※この作品はR-18です。

The Unlimited Horizon   作:白臼

64 / 102
ep.29 Virgin Blue, Rose Blue 4(※)

 

 

 

「――――――――――――…………っっ!!!!」

 

 カリっ、と乳首に歯を立てられる。

 さながら(ナッツ)でも噛むような、なんて事のない一噛み。

 だがその瞬間、私の胸先から走った衝撃は私の息を詰まらせるには十分なものだった。

 声にならない声を上げて、思わず背筋が仰け反る。

 

 まるで虫に刺されて腫れて赤くなった皮膚を、肉ごと抓りあげられるような感覚。

 痛い。だが痛いだけでなく、その痛みの奥から()()()()と響く罪悪感交じりの快さがある。

 痒みを誤魔化すために与えられる、無理矢理肉を責め嬲るような痛み。

 それを何倍にも何倍にも鋭くして、奥から染み出す快感を熱くしたような――――。

 

「こっちもいこうか」

「―――待っ、ちょ……っ」

 

 しかしそんな息が詰まるような衝撃も序の口もいい所だった。

 乳首というのは左右合わせて二つあるわけで……つまり、歯を立てられたのとは逆の方が空いている。

 ヨアヒムの指がそっと逆側に添えられて、()()()()

 それは()()()()()というよりは確かに()()()()、という表現が的確だった。

 焦らされてお預けされて、先端部に溜まった快感の果実を収穫するように彼の指先がきゅっ、と私の乳首を摘まみ上げる。

 

「はぁっ……っ! あ゛っ……♡」

 

 加えられている力はそれ程でもないはずだ。そっと指の腹を添えて、指と指の間で軽く押す程度のもの。

 しかしそれだけの圧迫感で私は陸に上がった魚のようにパクパクと口を開閉して喘ぐしかなかった。

 重たいように鈍く、それでいて刺されるように鋭い、桃色の電流に胸を串刺しにされているような錯覚に陥る。

 目の裏がチカチカするそんな快感に身を捩らせながら耐えて耐えて――――解放されたころには私は肩で息をしていた。

 

「はっ、はっ……!はぁっ……♡」

「思っていたことだが……やっぱり、敏感だなリオ」

「うっ……。く、ぅん……っ♡」

 

 胸元に顔を寄せるヨアヒムが、悪っぽい表情でそう囁きかけながら、またも軽く私の乳首を弄る。

 喉の奥から漏れる甘ったるい声を押し込めようとしてできず、半端に鼻にかかった甘い声を上げてしまう。

 力の入らない目で頑張って睨みつけてヨアヒムに抗議するが、当の相手はニヤニヤしたあくどい笑みを崩さない。

 ニヤ付いた表情(かお)まで格好よく見えるのは反則だ。

 

「んっ、んぅ……っ♡ そんなっ、胸ばっか……ひゃぁぅっ!!」

「こんなに虐め甲斐のある、可愛い乳首をしているのが悪い」

 

 湧きあがってくる嬌声のせいでつっかえながら文句を言うがヨアヒムにはどこ吹く風だった。

 むしろ私の反応を楽しむように笑いながら、私の体を弄んでくる。

 指先でぴん、と弾くように乳首を軽く叩かれると、情けない声が出てしまう。

 

「真珠のように白い肌に、桜色の乳首が映えるな。こんなにも可愛くそそり立って……虐めてください、と言っているようなものじゃないのか……?」

「なんですか、それは……っ、言いがかりで……っ♡ ――――………っ!!!!」

「でも、見てみろ。こうやって虐めてあげると……ほら、また健気に大きくなる」

 

 そろそろ確信した。ヨアヒム(こいつ)は結構なサディストだ。

 今もにやり、と性質(たち)の悪い微笑みを浮かべながら、軽くひねるようにして私の胸の先を摘まみ上げる。

 摘まみあげられて抓られて、それから解放されると()()()()という疼痛と共に血が巡るのがわかる。

 チカチカと明滅しながら潤む視界の中で、私の乳首がひくひくと震えながら赤く腫れぼったくなっていた。

 収穫者の手を誘う、色付いた果実のように。

 

 そしてそれを摘むように、ヨアヒムの手と唇が襲ってくる。

 唇の間でそっと咥えられて優しく丁寧にくにくに、と転がされたかと思うと、軽く吸い付かれて背筋が跳ねた。ベッドのシーツから跳ね上がりそうになる私の体はヨアヒムに抑え込まれて動けない。

 乳房全体をゆっくり解すように掌が胸元を揉み込み、肌の表面をそっと愛でるように指の腹が撫で上げてくる。

 じわじわと広がる温かみに似た心地よさが先端に収縮していく。そしてその緩慢な溜まりに思わず耐え切れず私の口の端から声が漏れ始めたタイミングを見計らうように、指先が乳首をきゅっ、と捻るのだ。

 

「――――……んんっ♡ んんぁぅ………っ♡♡」

 

 今や私は完全にヨアヒムに翻弄されていた。

 胸先を弄られるたびに、そこがコントローラーにでもなっているみたいに喉奥から嬌声が絞り出される。

 声を出したくて出しているわけではない。ただ、そこを触れられると肺の奥、胸の奥までビリっと桃色の火花が弾けて、それに反応した体が勝手にそんな声を上げてしまうのだ。

 そうやってヨアヒムに好き勝手されるのが悔しくて、勝手に出てしまう声が恥ずかしくて遮二無二声を噛み殺した。

 

「恥ずかしがらなくていい。可愛い声だ、もっと聴かせてくれ」

「んんんっ……っ!! んぁっ、ゃ♡ ぁ゛――――っ♡♡」

 

 精一杯の抵抗はあっさりと破られる。

 ストローでコップの底に残った水を吸い上げるかのような勢いで、ヨアヒムが私の胸先を吸い上げたのだ。

 ちゅうぅぅっ、と文字にすれば滑稽な吸引の音。だがそれに晒された私の方はたまったものではなかった。

 乳首の先から自分の魂が吸いだされてしまいそうな感覚。

 痛いのか気持ちいのか、あるいはその狭間か、はたまたその両方か。

 とにかく処理しきれない感覚を脳味噌に叩き込まれた私は、押さえつけらえたベッドの上で首筋を逸らして哭いた。

 

「あっ♡ ぁぁ゛っ、ゃっ♡ だめっ、んひぁっ♡♡ ん、ひぅぅ――――……っ!!」

 

 私が哭くのがそんなに楽しいのか、ヨアヒムは意を得たりといわんばかりに左右の乳首を何度も啄んだ。

 「ちゅ、ちゅううっ、ちゅぽんっ」と搾乳機でも使っているかのような音と共に胸に吸い付かれて、その度に私は派手に喘いだ。

 胸の先から体に打ち込まれる火花のような感覚は、私の体の芯まで響いて、神経を焼いて脳を打ち据える。

 声を抑える努力も忘れて私は何度も嬌声を絞られるように吐き出してのたうち回った。

 

 ……ヨアヒムがひとしきり満足して、解放してくれたころには私は既に息も絶え絶えになっていた。

 ぜぇぜぇ、と荒い息を吐きながら体の奥に溜まった熱を換気する。

 胸の先が絶え間なくジンジンする。少し胸元に目を向ければ、胸元はヨアヒムの唾液でてらてらとぬめって光り、あちこちがキスマークで赤くなっていた。

 

「優しく、してって……言ったじゃないですか……っ」

「悪いな。でも、出来ないかもしれないとも言った。それに、お前があんなに可愛らしく哭くのが悪い」

 

 私が恨みがましく言うと、ヨアヒムはいけしゃあしゃあと言ってのけた。

 いつものような悪戯気な微笑みを浮かべながらの、悪びれることなどないような表情。

 その表情のまま、謝罪の代わりなのだろうか、彼の手が伸びて私の頭を撫でてくる。

 大きな手で髪を梳いて頬をさすり、そして彼の顔が近づいてきてキスをする。

 

「ん……っ♡」

 

 ……狡い人だ。

 唇と唇を触れ合わせただけで、さっきまであった恨み言は胸の内から消えてしまった。

 代わりにじんわりと温かいものが優しく満ちていく。

 ただその優しい感覚は、胸への愛撫で植え付けられた焦げ付くような熱と混ざり合って、何とも言えない熱さとなって私の体を内側から巡っていた。

 

「はぁ、ぁっ……♡」

 

 ちゅ、ちゅ、と何度も唇を触れ合わせるようなキスをして、ヨアヒムと正面から見つめ合う。

 彼の榛色の瞳と、その奥から私を射抜くギラついた眼光。

 それを見つめ返していると私の中の熱が一段と激しくグルグルと回り始める。息が荒くなって、肌が汗ばんでいくのがわかる。

 体の芯から疼痛のような甘い痺れが、心臓の鼓動に合わせて()()()()()()と鈍く響いていた。

 

「ふ、ぅっ……♡」

 

 一瞬、息が詰まった。ヨアヒムの手が下に伸びて太腿に触れられている。

 陶器を撫でるようにゆっくりと擦られるそこが微かにくすぐったい。

 ただ同時に、埋め火に焙られるようにじんわりと掌の温かさが染み入ってきて私の内側が熱くなる。

 触れられる皮膚の感触がぬるついている。いつの間にか脚まで汗ばんでいるのがわかる。

 

「…………っ……」

 

 ヨアヒムの手が少しずつ、少しずつ昇ってくる。

 ネグリジェの裾はいつの間にか腸骨の辺りまで捲れあがっていた。

 阻むものは何もない私の下半身。緩慢な速度でやがて、本来なら隠されているべきところに彼の掌が到達する。

 

 心臓がどくん、と跳ねる。肋骨の内側から飛び出しそうなほどの強さだ。

 蹴立てられたエンジンのように烈しい鼓動が胸の奥で響いて、息が荒くなる。

 緊張しているのか、興奮しているのか。その先へ進まれるのが怖いのか、その先へ進むのが待ちきれないのか。

 そのどちらなのか、そのどれなのか自分でも判別はつかない。

 

 灼けつくように熱い視線でヨアヒムが私を見つめてくる。その視線に縫い付けられて逃げられないということを思い知らされる。

 気づけば私だけではない、彼から感じる熱もまたひどく熱かった。

 彼もまた昂っている。私を相手にしてこんなに()()()()()()

 その事実に思いを巡らせると胸の奥が桃色の火で燃え上がるような心地だった。

 

 気づけば私はこくん、と小さく(おとがい)を揺らすように頷いていた。

 何かの問いかけがあったわけではない。ただの自分の意志表示だった。

 彼に()()ほしい、と自分自身を預けるという意思表示だった。

 

 熱を帯びた瞳のまま、ヨアヒムはすっと目を細めて――――上体を起こした。

 ベッドの上に横たわったまま、置き去りにされたような気がして私は一瞬呆けたような顔をしてしまった。

 離れていった彼の体温が寂しい。

 

 しかし、そんな悠長なことが頭に過ぎったのは僅かな間だけだった。

 真剣な表情を浮かべたままのヨアヒムがすっと両手を伸ばして、ゆるゆるにはだけている私のネグリジェに手を掛けたからだ。

 何を求められているのかを察して、私は少しシーツから体を浮かした。

 その瞬間にするり、とワンピース状の寝巻が体から引き抜かれ、私は生まれたままの姿を晒すことになった。

 

 ……いや、正確にはそうではないだろう。

 まだ私には衣服を着ている場所が残っている。

 そこに彼の視線が注がれているのが解って、たまらなく恥ずかしい。

 顔が急速に熱を持っていくのがわかって、咄嗟に手でそこを守ろうとしてしまう。

 

 だが私よりも先にヨアヒムがそこに――――私の下着(ショーツ)に手を掛ける方が早かった。

 

 手を掛けたままヨアヒムが真剣な眼で私を見つめてくる。

 その目が無言のまま訴えかけているようだ。大丈夫だ、と。

 いや、一体何が大丈夫なのかは私自身よくわからないが、それでも彼の眼を見ていると少し心が落ち着いた。

 

 意を決して、ついさっきもそうしたように腰を軽く浮かす。

 その瞬間を見計らってヨアヒムが私の下着(ショーツ)をずり下げていく。

 

「…………っ」

 

 肌着が腸骨から離れて、するすると微かな衣擦れの音を立てながら太腿を過ぎていく。

 他人に下着を脱がされるという行為。ついさっきまで肌をぴったりと守っていた衣服が無くなるという心細さ。

 ……そして、何よりもショーツが股から引き剥がされる瞬間に、微かに粘った音がしたことの恥ずかしさ。

 

「……濡れているな」

 

 ぼそっ、とヨアヒムが呟いたその一言がどうしようもなく耳に刺さった。

 恥ずかしいというかいたたまれないというか、何というか……粗相をしたのを咎められたようなそんな根源的な申し訳なさと羞恥を覚える。

 恥ずかしくて、恥ずかしくて、思わず顔を彼から背けてしまう。

 

 ……自分も元男だ。

 女の子が自分の愛撫で感じて濡らしていることに、男性は感動すら覚えるものだと知っている。

 可愛い女の子がいやらしくて悪いことなど何もない。むしろ良い。

 だが――――こうして女の立場になって初めてわかることだが、自分がそうやって濡れていることを指摘されるのは、ものすごく恥ずかしいことだった。

 

「リオ、大丈夫だ。……お前を濡れさせたのはオレだ。お前は何も悪くないし、恥ずかしくない」

 

 そう言いながら、ヨアヒムの手が私の両腿を撫で擦る。

 大きくて暖かくて、少しざらついた、好きな人の掌。

 それに触れられながら彼の声に耳を傾けていると、僅かながら心が安らいでいく。

 しかし、それでも次から次へと湧きあがってくる()()()()羞恥心はどうしようもなかった。

 特に彼の両手が膝頭まで達し、その間にそっと割り込んできたときに私の恥ずかしさは頂点に達した。

 

「うぅ…………っ!!」

 

 私だって意地とか、プライドとかそういうのはある。

 だから受け入れると決めた以上は受け入れる所存だが、それ以上に羞恥心はどうしようもなかった。

 なので私のせめてもの妥協点は、少しでも恥ずかしさを紛らわすために顔を隠すことだけだった。

 咄嗟に頭の後ろに敷いていた枕を引っ張り出して、両手でそれを抱きしめて思いっきりそこに顔面を埋めた。

 私のその仕草に呆れたのか、あるいは余程面白かったのかヨアヒムはくすり、と小さな笑いを零した。

 

「あぁ、恥ずかしいならそれでいい」

 

 そう言いながら私の脚を撫でる彼の手つきは完全に子供の頭を撫でるときのようなそれだった。

 恥ずかしがらせているのは誰だよ、と悪態の一つでも吐いてやりたい気分だったが、そうもいっていられなくなった。

 彼の両手が、ゆっくりと私の両膝を左右に割り始めたからだ。

 

「…………っ……!」

 

 湧きあがってくる恥ずかしさに対し、枕を鯖折りするような気で抱きしめて耐える。

 仰向けになった状態で他人に無防備にも股の間を晒す。考えてみれば赤ん坊がおしめを変えられるときのような姿勢だ。

 道理で恥ずかしいわけだ……。

 

 でも、それでもゆっくりと開かれていく脚は閉じない。

 大きな石臼を無理矢理動かすような緩慢さで立てた膝を広げて、踵をシーツの上で左右にずらしていく。

 

「もういいぞ、リオ……。……あぁ、綺麗だ。朝露に濡れた小さな薔薇の蕾のようだ……」

「……そんなのはっ、いわなくてもいいですから……っ!!」

 

 やがて私の脚に添えられていたヨアヒムの手の力が抜けて、()()()()というのがわかる。

 労わるように彼の掌がやんわりと内腿を撫でてきて、漣のような痺れが体に走る。

 だが、そうしながら『品評』をするのは勘弁してほしかった。

 

 朝露に濡れた小さな薔薇の蕾、だのと形容しても何処の事を言っているのかバレバレだ。

 顔は隠していても、彼の視線が何処に注がれているのかははっきりとわかってしまう。

 さながら集光レンズでも当てられているような感覚。視線の熱で焙られる()()が思わずひくん、と身を縮こませた。

 

 ――――そして、同時に()()から吹きこぼれる熱い雫も感じてしまう。

 

 濡れているのがわかる。

 自分の両方の脚の間、股の中心。女の秘所が内側から漏れ出した蜜で濡れているのがわかる。

 いや、漏れ出ているというよりは、溢れ出ていると言うべきか。

 椅子の上で抱き合って口づけを交わしていたころから感じていた体の奥からの疼きが、今やこうして内側から溢れだして私をしとどに濡らしている。

 

「は、ぁ……っ」

 

 そして、そこを見られている。

 ヨアヒムの視線が真っ直ぐに注がれているのがわかる。

 足を閉じて隠すことはできない。彼の体は既に私の両足の間に割り込んでいるからだ。

 本来なら他人の眼が触れるようなことのない、私の秘めやかな場所をこうして彼に暴かれてまじまじと観察されている。

 

 そう思うと、思わず体に力が入った。

 腕が枕を一段と強く抱きしめて――――とぷり、と蜜が奥から吹きこぼれる。

 

「……っ、く……♡」

 

 見られてる。見られている。

 体の中で一番恥ずかしい所を、しかもそれがはしたなく内側から汁を零すところを彼に見られている。そう意識すると頭の中が熱くなって爆発しそうだ。

 なのに、そう思えば思うほどに体の芯の部分のジンジンとした熱さは昂るばかりだった。

 噛み締めた歯の奥から漏れ出る自分の吐息は何処か鼻にかかった甘い声だ。

 

 その間、ヨアヒムは私の下半身をゆっくりと撫でさすっていた。

 美術品の検分でもするように両の掌が、太腿から鼠径部へと、腸骨へと下腹へと滑らかに踊る。

 他人の手どころか目も触れないはずの場所を、好きな人の手がじっくりと、肌を味わられるような丹念さで撫でていくのは、恥ずかしさと心地よさの二律背反で頭がおかしくなりそうだった。

 

 そして――――その上で彼の手は()()まで中々届かない。

 ヨアヒムの視線が今も突き刺さっているそこ。私の秘所に届くか届かないかという所で彼の手はまた引き返していく。

 下腹の辺りを彼の掌に撫でられると、その奥の方で()()が甘ったるく蠕動するような気がする。

 腰の奥が粘るような、熱くなるような感覚と共に疼きが溜まっていく。

 

 それが何とももどかしくて、無意識のうちに私は腰をもじもじと揺り動かしていた。

 腰の下でシーツが擦れる衣擦れの音。それに混じって小さな「ぬち……っ」という淫らな音がした。

 それが自分の()が捩れて粘液が立てた音だと分かって、私は一層頭を熱くした。

 

「触るぞ」

 

 囁くような、それでいて躊躇いのない声が耳に届く。

 想像するしかないことではあるが、いちいちこうして言ってくるのはヨアヒムが緊張しているというわけでは無いのだろう。

 むしろ緊張しているだろう自分の方を慮ってのはずだ。

 だから愛撫にも時間をかけるし、敏感な場所にいきなり触れてきたりもしない。

 ただ……やられている側から見れば焦らし責めされているような気になってたまったものではないが。

 

「ひゃぅ……っ♡」

 

 最初の一撫ではやはり繊細なものだった。

 陰唇の表面、中央を縦になぞるようにすぅっと撫で上げられる。

 そこから溢れた滴を掬い取るようなほんのわずかな接触。

 ただ、触れられた私はそこから駆けあがってくる快感に()()()()()と背筋を震わせた。

 

 そして何度も同じようにそこに触れられる。

 決して強い刺激を与えて怖がらせないように、という判断なのだろう。本当に表面に触れるくらいの極めて繊細な力加減で、彼の指先が私の陰唇を撫でていく。

 その度に()から溢れた私の愛液が彼の指先に絡め捕られていく感触がした。その度に小さな、ぴちゃ、ぴちゃという水音がするのに酷く羞恥を煽られる。

 

 その刺激に私が慣れて来たな、と思ったタイミングで彼の指に少し力が込められた。

 表面を撫でるような、というよりは陰唇全体を揉むように指の腹が当てられる。

 凝った筋肉を指先であん摩するように、秘所の肉に添えられた指に力が籠められ、全体をゆっくりと揉み解されていく。

 体の芯まで届く、じっくりと染み渡るような心地よさが股座から広がっていく。

 にちゅ、にちゅ、といやらしく響く粘着音に羞恥心を刺戟されていなければ、もっとリラックスした心地でその気持ちよさに耽溺していただろう。

 

「んんー……っ♡ んっ、ふぅっ…………♡」

 

 枕に顔を埋めながら、くぐもった甘い息を吐く。

 ……今更ながら、枕を抱きしめて顔を隠すのは悪手だったかもしれない。

 何せこれ、ヨアヒムが普段使いしている枕だ。そのせいで彼の匂いが色濃く沁みついている。

 愛撫の快感で息が荒くなればなるほど息を吸っては吐き、を何度も繰り返すことになり、その分だけ私は枕に残ったヨアヒムの香りを何度も肺の奥まで吸い込むことになっていた。

 

 なんだか少し酸っぱくて、汗臭いような気もするヨアヒムの匂い。

 彼に抱き着いて首筋に鼻先を埋めたときよりも尚濃い、濃厚な香りを何度も吸って私は頭がだんだんとふやけていくような心地に陥っていた。

 そして抵抗力が失われていく私の頭には、愛撫で与えられる快感はダイレクトに効いた。

 指がそっと押し込まれるたびに脳味噌が撹拌されているような気さえする。枕で真っ暗な視界の中、愛液と指先の立てる粘着音がいやに大きく聞こえる。

 

「ぁっ、くぅ……んっ♡♡」

 

 思考がふわふわと溶け始めていた頃合いを見計らったかのように、突如鋭い感覚が体を貫いた。

 自分柔らかく解れていくようなそれではなく、びぃん、と芯にまで響く強い快感。

 今まで触れられていた陰唇の少し上、熱い感覚が集中しているそれ。

 かつて慣れ親しんでいた今は無き男性器と似たような感覚を齎す、淫核への刺激だった。

 

 陰唇周りはもう解れたと見たのだろう、ヨアヒムは特に神経が集中して敏感極まりないそこへと矛先を伸ばした。

 陰核は男性の陰茎と神経の配置が同じだが、ずっとサイズが小さい分とても繊細である。

 それを理解しているのだろう。(私から見えているわけではないので想像でしかないが)ヨアヒムの手つきは米粒に字でも書いているのだろうかというくらいに非常に精密に注意深かった。

 

 だが、それは与えられる刺戟が緩いというわけでは決してない。

 むしろその注意深さは私に痛さを与えない程度の刺激の限界を見極めることに向けられている。

 故に淫芽を弄られる私は許容量いっぱいいっぱいまで快感を打ち込まれる羽目になった。

 

「は、ぁっ、ぁっ♡ んんっ、んぅっ♡♡ っく……うぅん…………!!」

 

 そっと上から全体を、指で覆いかぶさられるようにして圧迫される。

 包皮ごと全体に指を添えられて、そのまま上下に細かく扱かれる。

 そそり立った陰核の側面を傷つけないように繊細に掻かれ、あるいは懲らしめるように指先で弾かれる。

 かと思えばゆったりと周囲の皮膚を労わるように揉まれ、表面を優しく撫でられる。

 そして周囲の皮膚をキュッと引っ張られるとそれに合わせて包皮が捲れ上がる。外気に晒されて縮こまるそこに、ふぅっ、と息を吹きかけられた。

 

 その度に私は枕に噛みついて息を漏らしながら悶えた。

 一つ一つの刺激が体を芯まで揺らし、ジンジンとした熱を植え付ける。

 自分でするの他人にされる手淫は驚くほどに勝手が違う。

 自分で考えながらするのとは違い、他人にはどこに触られるのかわからないからこそ、刺激の一つ一つが予期せぬ角度から私を打ちのめすのだ。

 

 そしてなおかつ、ヨアヒムの手腕が巧みなのもあった。

 彼の指は私以上に私の体を知っているかのように、的確に痛みと快感の境界をなぞっている。

 

「ふぅぅ……っ♡♡ んっ、んっ、んっ……んぁっぁぁ……っ♡♡」

 

 男だった頃は陰茎に与えらえた快感で、尿道口から先走りの汁が漏れ出した。

 それと同じように、私の体は陰核に当てられた刺戟の分だけ、陰唇の奥から愛液を吹き零している。

 いつの間にかヨアヒムの指はそこにも伸びて、淫蜜の絡む陰唇を指先でなぞりあげていた。

 陰唇の内側の肉に、彼の指先が届く感触がする。とぷとぷ、と今も淫らな汁が溢れ出る小さな穴に男の指がそっと立てられたのだ。

 

 ほんの入り口の部分に入ってきただけ。

 だが、そのほんの少しが凄まじい存在感だった。

 じりじりと熱い私の()が一層熱くなってそこを締め付ける。

 きゅう、と食いしばるようにして肉が彼の指に絡む感覚がする。

 彼の指は固くて大きくて、少しごつごつとしていて逞しくて――――私はその感触に不覚にもうっとりと感じ入ってしまった。

 

 だがその締め付けに抗うように力強く彼の指が動く。

 ぞりりっ、と私の中と彼の指が擦れ合って目の裏に火花が散るような感覚が走る。

 敏感なところを引っ掻かれるような、痛み交じりの快感だ。

 彼の指が細かく内と外を前後して、くちゅくちゅといやらしい音と共に愛液を撹拌する。

 

「――――――…………っ♡♡」

 

 彼の指の腹が、膣口のお腹側を上へとぐぐっと持ち上げるようにして圧迫する。

 陰核の付け根を押し上げてくるようなその刺激は、じぃぃん、と長く熱く私の体を駆け巡った。

 痒い場所の肉を思いっきり広げられるような、そんな疼痛交じりの痺れるような快感。

 気づけば私の腰が指につられるように浮いていた。お腹の奥がぎゅうぅっ、と締め付けられて奥から淫らな汁が絞り出されるのがわかる。

 

 やがて指を引き抜かれると共に、私の腰も落ちた。

 いつの間にか息を止めていたのだろう。はぁはぁ、と荒い息を吐いて私は呼吸を整えた。

 長く尾を引く快感をじんわりと温かいものに広げるように、ヨアヒムの手がそっと優しく私の脚や腰回りを撫で擦る。

 その大きな手の優しい感触が私の体に染み渡る。まるで暑い日に飲むよく冷えた水のように。

 

「もう、準備はできているな……」

 

 ぼうっとした心地で快感の余韻に身を委ねている私にそんな彼の呟きが届いた。

 潤む視界で、枕の陰から彼の方へと視線を向ける。

 

 ――――ヨアヒムが自身の服を脱ぎ捨てるのが見えた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。