いや、嘘だ。そこまで早いというわけでもない。
勝手気ままな自営業者であるがため多少は始業時間をずらしたところで誰に咎められるわけでもなし、それに仕事場は自宅と兼ねているため通勤の時間なども考慮する必要もない。
――――とはいっても流石にいつまでも惰眠を貪っているわけにもいかない。
自営業には自営業の責任というものがあり、自分の怠惰のツケは直接将来の自分の上に降りかかってくる。
つまり、いつまでも惰眠を貪っていると今日の分の仕事の予定が終わらないので、さっさと起きなければいけないという話である。
「うぁー……、アラームオフ……。オフっつってんじゃん……」
ピピピピ……と鳴り止まない目覚ましの音に悪態を吐きながら、寝ぼけた頭で音声入力に対応していないことに気が付いた。
昔の癖がいつまでも抜けないものだ、と心の中で毒づきながら彼はいそいそと左手首の端末を操作してアラームのスイッチを切った。
半身をベッドの上に起こしてから脳に血が巡り始めるのを待ち(しばらくボーっとしていたとも言う)、ようやく彼は布団へと別れを告げた。
その際に彼はベッドのサイドテーブルに置きっぱなしにしていた
すると宝石の中から霞とも靄とも取れない半透明な煙のような物が現れ――――するするする、と水が流れるような滑らかさでドアの下を潜り抜けて何処かへと去っていった。
それを見届けたタイチはあくびを一つ零してから、いそいそと着替えを始めた。
階下にあるキッチンへと降りていくとそこには些か以上に奇妙な光景が広がっていた。
火にかけられている鍋の中に差し込まれたお玉が一人でに動いてぐるぐるとその中身を掻き回しているのである。
それだけでなく、見てみれば無人の厨房で包丁が誰に握られるでもなくまな板の上で野菜を刻み、戸棚が開いては浮き上がったパンがテーブルの上に着地する。
どうみても怪奇現象の一種だがタイチにそれを気にする素振りはない。これは彼にとっての日常である。
これは彼が
予め設定しておいた術式に従い、命令一つで起動した
「んー……問題ないか」
便利な技能ではあるが
朝食作成用の
届いていた手紙の類――大体は仕事に関係する書類――を手に持って戻ると、予想通り朝食の準備が配膳まで含めて完了していた。
スープにサンドイッチ、スプーンやナプキンまで揃えご丁寧に椅子まで引いてある。
やはり
などと心の中で呟きつつ、タイチは「いただきます」と一人手を合わせて食事を始めた。
******
――――楽をするためには苦労しなければならない。
矛盾しているかのように見える言葉だが、実際そのような場面は世の中に多い。
夏休みの宿題を最後の一週間、いやさ最後の一日まで放ったらかしにしておいて過去の自分を呪いながら徹夜で作業する羽目になった人も多いのではないだろうか。
先んじて労を惜しんでいなければ後々楽になっていただろう、という後悔は人間生きていればどこかで抱え込むものだ。
なので
予め書き綴った
この段階で労を惜しんではならない。何故ならここさえ乗り切れば後は進捗をちょくちょく確認するだけで本人は寝ていても製品を完成させることができるのだから。
「うぉー……。うぅぉ……っ!!これなら、これなら動作はする……っ!!動作するな?動作するよな?してくれるよなっ?」
工房の一室で独り言が木霊する。生憎と彼一人しか従業員がいない工房なのでその悶え苦しむような声を聞き届けるものは一人としていない。
たった一人自分で自分の苦悶の声を反芻する、当のタイチ自身は作業机の椅子を蹴倒すように立ち上ってから何度もその場を行ったり来たりしていた。
奇行にしか見えないが椅子にずっと座りっぱなしでは息が詰まるし、身体を多少なりとも動かすことで脳までの血の巡りを良くしようという本能的な行いでもあった。
うーん、と唸る彼の視線の先にあるのは、ぼんやりとした光の線で構築された幾何学模様の立体映像だった。
その画像は机の上に置かれた一粒の宝石から上空へと展開されている。さながらホログラム映像の
立体映像は複雑に絡み合った多数の幾何学的な線と文字によって構成されており、タイチは先程からそれを杖先で弄繰り回していた。
これは
戦闘などでは術者が
ただし、そのためには非常に緻密な
彼が改めて中空に投影された術式に目を通すと、その複雑性に毒づきたくなる気分になった。
これはさせようと思っている動作が煩雑だからというのが最大の理由――――というわけでもない。無論、その一端ではあるが。
原因は今弄っている
別の作業から別の作業へと、何度も何度も再利用を繰り返しているうちに書き込まれている術式の中に無用な
それはそれとして一応動作するようにはできてしまっているのが質が悪い。
例えるなら、「3」という数字を出すのに「1+2」ではなく、「1+4×6-(5/2×3+7÷2)×2」という数式を使っているようなものである。
既存の式の上に注ぎ足し注ぎ足しを続けた結果、キメラ染みた異形の構造になっており煩雑なことこの上ない。
「そろそろ初期化して一から作り直した方がいいかなー……」
などと言いつつ、彼はちらりと横の棚に目を移した。
そこには現在手を付けているのと同じような
いずれも大なり小なり似たような問題を抱えている作品群だった。
どれもこれもそろそろ大きな
ただ、タイチは自身の性格からして一度手を付け始めると全部の処理が終わるまで止まらなくなるだろうということは理解していた。
そしてそれは一日二日で終わるような作業量ではないだろうということも。
「ま、今は他にもやることあるし……。また時間に余裕ができたときにやるとするか」
最終的にそのように結論付けた彼は手元の
そうやって後回しにした作業のツケがどんどんと降り積もって将来の彼自身を圧迫するのは解っていたが、現在の彼はそれを極力目にしないようにしていた。
――――楽をしようとすると苦労する羽目になるのである。
******
「おー……、動いてる動いてる。さすがはオレだな……」
などと独り言ちつつ、タイチは自分の制作した『生産ライン』を眺めていた。
予め指定した材料を選んで重さを計り、切り刻んでは粉末状に擦り潰し、煮詰めて煎じて撹拌し、取り出してビンに詰めて梱包まで……
このようなラインが同時に三つほど稼働しており、見えざる手によって操作される道具類が立てる音が彼の工房内に木霊していた。
タイチというプレイヤーが持つ強み――――
だが一から十まで
従業員など雇っていない以上、プログラム通りの動きだけでは対応できないような事例には彼自身が当たらなくてはいけない。
新しい製品が必要になったときの為のレシピの研究開発、材料の卸元や薬品の卸先との連絡、帳簿の管理、不良品ができていないか鑑定スキルを使って目視で確認、
雑用に現場の単純作業は任せることはできても、こればっかりは自分で行う必要があった。
二十二世紀であれば(場合にもよるが)
他の
そもそも他人――たとえ人でなくともここでは自立した思考力を持つ知性体一般を差す――と会話することを極端なまでに苦手に思う気質でなければ
――――自分以外にものを考えたりするようなモノを傍に置いておくだなんて、気味が悪い。
タイチ・アサクラはかなり本気でそう思っている。
地球の暮らしでも
まぁ、そうやってAIと自動化に頼りきりの人生を送っていたツケが回ってきたのかもしれない。
工場の現場監督と主任技師と経営者を掛け持ちしているような仕事量に負われながら、彼は自分の
「うぁー……、忙しいなぁ……」
「――――だったら誰か雇えばよいのではないでしょうか?」
「うぅぅぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!!????」
独り言である。独り言であるはずだった。
なのにそれに対して返事をする声が耳元でいきなり現れたというのだから、それはタイチにとってまさしく驚天動地の衝撃だった。
文字通り天地がひっくり返るほどの。
具体的に言うと彼が大声を上げて仰け反るとともにそのまま椅子ごと背後にぶっ倒れた。
強かに後頭部をぶつけて悶絶しながら床を転がり回り、転がる勢いを利用して跳ねるように立ち上って闖入者を睨みつけた。
「いきなり大きい声出さないで下さいよ、びっくりしたじゃないですか」
「び、びっ、くりしたはこっちの台詞だっ、ですっ!!入ってくるなら玄関鳴らすなりノックなりあるだろ……あるじゃないですか!!」
「いや、呼び鈴も鳴らしたし、ドアの前で呼びかけたりもしましたけどね。反応が無かったもので……それでまぁ、しょうがないのでこっそりと」
「…………」
本当にしたのか?と疑惑の念を向けてみても闖入者はどこ吹く風だった。
それに実際に
事実先ほどまでは作業と物思いに耽っていてあまり周りの事は意識していなかったという自覚が彼にはあった。
来客出迎え用の
なお、防犯用の設備が反応を示さなかったことに関して彼には疑問の一つもない。
自分の手で揃えられるようなものでは彼女にとっては張子の虎も同然であろうという自覚があったからだ。
他ならぬ彼女――――リオ・オーガスタの前では。
「今日そちらにお邪魔させていただく予定にはなっていたと思いますが」
「あーっと、えー……そうですね。確かに予定表にはそう書いてる、ますね。……ていうかリオさんが
「まぁ、そんなところですね。私も
タイチはぶすっとした表情を崩さないように努めながら、極力平静を装って椅子に腰かけた。
横目でちらりと伺うと視界に映るのは美しい少女の姿だった。
光の加減で白金色にも見える黄金色の髪に、白いフリルで飾られた
染み一つない陶磁器のような白い肌に、透き通った冬空のような氷色の瞳。
桜色の唇を綻ばせてけらけらと楽しげに笑うその姿だけで殺風景な事務室が心なしか華やいだようにも見える。
プレイヤーが一から作成することでしか生まれないのは明白と言わんばかりの見事な造形美を誇る少女の顔は知らず知らずのうちに目が吸い寄せられてしまいそうであった。
そうして勝手に目と意識がそちらの方に向いてしまうことを
目の毒、気の毒、という言葉があるが彼にとってリオとはそのようなものだった。
有体に言って、タイチ・アサクラはリオ・オーガスタの事が苦手である。
(それにあの連中の所に
心の中で彼は重たい溜め息をつきながら、机の上に予め用意してあったものを彼女に向って差し出した。
「依頼のヤツ、です」
「おー、ありがとうございます。調査結果、出ましたか」
「……」
感心した声を上げるリオに対して、こくり、と頷くだけで返答した。
これは正しくはリオからの依頼ではなく、彼女と懇意にしている
内容はとある薬品の効能と成分の分析。それ以上の詳しいことをタイチは聞かなかったし、聞くつもりは無かった。
マフィア案件に深く首を突っ込んで良いことなどは一つもない。
「ふーん、なるほど……なるほどねー」
リオは神妙そうでありながら、どこか楽しささえ感じさせるような表情で彼が書いた鑑定書に目を通していた。
依頼人よりも先に読んでいいのか?などとは聞かない。
此処で読んでいる以上は
鑑定を任されたのは薬包紙一つ分の黒い粉状の薬物だった。彼にはこれが一目見て麻薬の類だと理解できた。
ものすごく関わりたくは無かったが、それでも依頼された以上は拒否権も無く分析できるだけの事は分析してみた。
精製の精度はかなり粗め、制作の環境がかなり粗末なものか――――あるいは、質ではなく量を最優先にした粗製乱造の可能性も……。
「ところで、ですが」
「うん?なんでしょう」
鑑定書の内容を自身の頭の中で反芻しながらそこまで思い起こしたところでタイチは口を開いた。
「オレ、じゃない僕の工房で
「――――おやおやぁ?宜しいんですか?そんなことを明言しても」
彼の言葉が余程面白かったのか、リオは書類から顔を上げてにっこりとした笑みを浮かべた。
いや、にっこりと言うよりはにんまりというべきか。いずれにせよ、その微笑みは可憐でありながらどこか嗜虐的な色を含んだものであることには違いなかった。
すぅっ、と細められたアクアマリンの瞳が掌で撫で回すかのようにじっとりとした質感を以てタイチを視界に絡め取る。
その相貌に、彼はニヤニヤ笑いを浮かべながら木の上から見下ろしてくる童話の猫の姿を幻視した。
「私もそうですが、あなただって
「…………」
リオの言葉に彼は露骨に眉を顰めた。彼女の言うことは実に正しい。
何せ、タイチ・アサクラの工房の出資者は他ならぬパガニーニファミリーであるからだ。
元々あまり熱心に『UH』をやっていなかったタイチはこの世界が現実になってから生活基盤の当てがなかった。
リアル化した魔物との戦いは痛いやら怖いやらで断念する他なく、仕方なく始めた工房はあまり流行らず潰れかけた。
そこで当時、彼の借金の債権主になっていたのがパガニーニファミリー……正確にはファミリー系列の金貸しである。
彼らはこの手の会社にしては非常に良心的で、タイチが借金を返せなくなりそうだと訴えるとそれはそれは親身になって相談に乗ってくれた。
新しい設備を揃えるために追加で融資してくれたのも彼等であり、
生産した薬品類を優先的に買い付ける契約をしてくれたのも彼等であり、
安定した材料の流通業者との渡りをつけてくれたのも彼等であり――――
……という具合に自分がマフィアの片棒を担いでいることに気が付いたころには、完全に囲われているありさまだった。
すっかりファミリーの一角として組み込まれてしまっているタイチの工房には違法すれすれのグレーゾーンを行くようなものや、何かといかがわしい用途の薬品の製造を依頼されることもしばしばである。
現に今日の生産ライン上でも毒酒の原料になる素材の加工がおこなわれている。毒酒は製造と所持は違法だが、その下になる原料ならギリギリセーフ……という理論らしい。
「――――まぁ、冗談ですよ。ネーロさんだってあなたにはそこまで
「……そう、ですか」
眉間に皺を寄せていたタイチはその言葉にそっと胸を撫で下ろした。
組織のボスがそう言っていたのなら、即お縄になるような案件をやらされる危険は(当分は)ないだろう。彼もできるなら脛に傷を持たずに生きていきたかった。
そんな様子を横から眺めていたのだろうリオのくすくすという笑い声がタイチの耳に届く。
からかわれたのだ、とそう自覚するとささくれたような気持ちになって彼女から目を反らした。
「あとそれと……もう一つ注文の品があったはずですが」
「……そこに積んである」
顎をしゃくって部屋の奥の方を差す。
およそ客にとるような態度ではなかったが、そういう観念は彼の頭からは完全にすっぽ抜けていた。
そちらの方には幾つかの木箱が積まれていたがリオはその中の一つの商品名と納品日を確認してから蓋を少し開いた。
「ふむ、なるほど確かに。いつもありがとうございますね」
「……別に、仕事です」
ぶっきらぼうというか不愛想にもほどがあるタイチの返答だが、これに関しては照れ隠しだとかそのような要素は一切ない。
本当に仕事でなければ作っていないような、ややいかがわしい部類に入る薬品だった。
「そんなに謙遜しないでいいじゃないですか。夜のお仕事では好評なんですよ、これ――――精液落とし用の洗剤」
箱の中から取り出した瓶を一つ手に取ってリオがけらけらと笑う。
女性の口から『精液』という単語が出て来るだけで、なんだかタイチは酷くいたたまれない気持ちになった。
精液を洗い流す専用の
レシピ制作の段階で「自分は何をやっているんだろう」と空しい気分になったことは一度や二度ではない。
それでも提示された報酬額と契約には逆らえないのが辛いところだった。
そしてなにより――――
「こういうの作ってたら、
「!!」
つらつらと物思いに耽っていたところを急に声をかけられたタイチは大仰に肩を跳ねさせた。
振り向けば、まさしく目と鼻の先という距離にリオの顔が迫っていた。
氷色の眼を縁取る金糸のような睫毛の一本一本が識別できるほどの至近距離。
人形のように整った可愛らしい少女に間近で顔を覗き込まれ、タイチはドクン、と心臓が脈打つのを感じた。
――――これはいきなり声をかけられたからだ。
彼は意識下で自分にそう言い聞かせた。
「私もね、プライベートでは結構
「……っ」
「なのでユーザーの一人として感謝しているというのは本当です」
リオのその言葉が耳から脳に吹き込まれる。
仄かにミントのような香りのする耳朶に心地よい響きの声。
そこに乗せられた意味を彼の意識が理解した瞬間、頭の奥がかっと熱くなった。
それが必要になるような場面と、目の前にいる可憐な少女が重なり合う。
互いに相矛盾するような要素で構成されたそれら二つが上手く結びつかず、それでいて強い引力で惹かれ合うように頭の中でぐるぐる回る。
「想像、しちゃいました……?」
「ぁ……ぅっ……」
リオはまた一歩と彼の方へと近づいてきていた。服越しにお互いの体温が感じられそうなほど。
椅子に座ったまま動けないタイチは膝の上で力強く自分の手を握りしめていた。掌の中に嫌な汗が滲む。
ばくんばくん、と心臓の音が勝手に早鐘を打って目の裏が赤く染まる。
脈拍に合わせて酸素を要求する肺腑が深く大きく息を吸い込む。濃く、甘酸っぱい香りが胸に満ちる。
それがリオの香りだと気付いた瞬間、タイチはぎゅぅ、と目を硬く閉じた。
「――――――まぁ、そういうわけですのでこちらが代金になります。私からの感謝の気持ちも込めてチップも弾んでおきましょう。おつりは結構ですよ♡」
そんな彼の混乱を知ってか知らずか――いや、確実に知った上で、リオはさっと身を翻した。
端末からゴトゴトと音を立てて金貨が机の上に積まれていくのをタイチは眼を瞬かせながらただ漫然と見送った。
異様な緊張から解き放たれたとともに、反動で全身からごっそりと力が抜けている。
手を伸ばして料金を確かめるような気力も無かった。
「またお願いしますね」
ポンポン、と黒い手袋に包まれた手が彼の頭を軽く撫で、少女は彼の横を歩き去っていった。
すれ違いざまに長い金色の髪がふわりと舞い上がり、花のような芳しい香りが鼻先を擽る。
彼女の後姿が遠ざかって事務室の扉が閉まるのをタイチは無言で固まったまま見送ることしかできなかった。
別れの挨拶一つも口からは出てこなかったが、彼の耳は「少し遊び過ぎましたか」という彼女の去り際の呟きをかろうじて拾っていた。
「……………………あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………」
リオが去っていってからどれだけの時間が経ったか。
遊ばれた……もとい弄ばれた、という事実を理解した青少年は盛大な溜息を吐きながら机に突っ伏した。
仕事の続きも手に付ける気力がわかず、そのまま椅子の上で潰れたスライムめいて沈黙する。
不貞腐れたくなるような、苛立ちとも何とも云い難い熱だけが彼の中でぐるぐると奇怪な渦を巻いている。
その混沌とした情動は走馬灯のようにやがて幾つかの像を結び始める。
浮き上がってきたそれらが間近に見たリオの白い肌や青い瞳、花のような香りの姿を取り始めたことに気付き、彼は頭を抱えた。
「あぁ~~~~!!あーーーーっ!!」
そんなイメージを吹き飛ばそうとするかのように形にならない呻きが迸る。
幸いにして彼の奇態を咎めるような輩はこの工房内にはおらず、それに関しては明確に従業員がいなくて助かったことであった。
奇声を上げる主を尻目に、