唐突だが、重巡洋艦娘である羽黒は、ハグが好きである。
別に、面白くないジョークで言っているわけではない。人一倍謙虚に見えて、心を許した者には人一倍の愛情を求める羽黒にとって、ハグとは無上の愛情表現の一つであったし、そこから感じる他者の体温も心地よいものである。もちろん、「心許した」の前提を乗り越えることに恐ろしいほどの困難が待ち受けるのだが、であるからこそ羽黒のハグ依存は割と深刻である。妙高型姉妹はもとより、那珂に神風、最近はガンビア・ベイもその被害者だ。ちなみにリシュリューはされないのでちょっと悲しいらしい。
そんなわけなので、況や恋人の提督をや、ということだ。長時間ハグしてやらないと、段々とそわそわしはじめ、次第に提督にハグさせるように誘導をはじめ、しまいには堪えきれなくなって自分からハグし始める。
まぁ、と言っても何かの迷惑行為ではなく純粋なハグだから、基本的に提督側に否応はない。むしろ役得である。むろん、時折ハグしてやらずに苛めたりするのだが、最終的には折れるのが日常風景だった。――普段ならば、だが。
さて、8月9日はハグの日である。というわけで、本来であればハグし放題の日、そのはずだった。だが、こういう書き方をしているということはそうではない。何故か。
答えは単純。8月と言えば夏である。日本の夏なのだからファッキンホットである。ということはすなわち。
「羽黒ー、ハグするかー?」
「む、無理ですっ! 私さっき汗かいちゃって汗臭いから今は駄目って暑いです司令官さん暑いっ!」
こうなる。羽黒に振りほどかれた提督がショックを受けているが、どこか後ろ髪引かれるように離れる羽黒の姿を見ればさもありなん。何しろ今は妙高型正装である菫色――つまり日光を吸収しやすい長袖ジャケットに、下はワイシャツ。おまけにタイトスカートは黒色と来ている。夏は妙高型に特効があるのだ。
「妙高型にも夏服があればなぁ……」
「……残念ですけど、司令官さんが言うとあんまり説得力がないです」
しみじみと呟いた提督を、しかし羽黒が即座に否定した。というのも提督も汗だらだらだからである。
提督の服装は夏季第三種。すなわち、南方での作戦指揮でも耐えられるよう徹底的な排熱と薄さを誇る、とてもじゃないが儀礼には着ていけないような制服なのだが、ところがどっこいそれでも汗だらだら。どうも、これを着て誰かと抱き合うのは想定外らしい。当たり前だが。
「司令官さん、もっと冷房の温度下げませんか……?」
「やだ。ただでさえ上から節電の要請が喧しいし」
とはいえ、そんな返答にしゅんとしょげ返る羽黒を見ていると、上なんぞ気にせず冷房を強くするのも本気で検討のうちに入り始めた提督である。実際問題、今暑いからとハグするのを断念した回数は、既に今夏二桁の数に上っている。いい加減、羽黒もハグ欠乏症に悩まされているようだし、本音を言えば提督もちょっと飢えを感じつつあった。
「致し方無いか……」
提督のつぶやきに、羽黒の顔が少し晴れた。提督が苦笑いする。ま、この笑顔が見れるんならば、やっぱり上なんか無視するに――。
「!? そうか! 上着なんか無視すれば良いんだ! 簡単なことじゃないか!」
「……へ? し、司令官さん? 何でこっちににじり寄って来るんですか!? ちょ、やめ、何でボタン外して、きゃあ!?」
そういうことになった。
「お馬鹿さんなんじゃないですか!? 司令官さん、お馬鹿さんなんじゃないですか!?」
「はっはっは、褒めても何も出ないぞ」
「どこをどう切り取れば今のが誉め言葉になるんですかぁ!」
胸と秘部を手で隠しながら、羽黒が顔を真っ赤にして叫んだ。執務室で全裸になればそりゃそうにもなるだろう。
「しょうがないじゃないか。冷房はこれ以上駄目。服を着ると暑い。なら、脱ぐしか方法がない」
と、堂々と言い訳をする提督も同様に全裸である。羽黒が真っ赤な理由の幾らかはこちらも含まれていた。
「だ、誰か来たらどうするんですか!?」
「案ずるな。遠征部隊は全員が長期遠征中。出撃部隊は完全休日。大淀さんはこんな日くらいしか休めないから羽を伸ばしに外出中。お前さんの姉さんズは昨日羽目を外して現在二日酔いで轟沈中。誰も来る要素ないからな」
羽黒が言葉に詰まった。実際、提督の言う通りで、執務室に人が来ることはまずありえない。
「だからって、その」
羽黒がちらちらと提督を見た。正確に言えば、提督ではなく、『提督』と鍵かっこを付けるべきかもしれない。具体的には、提督のそそり立つナニである。
「そ、そんなことになってる人とハグっていうのは、ちょっと抵抗があると言いますか」
「しょうがないじゃないか。裸の羽黒エロいし」
そりゃ、隠そうとする腕で押しつぶされ、隠しきれていないはみ出た乳房や、ちらちら見える乳輪、おまけにもじもじと手の向こう側で動く秘部を見せられてはそうもなる。
「大丈夫大丈夫。ハグするだけだから。他意は無いから」
「むー……」
羽黒が唸った。ここまであからさまで迷う方も迷う方だったが、そもそもここで拒否するようならば既に提督は土下座コース一直線であった。暑いから仕方なかったとはいえ、羽黒がハグに飢えていたのもまた事実なのだ。
ため息を吐いた羽黒が、とてとてと提督に近づいた。そのまま、提督に肌を重ねる。自らの腰が提督の腰、もっと言えばその付属物にくっついて、びくりと身体が震えた。
「うぅ、司令官さんの、脈打ってる」
と言いつつも、羽黒の腕がおずおずと提督の背中に回された。すべすべなきめ細やかな肌が提督に吸いついてくる。提督がお返しとばかりに羽黒を抱きしめてやると、暖かな吐息が提督の肌をくすぐった。羽黒の腕の力が強くなる。何のかんのと言って、やはりハグはしたかったらしい。
「司令官さん、あったかい――って、あの、暖かい通り越して、やっぱり暑くありませんか?」
とはいえ、ハグ成分を補給すればすぐに正気に戻ってしまうのは夏である以上仕方がないが。
「まぁ、ちょっと暑いが服着てるよりはマシだし。それにほら、こう羽黒の汗が俺にも垂れてくるから気化熱が二倍で痛い痛いやめてマジで痛い」
「司令官さんの馬鹿っ! 離れますっ! はーなーれーまーすー!」
乙女の尊厳を犯された羽黒が大暴れするのを、提督がいなした。人間にも抵抗できる程度の力なので、実質じゃれ合いと言ったところである。なお、二人とも、そんなことをした方がよっぽど暑くなることに気が付いたのは、全てが手遅れになってからである。
「司令官さん?」ちょっと髪に汗を滴らせた羽黒が、それまでよりも声を低くした。マジギレの3歩くらい前である。
「すまん、ちょっと調子に乗った」提督が素直に謝った。そのまま、すぐそばの机を漁る。「だがちょっと落ち着け。こういう時のために、明石に作ってもらった冷却材があるんだ」
「冷却材、ですか?」
羽黒が怪訝そうに首を傾げた。何しろ、提督が持ったのは500mlペットボトルと同じかそれ以下くらいの大きさの、明らかな液体ボトルだったのだ。それが冷却材、と聞いても正直想像できなかった。
「そうだとも。明石が考案した冷却ジェルでな。機械の潤滑油を参考に作ってもらったんだが、こういう時に効果覿面らしいからな。というわけでだばぁ」
「ひゃ、冷たっ!?」
羽黒が悲鳴を上げた。その透明で冷たくてどこかぬるぬるした粘性のある液体が、提督と羽黒の間に潜り込んでいったからである。というか、これって。
「あの、司令官さん」
「なんだ?」
「冷却ジェルって、これ明らかにローションじゃないですか!!」
「失敬な。確かに透明で冷たくてどこかぬるぬるした少し香りづけされた液体だが、冷却性能は本当に高いんだぞ! 副次効果としてちょっと潤滑が良くなるけど」
「やっぱりローションじゃないですか!!」
羽黒がやいのやいのと提督の腕の中で暴れ、ぬめぬめとしたロー……げふん、冷却ジェルで滑った。割と激しく動いたつもりなのだが、熱を吸ったはずの冷却ジェルはそれでもひんやり感を維持しており、案外と快適なところが余計に羽黒をいらだたせた。そんな気持ちを紛らわせるように提督を振りほどこうと、大きく力を入れ――。
「ひゃんっ!?」
胸が提督の胸板にこすれた。頂きに感じた刺激に、思わず羽黒が口をつぐむ。ちら、と伺うように提督を見れば、良い笑顔がそこに鎮座ましましていた。
「羽黒、なんか乳首立ってるけど?」
「こ、これは、その、ロ、ローションが冷たくて、あんっ!?」
「冷却ジェルな」
提督が羽黒の屹立した蕾を押しつぶすように胸を張る。本来であれば柔らかな乳房に埋もれるはずだった羽黒のそれは、しかしジェルのお陰で快感を発しながら提督の肌の上を滑っていった。勢いよく滑ったそれにつられて、羽黒の美乳がぷるんと揺れる。じわじわとした快感に、羽黒がゆっくりと息を吐いた。
「どうも、冷たいから起ってるとも思えないんだけど」
「うぅ~……司令官さんのいじわる」
真っ赤な顔がそう文句を付けた。もちろん、それで止まるわけがないことは、提督も羽黒も理解の上だ。
提督が胸板を動かし、羽黒の乳首をこしこしと擦る。哀れにも真っ赤に腫れあがったそこは、羽黒の脳へと電流のような快感を送り続けた。熱っぽい息は、冷却ジェルへと熱を吸い取られて、心地よいそよ風となって提督へと降り注ぐだけである。
「んっ、ふぁ、あんっ、んんっ」
ぎゅっと提督を抱きしめながら胸を動かす羽黒が、ついに我慢できなくなったのかもじ、と股をこすり合わせた。既に冷却ジェルと、羽黒由来のジェルでぬるぬるとしていたそこが、抵抗なくもどかしい快感を羽黒に与える。と同時に、何か固くて熱いものが羽黒の下腹部をくすぐった。
「んあっ!? 司令官さん、何で、もっと熱くなって」
「そりゃ、羽黒が可愛いから」
「やんっ!」
乳繰り合うたびにそんな反応をされれば、提督が辛抱足らなくなるのもうなずけると言うものである。
「……こんなにされたら、また暑くなっちゃいますよ?」
「それは困るなぁ」
全く困ってい無さそうに笑いながら、提督が羽黒へと例のジェルを手渡す。容器にはまだ半分ほどジェルが残ったままになっていた。羽黒が頬を膨らませるが、提督はどこ吹く風だ。もちろん、羽黒が折れたのは言うまでもない。
「んっ、ふぅ」
冷却ジェルが、二人の腰が密着しているあたりに継ぎ足された。冷たい感覚が秘部全体を覆い、漏らしたかのような感覚に襲われた羽黒が頬を更に染めた。
「よくできました」
「あんっ」
提督が羽黒の腹の上で肉棒を振った。自身を何度も愛してくれた提督自身が肌をくすぐる感覚に、羽黒が得も言われぬ快感に襲われ、艶めかしい吐息がとめどなく溢れた。内またを擦るのがやめられず、いつしかそれに引きずられた腰の動きが提督の肉棒を刺激する。提督が思わず息を吐いた。羽黒と目が合う。悪戯っぽく笑われた。俄然火が付いたのは言うまでもない。
「あっ、ふぅ、あんっ、あっ、しれいか、さんっ、これ、切ない、ですっ」
胸への刺激も復活させた提督が、羽黒と二人でぬっちゃぬっちゃとジェルに粘っこい、しかし何故か不快ではない音を奏でさせていると、瞳を潤ませた羽黒がそう訴えてきた。
「司令官さんの、あんっ、おち、んっ、おちんち、んんっ、凄い、のに、あんっ、もどかしくて、これ、もっと、欲しくてっ」
言いながら、羽黒の腰がくねる。気付けば秘部の周りだけ、熱を奪い取ってくれるはずのジェルは、熱っぽいジェルにとってかわられているようにも思われた。正直、提督もそろそろ限界だった。
提督が羽黒の背中に回していた腕を、臀部のあたりまで下げる。ぬちゃ、とジェルが糸を引いて滑り、その快感に羽黒がぞくぞくと腰を震わせた。形の良さと大きさのバランスが限界まで保たれた羽黒の尻を持ち上げる。尻の割れ目にいつの間にかたまっていたジェルが、ぬちゃぬちゃとこれまた糸を引いた。白く形の良い尻房が歪んでいる姿を想像しながら、羽黒を執務机に寝転がらせる。
「…………んっ」
羽黒の割れ目に肉槍をあてがうと、控えめなくぐもった声の後、太ももが大きく開いた。それだけで、濡れそぼったそこは、簡単に提督を飲み込んでいく。
「あ、んっ! すべ、って、すぐに、入ってくる」
「ジェルはもう、関係ないようだがな」
「やぁっ」
聞きたくない、とばかりに羽黒がそっぽを向くが、当然提督はそんなことは許さない。大きく膣内へと穿ち込む。
「あんっ! あつ、い」
「羽黒の中も、な」
言いながら、腰を二度三度と動かす。が、少し違和感があった。羽黒が、表情を少し歪めながらぼそりと呟いた。
「しれいかんさん……ちょっと、寒いです」
「ジェルが効きすぎたか」
どうも明石、ローション開発の口実でしかない冷却ジェルにも全力を投じたらしい。普通に涼しい、と通り越して少し寒い。それが、先ほどまで気にならなかったのは、つまり。
「司令官さん、その」羽黒がもじもじと提督を見た。「あ、温めてくださ、ひぅん!!」
むろん否応があるわけもない。羽黒を即座に抱き起こした提督が、そのまま繋がったまま抱きかかえる。羽黒も羽黒で、腕と足を提督に絡ませた。
「しれぇかんさん、あったかい」羽黒が快感に蕩けた顔でふふと笑った。
「羽黒もな」
「ふぁ! あんっ! ふか、いっ!」
腰を少しゆすっただけで、ぐずぐずになった羽黒の膣内は、提督を奥の奥まで迎え入れた。お互いに感じる暖かさが、その快感を助長する。
「しれいかんさんっ! きすっ、キスしてくださいっ」
もはや少しの寒さすら許容できないのか。がっちりと提督を抱きしめながら、更なる温もりを求めて、顔の目の前で羽黒が哀願する。もちろん、返答を言葉で行うほど、提督は気が長くはない。
「んっ、ぢゅる、じゅ、ちゅ」
提督と羽黒の舌が絡まった。お互いにお互いの全てで羽黒と抱き合うたびに、膣の締まりが良くなっていく。偶然、羽黒の舌、その裏をなぞり上げるのと、羽黒の乳首とクリトリスが提督の肌を転がったタイミングが一致した。
「んっ、ぷぁっ! んぁああああっ!!」
羽黒が軽く潮を噴きながら身体をのけぞらせた。いっそう膣内が締まり、そこを提督のものが擦り上げた。お互い、限界を突破するには大きな快感に過ぎた。
「イっ!? ふぁ! ああああああああああああんっ!!」
羽黒が目を見開き、身体を痙攣させる。快感の大きなうねりを二度三度ぶつけられるたびに提督にしがみつき、その温もりを感じ取ることで何とか耐え抜いた。途端に力が抜ける。提督が、こちらも虚脱感のある身体に鞭打って、苦労して羽黒を執務机に横たえた。自身もそこに覆いかぶさるように倒れ込む。
「ぁむ、はむ、ん、ちゅっ」
ほとんど本能で口づけを交わし合ってから、ようやく余韻が治まったらしい。羽黒が口を尖らせた。
「結局、汗かいちゃったじゃないですか」
そら、二人して運動すれば当たり前だった。ジェルやら汗やらでべったりの肌を仕方なさそうになぞりながら、羽黒がため息をついた。
「身体も机もベトベト……どうするんですか? これ」
「どうせ汚れちまったし、もう一回戦?」
羽黒が困ったように笑った。満更でもないらしい。提督が腰を浮かせて、羽黒の中で動こうとし――。
「うー、羽黒ー? お姉ちゃん、ちょっと二日酔いが抜けきらなくて、お粥作って貰えるとうれしいなーなん、て、あ、あら?」
執務室の扉から、着衣と頭髪の乱れた足柄が顔を出した。その顔は青白く、どうやらセリフの通り二日酔いで思考が回っていないらしい。たっぷりと全裸の提督と妹を観察してから、やっと顔が真っ赤になった。
「お、お邪魔したわね。ごゆっくりー!」
「ま、待って! お姉ちゃん待って! これはごか、いや、誤解じゃないけど、とにかく待って!!」
「あ、おい羽黒! 服! 服!」
この後、足柄を追う凄惨な鬼ごっこが生起し、結局皆で妙高に叱られたのは言うまでもない。
羽黒ちゃんはぐはぐ