ベッドの上、膝立ちで向かい合ったままキスに没頭する。
私よりもヨアヒムの方が一回り、あるいは二回り弱くらいは背が高いので図らずも覆いかぶさられているようになってしまう。
彼の大きな体が作る影の下、彼の男性的な体温と香りが私を包んでいる。
「んん……っ♡」
唇を重ねるだけの淡い口づけではもう物足りなかった。
口と口を舌と舌を、噛み合わせて絡み合わせるようなキスをする。
お互いの唾液が混ざり合うくちゅくちゅ、といやらしい音が薄暗がりのベッドの上に響いている。
鼻先だけで荒い息を吐いて、酸欠で頭がぼうっとする。物がうまく考えられなくなって、今ある感覚だけに溺れていく
彼の長い舌が口蓋から前歯の裏までを舐め上げてきて、
お返しにねじ込まれた舌をちゅっ、と軽く吸ってあげると、悦ぶように私の口の中で踊り回った。
身長差のせいで上から下へと、ヨアヒムから私へと唾が流れ落ちてきて、私はそれを喜んで飲み下す。
こくこくと喉を鳴らして嚥下するとお腹の奥が熱くなる感覚がする。
ヨアヒムの一部が私に流し込まれて、私の一部になる。そんな倒錯的で陶酔してしまうような考えが私の頭を揺らした。
もう既に私達の体は、二人とも異様な熱に満ち満ちていた。こうして裸で抱き合っていれば尚更わかる。
抱き着くように彼の体に腕を回して縋りつけば、艶めかしく汗ばんだ肌とその下を巡る血の逸りまでも伝わってくる。
彼の逞しい胸板の奥、心臓から全身へと赤い血が巡る様が見えるようだ。
そして、その血の熱量が下腹部の更にその下へと満ちていく様も。
「ふっ、ふぅっ……♡」
どちらからともなく口を離し、荒い息を吐く。
お互いの口の端から零れた唾液が勿体なく感じて、舌先で互いの顔を舐め合って見つめ合う。
熱を帯びたヨアヒムの瞳の中に、私が映り込んでいる。白い肌を湯上りのように上気させて、空色の瞳を涙を零しそうなほどに潤ませている少女の姿。
完全に
「………………♡」
ヨアヒムの体は細身ではあるが引き締まった筋肉に包まれていて、こうして触れ合うと意外なほどに逞しいその感触に胸が高鳴ってしまう。
私の体を抱きしめ返してくる腕も長く大きく、その中に包み込まれる感覚に酷く安心感を覚える。
私も彼もお互いに無言だった。剥き出しの肌と肌で触れ合って、お互いの汗の香りを感じながら抱き合う。
だが、もう抱きしめ合うだけでは終わらない。
もうそこで踏みとどまる段階は過ぎ去っていた。
「リオ……」
「……♡」
ヨアヒムの囁き声が私の耳を擽る。
お互いの体と体を寄せ合うほどに感じるのは……私のお腹の上に押し付けられる彼の怒張の感触だった。
先程の手淫で大いに昂っていた彼の陰茎は、今まさに暴発寸前といった有様だった。
槍のように長く鋭い
見下ろせば鈴口から漏れ出る先走りの透明な汁が私のお腹の上でぬるぬると跡を残している。
ナメクジが這った後のようなぬらついた体液の痕も、ヨアヒムが私を相手に興奮している証拠だと思えばこの上なくいやらしいものに見えて仕方がなかった。
こうして直接押し付けられて感じる彼の昂りとその力強さを感じて、私のお腹の奥でも熱が燃え上がるようだった。
そしてそれは吹きこぼれる熱湯のようになって、私の体の奥から溢れだし、雫のようになって私の内腿を伝っていった。
もどかしさを誤魔化すように膝立ちの脚を擦り合わせると、水で溶いた糊を混ぜるときのような、静かな粘ついた音がした。
その音を聞いたのだろうか、私を抱きしめていたヨアヒムの手がそっと伸びる、
お尻の方から触れてくる彼の掌の感触のくすぐったさを感じたのも束の間、彼の指先が後ろから股座をなぞるのがわかった。
「すごく、濡れているな」
「…………っ♡」
確かめるような彼の言葉に対してこくん、と肯いた。
やわやわ、と私の股座の表面をなぞる彼の指先がとてもじれったい。
もっと奥、熱いものが流れ出ている私の体の奥の奥へ。もっと深い所に触れてほしい。
そんな思いを込めて、一層強く彼の体に抱き着いた。
つっかえ棒のようになっている彼の陰茎に、私の体をわざと押し当てるようにして。
「……一度横になってくれ」
ヨアヒムの手が私の肩を掴んで引きはがす。
もっとこのまま抱き合っていたいが、このままでは話が進まない。彼の眼はそんなことを言っていた。
確かにその通りだった。彼の言う通り、私は一度深呼吸してから広いベッドの上に仰向けになった。
柔らかい枕とシーツに身を預けて、ヨアヒムの方へと声をかけた。
「それじゃあ……その、よろしく、お願いします」
自分の心臓がドクンドクンと激しく音を立てているのを感じる。
今から、ヨアヒムと一つになる。その事を意識すると頭の奥が熱くなる。
緊張もある。ほんの少し怖いと感じる。正直なところ恥ずかしさもまだある。
でも――――それ以上に今の私は幸福だと、そう思うことができた。
鳴り止まない鼓動の激しさはそのまま、私の胸の高鳴りだ。
「リオ……」
ヨアヒムが私の前に膝をついて屈み、私の脚にそっと手を掛けた。
それに逆らうことなく私は自分の脚を開く。その時に立った粘りのある音や、両足の間に注がれるヨアヒムの視線が堪らなく恥ずかしい。
でも足を閉じるようなことだけはしなかった。恥ずかしさもあるがそれ以上に、もういい加減に
――――彼が、欲しい。
――――ヨアヒムが、欲しい。
私の頭の中はそんな情欲に満たされ、そのままに体を突き動かしていた。
大きく股を開いた男を受け入れるための姿勢。そんな体勢を取っていることを考える羞恥心と紙一重になった興奮が私の中で逸り、耐えがたい熱を生んだ。
ふぅふぅ、と飢えた動物のように荒い息がベッドの上に響いている。それは私とヨアヒムの、二人の呼吸だった。
私はヨアヒムの屹立した陰茎を凝視して、ヨアヒムは私の開かれた陰唇を見下ろしていた。
彼のペニスはまさしく鋭い仰角を描いて屹立している。
ガチガチに勃起して天を衝くように勃ち上がっているそれにヨアヒムが上から手を添え、力を込めて下方向へとその矛先を向けさせた。
そして……そのまま前方へと繰り出せば、亀頭が私の陰唇と緩やかに触れ合った。
「あっ……♡」
互いの粘膜、生殖器のほんの先端部。照準を合わせるための僅かな接触。
にゅるり、と愛液と先走りが触れ合うほどに互いの秘部が擦れ合っただけだというのに、思わず声が出てしまった。
求めているモノの形を直接当てられた粘膜が切なく震え、またはしたなく奥の方から愛液を涎のように垂らした。
ひくひく、と陰唇が蠢いているのが自分でもわかる。そしてそこにヨアヒムの視線が注がれているのも。
「リオ、手を出してみてくれ」
「手……こうですか?」
「あぁ、それでいい」
ヨアヒムに言われて自分の片手を差し出した。手の指と指を絡ませ合うように握り合って、見つめ合う。
しっかりと結ばれた手と手の感触が頼もしくて安心感を与えてくれる。
大きな手で私の手を握り込みながら、ヨアヒムが静かに声をかけてくる。
「目を閉じて、ゆっくりと息を吐くんだ……なるべく、体から力を抜くことだけを考えてくれ……」
「……はい」
彼の言う通り、目を閉じて深呼吸をする。
ゆっくりと息を吸って吐いてを繰り返して……あぁ、駄目だ。ヨアヒムの香りとベッドに散らされた花の香りがすごい。頭がふやけそう。
目を閉じたせいでその他の感覚が急に鋭くなっていく。私の脚の間に立っているヨアヒムの体温や、突きつけられている性器の熱感までもが明瞭に伝わってくる。
それでも、彼に言われた通りなるべくリラックスするように心がける。
私の手を確りと握り締めているヨアヒムの手の大きさと力強さになるべく意識を集中する。
「……そうだ。ゆっくり静かに息を吐いて……」
「んん……っ、ん、く……」
私の呼吸と鼓動が落ち着いてきたタイミングで、ヨアヒムの体が静かに動くのを感じる。
照準を合わせるように、彼の亀頭が何度か私の陰唇の表面に当たる。ぬちゅ、ぬちゅ、と熱い昂りが股の間をする感触に声が漏れてしまう。
やがて――――しかるべき場所を見つけたように、亀頭が一点に押し付けられた。
私の陰唇の真ん中に焼けるほどに熱くて、鉄のように硬くて長大なものが触れているのがわかる。
目を閉じていても脳裏に焼き付いているその姿と、触れている感触からわかる大きさに今更ながらこれが自分の中に入るのかと心配になる。
でも、もう引き返すようなことを考えるだけの余地はなかった。
こうして亀頭を押し当てられている陰唇が、それを歓迎するように収縮と弛緩を繰り返しているのが自分でもわかる。
体が勝手に蠢き、きゅうきゅう、とヨアヒムの熱いものを咥え込もうとしているのだ。
私はもう私自身の体の欲望に逆らわず、言った。
「……来てください」
「あぁ、行くとも」
言葉を交わし合った瞬間、繋いだ手をしっかりと握る。
そして――――体の真ん中を刺し貫かれた。
「ふっ………!?あっ、あ゛―――――――――…………っっっ!!??」
まず亀頭の先端、その一点にヨアヒムが体重をかけたのがわかった。
そうしてそれを嚆矢にして狭い穴を掘削するように、あるいは杭を沈めていくように、ヨアヒムの腰がゆっくりと進む。
ちょうど、硬めのモルタルの壁に押しピンを刺すようなイメージかもしれない。先端を確りと当てて、力を込めて全体を壁の中に埋め込んでいくような。
しかしながら、実際にそれを撃ちこまれる側はたまったものではなかった。
大きい。太い。長い。熱い。そんな形容しか出てこないものが股の間に突き刺さって、肉を掻き分けながら体の奥へと突き進んでいく。
その圧倒的な存在感。肉を割開かれて掘り進まれるという未体験の感覚を頭が処理しきれない。
体の中がいっぱいいっぱいだ。詰め込まれた何かを反射的に吐き出したくなって、私は阿呆みたいに叫ぶことしかできなくなった。
「ゆっくりだ。ゆっくりと息を吐け……」
「あ゛っ、あっ、あっ……あっ、は、ぁぁ……っ!!」
混乱している頭にヨアヒムの声だけがしっかりと響く。
彼に言われるがまま、つっかえそうになる呼吸を何とか押しとどめて、ゆっくりと、あくまでゆっくりと吐いていく。
息を吐くごとに体から余計な力が抜けていくのがわかる。
だが、力が抜けるとその分だけ体を内側から押し広げている圧迫感が明瞭に感じられるようになる。
その感覚が怖くなってまた少し体に力が入って強張ってしまうのがわかる。
「大丈夫だ、リオ。ゆっくりとだ。焦らず、ゆっくりと呼吸を落ち着けるんだ」
「ふぅっ、はぁっ、はっ、はっ……、あぁ…………っ」
そんな私にヨアヒムが手を伸ばした。
彼の手が私の頭を、髪を、頬を優しく撫でる感触がする。
その大きな掌が与えてくれる安心感は私を落ち着けるのに十分な効果があった。
荒い息を吐きながら、伸ばされた手に自分の手を添えて、私からも彼の手に頬を摺り寄せた。
私の熱くなっている頭と彼の掌の熱さが溶け合っていくような心地よさ。
ずっと握り合っている手も握り返して、今度こそ自分の呼吸を鎮めていく。
「……大丈夫か?」
「は、ぁ…………、なん、とか……大丈夫です」
目を閉じたまま、彼の言葉に返事を返す。
息も絶え絶えという感じだが、何とか意識は普通に戻ってきた。
息を吸っては吐いての合間、体が弛緩した瞬間に内側から襲ってくる圧迫感に身が震える。
まるで熱すぎる風呂の温度を確かめながら足先から使っていくように、おっかなびっくりという感じでその強烈な感覚と自分自身との磨り合わせに腐心する。
恐る恐るという感じで力を抜いていき、たっぷりと時間をかけてようやく圧迫感に身を慣らすことができた。
「はぁ、はぁ……っ、すごい、ですね……お腹の中、奥まで……いっぱいいっぱいで……」
「奥まで?いやいや、まだ早いぞ」
「え?」
「まだ、半分も入っていない」
「……え?」
ようやく体が慣れてきたところでうっすらと目を開いてヨアヒムと見つめ合う。
だが、そこで言われた言葉に思わず私は目を白黒させた。
恐る恐る目線を下へと――――交わっている私達の体がある場所へと目を向けると彼の言う通り、彼の勃起した陰茎はその大部分がまだ外側に見えていた。
彼の赤黒い怒張が私の薄い桃色がかった陰唇を目一杯押し広げて食い込んでいる様を見て、いやらしいと思う気持ちも無くはなかったが、同時にそれはどことなく現実感の薄い光景とも見えていた。
何せ今の私は私達が交わっている様に興奮するよりも先に、凄まじい驚愕に襲われていたからである。
――――え?マジ?本当に?
――――こんなにいっぱいいっぱいになってるのにまだ入れるの?
――――っていうかそもそも入るの?
そんな疑問符が私の頭の中を乱舞している間にも、状況は待ってくれなかった。
ヨアヒムが伸ばしていた手の片方を、私の腰に添えたからである。
彼の逞しい掌が優しく、それでいて確りと私の下半身を捕まえる。
「……それじゃあ、これから奥まで入れていくからな……。舌は噛むなよ」
「えっ、ちょ、待っ……あ゛、っふぁぁぁっっ!!?」
突如として、私を満たしていたあの圧迫感が急に薄れた。
押し込まれていたつっかえ棒を取られて、バランスを崩してしまうような混乱に襲われる。
ヨアヒムが腰を引いたのだと理解したのも束の間、今度は逆に杭打ちのように腰が打ち込まれてきた。
一気に体を割開かれる凄まじい拡張感が襲ってきて、私は眼を剥いて悶えた。
今までの人生で感じたことがない未知の感覚に満たされた頭がぐわんぐわんと震える。
「はっ゛、あ゛っ……!!はぁ、ぁ、ぁ゛っ、ぁぁ゛……!?」
「リオの、中はっ、狭いからな……っ。こうして、少しずつ広げていかないと……っ」
のたうち回りそうになる体はヨアヒムによって手と腰を掴まれているので逃げられない。
その状態で何度もヨアヒムの陰茎が引いては押し込んでを繰り返して、私の体の中を文字通り掘削していく。
引き抜かれるときはまるで体の中に大きな空洞ができてしまうような空虚感が襲い掛かる。
逆に押し込まれるときは体の真ん中に杭を打ち込まれて串刺しにされて、肉を割開かれる凄まじい拡張感に飲み込まれる。
引いて、押して、引いて、押す。
その度に擦れ合う粘膜の感触は、痛いようで、重たいようで、くすぐったいようで、それでいてそのどれでもない未知の感覚だった。
与えられる全ての感覚があまりにも未知過ぎて、私はひたすら肺から息を絞り出して悶えることしかできなかった。
「…………っ!!……………――――――っっ!!!!」
「流石に……きついなっ。でも、もうすぐ……っ」
「ふっ、んぐ…………っ!?」
細かく抜き差しを繰り返して、私の中を掘り返すヨアヒム。
その先端に突如として何処かの奥を叩かれる感触がした。
どすん、と自分の体全体を下から突き上げられるような衝撃が走る。
下から上へと内臓が飛び上がったような気がして、思わず変な声が喉の奥から絞り出される。
「かっ……あっ゛、は、っ゛、ぁっ、あっ…………!!?」
「これで、全部……っ」
そう言いながらヨアヒムがもう少し体重を載せてくる。最後の一押し、念のためと言うように。
彼がの言う通り、ヨアヒムの陰茎の先端はどうやら私の中の終点に行きついたようだった。
押し込まれても肉が割開かれるような感触はもうない。代わりにあるのはぎちぎちと体の中の肉全体が引き延ばされ、内臓が圧迫されるような感覚だけだ。
「はぁ゛っ、あっ……っ!あぁ…………――――っ」
ただその感覚は言葉にすれば簡単ではあったが、それに襲われている本人である私にとってはどうしようもなく凶悪な代物だった。
他人の体の一部が、体に突き刺さって肉を掻き分けて内臓に押し当てられているのだからさもありなんという話だが……。
先ほど、少し入っていた時の圧迫感と拡張感を何倍にも増幅したような強烈な感覚だ。
内臓を下から押し上げられている感じがして息が詰まる。私自身が内側からはちきれてしまいそうな気がして頭がくらくらする。
意識が纏まらない。
「リオ……」
ヨアヒムの声が聞こえる。
彼は多くを言うことはなく、ただ私の名前を何度も囁くように語りかけた。
そして先ほどもそうしてくれたようにゆっくりと私の肌を掌で撫でる。
まるで子守唄を謳うように、あるいは小さな赤子を寝かしつけるように……。って私は子供かっ。
「はぁ、はぁっ、…………っ!ふっ、うぅ……っ」
何はともあれ、ゆっくりと息を落ち着ける。息を吸って、吐く、という当たり前の動作にものすごく神経を使う。
迂闊に吐くと気が緩みすぎて内側から弾け飛んでしまいそうな気になるし、息を吸おうとすると内臓が下から押し上げられているような気がしてうまく吸えない。
私を落ち着かせようとするヨアヒムの声と掌の感触に心を傾けて、少しずつ、慎重慎重に、力と気の抜きどころを探っていく。
気分はエンジントラブルで急な着陸場所を探すヘリの操縦士だ。焦って地に足を付けようとすると待っているのは派手な爆散である。
「………………っ、――――……っ」
それからどれほどの時間が経ったのだろうか。
詰め込まれた圧迫感と拡張感は次第に薄れ、体の中で広がるジンジンとした痛みとも疼きともいえない何ともむず痒い感覚に変わっていた。
目の裏が真っ白になるような混乱も今は落ち着き、脈を打つ自分の心臓の鼓動の感触に耳を傾けられるようになっていた。
どくんどくん、と鼓膜の裏で脈が音を立てて、そのリズムに合わせて息をする。
はぁぁ……、とまるで溜息を吐くように息を漏らす。
強張っていた体の力を抜きながら、いつの間にか硬く瞑っていた眼を開く。
「……もう平気か?」
「たぶん……だいじょうぶ、です」
目を開いた先にあったのは私の真上に覆いかぶさっているヨアヒムの顔だった。
真剣な表情で私を覗き込んで心配してくれている彼を見ていると心が温かくなる。
目を開けて次の瞬間、好きな人の顔が目の前にあるというのは何だかとても嬉しいことなのだな、と胡乱な頭でそんなことを思う。
目の前にあるモノに触れたくて、衝動的に手を伸ばす。
知らないうちにシーツが皺になるほど握り締めていた指先は少し強張って、震えていた。
指先は動かすための配線がずれたように頼りなげにブレていたが、大した問題ではなかった。
ただ、愛おしかった。目の前にいる愛おしい人の存在を確かめたくて、私は彼の顔の輪郭を自分の指先でゆっくりとなぞった。
「痛くはないか?」
「いたくは、ないです……。ただ、自分のなかが、いっぱいで……」
「そうか……よく頑張った」
私がそう言うとヨアヒムがふっ、と口元を綻ばせるような笑みを浮かべた。
釣られて私も口元の力が抜ける。多分、私も彼と同じような笑いを浮かべているのだろう。……幾分か気の抜けた締まりのない表情かもしれないが。
そして、ヨアヒムは私の伸ばした手を優しく掴んだ。雪細工を拾い上げるようにそっと。
綻ぶような笑みを浮かべた彼の唇が私の手と指に押し当てられ、幾度か小鳥が囀るような小さな音を立てた。
その感触がくすぐったくて、私は目を細めた。
「……リオ、その
「……?え、えぇと、それって……」
「まだ、少し不格好だが……ほら見ろ、リオの奥まで
「あっ……」
彼の言葉を頭の中で反芻しながら、ゆっくりと視線を下に向ける。
まだ根元の部分が幾らか外にはみ出てはいるが、ヨアヒムの股間から伸びる陰茎が私の股座に突き刺さっているのがよく見えた。
どことなくガラス一枚隔てたような非現実感のある光景だが、今も私の中から感じるジンジンとした感覚と結びついて――――ようやく実感が湧いてくる。
「私のなかに……ヨアヒムがいる……」
「あぁ、そうだ……。オレ達は一つに結ばれたんだ」
「…………ぁ……♡」
ヨアヒムと一つになった。
その言葉を頭の中で転がす。
その意味を心の中で咀嚼する。
それは――――それは何て
触れ合って、抱きしめて、撫で合って、キスして、それでもどこかで欠けていた最後の最後のピースが一つ、埋め合わされたような根源的な満足感。
大好きな人と愛する人と、体を重ねるということ一つになるということ。
身も心も結び付けて――――深く深く、繋がり合うという一体感。
この強烈な圧迫感と拡張感、そこから生まれたこの痛みとも疼きとも痒みともつかないこの奇怪な感触も、ヨアヒムが私の体の中に入ってきた証だと思うと堪らなく愛おしかった。
息が詰まって絶えるような、頭が真っ白になるような感覚もヨアヒムを私が受け入れるために必要な苦しみだったというのなら、それすらも誇らしく思えた。
「――――ヨアヒム。……私、私……っ」
嬉しい、誇らしい、愛おしい、幸せ。
そんな感情が胸の奥から堰を切ったように溢れ出して止まない。
胸の中が暖かくて暖かくて、優しくて甘くて切なくて気が狂いそう。
抑えきらないものが目の奥に熱を持って目の端から零れてしまう。
潤んだ視界の先には優しくこちらを見下ろしている大好きな人の顔があって、発作的に伸ばしたままの私の手をぎゅっと優しく握ってくれていた。
「ヨアヒム、すき……っ、だいすき……っ。もっとぎゅってして、キスして……っ」
想いが溢れすぎて自分でも何を言っているのかよくわからない。呂律がよくまわらない。
ただわかっているのはヨアヒムの事が好きで好きでたまらなくて、愛おしくてどうしようもないということだけ。
自分自身の中も外も、上も下も、表も裏も、全部を全部、あなたで埋め尽くして欲しい、私に受け入れさせて欲しい、私を求めて欲しい、あなたが欲しい。愛おしい。
ヨアヒムが目を細めて笑う。その顔がたまらなく綺麗でまた私は彼のことを好きになる。
その彼の顔が体ごと私の上にかぶさってきて、優しく力強く、私が言ったようにぎゅっと抱きしめてくれる。
「ふぎゅ……っ♡」
そのときに私の中に入っている彼が、お胎の奥まで食い込んできて変な声が出てしまう。
でも、その内臓が押しつぶされるような感触でさえヨアヒムが私の中にいる証拠だと思うと嫌な気分にはならなかった。
私は眼の端からぽろぽろと涙を零しながら、私を抱きしめるヨアヒムをこちらからも抱きしめた。