ヨアヒムの体をこちらからも抱きしめ返す。
私の腕が細くて華奢なこともあるのだろうけれど、こうして触れる彼の体はとても大きくて縋りつくには頼もしいように感じた。
しっとりと汗で濡れた肌、温かくて熱い体温、逞しさを感じる筋肉と骨格の手触り。
もっと、彼に触れたい。
もっと、彼を感じたい。
そんな飢えや渇きにも似た欲求の赴くまま、私は回した腕で彼の体を抱き寄せた。
「ふ、ぅ、んぅっ……♡」
体と体を密着させ合う。肌と肌を触れ合わせ、擦り合わせ、もっと二人の境が無くなるまで。
覆いかぶさってくるヨアヒムの腕が私を割れ物でも扱うように優しく繊細に、それでいて力強く抱きしめてくる。彼の熱と温度に包み込まれる。
もう今晩だけでどれだけ触れ合ったのかわからない唇が疼いて疼いてたまらない。
お互いに言葉もなく、口と口を蕩かし合うようにぐちゃぐちゃなキスに没頭する。
私の
股の間に肉の塊が突き込まれて、体を割開いて内臓を押し潰される――その感触さえも愛おしい。
中にいる彼が先端を捻じ込んでくる度に、下から内臓全体が押し上げられるような気がして口から変な声が漏れそうになる。
ひたすら強烈な圧迫感しか感じなかったはずなのだが、時折お腹の奥を押し潰されるたびに
それが気持ちよさなのか、ただ単に物理的に愛液が絞り出されているだけなのかは判然としなかったが、どちらにせよ多幸感に酔っている私にはどちらでもよかった。
でも、私と彼の間には結構な体格差があるせいで交わいながらキスをするのには不自由があった。
背を丸めて屈みながらキスをするせいで、抱きしめ合おうとしても私と彼の胴体の間に隙間ができてしまうのがもどかしかった。
僅かでも離れているのが我慢できない。もっと触れ合いたい。そんなもどかしさが私の中で逸る。
「リオ……。少し、体勢変えるぞ」
「え……っ?ひゃ、ああぁっ!?」
突如、ヨアヒムがそんな風に私の耳元で囁いた。
それに対して返事を同行する間もなく、私は回されていた腕で抱き起された。
ヨアヒムが私を抱き起し、ゆっくりとベッドのシーツの上に自分の腰を下ろして座り込む。
繋がったまま私は彼の太腿の上に座り込むことになるが、その時思わず呻き声を上げてしまった。
重力に従って体重が、ヨアヒムに挿入されている私の胎の奥にかかってしまったからだ。
「……大丈夫か?」
「な……なんとか……」
「辛かったらいつでも言ってくれ」
「ん……」
私を労わるようにヨアヒムが背中をそっと撫でてくる。
暖かくて大きな掌が素肌を優しく撫でるその感触が心地良い。
私はほう、と静かに息を零しながら彼の首の後ろにしなだれかかるようにして腕を回した。
胸板に首筋に自分の体を擦り付ける。そこから薫るヨアヒムの香りが何とも艶めかしくて私は息を吸っては吐いてを繰り返した。頭が蕩けそうな快さだ。
私のそんな仕草に答えるようにヨアヒムの手が私の体を何度も撫で擦る。
背中を、髪を、首筋を、耳を、脇腹を、尻を、太腿を……彼の手が私の肌の上を往復するたびに肌が火照る。
まるでじっくりと日の光で晒されているような心地。じんわりと暖かいはずなのに、じりじりと焦がれるような熱さだ。
「んふぅ……っ、んうっ……♡」
そうやって互いに抱き合いながらやはり口先ではキスに没頭する。
唇と唇を触れさせるように啄みながら、少しずつ舌と舌を絡ませ合い、やがて口と口で貪り合って唾液と唾液を混ぜ合う淫らな口遊び。
ヨアヒムの舌が私の舌を絡め捕って扱きあげて、歯の間を舐めしゃぶって、顎の裏をさすりあげる。
その度に口の中から走る痺れのような快感がビリビリと脳を焼いていく感触がわかる。
口と口を触れさせ合うだけでこれほどに気持ち良いなんて、ヨアヒムと出会うまでは知らなかった。
多分、私はこの味を一生忘れられないだろう。
もっと彼と触れ合いたくなって彼を抱きしめる腕に力を籠める。
強く密着すると彼の胸板に私の胸が当たる感触がして気持ちがよかった。
体を摺り寄せるように密着させると、その拍子に胸の先の乳首が擦れてピリッとした快感の電流が走る。
乳首の気持ちよさは痒みにも似ている。刺激すればするほど疼きが募って、もっともっと弄りたくなってしまう。
ただ――――、
「はぁ、ぁ……っ、ヨア、ヒム……」
「リオ……?」
「なんていうか……うまく言えないんですけど、変な、感じです……」
私の調子が微妙におかしいことに気付いたのか、ヨアヒムが一度唇を離して私を見つめてくる。
遠のいた心地よい感触に名残惜しさを感じながらも、私は自分の感覚を正直に伝えた。
ヨアヒムに愛撫されて、キスをして、体を擦り付け合って、体が酷く火照る。その熱は波になって私の体の芯で寄り集まって沸々と沸き立っている。
その感覚はあるのに、肝心要の体の奥の部分――――ヨアヒムの陰茎が突き刺さっている私の陰部、そして子宮。そこでうまく気持ちよさが感じられないのだ。
熱感のように快感が溜まっているのに、きちんとそれに火が付かないような、不完全燃焼ともいうべき違和感が未だに拭えない。
昇っていった梯子の上の方の段だけ不自然に手が滑り、中々頂上に辿り着けない……そんな感じのもどかしさ。
「はあ、ぁっ……、んぐ……っ♡」
私を真下から貫いているヨアヒムの剛直に、慎重に座るように体重を預けてみる。内臓をぐぐっ、と押し上げられる圧迫感が凄まじい。
その状態で恐る恐る腰を捻ってみると、ごりごりという派手な音が体の中で響いたような気がした。その衝撃で目の裏がチカチカする。
今までのキスと愛撫とで私の中がしとどに濡れそぼって、性の快感を貪ろうと火がついているのがよくわかる。
だが、肝心の私の膣と子宮は思う存分性感を弾けさせるには未熟に過ぎるようだった。
多分、もう少しこなれれば気持ちよさを感じることができるのかもしれないのだろうが、今は少し動かしただけで刺激が強すぎる。
その刺激を上手く脳が処理できていないせいで『圧迫感』や『衝撃』としてしか認識できないのが問題だった。
「それなら……抜かなくて大丈夫か?」
「うん、大丈夫、です。抜いたらいやです……ヨアヒムが中にいるのがいい」
「そうか、わかった。……大丈夫だ。どんな女性でも初めてはそんなものだ。むしろ痛くなかった分だけリオは順応が早い」
「……そう、ですか?」
「あぁ、そうだ。大丈夫だ。リオは敏感だからな、すぐにきっとこっちでも気持ちよくなれる」
そう言ってヨアヒムに頭を撫でられると、ほっとする自分に気付く。
ひょっとすると内心で自分が気持ちよくなれてないことに不安があったのかもしれない。
でもまぁ、彼がそれでもいいと言ってくれるなら……それでもいいか、という気分になる。
別に性的に気持ちよくなれるのに限界があっても、こうやって体の内も外もヨアヒムに埋めて貰えて、もう十分に私は幸せで――――、
「ひゃ、あぁぅっ……!?」
「だから……まずはリオが気持ちよくなれるところから、初めていこうか」
そう思っていた矢先、びぃん、と強烈な快感が私に襲い掛かってきた。
突然のその衝撃で思わず頓狂な声を上げてしまう。
目の裏を白黒させながら目線を下に向けると、私のクリトリスにヨアヒムの指が伸びていた。
「ヨアヒム……っ!?」
「あぁ、やっぱりな……多分、ここが一番感度が良い。ほらこうすると……中もきゅっと締まる」
「ぅん……っ♡ ふぐっ、うぅぅ…………っ♡♡」
ヨアヒムの指が敏感な部分の先端をそっとなぞる。指先がくりくりとあやすように踊ると背筋を火花のような快感が走り抜ける感じがした。
場所と体勢もあってヨアヒムからはそこは見えていないはずなのに、彼は指に目でも付いているのかと思うくらい繊細で細やかに私の姫豆を弄り倒してくる。
ちりちりと焼けるような、ぱちぱちと弾けるような細かな気持ちよさが弾けて、私は体を小さく何度も震わせた。
「んっ……。可愛いぞ、リオ。そのまま力を抜いて、気持ちいい所だけに意識を集中させて……」
私の顔を正面から覗きこむヨアヒムの眼差しが熱い。
彼の手で気持ちよくなってしまっているところを、こうして正面からじっくりと、目を逸らす余地もなく見つめられるのは酷く恥ずかしかった。
でも……そうやって恥ずかしいのが、面映ゆくて、くすぐったくて、なんだかとても……体が疼くような心地だった。
自分の息が熱くなって、濡れるのがわかる。
陰核を弾かれるのに合わせて体の芯まで電流が刺さり、反射的に自分の
ただでさえ内側からいっぱいいっぱいに広げられている肉の筒が反射的に縮こまって、より一層中にいるヨアヒムの勃起の存在感が強くなる。
自分の頭では処理できないその感覚は頭の裏で炸裂する真っ白な稲光のようだった。
クリトリスをまさぐられるビリっとした快感と相まって、私は背筋を震わせて見悶えた。
ヨアヒムはそんな私の事を真っ直ぐに見つめながら、リラックスするように言葉を掛けたり、キスしたりしてくる。
自分の感覚に振り回されている私は藁を掴むような気分で彼の体に縋りついて抱き着いた。
抱き着いた拍子に胸の先で乳首が擦れて、また快感が弾けて悶える。
「はぁっ、んっ♡ あっ、ぁっ、ひゃぅ……っ♡ あ゛――――……っ♡♡」
ヨアヒムの指先が丹念に丹念に、丁寧に丁寧に、私のクリトリスを弄り倒す。
包皮を何度も引っ張っては戻しを繰り返したり、爪の先で軽く引っ掻いたり。
衝撃を奥まで響かせるように軽く叩いたり、あるいはやんわりと撫で擦ったり。
既に熱が籠りに籠っていた私の体はそうやって愛撫されるたびに急激な勢いでボルテージを上げていき――――当然のように、頂点に達して弾け飛んだ。
どこかに飛んでしまいそうな気がして、反射的に目の前のヨアヒムの体にしがみつく。
体中の筋肉に電流が流れたように全身がビクビク震え、目の裏で桃色の火花が散って目が眩んだ。
がくがくと震える私を、ヨアヒムは優しく抱きとめてくれていた。
片方の手は私の背中を抱いて、もう片方の手は私の淫核を押さえつけたままで。
「あ――――っ♡ あぁ゛――――……っ♡♡ は、ぁ゛………――――♡」
……クリトリスを使って自慰をしたことはあるし、そこで絶頂を迎えたこともある。
だから一度イくとそこから
だが、今味わっている絶頂とその余韻はかつて自分で体感したのとはまったく趣が違っていた。
「ヨアヒ、ム……っ♡♡ な、なんかへんっ、です……っ♡ おな、おなかとけるっ……!!」
「……ん、それでいい。
「は、んんっ……!? んふぅぅ…………っっ♡♡」
体が、蕩ける。
思わずそんなイメージが頭を過ぎる。
クリトリスを刺戟されての絶頂が全身を電流で焼くように貫いて、それがお腹の奥の方にまで飛び火したのがわかる。
下腹の奥がきゅうんと切ないほどに震えて、じわりと熱い潤みが溢れ出るような感覚。
その感覚が――――恐ろしいほどに長く長く尾を引いて、一向に収まらない。
体の中心から熱く、甘く、切ない感覚がとめどなく流れだして私を内側から溶かしていくような。
私という人間が原型を留めなくなっていく空恐ろしさがあるのに、一方で暖かな毛布に包まれて眠りにつくような原始的な幸福感に呑まれてしまう。
「はぁっ、ぁぐっ♡」
下から上へと、軽くヨアヒムが私を突き上げる。
先ほどまで内臓を震わせるような衝撃としか感じられなかった
でも今の私には恐ろしく効果てきめんだった。お湯でといた水飴がいっぱいに入った桶を優しく揺すられるようなイメージ。
どろどろに溶かされた
惑乱している頭にくっちゃくっちゃ、と猥雑な音が響く。
「あぁ……、よく濡れているな。それに、締め付けもすごい……」
ヨアヒムはじっと何かを探るように目を閉じながらそう言っていた。
ふわふわになっている私の頭は意味をちゃんと把握するのに少し時間がかかったが……それが私の
そして、嬉しいな、と思う。
ヨアヒムが気持ちよくなってくれて嬉しい。
私も気持ちいいから、なおのこと嬉しい。
……そこまで考えて、はたと気が付く。
――私、中の刺激で気持ちよくなれてる。
「んぐ、ぁっ……!?」
「すまん、加減を間違えた。……まだ奥は揺するくらいじゃないとだめか」
そこまで考えたところで、いきなり強い衝撃が叩き込まれて目を剥いた。
私の中に食い込んでいる剛直を軽く引き抜かれて、また最奥を突き上げられたのだ。
僅かな
ヨアヒムの申し訳なさそうな顔が目に入る。それが何だか可愛らしくて私は少し笑った。
陰核からの絶頂で一旦いい具合に
私の体は膣奥の方を優しく圧迫するように押し上げられるくらいならばなんとか気持ちよさを感じることができるようになったみたいだった。
それからはヨアヒムもしっかり加減した状態でゆっくりと何度も私の中を擦りあげた。
「ふぅ゛っ……、あ゛ぁ…………♡♡ んあぁ……ぁ゛――――っっ♡♡」
ヨアヒムに抱きかかえられながら、彼の膝の上で何度も優しく揺すられる。
彼の先端が私の中をぐぅっ、と力強く圧迫するとお腹の奥が絞られるような気分になる。
その感触が何とも切なくて甘酸っぱくて、それでいて蕩けるように甘くて、私は阿呆みたいに口を開けて喘ぐことしかできなかった。
いつの間にか私は全身でヨアヒムにしがみついていた。
腕を彼の体に回して、脚を彼の腰に絡ませて、全身で抱き着く。
脚を大きく広げてそれでヨアヒムの体を挟み込むと、自分の体の真ん中に彼自身が突き立っているのだという実感がありありと感じられて、なんだかとても興奮した。
「リオ……っ、そっちも腰が動いてるぞ……」
「あっ……♡ だってこれっ、きもちいい……♡」
ヨアヒムの逞しい体にひしと抱き着いていると、汗に濡れた肌と肌が擦れ合って気持ちい。
だが、それ以上に乳首と陰核が密着したヨアヒムの体で圧迫されるのがものすごく気持ちがよかった。
彼が体を揺するたびに敏感な部分が肌に擦られて捩れ、快感の電流が
胸先と股座から感じる快感は疼きや痒みにも似ている。一度刺激されると、つい何度も何度も求めたくなってしまう病みつきになるような感覚だ。
私はいつの間にかそれを欲しがるように、ヨアヒムに摺り寄せていた体をくねらせるようにして性感を得ようとしていた。
彼の胸板に抱き着いて自分の胸先を潰して転がし、腰をくねらせて彼の下腹部に淫核を押し当てた。
特に下から襲ってくる感覚は強烈だ。ちりちりして少し固さのある彼の陰毛に私のクリトリスが当たって擦られると予想だにしていないような快感が背筋を走るのだ。
その
さらにはヨアヒムが私の中を揺り動かす動きと、私が股を押し付ける動きが重なり合うこともあった。
二人の腰を動かすタイミングが同期して、深々と胎奥を抉られると思わず肺から息が絞り出された。
奥を突かれて押し上げられる刺戟だけではない。ようやく膣の中、その表面を擦られる動きもわかるようになってきた。
対面座位という動きにくい体勢なので激しく出し入れして膣襞を擦りあげて……というのは難しかったが、私が腰を自分で揺り動かす動作も加えることで、多少は抜き差しの動きもできるようになったのだ。
膣の表面をヨアヒムの勃起で擦りあげられるのはくすぐったいところを引っ掻かれるような、なんとも形容しがたい感覚だった。
ただ、それも私がその刺激に慣れていないせいだからなのだろう。時折良い所に入ったのか、体の芯まで火花が飛び散るような、目が眩むような快感が走ることがあった。
「……今、いいところに当たったか?じゃあ、もう一回自分で腰を当ててみるといい……。そうだ、上手だ」
「んっ……♡」
そしてそうやって私が反応すると、ヨアヒムが素早く察して私に同じ場所を刺戟するようにと促してくる。
もう脳味噌が溶けかかっている私は一も二もなく彼に頷いて、へこへこと不格好ながらも腰を捻った。
ぞりっ、ぞりっ、という体の中を擦りあげられる感触の中にある心地よさを探って自分自身を開拓するようなイメージ。
私が安定して気持ちよくなれる場所を見つけて何度も同じように腰を振るようになると、ヨアヒムが頭を撫でてキスをして、背中を優しく擦ってくれる。
その度に、気持よくなれたな、えらいぞ、なんて誉めそやすものだから、私はすっかり幸せで思考をふやけさせながらだらしなく笑う外になかった。
「んっ、んっ、ぁんっ、んぅっ……♡♡」
「……気持ちいいか?」
「んっ、きもちいいっ♡ ヨアヒムすき……っ♡ だいすき……っ♡♡」
「あぁ……、オレも大好きだ。可愛いよ、リオ」
「えへへ……♡ ヨアヒムも、きれいでかっこいいですよ……♡」
好き。愛してる。可愛い。綺麗。大好き。
言葉がふわふわに蕩けた頭から垂れ流しにされている。
語彙もへったくれもありはしない、駄々洩れの惚気言。
明らかに素面ではなかったし、
実際そうだ。私達は酔っていた。お互いの体に、快感に、何よりも愛に。
体を重ねて一つになって、それでも飽き足らずに溶け合ってしまいたいとさえ思う。
私と貴方、貴方と私の境目を取っ払って、ぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまえればどれほど幸福なことだろう。
いや、今の私達は限りなくそれに近い所にいるのだ。
裸で抱き合って、睦言を交わし合って、何よりもぐちゅぐちゅと淫らな音を立てながら体の一部をつなげて
ヨアヒムが私の中にいるということを強く意識する。
私という人間のど真ん中にまで深々と食い込んで、芯から全身を揺らして撹拌し、どろどろに蕩かしてしまうこの存在感がヨアヒムそのものなのだと思うと、幸福感で頬がだらしなく緩んだ。
目を閉じて、お腹の奥を意識してぐっ、と力を込めてみる。
すると、それに反応するように中にいる彼の剛直がびくんと跳ねる様が感じられて、何だかとても愛おしかった。
「ふぁ……っ!!んんっ、ぁっ、ぁっ……♡♡」
「すまない、リオ。そろそろ……こっちも、限界だ……っ」
突如として腰をヨアヒムの両手で掴まれる。
そのがっしりとした力強さに身を震わせている間に、彼は腰を大きくグラインドさせ始めた。
さっきのように勃起を一旦引き抜いて刺し貫くような動作ではないが、代わりに何度も執拗に先端部を押し込んでは押し付けるような動きだった。
彼の手で掴まれた私の腰が、彼の腰の方へと引き寄せられる。
真下から体の中心を押し潰されるような感覚に悶えている間に、さらに間髪入れずヨアヒムの亀頭がグリグリと胎の奥を抉り抜く。
生硬い餅を杵で強引に潰して形を崩すような、強引さえ感じる陰茎の按摩だった。
私は息を詰まらせて喘ぎながら、ヨアヒムにしがみついた。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と粘った糊を引きはがすような粘液の音がする。
お腹の奥を――子宮口を何度も押し潰される圧迫感に襲われながらも、私はその中に確かな快感を覚えていた。
先ほどまでのゆらゆらと揺すられて体の芯の埋め火をゆっくりと煽られるような心地よさとはまた違う、一番奥の女の体の中心を暴かれて穿り返されるような感覚。
今まで自分も知らない閉じていた場所が開かれて、拓かれて、啓かれていくという……一抹の不安とそれ以上の多幸感に塗りつぶされていく。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふぅ……っ!」
ヨアヒムの荒い息が私の耳を擽る。
いつもの余裕たっぷりで爽やかで茶目っ気のある彼とは全く違う、切羽詰まった荒い息遣い。盛った獣のような、
私にも共感できる、
ヨアヒムが私で興奮してくれている、気持ちよくなってくれている――――女として求められている、という事実はこれ以上にない自己肯定感を私に与えてくれると共に、
そしてこの状況で私にできることは何もなかった。
私の腰はヨアヒムがその両手でしっかりとつかんで離さないので、自分から動かすこともできない。
ただ一方的に、亀頭を私の子宮口に擦り付けるヨアヒムの動きを甘受するだけ。
逃げようにも逃げられないその不自由さが……どういうことだろう、私には心地よいものに感じられてしまう。
私の細い腰を確りと捕まえて離さない、彼の手の逞しさと力強さが私を彼に繋ぎとめてくれると分からせてくれるからだろうか――――。
「……っ、くっ、うっ………っっ!!!!」
私の中を掻き回す腰の動きが逸る。
私の中にいる彼の剛直が膨張する。
思考が鈍った頭でも何となくその時が来たのだな、というのがわかって私は目を瞑ってその瞬間を受け入れた。
――――ドクッッッ!!!!ドクッ、ドクッ、ドブュルルルルルルルル…………ッッッ!!!!!
実際に音がしたわけではないし、実際にそこまでの熱があるわけではないのだろう。
だが私の脳には確かに土石流のように堰を切って溢れだし、マグマのように煮えたぎって熱い、彼の情欲の奔流ともいうべき物が感じられた。
体の奥の奥まで貫くように押し付けられた硬い亀頭。その先端からそれを浴びせかけられた瞬間、私は明確にイった。
「――――――――…………っっっ♡♡♡ ――――――――……ッッッッッッ゛゛♡♡♡」
言葉が出ない。言葉にならない。
自分という人間の存在の核の部分に、溶解液とお酒と甘いシロップと熱湯と刺激物を一緒くたに流し込まれたような気分だった。
体の芯から自分の意識がばらばらに解けて、ぐずぐずに溶けて、ばちばちと焼き尽くされて、何もかもがよくわからなくなる。
脳味噌の奥で閃光が弾けて、その眩さで目が眩んで暗転したかと思うと、またスイッチを捻られたように明るい所に放り出される。目の奥で光が明滅して焦点が定まらない。
自分の意識と自分の身体の輪郭を見失って、自分が何なのか自分が何処にいるのかもわからなくなる。
その癖に全身を溢れかえるほどに満たす熱の心地よさと、
「――――――…………っ♡♡ はぁっ、はっ、はぁっ……っっ♡♡ はぁぁぁ…………っ♡♡♡」
息を何度も吸って、吐く。吐く息が蒸気のように熱い。
ほんの数秒とはいえ意識が吹っ飛んでいったせいで、自分の体に
頭と繋がっている配線が千切れ飛んだかのように、自分の手足の感覚があいまいだった。
ただひたすらに熱い。熱くて、甘くて、蕩けている。
「…………リオ……っ」
そんな私を、ヨアヒムがかき抱いた。
今までの優しく壊れ物を扱うような繊細なそれではない、狂おしささえ感じるほどの情熱的な抱擁だった。
今も私の中で、彼の分身が
その脈動を確かめたくて
ふぅ、ふぅ、と疾走後のような荒い息がベッドの上に響いている。
どちらか片方のモノではなく、私たち二人の呼吸の音だ。
「「…………」」
絶頂の余韻に浸りながら、互いに言葉もなく抱きしめ合う。
まともに戻り始めて、力が入るようになった手足で私はヨアヒムの体の感触を確かめる。
汗に濡れた熱い体。その奥から響く
「ふふっ……♡」
「……リオ?」
「えぇ、いえ……何でもないんですよ。ただ、ね……。生きているなぁ、って」
「…………あぁ、生きているよ。オレもお前も……」
「はい、そうですね……。ふふふ……っ♡♡」
私はぼんやりとまだ焦点の合わない視界に映るヨアヒムに目を合わせた。
彼のその顔の輪郭を確かめるように手を頬に這わせて――――私から彼にキスをした。
唇に触れ合う熱と温度、ささやかで優しい触れ合い。そんな感触が何処までも愛おしい。
私をかき抱くヨアヒムの体温、心臓の鼓動。
彼が此処に生きていることの確かな証明。
その事実が、どうしようもなく、いっそ笑ってしまいそうなほどに奇跡的で、なんていう幸せなんだろうと――――私は思った。
――――私達は、きっと幸せになれる。
そんな思いが私の脳裏をよぎる。
確信とも言えないし、未来なんて人間にはわかるようなものではないだろう。
けれど……例え先の事などわからなくても、お互いの幸福を目指して、一歩一歩を積み重ねていけるなら……それ以上のものはこの世にはないのではないだろうか。
「ヨアヒム……私、これからもしあわせになりたい……。あなたと一緒に……」
「あぁ……オレもだ。リオのことを幸せにしたい。――――いや、してみせる。きっと……」
どちらからともなく、私達はキスをした。
優しく啄むような、お互いの存在を確かめ合うようなキスを。
――――あぁ、願わくば今日のような、今夜のような幸せが、明日も明後日もその先も続きますように――――。
甘い香りが立ち込める寝室、カーテンに覆われたベッドの上。
ゆらゆらと影を揺らめかせる暖炉の明かりを向こうに、私達はずっとずっと抱き合っていた。
お互いの存在を、生きている証を確かめ合うように。