フロラントの街は内陸にあるため漁港から鮮魚を輸送するのは手間がかかる。手間がかかるということはその分値段も高くなってしまうということで――――――必然的によく店で出される魚料理は川魚を使ったものが基本になる。
それは刺身であっても例外ではない。生魚を使う以上は鮮度を最優先して近場で採れたものを使うのはある意味当然だった。
その辺りの需要を見越した食用淡水魚の養殖業者もいるにはいる。
しかし、私達が今夜尋ねた温泉宿は天然物を使用していることを売りにしていた。
養殖という肩書になんとなく
少なくとも食事の量が保障されていなくては食料の質にこだわるなどという『贅沢』はできないのだから。
「まぁ、今の私にそんな小難しい話は全く関係ないのですが!」
思わず頬を綻ばせながら刺身を頬張る。
今の私の最優先事項は兎にも角にも、今目の前にある旨い食事に舌鼓を16ビートで打つことだけなのだ!
皿の上に盛られているのは白身魚の刺身である。良く磨かれた漆塗りの箸でその身を摘まみ、横の小皿に盛られた専用のタレに付け、そして頬張る。
梅干しのような酸味のあるタレがたっぷりと脂ののった白身魚の甘みを引き立てる。歯を立てるとぷりぷりとした弾力のある触感が楽しめる。咀嚼すれば酸味と甘味が口内で混じり合い極上の一体感を醸し出した。
うーん、これはまるで鱧料理のようだ。
いや、鱧なんか食べたことないので完全に想像だが。
なんにせよ刺身を飲み込んでその余韻を楽しみつつ、ワイングラスを傾ける。
刺身にワインとか邪道極まりない、と目くじらを立てる人もいるが待っていただきたい。魚とワインはよく合うのだ。
ワインの本場であるヨーロッパは肉も食べるが、魚も食べる。地中海の海の幸を最大限に生かし、沿岸地域で育まれた魚料理の文化の奥深さを侮る人はいまい。
そして同じ地域で生み出された酒がその地域の食材に合わないわけがない。つまりワインと魚料理は相性がばっちりなのであり――――――刺身にだって合うものなのだ。
注がれたグラスにうっすらと露が下りるほどにしっかりと冷やされた白ワイン。
グラスを傾けて口に含むと、冷やされたことで際立つキリリとした鋭い口当たりが襲ってくる。だが舌の上で転がすとその奥に隠された、瑞々しく豊かな葡萄の香りが口内を満たす。
飲み下すと喉の奥に残っていた魚の味と混然一体となり、深い満足感を与えてくれる。
だが、一口一杯で満足するのは早すぎるというもの。
今夜の晩餐は懐石料理(風)だ。まだまだ皿に盛られた料理は数知れず。
刺身に舌鼓を連打しながら私は卓上に並べらえた料理の数々を物色していた。
「うぅむ。川魚を生で捌いて出しているだけだというのにこんなにも味わい深いとは………付け合わせの
「なんでもこの手の刺身系は包丁の入れ方に秘訣があるという話です。洗練された職人は魚の細胞………つまりは身を全く傷めずに捌いて見せるとか。」
「むぅ………その刃捌き是非一度見せてもらいたいものだ………。」
机の対面に座っているのはキムロだ。
彼も見慣れない形式の料理が多く面食らっていたようだが、いざ食べ始めてみると料理の細やかさや奥深さに感嘆したようだった。
普段冒険者はキャンプで自炊が基本なので、懐石料理のような手の込んだものを食べる機会がない。
なので、こうした繊細な料理を『味が薄い』の一言で片づけられる可能性も無きにしも非ずだったのだが、杞憂で終わって何よりである。
ちなみにキムロが今飲んでいるのはほうじ茶だった。
風呂場でのぼせて倒れた後、しばらく休んでから食事にしたのだが頭に血が上るようなものは良くないだろうと本人が酒を自粛した。
だが、私があまりに美味しそうに酒を飲んでいるのが羨ましいのだろう。先ほどからチラチラと机の上のワインクーラーに入れられているボトルに目が行っている。
なおこのワインは元々店が出してくれたものではなく、私が持ち込んだものである。
こうした料理を出すところで自分が持ち込んだ酒を飲むというのは明らかなマナー違反だが、この温泉宿は料理を出す際に追加料金を払えば自前のものを持ち込んでも良いことになっている。ワインにはワインクーラーを出してくれるサービスまである。
ボトルの首の部分を持ってクーラーの中から引っ張り出し、瓶底の部分の水滴を手拭いで拭き取って自分のグラスに注いで、戻す。
ワインクーラーに戻す際に氷が瓶に当たって音を立てると涼し気で風流なのだが――――――生憎と水と共に中に入っているのは保冷剤の類であった。氷は貴重品なので早々使えない。
「リオ殿は………酒に強いのだな。」
「そうなんですよねー。………『酔いにくい』というのはそれはそれで問題でもあるんですが。」
グイグイと酒を飲んでいる私にキムロが感心したような、呆れたような目を向ける。風呂に入っている間も酒を飲んでいたしな、私。
自分の頬に触れてみるとあまり熱くはなっていない。風呂に入ったことによる健全な赤みだけがそこにある。酒の酔いがそこまで回っていないのだ。
私が酒に対して強いのは
ゲーム時代は『酔い』というものは判定の成功率低下や行動不能などの症状を呈する状態異常の一種として処理されていた。なので状態異常耐性が高いプレイヤーは現実化の後、酒を飲んでも酔いにくいという状態に陥っているのだ。
酔っぱらうことだけが酒の酔い点ではないが――――――楽しみが減るのもまた事実。
そんなプレイヤーのニーズに応えた市場もあるにはあるのだが………それはまた別の話としよう。
なんにせよ私は相当に酔いにくい体だという話なのだ。
酔うのも好きだが、酔わずに酒を味わうのも好きだ。なので酔って前後不覚になるリスクを気にせずバカバカと飲んでいる。そしてその度に酒に対する抵抗力が上がっている。
そのためいざ酔いたいと思った時、相当に強い酒でないと酔えないのだが――――――まぁ痛し痒しである。
「酔いたいとき………か。リオ殿にもそういう時はあるのだな。」
「おやおや、人を何だと思っていましたか?」
お吸い物のお椀を取って中身を啜る。干し茸の旨味がぎゅっと濃縮された、優しくもしっかりとした味わいが心地よい。
私が肩を竦めて悪戯っぽく言うとキムロは「ふむ」と少し考えるような仕草をしてから口を開いた。
「リオ殿は………至って自由奔放だ。誰にも、何にも、縛られず生きる強い人間だと、拙者は思っている。」
奔放に過ぎるきらいはあるが、と彼はちょっと苦笑いを零した。
ごもっとも。私の勝手によく振り回されている彼らしい言葉である。
手前勝手な人間で悪いとは思っているが、残念ながら反省や改善はできそうにない。
「大した人間じゃないですよ。自由だとか、孤高だとか、そう言うと立派に聞こえますけど………要は社会不適合者なんです。
ぐいっ、と酒を呷る。
頭の奥の方に熱があって、なんだか
きっと私は少し酔っている。今日飲んでいるワインは相当酔いやすいやつだから仕方ないのだろうけど。
「………………キムロさんは、人を殺したことがありますか?」
「………ある。」
皿の上の料理を突いていたキムロの瞳の奥に神妙な光が宿った。
真剣な面持ちで彼は私の言葉に答える。
「私もあります、それなりの回数。仕事で殺したこともあります。必要だから殺したこともあります。ただ、邪魔だったからという理由で殺したこともあります。」
「………………………。」
「そして
ワイングラスの脚をもって軽く回す。
透明な器の中でゆるゆると渦を巻く薄い黄緑色の酒を眺めながら、自分の中にある感覚を言語化していく。
「私は本質的に身勝手な人間なんでしょう。どんな時でも自分自身の好き嫌いが最優先なんです。だから自分の都合で誰かを利用したり、傷つけることになったりしても割り切れてしまう。良心が咎めることもあるにはあるんですけど………それさえも『まぁいいや』の一言で片づけられるくらいの話なんです。」
自分で言っていてなんだが、酷い奴だ。
多分、人との出会いが悪かったのだろう。
最初に人を殺した時の状況やら、師匠の教えやら、その辺で悪い影響を受けてしまったというか――――――
………
今でも
「だからお酒を飲んでいて『たまには酔いたい』と思うのかもしれません。吹けば飛ぶほどに軽いはずの罪悪感が、指先のささくれのように邪魔になって。」
「………………。」
相変わらずグラスをくるくる回しながら語る私の姿をキムロがじっと真剣な表情で見つめている。
ややあってから彼は重たい口を開いた。
「リオ殿は――――――今の生き方を悔いているのか?」
「まさか。」
その質問に対する答えは間違いなく、『
「私は私の好きなものを食い、好きなところに行って、好きな時に眠り、好きな人を抱いて、好きなように戦い、好きなように生きているのです。そんな生き方を好きでないわけがないでしょう?」
私はそのことを強く断言した。
どれだけ良心の呵責のようなものがあろうが、それは私の中のぶれない実感だった。
私は私が『心地よい』と感じるものを全肯定する。
食事も、睡眠も、セックスも――――――
「私は人を殺した時に罪悪感をほとんど覚えないと先ほど言いましたが、もう一つ付け加えましょう。私は――――――人を、生き物を、
自分の掌に目を落とす。
弓を握り、弦を引いて、矢を放つ――――――生き物を狩り殺すための業を修めた自分の手だ。
どんな生き物も、生きる為に生きている。
そして、生きるという目的に根差した行為は全て快楽に結びついている。
食事、睡眠、セックス。全ては命を繋ぐために必要だから心地よいのだ。
だったら――――――自分の命を守るために殺すことも、自分の糧を得るために殺すことも、快楽に結びついていてもおかしい話ではないのだと思う。
………初めて人を殺した時のことを思い出す。
極限状況化で
震えるほどの恐怖と、身を焼くような怒りと、体が裂けるような痛みを超えた先にある、泣きたくなるほどの―――――――――
「あの時思ったんですよね――――――『悪くない』と。」
私はそこまで語ってグラスに口を付けて中身を飲みほした。
豊潤な葡萄の香りを纏う強烈な
私はカンッ、と音を立てて机の上にグラスを置いた。
「まぁ、小難しい話は置いときましょうよ!!要は、人生は楽しくて、生きていると酒と飯が美味いってことです!!」
「そ、そういう結論でよいのか。」
「いいんです!!」
イインダヨーグリーンダヨー、とか言い出したかったがネタがわからないだろうと思うので
私はにやりと笑ってグラスにワインを注ぎ直した。
色々と語ったが、
私は私自身の好きなもののために好きなように生きる。
「そして今はお酒とご飯と、いい男が好きですよ?」
「む、むぅ。」
私が正面から彼に微笑みかけるとキムロは顔を少し赤くして眉間に皺を寄せた。はっはっは、照れておるのう。
そして私は自分が酒を注いだグラスを彼の方に差し出した。
「これは………拙者に?」
「美味い酒ですからね、飲まなきゃ損ですよ。」
さっきからチラチラと私のグラスを見ていたのはよく知っている。
自身の体調を鑑みて控えていたのだろうが、私に言わせれば欲しいものを我慢する方が毒である。
せっかくの晩餐だ。どうせなら一緒に良いものを分け合って良い食事したいと私は思う。
彼はしばらく唸って逡巡していたが――――――結局差し出されたグラスを手に取った。
「で、では、その………かたじけない。」
「遠慮なくどうぞ。今日は私たち二人の打ち上げなんですから。」
そして私は彼が意を決したように酒を飲み下すのを見届けた。
******
「―――――――――そこでおれは言ってやったのだ。『拙者を犬と呼ぶならば、その犬の牙に喉笛を食い千切られる覚悟はあろうな』と!そしてすかさず刀を抜刀し、薄汚い悪漢どもをばっさばっさと切り倒し――――――」
「えぇ、えぇ、そして乱闘騒ぎを聞きつけた兵士にまとめてボコられるんでしたよね?私にも似たようなことに覚えがあります。そういう時にはいち早くスタコラサッサと逃げ出して知らんぷりするに限ります。」
「うむうむ、そうなのだ。おれがやつらをばっさばっさと切り倒していると乱闘騒ぎを聞きつけた兵士たちが現れて拙者も取り囲まれて――――――」
「そうなんですよね。私はダッシュでその場を逃げ出したんですが追ってきた奴がたまたますごい手練れでして撃墜しようかと思ったんですがこちらから手を出すと明らかに公務執行妨害的な感じになっちゃうんで――――――」
二人で酒を飲み始めてからしばらく、我々はグラスを片手に酒を飲み交わしながら微妙に噛み合っていない会話をループさせながら続けていた。
既に最初の懐石料理は粗方食い切ってしまっていたので、追加で酒の肴を注文していた。
最初のワインはもう空になっていたので二本目を開けている。
キムロのグラスにどばどばと酒を注いでやると、彼は実に美味そうに中身を飲みほした。
いやー、良い飲みっぷりだ。紹介した甲斐があったというものである。
「あぁ゛~っ、美味い。このような美味い酒を飲んだことは無いっ!葡萄酒も存外良いものだっ!」
彼の顔は既に真っ赤であり、表情はいつになく陽気だった。
ついでに言うと一人称が『拙者』から『おれ』になっているし、話がさっきから何度かループしている。
有体に言って彼は酔っていた。
「でしょう~、この酒高かったんですからねー。」
「高かったのか、なるほど。………んん?『鷹狩った』?」
「いやいや、『高かった』ですよ、キムロさんってば。」
バシバシ、と彼の背中を叩いて私もけらけらと笑う。
妙に気分が浮ついていて、なんだか口がよく回った。体が軽くてどうでもいいことでも面白おかしく感じられた。
つまりは、私も酔っぱらっていた。
「うははは、リオ殿はそんなにちまっこい体でよくそんなに酒を飲まれるなぁ!」
「あははは、ちまっこいとは失礼な。小さくて可愛らしいと言うべきでしょうそこは!」
「おぉ、そうだそうだ!リオ殿は愛らしいぞ!」
「そうでしょうそうでしょう!私もそう思います!」
「自画自賛とは大したものだなぁ!いや、しかし愛らしいだけでなく良い香りもする。」
キムロは私の髪を一房手に取ってその香りを嗅いだ。
一応風呂上りでもあるので髪は微かに濡れていて、それでいて湯と女の香りを漂わせているようだった。
ちなみに途中から私達は互いに隣り合うように座って酒を飲んでいた。
彼に肩を寄せると男らしくて逞しい筋肉の感触と、湯上り特有の男の汗の香りが感じられて胸の奥がどくん、とざわめいた。
「そういうなら、キムロさんこそいい匂いがしますよ。男の人の香りって感じで私はすきです。」
「ただの汗のにおいだと思うのだがなぁ。」
「そういうのがいいんですよー。キムロさんだって私の体臭に興奮してる匂いフェチの癖にー。」
「ふぇち、とはなんだ?どういう体質なのだ?」
「えーと、特定の対象の、特定の部位とか要素とかに妙に執着する性癖のことですね。」
「ならばおれはそのようなフェチとやらではないぞ。」
キムロが私の腕を取って、私の目を覗き込むようにして言う。
腕を取られたとき彼の掌の大きさと逞しさを感じてドキドキした。
「おれはリオ殿の香りも髪も、瞳も声も、全部ひっくるめて可愛いと思っているぞ。」
しっかりと私から目をそらさずに真っ直ぐこちらを覗き込んだままキムロはそう真剣な表情で告げた。
酒のせいで顔色は真っ赤だし、明らかに酒の勢いで言っている台詞なのだが――――――正直とても嬉しかった。
具体的に言うとちょっと子宮に来た。
「あぁー、そのセリフすごい嬉しいです。きゅん、って来ましたよ。乙女心と子宮に。」
「ならもっと言おうか、リオ殿は全部可愛いぞ!」
「はーい、もっともっと♡」
「可愛い可愛い。」
互いにげらげらと酒の勢いに任せて笑う。
キムロは「可愛い可愛い」と連呼しながら私を腕で抱きしめてきた。
逞しい腕と厚い胸板、熱い体温と芳しい体臭。キムロに抱きしめられると思わず胸の奥からぎゅーっ、と温かいものが込み上げて来て、だらしなく笑ってしまう。
「なら………ねぇ、キムロさん♡ 次は布団の上で、『可愛い』って言ってもらえます………?」
「フートン?」
「………和式の寝具です。」
「つまりベッドか。」
「そういうことです。」
我々はまた顔を見合わせて笑い合った。
そして一旦席を立って押し入れの奥から布団を引っ張り出して畳の上に敷く。
「ちゃんとした宿なのに床の上に直接寝るのか」とキムロが驚いた様子を見せていた。
日本に始めて来た外国人みたいな反応である。いや、実質そんな感じだが。
兎に角布団を敷いた私はぽすん、と音を立てて布団の上に腰を下ろした。
風呂を上がったときから着ていた浴衣の胸元を少しはだけて――――――彼を誘う。
「じゃあ、キムロさん――――――さっき可愛いって言ってくれたみたいに、一杯可愛がってくださるんですよね?」
「無論だ。」
そう言うと彼はさっきそうしてくれたみたいに私の体を抱きしめてくれた。
私の体を腕の中に収めながら、ふぅふぅ、と鼻息荒く私の体臭を嗅いでいる。
ちょっと気恥しい――――――でもそれが彼の興奮を示しているようでぞくぞくする。
「ん………っ♡」
荒い吐息を零しながら、キムロが私に口づけを落としてくる。
額や瞼や頬。髪の毛を軽くかき上げて耳にキスされるとくすぐったくて、でもそれが心地よかった。
うなじに唇が当たる。ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて肌を吸われた。
「ひゃぅ………………っ♡」
かと思いきや首筋を軽く甘噛みされる。
耳元、うなじ、首筋を舐められ、キスされ、あるいは歯を立てられる。唾液が立てる微かな水の音が耳の中で反響してくすぐったくて、でもそれが何だかとてもいやらしかった。
荒い息も相まって今のキムロは私という獲物に
「はぁっ………♡」
無論私とてずっとやられっぱなしというわけではない。
現在膝立ちになっている彼の股の間に手を伸ばす。無論そこにあるのはすでにいきり立っている雄の生殖器官だ。
欲しいモノの形を捉えた私の子宮がお腹の奥で疼き始める。先ほどの風呂場の情事で中に注がれた精子のどろりとした感触を妙にはっきりと感じる。
思わず口の中に唾が湧いてきて、思わず喉を鳴らした。
「ねぇ、ねぇ、キムロさん………♡ キムロさんのおちんぽ、舐めてもいいですか♡ いいですよね………っ♡」
自分の息がはしたなく荒くなっているのを感じる。
心臓がバクバクと音を立て始め、喉奥から熱いものが込み上げてくる。
私の子宮と頭は浴衣越しに触れている雄ちんぽの事で一杯だ。
早く私の
キムロは私から手を離すと、一旦立ち上がり――――――躊躇うことなく、裾をはだけて褌を脱ぎ捨てた。
下着に押さえつけられていた勃起ペニスがぶるん、といっそ滑稽とも言えるほど勢いよく飛び出してきた。
同時に体温で蒸されていた雄の陰部の匂いが、男の発情臭が漂って私の鼻腔を捉えた。
息を吸い込むとそのつんと来る香りが脳を直撃してガンガンと揺さぶってくる、既に酒で酔っているせいもあるのだろうが――――――正直頭がバカになりそうだ。
でもちょっと言い訳させてほしい。
私は
特に嗅覚やら味覚やらはゲーム時代は制限されていた反動なのか、やたらと強く感じるようになっている。
だから私が雄の匂いで興奮するのも、ちんぽを口に一杯頬張って味わいたいと思うのも仕方のないことなのだ。証明終了。
「はむ………っ♡」
ひとしきり香りを嗅いでから、あんぐりと口を開いてその先端にむしゃぶりつく。
パンパンに張っている赤黒い亀頭は熱くて生臭い飴玉のよう。舌先で転がしていると先端から少ししょっぱい先走りの汁がとろとろと染み出してくる。
歯を立てないように慎重に唇で幹を甘噛みしながら、亀頭全体に唾液を塗り込むように舌を絡みつかせて口の中で舐めまわす。
雄の味が私の舌を犯す。息を吸い込むと陰毛から沸き立ってくる男の匂いが肺まで満たして、多幸感で頭がふやけてしまいそう。
「あぁ………っ、いいぞリオ殿………。リオ殿は本当に、しゃぶるのがうまい………っ。」
「………………♡」
キムロが背筋を軽く反らしながら恍惚の声を上げる。彼の大きな手が私の頭を撫でる。
褒めて貰えると嬉しい。それは当たり前の話で、私は胸の奥が温かくなる心地を感じていた。
私は一層熱を上げてチンポしゃぶりに熱中した。
亀頭を舐めながら軽く自分の頭を前後に揺する。
唇を雁首のあたりに引っ掛けるようにして何度も擦ると、唾液が泡立ってじゅぷっ、じゅぷっ、と卑猥な音が立った。
口の中に湧いてきた唾液を無意識のうちに飲み下すが、基本的に口を開きっぱなしなのでどうしても唇の端からぽたぽたと垂れてしまうのが気恥ずかしかった。
顎が疲れたら一旦口を離してペニスを解放してあげる。勢いよく口を離すとちゅぽん、という音とともにペニスが反りかえって口から抜けていった。
その時に亀頭の先から唾液と先走りの混ざった汁が跳ねて顔に少しかかった。汚されたみたいで興奮する。
口を離してからもまだ雄弄りはやめない。
人差し指と親指で軽く円を作ってから、幹の皮と亀頭のエラを往復するように擦ってあげる。
カウパーを垂らして入り口をぴくぴくと震わせる鈴口を舌先で蛇のようにちろちろと舐めてあげると、ペニス全体が手の中でより硬くなった。
「あぅ………んっ♡ んむぅ………っ、ふぅ………っ♡」
顎の疲れが取れてきたらまた口に含んでおしゃぶりをする。
口の中全体を使って亀頭の表面を擦ったり、あるいは頬っぺたの内側で包んだりとたっぷりと口内でおちんちんを堪能する。
雄のペニスはまるで何度舐めても擦り減らない飴玉のよう。舌で舐めれば先走りの雄汁が尽きずにこんこんと湧いてきて、雄臭い匂いはいつまでも尽きない。
その間も空いた手で、ペニスの幹の部分や付け根の睾丸辺りを擦ってやるのも忘れない。
手の中で睾丸を弄びながら、私にぶちまけるために雄の白濁精液がここで生産されているのだと想像するとドキドキして胸が高鳴った。
ただ両手を手淫に使うわけにはいかなかった。もう片方の手は私がオナニーするのに使っていたからだ。
浴衣の裾の中(なおノーパン)に手を突っ込んで、指先で陰核を捏ねまわす。
包皮を使ってクリトリス表面を擦るように何度も指を上下させると鋭い快感が股の間から立ち上ってくる。
ぎゅう、っと会陰部に力を入れると陰唇の奥、膣の中から粘った愛液が垂れて布団の上に滴った。
「ふーっ♡ ふぅー………っ♡」
口でちんぽを銜えて、それをオカズにしながらオナニーに没頭する。
雄の勃起ペニスの雄々しさ逞しさ、熱さと臭さを感じながら、これが自分の中をずっぽりと刺し貫いて胎の中にドロドロの孕ませ汁をぶちまける様を想像すると、子宮の奥がきゅんきゅんして切ないほどだった。
陰唇から漏れ出てくる愛液が秘部でぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てている。
「はぁっ、はぁっ………。リオ殿………っ!」
陰茎をしゃぶっている間にも、キムロの手が私の頭を撫でてくれる。
硬くて少しごつごつした指が私の髪を梳き、掌に後頭部を包み込まれる。
指先が軽く髪を払い、頬や耳元を撫でていく。冷えて感じる指先が心地よいのは私の頭が茹っているからに違いない。
いつの間にかキムロの腰がかくかくと前後に揺れ始めていた。
まるで口をおマンコに見立てられているように何度も細かくペニスが口の中と外を行き来する。
雁首が口腔粘膜を擦りあげて後ろに引かれれば、唇の端から掻き出された唾液が溢れて顎を伝っていく。
突き出された亀頭が粘った音を立てながら喉まで刺さっていく。思わずえずきそうになるが、その息苦しさも今は興奮を呷るスパイスだった。
ぐぽっ、ぐぽっ、とぬかるみに杭を打つような音を立てながら奥までペニスを迎え入れながら深いストロークで扱いていく。
「………………っ♡」
「くっ………、リオ殿、おれはっ、もうっ!」
口淫に耽りながら上目づかいに見上げると、顔を赤くして快感に顔をゆがめるキムロと目が合った。
口に出入りするペニスのピストン運動が一層早くなる。私はそれを感じてこくり、と頷いた。
こっちもそろそろいい塩梅だった。
弄り倒している陰核がビンビンに勃っていて痛いほどだ。グミのような弾力のそれを指先で扱くと体の奥から一層激しく愛液が滴る。
腰の奥がドロドロして切なくて、それでいて気持ちいい。
そしてその気持ちよさの絶頂感がすぐそこまで来ていた。
「ふぅっ♡ んふぅっ、んんっ♡」
私は更に彼のちんぽをしゃぶる勢いを加速させる。
口の中から空気を出して、陰圧で口腔粘膜全体をぴったりと張り付かせるようにして扱きたてる。
キムロの腰の前後と合わせて何度もペニスを出し入れする。私の口は今やおマンコと同じ扱いだった。
きゅう、と陰嚢を掌で揉み解し、精管を指の腹でコリコリと弾いてやると、キムロが突然「うっ!」と呻き声を上げた。
いよいよ、とそれを察して私は――――――勢いよく口からペニスを吐き出した。
泡立った唾液でぬらぬらと濡れた亀頭が私の目の前で跳ねる。
その先端に空いた鈴口がぶくり、と膨らみ………
――――――びゅぶるうぅぅぅっ、びじゅるるるるっっっ!!
猛烈な勢いで射精が始まった。
本日二度目ながら黄ばみさえわかるほどの濃厚白濁精子。
青臭いそれが、びちゃびちゃと私の顔面にぶっかけられる。
「あー………………♡」
そして、私はそれを、舌を差し出しながら受け止めた。
髪に額に、瞼に鼻面に、舌に唇に、顔面全体を汚す白濁のシャワーを甘んじて受け入れる。
猛烈な、それこそ鼻が曲がりそうな精臭が顔中を包み込んでいく。ぼってりと重たい白濁した粘液が私の顔を汚していって――――――その汚辱感が、背筋が戦慄くほど甘美だった。
「あー………っ♡ んんー………………っ♡」
濃厚な雄の香りに頭を犯されながら、自分の股間に忍ばせた指で陰核を扱くと、あっけなく絶頂した。
目も眩むような、桃色の電流が下から上まで私の体を串刺しにして、体がぶるぶると震えた。
「んぁ―――――っ、あ゛っ♡ んぁー、あーっ♡」
ビクビクと絶頂感で身を震わせながらも、オナニーを止められない。
だってしょうがない。顔中にべったりとこびりついた白濁汁が雄臭くて、頭がガンガン痺れているから。
んくっ、と喉を鳴らして唾液と一緒に口の中に飛び込んできた精子を飲み下す。喉奥に感じる苦くて青臭い味と香りが無性に興奮を煽る。
すぅ、はぁ、と息を吸い込むと精臭が肺どころか脳まで犯してきて、馬鹿になってしまいそう。
いや、もうバカになっている。
私は猿のように息を荒くしながら、ぐちぐちと汁音を立てながら股座を弄るのを止められない。
「り、リオどの………っ!!」
「きゃんっ♡」
顔中に精液を張り付かせながら
精液で粘って重たい瞼を何とか開けて見上げると、キムロが私の前に仁王立ちしていた。
先ほどドロドロのスペルマを吐き出したばかりの彼のちんぽは既に再勃起を終えて臨戦態勢を終えていた。
「本当にっ、ほんとうに、お主は、まったくもって、好きものだな………っ!!」
「そう………そうなんですっ♡」
その精力の旺盛さを見せつけられて、胸の奥がきゅんきゅんした。
下腹の奥が甘く疼いて疼いてたまらなかった。
「わ、私っ、おちんぽもザーメンも大好きな、変態女ですからっ♡ はやくっ♡ はやくキムロさんのおちんぽ、私のおマンコに突っ込んでずぽずぽしてほしいの………………っ♡♡」
仰向けになって、股を開いて、指先で陰唇に指を添えてぐぱっ、と入り口を開く。
奥からどぷどぷと愛液が垂れる様も、雄を欲しがって膣肉が締まる様も、ペニスのようにクリトリスが勃起して包皮から飛び出ている様も全部曝け出すようにして、はしたなく男を誘う。
恥ずかしくてたまらなくて、だからこそいやらしいのがわかって、それで興奮している自分は紛れもなく変態だった。
もう言葉も何もいらないだろう。
キムロはより一層股間のモノをいきり立たせ、それこそ狼のような唸り声を上げて私を押し倒した。
******
さて、先程語った話ではあるのだが私は状態異常耐性が高く、それ故に酒に酔いにくい。
これは私だけでなく状態異常耐性が高いプレイヤーには共通の事実であり――――――共通の悩みとも言えた。
そこである一部のプレイヤーは考えた。
「簡単には酔えないのなら、それでも酔えるような酒を造ってしまえばいいじゃない」と。
例えば単純に耐性を貫通するだけのアルコールを酒の味を壊さないように濃縮して使用する。
例えば状態異常耐性を低下させるような作用を酒の中に仕込む。
例えば新種の特殊効果を発生させて耐性をすり抜ける。
エトセトラエトセトラ………。
何はともあれ
問題はずばり一つ。
これらの酒類は耐性を持っている人間でも酔えるように作られたものであり――――――耐性を持っていない人間が飲んだ場合の事を前提としてはいなかったのだ。
つまり何が起こったのかというと、それらの改造酒を飲んだ一般の人々による急性アルコール中毒による中毒死事件の頻発である。
結果としてこれらの改造酒は明らかに人体にとって有害な『毒酒』という名称を付けられ、各国で製造と販売が禁止されることになった。
………しかし人間の欲望、とりわけ飯と酒のそれは底無しなもので、地下に潜って酒を密造する業者は後を絶たない。
今では最初から非合法なのをいいことに、高い状態異常耐性を持っていることを前提として色々と
何はともあれこの十数年の間にそうした違法に取引される毒酒は
ちなみに私もそうした毒酒愛好家の一人だ。
知人にそうしたものを取り扱う
さて、ここまで語ったところでそろそろ察してくれると思うのだが――――――私が温泉宿の晩餐に持ち込んだワインも毒酒の一種である。
純粋に『酔いやすくなる』タイプの酒であり、毒酒の中ではまだマイルドな性質のものだ。
酒自体の品質が非常に高く、極上の酩酊感を与えてくれる一本なのだが………私は今晩、いや
そして――――――私はそれを、絶賛後悔していた。
「うぁ゛ーーー………………………きっつ………。」
グリグリとこめかみのあたりを指で押さえながら空を仰いだ。
さっぱりと晴れた朝の陽ざしが宿の部屋の縁側に座る私を照らしてくれるが、肝心の私は最悪の気分だった。
日差しの清々しさが目に沁みるようで痛い。後頭部をハンマーで殴りつけられたような鈍痛がして、頭を通る血管の拍動さえも煩わしかった。
「おぼっ、おぼぅえええぇぇぇ………………っっっ」
「………………。」
私の背後数メートル、一枚扉を隔てた向こうでは便器に向かってキムロが昨晩摂取した山と川の幸とアルコールを冥府へと流しているところだった。
つまり吐いていた。
朝の目覚めの演出には実に最高のBGMだ。
でも敢えて言わせてもらえばモーニングコールの代わりに寝ゲロをぶっかけてくるのはやめてほしかった。
え、私の自業自得?そうかもしれない。
「あ゛ぁ゛ー………………っ、きくぅ………」
口の中に酔い覚まし用の薬を放り込んだ。くしゃくしゃに丸めて乾燥させた薬草だ。
奥歯で噛み締めると濃縮された強烈なミントの香りが口から鼻に抜けていく。直接杖を口に突っ込まれて冷凍魔法をぶち込まれたみたいな凶悪な清涼感が脳を直撃して思わず呻く。
暫し悶絶していると薬の効果で頭の鈍痛は一気に楽になった。視界は良好で霧が晴れたような気分だ。
正常な認識と頭の働きが戻ってきたせいで、色々と惨状に目を向ける余裕が出てきた。
部屋に目を戻すと布団は人体が吐き出す多種多様な体液でぐちゃぐちゃになっていた。これは宿に迷惑料を払った方が良いだろう。
キムロはいまだに便所で胃液を吐いているし、私は
うっ、胃液の匂いを嗅いでいるとこっちも吐きそうになってきた。
さっさと風呂に入ろう、そうしよう。
「キムロさーん、私お風呂に行ってきますからねー。」
「お゛、お゛ぅ………………。」
「キムロさーん、酔い覚ましの薬を置いておきますからねー。」
「お゛、お゛ぅ………………。」
「キムロさーん、大丈夫ですかー?」
「お゛、お゛う゛ぅぇぇぇ………………………っっっ」
ダメみたいですねこれは。
それから私が風呂を上がった後、青い顔をしているキムロの口に薬を捻じ込んで無理矢理回復させたり、急場しのぎの片づけをしてから宿の人に連絡を入れてから叱られたり、私が勧めた酒を二度と飲まないことをキムロが決心したり………………そんなあれやこれやがあって、私達の打ち上げパーティは無事(?)終わりを迎えることになったのであった………。