※この作品はR-18です。

【二次創作】十三大戦【頑張って書いた】   作:セイントス

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『猫の手も借りたい』と申します。
 困り果てた時にはどんな者の協力さえ求めたくおもうものです。
 しかし、『子供も猫よりまし』と申します。
 童(わらべ)程も役に立たぬ猫の手など、一体何の役に立ちましょうか。


第四戦『たくらだ猫の隣歩き』

「なあ゛あ゛あ゛っ!辛抱堪らん!」

「うわっ!?…ビックリした」

 静かに息を潜める戦士『子』と『申』そして『猫』がいた。

 『子』の戦士・寝住(ねずみ)は英気を養うように、静かに寝息を立てて眠りこける。

 『申』の戦士・砂粒(しゃりゅう)はこの先の戦いに備えるべく飯を頬張る。頬についた米粒が、彼女の少し間が抜けたところを見せている。

 『猫』の戦士・音弧(ねこ)は今し方砂粒の折檻を受けて倒れていた。まるで死んだかのようにピクリと動きもしない。それが急にガバリと起き上がり、癇癪を起こして叫びだした。

「どうしたの音弧くん?」

「なんというか辛気臭いっ!辛気臭いんだよ、ここっ!」

 そう彼らが居るのは下水道。点検用の電灯が仄(ほの)かに周囲を照らしてはいるものの薄暗く、頼りになる物は砂粒が持ち込んだ瓦斯携行灯(ガスランタン)の明かりのみ。彼らの傍らには下水が流れ込み、遠くからドボドボと水の落ちる残響が聞こえ、悪臭が鼻につく。雨水等を排水するのが主目的の水路のためか臭いについては言うほどでは無いが、それ以上に年柄年中(ねんがらねんじゅう)湿気に見舞われているせいでカビや苔が生えており、それが異臭の原因となっていた。

「確かにちょっと暗いし、空気も良くないけど…だからこそ隠れ家には最適なのよ?」

「そうかもしれないけど!いつまでジッとしてるのさっ!」

「…まだ三分も経ってないだろ」

 先ほど無事合流を果たした彼ら。しかし彼らの他に、もう一人仲間になってくれそうな戦士が居た。

 『酉』の戦士・庭取(にわとり)。派手な色彩に露出の多い姿の気弱な女性であったが、戦士としての力量は充分。特に異能力『鵜(う)の目鷹(めたか)の目(め)』による他の追随を許さぬ圧倒的な迄の索敵能力は、襲撃者を一早く察知するだけで無く、未だに見つかっていない他の和平案賛同者の早期発見に一役買うことだっただろう。

 しかし、彼女はここには居ない。結局は『申』の申(もう)し出(で)に賛同できずに同盟から離反。単身で戦場に舞い戻ってしまった。それから三分が経過しようとしていた。

「もうすぐで三分だろ!カップラーメンが出来ちまうよ!」

「…お湯も注いでないのにか?」

「黙らっしゃい!猫(ねこ)は真夜中にジッと出来ない性質(たち)なんだよ!

 ネコじゃないんだよ!タチなんだよ!」

「…なに言ってんのか分かんねえよ」

「あーうん、寝住くんは純粋なままの君で居てね」

「…?」

 訳の分からないことを宣(のたま)い出す音弧。瞼を擦りながら意味が分からずに真意を考え始める寝住。砂粒は呆れたように寝住を制止してなだめた。寝住は考えることを止めた。

「とにかく、もう我慢なんて出来ないね!俺は動くぞ!」

 そう言って立ち上がると音弧は元来た道を歩き出す。

「待って!…目的も無く出ていくの?」

「目的ならある。

 ひとまず他の賛同者を探索する。あの場には俺達の他にも和平案に手を上げた人が居た。つまりそいつらなら、まだ改めて和平案に乗ってくれるかも知れない。ここに居る猫(おれ)や子(こいつ)みたいにな…。

 だったら優先するべきは彼らの保護、接触、交渉、あわよくば再合流!人手(マンパワー)を舐めちゃいけない。人が多けりゃ動きに幅だって増える」

「言い分はその通りだけど…」

 そそくさと出ていこうとする音弧。それを咄嗟に砂粒が引き留めようとする。

 しかし音弧はしっかりと目的意識を持って動く、それは『申』の方針に反するものでは決してない。

「それに…あんな(・・・)声で啼(な)かれたら、我慢なんて出来ないよ。ちょっと様子見てくる」

「…っ」

 トドメにこの台詞だ。

 音弧は先ほど居なくなった庭取の身を案じている。彼は彼なりに幾つか理由を持って動こうとしているのだ。

「そんなにあのお姉さんが心配かい?」

「ああ。ああいう気持ちが不安定な女の子はちょっとしたことで殺(コロ)っと逝(イ)っちゃうからな」

「…ねえ音弧くん?君かなりサイテーなこと言ってる自覚ある?」

 弱った可憐な女性に優しく絆(ほだ)して取り入って、あわよくばを狙いに懸かる下衆(ねこ)。そんな小悪党を砂粒は見損なったように侮蔑の視線を投げ掛けた。

「まあ心配すんなって!

 なんなら酉ちゃんを口説き落として仲間に引きずり込んでやんよ!」

「…まあ、好きにすれば?」

「寝住くん!?」

 果たしてこんな助平に女性をエスコート出来るかと懸念している砂粒ではあったが、寝住は投げやりながらも音弧を支持するようだ。

「おう!じゃあ行ってくる!

 俺達、距離は離れるけど気持ちは一緒だからなっ!」

「ちょっと!待って!……行っちゃた」

 そして砂粒が止める間もなく音弧は風のように走り去る。遠くの方に駆けていく軽快な足音だけが響き渡った。

 

「寝住くん!なんであんなこと言っちゃったの!?」

 砂粒は寝住を振り返り、語気を強めて問い詰める。

 音弧と庭取を連れてきて、挙げ句無責任に放り出す。その無関係を装うような振る舞いに僅かだが不快感が込み上げた。

「あの『際どそうな』もとい『気弱そうな』お姉さん。多分…死んでしまうんだろうな」

「……なんでそう思うのかな。

 それがひょっとして戦士としての才能なのかな?」

「才能って程じゃないよ。

 ただ、まあ…そうだな。鼠って生き物は「沈みそうな船からは逃げ出す」って言うもんな。『死相』って奴が人からも見えるのかも知れないぜ?」

 『子』戦士が経験で知る「直感」…いやそれ以上の「才覚」で判断を下した。しかし砂粒はその事実を知らない。

「…でもあのお姉さんが死んだらあんたのせい(・・)かも知れないな。砂粒のお姉さん?」

「……それも、なんでそう思うのかな?」

「腕が立つっていう風には見えなかったが、あれでも戦士だ。十二大戦を生き残る資格は充分にあったはず。

 だが、あのお姉さん…どんどん弱くなっていった。『気弱なだけだった戦士』が『弱々の戦士』になった…あんたの『善意』に感化されたせいだろ。あんたの毒気の無さは小悪党には猛毒なのさ」

「……えっと…寝住くん?ひょっとして今、私キミに挑発されてるのかな?

 ごめん、私そういうの鈍くて……」

 寝住の主観に沿った意見。それは暗に砂粒の優しいだけの考えではこの大戦を生き残るには甘いと語っていた。だからこそ、庭取は砂粒の優しさに感化されて精神的に甘くなった。庭取はこの先の大戦を生き抜くのは厳しい。彼には彼女が死ぬ未来が見えていた。

「……そうかい。じゃあこの話はやめよう。

 どちらにせよ既にズレた(・・・)話だからな」

「……ズレた?」

「ああ、そこは気にしなくていいよ。こっちの話だから…。

 あと俺があんたに感化されることだけは無いから、そこも心配しなくていい。何せ俺には『死相』は見えても『思想』は見えない」

 寝住が身体を起こしてコンビニ袋を漁り出すと、袋の中から多目にくすねてきたチーズキャンディを引っ張り出す。封を切ると一粒取り出して包み紙を剥がし、中身を口に放り込んだ。

「だが、もしもの話として、あのお姉さん…ついでにあの『猫』の二人が死んだとしたら?俺達が把握しているだけでも、もう四人の戦士が死んだって事になる…三分の一だ。それでもあんたの必勝法は有効なのか?」

「有効だよ。救える人数が減っちゃうのは残念だけどね…。

 でも誤解しているみたいだから一応言って置くけど、私が考える必勝法って一つじゃ無いから」

「そうなのか?」

「一つの作戦で大戦を止めようって考えるほど楽天家じゃないよ、私はね」

 オニギリを食べきり、頬についた米粒を拭いパクリと口に含むと温かいお茶でゆっくりと流し込む。寝住は米と紅茶の組み合わせに少しばかり疑問を抱きながらも黙ってそれを見ていた。そしてもう一つチーズキャンディを口に含む。

「ふーん…ま、「俺は戦いを止めよう」なんて考えた事も無いから…その辺はあんたに任せるよ」

「ねえ、寝住くん」

「なんだよ?」

「きみは別に戦いを止めたいわけじゃ無いんだよね。それに私に感化され無いとも言った。

 それなのに…気乗り薄なのにどうして私の和平案に賛同してくれるのかな?」

 砂粒は同時にここには居ない音弧の事も考える。彼は彼女と行動方針こそズレているものの、積極的に和平交渉に向けて動いている。やや軽率な行動にも見えるが、しっかり目的があって和平案に賛同しているように見えた。

「『和平』ってんなら未だしも『平和』ってのは寧ろ嫌いだね。

 俺、戦場に居ないときは高等学校に通ってんだけどさあ…居るのは平和呆け(・・・・)した屑(クズ)ばっかりだぜ。あんな屑共の生活を守るために命を掛けているんだと思うと…心底嫌になる」

 そう言いながら寝住はチーズキャンディを口に運ぶ。舌で転がしながら更に疑問を投げ掛ける。

「あんたは嫌にならないのか?今の世の中、あんたほど『人を救っている』人は居ない。だけどそれは、そこそこの比率で『屑も救っている』って事だ…いや寧ろ『救われた事で、人は屑になる』。

 戦いや殺し合いは、他の誰かの仕事って思ってる。言いたか無えが…ホント、守れば守るほど殺したくなってくるぜ…。

 教えてくれよ平和主義者。あんたはその辺、一体どう折り合いをつけるんだ?」

 口の中のチーズを噛み砕いて飲み込むと、寝住は再び雑魚寝を始めてしまった。

 砂粒はこの少年の質問について考える。若い世代特有の感受性の高い(センシティブな)悩み。『大人になれば判る』なんて言葉で斬り捨てるのは安易ではある。しかし、砂粒は抵抗を感じた。ならば、彼女が見てきたこと経験してきたことから正直に、率直に答えることだけだった。

「……折り合いはつけない。一生悩む…」

 それが砂粒の答えだった。

 

「成る程ね…『聖人』の答えとしちゃあ満点だ…。だが『凡俗』には通じない。

 あんたは手間暇を懸けて和平交渉をしたり、停戦を提案したりするけれど…。しかし『その力』を振るって戦争を一瞬で終わらせれば、結果より早くより多くの人命が救われるとは思わないのか?」

「…どう言う意味?」

 寝住は身体を起こして砂粒に向き直る。そして常々疑問に感じていたことを率直に投げ掛けることにした。

「だから…あんたはまあ例外としても、俺を含め十二大戦に参加しているような戦士の命を…そこまであんたが骨を折って守ってやらないとならない理由って何なんだ?

 どいつもこいつもさっさと死んだ方が世の中のためになるような奴らばっかりだぜ?大都市を無人にしてまで行われるこの大戦に意味を見出しているのは、俺達戦士だけだ」

 十二大戦に参加する戦士達。各々が百戦錬磨一騎当千の猛者である。そんな彼は時に戦場にも駆り出される。

 そうなれば戦場には惨劇の暴風雨が吹き荒れる事になる。飽和した絶望的な世界でどれ程の人が命を落とすだろうか。

 それよりも戦士一人殺せば、この先その戦士が殺すはずの千人もの人々の命が救われるのでは無いかと、寝住は考えていた。

「十二大戦を知ってる奴なんて殆ど居ない。居たとしても、とっとと終わって、とっとと死んでくれた方がいいって思われてるだろうよ。

 『どんな命も分け隔て無く大切』…とか、『根っからの悪人なんて居ない』…とか、そんなのは現実の見えてない奴の言う綺麗事だ」

 先ほどから眠そうにしていた彼の語り口調に感情が乗る。気怠そうな空気が消えて、視線に力が籠もる。

 寝住は『戦争』に『平和』に『そこに居る人々』に明確な不快感を抱いていた。

「……それが、きみの結論なんだとしたら。寝住くん、きみは今すぐ戦士なんてやめた方がいい。きみには戦う資格が全然無いから…」

 砂粒が真剣な眼差しで彼女にしては硬さのある声色で少年に忠告する。今の彼には『戦士としての矜持(きょうじ)』、それこそが足りないと彼女は直観した。

 このままではいつか身を滅ぼすと感じたからこそ、声に出さずには居られなかった。

 

 水猿(見ざる)、気化猿(聞かざる)、岩猿(言わざる)。偶然にも彼女の師となった三猿(さんえん)。インドのマハトマ・ガンジーは「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」と自らを戒めるために教えを説うたとされている。

 この形に乗っ取るならば、砂粒の矜持は『戦乱から目を背けるな、戦場の声に耳を塞ぐな、戦争反対の声を上げろ』…と平和を求めて動くことだ。

 彼女は不器用に真面目で、不器用に潔癖で、不器用に正義だった。

「寝住くん…あなたはさっき「私ほど人を救って来た人間は居ない」って言ったけれど…それを言うなら「私ほど人を救えなかった人間も居ない」よ?」

 

 常に彼女は己の無力を嘆いてきた。

 救おうとして手を伸ばし、こぼれ落ちる命を数多く見てきた。数え切れないほどに、しかし忘れられないほどに…。

 

 国が滅ぶのを何度も見てきた。

 謂われの無い虐殺を繰り返し見てきた。

 正義の蛮行を瞼に焼き付くほど見てきた。

 人間狩りを。奴隷制度を。仲間割れを。非人道兵器を。

 人身売買を。乳母捨てを。親殺しを。子減らしを。

 文化の弾圧を。遺産の大量破壊を。資源の枯渇を。

 差別と偏見を。復讐と逆襲を。男尊と女卑を。飢餓と疫病を。

 

 

 

 見て。

 

 

 

 見て。

 

 

 見て。

 

 見て。

 

 見て。

 見て。

 見て。見てミテミテミテミテミテ…。

 

 見てきた…。

 ずっと見てきた…。

 じっと見てきた…。

 現実を見てきた…。

 

「…その上で私は綺麗事を言っているの。今のやり方を選んだの。言葉の力で戦いを止めることを選んだの。

 私自身、何度も酷い目にあったけれど、それでも皆で仲良くしたいって思ったの。皆と幸せになりたいって思ったの…」

 知らない内に砂粒の目から涙が溢れ落ちた。過去に経験した惨劇を思い出して抑えきれなくなった。咄嗟に眼鏡を外し、涙を拭う。

「綺麗事舐めんなよ!ボク!」

 涙を拭った後が擦れて、赤みを帯びていた。

 

 

◇

 

 

「ヤバい、マヂ強い…。『皆殺しの天才』激ヤバ」

 『猫』の戦士・音弧は手にしたナイフを構えながら眼前に立つ敵対者を見据える。相手は黒髪長髪のスラリとした体躯の男。今大戦の優勝候補たる『丑』の戦士・失井(うしい)だ。

「ふむ…最初、きみが死なない原因は『手品』か『幻術』の類かと思っていたのだがね。違うのかね?」

「ふはははっ!残念ながら『幻術』じゃあないんだよな!

 俺は「死んだ上で再度蘇る」不死身の男なのだ!」

「なるほど得心がいった。先ほどから本当に(・・・)何度も死んでる(・・・・)のなら今のきみにも納得がいくがね」

 失井は音弧の様子を見て感心したように頷いた。

 音弧の手にしたナイフが僅かに振るえている。更によく観察すると呼吸が乱れ、歯が噛み合わないのか小さくカタカタとカスタネットのように鳴っている。膝は笑い、僅かに屁っ放り腰。

 先ほどの格好良かったお前は何処に行ってしまったんだと言う有様だ。

「それにしてもその『しぶとさ』、きみは猫ではなくゴキブリか何かかね」

「『ゴキブリ並の生命力』ってのは『丸めた新聞紙でぶっ叩かれたら死ぬ程度の生命力』ってのを言うんだぜ?知ってたか?

 にしてもゴキブリって「一匹居たら十五匹居る」んだっけ?じゃあ三倍以上(・・・・)叩き潰された俺はそれ以下…ってかっ!」

 その声と共に音弧は駆け出す。正面から鋲を数本投擲して牽制。そのまま建物の壁面を鮮やかに三角跳びをして、素早く失井の頭上に回る。そこから飛び降り、更に逃げ場を詰めるように追加で鋲を投擲。失井の足を止めたところにナイフの斬擊が空中に銀の軌跡を描いた。

 失井は最後の鋲を剣で弾くと、そのまま音弧の腕を肩から切り落とし、流れるような所作で首を刎ねて殺した。

 切り捨てられた音弧の死体が瞬(まばた)きする僅かな時で消え失せる。すると失井の背後からナイフを構えた音弧が肉薄し、御礼参りをするように鋭利な刃を突き立てた。

 

 「死を無視する無死にする」『生死半々(シュレディンガー)』は反則(チート)のような異能力だ。「死んでも生き返る」事も勿論強味であるが、実は「生き返る場所は死んだ場所と同じじゃなくても良い」という事の方がとても重要だ。

 『生死半々(シュレディンガー)』は死んだ瞬間に、「死ななかった可能性の世界」に差し替わる。この世の摂理(・・)に逆らった『呪い』だ。

 この「死ななかった可能性の世界」とは何か。言うなれば「死因を回避した世界」であり「もしも攻撃の当たらなかった場合の世界」…つまり「もしかしたら射線の外や死角に居た世界」と言える。

 この性質を利用した瞬間的な離脱、及び死角からの奇襲。自身の死亡シーンを囮(デコイ)にする視線誘導(ミスディレクション)こそが音弧の基本的な戦闘スタイルだった。『肉を切らせて骨を断つ』…いや『命を断たせて肉を切る』とでも言うべきか、命に制限が無い上に神出鬼没を演じる事が出来るからこそ、彼の不意打ちはこれ程迄に強力なのだ。

 

 しかし『皆殺しの天才』と名高い『丑』には通じない。剣に纏わり付く血糊を払い落としながらクルリと回して逆手に持ち直すと、振り向き様に剣を地面に突き立てる。

「がああ゛あ゛っ!?」

 すると地面に突き立てられた剣が背後から奇襲を仕掛けた音弧の腕を貫き、そのまま地面に縫い付けた。

 音弧が激痛に悶える中、失井は彼の肩を踏み付けて僅かばかりの抵抗さえ封じると、背中越しから心臓に剣を刺し直して殺した。

「はぁ…はぁっ……」

「……これで48回目(・・・・)だがね?まだ続けるのかね?」

「くそっ!さっきから反応速すぎだろ!軽く人間離れしてやがるっ!」

「人外染みた戦い方をしておいて何を言うのかね?」

「じゃかあしいっ!」

 『生死半々(シュレディンガー)』の性質を利用して音弧は距離を取った位置に蘇り、その場で呼吸を整える。

 戦闘開始から僅か数分。既に音弧は失井から50回近くの黒星を塗られ続けている。あまりにも絶望的な負け越しに若干音弧は涙目になっていた。

「やいやい!よくも『四十八手』完成させてくれやがったな!

 次は『百八煩悩』三途の川に流してみせるかぁっ!あ゛ぁん!?」

 自棄っぱちの空元気、支離滅裂な煽り文句で音弧は騒ぎ立てる。最早挑発として成り立っているかも定かでは無い言動だが、音弧の眼から戦意は消えることは無く、今も執拗に喰い下がる。

 ものは試しにと「眼を貫いて視界を奪うことで行動不能にしたり」「手足をもいで達磨にしてみた」が、「自ら舌を噛み切る」事で「自分が舌を噛み切る原因となった理由さえ無い可能性にまで遡って蘇生する」ものだからたちが悪い。猫まっしぐらに丑を追い回していた。

「いや、止め(・・)にしないかね?」

「…は?」

 そう言うと失井は一度剣を鞘に納め、もう戦う気は無いと意思表示をした。

「既にきみが持っていた獣石二つはこちらの手に入った。最早、私がきみと交戦する理由が無いのだがね?」

 失井は十回斬り捨てる頃には音弧から猛毒の宝石を奪い取っている。その後も音弧は執拗に失井を引き止め続けているのだ。

「『丑』の旦那に理由が無くても、こっちにはあるんだよ。

 このまま放って置いたら、あの『酉』ちゃんを狩りに行くだろ?それは駄目だ」

「だったら、一早く戦いを中断して彼女の元へ赴くべきでは無いのかね?

 私に限らず彼女の腹に収まる獣石を狙う戦士が他にも居るのではないかね?」

「それは…」

 言われてみれば正論だ。

 今の不安定な精神の彼女に戦闘は任せるべきでは無い。逃げてくれれば幸いだが、時には戦闘を避けられない場合もあるだろう。だったら彼女の傍に居て、支えになるべきだ。

 彼女の異能力は強力だ。たかが「死なない程度の能力」よりも数多くの命を救える可能性を秘めている。彼女の優先順位は非常に高い。

「私にもこんな事で足踏みをしている暇は無いのだがね。出来るならば早急に処理してしまいたい案件があるのだがね。

 …そうだな、きみの『しぶとさ』を見込んで一つ『頼まれ事』をしてくれないかね?そうすれば『酉』の戦士(かのじょ)を追うのは一旦止めるし、状況さえ許せば助力もしよう。『丑』の戦士の名に懸けて誓うがね」

「…頼まれ事?」

 戦士『丑』が持ち掛けたのは交渉だった。いずれにしても既に音弧に勝ちの目は見えない。内容次第によっては乗った方が利口と言えた。

「この大戦に『歩く死体(ウォーキング・デッド)』が徘徊している。どういう訳か『死体使い(ネクロマンサー)』…あるいはそれに準じる技能を持った者が紛れ込んだようなのだがね。きみにもそれの討伐協力を頼みたいのだよ」

「あぁ、それで俺(・)か…」

 「死んでも生き返る」性質は唯一『死体使い(ネクロマンサー)』の呪縛から逃れることの出来る異能力だ。丑からしてみれば「だったらこんな場所で妨害なんてしてないで、その性質を利用して『死体使い(ネクロマンサー)』を抑え込んで」欲しかった。

「わかった。つまり俺は『ゾンビ狩り』をすればいいんだな?」

「そうだがね」

「…乗った。彼女を保護したら、すぐに協力する事を約束するよ」

 そう言うと音弧はサバイバルナイフを鞘に納めてワイヤーガンを取り出す。その銃口を手頃なビルの屋上目掛けて発射するとアンカーボルトが射出されて、屋上の金網に引っ掛かった。

「さて!『死体作り(ネクロマンチスト)』はもう死んでるし、要は『巳』の死体を片付けるだけだな!

 じゃあ行って来る!」

「っ!?待ちたまえ!

 『死体作り(ネクロマンチスト)』!既に死んでいるだと!どう言う意味かねっ!」

 失井が呼び止めるよりも早く音弧はビルの壁面を駆け上がり屋上へと消えていく。慌てて失井が後を追うように屋上へ駆け上ると既に音弧の姿は消えていた。

「『死体作り(ネクロマンチスト)』…『死体使い(ネクロマンサー)』ではなくかね」

 失井は音弧が消えた先であろう方向を見て呟く。

「つまり…私が見たモノ(・・)は、そう言う意味なのかね?」

 

 

◇

 

 

「あ゛ーーっ!!もう何ですか、あれは!

 腹が立つ!腹が立つ!!腹が立つぅ!!!」

 ズンズンと足音が聞こえてきそうな程に地団駄混じりに道を行く。『酉』の戦士・庭取は頭に血が上っていた。

 今思い出すだけでも腹が立つ。原因はあの『猫』の戦士・音弧のせいだ。彼はあろう事か彼女の乳房を好き放題に弄んだのだ。未通女(おぼこ)の生娘(きむすめ)などと言う気は無いにしても乙女(おとめ)の純情を著(いちじる)しく傷付けられた。

 しかし怒りの篭もった足取りは、だんだん弱くなり、やがて歩みは止まる。

「…でも…そんな猫(ばか)に助けられた(・・・・・)」

 もしもの話だ。あのまま庭取が失井と戦ったとして、勝算はどれ程あっただろうか。

 案外、両目を瞬く間に貫かれて、胸を一刀両断されて、呆気ない死期(さいご)を迎えていたかも知れない。

「いやいや…あんなの偶然だって…偶然…そう、成り行きって奴…」

 一時間にも満たない僅かな時間。庭取と音弧はその程度の関係でしか無い。

 それなのに音弧は庭取を案じて追ってきた。そして庇い、逃がされた。その時のあの『猫』の顔を思い出す。

 あの笑顔…胸がざわつく。

「……また独り(・・)になっちゃった…」

 味方も無く、敵も無く、唯々一人。人一人居なくなった街並みは余りに静寂に殺風景で孤独で、世界から自分だけが取り残され置いて行かれてしまったかのような錯覚を起こす。途端に身体が体温を失い、凍える。あまりにも心細い。

「…って!何言ってるんだ私っ!

 一人(・・)なのはいつもと同じ(・・)っ!今も昔も変わらないっ!」

 そう言って頭(かぶり)を振り、雑念を振り払う。自分に言い聞かせるように語気を強めた。

 

 彼女の持つ最も古い記憶…。

 何処かの団地の何処かの部屋。長らく住んでいたであろう事を思わせる人の生活を煮染めたような部屋。乱雑に重ねられた塵(ごみ)。腐乱した臭気。体中の痛み。

 そして床に広がる冷たくなった液体と、手にしていたエッグカッター。既に原型は留めては居なかったが…恐らくあれが両親だったのだろう。

 それより前の記憶を彼女は思い出せなくなっていた。病院で行われた数々の検査で判明した事と言えば、幼少期から両親に受けた虐待よる過度のストレスが原因で重度の記憶障害を起こしている事と、異能力『鵜の目鷹の目』が備わっていた事くらいだった。

 十二家の『酉』…丹羽(にわ)家に養女として引き取られてからは『戦士』として暗殺や密偵の技術を叩き込まれた。世界中の抗争・紛争に裏から関与し、戦場を闊歩(かっぽ)した。過去を失った彼女には確たる『目的』も『志』も『信念』も無く、命じられるがままに戦い続けた。殺し続けた。

 

 コロコロと喜怒哀楽豊かに感情を動かす表面の裏側で、心に蓋をして無機質に戦い続けた彼女。

 秘薬『ワンマンアーミー』はそんな彼女の精神に波を立たせ、挙げ句の果て心に罅(ひび)を入れた。一度壊れた心の器は戻ることは無く、罅割れた所からポツリポツリと感情が染み出す。

 例えば、音弧の与えた好意。今までならば利用してやろうと思えた事柄が、無性に後ろめたく感じた。

 例えば、砂粒の与えた善意。今までならば裏切ってやろうと思えた事柄が、無性に心苦しく感じた。

 例えば、寝住が与えた無防備。今までならば不意を突いてやろうと思えた事柄が、無性に抵抗を感じた。

 

 喩(たと)えるならば『甘い毒』。

 喩(たと)えるならば『苦い薬』。

 

 今の彼女は『戦士』と『人間』の狭間を揺れ動いていた。

 

「っ!」

 ハッと我に返り、周囲を警戒する。耳を澄ませると聞こえてくる。

 カツン…カツン…という鈍い金属の鳴り響く音。その音はだんだんと大きくなり、こちらに近付いてきていることを覚った。

 そこの曲がり角、そこに敵が居る。

「っ!?嘘…でしょ…」

 目の前に立つ一人の戦士。手にした鉄パイプ、黒い短髪、黒い外套(マント)、真っ赤に染まった腹、真っ赤に塗れた顔。

「怒突(・・)…さん…?」

 『戌』の戦士・怒突(どつく)。つい先ほど彼女が殺した相手だった。

 何故、何故だ。庭取は彼を殺した、顔を削ぎ、頭を砕き、腹を抉り、内蔵を掻き回した。あれだけされて生きているわけなど無い、それこそあの『猫』でもなければ。

 そこまで考えてあることを思い出す。

「まさか…『死体作り(ネクロマンチスト)』っ!?」

 あの怒突が生きている筈無い、あれで生きている方が恐い。となれば死体が動き出す理由なんて他に考え付かなかった。

 

 『死体作り(ネクロマンチスト)』は『死体使い(ネクロマンサー)』とは違う。

 死体を自在に動かすのが『死体使い(ネクロマンサー)』。

 殺すことで『歩く死体(ウォーキング・デッド)』に作り直すのが『死体作り(ネクロマンチスト)』。

 殺せば殺すほどに仲間を増やす『死体作り(ネクロマンチスト)』。『殺戮者(さつりくしゃ)』にして『生産者(せいさんしゃ)』、『生産者(せいさんしゃ)』にして『凄惨者(せいさんしゃ)』。

 『死して尚、狂気を振りまく異常にして異状の凄惨者』それこそが『卯』の戦士・憂城(うさぎ)の真骨頂だった。

 

「■■■■■■■ーーーッ!!!」

「っ!!」

 怒突の声にならない雄叫びが響く。地獄の底から舞い戻って来たかのような怨嗟の声は、庭取の心を穿つ。

 

 オイ、ヨクモウラギッタナ…。

 オイ、ヨクモダマシタナ…。

 オイ、ヨクモコロシタナ…。

 ヨクモ、ヨクモ、ヨクモヨクモッ!

 コロシテヤルッ!!

 

 彼の片眼になった瞳が、そう糾弾してくるかのようだった。

 怒突は庭取に飛びかかる。手にした鉄パイプを縦一文字に振りかぶる。庭取は『鶏冠刺(とさかざし)』を前に掲げて、その殴打を防いだ。

「重いっ!?」

 一際大きな金属の音を鳴り響かせて庭取の身体は後ろへと弾かれる。死体となった怒突の肉体に制限など無く、限界を超えた膂力(りょりょく)で凶器を振り回し、意思亡き殺意を振りまく。

 一打、また一打と繰り返し吹き抜ける殺意の暴風を何度も防ぐ。その度に彼女の手にした鶏冠刺の柄が歪(ゆが)み、拉(ひしゃ)げた。

「鳥さん達っ!!」

「■■ッ!?」

 咄嗟にその場に居合わせた鳥達十数羽を使役して、怒突を襲わせる。それに怯んだのか怒突の足が止まった。生じた僅かな隙で庭取は反転し、直ぐに撤退を決めた。

 この場では怒突を殺せない。秘薬『ワンマンアーミー』に強化された肉体を持ってしても、目の前の敵対者とは拮抗を保つのが精一杯だった。肉体に精神が追いつかず、その性能を十全に発揮することが出来ずにいた。

 現在、あの怒突を倒せるとしたら『鳥葬』しかないと庭取は判断した。それには下準備が要る。一度退いて態勢を整える必要があった。

 通りの角を曲がり、大通りを目指す。区画を一つ走り抜け、大通りが目と鼻の先に近付いてきた直後だった。

「きゃあっ!?」

 角から何か黒い物体が跳び出してきて、足に引っかかる。そのまま足元を取られてしまい、見事に体勢を崩して転んだ。擦り剥いた肘が焼けるような痛みと刺すような刺激を与えてきた。

 庭取は跳び出してきた物体を見やる。あれは足一本を失った黒猫の死体だった。

「っ!しまった!」

 呆気に取られていた事が失態だった。咄嗟に後ろを振り向くと、既に追い縋っていた怒突が距離を詰めていた。当に鉄パイプを高々と掲げて、後は彼女の頭上へと振り下ろすのみとなっていた。

 万事休すか。庭取は思わず目を瞑る。

 殴殺とは痛いのだろうか。痛いのは嫌だな。せめて苦しい死に方では無ければいいのに。

 雑念が思考を支配して、降り掛かる死をただ待つだけとなった。

 

「■■ッ!?」

 轟砲が唸り声を上げ、恒星が瞬(またた)く。空(そら)を駆ける幾つもの鉛色の流星群が空気(くうき)を突き破り、怒突の腕へと吸い込まれる。

 一発、二発、三発…やがて豪雨のように撃ち込まれた弾丸は死体の右腕に噛み付き、そして喰い破る。千切れた腕は宙を舞い、二転三転と弧を描きボトリと地面に落下した。同時に落ちた鉄パイプから、カランカランとよく通る音が鳴り響いた。

 怒突は咄嗟に飛び退いた。飛び石を渡るかのように大きく跳び、路上駐車された自動車を踏み台にして更に距離を取る。その後を沿ってなぞるように弾痕が蛇行し、道を作る。その道は猪(いのしし)が歩いた獣道(けものみち)のようだった。

「あらあら?随分と躾(しつけ)がなっていない駄犬(・・)が居るようですわねえ?」

 赤く紅を差した唇を開いて高圧的な言葉が竪琴(たてごと)のように綺麗な音で鳴る。橙色のスカートが花弁のようにヒラリと靡く。金の髪が月光を吸い込んで美しく輝く。

 優雅に華麗に『亥』の戦士・異能肉(いのうのしし)が硝煙と共に姿を現した。

「では…私が調教(・・)して差し上げますわ!」

 二丁の機関銃『愛終(あいしゅう)』『命恋(いのちごい)』の銃口が月夜に反射してギラリと光る。

 マズルフラッシュの閃光がストロボのように連続で光り、鼓膜を叩く爆音と夥しい量の弾丸を吐き出した。

 怒突は射線から逃げるように跳び回り跳ね回る。電柱を蹴り跳び、壁面を駆け上がり、電線を伝って渡る。

 秒間何十発と吐き出される凶弾の雨。しかし、幾ら撃てども攻めの手が緩む気配は無い。異能肉はとある異能力を保持している…その名は『湯水の如く(ノンリロード)』。彼女に掛かれば銃弾は尽きることはなく。いつまでも、無限に、優雅に撃ち続ける事が出来る。

 その事実を覚ったらしい怒突は撤退を決めた。素早く異能肉から距離を取ると、夜の闇の中に溶け込んで消えていった。

「…旗色が悪くなれば尻尾を巻いて直ぐ逃げる。随分な負け犬ですことね」

 その様子を見ると異能肉は不機嫌そうに顔を歪め嘆息した。銃口から漏れる熱と煙の香りが夜の空に溶け込んで消えていった。

 

「…さて、仕切り直して名乗りましょうか…。

 『亥』の戦士──

 『豊かに殺す』異能肉」

 名乗りは戦士の華だ。優雅に華麗に美しくを信条にする彼女にとっては蔑(ないがし)ろには出来ない作法であり矜持であった。

「……如何(いかが)なさいまして?

 あなたもさっさと名乗りなさいな?」

「ひぃっ!?」

 異能肉が怒突と交戦している間、呆然とそれを眺めへたり込んでいた庭取。そんな彼女に異能肉は何気なく銃口を構えると、庭取は小さく悲鳴を上げ息を呑んだ。

「はぁ…何なんですの、その態度?

 あなたも戦士の端くれでしょうに。…ねえ『酉』?」

 異能肉は庭取の様子を観察する。

 手にした鎗のような武器は何度も強い打撃に耐えた為か歪んでいる。その鎗に縋るように抱き付き、肩を小さく震わせている。

 耳を澄ませば彼女の呼吸も聞いて取れる。短く何度も繰り返し行われた呼吸は正常から著しくかけ離れ、過呼吸を起こしそうな程だった。合わせ奥歯がカタカタと鳴っているのではと思うほどに唇が震えていた。

 極め付けにはその瞳。翡翠色の瞳孔が激しく動き回り、焦点が合っていない。美しかったであろう輝きは失われて、心なしか黒ずんで見えた。

 そして異能肉は察した。目の前の庭取(おんな)は戦意喪失している(たたかえない)のだと。

「いやっ!…いやああぁぁぁっ!!?」

 庭取は逃げ出した。手にした鶏冠刺すら放り投げて、一目散に異能肉から距離を取る。無様に背中を晒し、手足の動きがてんでバラバラのままそれでも必死に動かす。何も無い場所に躓いて転び、それでも藻掻いて立ち上がる。

 遠くへ、ただひたすら遠くへ、逃げないと、とにかく逃げないと。その考えが庭取の頭を支配していた。

「…こちらも負け犬。…いや、『酉』でしたから臆病者(チキン)でしたわね」

 そんな醜態を異能肉は醒めた視線で眺める。そもそもあんな逃げ方では、この機関銃の餌食だろうに。

「追撃…は止めておきましょう。どうせあの様子では、この先長くは無いでしょう。私が直接手を下さなくとも他の方が始末してくれるでしょうから」

 そう言って異能肉は銃身を下げる。

 あんな戦士とすら呼べなくなった『ただの人』、何時でも殺せるし、何時殺しても構わない。

 

「…御父様ならば「殺せる内に殺せ」と仰るのでしょうが…気乗りしませんわね。

 何より「無抵抗の者を嬲り殺すなど、優雅ではありません」もの…」

 




猫よりましな解説


・第三話『鵜の目鷹の目仔猫の目』について
「鵜の目鷹の目→隈無く探し回る様」
「猫の目→状況が激しく変化する様」
 諺の意味は一旦横に置いて、メインは作者の作者による作者の為の音弧庭取回です。はい依怙贔屓(えこひいき)です。タイトルチョイスは語感重視です。
 また、枕詞の『雀の涙』と組み合わせて「庭取の救済」の開始を意味してます。彼女の叶えたいたった一つの願い「自分が欲しい」。秘薬『ワンマンアーミー』によってバラバラに引き裂かれた彼女の価値観・精神性。この大戦の中で、それらを掻き集めて再び自分を手に入れるための旅路の開始です。その中で彼女には多くの試練が訪れることでしょう。




・『ネコ』『タチ』について
 BLなんかでもよく使う隠語。ホモォ…。
 「ネコ→受け」「タチ→攻め」
 「猫は夜行性」と言う意味と「受け(守り)に入らずに攻めるべき」と暗に語っている。




・三猿『見ざる、聞かざる、言わざる』について
 『論語』において
 「非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、 非礼勿動」
 (礼にあらざれば視るなかれ、礼にあらざれば聴くなかれ、礼にあらざれば言うなかれ、礼にあらざればおこなうなかれ)
 という一節がある。これの教えが「不見(みざる)・不聞(きかざる)・不言(いわざる)」として日本に伝わったと言う説がある。
 この一節から察するように四匹目の猿『しざる』を含めた四猿という説もある。
 しかし、日本に於いて『四=死』のイメージが強い事や「『しざる』が手の平で隠しているのは股間(淫行・性行為・浮気を戒めると言う意味)」等のマイナスイメージから三猿にされたとされている。
 「四匹の猿の内、一匹を排除して、三匹が仲良くなる」と言うのは『平和(=三匹の猿)裏に殺す(=排除された一匹の猿)』砂粒の肩書きが実に皮肉が効いたものであると言わざるを得ない。
※尚、これは二次創作に於ける独自解釈となる。




・『未通女(おぼこ)』『生娘(きむすめ)』『乙女(おとめ)』について
 説明するまでも無い話だが…。
 「未通女→処女の事」
 「生娘→処女の事。他に男性経験の極めて少ない初々しい女性という意味合いもある」
 「乙女→若い女性。穢れを知らぬ女性」

 あとこれは、アニメの第三話の考察を含む話になるが…。
 庭取は両親から十五歳まで虐待を受けて育った。そこには肉体的・精神的虐待のみならず性的虐待も受けた可能性がある。(というか両親を惨殺し、記憶障害を起こす程となると、よほど酷い背景があったはず)
 また丹羽家の養女になりスパイの技術を仕込まれる課程で、美しい容姿を最大限利用した接待術とハニートラップを教育されていても不思議では無い。
 以上の観点から庭取は少なくとも男性経験有りと判断する。最も恋愛的な意味合いよりも『女の武器』を利用した任務的な側面が強く、恋愛面では初(うぶ)の可能性がある。
※尚、これはこの二次創作に於ける設定捏造と独自解釈となる。






…え?知ってたって?
これは失礼しました。
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