桜は散り際が美しければ、果たして散った桜は美しいのだろうか。
「……おかわり、お願いします」
「ん」
提督が羽黒からロックグラスを受け取った。氷を足し、水を注ぎ、ウイスキーをたっぷりと。那智だか妙高だかから受け継いだ舌は、酒精の濃淡をよく知っているから、薄すぎるのだけは厳禁だった。今宵、羽黒は酒をしこたま飲むのである。別に、今宵以外だって飲むときもある。場合によっては、今日以上に酒を入れて前後不覚の憂き目に合うこともある。けれども、今宵は必ず、羽黒は酒をしこたま飲むのである。
「ほれ」
「ありがとう、ございます」
からからとマドラーでかき混ぜて、隣で提督をぼうっと眺める良い人に薄琥珀色のグラスを渡す。革張りのソファがぎしりと音をたてた。両手で受け取ったそれを、羽黒がこくりと飲み下す。赤い頬、赤い唇、その隙間から、5月下旬の夜には熱すぎる吐息が漏れ出した。提督はといえば、チェイサーをそっと羽黒の前に差し出すくらいしか抵抗の手段はない。自分のグラスに口をつけた。少し水っぽい。
「お花見、今年も楽しかったですよね」
「うん」
羽黒が窓の外、一本の大樹を見つめた。桜の大樹だ。無論、そこまで名のある桜ではない。だが、無視できない重厚感で、その場に一本だけ佇むその桜は、いつしか鎮守府では「大樹」で指し示せるようになっていた。
「那珂ちゃんが歌って踊って。ポーラさんと隼鷹さんが騒いで。非番の人が入れ替わり立ち代りで一日中お祭り騒ぎで」
「後始末がことだったけどな」
羽黒がコロコロと笑った。提督と二人、泡を食いながら散らかされたあれやこれやの算段をしたのを思い出したらしい。
「でも、司令官さんと一緒で、楽しかったですよ?」
羽黒の赤ら顔はあんまりにも無邪気だったから、提督が手をのばした。熱い頬を撫で付け、耳にかかる黒髪をいじる。
「……全部、散っちゃいましたね」羽黒が嘆息した。
大樹はもはや桜の自己意識を失ったようにさえ思えた。桜の花が本来の役割を果たした結果、大樹は桜ではなく、ただの大樹としてそこにあった。桜絨毯でさえ、鎮守府総出の掃き掃除の前に、大部分が海風に持って行かれている。
「桜の花は散るものさ」提督が氷をからんと音立てた。「永久の桜なんてものがあったら、そちらのほうが薄気味悪い」
「5月の桜」羽黒がぼそりとつぶやき、酒精を口に含んだ。「でも、5月までは持ってほしかったな」
「あのあたりは、5月が見頃か」
はい、と彼の愛しい人は返事をした。寒いですから、と付け加える。羽黒が提督に身を寄せた。酒精でさえ隠しようのない甘い香りが提督に届いた。
「5月の桜か」提督が氷がウイスキーに溶けていくのを眺めた。「見たことがないな、そういえば」
「春の東北は」
「残念ながら。の前に戦争だったからね。行きそびれた」
そうですか、と羽黒が言った。そうなんだよ、と提督が頷く。同じタイミングでロックグラスを傾けた。
「無くなりそうだな」提督が言った。「お代わりは?」
羽黒が首を横に振った。そうか、と提督が呟いた。自身のグラスを乾かすと、ボトルやらなにやらを片付けにかかる。その間、羽黒はじぃっと提督を見つめて、時折グラスを煽った。
「……ごちそうさまでした」
「お粗末さま」空になったグラスを見てから提督が言った。「今日は、もうやめようか」
羽黒がこくりと頷いた。提督が立ち上がろうとする。右腕に強い抵抗を感じた。羽黒が、提督の服、その袖口を掴んでいた。
「お代わりはいらないんじゃなかったか?」
「お代わりじゃないですから」羽黒がごにょごにょと呟いた。「司令官さん」
「うん?」
「その。欲しい、です」
「そか」
短く頷いた提督に肩を抱かれた羽黒が、その頬に唇を落とした。ちう、と強く吸われる感触が、頬から目尻に上がると、また頬に下がり、そのまま顎を経由して首筋まで落ちる。ぺろぺろと首をなめられる擽ったさに身を委ねるうちに、羽黒によって顔を動かされる。白く色づきそうなほどの息を履きながら、羽黒の腫れぼったい瞳が提督を見つめていた。
「司令官さん」羽黒が唇を提督の顔に近づけながら言った。甘露で酒を割ったつもりはなかったんだがな、と鼻を動かしながら提督が苦笑いした。「大好きです」
羽黒の手は提督を握ったままだった。桜が満開であるような錯覚に囚われながら、提督が押し付けられた羽黒の柔らかな唇をいっぱいに堪能し始めた。
5月の櫻
唇同士の交歓が次第に舌どうしのそれになるにつれ、羽黒の手が提督の衣服に伸びた。ワイシャツのボタンがぷつり、ぷつりと外されていく。
「れろ、ん、ふぅっ、んっ」
とは言え、提督の舌が自身の口内で暴れるので、完全に主導権を握っているわけでもない。中途半端な状況の中で、気持ち焦ったような羽黒の白い手が、提督の胸から腹にかけてうごめいた。
「ん、ぴちゃ、じゅ、れあ、はぁ」
間近で舌を動かしていた羽黒の顔が喜色に染まった。やっと、提督のワイシャツを剥ぐことができたからだ。であればその下のTシャツを脱がすことは、一度唇を離さなければならないことを除けば、容易い。
「はぁ、司令官、さん。……んちゅ」
羽黒の手が、ぺたりと提督の胸板を触った。つい先程まで氷の入ったガラスを触っていた肌理の細かい手のひらは冷たく、提督に再び口付け始めたその体は酒精もあって徹底的に熱かった。提督が羽黒を迎え入れながら、徐々に熱が冷を押しのけ始めた手のひらや指、そこからもたらされる乳首への刺激を甘受し始めた。
「ん、ぢゅるっ!?」
とは言え、何もしないというのも提督の性には合わない。羽黒の制服、ジャケットの隙間からワイシャツを分け入り、手慣れた手つきでブラジャーの中へと指を滑り込ませる。お返しとばかりに羽黒の蕾を弾く。分厚い生地の中で隠れて大きくなっていたそこが膺懲を受け、羽黒がびくりと震えて、提督の口腔に甘美な暖気が逆流した。
「ちゅ、ぷぁっ……むぅ、んっ、司令官さん?」
「俺だってほしいもの」
視線で文句をつけてきた羽黒に、提督が肩をすくめてみせる。だが、提督の手が止まったわけでもないし、羽黒の手もまた然り。羽黒がまた軽くはね、ぷぅと膨れると、今度は提督の乳首に口をつけた。
「ぺろ、んふっ、ぴちゃ、れろ」
提督が羽黒の指を引っ掛けるたびに、提督を舐める羽黒の口から不規則な熱風が飛び出て、提督自身を苛み始めた。むろん、だからといって、手を止めても、今度は熱い舌が提督の皮膚に絡んでくるだけの話である。提督が、じんわりとこみ上げる心地よさにため息を付いた。
「美味しい?」
羽黒は何も言わなかった。ただ、赤子のようにこくこくと提督の胸板で頷くだけである。きゅ、と提督の体が締め付けられた。羽黒が提督に腕を回し、強請る子供のように抱きついたせいでもある。
提督が、必死で己の胸を舐る羽黒を見やった。真っ赤な耳が黒髪の間からちらちらと覗いている。ごくり、と生唾を飲み込んだ。さっと、髪を払うと、耳に触れたからか乳首を熱く湿った風が包んで快感を届けた。一房だけ残ってしまった毛を息を吹いて飛ばしてやると、熱風に加えて軽く噛むような刺激がする。提督が、おもむろに耳へと口を近づけ、舌をねじ込んだ。
「ふぁっ!?」
今まで以上の快感を受け取ってから、羽黒が提督をチラと眺めた。すっとぼけたように提督が視線をそらす。羽黒が提督を舐るのを再開した。先程よりも口と舌の動きが激しい。負けじと、ねじ込んだままだった舌で羽黒の耳を舐め回す。
ぴちゃぴちゃという水音が口先と耳元で反響し、ついに羽黒が耐えきれなくなったらしい。もぞもぞ、とタイトスカートが動き、ソファの革が擦れたような音を出した。水音の出処がもう一箇所増え、羽黒の頬が更に赤くなる。
提督はそれを誂わなかった。ただただ耳を舐め、食み、吸うだけである。時折、羽黒の太もも以外が身じろぎし、提督の行動が一つも無駄になっていないことを証明した。提督を抱きしめる腕に力が入る。ふと、手持ち無沙汰になっていた提督の左手にさわり心地の良いものが触れた。すべすべとした羽黒の手だ。指がおずおずと絡め取られたので、やりやすいように動かしてやる。指の間が、羽黒の白い肌を感じた。ぎゅうっと握られたので握り返せば、少しずつ羽黒の手のひらが汗ばんだ。
「ちぅ……ちゅぱっ。ぁ、んっ」
不意に、提督の頬に羽黒が触れた。気づけば、胸に関していた羽黒の唇が離れている。提督が耳から口を離すと、くちゃりと粘り気のある音がして、羽黒がぞくぞくと震えた。
そんな快感の余韻を無視するかのごとく、羽黒が舌をぺろりと出した。纏わりついた唾液が妖しく光る。提督が、光源に寄る虫のようにそこへと近づき、舌同士を合わせる。
「ん、れる、じゅ、じゅう」
羽黒が盛んに舌を動かす。もはや酒精が漂白され、ただただ甘い汗と吐息だけが提督の鼻腔をくすぐった。左手が握りしめられる。同じようにしてやると、羽黒が鼻から息を吐き出した。提督の全てを食すように口は食まれる。
「ぷはっ、はぁ。……司令官さん。こっちも、その」
羽黒が布越しに、既に熱り立った提督の股間へと触れる。おっかなびっくりと、しかし手を離すようなことだけはせずに、手のひら全体で膨らんだ布地を優しく上下に擦ってきた。
提督が、ズボンを下着ごと摺り降ろした。上が放り投げられていた場所へ同じくする。飛び出た怒張を、羽黒が愛おしそうに見つめた。
「凄い、匂い」羽黒が提督を根本から掴み、顔を近づけてすんすんと鼻を鳴らした。
「胸元でぴちゃぴちゃ煩かったからな」
羽黒が嬉しそうに鳴いた。ちゅ、と竿に口付けを落とす。怒張が跳ね、なだめるように手が上下に動き始めた。
股間からせり上がってくる暖かな感触に、提督が羽黒の手を気持ち強く握った。ふふ、と羽黒が笑う。とろん、と瞳が蕩けた。時折息を吹きかけて遊びながら、羽黒が手の動きを強めていく。もはや、提督の反応さえあれば、強弱を聞く必要もないらしい。
そのことに、十二分の満足と、若干の寂しさを覚えた提督が羽黒の耳、その先程まで味わっていた方に手を伸ばした。ぬちゃり、と提督には水音が軽く聞こえ、羽黒がひゃんと声を上げた。手で不自然な形に刺激され、弾けるような感覚が提督を射抜く。
「むー……」
膨れ面の羽黒が提督を見つめてきた。どうやら、邪魔してほしくないとのことらしい。はいはい、と提督の手が耳から離れ、羽黒の頭を気持ち強めに撫でる。鼻面が肉棒に押し当てられ、呼吸に合わせてむずかゆい感覚が提督を襲った。
「ちゅ、れろ」
提督の求めに応じたのか、それとも。羽黒が再び肉棒に口をつけ、今度は舌で舐め始めた。味わうように、陰嚢の上部から舐め始め、裏筋へ入念に舌を這わせ、それから亀頭へ。キャンディーでも舐めるように舐め回す。もちろん、ゆっくりとした手の動きも忘れていない。献身的、そう呼んでなんら差し支えない羽黒の様子に、提督の何かがせり上がり始めた。
「れろ、ぴちゃ……はむ、ちゅ、ぢゅうぅ」
それをしってか知らずに羽黒が鈴口を吸い始め、先走りを舐め取ったか嬉しそうな様子でさらに入念に吸い出した。当然、手の動きも更に激しくなる。先程からの乳首への責めで、提督としてはそろそろ吐き出す寸前といったところである。
「羽黒」提督が羽黒の頭を強く撫で付け、堪えるように手を握った。「そろそろ、出したい」
「はい」口を離した羽黒が嬉しそうにうなずいた。赤い頬で頬ずりしながら、恥ずかしそうに、けれども断固とした口調で続ける。「司令官さんの、お口に欲しいです」
提督に嫌という理由など何処にもない。うなずくと、羽黒が雄の匂いを堪能するように再び鼻を鳴らしてから、亀頭全体を口に含んだ。そのうえで、手と舌を素早く動かし始める。
亀頭全体が頬に押され、熱い舌に這い回られ、竿をこすられ。それを心底から愛おしそうにされては、提督としてはもはや溜まったものではなかった。
「羽黒、出すぞ」
提督の言葉に、羽黒が気持ちこくこくとうなずいた。だが、口を離すことだけはしない。どうしても口内で受け止めたいらしい。ちゅう、と亀頭がより一層締め付けられた。
それが最後の刺激となって、提督の精が羽黒の口内へと迸った。頭をなでていた手が思わず羽黒を股間へと押し付けるが、動じることなく羽黒がすべてを受け入れる。最後の一滴が舌に乗ると、羽黒が味わうように飲み下した。亀頭が肌寒くなる。羽黒の口から出されたのであった。もはや、熱っぽい吐息だけが、唾液と精にまみれたそこにとっての唯一の暖である。
「……ちゅ」
尤も、その暖も長続きしない。羽黒が再び鈴口に吸い付いたからだ。根本から肉棒が圧迫される。どうやら、単に出されたものだけでは足りなかったらしい。
三四回ほど尿道に残った精まで絞り出してから、羽黒はようやく満足したらしかった。今度は、亀頭に付着した精を舐め取り出す。先程までとは違い、労うような感触に、提督が思わずうめき声を上げた。羽黒が微笑みながら、一滴も残さず精を吸い取った。
「ぺちゃ、ぴちゃ、ちゅ、うっ。……綺麗に、なりました」
羽黒が名残惜しそうに肉棒を見つめながら言った。優しげな快感に加え、吐息と視線が合わさったせいでそこが再び膨らみ始めると、小さく嬉しそうな声が上がった。
「まだ、足りない?」
提督が羽黒の頬に手を添えた。熱く腫れぼったいそこをやさしくさする。ぎゅ、と手が握りしめられた。
「はい」羽黒が恥ずかしそうに俯いた。
「それはよかった」提督が笑った。きょとんとする秘書艦に向けて続ける。「俺もだからな」
喜色を浮かべかけた羽黒を提督が強引に持ち上げた。ソファの背もたれにギシリ、と受け止められ、無防備な白い肢体がさらけ出される。乳房がふるりと揺れ、羽黒の肌があかばんだ。
「どこからがいい?」提督が意地汚い笑みを浮かべた。
「その、お、胸が、良いです」羽黒がつっかかりながら答えた。「さっき、司令官さんにいじられて、疼いて。だから、その、もっと、欲しいなって――ひゃんっ!」
羽黒が言い終わるのも待たずに提督が胸へと吸い付いた。すでに十分以上に勃起していたそこは、大変に食みやすい。口に含み、舌で前後左右にこね回すと、手が固く握りしめられた。
「そ、そんな、いきなり」羽黒が少し膨れてみせた。
「いや?」提督が返答も訊かず、蕾の先端に口づけた。
「……いやじゃ、ないです」
羽黒が素直に言うと、提督の後頭部に圧力が加わった。羽黒なりの催促らしい。無論、拒絶する理由など無い。提督が再び乳首を口に含んだ。同時に、手持ち無沙汰になっていた右手で、空いているもう片方の尖りを弄り始める。
人差し指で軽く撫でると、提督の顔が胸に押し付けられた。親指も加えてなぞるように外周を撫でれば、甘く悩ましげな吐息がかかる。軽く弾いてみせると、もぞもぞと羽黒の太ももが動いた。
「ぁ、んっ! ふあぁ、やんっ」
「気持ちいい?」
顔面に叩きつけられる羽黒の反応に、提督が思わず訊ねると、唇を噛んだ羽黒がこくこくとうなずいた。どうやら、声から判断されたと勘違いしているらしい。ぴん、ともう一度乳首を弾くと、吐息と嬌声と共に、羽黒のささやかな抵抗が瓦解した。
「んっ、ふにゃっ! あん、んぅっ」
責める、というよりは優しくこね回すように舌と指を動かす。もどかしそう、とは到底言えないくらい、鮮やかな反応が返ってきた。押しつぶされた乳房が顔を覆い、羽黒の汗と、吐息と、それから甘ったるいほどに甘い香りが鼻孔を満たしていく。力強く吸えば、乳すら出てくるのではないか。そう一瞬でも思ってしまうほどの芳香であった。
「ぁ、司令官さ、ちゅ、ん、ぢゅ」
羽黒に首筋へと口付けられたのは、嗅覚がもたらす甘露に酔っていた時だった。首筋を熱い空気がくすぐり、次の瞬間には熱そのものが覆う。ぴちゃ、汗を舐め取られ、水音が皮膚を伝って耳へと届く。と同時に、羽黒がそこを強く吸い上げた。
「気持ちよくしていただいた、その、御礼、です」
あまりにも熱い唇が離れ、羽黒が恥ずかしそうにくすっと笑った。ぺろり、と先程まで口づけていたところを再び舐める。擽ったさの中で察するに、痕がついているらしい。あるいは付けた、というべきか。
「お礼、ね」提督が笑った。あん、と吐息を受けた羽黒が鳴いた。「そういうのは、全部終わってからするものだぞ?」
羽黒が提督の後頭部を抱く力が増した。もう少し信じとくれよ、と提督が笑った。更に力が増す。観念した提督が先程羽黒に抱いた妄想じみた考えを実行に移した。
「ゃんっ、音、立てて、吸っちゃ、あんっ!」
乳輪ごと羽黒の乳首を吸い上げる。ぷるぷるとした震えが乳房を揺らした。なだめるように、指の方は優しく乳首を撫で回す。太ももの動きが大きくなった。籠もった水音が提督の耳朶を打つ。
「切ない?」
提督の問いに、間髪入れずに羽黒がうなずいた。潤んだ瞳が、何かを期待するように提督を見つめた。
「そうか」提督が意地悪げにうなずいた。「悪いが、俺のほうが不満足でね。もう少し楽しませてくれ」
言うや否や、再び羽黒の胸に吸い付く。だが、今度は手で乳首ではなく胸全体を納め、その感触を味わうかのごとく震わせる。指と指の間から、羽黒の綺麗な双丘が溢れ出るのがよく感じ取れた。あくまで優しく、羽黒を求めていく。
「しれ、あんっ、かんさん、それ、んぅっ! 赤ちゃん、みたい、ひぅっ」
誂って落ち着きを取り戻したかったのか、羽黒がそんなふうに言った。だが、もしそうだとすれば逆効果としか言う他なかった。自分がどう責められているのか、口に出したせいで再認識してしまったらしい。赤子に期待するにはおかしいくらい、乳房が押し付けられ、手が握りしめられた。提督は期待に反しなかった。
「ひぅっ!?」
羽黒の乳輪を甘噛した提督が、ちゅうと勢いよく蕾を吸い上げた。無論、羽黒の美乳を容赦なく蹂躙した手のほうは、手のひらで乳首をぐりぐりと押し込む。
「やぁ、だめっ! イくっ! イッちゃいますっ!」
言いながら、羽黒が弾けるように飛び跳ねた。胸が震え、唾が飛び、吐息が襲いかかり、そして甘ったるい音が耳朶を打つ。提督が、羽黒の反応を抑えるように、その手を握りしめた。徐々に、乳房の震えが収まっていく。吐息に含まれた熱っぽさが消えていき、寂色に取って代わられた。
「羽黒。良かった?」提督が胸から口を離した。羽黒がこくり、と小さくうなずく。当然、提督にはそれが『小さい』ということも、その理由もわかっていた。「良くはなかったか」
「ち、違いますっ」
慌てて否定してから、誂われたことに気づいたらしい。羽黒が膨れた。提督の笑みを見て、更に大きくなる。ごめんごめん、と提督が羽黒の頬に口を近づけた。
「ぁ」
「で、やっぱり?」
頬に口づけて中の空気を吐き出させてから、提督が羽黒の耳元で囁いた。真っ赤な耳がこくりと動く。
「司令官さん」もはや光すら発しそうな勢いで赤熱しながら羽黒がつぶやく。「もっと。欲しい、です。まだ、足りないんです」
小さいがはっきりとした発音に、提督がうなずいてみせた。どこかほっとしている羽黒の乳首をいきなり摘み、あんと一つ鳴かせてから、手を解く。羽黒の動きが、身じろぎを含めて全て止まった。無論、提督はそれを刹那の間に押し込めるためならば労力をいとう気はない。すぐに脇へと腕を入れ、抱き上げるようにして立たせてやる。
「脱ごうか」提督がスカートをしめした。「水気が多いと気持ち悪いだろう? それ」
羽黒がきゅっと太ももを閉じた。赤熱が増す。提督がスカートに手を伸ばす。尻を優しく、しかし力強くなで上げた。
「ひゃぅんっ!」
羽黒が提督の胸元で鳴く。腕がぎゅっと提督の胴を抱いて離さない。もう一度なで上げた。今度は嬌声と共に、潤んだ瞳が提督をじぃっと見つめていた。少なくとも非難のそれではなかった。見ていられない。
提督が慣れた手付きでスカートを降ろした。一部が変色した布がその下から顕になると、羽黒の力が大きくなって、瞳の潤いもまた増した。提督が、今度はゆっくりとそれを降ろしていく。にちゃり、と粘着性の高い水音がねっとりと二人の耳に入り込んできた。
「しれいかんさぁん」
提督が、毛ほどの執着もなく羽黒の下着をソファに投げおいた。雌の香りが多少の興味を引いたが、後ろ髪を引くほどではない。提督にとっての最優先は腕の中だ。
一糸まとわぬ羽黒の感触を堪能しつつ、寝室まで運んだ提督が、ベッドへと優しく押し倒した。冷えたシーツが背や尻を包み、ひゃんと羽黒が鳴き声をあげる。仄暗い明かりのもとで、両腕を広げた羽黒の肢体だけが気持ち輝いて見えた。ふるりと震えた尖りきった蕾が、今羽黒が何を欲しているのかを遠回しに伝えている。であれば、見惚れるのもこのくらいに抑えねばならない。悲しいかな、提督にはそれだけの理性が未だ残っている。
「あ、あんまり、近づいて、見ないで……」
提督がベッドに登り、羽黒の下半身に顔を近づけると、弱々しい声が耳に入った。構わず、太ももを押し広げる。内ももにまで広がった粘液が糸を引き、その大元からは次から次へと同じものが溢れ出ていた。つぅ、と割れ目を水滴が伝っていく。ひくひくと動くそこが照明を反射したのか妖しく光った。
「あ、んにゃっ!?」
提督がクレバスに人差し指を差し込んだ。すでに盛り上がっていた肉芽が震え、指元まで生暖かい液体に包まれる。視線の先で、羽黒が埋められた快感から身悶えしているのが見えた。真っ赤な顔が、小さくうなずいた。指の抽送を早める。太ももが蠱惑的に震えた。
「あっ、あんっ! んあっ! はぁっ!」
指一本の刺激だったが、さんざん胸を虐められ、更にその前は提督のものを咥えて感じていたらしい羽黒が、たまらずと言った具合でシーツを握りしめた。本人も気づいていないようだが、腰が浮き上がっている。垂れた愛液がその動きに合わせて飛び散り、シーツに原始的な模様を描いた。
「ぅあっ!?」
ひときわ大きな喘ぎ声が上がる。膣がきゅう、と収縮した。提督が、羽黒のGスポットを撫でたのであった。そのまま継続的に刺激していく。
「あっ! はぁっ! あん、ひゃんっ!?」
みるみるうちに、羽黒が昂ぶっていった。もはや喘ぎ声を抑えようという気にもなれない様子で、ただひたすらに提督の指を感じているようだ。羽黒が、提督を見つめた。違う、と言いたげに首を横に振る。提督が、白々しく小首をかしげてみせた。
「ま、たっ! あんっ! 来ちゃうっ! ひぅっ! 来ちゃいますからぁっ!」
「そのままイッて良いんだぞ」
「やっ! やだぁっ! やですっ!」
羽黒が瞳に涙を浮かべながら言った。
「指だけじゃ、みゃんっ! やなんですっ! もっと、司令官さんっ! んんっ! しれいか、ひゃああああぁぁっ!」
びくん、と羽黒がひときわ跳ねた。指に感じる暖かさが大きくなり、シーツの染みが急に大きくなった。羽黒が脱力してベッドに沈むのを待ってから、指を引き抜く。ちゅぽん、と小気味の良い音とともに、糸が引く。栓が抜けた穴から、甘露がしとどに漏れ出した。
「やぁって、言ったのに」
息を整えながら、泣きそうな声で羽黒が文句をつけた。弱々しく提督を見つめる瞳と、荒く空気を求める口が合わさって、提督の嗜虐心がこれでもかと刺激された。おかげさまで、羽黒の頭に手をのばすのも一苦労である。
「羽黒」質の良い黒髪を楽しむように撫で付けながら、けれども提督が下卑たように口角をあげた。「まさか、これで終わるわけが無いだろう?」
「ふぁぁっ!?」
くちゅり、と再び水音がする。今度は、提督が羽黒のふやけきった割れ目へ口をつけた音だった。もっとも、ほとんど滝のようになっていたそこは、それなり以上の音を立ててしまったはずだったが、羽黒の喘ぎ声でほとんどがかき消されてしまったが。
「あんっ! ふぁあっ!? んあっ!?」
腰が跳ね、太ももが乱れ、上体が飛び上がり。待ちかねていた、と言っていいだろう刺激を、絶頂直後に叩きつけられて、羽黒が乱れ、寝台が軋んだ。体の各部が動かされ、汗が飛び、羽黒の香りが漂ってくる。とめどなく溢れてくる雌の匂いに合わさって、提督の口が貪欲に羽黒を求めた。いや、口だけでは飽き足らなくなったらしい。舌が伸びる。
「あっ! 入ってくるっ! んんっ! あ、つぅっ!?」
クレバスは、もはや提督を拒むような無粋をしなかった。するりと入り込んだ提督の舌が、熱くほぐれた膣肉を堪能すると、羽黒が飛び跳ね、愛液が口の中へと流れ込んでくる。目いっぱいに入れた舌を、ふるふると振動させてやると、面白いくらいに嬌声が飛び出てきた。
「あんっ! しれぇ、かんっ! んんっ! てっ! てぇっ!」
次いで、切羽詰まった哀願が飛び込んでくる。肉芽に這わせようとしていた両手が止まる。刹那の迷いもなく、上へと伸ばしていく。羽黒が求めたとおり、羽黒の両手に重なった。
「ふぁっ! しれいかんさんっ! しれいかんさんっ!」
手を強く、恋人握りで握りしめられた提督が、甘ったるく何度も呼ばれた。舌がきゅうと締め付けられる。複雑な気持ちが提督を襲った。こちらでも、存在感を出さねばならないと強く誓う。
「あんっ! ぁ……ひぅっ!?」
提督が舌を抜き、肉目を舐め回したのと、羽黒の眼の前で星が散ったのは同時であった。腰が思い切り提督に押し付けられる。どうやら、目論見は達せたようだ。
「ひぁっ! ああんっ! だめ、ぇえっ! つよっ、あんっ!」
「まはいひほうはほ?」
「あんっ! やぁっ! んうぅゅ!?」
「ほう」
短時間で再び高みに登ろうとしている羽黒を確認したから、提督がクリトリスに唇を近づける。それから、提督のちょっとした吐息にも敏感に反応しているそこから顔を上げ、怖さ半分期待半分で提督を見つめている羽黒を見た。
「ちゃんと、ずっと見ていてあげるから。イこうか?」
羽黒がこくり、と確かにうなずいた。提督が、お預けを食らっていたそこを思い切り吸い上げた。
「ふみゃあああああああっ!!?」
肉芽を提督に押し付けながら、羽黒ががくがくと先程以上に腰を震わせた。ぷしゃあ、と提督の口の中へと潮が噴き出す。ごくごくと、迷わず飲み下していく。幸いというべきか、快感の衝撃がよほど強かったのか、飲まれていることには気づいていないらしい。
「ふぁーっ! ふぁーっ!」
正常からは程遠い吐息を立て直すように、羽黒が天井を見つめて深呼吸を繰り返す。ようやく愛液しか出てこなくなったのを確認した提督が、体から力が抜けてなお固く握られた羽黒の手を慎重に解き、再び頭に手を伸ばす。頬を撫でてやると、気持ち羽黒の呼吸が落ち着いてきた気がした。
「可愛かったよ」
頬に当てた手がかぁっと熱くなる。ついで、手のひらに頬が押し付けられる。羽黒が膨れていた。どうやら、提督の推測は当たっていたらしい。
「激しすぎ、です」羽黒がむぅと唸った。
「でも、気持ちよかっただろう?」提督が悪びれずに言った。
「それとこれとは違いますもんっ」
珍しくわがままを言う羽黒に、提督がわざとらしく肩を竦めてみせた。優しく、肌触りを確かめるように頬を撫でる。
「どうすれば、機嫌を直してくれるかな?」提督が微笑んだ。
「……もっと」羽黒が甘ったるい声で提督を呼んだ。「もっと、司令官さんが欲しい、です」
「お安い御用」
提督が、羽黒の痴態ですでに回復どころか先ほどを超えるほどに硬くした剛直をあてがった。羽黒が赤くなりながらも股を開く。提督の眼前でさらされたそこは、その所業によってきらきらと光っていたから、迷う余地はない。ゆっくりと腰を進める。
「ふぁ、あんっ」
突き進む、という形容すらもはや必要ないほどだった。固くしまっているはずのそこは、確かに肉槍が突き刺さるまではぴったりと閉じていたが、先端が当たった瞬間、湿り気を増しながら道を開いていった。熱したナイフがバターに突き刺さるよりも容易く、羽黒の中を貫いていき、その現実そのものに感じるように、羽黒が身を捩らせた。
「んぅっ!」
こつん、と根本までが膣肉に包まれると、きゅっと閉じられていた羽黒が恐る恐るといった具合に開かれた。
「中、司令官さんで、いっぱい」羽黒が少し膣肉を締めた。柔らかく温かい快感が提督を走る。一回出していなければ危なかったかもしれない。
「そら、ろくな抵抗なかったもの」
「だって」羽黒が笑った。「司令官さんに抵抗なんて、しませんから」
言ってから、徐々に羽黒が赤くなっていく。恥ずかしいことを口走ったのに気づいたらしい。もっとも、提督としては、気づかずそんなことを言ってのけた秘書艦に、さらに肉棒を固くするしかなかったのだが。
「ひぅんっ!?」
提督が大きく腰を前後させる。そこまでの速さではなかったが、羽黒が身を縮こませるように激しく感じていた。膣の締まりが良くなり、下手をすると押し返されそうになる。
「言ってることと違う気がするんだが」
「し、知りませんっ!」
羽黒がぷい、と顔を背けた。耳まで真っ赤に染まっているのがよく見えた。提督が羽黒の脇腹を手で掴む。白く靭やかな肉がついたそこが、ふにゅりと歪んだ。腰を打ち据える。
「んぅっ!」
再び、剛直が膣壁をかき分け、最奥に達する。自身を貫かれる快感に、羽黒がまた大きく喘いだ。恥ずかしそうに提督をみやっている。だが、手はシーツを掴んで離さず、口も空気を求めて開いたままだった。
「んっ、あんっ、ひゃうっ!」
ぱん、ぱん、と提督が前後運動を再開した。狭いが柔らかい、というなんとも形容に困る羽黒の膣内は、リズミカルに奏でられる肉欲の音を何ら拒まなかった。提督の視線の下で、乳房が小気味よく震える。
「んっ、あんっ! むね、んんっ、気になり、ますかっ?」
貫かれながらも、提督の視線に気づいたらしい。羽黒が顔を真赤にして尋ねてきた。提督が即座にうなずいた。見惚れていたのはそのとおりだ。
「これが、気にならないのは、男としては、不味いかな」
「よ、かったっ」羽黒が喘ぎながら、朱色の頬を緩めた。「はずか、んっ、しい、ですけどっ。あんっ! 司令官さん、ならっ!」
提督の抽送速度が俄に増した。提督の言葉を借りれば、良い人に可愛いことを言われて気にならないのもまた不味い。少なくとも、異性に限定したのは過小かなと思い直すくらいにはそうだ。
そういった塩梅だったから、乱れる羽黒を見れば見るほど、提督の腰は早くなる一方であった。すると、羽黒の吐息が更に乱れ、口からは媚びるような、求めるような嬌声が大きくなり、黒髪には汗が滴って、乳房が先端の赤色を魅惑的に揺らし、白い肌は波打つんじゃないかとばかりに快感に震え、膣がもっと欲しいと肉棒を刺激するのである。となれば抽送はさらに早まっていき、羽黒の肢体の反応もそれ相応に大きくなる。何かに達するまで高まり続ける循環だった。
「しれ、かんひゃんっ!」羽黒が精一杯といった様子で提督を呼んだ。「羽黒、んっ、また、あんっ、でも、ひうんっ! もぅっ!」
「いいぞ、イッて」提督が腰を動かし続けながら言う。羽黒がふるふると首を横に振った。
「しれい、かんさんもっ! んんっ! いっしょっ! いっしょにっ! いっ――んむぅっ!?」
提督が唐突に羽黒に覆いかぶさった。我が儘を続ける口をふさぐ。舌をねじ込むと、羽黒がおとなしくそれに従った。口腔を吸いながら、羽黒の一番弱いところを擦りつけつつ、奥を小突く。
「ん、ふぅーッ!? んんっ!? んんんんんっ!!?」
膣がきゅう、と提督を締め付けた。次いで、びくびくと痙攣し始める。それは他のところでも同じこと。提督を迎えていた舌や、覆いかぶさったことで密着した羽黒の肢体そのものも、提督をマッサージするかのごとく震えに震え、自分が今どれだけ気持ちよくなっているかを雄弁に語った。
「ぷぁっ! はぁっ! はぁっ!」
舌を離す。羽黒の舌が追いかけてきた。寂しそうな瞳が涙をたたえ、提督を見つめている。媚びるような小さな鳴き声が、しんとなった部屋に染みていった。
「一緒が、よかった、のに」羽黒が泣きそうな声で言う。「ずっと、一緒に」
「無茶言うなよ」提督が苦笑いする。だが、決して呆れたりはしない。
「なん、で」
「今日はいっぱいするんだろう?」
提督の言葉に、羽黒がぴくりと反応する。瞳から急速に何かを求める色が消えつつあった。
「これからもいっぱいするんだから」
提督が羽黒の耳元に舌を這わせた。やん、と鳴いた羽黒が膣を締める。期待するように、吐息が荒くなっていた。「弾薬はきちんと管理しないと、な」
「……はい」
羽黒の返事があんまりにも喜色ばんでいて、提督が思わず噴き出した。真っ赤になった羽黒が膨れるが、否定だけはしてこない。付き合わせている自覚はあるようだ。無論、その必要など存在しない。提督が、再び羽黒に口づけた。
「んちゅ……あむ、ん、ふぁ、んっ」
お互いに唇を食むような優しい接吻だった。提督が、ゆっくりと、今度は羽黒を味わうように腰を動かしても、口づけは止まらない。むしろ、柔らかな唇の感触に加えて、艶めかしい羽黒の吐息まで加わる始末である。
「ふぁっ!」
悪戯心が出た提督が、急に腰を素早く動かしても、それは変わらない。一瞬口を離した寂しさを紛らわせるように、今度は羽黒が唇を近づけてきた。ぺろり、と提督の唇が舐められる。
「んっ、はぁ。れろ、んんっ、ぺろ。ぁっ。んんっ、ちゅ」
食み合うキスから、羽黒が一方的に提督に口づけるだけに後退したが、むしろ先程よりも提督の肉棒は硬さを増していた。自身の文字通り目と鼻の先で、必死に己の唇を舐め取り、口づけ、時折不興を買っていないかと不安そうに見つめられ、愛おしさと庇護欲が振り切れんばかりに高まったのもその原因の一つだ。おまけに、小突くたびに羽黒の胸が震えて、熱り立った乳首が提督の胸板をくすぐってくるのだからたまらない。
「んふぅっ! あんっ! ん、れろ、ぴちゃっ!」
再び抽送速度が上がるも、羽黒の唇は離れない。無論、時折喘ぎ声と共に離れたりもするものの、すぐに顔を寄せ直し、ひな鳥のように提督の口を求める羽黒に、更に提督の腰が早まっていく。必死に舌を伸ばす羽黒に、いじらしさが募っていく。
「ふぁっ! や、やぁっ!?」
もちろん、そんな羽黒にとっての悪循環が繰り返されれば、何時かは限界というものに勝ち当たるのは道理である。ついに提督の肉槍にたまりかねた羽黒の頭がベッドに深く沈み込んだ。頭を上げなおそうにも、押し寄せる快感の嵐に力が入らないらしい。涙の浮かんだか細い瞳が、ふるふると左右に振れた。
「んむっ!?」
提督が、羽黒の唇に己のものを押し付けた。間髪入れずに舌をねじ込む。歓喜に満ちた嬌声が、直接提督に流れ込んできた。
「ん、じゅッ! んんっ! ぢゅるっ!」
腰だけは別として、体のすべてを羽黒に密着させる。必死に舌を絡めてくる表情、提督に押しつぶされながらもぷるぷると震えるのを止めない柔らかな乳房、ぴくぴくと動き、時折感じすぎるのかひっこむ腹、徐々に開いていく触り心地の良い太もも。全てが提督に触れ、全てが快感を伝えてきていた。
「ぷぁっ! はぁ、あんっ! ふぁあっ!?」
たっぷりと舌を絡ませ、歯列を舐ってから引き抜くと、蕩けきった羽黒の顔が目の前にあった。上気した頬の下、緩んだ口元から唾液が一筋垂れていく。汗と吐息と淫臭が混じった甘美な香りが、大きな鳴き声とともに提督に叩きつけられる。
「しれぇ、かんさんっ」羽黒が喚いた。「ぎゅってっ! んんっ! ぎゅぅって、してっ!」
言葉を理解したかしないか、ともかく素早く羽黒を抱きしめる。汗に濡れた羽黒の背中は、提督の腕をぬるりと迎え入れ、擦れて羽黒がまた鳴いた。
「あっ、はや、いっ! んあっ! しれいかんさんっ! しれいかんさんっ!」
先程よりもよほど押しつぶされたはずの羽黒の肢体は、それでもなお、いや先程より一層、柔らかい。首元に収まった羽黒が烈しく鳴き、提督に快感の固まりが何度も何度も押し付けられた。
「羽黒、そろそろ」提督が羽黒の額に口づけてから言った。
「はいっ!」切なげな、しかし満面の笑みで、羽黒が啼いた。「中に、んっ、いっぱいっ! 司令官さんの、くださいっ!」
そう乞われて、あげない人間は居ない。提督がラストスパートに入った。羽黒のどんな姿も見逃すまいと、じっと眺める。見られて更に感じているのか、羽黒の嬌声が高まった。
「司令官さんっ」羽黒が真っ赤な顔をほころばせた。「あんっ! すき、ですっ! 大好きっ! ひゃんっ! 愛してますからっ! だから」
「だから」提督があとを引き継いだ。「ずっと一緒に。な?」
返事はなかった。必要なかった。こくりこくりと眼の前で頷かれて、それ以上何が要ると言うのか。
「羽黒」提督がえぐるように深く腰を打ち据えた。「出すぞ」
「はいっ! はいぃっ!」
頷かれる頭よりも、受け入れる返事よりも、提督を掴んで離さない膣肉こそが最も雄弁であった。根本から先端までを柔らかく、しかしキツく締め上げられた提督が、下半身から力を抜いた。精が迸っていく様子が、身悶えする羽黒を通じて丸わかりだ。
「ふぁっ! ふぁあっ! んぁあああああああああっ!?」
提督にすがりつきながら、羽黒がびくりびくりと何度も、何度も体を震わせる。柔らかい肉付きが提督にこれでもかと押し付けられ、精が搾り取られていく。
「あ、はぁ……。司令官さんの、いっぱい……」
膣内を白く塗りつぶされ、恍惚そのものの顔で羽黒がつぶやく。今まで以上に顔がだらしなく、安心しきったものになっていた。提督が好きな表情だった。だからこそ。
「ぁ、んむ、ちゅ、ぅ」
提督が羽黒の唇に吸い付く。もはや数えることさえ億劫になってきた交歓であった。羽黒の頬が更に緩んでいく。
「ぷぁ、ぁんっ……」
「さて」
提督が誂うように笑った。羽黒が少し膨れる。質問の内容に察しがついたらしかった。「まだ、足りない?」
「……足りません」羽黒が顔を赤らめながらも言い切った。何しろそのための酒なのだ。「今日は、ずぅっと、一緒が良いんです」
「嫌だな」
提督が間髪入れずに答えた。え、と固まる羽黒を良いことに、胡座をかいて羽黒の股ぐら、そのすぐ近くに座り込む。
「今日も、これからも、だよ」提督が己の膝をぽんぽん、と叩いた。
羽黒がぷっと噴き出した。むっと膨れる提督に、ごめんなさいと謝りながら、自らも起き上がる。そのまま、誘われるがままに膝に手をおいた。
「はい」
羽黒が提督の腕を掴み、胴を愛おしく抱きしめながら、笑みをこぼす。「ずっと、ずぅっと居たい、です」
「よく出来ました」
提督と羽黒の影が、また重なった。二人に感慨はない。今宵何度も見るだろう光景の一つなのだから。
自身に抱きついて寝息を立てる羽黒を、提督が優しく撫でた。居心地良さそうに羽黒が鳴く。すっかり日が昇った休日の鎮守府、その中で桜の木が一本、照らされて鎮座していた。提督が愛おしそうにそれ見つめた。
桜は散り際が美しいという。けれども、散った桜のその後からは、鮮緑が萌え出て連綿と続いていくのである。これもまた、好ましい。
5月の櫻はすぐに散るが、散ったからと言って櫻で無くなるわけではない。提督にとっては、それ以外のどんな事実も必要なかった。何しろ提督は櫻が大好きなのだから。