提督が眉をひそめた。それから、薄暗い執務室、その天井を仰ぐ。はぁ、という深い溜め息に、ぴちゃり、と水音が相槌を打った。
「まぁ、薄々そんな気はしていたんだが」
「……なら、傘を持って迎えに来てくれてもいいじゃない」
「すまん」提督が憎まれ口に素直に詫びた。「ここまでとは思わなんだ」
「……不幸だわ」
バケツをひっくり返されたようにびしょ濡れになった山城が、心ここにあらずと言った塩梅でボソリと呟いた。ぴちゃり、と板張りの床が水滴を跳ね上げる。ぐっしょりと肌に張り付いた服が、見ていて寒々しい。
梅雨にありがちな悲劇だった。『私が出張する日だけ、梅雨なのに珍しくカンカン照りよ……! これでもう不幸型なんて言わせないわ……!』とテレビの前でガッツポーズを決めていた山城はもう居ない。カンカン照りが行き過ぎて、夕方にかけて予報になかったゲリラ豪雨が発生してしまったからである。眼の前の濡れねずみはそういう経緯で誕生した。
「すまんが、ドックは使えない。満杯だ。しかも、日付が変わるまではそのままだ」男が背もたれに身を預けた。ぎぃ、と音をたてる。
「わかってます。私、運がありませんから」
「拗ねるな。で、かと言って見ていても寒々しいし、タオルで済ませるのは忍びない」
山城が小首をかしげた。提督が、軍服のポケットを探る。目当てのものを掴むと、山城へと投げ渡した。びく、と一瞬驚いたらしい山城だったが、さすがは艦娘。鋭い反射神経で、苦もなく掴み取ってくれた。
「いきなり何なんですか……鍵?」
「たぶん不服だろうが」提督が頭を掻いた。「個別に使える風呂を持つ大義名分は、俺にしかないからな」
山城が大きくため息を吐いた。つられて提督が軽く息をついて頭を振った。
「ほんっと、不幸ね」
「同意する」
提督の私室、その鍵を弄びながら、山城がまたため息を吐いた。ぴちゃん、と水滴が滴った。
水も滴る良い山城
「はい、こちらスイートポテトです。レンジで温めると良いですよ」
「すみません。無理言って」
「いえいえ。お得意様ですから」
間宮から包みを受け取りながら、提督が足早に立ち去ろうとする。そろそろ閉店間際だったという後ろめたさに加えて、間宮と伊良湖の他には駆逐艦が数隻といった閑散具合なのが居た堪れなかった。何しろ。
「あ、提督」
「なんです?」
「山城ちゃんによろしく伝えてくださいね」
あの子、最近来てくれませんから、との声に、提督が口をとがらせた。ぶっ、とテーブル席から聞こえてきた笑い声をじろりと睨みつける。初期艦だった。
「山城とは」
「言ったも同じですよ。山城さん、びしょ濡れで提督のお部屋に向かったって、すれ違った娘が言ってましたし。その上温かい菓子はあるか、なんて訊かれたら」間宮がくすりと笑った。
提督が憮然とした表情をしながら間宮へお代を渡した。はい、と間宮が微笑みながら受け取る。はらはらと提督を見守る伊良湖の側で、特型一番艦が押し殺した笑い声をあげていた。
「吹雪、今から敵母港空襲作戦。単騎でな」
げほげほと咳き込む声と、吹雪さん!?と慌てる伊良湖の声がした。冗談だ、と投げつけてから、今度こそ店内から立ち去る。またお越しくださいな、と間宮の苦笑いが見送ってきた。
鎮守府構内を足早に駆ける。豪雨は山城が執務室に来た直後から止んではいたものの、雨雲は未だ低く垂れ、しとしとと粘着質な雨に変わっていた。誰かさんみたいだな、と思うものの、濡れるのは嫌なので本棟へと急ぐ。
しっとりと濡れた軍帽を振って気持ち程度でも水分を飛ばしてから、提督の自室として充てがわれた鎮守府の一角へと向かった。予算と、何よりも市民感情とやらが許す限りで設備が整えられた一室は、本棟二階の最奥にある。行きづらいし出づらい部屋だが、提督としては下手にあけっぴろげであるよりはよほどまともであった。
途中、見回り中の夜間当直艦(今日は羽黒だった)と二言三言会話などしつつ、気怠く長い廊下を歩き終えた提督が、自室の扉に手をかけた。ゆっくりとドアノブを回し、戸を引っ張る。はぁ、と小さく息を吐く。鍵は開いていた。まだ居るらしい。手間が省けてよかった、と提督が包みを抱え直した。
「山城、もうあがったのか?」
靴を脱ぎながら、未だお世辞にも乾いたとは言えない履物を眺め、確信を深めつつ提督が呼ぶ。返事はないが、シャワーの音もしなかった。変だな、と首を傾げつつ、提督が玄関を含む廊下と、茶の間を隔てる扉を無造作に開け放ち。
「山城? 何をしている?」
バスタオルにくるまれ、二人がけソファ上で体育座りをしている山城と思しき物体に、困惑しきりで声をかけた。
「……何してるように見えます?」
「知るべきではなかった趣味をお持ち、のようではないな」提督が眉を顰めながら山城の前に立ち、更に眉をしかめた。「おい待て。何も着てないのか?」
「えぇ。服はまだびちゃびちゃでしたし。提督の服を借りるのも考えたのだけれど、お湯が出てくれるまでこのままの方が良いかなって」
「…………」
提督が包みを乱暴に机へと置き、浴室に向かう。バスタオルごと山城が着いてきた。
更衣室代わりの洗面所には、なるほど山城の申告どおり、びしょ濡れの服が洗面台に置かれていた。あとで絞っておくつもりだったのだろう。だが、今はそれをどうこう言う場合ではない。
浴室に入る。温度設定が40℃になっているのを確認し、提督が蛇口を捻った。しゃあ、という音と共に、勢いよく噴き出した。――冷水が。
二度三度と提督が試し、温度を一度弄ってみてから更に蛇口をひねる。それから、もう一度だけ、未練がましく温度設定を変更し、更に蛇口を捻ってみせる。そこからまたして冷水が出ているのを確認し、提督が水を止めた。シャワーヘッドを掛ける。山城に振り向いた。
「壊れてるな」
「不幸だわ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「服はここにかけておくぞ。下着も一緒だ」
ハンガーと洗濯物干しに山城の服一式をぶら下げ、更衣室から出てきた提督が軽口然とそんなことを口に出す。が、山城はバスタオルの中で小さくコクリと頷くのみである。重症だな、と物干し竿にそれらを掛けながら、提督がため息をついた。
「コーヒーでも淹れるか? 寒いだろう」
「別に……」
「そうか」
提督が乱雑にカップを2つ取り出した。インスタントの粉をぶち込み、お湯がまだなことに気づいた。肩を竦め、ケトルの電源を入れてから、山城の隣に腰を下ろす。
「あの。座っていいとは一言も言ってないんですけど」
「俺の部屋で、俺のソファだ。文句あるか」
「ええ、大いに」
バスタオルの影から尖った唇をのぞかせながら、山城がブツブツと文句をつけた。気にせずソファにより掛かる。山城が慌てた様子でバランスを取った。
「ちょっと」
「変な格好で座ってるのが悪い」
「配慮と言う言葉、ご存知ではないのかしら」
「生憎とご存知だよ。使う気はないが」
「なら使い所も一緒に覚えてくださいな」山城が提督をジト目で睨んだ。「この状態で。バスタオルは小さめ。縮こまらないといけないからこうなってるんです。普通に座ったらどうなるか」
「どうなるんだ?」
提督が聞いた。山城が言葉に詰まる。ケトルがことことと湯を沸かす音が一瞬だけ強調された。
「その」山城が前を向いて視線を落とした。「み、見えちゃかもしれないじゃない」
「はっ」
提督が鼻で笑った。山城ががばっと提督を向く。顔が赤い。
「今、女性に対して信じがたい反応が聞こえたのだけれど」
「今更そういう反応する方が信じがたいがね。第一」提督が顎で干された山城の服一式を指し示した。「今しがたお前さんのパンツとブラを絞って脱水してやったのは俺だぞ」
「~~~~ッ!?」
山城が更に赤くなった。症状は軽くなったらしい。
「こ、このっ」
「おい、待て。暴力は洒落にならん。お前さん艦娘だろうが」
「それ以前に女性ですっ」
「意味がわからんぞ」
提督視点によればいきなり暴れだした山城を、提督が必死に抑える。一、二発割と本気のげんこつを喰らいながらも、やはり対人ということもあって制限がかかっていたらしい。提督が何とか山城の左手首を捕まえる。そして、反撃、と行く前に目を見開いた。
「冷たっ! お前」
「…………」
山城が急におとなしくなる。提督が、乱れたバスタオルの間から手を差し込んで、更に眉をひそめた。
「セクハラ」
「黙っとけ。……冷たいな。包まってたとは思えないほど」
「えぇ。風呂場でも水を頭から思いっきり浴びましたから」
「先に言わんか、それを」
提督が、山城の左手を放り投げ、そのまま肩を抱いた。山城から流れ込んでくる冷たさに鼻を鳴らしてから、バスタオル越しに膚を摩り始める。
「……提督?」
「暖かいか?」
「セクハラには変わりませんよ?」
「布一つは隔てた。これ以上口答えるんなら俺も楽しませてもらうが」
「なら黙るわ」
「ありがたいね」
提督がもう少し腕に力を入れる。山城が小さく声を上げたが、提督の腕の中へとすっぽりと収まって、宣言の通り文句は言わなかった。バスタオルがかすかに立てる音と、いよいよケトルのお湯が沸騰しきった音だけが茶の間を満たす。邪魔がなければ何時までも続きそうな静寂だった。むろん、それが現実に成ることはありえない。
「提督」提督の腕の力に負けたのか、いつしか提督の首元に頭を収めた山城がぼそり呼んだ。
「何か」
「お湯、湧きましたよ?」
山城が伏目がちに言う。なるほど、口から湯気を吐き出すケトルのボタンは既にオフになっていた。
「の、ようだな」提督が応えた。黙って行為を続ける。
「それだけ?」
「問題でも?」
「コーヒー、飲むんじゃないの?」
「どうだかな」
「私は飲みたいんですけど」
「さっき要らんと言っただろうが」
「その割に、カップが2つ有るけど?」
「俺が2つとも使うんだよ」
「変わってるわね」
「自覚は有る」提督が更に力を強めた。「何しろ、こっちのが好きだからな」
山城が押し黙った。体に圧力を感じる。提督はもう腕に力を入れるのを止めた後だった。
「満足か?」
提督が山城から手を離した。山城が提督を見つめた。頬が膨らんでいる。
「全然足りない」
「おい、俺はもう飽きたぞ」
「まだ寒いのよ。だから」
山城がバスタオルを床へと落とした。水分を十分に吸ったそれは、重力に抗う素振りも見せず、小気味の良い音を立てて落下した。
「飽きないように、暖めて」
「改まった癖にずいぶんと簡単な注文だな。えぇ?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
山城を抱き寄せて、血色の悪くなった唇へと吸い付く。ひんやりとした冷たさが、提督の唇を包んだ。
「ちゅ、れろ、れる、ぢゅ、んっ」
けれども、それも外面だけ。直後に提督へと入り込んできた舌はねちっこく、そして熱い。
「んっ、ふぁ、あん、じゅ、る」
提督が、山城の背中をつぅ、と指先で撫でた。熱い吐息が山城から湧き上がってくる。全身に感じる冷たさも、そのうち消え去ってしまうだろうと確信できるほどの熱だった。
「ぷぁっ……暖かい」
山城が体を押し付けてきた。冷製の柔らかさが押し付けられる。一点、場違いな温かさがあった。柔らかな双丘、その頂きだった。
「ゃあんっ」
「えらく硬いな」提督が、己の胸板で山城の蕾を転がしつつ言った。
「……寒いので」山城の頬が少し暖かくなった。
「なら、お望み通り暖めないとな」
提督が山城を少し離す。頑強に抵抗する肢体を苦労して押しのけてから、自身の脚、その根本をぽんぽんと叩いた。一瞬だけ逡巡して、山城が提督の上に背中を向けて載った。丁度、挿入しない背面座位のような格好になる。提督が、山城の胸を両手で包み込んだ。手のひらで乳首を転がす。
「ぁん、んっ!」
「少しは温まったか?」
「私のっ、ふぅ、んっ、ことなんかっ! じぶ、んんっ、がっ、楽しんでる、あんっ、だけ、でしょうにっ」
「酷い言い草だな。山城を思ってやってるんだが。ほら、耳も寒そうだぞ」
「ひゃんっ!」
男が、彼の言うところの『温める』行為を行った。要するに、山城の耳を思い切り食んだわけである。舌で耳全体を舐め回す。
「やぁっ! 頭っ! ぐちゅぐちゅって、おかしくなります、からぁっ!」
「ほーはほーは、ほりゃよはっは」
「そのまま喋るのもやめてくださいっ」
山城の抗議も虚しく、男が耳から口を離したのは、舌で耳の穴まで散々に犯し抜いてからのことであった。最後、塗りたくられた唾液を吸い取りつつ耳たぶまで口を動かすと、山城がびくんと震えて、手のひらに硬いものが押し付けられた。
「首も冷たいな」
「ひぅっ! なら、息を吹きかけるのはやめ、あんっ!」
「わかった。なら舐めてやろう」
了承など要らないとばかりに、提督の舌が山城の白い肌を這い回る。腕の中の山城が、快感から逃れるように身動ぎし始めるが、意味がない。提督が両腕で、がっちりと山城を抱きしめているからである。だらしない、と表現できる寸前まで肉がついた山城の肢体は、絶妙な抱き心地であったから、腕から力が抜けるなどということはありえない。
「少しは温まってきたか?」
山城の首筋から、雨と冷水シャワーで流れ落ちなかった塩分という塩分を舐め取ってから、提督が乳首を弄びつつ訊ねた。
「んっ、おかげ、さまでっ! 耳と、ふぅっ! 首が、スースー、ぅんっ、しますよっ!」
「すまんな、配慮が足らなかったらしい。今もっと温めてやる」
「あんっ!」
言うやいなや、提督が左手を山城の腹部、もっと言えば臍のあたりへと持っていった。右手を少し伸ばして、山城の左胸をむんずと掴み、右乳は腕で押し付けるように抱きしめる。臍の周りを提督の人差し指がつぅと滑った。
「変態的な、あっ、愛撫ね」山城が鼻を鳴らした。
「全くだが、山城も悪いぞ」提督が山城の腹肉を摘んだ。「弄り甲斐がある。油断したな」
山城が、そのせいで乳首が擦れて喘ぎ声を上げるにもかかわらず暴れだした。実際には、辛うじてつまめる程度の肉付きで、しかもそれなりの割合で筋肉であるはずなのだが、相当な羞恥を覚えたらしい。
「そんなに動くなよ」
「誰のっ! せいだとっ!」
山城が首を精一杯曲げて、提督に振り向いた講義してきた。後ろからでも耳まで真っ赤なのが丸わかりだったが、前からだと朱の差し様がよく分かる。提督が山城の唇に近づいた。
「……んっ、ちゅ、む」
初めは頬を膨らませていた山城だったが、抵抗はなく提督を受け入れた。先ほどとは違い、頬から熱源を感じながら、やっと普通の人肌程度に暖かくなった唇を貪る。どうやら、暴れたのが効いたらしい。
「ん、ふぅ、んちゅ、んんっ、じゅ、れ、ぁんっ! んんんっ!」
口づけながら胸を揉みしだき、臍を指でくすぐる。山城の中から中から、どこに隠れていたんだと言わんばかりの熱量が吐き出し始めた。薄めでちらと山城の顔を伺う。快感に身を預けながら、必死に舌を伸ばす彼の女がそこに居た。
「ぷぁ、あんっ、はぁ、んっ」
人差し指で乳首を弾きながら、唇を離す。行き所を失った熱風が、提督に降り掛かった。とろんとした瞳に、やっと知性の色が戻る。すぐに自分の痴態を思い出したらしい。真っ赤な頬が膨らんだ。
「……変態」
「どっちがだよ。当ててやろうか?」
胸を、ゆっくりと揉みしだき、山城をもうひと鳴かせしてから、提督が微笑を浮かべた。「その様子だと、だいぶとマシになってきたようだな」
「えぇ、誰かさんのおかげさまで」
「なら、おせっかいを続けるかな」ひゃん、と山城が啼いた。臍を責めていた手が、いつの間にやら山城の内ももをなでていた。
「……別に、そこまでして続けなくても結構です」山城が買い言葉した。
「かもしれないな」
男が何気ない調子で呟くと、山城が固まった。信じられないものを見た、という様子なら山城も面目が立つのだろうが、悲しいかな、信じたくないといった具合である。山城の腕が、おそらく本人にも無意識の間に、提督の手を掴んでいた。
「なにせ」
「あんっ」
「こんなに熱いもの」
提督が水音を立て、山城が真っ赤になった。不安げな表情はどこへやら、キッと提督を睨みつけている。はじめから誂うつもりだったことに、今更ながらに気づいたらしい。
「最低ですっ」
「その顔が見たかったからな。最低でも最悪でも安いものさ」提督がどこ吹く風と肩を竦めてみせた。山城に笑いかける。「で、どうする?」
「……好きにすれば」山城がそっぽを向いた。
提督が、つぷ、と淫裂へ浅く指を差し込む。ぷるぷる、と快感が柔肉の感触となって男に伝わった。そのまま、割れ目をなぞるようにゆっくりと、さりとて力はそれなりに込めて、秘芯の方へと指を這わせる。断固として感じないことに決めたらしい山城が、堪えるように見を動かし、提督の腕に阻まれて双丘が歪む。
「んんっ」
既に発芽していた肉芽へ触れるのは、直接見ずとも容易なことだった。根本から先端まで、優しく触れるか触れないかのところをなで上げる。山城の熱いもので、男の股間が濡らされた。指にも温度を持った液体が付着する。
「くふぁ、ん、ぁ、ぅあ」
その滑りを活かすように、尖りきったそこを指の腹でくるくると、今度は山城の肉に押し戻すようにして撫で回す。耐えきれなくなった山城が吐息を漏らしながら、押しのけるように男の腕にしだれかかった。大きいが形の良かったはずの胸は先程よりも大きく崩れて、いまや提督の腕を埋めてしまっている。全てが柔らかい中で、三箇所の尖りだけが熱く、提督の触覚を刺激していた。
「やっぱり、ここは要らないんじゃないか?」淫核を弾くたびに震える山城を楽しみながら提督が笑った。「指先を火傷しそうだぞ」
「ずいぶ、んっ! 貧弱な、ぁっ、指、ですねっ。もう少し、ひゃんっ! 鍛えたら、どうかしらっ」
「考えとくが、今は無理だな」男が、気持ち腰を突き出した。「ま、代わりのものもあるんだが」
肉棒に、熟しきった淫裂の肉と露が絡みつく。提督がゆっくりと息をついてその刺激を乗り切った。だが、山城の方はそうも行かないらしい。肉芽を撫でた時の反応が更に大きくなった。
「その割に、んっ、軟弱、ですね」山城が精一杯の強がりを言った。
「お恥ずかしい限りだね」提督が肩を竦めた。「だから、どうぞご自由に」
山城がぽかん、と提督を眺める。男の顔が下卑た笑みに歪んだ。山城がかぁ、と赤くなる。
「俺は続けなくとも良いんだぞ」
提督がダメ押しで続けた。山城が射殺さんばかりに睨みつけても、提督はと言えば笑みを浮かべるだけである。折れるのがどちらかは言う必要もない。
「……意地悪」
「お前さん相手だからな」
山城のきめ細かい手の膚が男の肉棒へとおっかなびっくりで触れた。言動の割に山城がこうなのははじめての頃から変わらないし、自惚れでも無く、自身の行為で壊れそうな手だなという印象を抱くのもまた然りであった。
「うぁっ! んんっ! ふぁっ!」
こちらはマイペースに尖りを弄り続ける提督に一々反応しながら、山城が肉棒を自身の秘処へと擦りつけた。山城の愛液が肉槍の皮膚に染み込んでいく。普段とは異なり、円周の一部分だけが肉に包まれる感覚がなんとももどかしい。
「んっ」
「……これ、良いの?」
図体の割に薄い陰毛でカリ首を擽られ思わず息を漏らした提督に、山城がおずおずとそう訊ねた。応える代わりに山城の胸を揉む。誤魔化す際によく使う手で、山城も嬌声をあげながら了解したらしい。手の動きというか、もっと言えば山城に使われる肉棒の動きが早くなる。
「んっ、ふぁっ! もっと、硬く、あんっ! なってる」山城が、本人以外には陶然と感じられる声音でつぶやいた。
「人のナニで遊んでる様子がエロくてな」
山城がくすりと笑った。今度は、山城の方から唇が近づいてくる。舌が飛び出ている。迷わず吸い付いた。
「れる、ぢゅ、んっ! ふぃっ! んんんっ!」
悩ましげに歪められた山城の表情と共に、舌と手が激しくのたうち回る。そのたびに山城の吐息が送り込まれ、提督は山城で濡れたくられた。何しろ、山城自身が肉棒を弄ぶのに苦労するくらいである。
「ひゃんっ!」コントロールを外れた肉棒が淫核を弾いて、山城が素っ頓狂な声を上げた。
「ずいぶんと楽しんでもらえたようで」唇を離した提督が、厭味ったらしく言った。
山城の頬が膨らんだ。本来であれば整った印象を与えるはずの顔でそういう様をされると、提督の物が膨らむ。少し、頬の張りが和らいだ。
「挿れます、ね」
山城が肉槍の穂先を己の雌孔へとあてがった。にゅくり、とした肉の感触が、先程まで以上に提督を包み込む。はぁ、とそれだけで法悦を極めそうに、山城が吐息を吐いた。
「あっ、ふぅ、あ、んんっ」
入り口が開くのは早かった。熱く湿ったそこは、抵抗感もなく提督を受け入れると、奥へ行け奥へ行けとさわさわと締め付けてきた。つぅ、と入りきっていない竿を愛液がつたるが、もはや染み込む余地もない。
「んん、ふぁ、ぁぁ……あんっ!?」
それでも、山城はおっかなびっくり、といったありさまで提督を奥まで導こうとしたが、無駄なあがきである。すっかり出来上がっていた膣肉は、もはや山城の貞操を守る道具ではなく、男の忠実なしもべであった。快感で山城から力が抜けたその瞬間、重力に従って落ちていく体は、男に対して何の抵抗も見せなかった。子宮口がこつん、と叩かれる。
「待ちきれなかったらしい。下の口はなんとやら」
「うるしゃい」
山城が提督をにらみ、舌の呂律が回らなかった事に気づいて視線を鋭くし、提督が笑い声を上げるに至っては口から唸り声まで出始めた。
「ひゃうんっ!」
尤も、そんな抵抗も、いい加減山城の反抗に飽きてきた提督の一突きであっけなく終焉を迎えた。山城の髪、胸、肉、その全てが飛び跳ね、発情しきった香りを撒き散らし、提督に再度貫かれていく。くひ、と我慢に失敗した喘ぎ声が漏れ出して、ぷし、と潮がソファを濡らす。
「あんまり汚しすぎるなよ。ソファの洗濯大変なんだから。」
「だ、だれのせい、あんっ! やぁっ! やぁああっ!」
肉棒の上で飛び跳ねた山城があんまりにも提督好みしていたから、当然文句が聞き入れられることもなく、行為はすぐに再開された。
肉槍が、山城の中を滑るように前後していく。一度亀頭が膣口まで引き上げると閉じていく膣肉も、再度突き入れられてしまえば、粘性のある液体を振りまきつつすぐに提督へと道を譲った。そのたびに、品のない水音が、山城の股ぐらから部屋へと響き渡っていく。山城の体が、水音がするたびに熱くなっていった。提督が、抱え込んだ熱源で汗を掻き始めていた。
「ふぁっ! あんっ! 同時は、んんっ!」
気を紛らわせるように、胸をもみ、肉芽をくすぐる。山城がいやいやと身を捩り、それが膣道へと伝わって、提督をものを柔らかく刺激した。
「あっ! やぁ! だめっ! それ、つよ、いからぁっ!」
何度か遊んでいるうちに、山城の今日の好みを発見した提督が、こりこりに大きくなった乳首、そのさらに先端をかりかり優しく掻いた。初めは、吸いごたえがありそうにもかかわらず吸えない現状に苛立ったものだったが、突きながら掻くと山城が面白いように反応するのがわかり、肉芽など捨て置いて虐めにかかる。
「山城はこういうのが好きか」
哄笑するように耳元でささやくと、山城が大きく頭を振り、黒髪が舞い、甘く誘うような汗の香りを撒き散らした。
「そういうときは、提督にされるなら何でも好きとか応えるべきだが」提督が満足げにうそぶいた。
「ばかじゃ、ないですかっ」
「お仕置き」
「ひぅっ!」
提督が淫核を押しつぶした。意識が胸へ行っていた分、山城の反応は劇的なもので、尿道から液が勢いよく噴き出してくる。量こそ多くはなかったが、山城の羞恥心を更に煽るにはそれだけでも十分以上であった。
「ほらっ! ほらっ! ほらっ!」
「あ゛んっ!? やぁぁつ!! あ゛っ!」
乳首を掻き、クリトリスを押しつぶし、提督で突き上げる。何とも忙しい行為だったが、山城には覿面であった。面白いように飛び跳ね、提督を悦ばせる女体に、提督もついに昂ぶっていく。
「どこに欲しい?」
山城の項に顔を埋め、息を思い切り吸い込みながら提督が尋ねる。むわっとした山城の匂いで頭が満たされていく。山城は山城で、嫌がる素振りこそ見せるものの、突如生じたこそばゆい感触に感じているのは丸わかりであった。
「どうせ、んん゛っ! 聞く耳、持たな、んあぁっ!」
「心外だな。意見を聞かないわけがないじゃないか」
例えば、と提督が指を折る。山城の肉芽が指の腹を滑り、に゛ゃん、と本人的には赤面を大きくする嬌声が聞こえるが気にはとめない。
「お前さんが本気で嫌がったら、中に出すのは勘弁してやる」
山城が押し黙った。嬌声すら小さくなったのは、提督がスパートに備えて動きを小さくしたからであった。
山城が俯く。奥を小突かれんっと鳴き、提督を向いて睨んだ。口を開こうとして、その瞬間に胸を揉まれたせいか、身を捩らせながら口が固く結ばれる。それから、肉棒を締め付け、愛液を塗りたくってから、上目で本気で睨んできた。小さく口が開く。
「……馬鹿っ」
膣が締まるのが合図だった。提督が抽送速度を大きく早める。山城はと言えば、甘んじて提督の腕の中で身じろぎを続けた。大きな嬌声を上げながら、縋るように提督を見つめていた。
「何だ、まだ足りないか?」
「馬鹿っ!」喘ぎ声のさなか、先ほどと音は同じだがニュアンスの違う罵倒が聞こえた。「も、んんっ! ムード、あんっ! って、もの、をっ!!」
「こうか?」
山城の額に、提督の額がくっついた。眼の前の山城の目が大きく見開かれ、蕩けたように焦点が合わなくなる。突くたびに湧いてくる熱い吐息だけが変わらない。
「山城」提督がスパートに入りながら、今日一番優しげな声を出した。「大好きだぞ?」
山城は応えなかった。そういう柄ではなかったし、なにせ必要がなかった。かぁ、と提督の腕が熱くなり、肉棒がきゅうと締め付けられる。喘ぎ声がもう一段階大きくなった。
「ふぁあっ! イくっ! いくぅっ!」
山城が恥ずかしそうに叫び、自らも腰を動かし始めた。提督がそっと、自身の下半身から力を抜く、心地よい疲労感と共に、山城に精が吐き出されていった。
「ふぁっ! ああ゛っ! あああああああぁぁああああっ!」
迸った精に膣を叩かれ、山城が白い喉を仰け反らせた。吐き出すように嬌声をあげ、くてん、と体から力が抜ける。首が転がり、提督と目があった。
「いるか?」
提督が唇を近づけた。山城がジト目になり、はぁ、と熱っぽくため息を吐いて、んと目をつむった。触れ合うように、唇を合わせる。激しくないが、長い接吻だった。
「熱いな」提督が笑った。「目論見通りだ」
「お蔭様で」山城が尖った声で言った。「で、気持ちよく果てるところまで目論見通りですか?」
「役得はきっちり回収する派でね」
提督が山城を再び揉んだ。あん、と声が出て、山城が提督を見つめる。しばし見つめ合ってから、提督がゆっくりと手を離した。
「明日に差し支えるぞ」
「……わざわざ言われなくてもわかってます」
「本当に?」
意地汚く笑う提督をぺしと叩いてから山城が立ち上がった。粘り気のある水音が後ろ髪を引く中、すっかり汚れた肉棒が山城の中から出てくる。今までが熱かったからか、空気が冷たい。軽く身を震わせると、山城も同じくぶるりと震えた。目が合う。もう一度叩かれた。
「温まったのは良いですが、また冷えそうね」山城が体液で汚れた股ぐらを指で拭った。「それに、ベトベトしてますし」
「好きにすればいい」提督が浴室を顎で示した。「俺としては、そのままで過ごしてもらったほうがそそるが」
「はいはい」
なれた様子で山城がタンスからバスタオルを取り出した。提督が、すっかり放置されていたスイートポテトを温めようと立ち上がった。二人して同時に動き出したから、立ち止まって固まったのも同じタイミングであった。
無言で見つめ合い、のっしのっしと浴室に向かう。山城が見守る中、提督がシャワーを出した。無言のまま手を奔流へと突っ込む。5秒ほどそのまま固まってから手を抜き出し、山城が差し出したバスタオルで水気を拭いた。そうして、ゆっくりと首を横に振る。
「水だな」
「不幸だわ……」
二人してため息をついた。シャワーよりよっぽど暖かい吐息だった。
なお、しょうがないので一先ず寝た後、朝一番でドックに向かったところ、夜勤明けの羽黒さんとかち合って気まずい思いをした模様。