あそこに居るのはおじさんじゃあない。だったら『誰か』。まさか『アイツ』じゃないだろうな。いや…たぶんそうだろう。もう…そうとしか思えない。やばい…非常にやばい。『アイツ』に裸を見られるなんて…。それにアレも見られそうだったし。てことは…やばい…振り込めない…。さっきまではある程度覚悟できていたけど、振り込んだら『アイツ』に見られるってこと…。それは…死ぬよりもいや。
五回戦。それが始まる前に私は愛花さんに質問した。「そういえば愛花さん雰囲気変わっていたよね。さっき」って。
「私…貴女のマネをしてみたんです。貴女は格好良くて…強いと思います。だから、貴女のようになれば、私も強くなるかなって…。そしたらホントに勝てて…嬉しかった…」
この娘は…いちいち嬉しいことを言ってくれる。こりゃこの勝負が終わったらお持ち帰りかな?…なんて無いよね。さすがに。しっかし、そんなに私は格好つけてるかな。あんなに鋭い鳴きの動作はしていないと思うけど。
「部長…もう、このままでは…」
後ろで観ていた部員の一人が話しかけた。部長はその部員を睨み付けて、言った。
「なんだ?」
彼の声は怒鳴りに近いものだった。
「い…いえ…その、もう……」
「勝てないってか?」
「……残りの僕たちの資金は7000万しかありません。…残り二回戦……耐えれるとは……思えません。僕らには…回復が無いのですから」
「いいか…。あの素っ裸の女から2500点。たった2500点奪えばペナルティを与えれるんだ。そのペナルティで…『金を返すのでもうやめてください』って言わせれば…僕たちの勝ちなんだ。それくらいわかっているだろ」
「え…ええ。確かにそうかもしれません。し…しかし、あの娘が、裸にされても堂々としているあの娘がそうなってくれるでしょうか。どれだけ痛めつけられても…もしかしたら平然としているのかも…」
「仮にあの女がそうだとしても、愛花の方は問題ないだろう。愛花の方を潰せばいい。あいつは一度僕たちにヤられてるんだ。そのトラウマを思い出させてやれば…」
「そ…それこそ難しいと思います……。流れは今彼女にあります。四回戦のあの勢いは…きっと五回戦…六回戦まで続くでしょう。最早彼女たちから金を取り戻すには…奇跡か魔法でもない限り……」
「あるよ…」
「え?」
―――奇跡も、魔法もあるんだよ
「そ…そんなオカルトありえません」
「奇跡は起きる…起こしてみせる……」
五回戦、その部長が起家だった。
座順
部長→副部長→私→愛花
ちなみに私はもうそれどころではなかった。麻雀も『普段通り』に戻した。まさか『アイツ』におじさんの麻雀のマネしているところ見られるなんて…。
東一局…。ドラは{⑤}。局の中盤、上家がリーチをかけたけど、愛花さんの流れを止めることは出来なかった。愛花さんは私から役牌の{北}を鳴き、嵌{4}索を鳴き、部長から2000点を和了った。
北家 愛花 手牌
{五六七④⑤66} チー {横435} ポン {横北北北} ロン {③}
役牌 ドラ1 2000
副部長のリー棒と合わせて麻雀部はマイナス3000点。…残り6000万。部長は「くそっ」と言って卓を叩いた。私?その局は上家のリーチから完全にベタ降りよ。
東二局。ドラは{⑦}で親は副部長。愛花さんは序盤に私から嵌{⑧}をチーして相変わらず攻めてる印象だったけど、その局は部長も前に出ていた。
中盤、役牌の{発}を副部長からポン…。その3巡後に愛花さんから{6}索の両面チーしてからの打{7}…。たぶんそれで聴牌。その時私も聴牌していたけど、待ちはまだ場に出てない{白}のみ(シャボ待ちの片あがり)で、誰かと持ち持ちになっている気がしていた。きっと出ない。よって部長の打{7}以降は現物オンリーのベタ降りにシフトした。
2巡後に私は{五}を引いてきた。
北家 部長 河
{南①北⑨東三}
{一西東中⑧9}
{7六}
打{7}で聴牌していると仮定して…、次巡{六}を手出ししている…。もしかして{六六七九}と持っている形に{九}をツモっての打{六}じゃないかな。嵌{八}待ちから{五}、{八}待ちへ…って感じで。だとしたら、この{五}は切れない。現物じゃないし、どの道切らないけど。
一方愛花さん{五}を止めれずに、部長に振り込んだ。しかしその点は1000点。ペナルティも何もない。
北家 部長 手牌
{六七九九④⑤⑥} チー {横645} ポン {発発横発} ロン {五}
発のみ 1000点
「安すぎではありませんか?とても奇跡を信じているような和了形ではありません。リアリストの和了形です」
言ってやった。
「うるさい!…黙ってろ……黙ってろ!……いいんだ…いいんだこれで…」
何かブツブツと言い出した。完全にキャラ変わっちゃっているな。
東三局は流局。聴牌者は終盤リーチをかけた部長だけだった。
西家 部長 手牌
{二二二六七八八九⑤⑤789}
「待ちは辺{七}ですか。悪形もいいとこですね。そんな形でリーチは悪手だと思います。貴方はこれで3000点プラスですが、払った1000点は勿体ないと思いますよ?」
また言ってやった。
「うるさい!…黙ってろ!これで貴様は残り1500点だ…。そこの女は500点…」
愛花さんに関してはまだ服が残っているっていうのに…。なんだか可哀そうに思えてきた。
オーラス(流れ一本場) 親 愛花 ドラ {④}
部長 26000
副部長 23000
私 24000(-1000)
愛花 26000(-2000)
供託一本
オーラスではあるけど、全員の点数はほぼ横一線。この小場の流れはたぶん終局まで続くだろう。逆に、じっくりと大物手を狙おうとするとたぶん負ける。愛花さんはともかく、私は確かに残り1500だ。『アイツ』が観てる中、正直振り込みたくない。麻雀部の残り資金は、6000万。後少しだと思って、満貫や跳満をゆっくり作っていくってマネは私はしない。
北家 私 配牌
{一七八⑥⑧⑨299南西白発}
といってもこの配牌。最速を狙うならチャンタ、純チャンだろうか。重いなー。
2巡目に対面が{発}を副部長からポン…。まるで逃げるような麻雀だ。かつての私のよう。
私は{二}やら{⑦}やら{3}やら…やっぱりチャンタに向かえと言っているかのようなツモだった。ので、上家から切られた{九}をチーした。
北家 私 手牌
{一二二⑦⑧⑨2399} チー {横九七八}
北家 私 河
{西発南白⑥}
役牌は序盤にみんな切っていったから死んでるだろうし、このままいけばまず間違いなく純チャンだろうとは思った。
次巡に{1}ツモ。これがネックだとは思ったけど、あっさり来たな。これも対面の急いだ鳴きのおかげと思おう。辺{三}待ち。
{二}を捨てて聴牌した2巡後、上家からリーチが入った。同巡、私は{9}をツモ。分岐点が訪れた。{9}を切ってそのまま{三}待ちか、{二}を切って{一}単騎か。
西家 副部長 河
{西9西東7中}
{①横②}
北家 私 河
{西発南白⑥二}
{④}
東家 愛花 河
{⑨北⑦⑧白中}
{2八}
南家 部長 河
{西⑨南8①①}
{白4⑤4}
※ 部長は{発}を副部長から、{五}を私からポンしている。
河を見ると萬子が少ない。染められている?少なくとも{三}は出ない印象。萬子の下は固められてる。{二}は通る保障は無いけど、でも嫌な気はしない。私はまず{一}単騎を選択した。
次巡{7}を引いてきたので{一}を切って{7}、{8}待ちに切り替えた。{8}でしか和了れないけど、たぶんこっちの方が優秀。三色確定だし。
次巡、上家は{8}を掴んで、私に振り込み、五回戦は終了した。
北家 私 手牌
{⑦⑧⑨1237999} {横九七八} ロン {8}
純チャン三色 3900(プラス リー棒二本 一本場) 4200+2000
五回戦終了
部長 26000
副部長 17800
私 30200(-1000)
愛花 26000(-2000)
結局五回戦も私達にペナルティは課せられず、麻雀部はマイナス3000万という結果に終わった。麻雀部の資金はこれで残り4000万。5200二回で飛ぶ。部長はまた卓に叩き、畜生と言った。
ドンマイ…。
少女サイド
ダメージ無し
麻雀部サイド
残り4000万