「提督。失礼致します」
執務室の扉が開かれたのは、そろそろ夜から深夜へと移り行こうという、そんな時間の事だった。尤も、提督にそのことを咎めたり、或いは逆に驚いたりと言った様子は一切見られなかった。そのような段階は、遠の昔に通りすぎていたのだ。
「今日もか」書類をめくる手を休めること無く男が言った。昨日もこのような出来事があったおかげで、まだ仕事が残っていた。「最近毎日だな。俺としては、まぁ言うことはないが」
山城は答えなかった。彼女にしては早足で、ただただ提督との距離を詰めるだけだった。男が首を竦め、書類から手を引いた。素早い反応のようにも見えるが、実際にはこれでも少々出遅れていた。几帳面に整理された執務机上の所定の位置へ、印章やら万年筆やらを仕舞い終える前に、山城はもう男の背後に着いてしまっていたからである。
「仕事は終わったことにしたよ」
そんな山城を気にもとめず、ただただマイペースに仕事終わりの作業をしてから、やっと提督が伸びをした。振り向くことだけはしない。山城は黙ったままだった。
「何だ、何もしゃべらないで」提督が何かを嘲るように笑った。「それとも何だね? いよいよ、君の「姉さま」に這いよる虫を刺す気にでもなったか? なら、俺も黙っていたほうが都合が良かったかな」
それでも山城は黙ったままだった。黙ったまま、提督に背後から抱きついた。山城の服が、山城と提督の服が、山城と提督の肌が、髪が、何もかもが擦れる音が、ごく至近距離から鼓膜を揺らした。曲がりなりにも戦闘に耐えるだけあって普通よりは固い布地の向こう側に、やわらかな感触がした。
「違います」
山城は、おずおずと、だが容易には抜け出せないくらいの力加減で提督を抱きしめた。
「絞殺にするのか? 血は出ないが、その他でいろいろと汚れるぞ?」
「お願いします」山城は男の軽口を無視しながら囁いた。「抱いて、ください。何時もみたいに」
「わかった」
彼は、ライターの火を貸すような気楽さで頷いた。足に力を入れると、上等でよく整備された椅子は滑らかに回った。どこか気まずそうにこちらを見つめる山城の瞳があった。頭に手を伸ばし、そのまま引き寄せる。唇に吸い付いた。
「んぅ」
山城の少々乾燥していた唇を舐め、開かれてこそいないものの固く閉ざされているわけでもない割れ目に舌を入れた。上唇と歯茎を舐めると、歯列が開くのがわかったので、そのまま更に奥へと突き進む。山城の舌が、すぐに彼のものを迎え受けた。
「ちゅ、ん、ふっ」
軽く絡め、唾液を啜る。薄目を開けると、そんな程度の動きにも、山城は必死でついてこようとしていた。気分が良くなったのを自覚し、寂しげな笑みを浮かべた彼だったが、すぐに舌を抜いた。口も離す。
「あの」
唇を抑えながら、山城が怯えたように提督を見た。男は真意を誤解しなかった。後頭部に回したままだった手を上へと動かし、山城の頭を優しくなでた。
「淫乱が」提督が笑った。今度は自分から顔を近づける。「一度目くらい、抑えるということもできんのか。なら、望み通りにしてやる」
山城は一切抵抗しなかった。先程よりは潤いを増した唇が押し付けられ、間髪入れずに舌がねじ込まれた。今度は、すぐに山城の舌があった。
「ぢゅ、んっ! んんっ! んじゅ、る」
軽く己の舌先で山城の舌を弄んでから、提督は力を抜いた。弄ばれていたはずの山城の舌が、それをすぐにかっさらっていった。指摘して遊ぶのもいいかもしれないが、暫くは必死そうな山城を楽しむか、と彼は手に力を込め、接着を強固なものにした。必要はなさそうだったが、気持ちの問題だ。
「ん、んんっ!?」
そうやって暫く交歓を続けていると、不意に山城の呻きに怪訝な色が混じった。呼吸が苦しくなったというのもあったのかもしれないが、非難がましい視線が向けられていたから、おそらくそちらのせいなんだろうなと男はぼんやりと思った。
「ぷはっ! はぁ、はぁ、ひどい、です。私だけ馬鹿みたいじゃないですか」今度は涎を拭くために口元に手を伸ばした山城が、ボソリと漏らした。
「求められるのは気味がいいからな」提督は山城の口元に手を伸ばした。今度は、涎を拭いてやるという名目で、唇の感触を手で味わうことに決めたらしい。「もう一度しても良いぞ。大歓迎だ」
「提督は」
唇に触れる提督の指を、蚊を払うように除けてから山城がジト目を作った。「私なんか求めるつもりが無いですものね。ほんっと、不幸だわ。やっぱりけ、ちょ、あの、何を」
山城がぼやきは中断させられた。ロマンチックな横槍ではなかった。むしろ、悲しくなるくらい露悪的なものだった。強引に山城の手を掴んだ提督が、自らの股にそれを押し付けたのだった。
「求めるつもりがない、なんてことはないつもりだが」提督が手を込めると、いきり立った物に、布越しに温かいものが触れた。図体や艤装に反して怖いくらい繊細な山城の手には、やはり直に触れてもらうほうが気持ちよかった。
「変態」山城は男を睨みつけた。
「その変態に迫ってきたのがどこの誰だったか、教えたほうがいいかな」男は人の悪い笑みを浮かべたままだった。
数秒間、視線が絡まってから、折れたのは当然というべきか山城だった。ため息を深々とつくと、指先が伸びた布地をいたぶるように叩いた。目が細められた。
「良いです。わかりました。貴方がもう少し人並な情緒を身につけるまで、我慢することにします」
諦観に、抑えきれない何かを乱雑にぶち込んだように、山城は提督に枝垂れかかった。今度は本当に軽く唇を重ね、男はおもむろに立ち上がった。山城は黙ってそれに追随した。ふたりとも、椅子があれば済むような行為でおさまるつもりはないのだった。
「欠陥戦艦と呼ばないで」
この半年、山城が来るようになってから提督が私費で購入した布団は、高級な羽毛布団だったのだが、彼の自室に在っては無残なものだった。どうせ後に致す行為が行為であるので、まともに敷いてある試しがないのだ。今宵も、その高級感が無駄になる営みに望む男女によって、早々に踏みにじられてしまった。
「提督、今日は」
「俺が脱がせる」
衣服だけは海軍軍人らしい几帳面さできちんと仕舞った彼は、優しい感触を確かめるよ
うに布団へ触れている山城に対して、そう傲岸に言い放った。
「お前にやらせるとまどろっこしいからな」
「もう少し女心を理解してください」山城が顔を赤らめながら膨れた。
「これでもわかっているつもりなんだが」
提督が、頭を掻きながら向かい合うようにして布団に座った。顔が下衆じみた笑みに変わっている。「俺を理由に出来るんだから、少しは羞恥心も収まるだろう。ん?」
「本心からそう思ってる人は、わざわざそれを口に出したりしません」
「バレたか」
頬を赤らめて抗議する山城を無視するかのごとく、男は衣服に手を伸ばした。山城の体温を吸ったそれは、ほのかに温かい。いつまでも触っていたって飽きないだろうな、と男はぼんやりと思った。が、衣服の内側から伝わる、熱いくらいの熱源が、彼にとどまることを許さなかった。
「よっと」
手慣れた様子で男が山城の上着を剥いだ。半年の経験は、男を山城の特徴的な衣服の専門家へと育て上げるのに十分すぎる時間だった。圧迫から逃れるように、たわわに実った果実が男の前に現れた。下着は着けられていない。何かを誘うように、桃色の先端が揺れていた。
「綺麗だな」
提督が、なんとも素っ気ない様子で呟いた。実際、もはや山城の裸体にそこまでの感慨は抱いていないのだった。もちろん、綺麗だというのは完全なる本心であり、嘘や偽りを紛れ込ませる余地さえないものだったのだが、如何せん、『抱いてほしい』と山城に抱きつかれてからもう半年である。絶対的な価値判断と相対的な価値判断は、いつだって自覚なく両立しているのだ。
「尻を上げろ。下も脱がす」
「女性を全裸に剥くのは、さぞ楽しいんでしょうね。動作が素早いわ」山城の口が尖っていた。
「俺としては半裸のほうがそそるんだがな。量が多いせいで、下着が汚れて不幸だわ、なんてぼやいてたのは誰だったっけ?」
山城が赤くなった。今さらだろうに、と男はそんな紅潮した頬を舐めながら、スカートに手をかけた。尻は浮いていた。
「全部脱がされましたよ。これで満足ですか?」
山城がふいと顔を背けた。手と腕で胸と股間を隠しているさまが、とても絵になるな、といつものように男が笑った。無論、それだけで済むとほざいている小娘を教育する気でいっぱいである。
「まさか、本気で言ってるんじゃないだろうな」
男が山城の腰に手を回した。そのまま抱き寄せると、先程以上に柔らかさが伝わってきた。性感を求めず、ただ単に肌と肉の感触を楽しむと、山城は見られていた時以上に赤くなっていた。
「てぇとく」
気づけば、山城は完全に男へと身を委ねていた。声からはっきりとした輪郭が消え去っている。再び口に吸い付いた。すぐに飛び出してきた山城の舌を自らのもので捕まえ、絡め合わせると、んふぅと満足そうな鳴き声がした。
「最高だな、山城」
がむしゃらに貪りつくというよりは、次の段階への確認といったような接吻だったから、すぐに離れてもあまり名残惜しさはなかった。山城の唇についた涎を拭ってやりながらそんなふうに言ってやると、少女は目を閉じて体を震わせた。そのまま、指を顎へと這わせる。顎から喉へ、喉から鎖骨へ、そして、乳房へ。
「ひゃん」
「感度がいいというべきか淫乱というべきか、迷うな」
「淫乱じゃ、ないです」
山城は、提督の指を柔らかく受け入れつつある乳房から視線を逸らしながらそんなふうに言い訳したが、少なくとも指一本が触れただけで鳴く程度に敏感なことだけは間違いない。さわさわと、焦らすように張りと暖かみを楽しむ、すぐに山城の息が上がり始めた。
「変態。一思いにやればいいのに」
「なるべくなら楽しみたいからな。まぁ、機会は山ほどあるし、お望みなら事務的にやってみても良いが」
「望んでなんかないです」
山城が文字通り頬を膨らませた。平素の突っかかり様と物憂げさからは想像できないようなそんな振る舞いが、彼は好きだった。
「なら良かった」
努めて下卑た笑みを浮かべながら、男は焦らすのを再開した。山城が、身をくねらせながら提督に抱きついた。殆ど反射的に、軽く唇が合わされる。
「そろそろ、乳首を触っても良いかな? ちょうど良さげに勃ったようだし」最後に山城の唇を一なめしてから、男がとぼけたように言った。
「いちいち聞かないでって、何時も言ってるじゃないですか」
山城が心底イヤそうに提督の手を見つめた。彼女自身が提督の責めのせいだと信じている体の震えによって、双丘の桃色が揺れていた。
「では喜んで」
「やんっ!」
返答を待つどころか、自分で言い終わる前に男は山城の突起を弾いた。思わず山城の体が跳びはねてしまった隙を見て、腰に回していたもう片方の手を滑らせ、胸へと持ってくる。そのまま、丁度良い大きさとなった両方の蕾を、丁寧に、しかし思い切りつまみ上げた。
「やぁ! いきな、強、いぃっ!」
抗議の声も、嬌声に紛れてはただの催淫剤だった。押しつぶすように指の中で転がすと、その乳房ほどではないとはいえ、思いのままに硬いものが動きまわり、山城を苛んだ。抱きつきが強くなり、牝の切なさが肌から男に伝わった。
「触り心地が良い、というか、つまみやすくなったな。半年のうちによく育ったものだ」
「そんな、ことは」
「あるよ」
誂うように言うと、山城が男をじっと見つめてきた。瞳が揺らいでいる。快感は、もちろんその理由の大半を占めるだろう、と男は自負していた。けれども、それ以外のものにもまた、男はすぐに気付いてしまった。少し失敗だったかな、と蕾を弄る手の力が増した。
「あん」
「俺はな、山城」男は耳元に口を添わせた。いい香りがしていた。「助平なお前の体が好きだと、そう言いたいんだ」
耳たぶを少し喰んでから、男は元の位置まで上体を起こした。山城は相も変わらず男を見つめ続けていたが、その表情はジト目と口元の歪みが強調されたものへと変わってい
る。頬が性感以外のもので赤らんでいた。しばらく見つめていると、馬鹿じゃないですか、と山城の口が吐き捨てるように動かされ、そのまま俯いてしまった。
「本能だよ。仕方ないじゃないか」提督が手を休めずに弁明した。
「それは失礼しました。じゃあ本能的に馬鹿なんです」
「本能で動いたら誰だって馬鹿になるぞ」
「うっさい」
こつん、と山城の頭が男の胸板を小突いた。アホらしい会話を続けるのが嫌になったらしい。そのまま、ゆっくりとだが、連続して叩かれる。ふと思い至って、乳首をこね回す間隔を変えてやると、びくりと体が震えるのにあわせて胸板が叩かれる感覚が変わって、中々に小気味よかった。
「山城」しばらく胸板に当たる髪の感触を楽しんでから、提督が胸を弄る手を止めた。
「何ですか?」
「頭突して遊ぶのが飽きたらでいいんだが」
「遊んでません」
「じゃあ、楽しんでくれてるのかな? 人並み程度の筋肉はあるし」
「違います!」
「なら良かった」顔を上げ、赤くなって否定してきた山城を笑って受け流しながら男が続けた。「顔を、近づけてくれないか」
山城は頬を膨らませてから、男の言葉通りにした。提督が、引き寄せられるように吸い付いた。
「んふぅ」
安心したような吐息が、男の口腔を経由して抜けていった。先ほどとは異なり、今度は舌でちょっかいをかけてやると、ただでさえも山城の体から抜け落ちていた力みが、その痕跡すら見えなくなった。男の手にかかる乳房の圧力が増した。
「じゅ、む!? ふぅう!?」
故に、男の手が強く乳首を刺激してしまったのも不可抗力だった。唇が、山城の快感を直接脳髄へと伝えてくる。気分が良くなり、そのまま不可抗力を続けると、山城の舌が本人の意思によらず飛び跳ねた。
「んぅっ! じゅ、るっ。ちゅっ!」
人差し指で撫でるように、それに親指を加えてつまむように、そのまま弾くように、あらゆる刺激に、彼の女は性感を喚起する物を全力で送りつけてきた。もはや刺激すらいらない。薄目を開けば、必死に自分の顔へと吸い付こうと努力する健気な姿があるのだから。
「ぷ、はぁ」
たっぷりと楽しんでから、唇を離す。銀の糸がかかるような粘液は、山城が全て舐めとられてしまっていた。
「口を吸われながら胸を思うままに弄られた感想はどうだ?」
山城は男の胸板に顔を埋めて応えた。荒い吐息がくすぐったい。山城の気が済むまで、その黒髪に手をやった。さらさらとした髪が自分の手に巻き付く感覚は、いくらやっても飽きないものだな、と思っている。
「提督は」顔を埋めたまま山城が身じろぎした。少し強めに抱きしめてやった。「その、良かったですか?」
「助平な体は好きだといったはずだが」
山城の体が再び弛緩した。性感によるものではなかったが、性感に限りなく近いものではあった。提督が山城を抱く力が強くなった。
「提督」山城が顔を上げた。喜色ばんだ顔で男を見上げるその瞳は、どことなく揺らされていた。「なら、昼間の分まで使ってくださいな」
提督は答えなかった。代わりに抱いていた方の腕を動かし、山城の柔なかな肢体の感触を楽しんだ。山城が楽しそうに喘ぐ。どうやら、誤解してくれたようだった。
「山城は、俺好みのやつだよ」男が言葉を選んだ。山城の肉を弄んで軽く鳴かせているが、目には理性の色しかなかった。
「はい」
「だから抱く。それ以上でも以下でもない。頼みも無碍にはできないしな」
「迷惑ですか? やっぱり」
「俺はお世辞にもいい男ではないが、好みの女性を抱いて迷惑と思うほど屑ではない」
山城は無言で男を見つめたまま、手を自身を弄る提督の手の上に重ねた。理性が山城の肌に挟まれる感覚に負けそうになるが、何とか踏みとどまった。
「何時だっていい女だよ、お前は」
「……お世辞はべつにひゃうっ!」
「世辞なわけがあるとでも? 胸と口でこんなに濡らしておいて」
提督は下卑た笑顔を貼り付けて山城の秘部を撫でた。しかし、にじみ出る愛液を好ましく思うのは嘘ではない。手先の感覚が即座に顔に出るようにした。
「挿れやすそうだな、山城?」
「ち、ちが」
「よく見せてくれよ」
提督はその上体ごと山城の鬱屈した思いを捨て置き、下半身へと体を動かした。薄く毛の生えた渓谷が目の前いっぱいに広がった。今すぐにでも水音を立てそうなくらい潤んだそこが、もぞもぞとした足の動きで歪んだ。
「いい匂いだな」男が獣欲にすべてを任せつつ言った。「本当に俺好みだよ」
山城は脚を動かすだけだった。体毛が液体を細かく弾き飛ばして、ますます男好みな空間が出来上がった。流石にこれは意図してやってるわけではあるまい、と男が苦く笑った。だけれども、本能はそこまで賢くはなかった。
「どれ、もう少し近くで堪能しようか」
山城はぴくりと震えただけだった。つまりは、早くしろという催促だ。ひどい解釈だったが、あながち間違いというわけでもなかった。提督が鼻先を膣口に潜り込ませた時、抵抗のようなものは一切なかった。
「いい格好ですね」視界の外から山城の嘲笑が飛んできた。とても甘い嘲笑だった。
「犬みたいだろう?」
「それ、自分で言うの?」
「俺が自覚もない馬鹿だとでも言いたいのか」
「ええ」
山城の返答に何も込められていないのを感じて、初めて単純に苛ついた男が顔を上げた。あん、と素直な声を漏らした山城の肉芽にちょうど鼻が乗る格好になる。山城がこそばゆそうに身をよじった。
「今更、んっ、濡らさなくても」
「逆だ。多すぎる。布団が汚れる。洗濯担当の目を盗んで洗う惨めさを少しは想像してくれ」
「提督」もごもごという口の動きで膣肉をもみほぐされたからか、山城が期待に濡りたくられた声で男を呼んだ。首筋を、あの繊細な手が這ったのを感じる。つまりは準備万端というわけだ。
男が山城を吸った。最初から舌もねじ込んでいる。容赦や探りを入れる段階は大昔に過ぎ去っていたから、淫猥な音が壁に吸い込まれていった。防音にしておいてよかった、と男は過去に幾度と無く感謝していたくらいである。
「ひゃぅっ! そこ、もっとぉ、されると、お汁、んんっ!」
おまけに、強請っているのか抗議しているのかよくわからない山城の喘ぎは、おそらく世間一般的には大声に分類されそうなシロモノだったので、その他諸々の効果音と合わせて理性などすぐに覆い隠してしまいそうだった。
気づけば、山城の手は提督を自らの股間へと強く押し付け始めていた。快感で力が抜けてさえいなければ、きっとぬけ出すことはできないだろう締め付け具合だったし、そうでなくとも抜け出したくはなかった。自らを蕩けたようなほぐれ具合で迎え入れるそこは、男までとろけさせてしまいそうな具合であった。だから、顔を離すのは一苦労だった。
「おい山城。危うく溺れかけたぞ」男は何に、とは言わなかった。ただ、顔に付着した液体を手で弄る様だけが言い訳じみていた。
「すごい糸の引きだな。納豆のようだ」
「デリカシー、っ、無さ過ぎですっ」どこか寂しげな声で山城が詰った。
「好きなんだよ、納豆。毎日食らいたいね、できうるならば」
「馬鹿、じゃないですか」
山城の応答があんまりにも喜色ばんでいたので、提督は一瞬だけ顔を曇らせた。気づかれないように、直ぐに情欲に満ちた笑みで覆い隠す。幸い、すぐ目の前で妖しげにてかる雌孔を見れば容易いことだった。
「我ながらいい例えだと自負してるんだがな。ほら」
「やんっ」
「どちらもかき混ぜた方がいい具合になるだろう?」
山城の孔は、男の人差し指をするりと咥え込んだ。ひだをかき分けるように奥へと進む。山城が、指が少しずつ奥へ進むのにあわせて身を捩らせた。胸が大きいから、提督の視界からだとよく映える。
「今更」山城が揺れる双丘の向こう側でぼやいた。
「お楽しみは最後までとっておく主義でな」
「酷い男だわ」
「毎日執務室まで性交をしにやってくる輩と相性が悪いことだけは確かだな」
山城が押し黙った。自覚は人並み以上にある女だった。さてどうしたものかと男が思案する。てっきり反発するものと踏んで、お前をだまらせるためにやったと言い訳するつもりだったんだが。
「ひぅっ!?」
「しかしこの濡れ具合なら、たしかに酷い男だな。謝るよ」
膣口が、もう一本指が入り、しかも慎重にかつ経験則が許容する範囲内まで滅茶苦茶に動かされたので、品のない水音を立てた。もちろん、山城の大声で、間近に聴く提督ですら聞き逃しそうになっているが。
「てぇとく、それ、だめっ! だめぇっ!」
「指は今更なんだろう? これくらいどうということはないのだろう?」
「そこ、までは、言って、あんっ!」
山城の抗議はすぐに乳房と、それから手足の乱れへと変わった。素直なものだと言葉責めでもしたかったが、辛うじて残っている、男がどのようなことがあったとしても機能しているべきと判断している理性が押しとどめた。仕方ないことだ。残念とは思えなかった。が、欲求不満ではある。
「いかんな」男がわざとらしく声を上げた。「また溢れだしてしまった。吸い取らねば」
「あ、ま――んぅっ!?」
男が、自身を狂わせる液体を排出しているそこへと顔を近づけ、べろりと舐めとった。ねっとりとまとわりつくそれは、甘いように感じられた。やはり、男は狂わされているようだった。口を近づける場所さえ、定かではなくなっているように動き――。
「ちょ、ていと、くぅんっ!? そこ、お豆、だめ、いっぺんは、無理ぃっ!?」
秘芯を思い切り吸い上げた。間違いなく確信犯であった。
「あ、だめっ! だめだめだめっ! 来ます! くるから、離れてっ!」
「汚れるから吸い取るのだと言ってるだろう。そのまま出してしまえ」
「やぁああっ!」
山城の腰が突き出されたのと、提督の口が尿道へと移ったのは同時だった。潮の噴きだす音が、空気なんてまどろっこしい物など経由せず、直に男へと突き刺さった。悪くはない、というのが提督のいつもの感想だったし、今日もそうである。多分、これからも変わらないだろうな、と指の抜き差しを加速したことに怒っているのか、ぽかぽかと山城の拳が落ちてくる中ぼぅっと考えた。
「あ、ぅぅ、っく、ん」
「今日も大量だったな」
結局、山城の間欠泉が閉じたのはたっぷり10秒ほど後のことだった。顔を濡らした男から真っ赤になって目をそらそうとする山城には、それ以上の時間に感じられたことは確実だった。
「そそる姿だなぁ。ん?」
男が素直に言った。だらし無く四肢を布団へと沈ませ、上気した頬でぼんやりと見つめられてはそう思うほかなかった。羞恥とは違った赤が山城の頬に現れ、変態と罵られた。大部分の苦笑と、極微量の懸案が混じった顔で男が山城の太ももを撫でた。
「女の股を舐めてそんなに大きくするなんて」山城がやっと文章を発せられるようになった。「本当に浅ましいわ」
「これを見て勃たないのは、まぁ、誠に残念なことだろうと思うよ」
「ばか」
山城が上体を起こした。甘い罵倒に加えて、甘いにおいも一緒になって漂ってきた。男がそれに陶酔している間に、もぞもぞと体が動かされ、気づけば山城の顔が男の一物の直ぐ側にあった。
「何だ、我慢できなくなったのか」男が笑った。
「煩いわね。提督だってさっきそうだったじゃないですか」山城が頬を膨らませた。
「そうだったな。つまり、お前も俺と同じ穴のむじなというわけだ」男が山城の頭に手をやった。触り心地の良い黒髪だった。山城が軽く鳴いた。
「してくれ。俺も待ちきれないんだ」
山城は、男の言葉が終わるやいなや肉棒へと口をつけた。お預けが終わった犬のよう、という隠喩はきっと正しかった。
「ちゅ、ん」
接吻するように肉棒を唇に当てながら上目で提督の顔を見ていた山城が、ほころんだ笑みを浮かべた。提督の様子から、自身の奉仕が的確であると判断したらしい。言いたいことは山ほどあったが反論できることは無い男が、優しく頷いた。山城の笑みが大きくなった。亀頭が口腔に包まれたのは、同時だった。
「いいぞ、山城。日頃から口が達者なだけはある」
男が軽口を叩いたが、すぐにバツの悪そうな顔を浮かべた。楽しげに剛棒をねぶる山城には、そのような皮肉は通じないということを思い出したからだった。
その証拠に、とでも言うべきだろうか。山城の舌使いが徐々に大胆になっていった。鈴口のあたりだけだったのが、気づけばカリ首までが舐め取られていた。いや、舌使いだけではない。顔も、小さくゆっくりとではあるが、前後に動きつつある。程よい締め付けが与える心地よさ以上に、自分のものに夢中でむしゃぶりつく山城に、獣欲が刺激された。
「ぷはっ。てぇとく、気持ちよさそう」
そのさまを見て取られていたらしい。山城が蕩けた瞳で言った。気づけば、一物が山城の掌で包まれていた。口とは違う暖かさに征服欲が上乗せされる。下半身からもたらされる多幸感にあてられたのか、口で出すのは少しもったいないかな、と男は思った。
「もっと気持よく――ぁ、提督? あの」
思い立ったのと腰を引いたのは同時だった。山城の手は、ぬけ出す最後の一瞬まで心地よかったから、結果ほど潔かったわけではない。だが、山城はそうは思わなかったようである。楽しげだった表情が、一転して悲しげに曇っている。
「気持よく、なかったですか? ごめん、なさい」
「馬鹿を言え。腰が砕けそうだったぞ」男は素直に言った。こうなることは想定内だったし、実際にそうだったからすらすらと言葉が出てきた。
「でも」
「今日は口の気分ではなくなった」
「ひゃっ」
今にも泣きそうになっていた山城が素っ頓狂な甘い声を出した。言いながら山城の隣に腰掛けた男が、山城の尻をなでたのだった。
「相変わらず良い尻だな」
「あの、提督。まさか」
「ああ。尻で扱いてほしい」
山城がため息をついた。ジト目で睨まれたので笑って誤魔かす。山城が尻を這う提督の手を押さえつけた。
「汚いですよ」
「こういう時は、お前に汚いところなんか無いとでも言うべきか?」
「素直に止めてくれれば文句はありません」
「嫌だよ。勿体無い」
手が動かせなかったので、そのまま尻たぶを揉み込んだ。張りのある尻肉に指が沈み込む感覚が心地よい。山城が鼻にかかった声で鳴いた。
「少しだけなら」山城がそっぽを向いた。「その、してあげます。挿れるのは無しですからね」
「安心しろ。それは後日のお楽しみにするつもりだ」
「後日、ですか」山城が淋しげに呟いた。「それまでに飽きられなければ良いですけど」
男は応えず、ただ山城をひっくり返した。きゃぁ、と楽しそうな悲鳴があがる。そのまま山城に覆いかぶさった。
「柔らかいな」山城の背中で男が言った。背筋を刺激されたからか、山城が震えた。「ずっとこうしているというのもありか」
「提督が、そうして欲しいって言うんであれば」山城がおずおずといった風に切り出した。
「いや、いい」男が再び尻を揉んだ。やん、と鳴き声が出てきた。
「どちらにしろそろそろ我慢の限界でな。使わせてもらうぞ」
山城の尻房の間は、先程からの責めのおかげか愛液やら何やらで怪しくてかっていた。尻穴が何かを期待するかのようにひくついていたが、潤滑だけ確認して努めて無視する。乱暴しないつもりはないが、合意だけは忘れないことにしていた。そこに山城が居なければ意味のないことなのだから。
「っ、滑るな」
尻肉を押しつぶすように両手で挟んでから出来上がった隙間へと肉棒を挿れると、思ったような抵抗はなかった。元々キメの細かい肌と山城由来の潤滑油は、想像以上の効果が
あるらしかった。山城のぬくもりに包まれ、今にも果てそうになる。
「はぁぁあ」山城の体から力が抜けた。「提督の、暖かいです」
「火傷しそうだろう?」
「それは自惚れです」
「生意気な尻だ」
「ひぅっ」
山城に対する憤りというより、本能のままに陰茎を抽送する。山城は恥ずかしいのか真っ赤になっている。肉棒を包み込む暖かさが更にました。
「提督、気持ちよく、出来てますか?」快感というよりも、尻を使われているという異常な状況に興奮しているらしい山城が尋ねてきた。
「いちいち五月蝿いぞ」男が尻たぶにデコピンを食らわせた。山城が軽く鳴いた。「気持よくなければ遠の昔に止めている」
山城の菊門にモノが軽くこすれるたび、やわらかな肉が震えた。快感の震えだけではなかった。何時の間にやら、ごそごそと山城が動いていた。急所を布団へと擦り付けているらしい。
「てぇとくっ! んっ、もっと、激しく、ぁっ、使って」
はしたないと罵る余裕も、もはや失わつつあった。山城への配慮も同様である。甘えきったその言葉に反応できず、ただただ腰の動きを早めた。気がつけば、山城は手で乳首と秘豆を直接いじり始めていた。
「ぁんっ、んぅっ、いつでも、出してっ、ください、ねっ」
甘い息の合間合間に山城はうわ言のように言った。男の側を振り向き、肩越しに紅潮した頬を緩ませている。かなり無理な姿勢であったが、山城に気にした様子はなかった。押しつぶされた双丘の頂きで突起を捏ね繰り回すよりも、愛液ごと秘芯を布団にこすりつけて自分の存在を主張するよりも、今の山城にとっては男の様子を見るほうが重要なことであった。
「汗で吸い付くな」
男が呻いた。蠱惑的な尻肉が創りだした肉穴は、生殖機能さえ除けばもはや牝穴と大差はなかった。山城の意思どおり、男に食らいついて、離されようとしない。唾棄すべき優越感が膨張していくのが感じられた。
「山城、少し乱暴にする」
男が吐き捨てるように言った。全てが言い訳で、ただ本能に動かされているだけなのではないかという疑念は膨らむ一方だった。けれども、だからこそ山城から早く抜けだそうと言う思考回路はそれなりの説得力があった。
山城は、はいと一言言い終わる前に満面の笑みを浮かべた。下半身へと血が集まるのがすぐに分かった。この一瞬だけは、何もかもを放り出してしまうことにした男は、尻房を握る手に力を込めた。逸物へとかかる肉圧が倍増した。山城の自慰が、気持ち激しくなっていた。
「ていとく、の、おっきく、なってる!」
山城はついに腰まで動かし始めていた。制御された肉欲の中に、ほんの少しのイレギュラーが混ざりこんで、快感に咽ぶ山城へと溶けこんでいった。しっとりと張り付いてくる尻、期待するように見つめてくる瞳。それ以上、何が要るというのか。
「出すぞ」
山城が嬉しそうに頷いた。尻の割れ目が、きゅうと収縮する。柔らかな肉に雁首が埋もれ、そこをなめらかな肌が擦った。
「あ、あぁ、出てる、提督のが、お尻に」
自身の尻をかき分けて白濁が浸透していく様子に、山城がうっとりと声を上げた。男は、たっぷりと第一撃を撃ち尽くすまで何も喋らなかった。
たっぷり何十秒と余韻に浸ってから、男はゆっくりと肉棒を引き抜いた。よほどの量を送り込んだからか、一見むっちりと隙間なく閉じたようにも思われた臀裂から精液が一筋流れ出てきた。
「そんなに、良かったの?」
「ああ、最高だったよ」山城の問いかけに、男が頭を撫でて応じた。「どれ、もう少し使わせてくれ」
「やぁん」
赤と白とで彩られた臀部へと肉棒をこすりつけ、白濁を拭い去ると、媚びたような鳴き声が上がった。撫でる手に力が入った。
「お掃除なら、口でしたのに」
「前々から汚してみたかったからな。嫌だったか」
「提督にならば文句はないわ。使ってくださったのは提督だけだもの。こんな私を」
「ならお言葉に甘えようか」男が山城を遮った。胸を揉みながら、再度山城の体をひっくり返す。無理のない体勢になった山城に覆いかぶさり、口付けた。すぐに離されこそしたが、山城のとろけ具合から見るに、一番激しい交歓だったらしい。
「休まなくても?」
「休んで欲しいか? こんな有様で」
胸と秘所に手を這わす。乳首は大きく勃起し、股周りの布団はずぶ濡れだった。山城が膨れた。
「それは、いっぱいしてくれたほうが、嬉しい、ですけど」
「ならそうしよう」
硬さが全く失われていない男の物が山城のあそこへと付けられた。許可など貰う暇もなく、そうなって当たり前とでも主張するかのように吸い込まれていく。山城が気の抜けた嬌声で、肉槍の進み具合を証言した。
「尻をあんな風に使われてこれか」一度果てたおかげで余裕の戻った提督があざ笑った。「淫乱が」
「あ、ぅん、てぇとく、だからぁっ! っく、ぅ~、入、ったぁ」
亀頭の先端に硬い部位が当たるのと、山城の腕と足が男に絡みついたのは同時の出来事だった。膣肉からのそれとは異なり、艦娘としての力によってやせ我慢しなければ心地よいとは言えない圧力がかかった。
「おい、動けないぞ」男が不機嫌そうに言った。
「まって、もうちょっと、このままが良いの。お願い」
山城が切なそうに言った。男は甘んじてやせ我慢することにした。背中と尻に手を回し、背筋を撫でさすり、もう片方の手では先ほどの行為であふれた様々な体液を指にまとわりつけて、膣口の周りを軽く刺激した。意図せずして嬌声と共に山城の抱擁が弱まったので、気づかれないように息を吐いた。
「ていとく、暖かいです。安心します」
「の、ようだな」提督が両手の動きを激しくした。と山城が身を捩った。「中が震えてるぞ。あんまりされると暴発しそうだ」
「我慢、しなくて良いです。提督の好きなように」
「人を情けなくしたいのか。ええ?」
男が山城の中を小突き、やんと山城が笑った。何時かに大破して帰ってきて以来、昼には久しく見れていない心底楽しそうな笑みだった。
「てぇとく」男の耳が甘ったるくくすぐられた。「なら、動いてください」
「もう、良いのか?」少々名残惜しそうに男が聞き返した。
「言ったとおりです。お好きなように」
そうか、と男が素っ気なく頷いた。再び小さく動く。山城が鼻にかかった声で応じた。顔を男の胸板に押し付ける。山城の吐息が掛かるのをしばらく堪能してから、もう一度小さく動いた。山城が、また甘い息を男に吹きかけた。徐々に、そんな喘ぎの間隔が短くなっていった。
「尻はやはり良かったのか。何時もより滑りが良い」
男が山城の耳元に口を寄せると、首が弱々しく左右に振られ、顔が髪の毛でくすぐられた。腰の動きを少々遅くし、代わりに先ほどよりも大きく引きぬく。力が抜け始めた山城の脚は、それを食い止めることが出来ないようだった。
「ひゃんっ! ふか、ぁい」
すとんと突き入れると、再び体が締め付けられた。と言っても、先ほどのような捕まえようとする力ではなく、離れないように縋り付いているといった方が良い程度のものだった。むしろ、こんなに抱きしめられているにもかかわらず、男は急に山城が離れやしないかと不安になるほどだった。
無意識のうちに山城を強く抱きしめていたことに気づき、提督が山城から目を逸らした。が、距離が距離である。完全に視界から除外することは出来ない。ゆっくりと山城が頷くのが視界の隅で自己主張していた。ため息も出なかった。ただ、再び腰を引くのみである。
「やっ、ま、たぁっ!」
先程と同じく、いやそれ以上に滑らかに奥へと突き入れられ、山城の体が跳ね上がった。その動きにさえ快感を喚起されたのか、甘い息が静まるまでには更に時間がかかった。潤んだ瞳が遠慮がちに男を覗き見る。男が無言のままにまた腰を引いた。
「あっ、もっと、もっとしてっ! 使って、くださいっ!」
既に余韻を感じるようなまどろっこしいこともせず、さほど激しくはないとはいえ深い腰使いを連続し始めた男のこめかみがぴくりと動いた。すぐに戻る。別に、山城自身が嫌がっているわけではないことを思い出したのだった。けれどもどうにも釈然としない。山城に気にかけてもらうのは楽しいが、そのためにしているわけではないのだ。
「生意気言う余裕はまだあるらしいな」
「へ、ていとっ!? おっ! んぅっ!?」
山城の喉が快感の叫びに震えた。尻穴に指を突っ込まれたのだった。尻肉で肉棒を扱かされ、汗やら愛液やら精液やらでただでさえも滑りが良くなっていたそこは、膣肉をかき回されたことで更に柔らかくなっていたらしい。男の想定を超える勢いで人差し指が飲み
込まれ、痛いくらいに締め付けられる。それは、秘所の方も同じことであった。
「あ、ぐぅっ! だめ、りょうほうはだめっ!」
「気持ち良いらしいな。俺の方も凄いぞ」
「なん、またっ! かたくっ! やぁ、速くしちゃあっ!」
先程までとはまた違った味わいを見せる膣穴に、計算も何もなく本能を刺激された男はされるがままに動き出し、山城へと快楽の塊が叩きつけられた。口からはだらし無く涎が垂れ、あっあっと喘ぐことすらままならなくなりつつあった。
「くるうっ! くるっちゃう!」
「良いぞ。もっとよくなれ。それで良いんだ」
腰を打ち据えながら呻くように男が言った。山城がただただ首を横に振るうだけだったので、更に抽送のスピードを上げる。ついでに、涎を垂れ流す口へと吸い付いた。
「んぅ!? んひゅ、ぢゅぅっ! んっ!」
三穴を同時に嬲られ、山城が男へとすがりついた。男の方も、せわしなく動き続ける手は仕方ないとして、それ以外で可能なかぎり山城を支えた。山城から嬉しそうな鼻息が漏れだした。
「ぷはっ! はぁ、あんっ! てーとくっ! もぅ、イッちゃう!」
「もう少し、我慢しろ。出したばかりだからなっ、もう少し時間が要る」
「だめっ! むりぃっ! 良いの! 良すぎるのっ! あっ」
刹那、山城の腕と脚に抜け落ちていた力が復活した。前進が膣内に入ったかのように締め付けられる。山城が大きく震えたのは同時だった。
「やぁっ! だめっ! 一緒! 一緒がっ! あぁぁぁあああぁあっ!」
快感の波が収まったのか、山城の体から再び力が抜けた。が、体は男を抱きしめたまま動かない。顔も、胸板に押し当てられたままであった。おまけに、すすり泣く音まで聞こえる。言うまでもないが、男の泣き声ではなかった。
「っぐ、ごめ、なさい。ひとりで、イッちゃった」
「イッてくれないよりは良い。そっちは男の尊厳に関わる」
男がおどけたように言った。山城の吐く息はとても熱くなっていたから、汗が出てきてしまった。そういうことにした。
「私」山城が顔を上げた。わかりきったことだったが、涙が流れている。「夜も、使えなかったみたいですね」
男が不意に腰を突き上げたのは、その言葉を聞いた直後だった。あん、と鳴き声とも泣き声ともつかぬ声が漏れた。
「生意気を言うなと言ったはずだ」感情を押し殺した声で、男が呻くように言った。「使えるか使えないかは俺が決めるんだ。こういう風にな」
男が乱暴に膣を突き上げると、肉襞が痙攣するように反応した。予想もしていなかったのか、山城の顔に驚愕の色が浮かび、ただちに悦楽で塗りつぶされた。
「まっへぇっ! いった! 今イッたの! びんか、だめっ! 凄いのっ!」
「つまり、楽しませてくれるってことだろう?」
目の前で跳びはねる山城が、おっかなびっくりと言った様子で頷いた。突き上げる動きは休めないが、山城の背中を撫でさすってやる。申し訳無さそうに俯いたので、大きくゆっくりと膣の奥まで刺激してやり、顔を上げさせた。
「俺の好きでやってることだ。お前のことなど知ったことかよ」
だらし無く向けられた口に吸い付き、口腔を滅茶苦茶にしてから、「俺が」というところを強調しながら男が言った。肉を楽しむというより、どこかへ行ってしまわないように山城をしっかりと抱きしめる。山城が、抜けきった力を振り絞って縋りついてくるのがわかった。躊躇いがちなその瞳に、ちらちらと男の顔が映り込んだ。
「不幸だわ。甘えさせてもくれないのね」
山城が言葉とは正反対の色で言った。男は答えなかった。ただ、膣の奥深くへと再び肉棒を打ち据えたのみである。山城が大きく飛び跳ね、男がそれを押さえつけた。
「てぇとく」山城がこくりと頷いた。「このまま、して。それが良いから」
男が三度山城を突いた。そのまま全力で腰を動かし始める。締め付けに反して、山城の膣は先程以上によく滑り出し、であったからより深く膣をえぐっていった。敏感な肉襞がわさわさと動いて過剰な快感を山城へと伝え、悲鳴のような喘ぎ声とともに男へと抱きついた。
「これなら、すぐにイけそうだ」
男が呻いた。膣と肉体がもたらす柔らかな熱さで窒息しそうだった。山城は曖昧な笑みを浮かべて視線を逸らした。すぐに無理やり前を向かせる。
「もっとよく見せろ」高圧的に、けれども嘆願するように男が言った。「下ではお盛んなのに、それは無いだろう」
「おさ、ひぐぅっ! かん、って、なんの、あっ、ことですっ!」
「腰。お前も動かしてるだろうに」
やぁ、と否定の声が上がった。しかし、現実を押し隠せるものではない。疲労した体に鞭打って、肉感豊かな山城の腰がグラインドしていた。けっして、淫靡な巧みさがある動きではなかった。しかし、ただでさえも圧倒的な快感が流れ込んでいたそこに、いじらしささえ感じるその動きは、劇薬にほかならない。
「気持ち良いか? 山城」
山城の頭が縦に何度も振れた。見ている方が不安になるほど動いていたので、男は口を押し付けて止めることにしたらしい。残念ながら、唇に命中はしなかったが、鼻っ柱に舌が当たった。そのまま舐めあげると、山城が下腹部の衝撃を一瞬忘れたように赤くなった。
「塩味がする。汗だけなら良いが」
「へんたい」
不敬な発言を躾けようと、尻の柔らかさを楽しんでいた右腕で腰をしっかりと掴む。より膣道からの快感が強まったらしく、山城の体から若干力が抜けて布団へと埋もれていき、追いかけるように男がのしかかった。山城の体が押し潰される感覚が、男にもよくわかった。先端が固くなった乳房も、程よく肉づいた腹も、蠱惑的な太ももも、こうなってしまえば快感を呼び起こすスパイスとしては全く同じように、素晴らしく刺激的だった。
「てぇとくが、いっぱい」山城が息を吐いた。肌と鼻孔と本能がくすぐられた。
「そういうのは、出された後に言え」
言いながら、男は腰だけを持ち上げた。上体は山城をしっかりと抱き、というよりも押し付けるように力をかける。
「そら、もう逃さないぞ」
山城がこくりと頷いた。男が腰を叩きつけるまで、体感では一秒の間も感じられなかった。
山城が受けた衝撃が、その胸やら腰やらの柔らかさを通じて、男にも襲いかかった。特に胸を伝うものは、突き上げる度に蕾が擦れるのも、切羽詰まった喘ぎ声に変わるのも、等しく強烈な快感である。しかも、それが一段と激しくなるにつれ、中が締るおまけ付きだった。
「んぁっ! あんっ! これ、んんっ! すきっ! はげしっ!」
男の体の下で、山城がはしゃいだ。精一杯の力で男に抱きつき、その身動ぎによる快感から逃すつもりはないらしかった。もちろん、無駄な努力とさえ言ってよかった。男も、
それから逃れるつもりなど無いのだから。
「あっ! だめっ! っん、また、くるっ! きちゃうっ! また、あっ、ひとり、やぁっ!」
「安心しろ」
男が山城の耳元で言葉少なめに言った。何かを続けようとしたが、口を閉じてピストン運動に専心する。男のその様子で、達しそうなことを悟られたらしい。山城が、笑顔で乱れ始めたのだった。
「きてっ! ぅんっ! お願いっ! あっ、もっと、ひぅっ! いっぱいにっ!」
直後に、すさまじい吸い付きが訪れた。無理に大きく動こうとせず、奥のほうで素早く動くようにすると、安心したように山城が喘いだ。男のタガが外れたのは、その時だった。
「ひ、あああああっ!?」
一瞬だけ腰を大きく引き、叩きつけた。完全に予想外だったのか、山城が仰け反って、胸や腹が男に押し付けられた。汗ばんだ首筋へと顔を埋め、仰け反りを押さえようと抱きしめる。鼻孔に入り込んだ牝の香りで、男の猛りが開放された。
「あ、出てるっ! や、それ、だめっ! はんそく、うごか、あんっ!」
山城の奥で小刻みに動く。快感だけを求めるのならば大きく動いたほうが良かったが、今は一滴残らず山城の中を汚し上げたい気分でいっぱいだった。山城の方も同意見らしい。激しく身動ぎしながらも、脚だけは提督を掴んで離さなかった。
「はっ! はっ!」
白濁を注ぎ込み終わるのと、山城の絶頂が治まるのはほとんど同時だった。いや、実際にはそこまでタイミング良くとは行っていない筈だったが、構いはしない。男と山城は同じ瞬間だと感じたのだ。それ以外の何が重要だというのか。少なくとも、喉を荒く呼気が通り抜ける音を聞いてうずくまる男にはそうなのだ。
「てぇとく」荒い息の合間に呼ばれて、男の顔が首筋を這った。むせ返る塩味と甘味の後に、そっぽを向く山城が居た。「重いです」
「随分な言い様だな」
手慰みに山城の肉を摘みながら男が言った。肉棒を引き抜くと、あっと山城が振り向いてから、またそっぽを向かれた。
「わかった。どいてやる。代わりに綺麗にしてくれ」
男が起き上がって胡坐をかいた。山城は、複雑そうにそれを見つめてから、もぞもぞと頭を男の方へと寄越した。舌が竿に触れる。
「また、固く」膣に突っ込むのとはまた違った水音を立たせてから、山城が複雑そうに笑った。
「今はもうお預けた。明日――もう今夜か。響くんだろう?」
提督が言うと、山城は男の言うところの清掃作業へと戻った。顎に手をやって、言い訳を見つけてこれ幸いと俯けられた顔を見てやろうとした男だったが、止めた。それはそれで自制が効きそうにないと思い直したのだった。
「終わり、ましたよ」
「ご苦労」
最後に亀頭を咥え込み、複雑な括れまで全て舌を這わせて喉を鳴らし、山城が顔を上げた。反射的に手が頭の上に行き、行為のせいで少々荒れた髪の毛を撫でた。山城は膨れ、逃げるように布団へと沈み込んだ。
「何処へ行く。寒いじゃないか」
男は下卑た笑みを浮かべながら覆いかぶさった。山城が重いって言ってるじゃないですかと愚痴った。
「逞しいと言ってくれ」
「女を潰すためのたくましさとは大層ですね」
「敷布団にされるのは嫌いか」
「好きな人は少ないと思うけれど」
なるほど、自分の感情は言わないのか、と男が笑った。山城は布団に埋まったまま応えなかった。
「なら、掛け布団にしようか」
俺は逞しいからな、と男は山城の体に手を回した。そのまま一回転する。見るも無残に汚れた高級布団はそれ相応の広さだったから、山城が悲鳴を上げた以外は問題なかった。山城布団は、特に臀部のあたりが素晴らしい。思わず撫で擦る。
「あの、恥ずかしいです」
「ならこっちを向け。尻に触るのは止めるから」
山城が漸くひっくり返ったのは、たっぷり十秒ほど逡巡してからのことだった。死んでも顔は見せたくないらしく、強引に男の首筋へと埋もれる。かえって頭が撫でやすくて男としては好都合である。が、少しばかり。
「山城」
「何よ」
「重い。痛い、やめろ」
言った瞬間、男は山城に噛みつかれた。まぁ、本気ではなかったが、痛いものは痛い。頭を掴んで引き剥がすと、赤い顔で睨まれた。
「女性になんてこと言うのよ」
「さっきお前も言ったろうが」
「男なら黙って受け入れなさいな。女性とは違うんですから」
「悪いが、男女差別は嫌いでな。痛い。やめろ、わかったから」
やはり、女性に体重の話は禁物らしい。男は再び良い人の頭を引っぺがすという、良い物何だか悪いものなんだかわからない経験を積む羽目になった。
「全く、敷かれても掛けられても不満とは、贅沢なやつだ」
「敷かれるのも掛けられるのも構いませんが、対象が不服なだけです」
「泣けるセリフをありがとうよ」
男がむくれた。山城がぷっと笑う。睨みつけてやると、ますます笑みが大きくなった。
「てぇとく」へそを曲げた男に、山城がおずおずと声をかけた。
「謝っても聞かんぞ」
「私は悪く無いですから。それよりも、その、提案があるのだけれど」
男が顎で続けるように促した。山城は、一瞬だけ更に逡巡してから、えい、と掛け声を出した。男を浮遊感が襲う。いつの間にか回されていた山城の腕が、二人をまとめて四分の一回転させたのだった。
「これが、提案か?」横向きに向かい合うように寝そべる山城に、男が聞いた。
「これなら、重くないでしょう?」山城が詫びるように言った。
男は応えなかった。ただ、目の前に山城の顔があるものだから、言い訳に使うことにしたらしい。所在なさ気に山城の頭に添えられたままだった両手に再び力がこもったが、今度は先程とは正反対の向きだった。
「んっ。ふふ、よく寝られそうです」
山城が微笑みながら目を閉じた。ちら、と時計を見れば、確実に翌日――いや、本日の業務に支障をきたす時間だったが構いはしない。
「お休み。今日もこき使ってやるからせいぜい休めよ」
山城は控えめに頷いたので、男は無理やりその動きを大きくした。山城が小さく笑って、すぐに静かな吐息に変わった。
しばらく山城の頭を撫でてから、男はしずしずと抱き寄せた。起こさないように注意しながら自嘲の笑みを浮かべる。
結局、自己満足かもしれない。男が漫然と思った。思えば今日だって、こちらの意図が透けていたのは明白だった。いや、そこまで卑下する必要はないかもしれない。けれども、察するということは全てを理解する必要はないのだし、であっても察したものは察したものなのだ。
けれども。だけれども。たとえ自己満足だって構いはしない。薄れ行く意識の中で山城の吐息を感じながら男は思った。好いた人が笑ってくれるのならば、自己満足だって構いはしないのだ。男は我儘だった。だからこそ提督なんて稼業をしているのだ。そして、その我儘が良い方向に働くのならば、我儘だろうがなんだろうがありがたいに決まっている。
だからこそ。
男は山城を確かに抱いた。
だから、お願いだから、自分のことを欠陥戦艦などと呼ばないでおくれ。
男の意識が睡魔によって蹴飛ばされる直前、ふとした感触が男を襲った。暖かくて甘い空気の流れだった。視界以外の五感が全てそれを男へと伝えた。全くどこが欠陥なんだろうか、と呆れながら、男の意識は落ちていった。