「貴方が、ゴウダ・ケイ君?」
僕と同年代らしき少女に声をかけられた。
サクラ師匠とタツくんと一緒に他の師匠の集まりとその弟子たちの集まりに3人でやってきた。
周りからは「あのレジェンドのサクラ師匠がやはりレジェンドのトモ先輩の息子を二人も育てるなんてやはり血筋は争えないな!」
みたいな反応でつまらなかった。
誰もレジェンドの息子として見ていて、僕本人を見ていないのである。
キャンプ場のベンチに座りジュースを飲んでいるとそのロングヘアーな彼女が挨拶をしてきた。
服装はジャージでボロボロである。
「そうだけど何か?」
すると彼女はボロボロと大粒の涙を流し始めた、こうなると僕は困惑するしかない。
「あ、あの……ハンカチをどうぞ……」
僕はそれを差し出すと彼女は涙を拭いた。
「ありがとう、やっぱり優しいのね……」
まるで僕を知っているかのような口ぶりだ。
「あの……何処かでお会いしたのですか?……」
「……」
心を読もうとしてもかなり強力な力の持ち主だとその時に初めて分かった。
嗚呼、本物の天才っているんだな……
「私の名前はアリサ、あのこれ、私が書いた小説です、あのこれメアドとライン……」
ますます混乱してしまう、たしかにモテるがここまで積極的な女性は見たことがない、小説なんて……
「……まぁ、君はモテるからね」
流石にサクラ師匠も困惑していた。
「すいません、彼女は何者なんですか?」
彼女の担当している師匠に話を聞いていた。
「恋愛冒険小説か……」
僕は帰りで、師匠の車に乗ってそれを読んでいた、ボーイ・ミーツ・ガールのシンプルな始まり。
「どうも彼女は天涯孤独らしくてね……担当者も詳しくは知らないそうで、あの歳で一人暮らしだそうだ」
「世の中には苦労している人がいるんですね……」
師匠も怪訝な顔をしていた、やはり彼女の凄さは僕よりも海千山千のベテランである彼の方が感じ取ったのかもしれない。
素直に僕はそういった、しかし後々思えば半分正解で半分誤りだったというのが事の真相である。
「たまには親の所に帰りなさい」
僕達二人はサクラ師匠にそう言われた、僕は現実世界でヒーローの真似事をしており、今日も強盗から人を守ったがボロボロになっており、しぶしぶそれに従った、またそれはタツも同じ事だった。
「俺、あんなババアの顔見るの嫌だよ〜なぁ交換しない?一生のお願い!」
「……」
こういうセリフは人生の中で何度も聞かされるだろう、その為僕はこういった。
「その代わり、貸しにしましょう、僕も何かあった時の為に絶対に言う事を聞いてください」
彼は二つ返事で了解してくれた。
……まさかこの「一生のお願い」が僕の人生の中でも極めて重要な時に使われるとは思わなかった。
ふと栞をして、外を見ると夕方の山が赤く染まっていた。
「うひょーこんな豪邸に住んでいてあんなにボロボロになるまで働くなんてどうかしているぞ、全く」
俺はケイの兄貴と約束をして、身体を取り替えて休日を過ごす事にした。
こんなに快適なら定期的に身体の入れ替えや背を小さくした方が良いと思う。
「ふんふん、きゅうじつ〜」
俺はカバンをグルグル回しながら庭を歩いていた。
「おっといけねぇ、ここからはケイとして
演技しなければ!」
「ママ只今帰りました!」
丁寧に靴を揃え、手洗いうがいをして、きちんと挨拶をする、一人暮らしならば絶対にしないことである。
「おかえりなさい、コロニー産の良い牛肉が入ったから、肉丼を作ったわ」
おお、テレビや新聞、雑誌などでその顔を見るが、一人息子がいるとは思えないくらい美人だ!おまけにいい匂いがするな……
普段はスーツ姿だがハートマークをいっぱいつけたカワイイエプロン姿だった。
(嗚呼、おじさんは裸エプロンにしてバックでこのキッチンで襲っているんだろうなぁ……)
きちんとテーブルマナーを守り、お風呂に入る。
「すげぇお風呂!こんなお風呂にいっぱいオンナ共を入れたら皇帝みたいだろうな……」
「入るわよ……」
マジか!バスタオルで入ってきた!
そのラインは布越しからでもはっきりとわかる、本当に経産婦か?
はらりとタオルを外すと、それは青い水着だった、……これはこれでありだな!
「今の反応ではっきりとわかったわ、貴方ケイじゃないわね……」
ギクッ。
「メールを受け取った瞬間から変な予感はしていたんだけどね……家に入ったときから何から何まで、他の人は騙せてもダーリンと私の目は誤魔化せないわ……ケイは
あのエプロンはダサいと思っているし、毎年の水着のデザインは女性である私が試着するけど、年甲斐もなくそんなことするんじゃないって反応でわかるわ……」
熱いお風呂に入っているのに一気に青くなる俺だった、ダーリンって本当に使う人いるのかよ!
「パパにこんなこと知られたら貴方殺されるか、ボコボコにされたかもしれないわ……」
「こ、殺される……」
「私がなんとかして誤魔化すから、不安になる事はないわ……」
「あ、ありがとうございます、フミタンママ……」
「そう、血の繋がりはないけどママって呼んで良いわ……」
「ママっ!」
ムギュー!思わず抱きしめようとしておっぱいにTouch!してしまった。
『お触りは駄目よ♡オナニー』
人差し指でシーをされてしまったかわいい。
俺は蛇の生殺しのママ、ママの淫らな身体を想像したまま眠れないママ過ごした。
おじさんが帰ってきた瞬間は生きた心地がしなかった。
あのオンナのカンを具現化した鋭い目はどこかで見たことがある……嫌な目のように見えて、懐かしいあの目。
「やれやれ……すぐにわかる事なのにな……まぁふたりのロッテみたいなものか……」
「貴方、それはなんですの……」
「まぁ昔あったそんな話があったんだよ、アニメにもなったし、ほらこれだよ」
俺は引っ越しの準備をしていた、おふくろとフミタンの相性は悪いというか、一方的に冷たい感じがした、相変わらず部屋に引きこもることが多いし、ちょこちょこどこかに出かけている。
「貴方……下品な本は無いんですね……」
それは神世界に置いてある。
パラパラと引っ越しの荷物である、子供の頃読んだ本を彼女は見ている、漫画でわかることわざとか児童文学とかケイに読ませるか、学校に寄付するのもいいな。
「結構色んな本を読んだが、すっかり電子書籍で読むようになったからな……」
古い紙の本をパラパラとめくった。
「こういう本を読んでも結局はスケベな人間になるのですから、呆れますわ……」
それはタツに受け継がれていると思う……
「申し訳ない、まぁ結局は忘れてしまう話も多いけど、いつか思い出してしまうものさ」
フィクションから元気を貰い、恩返しがしたい、その想いは今目の前にいる女神を見てしみじみ想う。
「嗚呼、この本は駄目だな……」
「面白くないですか?」
「いやそれは人それぞれなんだけど、あんまり覚えてないし、そもそも未完なんだ……」
「カンベ・ヘイジロウの冒険シリーズ?」
「母さんの知り合いが書いた作品さ」
母さんと一見似てないのに、どうして思い出すんだろう。
そうか、鋭い目だ、オンナのカンを具現化した目、それは獲物を狙う賢い女狐の目であり、雌ライオンが子供の為に獲物を狩る厳しさと優しさがつまった目だ。
そもそも気に入った女性に能力の一部を与えていたのだから、すぐに分かるのだ、基本的に能力は年長さんが上なのだ。
その女狐……もとい雌ライオン……もといカルタおば……いやカルタママと言ったほうが良いだろう、彼女に抱きしめられている。
「ごめんなさい……息子に久しぶりに会えると思ったからたまにはお風呂に入ろうと思って……」
全裸で。
テレビで見るときは女武者の様な凛々しさで筋肉も鍛えてある……流石に軍人だ。
「ねぇ、今日はママだと思って甘えていいわ……」
母さんと違う匂いだが、どこか懐かしく、そして他のメスの様に、オトコを誘惑させるフェロモンの様な匂いだ……
「貴方のお母さんに聞いたわ……地球や火星では息子の包茎を治したりピュッピュッさせるのはママのお仕事なんですってね……」
絶対に違う!しかしここでワンワン泣かれても困るので仕方なく黙って搾精してもらった。
僕は元の姿に戻った、メールを見るとタツもバレバレだったらしい。
それにしてもアリサさんに感想のメールを贈ったらびっしりと返答が来た、困る。
「うふふ……♡こうやって子供と寝るのは久しぶりだわ……♡」
然し見ると聞くとでは大きな違いだ……タツに話を聞いた時には魔女みたいな話を聞いたが……主観にしても違いすぎやしないか?
人間とは人によって態度を変える生き物だ、いや態度を変えない人もいるがそういう人は嫌われるだろう。
それはさておき、カルタママにさり気なく聞いてみようか。
「明日も休日ですね」
「どこに行く?ここらへんのコロニーならばキャンプがオススメよ!」
渡りに船だ、あたりきしゃりき(意味不明)
「タツ君もそこに行ったんですね」
「ええ、カレーを作ったり」
「あの変な薬とか入れませんよね?」
「するわけ無いでしょそんなこと」
(嗚呼カワイイ……精力剤でも入れようかしら……)
心を覗くと全く嘘ついてない。
恐らくは飛び降りた過去も事実とは違うのであろう。
「明日行きましょう」
結論から言うと、キャンプではなんの成果もなかったというか、ますます彼の記憶が曖昧なものではないか?と思った。
そもそも普通のキャンプ場でサイコメトリーをしてそういった過去は浮かび上がらなかった。
ただカルタママが常にルンルン気分だったのは僥倖だったかもしれない。
無事にキャンプを終えると車の中で重要そうな書類に目を通していた。
治安悪化などによる不安定な状況はくじら座では問題視されているので、そういったアメとムチの事について考慮していた。
「そうだわ!家に帰る間車の中でバーチャルリアリティマシンで遊ばない?新しいシナリオが入ったのよ!」
「そうですか、あまり最近はアレで遊ばないのでかえって新鮮かもしれません」
さっそくナノマシンを起動させる。
大人気のファンタジー世界のやつ。
僕は典型的な剣を持った勇者らしい、そして彼女は僧侶。
「オンラインマルチプレイよりも二人でやるのが一番ね!」
バーチャルリアリティマシンは現実逃避の機械だ、したがって課金だの人間同士のトラブルは避けたい人もいるので、そういった人の為のシナリオがあるのだ。
「それにしても強いですね」
「ええ、部下にも内緒だけど疲れているときはこれが一番なの!」
「……もしかして昔からやっていてタツもやっていたんですか?」
「ええ、勿論、勇者の血を継ぐ息子のシナリオよ!悪い魔女と戦ったり……」
それから延々とつきあわされた。
「バーチャルリアリティマシンは社会問題になっていると言われていますが?」
「本や映画と同じよ、麻薬でもなんでもないわ」
「そうですか、そうだと良いですね」
僕は彼女が宿屋で寝ている間にデバッグモードを起動する。
「カレー……崖……魔女……このシナリオか!」
恐らくはキャンプにいった日の夜かその前後にバーチャルリアリティマシンを起動させて遊んだのだろう。
小さい頃は記憶がごっちゃになってトラウマになり、現在に至る……っと。
因みにこの話をタツしてもアッサリと和解することはない、それは大分先の話だ。
タツが他のことに夢中だからだ。