第115話
「このコロニーから出ていきたい……」
俺様の夢はそれだった。
「ハイスコア!おめでとうございます!」
学校にあるコクピットを模したシュミレーションのモニターから虚しくメッセージが流れる。
「やったな!」
「やっぱりタツはすげぇな!」
「イシュー・タツくん、今回も素晴らしい活躍だったね、くじら座付近のゾクシュが駆逐されるのも時間の問題だよ!」
「アイン教官、ありがとうございます」
フン!こんなクソゲーやってられるか!どうせならジュリエッタ教官に身体で褒めて貰いたいね!俺はまだ童貞なんだ!あの柔らかくて小さなケツにぶち込みたいね!
シュミレーションから降りて無機質なシミやゴミが一切無い広い白い廊下を歩く、俺の目の前にクソババアがやってきた。
「タツくん、ハイスコアだったらしいが君ならまだまだ行ける、精進しなさい」
いつもこうだ、家にはろくに帰らないで仕事仕事仕事、お母さんとかママとか呼んだら平手打ちされるだろう。
いつだったか、コロニーのサマーキャンプの時、ガキにしてみたら高い崖から飛び降りないといけなかった事がある。
「大丈夫、私が抱きしめるから!」
あのクソアマはそういう事を言ったが、キャッチせずに俺は地面に激突した!
「そうそう人を信頼するものではない!」
嘘つきババアは理不尽にそれを怒鳴ったのだ!俺はまだガキなんだ!
「立て!この程度の低いところから着地に失敗するとは何事だ!設定に失敗したか……」
更にご飯のカレーの時にそれは起こった、いやお鍋が2つある時点でおかしいと思ったんだ!
「信頼するものではない、と言っただろう!それは下剤入りのカレーだ!」
その日はずっと腹痛と下痢に襲われた!楽しいキャンプの思い出なんて何も無い!
それ以降俺は心を殺してクソババアの望む兵士として演じ続けた。
俺はまだ10歳なんだ……背は高いけどまだ子供なんだ……授業が終わり、死んだ魚のような目で喫茶店に向かう。
「こんにちわ、何時もの個室だな」
店長のクランクのクソジジイが挨拶をする、こいつはかつて兵士だったらしいが年波には勝てなかったので、このコロニーで寂れた喫茶店をやっている、売上はアインなどの元部下や後輩が来るので、トントンといったところらしい。
「紅茶と日替わりケーキ」
俺は注文をする、するとクソジジイはこう返答した。
「最近は小麦や果物の値段が高くなってね、全くインフレが酷いよ」
うるせぇ!そんな事は知った事か!大した味がしないのによくそんなこと言えるな!
「どうぞ、注文した紅茶とシフォンケーキです」
一口食べて、一口飲む、まぁ普通かそれ以下だろう、不味いと言ってもいい。
カランカラン、ドアの音が鳴る。
「ふーん、相変わらずしけた店だなぁ」
「そう言わずに……」
「コーヒーとショートケーキを」
かしこまりした、とクランクのクソジジイはいい取り掛かった。
男はなんと俺の個室に入ってきた、何だこいつ殴りつけてやろうか!
「おおう……タツ、久しぶりだなぁ……」
感慨深く男はそういった、革ジャンにジーンズ、プリキュアのシャツを着た父親だった。
「なんだ……クソ親父か……」
寂れた喫茶店とはいえ、クソ店主に聞かれる事は無いだろう、こいつは一体何の仕事をしているのかわからないが、クソババア曰く「立派な人」らしいからね。
「背が伸びたな、そうだ何か買ってやろうか?」
プリキュアのグッズ、とか言ったら笑うだろうし、部屋に置いたらクソババアが許さないだろう。
「笑わないし、俺だってプリキュアは好きだぞ!」
なんだ……こいつは!俺の思考を読み取れるのか!
「嗚呼、済まない、心を覗くなんて野暮な事はしないと誓うよ」
マジかよ……ニュータイプとかXラウンダーとか呼び方は色々だが先読みや人の心が分かるやつは教科書で読んだことがあるが……
「フーム、まぁまぁだね」
クソ親父……いや親父はケーキとコーヒーを食べたり飲んだりした。
「フン、このクラスのやつならいくらでもあるわ!」
「最近は地球や火星から送られる物資の値段が高くなっているらしいからな」
クランクのクソジジイの受け売りをした、親父はこう答えた。
「嗚呼、最近じゃあゾクシュなんて雑魚になっちゃったからね、昔は核ミサイルとかバンバン撃てたしな」
「ああいうのは、危険すぎるから禁止されたって聞いた」
「そう言うのは建前だよ、反乱を起こされた時に使われたら面倒だしな」
「大人達はそうやって誤魔化しているのか!?」
「最近はどうもロボットアニメは人気がなくてねぇ、プレイヤーもプリキュアだとか魔法少女とか異世界モノとかそう言うものが流行っているからなぁ」
「プレイヤー?魔法少女?異世界モノ?何を言っているんだ?」
日本語で会話しているのに、微妙に噛み合わない。
「まあ、お前は今10歳か、身体の方は大きいし、繋も真実を知ったからお前にも教えてやろうか」
クソ親父は人差し指を僕のおでこに当てた、次の瞬間物凄い情報が頭の中に一気に流れてきた。
鉄血のオルフェンズ、引きこもりニート、ある日突然異世界に、サクラさんという先輩、童貞喪失、死ぬべきだったママ、現実世界、肉体変化、改変能力、タイムスリップ、破壊された地球、ゾクシュの生みの親、アルファという管理者、平行世界、ベータという別の世界の管理者、2周目の世界、同窓会、寺山さん、東村さん、おじいちゃんとおばあちゃん、すき焼き、パパが嫌いだった魚料理、ゲッターロボ號………
「なんなんだよこれ……」
次の瞬間、俺は目と口から血が溢れて出てしまった。
「おおう……すまんすまん!」
パチン!
そう音がなると一瞬で血は消えた。
「なんだよ……今までの世界は作り物だって言うのかよ!」
流石に俺は怒った、しかしある疑問も浮かび上がった来た。
「じゃあこのコロニーを作ったのは誰だよ……技術者じゃないのか……」
要するにブルーカラーの連中は必要はないのか?
「いや、もう分かると思っているだろうが、このコロニーを作ったのは技術者だ」
「このケーキの材料は?」
「無論、地球や火星、もしくは農業用コロニーの人達だ」
「全知全能では無いと?」
「そうだ、その証拠にお前の存在が一番だ」
俺が?何を言っているんだ?
「かつて俺は冥王星の戦いにおいて、一度この世界から出ていかなければならないことになった、結果として三年後という長期的な留守だ」
「ああ、俺はその間に生まれた事は知っている」
「計画にはなかった、カルタが勝手に俺の精子を使い産んだのだ」
「本当にあんたの精子なのか?」
「それは調べてある、背が10歳のくせに高いのもその遺伝子改良によるものだ」
「だからなのか……」
色々合点がいった、そして何故かあの女のせいで産まれたのに安心もした。
「その能力で色んな所に行けるのか?」
「ああ勿論、ただし一通りの試験を受けないといけない」
「テストあるのかよ……」
「いくつかの世界でクリアしなければならない」
「その世界って選べるのか?」
「こちらから指定する事もあるが、自由に選んでも良い」
俺は少し考える事にした、あまりにも都合が良いと思ったからだ。
「長考に入ったようだな、良いだろう時間をやる、ここの代金も払ってやろう」
親父はその場で手からケーキを出していた、気前の良い男だが、見つかったら怒られるもんだと思うぞ。
「ただいま」なんて言葉は言わない、誰もいないからだ。
俺は制服を脱ぎ、シャワーを浴びる、下着は使い捨てで脱いだらゴミ箱に捨てて白い壁にある、ボタンを押してタンスにある新しい下着を着る。
制服は流石に使い捨てでは無く、洗濯機に入れる、乾燥やハンガーに入れてくれるのでありがたい。
更にそこから、私服に着換え、ベットに寝転ぶ。
横を見ると白い壁があるが、そこにはクソババアに昔買ってもらったロボットの玩具がある。
「ロボットアニメって糞だな、プラスチックや金属の塊やデータの集まりで、映像も糞だな」
ゴテゴテと趣味の悪いカラーリングと工業デザインを無視した代物で名前も忘れた。
「アイドルとかプリキュアの世界にでも行ってみたいよな……魔法使いとか……」
俺は少し腹が減ってしまった、ベットから起き上がり、やはり白い壁にある、冷蔵庫から鯛でできたキューブを半分食べて、水を飲む。
机のタッチパネルを操作し窓を開く、そこにはいつも見た事のあるコロニーの風景が広がっていた。
遠くに学校の校舎が見えて、近くには白く無機質な寮などのビルがある、無論、今俺のいる寮もその一つだ。
「考える必要はないな……よく考えると」
俺は体内にあるナノマシンを起動させ、電話を起動する、受話器を持つような仕草をした。
「親父、やっぱり決めたよ、能力を貰うことにしたよ」
『そうか、じゃあ株分けだな』
「……どうやって貰うんだ?」
「いやもう託した、念じれば一通りの事はできる」
そこで通話が切れてしまった。
『キューブよ消えろ!』
その瞬間、その通りになった。
「マジかよ……やべえ……」
人だって消せるんじゃねぇか?この力は危険すぎるから使うには気をつけた方がいいな。
「テキトーに行ける場所を選択したらエライことになりそうだな……」
コロニー内の防疫というのは完璧に近い、しかし行く世界がそういったウィルスや細菌があったら俺は病気になってしまう。
「あと……治安が悪いとか災害とかそういうのも勘弁だな……」
そう、あくまでも、あくまでも観光で良い、勿論ロボットだのモビルスーツに乗らなくて良い世界。
俺はそういった条件をナノマシンで脳内にメモし、念じる。
『この条件を満たした世界に連れて行ってくれ!』
その瞬間、別の世界に飛びされていた。
「どこだここ!」
分からないなりに楽しんでいた俺がいた。