「では乾杯。」
「うむ、乾杯。」
第八層に到着してからしばらくの間、私達は素材の収集に専念することにした。
元々白無垢の大理石自体、遭遇し辛い敵のドロップアイテムである。
それに加えて〈大〉サイズのものが落ちる確率も低い。
そういう理由で私は元からこの階層で一日、二日は粘るつもりでいた。
また、今回の目当てである大理石の他にもこの階層で入手できる素材は外だとかなりの高額で売却できる。
『光の羽』、『天の雫』といったアイテムは天使系の魔物から採れるが、そういった天使系の魔物は教会が管理しているダンジョンに出没することが多い。
冒険者の立ち入りがそういった場所では制限されているため、市場にはなかなか出回らなないのだ。
そのおかげでゲーム時代から相場が倍程度に値上がりしている。
そういうわけで素材狩りが一段落付いたころには結構な収入が見込める量のアイテムが集まってしまった。
現在私たちがいるのは第八層内の安全地帯の一角で、丁度礼拝堂のようなスペースだ。
私たちは互いに酌を交わしながら、この地下都市全体で拾ったアイテムの取り分について話し合っていた。
「………なるほど。キムロさんは結局、これは持っていかれないと。」
「うむ、そうだな………。これはどうにも拙者の実力で倒した敵とも言えぬしな。」
キムロが苦笑しながら床の上に置いたそれに視線を落とした。
大理石の床の上に私たちは直接布を敷いてそこに座り込んで酒を飲みながらアイテム類を分別していた。
その中の一つ、一際目立つのが鉄骨のような威容を誇る一本の骨だった。
『屍竜の呪骨』。これは第六層のボスであるドラゴンゾンビのドロップアイテムだった。
「でも勿体ないですね。加工するにも用途が色々あって便利ですし、単純に買い取ってもらうだけでも高値が付きますし。」
軽く火で焙った干し魚を齧る。柔らかさなど感じられない硬い身をバリバリと咀嚼する。
干すときに使った塩の辛さと、焙ったときに着いた焦げ目の苦みが実に殺伐とした味わいを醸し出してくれる。
魚を飲み込んだ後、良く冷えた辛口の日本酒をくいっ、と口に含む。
キリリとした酒の味が口内に残った魚の味と混じり合い、互いを引き立て合う。
うまい。
「お主の言う通りではあるが………拙者としてはやはり納得のいかぬ決着であったしな。これを素直には受け取れぬよ。」
「受け取れないというなら私もですが…。」
バリバリと魚を齧りながらキムロが骨をこちらに押しやる。だが私としても、はいそうですかと受け取れない。
私が手を出したのは二回だけであり、命がけでドラゴンゾンビと対峙して首を落としたのは紛れもなくキムロだ。
過程がどうあれ、結果として勝利したのであればせめて報酬は持っていくべきだ。
私がそう主張するとキムロは「むむむ………」と唸って黙り込んでしまった。
「はぁ………なら素材にしろとも、売り払えとも言いませんから、戒めとして持っておくというのは如何です?」
「………戒めとな?」
「えぇ。」
溜息をつきながら提案する。
要は自分の戦いに納得できなかったというのが彼の問題だ。なら自分がいつか何らかの形で納得できるようになるまで手元に置いておくだけ置いておいて、その時になったら使い道を決めればよいのだ。
「貴方が今回の戦いに不満があったというなら、なおさらそれを忘れないように手元に置いておいた方がいつでも思い出せて励みになるでしょう。………後悔の元を目にするのが嫌だという人間もいるでしょうが、キムロさんはそういうタイプではないと思いますので。」
いつか自分がこれを持つに相応しいと思えるようになるまで持っていればよい、その時になって初めて使い道を決めればよいのだと、私はそう彼に諭した。
私がそう言って彼の方に竜の骨を押しやると、キムロはまたしばらく悩んだ後――――――結局骨を掴んで自分の隣に置き直した。
どうやらそれで了承してくれたようだった。
その他の階層ボスのドロップアイテム―――
道中の雑魚から回収した分も、同じようにする。一々誰がトドメを刺したのか覚えていないものも多いが、基本的に七層以降の素材は多くが私のものになった。
キムロは私がいなければここまでは来られなかったのだから、と気前よく譲ってくれた。
ただ私としては厚意に甘えるだけでは後味が悪いので、ちゃんとある程度の品は彼に持たせることにする。
「良いのだろうか。拙者はここに来て普段戦えぬ敵と戦えただけでも十分と思っているのだが………。」
「欲がなさすぎでしょう貴方は。………どうせ刀の修理もタダじゃないですから、そこはそれくらいのお金を確保しておくべきでしょう。」
「うぐ…っ。」
私がそう言うと彼は痛いところを突かれたという顔で、渋々とアイテムを懐に収めた。
それでいい。どうせだし折れた刀も魔改造して貰えば良いのだ。
私はそんなことを思いながらまた一匹魚に齧りついた。
******
食事を終えた後、私達は就寝の準備に取り掛かった。
とはいってもやることはあまりない。背中が痛くならないように、毛布を床に敷いて寝袋を出すだけだ。
野外のキャンプであれば雨風をしのぐためのテントや、警戒のための不寝番なども必要となるが――――――現在のようにダンジョン内の安全地帯ともなれば無用な話だった。楽なものである。
寝る前にちゃんと歯を磨いて、水に浸した布で体を拭う。
あー、いい加減に髪洗いたい。
「このダンジョンを出たらまず真っ先にお風呂に行きましょう、お風呂に。」
「う、うむ。風呂か………それは良いな。」
わしわしと濡れタオルで体を拭きながら背中越しにキムロに声を掛けた。
彼の返事は少しどもっているが、さもありなん。
私が体を洗っているということは当然のことながら全裸なのである。
「ここ数日、こんな感じで一緒に何度も野営した中なんですから、裸見るくらいで………。」
「むぅ………だが、拙者からすればお主が些か………その、無防備に過ぎるのでは、と」
「ふぅん………無防備だと良からぬことが起きるかもしれない、と。」
「うぐぅ」
ちょっとからかうと彼は息が詰まったような呻き声を上げた。
「冗談ですよ、冗談。良からぬことを起こしたのは私の方ですし。」
「いや、しかし………。お主に………あれだ、無体を働いたのは拙者であるからして………。」
「まーだ、そんなことを仰るんですか?」
くすくす、とつい笑ってしまった。つくづく彼は堅物である。
そんな堅物だから弄り………じゃなくて愛で甲斐があるというものだが。
私は体を拭いていた布を一度水に浸してから搾り直した。
「キームーロ、さんっ♡」
笑いながら私はこちらに背を向けて道具類の点検をしていた彼の背中にパッと飛びついた。
後ろから彼の体にしなだれかかると、その体が強張るのが感じられた。当然私は現在全裸だ。
手元に視線を落としたままの彼の横顔がほのかに赤くなる。あー、可愛い。
「私を襲ったのがそんなに気に病むようでしたら、どうしたらいいのか………私、以前に言ったと思うのですが。覚えていますか?」
「覚えている、覚えているが………。」
覗き込んだ彼の瞳が左右に泳ぐ。
そんな彼の様が面白くて私はくすくす、と笑いを零した。
「いや、なに、覚えているのは覚えているが………その、強姦紛いの事をした罪を夜伽で雪ぐというのはなんというのか、色々と間違っているような………。」
「間違っていません!」
キムロが恐る恐る、といった風にそんな事を言ってくる。
だが私はそれに力強く反論した。こういうのは勢いが大事だ。
「いいですか。私はキムロさんを私に半ば強引に押し倒
「う、うむ。」
「つまり、私はキムロさんの事をとても好意的に思っているということです。『素敵、抱いて!』というレベルです。それは今までのことで十分にお判りいただけたと思いますが。」
「う、うむ。その通り………だな。」
彼はやや上ずったような、照れを含んだ声で返事をした。
こうやってストレートに人から………というか異性から好意を伝えられることには慣れていないのだろう。
でも、言っている私もちょっと恥ずかしいのだ。
うぁー、顔が何か熱い。
というかキムロも女にここまで言わせないで欲しい。
男の甲斐性という点では減点である。
「だから、次はキムロさんの番ですよ。」
私は彼の背中をぎゅっと抱きしめた。
分厚くて広くてがっしりとした、男性の背中。
その奥にある心臓の鼓動に自分のそれを合わせるように体を寄せた。
「第六層で言ってくれたことの続きを………お願いしたいのです。」
******
「むぅ………っ、」
キムロは背中に少女の柔肌と体温を感じながら、逸る己の鼓動を感じていた。
耳の裏でドクドクと血管が脈打つような音がして煩わしいほどだった。
だがその最中にも、彼の脳は自分の身に寄り添う少女の体の感触を克明に捉えていた。
細く華奢な腕、鼻孔を擽る芳香、柔らかく張りのある乳房、その奥の脈打つ心臓………。
(あぁ、これでは自分はまるで色魔のようではないか。)
はぁ、と微かな溜息を一つ吐く。
キムロはどうにも自分で自分が信じられないような思いだった。
そもそも最初にリオと出会った時からそうだったのだ。
見た目年端もいかぬ少女に何故か劣情を掻き立てられ、なし崩し的に体を重ねることになった。
キムロは自分で自分の事を種族特有の発情期の時を除けば、男女の事に関してはかなり淡白な性質だと考えていたのだ。
それだというのに第七層では薬を盛られて強姦紛いの
その事実が彼に深い混乱を与えていた。
(自分は………リオ殿の事を………。)
いや、実のところ答えは出ている――――――既に酒の勢いとはいえ、第六層で彼はリオに対して自らの意志で「抱きたい」と宣言したことがあるのだ。
出した言葉を翻すなど、彼の思う武士の道ではなかった。
それが例えリオによって半ば無理矢理言わされたものだったとしても――――――、
(いいや、違う。それではいけないのだろうな。)
そこまで考えて彼ははた、と気付いた。
今まで彼女のとの関係にあって自身が振り回されてばかりの立場だったということを。
最初に同行を申し出られたとき、愚息を扱かれたとき、思いを吐露させられた時、押し倒させられた時――――――多くの事がリオの側から働きかけられた事だった。
それではいけないのだ、と改めてキムロは思う。
リオが今言っていることはつまり、自分の意志を示せということなのだから。
キムロはちらり、と視線を肩越しに向ける。
彼が見たリオは少し頬を赤く染めて、あまり見られない照れの表情だった。
気恥ずかしいのは自分だけではないのだ、と思うとキムロも少し気が楽になった。
「………………あー、そうだな。リオ殿………拙者は………拙者も、お主の事をとても、そう………魅力的に感じている。………………率直な、飾らない言葉でいえば、そう………『好き』、というやつ………なのだろう。」
先ほどまで少し飲んでいたとはいえ、酒気も頭から抜けている。
素面の状態でこういったことを人に打ち明けることは何と難しいことなのだろう、とキムロは思った。
頬どころか、耳まで赤くなる始末だった。
ただ困惑する頭とは裏腹に口はスラスラと動いて、思いの内を吐き出していった。
「お主の
キムロから見たリオはとにかく強烈な印象の塊だった。
立ち歩く姿は可憐な乙女でありながら、戦う姿は密林に姿を忍ばせる獣のよう。
話しながら笑う様は花のようなのに、時折氷のように冷えた
誰もが目で追う愛らしい容姿であるのに、眼にもとまらぬ隠形の業を持つ。
柳のような細腕から、砲撃のような矢を放つ練達の狩人である。
そして童女と言って差し支えない容姿でありながら、貪欲と言ってよい淫蕩さの持ち主だった。
互いに相矛盾するいくつもの要素が絡み合う。
キムロはリオの事を思い浮かべるだけで、その外見と内面のあまりの差に頭が混乱しそうだった。
だが、その事実がリオという存在を彼の中に深く刻み込んだというのは間違いなかった。
そう。良くも悪くも、リオという人間は強烈な印象を直接触れ合った人間に残す。
心に残った印象をどう定義付けるかはその人間によるが――――――キムロはそれが『好意』という形になっただけの事だった。
だが、その分析こそまさしく男女の仲には無粋な話だった。
キムロは故に、自分の内面とその経緯に薄々勘付いてはいても、口に出すようなことはしなかった。
「うむ………口にしてみれば楽なものなのだな。………そうか、拙者はリオ殿の事が好きなのだな………。」
故にキムロはそう言葉を結んだ。
その横顔は赤らんではいても、どこか清々しく晴れ晴れとしたものだった。
「キムロさん………。」
「何だろうか、リオ殿。」
黙って彼の言葉を聞いていたリオがぽつりと呟いた。
その表情はキムロからはいかんせん窺い知れなかった。
「初めに断っておきますが、というか前にも言いましたが………私は家庭を持つタイプの人間ではありませんので………、」
「うむ、そうだろう。………その通りだろう、お主はありのままでいるのが一番良い。」
キムロはリオの言葉を肯定した。
試しに自分と彼女が結婚して家庭を持つ姿を想像しようとしたが、それは全く像を結ばなかったからである。
彼の中ではリオはさながら一匹の自由な獣のようだった。それが一人の人間に縛られることなどその有り様を損ねるものでしかないと、彼はそう思った。
「お主を拙者一人の手に収めようなどと――――――そんなことは、到底思えぬよ。」
「………うれしい、ですね。私にとってその言葉は、とても嬉しいです。」
そう言ってキムロの体に先ほどからしがみついていたリオが顔を上げた。
キムロと同じように頬を赤く染めてふわりと花が綻ぶような、言葉にした通りに嬉しさに満ちた微笑みを浮かべた。
「ですから………ここから先は、言わなくてもいいですか?」
「………そうだな、みなまで言うべきではないな。」
キムロの手がリオの頬に添えられる。桃のように柔らかく瑞々しい少女の肌を、男の硬く筋張った武骨な手が撫でる。
そして、男は無言で少女の口を己の口で塞いだ。
「………んっ」
リオが鼻にかかった吐息を漏らす。どこか甘く、陶然とした声。
その響きがキムロの中にある
自身の内にある好意を自覚しそれを口に出した今、それにためらう気持ちは彼にはもう無かった。
胸の内に湧きあがってきた慕情とも情欲とも言える衝動に突き動かされるままに、彼は強く口付けを交わした。
触れ合う二人の唇が、どちらからともなく離れる。
向かい合う二人の視線が交差する。
リオの氷色の瞳は雪解けのように潤んで光り、唇は濡れた花弁のように色付いていた。
長い睫毛の目を伏せてほぅ、と漏れる吐息が艶めかしく男の頬にそよぐ。
キムロの手が彼女の頬にかかる髪を掬って梳いた。
金に染めた絹糸のようにするりと手の中で滑る、サラサラとした手触りのそれ。
そこから仄かに薫るのは花を煮詰めたような少女の甘い香りだった。
自分の内に確かに滾り始めた性の欲をキムロは感じていた。
腰の奥が疼くようなその感覚。
目の前の
それに逆らわず、彼は床に敷かれた毛布の上にリオの体をそっと押し倒した。
ぱさっ、という乾いた音と共にリオの髪が広がって散らばる。
キムロは彼女の頭の上に手をつくような形で彼女の上に覆いかぶさっていた。
潤んだ少女の瞳と熱を帯びた男の眼が中空で交わる。
「んん………っ、ぁっ………」
それからキムロはリオの体を愛撫することに専念した。
己の手がざらざらとした、武骨なものであるということは自覚している。故にその手つきはあくまでも高価な陶磁器を割らないように扱うような、繊細なものだった。
だが、そこには同時に少女の瑞々しく滑らかな肌をゆっくりと味わいたいという男の欲もあった。
頬や首筋、鎖骨や肩、慎ましくもその存在を主張する乳房。
水も弾くような玉肌、指先が沈むように柔らかくも優しく押し返す脂肪の弾力。
肌を擽るごとに健康的な血の色が差していく白い裸身はまるで色付いていく果実のよう。
自らの意志で触れるリオの体はキムロにとって、さながら一つの芸術品のようにも見えた。
「ふぅ………、んぁっ………」
キムロは自らの顔を寄せて彼女の肌の上に唇を落とした。
微かに汗で湿った肌はほんのりと塩気があり、その香りは甘かった。
首筋や鎖骨に口付けを幾度か落としてから、彼の興味は胸に移った。
小ぶりながら確かにそこに存在を主張する胸の脂肪の盛り上がり。それに指と唇で触れるとふるん、と微かに揺れた。
その中央部には桜色の乳首がつん、と立ってサクランボのような実りを見せていた。
キムロが唇でやんわりと挟むようにそれを口に含むと、リオの口からか細い声が上がった。
少女の胸の内にじぃんと焼けるような、痒みにも似た快感が刺さる。
その反応に気をよくしたキムロは片方の乳首を口で、もう片方を指で弄んだ。
唇で甘噛みしたと思えば歯を添わせて表面を擦り、舌先で飴のように転がす。
指の腹で摘まんでは転がす、あるいは掌で胸ごと優しく揉み解す。
コリコリとした弾力のある乳首は刺激を与えれば与えるほど、抵抗するように硬く大きく立ち上がっていく。だがそれは同時に男の口と指に捉えられ易くなるという循環構造でもあった。
リオは眉根を寄せて艶めかしい声を上げながら、あやすように胸に吸い付く男の頭を腕で抱えた。母性や慈愛ではなく、意識をさらうような快感の波にさらわれないように。
はぁはぁ、と熱い吐息を零しながら少女は
表面にビロードのような毛が生えたイヌ科動物の特徴を持つ、ピンととがったその耳に指を這わせると、少女の胸に顔を寄せていた男が呻く。
こそばゆくも背筋をぶるりと振るわせる耳介への刺激が男の性感を確かに震わせる。
キムロはより強まった雄の衝動に突き動かされるように、少女の胸にむしゃぶりついた。
「あっ、はぁっ………、はぁ、はぁ………っ」
そうしてどれほどの間かわからないが、毛布の上で抱き合いながら二人は互いの体をまさぐりあった。
キムロが一度身を起こして見下ろすと、リオの矮躯はすっかり桃色に色付いて汗に濡れ光っていた。くたり、と伸びやかな四肢が毛布の上に投げ出されている
吐息を荒くしながらも、リオの瞳は熱く潤んで男を見上げていた。
恥じらうようにそれでいて誘うように艶めかしく、少女の指が彼女自身の濡れ光る唇をなぞる。
それを視界に収めながら、キムロは下半身の袴を脱ぎ捨てていった。
褌を剥ぎ取って下から露にされた怒張は男の欲望を反映するように硬く立ち上がっていた。
キムロは己の腹の内にグツグツと煮えたぎるような情欲を感じていた。
目の前に裸身を横たえる少女に、この昂りを叩きつけて吐き出したいという獣じみた衝動に突き動かされそうになる。
だが、彼はそこで一度息を吐いて熱を吐き出した。
今回の交わりは情欲を吐き出すためのものではない。彼が自らの意志で少女に心地よさを与えるものであるからだ。
故に少女の体を貪るような、荒々しいセックスを避けるべきだと彼のなけなしの理性がそう判断を下した。
「リオ殿………」
熱を帯びた声を掛けながら、再度キムロがリオの上に覆いかぶさる。潤んだ視線を二人の間で絡みあう。
男の体の下で、リオは僅かな羞恥に背を震わせながらゆっくりと脚を開いた。
開けられた股の奥でくち…っ、と小さく粘った音がする。そこにある陰唇は微かに入り口を綻ばせてその奥から女の花蜜を滲ませていた。
これ以上の愛撫が必要ない程度に潤んだそこを、リオは男に捧げるようにして腰を浮かせた。
キムロもそれに合わせるように陰茎の先端を調整して狙いを合わせる。
二人以外には誰もいない礼拝堂に、男女のはぁはぁと熱い吐息の音だけがこだまする。
やがて雄の亀頭の先が、少女の陰唇の表面に触れ合う。男の先走りと女の蜜が触れ合って、にちゃり、と粘液の橋を架けた。
くいっと少女の腰が男を迎え入れるように蠢き、それに合わせて男の腰が少女を貫くように突き出された。
「ぅん………っ!」
つぷり、と男の亀頭の先が陰唇に銜えこまれる。同時に漏れるリオの声。
その先端部を足掛かりに、膣洞へと男のペニスが打ち込まれていく。
上から下へと体重をかけるようにまだ硬さを残す少女の
ずぐぐぐぐ………、と音が聞こえてきそうな強引な掘削に、組み敷かれる少女はうっとりとした表情を浮かべていた。
その一方の男は真剣な表情で少女の矮躯を傷つけぬように、ゆっくりとあくまでゆっくりと腰を押し込んでいった。
やがて男のペニスが先端部分にやんわりと硬いものを捉える。膣道の終点である子宮口だ。
陰茎は根元まで挿入されていなかったが、男はそこで一旦息を吐き出して気を静めた。
だが完全に気を緩めてはいけなかった。少女の膣内は裏側に輪ゴムでも仕込まれているのかと思うほどに力強く男を締め付けており、気を抜けばすぐにでも精を搾り取られそうな気配があったからだ。
「ねぇ、キムロさん………」
挿入を終えた体勢のまま息を吐いているキムロにリオが声を掛ける。濡れたような陶然とした響きのある、吐息交じりの囁き。
少女は親鳥に餌をねだる雛のように、唇を尖らせて男を誘った。
そこに吸い寄せられるようにしてキムロは覆いかぶさるような口付けを落とした。今度は唇を重ねるだけではない濃厚な口付けだった。
互いに舌を差し出して絡ませ合い、唾液を口腔に送り合うディープキス。
少女の甘い唾液を吸い上げるように男の舌が唇を割って、少女の口内を舐めまわす。
ただ、キスの腕前に関しては残念ながらリオの方が何枚も上手だった。
リオの稚魚のような舌が入り込んできた男のそれを内へと絡み取って捉える。伸ばされた男の舌を口全体でちゅっ、ちゅっと音を立てて扱きあげた。重力に従って上から流されてくる男の唾液を啜りながらである。
かと思えば少女の舌が男の口内に潜り込んで、歯磨きでもするかのように歯から歯茎までしゃぶりつくす。
口を塞がれて呆としつつある脳裏でキムロはただキスだけで与えられる、痺れるような快感と多幸感に驚嘆する思いだった。
口づけを交わしながら、男はムクムクと猛り始める自身の陰部の熱を感じていた。
つまりは乙女の膣内に収めた陰茎を扱きあげたいという欲望である。
「うっ………ふっ…!」
ずっぷりと膣奥まで咥え込ませたままだったペニスが揺さぶられる。
胎奥を突如振動が襲ってリオが呼吸を乱して口づけを中断する。男が腰を振り、抽送を始めたのだ。
陰茎が前後するとそれをしっかりと締め付ける女肉により、膣全体が揺さぶられる。まるで棒を握り締める手の指のよう。
それでも男が勢いよく腰を後ろに引くと、ずるるるる………っと、内臓ごと引きずり出されるような手応えと共にペニスが抜けていく。
自分の体の中に入っていた硬くて大きいものが抜けていく解放感と、同時に襲ってくる寂寥感がリオの背筋を甘く震わせた。
その直後に力強く肉を掻き分けながら男が中に入り込み、拡張感と共に少女の膣を内から満たす。
「くっ、ぅっ」
キムロが微かに呻く。
少女の膣内は狭く生硬く、それでいてじっとりと湿り気を帯びながらぎちぎちと男の竿を締めあげてくる。
引き抜く瞬間など吸盤のように膣襞が張り付いてきて、それを剥がすように動かすと強烈な摩擦感があった。
さらに何度も行き来していると襞と襞の間から愛液が徐々に染み出し、締め付けはそのままにぬるぬるとした粘りを生んだ。
背筋がゾクゾクするほどの快感を堪えながら、キムロは少女の膣を耕すように丹念に熱心に腰を打ちつけた。
「ふっ、ふぅっ、あぁ………っ」
二人の熱い息が重なり合い、ぱんぱんと腰を打ち付け合う音が礼拝堂に響く。
当初はどこか硬さを残していたリオの膣も幾度も抽送を受けるたびに少しずつ解れて伸び、男の陰茎を根元まで受け入れていた。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と
リオは相手の腰の律動に合わせるように、自ら男を迎え入れるように腰を揺する。内部をリズムよくきゅっ、きゅっと締め付けてペニスに膣肉でしゃぶりついた。
「………っ、く………っ!」
快感に耐えるようにキムロが奥歯を噛み締める。
精を堪えるために括約筋にグッと力をいれて、なおの事一心不乱に腰を振るった。
少しでも少女を悦ばせたいと思って耐えているのか、それともこの快感を己が僅かでも長く味わいたいと考えているのか。それすらも最早当人でも判別はつかなかった。
リオの首筋に顔を埋めるように伏せて荒い息を吐きながらキムロは必死に抽送に専心する。ただその姿はやはり肉欲を貪る一匹の獣のようにも見えた。
そのキムロの頭をリオが腕でぎゅうっ、と抱きしめる。そうすると髪から薫る男の匂いが少女の脳を打った。
官能に眉根を寄せて荒い鼻息を零しながら、男の狼耳を口に咥えて甘噛みし、舌で
耳朶をしゃぶられたキムロは背筋が粟立つような感覚を覚えた。それが腰奥から立ち上る性感と混じり合って射精欲を煽った。
「ふぅっ、ふぅう、ふぅー………っ!」
今やキムロには余裕は残されていなかった。それこそ狼のように息も荒くして、
鍛えられて日焼けした男の体が、白く華奢な少女の矮躯を押しつぶすようにペニスを捻じ込んで幾度も突き立てる。
赤らんで拡げられた少女の幼気な肉穴に赤黒く野太い肉竿が粘液を跳ね飛ばしながら出入りを繰り返した。その度に肉と肉がぶつかり合う拍打音と淫液が媚肉と捏ねまわされる粘着音が立つ。
「はぁっ、あぁっ、んん………………っ!!」
リオはそんな容赦ない突き込みを受け止めながら恍惚の笑みを浮かべていた。
叩きつけられる男の情欲と自分の体の中を掘り返す熱くて硬いモノの感触。それをもっと強く味わうように、キムロの体に腕と脚を絡ませるようにしがみついた。
胎内を掻き毟るエラの張った亀頭を襞で締め付けて味わう。打ち込まれる肉杭を腰を浮かせて奥まで迎え入れる。
「うっ、ぐっ………!!」
歯を食いしばりながら、キムロが一層強く腰を打ち付けた。亀頭の先端が子宮口に深々と突き刺さり、奥の子宮をグリグリと押し潰した。
その瞬間、ついに限界を迎えた男の精が弾けるように解放された。
どぶっ、どぶるるる…………………っっっ!!と音も聞こえてきそうな力強い射精。
睾丸の中でギリギリまで濃縮された、べっとりと白濁した精液が少女の子宮にぶちまけられる。
「はっ、あ゛っ、あぁぁ………………っ!!」
体の奥に流し込まれる雄の濃く熱い体液。
それを受け止めるリオはぶるぶると身を震わせ、背筋を反らせながらその熱感に感じ入った。
彼女に抱きしめられるキムロは少女の首筋に顔を埋めながら、命を絞り出していくような解放感と虚脱感、そして快感を呆けるような心地で味わっていた。
男と女が汗みずくの体を抱きしめ合い、交わりの余韻に耽る。
ふぅふぅ、と荒い息を吐くキムロの顔をリオが挙げさせて頬に手を添えた。
汗に濡れて上気した男の頬を少女の繊手が優しく撫で、唇を寄せて微笑む。
子をあやす母のように優し気であり、それでいて雄に媚びる雌のような淫らな笑みだった。
それに応えるようにキムロも、自らの意志で顔を寄せて少女の口を吸った。
「………もっと、してくれますか………?」
くすくすと悪戯気な童女のようにリオが笑い、キムロはそれに頷いた。
互いの体を唇と指で撫で合い、汗に濡れた肌を擦り合わせるようにして後戯に耽る二人。
やがてリオは体の中で再び立ち上がり始める雄の昂りを感じ、それを己の媚肉できゅっと締め付けた。
二人以外には誰もいないダンジョンの礼拝堂。
そこでリオとキムロは互いに心行くまで、動物のように、人のように睦み合うのだった。