逆説的に、金の力が無ければ無力である。
彼の好む獲物は刃物ではない、鈍器である。
彼は、シリアルキラーの家出少女を試した。
彼女は再婚の多い不安定な家庭の出身者である。
ネグレクトを受けたという側面ももちろんある。
詐欺、窃盗、破壊行為など軽犯罪を犯している。
そんなシリアルキラーの彼女を『悲願花』と名付けた、名付け親は『悲劇花』と影では呼んでいた。
そんな彼女の異常性を試した。
刃物か?
鈍器か?
被験者は自分の経営する闇金に潰れた無職の女性。
パチンコ依存症でその軍資金のために金を借りた。
そんな被験者を彼女はまずは、鈍器で足を砕いた。
被験者の逃走をまずはしないようにしたのだった。
被験者は怯えて足がすくんでいた。
が、遂に強制的座り込んでしまう。
次こそ驚愕だった。
砕いたばかりの足に刃物を突き立てたのだ。
これには、初めてにしては中々やるな、と思った。
被験者は悲鳴が響く、鶏の首を絞めるのに似てる。
「楽しいですね」
と、彼女は顔を恍惚しながら泣き笑いをした。
自分があとに戻れない、そんな絶望を感じた。
「流石…………ニューミユキちゃんだねぇ」
ベロリと舌なめづりして彼女の偽名を言う。
「いやぁ、まさか、ここまで壊れてしまうとは、これはもう、才能としか言うしかないね」
「はい、助けてくれてありがとうございます」
それは何に対しての感謝か。
狂おしい可能性を拓いた事に関する事柄か?
遂に新しい自分、己を覚醒させた事なのか?
そもそもタクミは、自分では、あまり犯罪をしない、闇金にしても、問題を起こした私立の優等生を指導したり、麻薬にしても神父を矢面に立たせている。
犯罪コンサルタント。
といえば、イギリスの犯罪界のナポレオン、ジェームズ・モリアーティを連想させるのは容易い。
彼は、犯罪界のヴラドと呼ばれた。
その酷い残虐性はそう例えられた。
殺人事件を誘導する、殺人教唆ではないにせよ、その数々の暗躍で吸血鬼と呼ばれる。
話は逸れるが江戸川乱歩の吸血鬼は、美貌の倭文子を巡り、三谷と岡田は決闘を行い、岡田は敗れる。その後、岡田は失踪する。その頃から、唇のない怪人が倭文子の周囲に出没する。そして、彼女の回りで次々と人が殺されていく。こらえかねた三谷は、事件の解決を名探偵の誉れ高い明智小五郎に依頼をする。しかし、唇のない怪人は明智を挑発するかのような行動に出る。明智はその名推理で少しずつ事件の真相に迫っていくのだが、真犯人は意外にも…。
という話である。
確かに彼女を巡って対決する恋敵はいた。
その恋敵こそ、彼女を心から愛した偽善者、或いは光だが、彼女に心から愛された純正悪、例えるなら闇、タクミは、天使と悪魔なら、悪魔の方が相応しい
無論、どれも都市伝説にすら上がらない裏社会の忌憚である、忌憚にして、口を閉ざすしか方法の無い事例だ。
のちに彼は彼女をこう称賛した。
「北欧神話のヘルが現世に現れたような被害だな」
余談だが、彼女はDies iraeのマリィに似ている、彼女に近づく者はすべて死んでいく。そんな彼女を人々は嫌悪し、忌避し、恐怖し、彼女は誰とも触れ合うことなく育っていく、彼女は彼岸花というには相応しい、彼女そのものが『彼岸』であったからだ。