「よし、それでは行きましょうか。」
「うむ、では行くとしようか。」
今日も爽やかな目覚めだ。朝食の蜂蜜トーストが実に美味かった。
私とキムロは仮眠を済ませてから身支度を整え、隠し部屋を後にした。
昨晩の情事で汚れた手袋はちゃんと洗ったし(水洗いだけで汚れがさっと取れてしまう辺り手袋の性能の高さがよくわかる)、ブラウスとパンツも別のものに取り換えた。
着替えの途中よそを向いていたキムロが挙動不審だったが、あえて何も言うまい。
………昨夜のことについてはお互い話題にしなかった。
流石に後味も悪すぎたことだし。
だが着替え中のキムロの反応を見る限り、私をしっかりと女だと認識させることには成功したと見える。
私はまだまだ彼を押し倒す、あるいは押し倒してもらう機会を伺っている。
狙い目は第六層だろう。
あそこは安全地帯も広い上に、プライベートな空間を確保するのもそれほど難しくない。
特にキムロにとっては決戦の場の一歩手前だ。
色々昂ってしまうだろうその状況なら、きっと激しく燃えてくれるに違いない………。
「………なにやら嬉しいことでもあったのだろうか、リオ殿。」
「いえ、何でもありません。もう安全地帯ではないのですから気を引き締めていきましょう。」
どうやら色々と妄想しすぎて顔が緩んでいたようだ。
キムロから指摘を受けて、ペチペチと頬を叩いて気を引き締め直す。
そういうわけで改めて第四層の攻略を再開する。
「………………。」
私の斜め前方を歩いているキムロをそれとなく観察する。
昨日に比べて私から半歩程距離を置いているようだ。
おそらくは本人も無自覚なのだろうが………。
それだけ意識してもらっているというのは女としては嬉しくもあるが、別の意味でやや不安でもある。
普段とは違う精神状態では普段と同じパフォーマンスを発揮しづらい。
変に私を意識することで彼の剣がぶれなければよいのだが。
だが、その心配はどうやら杞憂に終わったようだ。
途中遭遇した魔物を討伐した際、彼の刀捌き、足運び、呼吸の質にブレはなく、私は先日と同じ調子で彼に呼吸を合わせることができた。
平時と戦時できちんと心の切り替えができるということは戦士としての素養の一つだ。彼はその点とても優れた戦士だと改めて認識した。
ちなみに彼に合わせているとき私はもっぱら弓を使っている。
私一人なら予備武器で戦ってもよいのだが………それは不意打ちができる状況が前提だ。
私程隠形が得意でないキムロと一緒なら魔物とは正面と戦うことが多くなるし、それならいっそ最も得意な武器で正面から戦った方が手間もかからない。
そして何より、異性にいいところを見せたいと思うのは生物として当然のことだ。
そんな具合でダンジョンを進んでいくとやがて大きな金属性の扉に差し掛かった。
その観音開きの大扉を開くと、その向こうから激しい水音が響いてきた。
「おぉ、やはり壮観だな。」
キムロがそう呟く。
私たちの前に現れたのは、幅10メートルくらいはありそうな巨大な石造りの橋だった。
橋は真っ直ぐに数百メートル先まで続いており、反対側にはこちらと同じような金属扉が備え付けられていた。
そして橋の右手には――――――まるで聳え立つ壁のような巨大な滝があり、轟々と壮大な水音をこの空間に響かせている。
天井を見ても深い闇が広がるだけで、この滝が何処からきて何処へ行くのかは誰も知らない。
滝から散る水飛沫が空気を冷やし、一際清涼な空気が橋の上に満ちていた。
「行きましょうか。」
大瀑布を右手に臨みながら橋を歩いていく。
そしてある程度の距離を歩いたところ急に床が光り始め、光が魔法陣を形成した。魔物が直接湧いてくる際の前兆だ。
慌てず騒がず、私たちは迎撃の体勢を取った。
この橋は第四層の前半と後半を繋ぐ場所にあたる。
そして橋の上では一定の場所に差し掛かると魔物が出現して強制的に戦闘に突入する。
戦闘が発生するポイントは数か所存在し、全ての魔物を倒さないと反対側の扉は開かないという仕掛けになっている。
いわば中ボスステージといった位置づけだろうか。出てくる魔物はこの階層でお馴染みのものだが個体ごとのレベルが高めに設定されている。
なお、経験値などの実入りが良いためゲーム時代はここを周回するプレイヤーが多く、橋を行ったり来たりする『水道橋シャトルラン』がしばしば見られた。
橋の入り口と出口の近くにそれぞれ安全地帯があるのもそれに拍車をかけていた。
とはいえ私たちはここから先に進むのが目的なので、さっさと魔物を蹴散らして先に進むことにする。
そんな魔物達の攻撃をキムロは的確に掻い潜り、討ち取っていく。
シザーハンズの連続攻撃を上回る手数の連牙斬でもってその両手を斬り飛ばす。
メイスハンズの鉄槌のような攻撃を躱して甲殻の隙間に的確に斬り込む。
ヴォジャノーイの魔法の軌道を読んで避け、次の魔法が撃たれる前に縮地で一気に踏み込んで斬り伏せた。
キムロの強みは手数の多さ、敏捷性、それらに振り回されない正確な剣捌きだ。
練度も申し分なく、雑魚相手に限った戦闘ならば第七層や第八層でも通用するのではないだろうか。
「私もいいところを見せないといけませんね。」
人間サイズの敵は彼が担当しているので、私はそれ以外の魔物を蹴散らすことにする。
正直この手の魔物は狭い水路で不意打ちを仕掛けてくるからこそ厄介なのであり、こうして開けた場所で出現も最初から確認できているのならば恐ろしくない。
恐ろしくはないが邪魔なのでまとめて掃除する。
弓に矢を番えて、思いっきり溜めを作ってから射出する。
『
『
ついでにキムロが戦っていた魔物の足も破壊して援護もしておく。
目線で礼を言ってくる彼に対してこちらも目線で返し、魔物の掃討を続行する。
大した手間もかからず全ての魔物を討伐し終え、奥の扉を開くことに成功した。
ここから先は第四層の後半だ。
「うーん。さっきの場所とのギャップが酷いですね………。」
「確かに、気持ちはわかるな………。」
先ほどまで我々がいたのは雄大な大瀑布とそこから生まれる清涼な空気や響く滝の音といった、なんとも解放感と壮大さを感じられる橋の上だった。
だが、扉を開けた先の第四層後半は何と言うべきか………暗くてジメジメしていた。
水路の構造は大体前半と似たような塩梅なのだが、水の色が藻のような緑色に濁っていた。
また足場や煉瓦の壁もよく見ると苔や藻が生えていて全体的にやや緑がかっている。
そのせいだろうか空気全体もひんやりとしているというよりは、じっとりと肌に絡みついてくるような重たい感じがしていた。
「とは言っても進まねば話にはならぬのだしな。行こうリオ殿。」
颯爽と踏み出していくキムロの姿は実に頼もしい。
感動的だな。だが、わかっていない。乙女心的なものが。
この階層の何が嫌かって、ただでさえ濡れる上に藻が絡みついてくるところだ。
せっかく手袋とか洗ったのに、後でまた洗濯しないといけない。髪とかに藻が付いてきたら鬱陶しくてたまらない。
次の第五層も嫌いだ。否応なく汗をかくので化粧が崩れる。
………まぁ、そういうのが嫌なら最初からダンジョンに潜るなという話なのだが。
冒険者に女性がやや少ないのもそういう事情があったりする。冒険者をやっていると女を捨てないといけないような場面が多々あるのだ。
だが、私はこの超絶可憐美少女(自賛)のアバターを作った人間として、この美しさと愛らしさを最大限維持し続ける義務があるので身だしなみは全力で気にする。
たとえダンジョンのど真ん中であったとしても!
自分の決意を新たにしつつ前衛をキムロに任せつつ、奥へと足を進める。
なお、特筆するべき話ではないが途中で冒険者の一団とすれ違った。その中の一人がどこかで見た顔だと思ったが、すぐに思い出した。
昨夜、我々の情事に水を差した連中である。
彼らは私たちの姿を認めると挨拶もそこそこに、顔を少し赤くしてそのまま我々と反対方向に進んでいった。
特に何も言ってこなくてよかった。
昨夜はお楽しみでしたね、とか言われたら立ち直れないところだった。
主にキムロが。
「………彼らは逆方向に戻っていったようだな。」
「休憩をはさみつつ、橋の往復でもやっているんでしょう。あそこは鍛錬としてはそれなりに効率の良い場所ですか――――――らっ!」
昨晩の事を思い出したのか、ちょっと顔を赤くしたキムロの質問に答えておく。
ついでに近くに寄ってきた魔物に
敵が壁に縫い止められているのを確認してから、我々は会話から戦闘へと意識を切り替えた。
第四層の後半からは更に魔物の種類が追加される。
打撃を吸収する柔らかい体を持ち、通路を塞ぐように立ちはだかる『マリモゴーレム』。
水中や壁の隙間など場所を問わずに音もなく這いまわり、毒牙を持つ『スニーキングヴェノム』。
シザーハンズの攻撃速度とメイスハンズの打撃力を併せ持つ
跳躍による機動力と鞭のような舌を武器とする『ジャンパーフロッグ』と大柄な体から強力な組み技と投げ技を放つ『レスラートード』。
攻撃魔法だけでなく幻惑や混乱などの状態異常魔法も駆使する『ラミア』。
水中からの不意打ち、格闘戦、魔法による回復や攻撃など豊富な戦闘手段を持つ『カッパ』などなど………。
とはいえバリエーションは豊かになったものの、単純なレベルで見た場合は前半とさして変わらない。
対応を間違えなければそう厄介でもないし、そもそも地力が劣る我々でもない。
これまでと同じように刀で切り払い、矢で貫いて蹴散らしていく。
そうして魔物を倒しながら水路を進んでいると、キムロが途中で立ち止まった。
「ふむ………、どちらだったか。」
「道順ですか?」
「左様。」
彼が考えているのはこの第四層のギミックに関することだろう。
第四層のボス部屋を開くためには、この第四層後半に存在する仕掛けを解除していく必要がある。
解除していく順番に指定はないが、それでも場所や位置の関係で短くて済む道順や時間のかかる道順があるのだ。
キムロはどうやら市販されている地図を持っているようでそれをカバンから取り出そうとしたが、私が待ったをかけた。
「わざわざ地図を確認しながら行かなくても、私が道順を覚えてますから大丈夫ですよ。」
「かたじけない………、では案内を頼む。」
「お礼は結構ですよ、仲間ですからね。」
そんなわけで曲がりくねった水路を進んでいき、最初の仕掛けに到達する。
水路の突き当りにあったのは、目立たないようにさりげなく取り付けられた錆の浮いた金属製の大きなレバーだ。
レバーに手をかけて反対方向に押し倒すと、錆びついた見た目に反して滑らかな調子で動き、遠くの方でガコン、と何かが作動する音がした。
「次に行きましょう。」
「うむ。」
最初の仕掛けを解除したので次の仕掛けのもとに足を運ぶ。
かかってくる藻が絡んだ水飛沫が鬱陶しいので、こまめにタオル(干ばつの乾布製)で服を拭いつつ水路を進む。
次にたどり着いたのは、水路の突き当りに意味深長に置かれた宝箱だった。
私はそれを確認してからキムロに目配せをする。彼はそれで察してくれたようだった。
そして私が宝箱を開いて中から錆の浮いた鍵を回収する――――――と同時に後ろでズシンと何か重たいものが落下してくる音がした。
路の天井が開いてそこから魔物――――――
宝箱に手を出した侵入者を誅するべく、緑色の藻の塊で全身を形作る巨大な
だが、所詮は力任せに振るわれるだけの雑な一撃である。
予め敵が現れることを知っていたキムロがカバーに入り、刀を振るってその腕を一瞬にして刎ね飛ばした。
マリモゴーレムは打撃攻撃に対する耐性が高い代わりに斬撃攻撃に対しては脆弱である。キムロにとっては良いカモだった。
さらりと宝箱の番人を討伐してダンジョンの探索を再開。
この地下都市第四層を攻略するには二つのレバーを動かし、二つの鍵を回収しておく必要がある。
今、レバーと鍵が一つずつなのでこれで半分だ。
それからは特に語るべきこともなく、サクサクと攻略する。
先ほどと同じように通路奥に目立たず設置されているレバーを見つけて起動し、鍵を回収して同時に出てくる魔物を討伐する。
ちなみに二つ目の鍵を回収した時に出てきたのは
シザーハンズの鋏のような速度で、メイスハンズのような重たい攻撃を繰り出す拳を武器とする
それだけ聞くとかなり強そうに見えるが、拳の軌道がかなり限定されているため側面に素早く回り込むだけで楽に回避できるというのが攻略のポイントである。
ただ、狭い水路の突き当りでこちらを壁に追い詰めるような位置関係で出現するため、相手が圧倒的有利な立ち位置――――――なのだが、キムロはそういうのは全部無視して真っ向から拳を刀で捌いて撃破した。
この階層に出てくる程度の魔物ではやはり苦戦にはならないようだ。
そして――――――
「仕掛けも解除し終わりましたし、今からでもボスを仕留めに行けますけど………。その前に少し休憩しますか?」
「うむ、そうだな………
そういうわけでしばらく休憩を取ることにする。
とはいっても私にとっては残念なことに、休憩(意味深)をするような感じではない。
今、ここで再度彼に迫ってもうまくいくまい。
計画通り仕掛けるのは第六層の決戦前だ。
休憩とはいってもキムロは長々と休むつもりはないようだった。
安全地帯を目指すわけでもなく、
ちなみにタオルをつけた水は緑色っぽい水路の水である。
うーん、ワイルド。私は真似できない。
「言ってくだされば、水くらいこちらで出しましたよ。」
「いやいや、そこまではしていただかずとも。」
私は普段からアイテムボックス内に水を樽で持ち運んでいる。
樽の素材は『清浄の森』という場所で取れた特殊な木材で、『
腐っていない生水がいつでも使える、というのはサバイバルで凄まじく重宝するため、この『浄水の樽』は非常に高値で取引される品であり、私も大変世話になっている。
閑話休題。
キムロの休憩も終わったところで目的地であるボス部屋のところまで移動する。
やがて辿り着いたのは干上がった水路だった。
これまで歩いてきた場所と同じく藻で緑色がかった水が流れていただろうその水路は、そこに沈殿していた藻草で覆われた底を晒していた。
そしてその干上がった水路の最も奥まったところは特に深くなっており、突き当りには藻草が絡んだ鉄格子が嵌っている円形の排水溝が壁に存在していた。
排水溝の近くにはいきなり水が引いて住処を追われたのだろう
水路の底に対して高い位置にある通路の上から、私は
絶命はしなかったものの、頭を割られて混乱状態になっているカッパの群れをキムロが片付けていき、私たちは排水溝に到達した。
あぁ、水路の底に溜まった藻草を踏む感触が実に嫌だ。
放置されていたプールの底のあれによく似ている。
顔を顰めながら排水溝に向き合う。
人間なら潜って中に入れそうなこの排水溝。
その入り口部分は藻が絡んだ鉄格子が嵌っているが――――――これを開くのが道中で入手した二つの鍵だ。
排水溝の横にある二つの鍵穴に鍵を刺して捻る。
両方を捻ったところでずずず………、と重い音ともに鉄格子が上へとスライドして排水溝がその口を開いた。
そこで錆びついていた鍵は役目を終えたといわんばかりに、ざらざらと崩れて消えてしまった。
それを見届けた我々は、暗々とした闇を湛える排水溝に足を掛けて中へと踏み込んでいった。
排水溝はやや下り坂になっているうえに底面に藻が溜まっているせいで滑りやすく、用心しながら進む必要がある。
その気になればここを滑り台代わりに奥で落ちていくことができるらしいが、私は絶対やりたくない。
道中の二つのレバーはここに注ぎこむ水を止めるためのもので、この奥に第四層のボスがいる。
一分か二分は歩いただろうか、やがて暗がりの奥から円形の光がこちらに差し込んでいるのが見えた。
円形の光――――――排水溝の出口を潜ると、そこは貯水槽とでも呼ぶべき場所だった。
空間の広さはちょっとした体育館程で、辺り一面は第四層の後半と同じように藻草で緑色をした水で満たされている。
ただし違いとしては、水面には大きな蓮の葉がいくつも浮かんでいることだろうか。
蓮の葉はかなり大きくしっかりとした浮力を有しており、人が立っても――――――あるいはその上で戦っても沈むことは無い。
やがてその貯水槽の中央、そこにある特に巨大な蓮の葉の上で光が発生した。
第四層前半と後半を繋ぐ橋であったのと同じ、魔物が出現することを示す光だ。
光が収まるとそこにいたのは、一体の『
そのヴォジャノーイは豪華な作りのマントと鍔広の帽子を纏い、手には古めかしい木の杖を所持している。
口元にはご丁寧なことに髭のようなものも生えており、元々ヴォジャノーイという魔物がカエルをデフォルメして二足歩行させたような愛嬌ある顔立ちをしていることもあり、何らかのマスコットキャラクターのような出で立ちだった。
だが、その姿を認めたキムロは刀をすらりと抜き放ち警戒の色を露にした。
そう、あのマントを羽織った愛嬌のある二足歩行のカエルがこの階層の番人――――――『ヴォジャノーイ・アデプト』だ。
『
それだけではなく――――――、
「ケロケロケロケロロロロッ!!」
「ゲコッゲコッゲコッ!!」
貯水槽の水の中から、『ジャンパーフロッグ』や『レスラートード』といった蛙型の魔物が飛び出してくる。
連中は水上に浮かぶ蓮の上に陣取ってこちらの出方を窺っているようだった。
ボスを倒すためには貯水槽中央の蓮までたどり着かなければいけないが、その途中で雑魚敵が邪魔を仕掛けてくる。
雑魚に手間取っている場合はもちろんの事、足を踏み外して水に落ちてしまえばボスであるヴォジャノーイの魔法攻撃で滅多打ちにされるだろう。
普通なら誰かが露払いを務めて、ボスを攻撃するものを援護するのがセオリーだ。
だが、私はキムロに視線を向けて確認した。
「お独りで行かれるんでしたよね?」
「左様。」
最初に言っていたことだ、道中のボスはなるべくキムロが独力で討伐すると。
彼の横顔は戦意に満ち、熱気を溢れさせていた。
その表情は何処か楽しげでさえあった。
「危ないと思ったら私が横から撃って仕留めますので、そのおつもりで。」
「それは困るな………では、心配の余地なく仕留めて見せよう。」
口元に微かな笑みさえ浮かべて、キムロは刀を構え、腰を低く落とした。
私は隠形を発動させて貯水槽の隅の方に隠れに行く。
その前に小さな声で囁く。
「がんばってくださいねっ♡」
「無論っ!」
精一杯可愛い声で応援したのだが、照れの一つも見せずキムロは威勢のいい掛け声とともに踏み込んでいってしまった。
ちょっとくらい動揺するかとも思ったがそんなことは無かった。
彼は生粋の戦士のようだ。
そんなところがまたいい男だと、私は再認識した。
『個体レベル』
魔物の強さは種族ごとの強さと、個体ごとのレベルによって決まる。
例えば第二層のボスであるゴブリン・トループスは一体単位でみると、第二層の雑魚と同じ種族なのだが、個体レベルが高く設定されたボス仕様である。