「こ…これで良いのかな…?」
あのステージから数日後。
私の目の前には色んな衣装が所狭しとズラッと並べられていた。
…一体何着あるんだろう、衣装がこんなに並び立つ様はまさに圧巻だった。
実はこの衣装の山、ローラにお願いしてローラの知り合いのカメラマンを通じて調達したものなの。…だけど心なしか露出度が異様に高かったり胸が目立つ衣装だらけな気がする。
普通にアイドルだけをやっていたらまずお目にかかることすら無いよう衣装がやけに多いのよね。
…もしかしたらローラ、私がグラビアを始めるって勘違いしてるんじゃ…
なんで私がこんなに衣装をかき集めてるかと言うと…そう、さっきの男性のお願いとは私がいろんな衣装を着た姿を見たいという事だった。
意外と普通のお願いでちょっとホッとした自分がいる。
その…もっとえっちなお願いをされたらどうしようかと…い、いやなんでもないわ!今の忘れて!
ただし、直接見せるのは流石に恥ずかしいので、アイカツモバイルで自撮りした画像をその男性に送るという事で納得してもらえた。
しかしそれでも恥ずかしいのは変わらないし、この事がバレたら、多分私は死ぬほど怒られるだろう。
だから男性には「この事は絶対誰にも内緒で!」としつこく釘を刺しておいた。
私の大ファンみたいだから多分大丈夫だと思うけど、かなりデリケートな問題だから念には念を押しておかないとね?
それにしても女性の露出度の高い姿を見たいと思うのは男性なら当然の事…なのかな…?
だからグラビアがあるのかもしれない。
アイドルの世界はまだまだ私が知らないような世界もあるから奥深い。
さて、大量の衣装の前で立ち竦んでいても始まらないし、いつまでも悩んでても仕方ないのでとりあえず、私の目の前にあって異様な存在感を放つこの青色のマイクロビキニを着てみる事にする。
……しかし手に取ってみて改めて思う。
「これ…ただの紐…だよね…?確実に大事な所しか隠れないよね…?大事な所もちょっと怪しいよね…?」
手に持っただけで、なんというか着用するのを拒みたくなるような雰囲気がマイクロビキニを包んでおり、醸し出す空気は私には刺激が強すぎる。
私が今着ている下着より遥かに布面積が狭いのだ。
マイクロビキニを発明した人は一体どんな目的で開発したのだろう…誰だか分からない開発者を今は少し恨む。
…まあ、今この空間には私一人だしちょっと着てみるくらいなら………うんうん、そうだ。
アイドルにはチャレンジング精神も大切だ。
これがこの先のアイカツの糧になるかもしれない。
とりあえず着てみよう、そうしよう!
「コレは……ダメだ…!」
コレは正直アウトだと思う。
最早過激とかセクシーとかそういうレベルのモノじゃない。
人間が着るような水着じゃない…と一瞬思ったけどそういえばなにかの雑誌でローラが同じような水着を着ていたのは見たことならある。
その時、私はローラを心底尊敬した。
「こんなえ…えっちな水着着てなんであんな笑顔でいられるの…?」
きっとそれがグラビアアイドルのお仕事なんだろうけど、素直に尊敬しちゃう。
私には…多分無理だ。
笑おうとしても多分顔がひきつってアイドルが見せちゃいけない顔になる自信がある。
しかし…それにしても…
「このマイクロビキニ…水着って呼んでもいいのかなこれ…これで泳いだら確実にいろいろハミ出しちゃうよね……いくらなんでもイヤらしすぎるんじゃ……ち…乳首は見えそうだし、お尻はほとんど見えてるし……っていうかこの水着サイズ合ってるの…?」
あまりに恥ずかしくて独り言で誤魔化すけど、やっぱり恥ずかしくて身を捩る。
でもその度に自分でも張りがあると思っているおっぱいはムニュムニュと形を変え、なんというか…余計扇状的になってしまっているような気がする…。
ここに人がいなくて本当に良かった。
こんなところを誰かに見られでもした日には、恥ずかしさのあまり死んでしまうかもしれない。
しかしあの男性と約束してしまった以上はいくら恥ずかしくてもやるしかない。
……やるのよ!香澄真昼、まばゆい光のように!
やっぱり恥ずかしい…
死ぬほど恥ずかしい…
まばゆい光とかカッコつけて言ったけどごめんなさい恥ずかしいものは恥ずかしいです…
「カッコつけるんじゃなかった…なんで私あんな事言ったんだろう…」
確かに恥ずかしいんだけど…恥ずかしいことに間違いは無いんだけど…
…なんだろう…この気持ち……なんだか今まで味わった事のない…不思議な感情が生まれつつあるのを感じる。
そう、自分のおっぱいやお尻を自分で長い時間撮影する中で私の心境にある変化が起きていた。
「なんだろうこの感じ…なんだか身体が熱くなってきたわ…」
そしてその身体の火照りと共に私は気付いてしまった。
目覚めてしまった、とも言えるかもしれない。
(私のおっぱいってもしかしたら凄く魅力的なんじゃ…あの男性も私のおっぱいが大好きだって言ってたし自撮りを送るって言ったらあんなに喜んでた…大きすぎると思っていたこのおっぱい…あこ達が言っていたみたいに意外と悪いものじゃ無いのかも………見られると思うとなんか悪くない、かも……これからはもう少し、このおっぱいに自信を持つ様にしようかな…)
不思議なもので、あれほど毛嫌いしていた自分のスタイルが嫌じゃなくなってきたのだ。
そしていつの間にか、何の照れも無くおっぱいと言えるようになっていた。
一旦目覚めてしまったらここまで来るのって早いものなのね。
「…うん、なんだかテンション上がってきた!このテンションのうちにどんどん撮っちゃおう!」
テンションが上がってきた私はいろんな衣装を着ることにした。
パッと見る限りどれもえっちな衣装だけど…どうしてだろう…なんだか楽しい…とてもワクワクしている自分に気付いた。
「チア服ね…丈が足りてないからおっぱいが見えそうねこれ…これで応援してくれてるファンを逆に応援するのもアリかしら?」
「ブルマかあ…噂には聞いてたけどこれただの下着じゃない…まあマイクロビキニよりはマシだけど…あっ、でもちょっと動きやすいかも」
「ハイレグレオタード…なんていうか…凄い食い込みだし…おっぱいもちょっと苦しい…ああ、でもなんかちょっと気持ちいい…かも…」
「スリングショット…これはマイクロビキニとは別の意味で危険だわ…マイクロビキニよりもダイレクトにお尻が丸見えだし…や、やっぱり乳首が…」
「チャイナドレスね!コレは可愛くてセクシーだから好きだわ。ちょっと胸の所がキツいけど…」
「身体のラインがそのまま出る全身タイツ…なんというか…これは完全にネタ枠ね…」
…なんだろう、衣装がなんだかどんどんマニアックかつネタ寄りになってきてる気がする。でも、男性はこういうのが好きだったりするのかな。
うん、私なんだかちょっとわかって来た気がする。
あこ達が私のおっぱいを羨ましがってた事も、ローラがライバル宣言した事も今なら腑に落ちる。
そして、このおっぱいが魅力的だということも。
いや、だからと言ってグラビアをやる気は今のところ全くと言っていいほどないけど。
だとしたら、今の状況はさほど悪くないのかもしれない。
これからは、自分のこのスタイルも自分の立派な長所として誇って行こう。
よし!そうと決めたら今日からおっぱいのケアもきちんとして行かないと!
お姉ちゃんにいろいろ聞いてみよう!
◆
さらに数日後。
私はアイカツモバイルに送られてきた男性からのメールを読んでいた。
「『真昼ちゃん!とってもえっちな自撮りの数々ありがとうございました!!家宝にします!一生応援します!!!!』か…大袈裟だなあ…まあ喜んでくれたならいいか」
あの時撮った自撮りを男性に送った所、凄く喜ばれた。
文面からもテンションが高いのが伝わってきたから相当嬉しかったのね。
アイドルとしてファンにこれだけ喜んでもらえるのはやっぱりこっちも嬉しいし、これも一種のファンサービスって言っていいのかしら?
「あら、どうしましたの真昼。そんなニヤニヤしながらアイカツフォンとにらめっこなんかして」
「…あっ、あこ!べっ、別に!?」
「ふーん」
明らかに不審な私の様子を見かねたあこが話しかけてきた。
いきなり話しかけて来るものだから、不自然な驚き方になってしまった。
いつも私のおっぱいを羨んでいるあこだけど、やっぱりあこのおっぱいだってかなりのモノだと改めて思う。
お姉ちゃんの見立てによると少なくともバスト95cmはあるらしい。
お姉ちゃんは可愛い女の子の事となると謎の精度を誇るから多分間違ってないと思う。
つまり一般的に見たらあこのおっぱいだって立派だ。
ならどうしてあそこまでして私のおっぱいを羨むのだろうか。
「あこ…ありがとう」
「…? 何のことですの?」
「あこ…ううん、みんなのおかげで私、自分に自信が持てるようになったわ」
「…何のことだかよくわかりませんけど……まあ、すべてはこの早乙女あこにお任せですわ!」
あこ本人もなんで私に褒められたのかよくわかっていないのに、豊かなおっぱいをぶるんっと揺らしながら胸を張って勝ち誇っている。
まあ、あこらしくて可愛いけどね。
「ああそういえば、真昼最近おっぱいに関しての文句を言わなくなりましたわね。どうしましたの?前は会えば文句ばかりでしたのに」
「ん?ああ、まあ文句ばっかり言っても仕方ないし、とりあえずこのおっ…胸を受け入れられるように頑張ってみるつもり」
「っ…!!!!!!!!!」
私がサラッとそう言うとあこは物凄い表情になっていた。ダメよあこ、アイドルがそんな表情しちゃ…
「…あの…あの真昼が…あの自分のおっぱい嫌いな真昼が自分のおっぱいを認めましたわ…っ!!」
「うーん…認めた、というよりは受け入れられるように努力するってだけよ。あと貴女は可愛い系のアイドルなんだからあんまりおっぱい連呼しちゃダメよあこ」
「それでも大きな成長ですわ!まさにジャイアントステップ!はじめの一歩は大きなおっぱいからですわ…!」
テンションが上がりすぎてわけの分からない事を口走り出したあこの目からなんと涙が零れ落ちた。
私、おっぱいで泣く人初めて見た…これには流石の私も慌てざるを得ない。
「ちょ、ちょっとなんで泣いてるのよ!なんか私があこを虐めてるみたいじゃない!って言うかそれくらいで泣かないでよ!なんか恥ずかしい!」
「も…申し訳ありませんわ…真昼が自分のおっぱいにそこまで踏み込んでると思ったら何故だか涙がうええええええええええええん」
「いちいちオーバーねえ…まあ、自分の身体の事も受け入れないと、これからアイドルもモデルもやっていけない気がしたから。ほらほらあこも泣かない。可愛い顔が台無しよ」
大粒の涙を流すあこにハンカチを手渡す。
あこ、もしかしたらあの男性以上に喜んでるんじゃ…
「…今日はいい日ですわー!!これでますますS4の絆が強固なものになりますわ!まさにS4おっぱい記念日ですわー!」
「そんな記念日無いから」
感情の起伏がやけに激しいあこを横目に私は薄い苦笑いを浮かべる。
でもなんだか清々しい気持ちだ。
お姉ちゃんが言っていた『嫌いを乗り越えた先』っていうのは多分こういう事なんだろう。
コンプレックスを乗り越えて自分のおっぱいの魅力にようやく気付いた今なら何だって出来そうな気がする。
私はもっと輝きたい!
そう、心から思った。
その為に今の私に出来る事は一つ。
私自身が、私の身体に慣れる事。だから…
ビュワッ
「うわっ、今日は風が強いですわね…ハシャいでる場合じゃありません…わ……ね………?」
「? どうしたの?あこ」
「まひる……なんでぱんつはいてないんですの……?」
「ああ、お尻見えちゃった?さっきも言ったでしょ、自分の身体の事も受け入れないといけないって。だから自分の身体を好きになるために全てさらけ出す事にしたの」
「…ぱんつはいてないってことはつまり…」
「もちろん。ブラジャーも着けてないわよ。っていうか下着は全部処分しちゃったから着けられないけど」
「ニャンですと…」
「でもね、意外と開放感があって気持ちいいわよ?締め付けが無くなっておっぱいも自由になってなんだか喜んでるみたい
「」
「勘違いしないでねあこ。私はあくまで自分が輝き続けられるためにやってるだけから。決してそういう趣味に目覚めたわけじゃないからね?」
私はまだまだ受け入れ切れない大きすぎるおっぱいをわざとらしくどたぷんっと揺らして、あこに微笑みかけた。
…何故だかあこは固まったままだけど。やっぱりあこは変な子ね。
◇
私は香澄真昼。
四ツ星学園に通う中学生で、アイドルとして頑張っているわ。
今はゆめやあこ、ゆず先輩と一緒にS4としても活動していて、日々一生懸命アイカツしているの。
お姉ちゃんのような…ううん、お姉ちゃんを遥か越えるような輝きを持つアイドルを目指しているし、今はそのお姉ちゃんから引き継いだブランドの『Romance Kiss』と共にアイドル界で輝くために頑張っているわ。
最近ではアイドルの他に、モデルとしても活動しているから、女子からの人気も高いのよ。まあ自分で言うのもちょっと変な話だけど。
それに最近になって、男性の熱狂的なファンが増えてきた気がする。
正直、私はゆめやあこみたいに正統派のアイドルという感じではないから、男性からの人気はそんなに無いのかなってずっと思っていたんだけど、それもきっとすべてこのおっぱいのおかげだと思ってる。
やっぱりアイドルはいろんな人に愛される方がいいもの。
今となっては信じられない話だけど、ちょっと前まではこのおっぱいがあまり好きじゃ無かったの。
自分のおっぱいに誇りを持った方がいいと私にアドバイスをくれたみんなには本当に感謝してる。
もちろん今でも、自分をすべてさらけ出すために下着は着けてない。
でもそのスタイルに変えてから、私のステージはますます輝きを増すようになったの。
大胆におっぱいを揺らして、大胆にお尻を見せ付ける。
これが今の私のステージ。
ファンのみんなは私を見て幸せで、輝いていられる私はみんなを見て幸せ…
今が一番、アイドルを始めて良かったと思えてるかもしれない。
これからも輝き続けていられるように、一生懸命アイカツを頑張って行くわ!
なんか最終回みたいなシメですけど次回が最終回的なヤツです(エピローグみたいな感じだけど)