 その後、盗賊団の生首1ダース分の加工費を強請ったのがまずかったのかもしれない。

 それか、盗賊団のアジトからの押収品を全部裏ルートで捌いたのがまずかったのかもしれない。

 どっちにしろ私は冒険者組合とは折り合いが悪いのだ。

 

 そんなわけで組合から足が遠のいて等級の更新を申請していないので、ここ数年現在の三級から上がっていない。

 キムロは現在五級らしい――――――彼がドラゴンゾンビを討伐して申請を出せば四級に上がれるだろう。

 彼ほどの実力があれば誰かとパーティを組んでいればもっと早く等級が上がっていただろうが………そのつもりがないのは先ほど聞いた通りの事だった。

 

 そんなこんなで話をしながら歩いていると、そろそろ目的地に差し掛かっていることに私は気が付いた。

 『千里眼』で壁を観察すると、丁度近くにそれがあることを確認した。

 私は一緒に歩いているキムロに確認を取った。

 

 「キムロさん、キムロさん。」

 「如何した。」

 「そろそろ休憩にしませんか?」

 「休憩…?」

 

 キムロは訝し気な表情を浮かべた。

 

 「確かに『安全地帯』があったはずだが………あれは『橋』の手前のはず。もう少し進まねば………。」

 「いえ、実はこの近くに一か所あるんですよ。」

 

 私は煉瓦作りの壁を軽く叩いたり、指を這わせたりしながら目的のものを探り当てる。

 腰くらいの高さにあるその煉瓦を軽く押し込むと、何かが嵌るような音がして、仕掛けが動き出した。

 重いものを引きずるような音がして目の前の壁がスライドしていき、薄暗い空間がそこに現れた。

 

 「なるほど、隠し部屋か。」

 「ここも扱いとしては『安全地帯』なので休憩に使えますよ。人もあまり入ってこないので穴場なんです。」

 

 大体、4メートル四方程度の空間だろうか。少々手狭だが少し仮眠を取るくらいなら問題はないだろう。

 部屋の真ん中には宝箱が一つポツンと置かれていた。

 罠がかかっているのは知っているので、ピッキングツールを鍵穴に突っ込んで解除する。

 

 「リオ殿は器用だな。」

 「昔取った杵柄、といいますか。」

 

 本来、宝箱に対する罠外しは斥候(スカウト)のスキルなので私は持っていない。

 しかしゲームから現実に切り替わったこの世界では、『昔使っていたことがあるけど今はセットしていない職業』の能力もある程度使えるようになっている。

 プレイヤー間では俗に『杵柄現象』と言われている。

 

 今は『射手(シューター)』と『野伏(レンジャー)』で固定しているが、私は一時期『野伏(レンジャー)』と『斥候(スカウト)』をとっかえひっかえしていた時期がある。

 なのでこうして多少ではあるが斥候(スカウト)の技を使うことができる。

 ………このおかげで命拾いしたことが何度かあったりもする。

 

 そんなわけで宝箱を開いて中身を回収する。

 箱は邪魔なので隅の方に避けておく。

 

 「それは『干ばつの乾布』か。ここで取れるのだな。」

 「えぇ、私は持っているので、キムロさんに差し上げましょうか?」

 「否、その宝箱を開けたのはリオ殿だ。お主が持っていくのが筋であろう。

 

 うーん、お堅い。

 だがそれが良い。

 

 『干ばつの乾布』はその名の通り、ものすごく水分を吸収する性質のあるアイテムである。

 これを加工することで高い水属性耐性を持つ防具ができたりするのだが………………私は保存食の湿気取りに使ったり、単にタオル代わりに使っている。

 ちなみに未加工の状態でずっと持ち歩いていると、水を吸い込みすぎて所有者が脱水症状になるという副作用があるアイテムである。逆に言えばずっと持っていなければ大丈夫なので、この階層のボスを相手にするときには未加工の状態でも結構重宝したりする。

 

 それから二人で話し合って、食事をとることに決めた。

 この階層はどうにも底冷えするので、メニューは温かいスープにする。

 

 小型の魔石内蔵型コンロをアイテムボックスから取り出して、鍋に水と具をぶち込んで煮込む。実にシンプルで男らしい料理だ。

 具材は主に、肉、肉、肉、肉、肉などである。

いや、冗談だ。ちゃんと野菜も入っている。

 とはいってもやはり体が資本の冒険者稼業、疲れたらガッツリ肉を食べたくなるものだ。

 予め市場で買い込んでおいた鶏肉を豪快に捌いて豪快にぶち込んだスープは鶏ガラの出汁が出て実に美味であった。

 

 「うむ、美味い。」

 

 キムロも器に盛ったスープを啜って舌鼓を打っていた。

 よく見ると袴から覗く尻尾がパタパタと左右に振れていた。

 やっべぇ、可愛いぞ。

 

 ちなみにアイテムボックス内に放り込んであると、食べ物は劣化するし、腐敗もする。

 そのため現実化の後、プレイヤー達は食料を保存する方法を様々に考え出した。

 例えば保存食を入れておく木箱に『干ばつの乾布』を加工した布きれを仕込んでおくことで湿気対策を施したりといった風に。

 

 特に人気なのは『クーラーボックス』というアイテムだろう。

 北方のとあるダンジョンで入手できる『不溶の氷』というアイテムを仕込んだ魔法瓶構造の大きな箱で、これがあるだけで生ものが腐りにくくなり飲み物をよく冷えた状態で飲めるようになったりと大変便利なのである。

 その利便性のせいで需要が凄まじく高く、生産が現地では追いついていないという。

そのため非常に高額なアイテムなのだ。

 

 そして、私はそのクーラーボックスを二つも持っている。

 一つは生野菜や生肉の保存用。

 もう一つは当然、酒の保存用。

 

 というわけで私はこんなダンジョンの只中でも良く冷えた美味いビールを堪能できるということなのだ………………!!

 

 「っっっ………………かぁ~~~~~~っっっ!!しみわたる………………っ!!」

 「あぁ~………………っ。冷やすだけでこんなにもうまいとはなぁ………………。」

 

 ダンジョン探索で疲れた体………熱々のスープを飲みながら………っ、キンキンに冷えたビールをっ、呷る………っ!

 喉を通り抜ける冷たさがっ、ホップの苦みがっ、五臓六腑に沁みる………っ!!犯罪的だ………っ!美味すぎる………………っ!!

 

 

******

 

 

 ………………………という感じの食事を終えて、私はキムロからちょっとした相談………のようなものを受けていた。

 

 「私の弓を見たい、ですか。」

 「左様。」

 

 地べたに毛布を敷いて床の上に座って向かい合いながらキムロはそう言った。

 彼の視線は興味深げに私の愛弓――――――ウィンドランナーに注がれている。

 

 「あぁ、勘違いしないでいただきたいのだが………。お主の弓の腕前を見たいというわけではなく………無論そちらにも興味はあるが………今はその武器としての弓を拝見させていただきたいのだ。」

 

 何でも一武芸者として業物とされる武具には目がないらしい。専門は刀剣類らしいが。

 そういうことならいいだろう。私も自分の相棒を自慢するのはやぶさかではない。

 どうぞ、とウィンドランナーを手渡すとキムロはそれをガラス細工でも扱うように慎重に手に取った。

 しばらく弓を裏から表からひっくり返して観察してから呟いた。

 

 「拙者の見たことのない素材を使われているようだ。」

 「まぁ、相当な貴重品を使っていますからね。」

 

 ウィンドランナーのベースになった素材は『アステライト神鉄』という非常に希少な鉱物である。オリエス大陸最難関フィールドの一つ『巨人の迷宮(ギガントメイズ)』の一角でごく少量採取可能な品だ。

 この素材を使って最高の弓を制作することを決意した私は、方々手を尽くしてこの素材を加工できる生産職のプレイヤーと協力を取り付けてこの弓を手に入れることができたのだ。

 私の手持ちの装備では間違いなく最高額の代物で、材料費と人件費だけで首都の一等地の屋敷を土地ごと買収できるだけの値打ちがある。無論誰にも譲る気はないが。

 

 勿論金銭的な値打ちだけではない。武器としての性能もこれを上回るものなどそうはないと断言できる。

 通常攻撃として矢をライフル弾並みの速度で発射できるのもそうだが――――――『武装開放』までやればこれ一本で城塞を正面から叩き壊す自信がある。

 普通の対人戦闘や魔物狩りではここまでの火力は過剰かもしれないが、この世界の上位陣と戦おうと思えばやはり攻城兵器程度の攻撃力は欲しいところだ。

 まぁ、どんな素材を使ったとしても現実的な現実ならば弓一本でそこまでの無茶ができるはずもないのだが………そのあたりはビバ・ファンタジーだ。

 

 「どうせならこちらもご覧になりますか?」

 「むっ………それは………。」

 

 一度立ち上がってから右太腿の鞘に納めている短刀(ナイフ)を抜き放つ。

 その時、わずかに捲れたスカートから一瞬覗いたストッキングのガーターと太腿の肌にキムロの視線が寄せられたのを見逃さない。計画通り。

 

 「この短刀(ナイフ)は………なるほどこちらも相当な品だ。」

 「そうでしょう?とても便利なんですよ。」

 「先ほど料理にも使われていたが………。」

 「えぇ、便利です。」

 

 短刀(ナイフ)を手渡してから、さりげなく彼の隣に腰かける。

 キムロが軽く指の腹で刃の表面をなぞると、うっすらと皮膚の表面に傷が入った。

 この短刀(ナイフ)特殊な付加効果などは無い代わりに単純な強度において非常に高い信頼性を持つ『アダマンタイト』製だ。

 なんせ仕事柄、魔物の死体を解体することがかなり多いのだ。

 そのためこの短刀(ナイフ)にはこれ一本でドラゴンでも解体できるくらいの性能を要求した。そして実際に今でもその期待に応えてくれている。

 予備武器としても、解体用にも料理用にも使える便利な奴だ。

 あ、料理に使う前はちゃんと火で焙って熱消毒している。食中毒や寄生虫などには気を付けているのだ。

 

 「武器だけではなくて………『これ』も………」

 「り、リオ殿………?」

 

 彼の手を掴んで自分の着ているフリルジャケットに触らせた。

 このジャケットとスカートは『多次元の繰糸』という、これまた希少な素材を加工して作られたもので、華やかな見た目に反して凄まじい物理強度・魔法耐性を保有している。

 巨人(ジャイアント)の攻撃に耐え、竜(ドラゴン)のブレスでも焼かれない程度の頑丈さだ。

 デザイン面でも職人と白熱した議論の末に生み出された妥協の余地のないもので、大変気に入っている。

 金銭的な価値では愛弓(ウインドランナー)に次ぐだけの価値がある。

 

 そういったことを解説しながら、私はキムロの手に自分の手を添えて、自分の服を撫でさせた。

 ゴツゴツした男らしい手………触れていると何だかワクワクしてしまう。

 

 「すごく、触り心地の良い生地でしょう?作った職人は本当に腕のいい人達でなんですよ………性格はともかく。」

 「リオ殿。ま、待たれよ。」

 

 自分の体重をそっと預けるように、彼の隣に寄り添う。

 上目づかいに見上げると、既にキムロの顔は真っ赤だった。

 私を見つめたいのか、それとも目を反らしたいのか。その視線が左右に泳いでいるのが可愛らしささえ感じられる。

 

 だが、まんざらでもないのはわかっている。

 なんせ単純な筋力だけでは私より彼の方が上なのだ。

 

 「………私に触れられるのは………お嫌ですか?」

 

 嫌なら、私の手を力づくで振りほどけばいいのだ。

 それをしないのなら………するかどうかで迷っているのなら、私はその迷いに容赦なく付け込ませてもらう。

 

 「スカートも、上着と同じ素材なんですよ?ねぇ、触ってみます………?」

 

 私は彼の腕をそっと自分の方に寄せる。

 そして、その手を下半身のスカートへと………。

 

 「………そこまでだ。」

 「………………………。」

 

 あと少し、というところでキムロの手に力が入りそこで停止した。

 視線を向けるとキムロは真剣な厳しい表情でこちらを見つめていた。

 まだ頬が赤いけど。

 うーむ、あともう少しだったのだが。

 

 「私では、ダメですか………?」

 「い、否(いや)、そうではない………。そうではないのだ………。」

 

 ちょっと悲しそうな表情をすると、キムロは目に見えて狼狽した。

 だが、彼の真剣な目はまだ変わっていない。

 その目を見て改めて思う――――――いい男だな、と。

 

 「リオ殿は………そう、とても………何というべきか………その、魅力的な、女人であると………拙者は思っている。

 だから、お主が悪いのではなく…………………あぁ、そうだ。うむ………。」

 

 キムロはしどろもどろになりながらも、何とか口にした。

 

 「お主は………自身の身をもっと大事に扱ってくれ。拙者のような男といきずりの関係を持つなど………」

 

 そう言って彼は黙りこくってそっぽを向いた。

 横顔を見ると、頬まで顔が赤くなっている。

 

 ――――――うん、やっぱりいい男だ。

 私に靡きかけているのは確かだろう。

 だが獣欲を脇にどけて、私自身のことを気にかけてくれる優しさ、あるいは高潔さがある。

 そういう人間は嫌いじゃない。

 そういう人間だからこそ――――――抱かれたいと思う。

 

 「拙者のような………なんて自分を卑下するような言い回しはやめてください。キムロさん。」

 

 私はそっと彼の手を両手で包んで、体重を彼に預けてしなだれかかった。

 ほのかに薫るキムロの汗の香りが鼻を擽った。

 

 「私は貴方がいいと………貴方だからいいと、そう思ったんですから………。それとも………私が見る目のない女だと、そう言われるつもりですか?」

 

 キムロは難しそうな顔で頭(かぶり)を振った。

 

 「そうではない、そうではないが………。拙者とお主が出会ってほんのわずかな時間………そこまで評価されるだけの謂れが拙者にあっただろうか?」

 「うーん、申し訳ありません。そればかりは勘働きですね…。」

 「勘?」

 「勘です。勘というか、正確には本能でしょうか?」

 

 当惑する彼に対して私はこう答えるしかなかった。

 答えの持ち合わせはこれくらいしかなかったが、これは私にとっての真理だった。

 本能。生きるためにすべての生物が根底に有する原始的な機構(システム)。

 

 「食らう、眠る、交(まぐ)わう………………生き物にとって必要なことは、須らく気持ちのいいことなんです。そして私は、それを肯定します。」

 

 食べ物が美味しいのは肉体が生きる為にそれを欲しているからだ。

 眠気に抗うことが難しいのは肉体が睡眠を必要としているからだ。

 セックスが気持ちいいのは、命を繋ぐために必要なことだからだ。

 

 確かに私(プレイヤー)の肉体は子を為すことができない。

 だがそれ以上に根本的な部分で、『生きているもの』としての肉体(わたし)が快いものを求めているのだ。

 私はそれを否定しない。

 

 「こんなのは理由なんて何でもいいんですよ。単純に雌(わたし)が、雄(あなた)に抱かれたいって、そう思っただけなんですから。」

 

 ある人が異性を見初める理由は何だろうか?

 

 自分にはないものに惹かれた?

 ――――――子孫に残すDNAの多様性を確保したいからだろう。

 力強い肉体に惹かれた?

 ――――――丈夫な体を持つものは生き残りやすいからだろう。

 顔が格好良かったか、または美しかったからか?

 ――――――それはセックスアピールの優秀さを表しているだけだろう。

 財力が豊かだったから?

 ――――――豊富な資産で豊かな生活を保障してもらいたいだけだろう。

 運命だった?

 ――――――最初からその人以外、目に入らなかっただけだろう。

 

 人を好きになる理由なんて、本当はどれでも構わないのだ。

どれだけ俗に見えても、他人に理解できなくても、それは本能が求めたことなのだから。

 自分にとって魅力的であるということは、自分から見て優れた異性であるということだ。

 自分の本能が選んだ相手なのだ。他人にとやかく言われる筋合いもないし、言われたところでためらう必要なんてない。

 

 「………私が惚れっぽい人間なのは否定しませんよ。少しでも『いい』と思ったら、『抱かれたい』って思っちゃいますし。『抱きたい』とも思っちゃいます。」

 「リオ殿………。」

 「貴方は私が選んだんですから、それくらいの価値があると思っていただかないと困りますよ?」

 

 私は彼の顎に指先を添えて、こちらに顔を向けさせた。無精髭のざらついた感触が指に触れる。

 彼の眼を覗き込むと黒茶色の瞳が迷うように揺れていた。

 それからキムロは眉を顰めながら瞼を閉じて………意を決したように目を見開いた。

 

 「………リオ殿………拙者は、お主を幸せに」

 「あ、すいません。身を固める予定はないので。」

 「なんとぉっ!?」

 「勘違いさせたみたいで申し訳ありませんが………嫁に貰って欲しいという意味で口説いているのではありませんので………。」

 

 うーむ、お堅い性格だとは思っていたがここまで堅物だったとは。

 この堅物っぷりもとい純情っぷり………………もしやチェリーボーイではなかろうな?

 

 「えと………キムロさん発情期のときとか、どうされているんですか?大抵のリカントの方は娼館に行かれているそうですが………。あっ、奥さんなり婚約者さんなりがおられるのでしたらごめんなさい。」

 「独身だっ!それと………は、は、発情期がきたら拙者も娼婦には世話になるっ!」

 

 発情期って言うだけでどもるとかどんだけ純情なんだ………。

 だが童貞でないなら遠慮はいらないな(童貞だったとしても遠慮しないが)!

 

 「要は私も発情期なんだから一発ヤらせて下さいっていうことなんですよ。いいじゃないですか減るものじゃないですし………。」

 

 そういうわけで私は袴の股間部分に指を這わせた。

 厚手の布地の下、硬い屹立がそこにあるのを感じる。

 絹の手袋を嵌めたままの手でそこを擦りながら私は微笑みかけた。

 

 「ほら、もうキムロさんのココ………ビンビンに硬くなってるじゃないですか………♡ね、溜めてたら辛いでしょう………?おちんちん、すっきりさせてあげませんか………?」

 

 大きく楕円を描くように股間の布地をさすれば、びくびくと中で大きくなっていく竿とその下の丸い睾丸の感触が掌に伝わる。

 雄の象徴。求めているものを体が理解しているのだろうか、それを触っていると胸とお腹の奥が熱くなる。

 ドクドクと体に血が巡っていく感覚がわかる。

 

 「リオ、どの………っ」

 「うふふっ♡」

 

 首筋にキスしてあげると、汗のにおいがした。

 嫌な感じはしない。むしろ良い。

 

 「キムロさん………立っていただけませんか?」

 「わ、わかった………。」

 

 私がそういうとキムロは観念したのか、従順に言う通りにしてくれた。

 壁に背中を預けるようにして立った彼の前で私は膝立ちになり、袴の紐を緩めた。

 そして間髪入れずその下の褌も解いてしまう。

 

 そうするとそこにあるのは布地の下に抑え込まれていた彼の男根だ。

 こげ茶色の陰毛の中から生える彼の雄は、ビンと上方にそそり立ってその逞しさを見せつけていた。

 先端の鈴口は漏れ出た先走りの汁でぬらついている。

男根の根元の金玉はぼってりと重量感があり、そこにある精液の量を想像させてくれた。

 

 鼻で息をすると体温と褌で蒸された陰部の饐えたような匂いがする。

 すんすん、と何度も鼻を鳴らして嗅いでいると口の中に唾が溜まってきた。

 顔を寄せると一層その匂いが強くなる。

 

 「いいにおい………♡………………おいしそう♡」

 「お、おいしそう?」

 

 私はノータイムでその先端の亀頭をパクリ、と咥え込んだ。

 うっ、と私の頭の上でキムロが呻く声がした。

 

 おちんちんを咥えたまま息をすると、頭の奥まで酸っぱい雄の匂いが入り込んできてクラクラする。

 鈴口を舌で舐めると、あとからあとから我慢汁が垂れてくる。それを唾液と一緒に飲み下すと喉が熱くなる。

 多分、今の私はだらしなくふやけたような、みっともない顔をしているに違いない。

 

 「………っ、ぷあっ………」

 

 口に含んだ亀頭の上に唾液を載せながら、外へと解放する。

 唾液を塗り込められた亀頭はさっきよりも一段と赤く張り詰めていて、とても素敵だった。

 唾液と先走りの混合汁を掌で掬い摂るように亀頭で撫でてから、竿の全体を優しく擦る。

 手袋と皮が擦れるしゅるしゅるという滑らかな音と、粘液が立てるにちゃにちゃという音が和音を奏でて耳を楽しませてくれる。

 この手袋は『蛾王(ガオウ)・鎧蛾(ガイガ)』という名のとあるダンジョンのボスのドロップアイテムを加工したもので、絹糸の滑らかさと鉄の強度を両立する逸品だ。

 手触りも無論素晴らしい。これで性器を擦られるとなるとなおの事だろう(後でちゃんと洗わないと駄目だけど)。

 

 指先でわっかを作り、亀頭の先端に添えてから竿の根元へとゆっくり滑らせていく。

 普通ならちょっと痛いくらいの力加減。絹手袋の感触と粘液のぬめりを伝えるように、ぎゅっと指を締めながら上から下へと下ろしていく。

 そして根元まで行くと一度指先を離して、もう一度亀頭から。

 

 これを何度も繰り返すと、ビン、ビン、と鼓動に合わせてちんぽが反りたっていくのがわかる。

 逆に下から上へとするような動きはしない………雁首を後ろから擦るのは刺激が強いので射精に男の意識が持っていかれる。

 射精感ではなく、性感を煽るために上から下への一方向性の愛撫を続ける。

 

 もう一方の手はさらに下の陰嚢へと伸ばす。

 たぷたぷと掌の上に乗る金玉の重量感をひとしきり楽しんでから愛撫してあげる。

 精巣から体内へと続く精管を指でコリコリと按摩しながら、掌に載せた睾丸を手首を返しながらゆったりと上下に揺する。

 そうしてあげるとキムロの腰がくっ、と強張る。

 気持ちよさで括約筋がぐっとしまったのだと理解する。

 

 「はぁ………、すてき………♡」

 

 自分の手の中で勃起を強めていく雄性器。

 生々しく赤黒い表皮やそこに浮き出る血管。

 グロテスクとも言えるその外観から手に伝わる性の熱気にうっとりとしてしまう。

 

 愛おしくなって頬ずりをしてあげるとキムロの腰がまた跳ねた。

 先端から垂れるカウパー汁が顔を汚すのもたまらない。雄の証が自分の顔に擦りつけらていると思うと首筋が戦慄くようだ。

 

 「キムロさんの、すてきなオオカミおちんちん………本当、おいしそう………♡

 わたしのお口でぱっくん、ってしちゃいますね………♡わたしに『ココ』から出る濃厚キンタマ汁びゅー、ってして飲ませてくださいね………………♡」

 「うっ、あぁ………っ」

 

 もう一度おちんちんを咥えるとキムロは女の子みたいな声を出して見悶えた。

 むずがるように揺れる彼の腰を抑えて、口を目一杯開いて男根を頬張る。

先ほどにも増して膨張したその勃起が口腔内を埋め尽くす、その恍惚感に酔いしれる。

 

 熱くて弾力のある亀頭を舌で飴のように舐めてしゃぶると、口の中でくちゃくちゃと唾液が立てる下品な音が頭の中に響く。

 唇で竿と雁の後ろを甘噛みしたり、口を窄めて頭を動かして全体を一緒に擦ると、とぷとぷと我慢汁が口の中に吐き出されていく。

 んく、んく、と汁を飲み込むが、口を開きっぱなしなので唇の端から唾液と一緒に滴ってしまう。

 顎下から糸を引いて垂れ落ちる粘液がブラウスの襟で染みになった。

 

 「はっ、はっ、はぁ………」

 

 キムロの手が私の頭に添えられた。

 別に撫でてくれたりとかそういうのではなく、快感をこらえるための無意識的な動き。

 でもマメとタコでゴツゴツとした感触のその手が頭を掴んでいるという事実で、胸がドキドキする。

 大きくて逞しい男の人のがっしりした手………それが私の頭を物か何かのように掴んでいる………。そんな被虐的な陶酔感を呼び起こされる。

 

 「うっ、く、くっ」

 

 私は彼の腰の後ろに手を回して、尾てい骨から伸びる尻尾を触った。

 リカント族の体の中でも特に敏感な部位だ。

 だからあまり強く刺激しては痛くなる………私は指の爪先で慎重にカリカリとひっかいてあげる。

 するとキムロの腰がまたびくん、と跳ねて――――――喉の奥に陰茎がずぶっ、と刺さる。

 

 「んんぐ………………っ♡」

 「う、おぉぉ………の、呑まれる………」

 

 深いところに入り込んできたそのペニスを逆らうことなく受け入れる。

 反射的にえずきそうになるが、それを押し殺して喉を使って飲み込んでいく。

 ずぷぷ………っ、とおちんちんを飲み込んでいくとキムロの腰がぶるぶると震える。私はその腰に抱き着くように腕を回しながら、なおもペニスを咥え込む。

 

 やがて自分の鼻先に陰毛が当たるくらいのところで限界がやってきた。

 ふーっ、ふーっ、と鼻で息をすると咽るような陰部の匂いがする。

 喉の奥までちんぽを突っ込んでいるせいで息が苦しい。

 

 酔ったようにクラクラして潤む目でキムロの顔を見上げる。

 彼は驚いたような表情で、でも顔を赤くしてどこか恍惚とした感のある表情でこちらを見下ろしていた。

 私は彼に笑いかけてから、頭を引いてペニスを吐き出し始めた。

 

 「ん゛お゛ぇぁぁぁ………………はぶっ」

 

 ずろろろぉ………っ、と音を立てながらギリギリまでペニスを引き抜く。

 そしてまた同じように奥の方まで飲み込んでいく。

 ドロドロの粘った唾液をおちんちんに絡ませるようなディープスロートを繰り返す。

 喉の奥に亀頭が嵌るたびにがぽっ、がぽっ、という音を空気と喉粘膜が立てた。

 

 いつしかキムロもカクカクと腰を揺すって、荒い吐息を漏らしながら私の喉にペニスを突き立てていた。

 私の喉まんこが性器として雄のちんぽを喜ばせているのだというその事実が、たまらなくうれしい。

 私はますます熱を上げて口と喉でオオカミチンポに奉仕した。

 

 じゅっぷじゅっぷ、と聞くに堪えない淫音が狭い部屋に響く。

 ねっとりとした唾液がぼたぼたと滴って服と床の毛布に垂れ落ちた。

 

 「リオどの………も、もう………っ」

 「………………♡」

 

 その声と呼吸の調子、震える金玉、陰茎の脈動で彼が限界なのはもうわかった。

 ここで焦らしたりはしない。

 彼に一息に精液を吐き出させてあげようと思い、私は亀頭を口の中まで吐き戻した。

 そして唇を使って小刻みに雁首の裏を扱いて、前歯を亀頭の裏に掠めさせるようにして擦った。

 

 「うっ………っく」

 

 そんな微かな呻き声を漏らして、キムロは精の堰を切った。

 びゅるるうううううっっっ、とそんな音が聞こえそうな勢いの良い射精。

 そんな蛇口を捻ったように噴き出す精液を私は口の中で受け止めた。

 

 「……………………っ♡」

 

 鈴口に舌を軽く当てて勢いを殺しながら、唾液と絡めてごくごくと飲み干していく。

 でも流石に量が多いので一気に全部は飲み切れず、口腔内を精液が満たしていく。

 やがて、当初の勢いが収まって吐精が終わると、私はちゅうっ、と陰茎から残った精液を吸い出して口の中から解放してあげた。

 

 「あ゛ーん………っ♡」

 

 別にそうしろと言われたわけでもないが、自主的に口を開いて中に溜まっている精液をキムロに見せてあげる。

 彼は鼻息を荒くしながら、どことなく真剣な瞳で私を見つめていた。

 

 口を閉じて、口の中でぐじゅぐじゅと精液を舌と歯で攪拌する。

 彼の精液はゼリーのように濃く粘っこくて、そして苦くて生臭かった(多分肉食だ)。

 その状態でふぅふぅ、と息をすると生臭い精臭が胸いっぱいに広がって――――――背筋がゾクゾクする。

 どんな薬や酒よりも、精液の味と匂いが私を酔わせてくれる。

 

 ゼリーのような精液を咀嚼してから飲み干した。

 ふう、と息を吐くと自分の喉の奥から精液の匂いがしてクラクラしてしまう。

 

 「えへへ………♡全部ごっくんできましたよ………♡」

 「あ、あぁ………」

 

 私が口の中を見せてちゃんと全部飲めたことをアピールすると、キムロは軽く放心したような曖昧な返事をした。

 うーむ、ちょっと残念。ここは頭を撫でてよしよしと褒めてほしかった。

 

 「ねぇ、キムロさん………私、もう………♡」

 

 でもそんなことに頓着している間はもうない。

 ドクドクと脈打つ心臓の音が耳元でうるさいくらい昂っている。

 お腹の奥が熱くて腰の奥がドロドロしている。

 

 そっとスカートの中に手を差し込んでショーツをまさぐると、そこはもうジクジクと濡れそぼっていた。

 漏れ出た蜜が太腿にまで垂れて、ストッキングにまで染みを作っていた。

 

 「私の、おまんこ………もうこんななの………♡だから、ね………♡」

 

 膝立ちのままスカートをたくし上げて、そこを彼に見せてあげる。

 私の雌の部分が、雄を求めてはしたなく涎をたらしているところを。

 

 「切ないんです………♡あなたの、そのたくましいので、私にお情けをくださると思って………♡」

 「あぁ………………、」

 

 キムロはどことなく焦点の合わない瞳でこちらにそっと手を伸ばす。

 彼の男の象徴は早くも二度目の勃起を始めていた。

 私はスカートをたくし上げたまま、片方の手でブラウスの襟元のリボンを解きボタンを外し始めた。

 

 体がじっとりと汗をかいている。

 躰が火照って肌が赤らんでいる。

 そして私はこちらに伸ばされる彼の手を拒むことなく―――――――――

 

 

 

 「まずいっ!!」

 

 

 

 私が突然上げた大きな声に、キムロがビクンと電気でも流されたかのように体を跳ねさせた。

 だが、そんなことは関係ない。

 続けて私は彼を叱咤した。

 

 「服を着てください、早く!」

 「え、服、え?」

 「あぁ、もうっ!」

 

 寝起きの犬のように目をぱちくりさせながらキムロは呆けたままである。

 仕方ないので、私はさっさと彼の足元の褌と袴を上に引き上げて着させようとする。

 

 だが、既に時遅し。

 壁のところで何かを探るようなコツコツという音がしたかと思うと、何かが押されるガコン、という音がして――――――

 

 

 扉が開き始めた。

 

 

 「ここの隠し部屋も『安全地帯』と同じ扱いらしくてな、丁度休憩に使えるんだよ。知ってるやつもあんまりいないから、結構な穴場で――――――――――――。」

 

 そんなことを言いながら部屋に入ってきた見知らぬ冒険者の男は、言葉の途中で固まった。

 彼の眼は固まったままこちらに注がれている。

 そして私はというと、壁際に立つキムロの褌を締めようとしているところ………なのだが状況的には解こうとしていると見られても仕方があるまい。

 

 「………………………………………。」

 「………………………………………。」

 「………………………………………。」

 

 氷のように冷たくて痛い沈黙が小部屋の中に満ちる。

 やがて再起動した闖入者の男は背後――――――彼のパーティメンバーに目配せをした後、こちらに向き直った。

 

 「………どうぞ、ごゆっくり。」

 

 ガラガラガラ………、と音を立てながら隠し扉が閉まり、男は立ち去った。

 

 「………………。」

 「………………。」

 

 未だ沈黙に満ちる部屋の中、私はキムロと見つめ合った。

 ちらり、と視線を落とすと彼のムスコはふにゃふにゃに萎んでいた。可哀想に………。

 

 「………………勃ちます?」

 「無理だ………。」

 

 

 この精神状態で続きなどできるまでもなく――――――我々は当初の予定通り仮眠(健全)を取った。

 後に残されたのは、愛液が沁みて冷えてべたつく私のパンツだけであった………。

 

 

 

 




『装備』
ゲーム時代は各装備品ごとに『コスト』が設定されており、高性能な装備品程『コスト』は高かった。
装備時はプレイヤーの『最大コスト』を装備品の『合計コスト』が超えないように装備しなければならない。
逆に言えば最大コストを超えない限りはどんな組み合わせの装備でもつけることができるということでもある。当時は拳装備に全コストを投入してあとは裸一貫………のようなプレイヤーもいたとか。

ただしこれらのゲーム時代の制限は現実化とともに用を為さなくなっている。
コストオーバーしないように調整に悩んでいたプレイヤーもこれにより、自分の最強装備をコストを気にせず全載せすることができるようになった。
リオもフル装備の場合は下着から高性能のもので揃えるようにしているとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。