俺も卒業出来ません。
それは
「このクズ!警察に突き出してやる!」
僕は強い言葉でひったくり犯を羽交い締めする。
ガッ!と顎に鈍い音がする。
アリサさんは無言で顎にクリーンヒットさせて気絶させる。
「いくらなんでもやりすぎなんじゃない?」
「こう言うクズは殴った方が良いのよ」
こ、怖い……僕よりも場慣れしていてベテランの貫禄すらある。
ガスッ!僕も真似をしてみる。
「……い、いや貴方は首をキメなくていいのよ……」
どうも悪人にどのくらいやったらいいのかよく分からない。
「ありがとうね……二人共……何かお礼でも……」
上品なおばあちゃんが御礼の言葉を言う。
「「いえいりません」」
「せめてお名前だけでも……」
そして犯人は警察に逮捕された。
「全く、せっかくのデートが台無しだよ、ごめんね、アリサさん」
「ねぇ小説を書いて?」
「え……小説を?書いた事ないんだけど……」
僕は改めて、アリサさんとデートをする事にした、公園のベンチで座りながら彼女はそんな事を言う。
「私が書いたのだから今度は貴方が書いて?」
いつも彼女は唐突だ……今回のデートもそうだし、なんでこんな女の子と僕は付き合っているだろうか……
「それって交換日記やラブレターって、こと?」
「それで構わないわ、貴方が思うならそうなんでしょう?貴方が書きたいものを書いて♡」
「それはジャンルを問わない?」
「構わないわ」
僕は鉄血世界に戻り、小説の書き方を学ぶ為に学校の図書室に行った。
「面白い本を教えてくれる?パパ」
「カンベ・ヘイジロウの冒険シリーズ」
一応、児童文学のレーベルで出版されているが、ジャンルは「何でもあり」と言ったほうが良いだろう。
SF、時代劇、超能力、巨大ロボット、ファンタジー、妖怪、ホラー、スパイアクション、ミステリー、恋愛、政治、社会問題……エトセトラエトセトラ。
「カンベ・ヘイジロウの冒険でやってないのはセックスぐらいのものだ」
と大人のファンから言われるくらいだ。
ある日、カンベ・ヘイジロウという少年が力に目覚めヒーローになり仲間たちと戦うというシンプルな導入ながら、その何でもありな荒唐無稽な娯楽性とぎりぎり説教臭くならない作家性に保たれている名作。
「しかし、年齢の為か作者の体力の限界も来て、あと1巻という所で未完のままだ」
「……そう、とってつけたような設定だね……」
「しょうがねーだろ、この作品の作者もここまで続くとは思わなかったし、俺の帰還で終わる予定がこうなったし、タツの存在も思いつきに近い存在だからな……」
「タツくんが聞いたら怒るよ……」
「まぁ、不謹慎な言い方になるが、作者が死んでも意思をついで最後まで書いてくれる作品もあって、それはそれで幸せなのだが……」
パパは感慨深い顔をしながら「ゼロの使い魔」の単行本を僕の学校の図書館の本棚に入れた。
「ただ、カンベ・ヘイジロウの冒険は不可能に近いし、是非作者が最後まで書いてほしいよ……途中で読むのをやめたけどな」
「パパはなんで読むのをやめたの?つまらなくなったの?」
僕は質問をした、内容は全く読んでないが知りたくなった。
「つまらないというのは個人の主観的なものだな、卒業したんだよ」
「卒業……した?」
「嗚呼、例えばスター☆トゥインクルプリキュアが好きな女の子がいるとする、番組が終わって寂しいな〜と思う、しかしヒーリングっど♥プリキュアが始まってそれが好きになる、それが終わればトロピカル〜ジュ!プリキュアが好きになる」
「その次は?」
僕もタツもプリキュアシリーズが好きなのだからその先が気になった。
「俺も次のタイトルはわからん、その女の子はプリキュアシリーズを見なくなる、卒業するのさ」
「……それは男の子の仮面ライダーや戦隊ヒーローやウルトラマンシリーズでも?」
勿論、どれも好きなシリーズだ。
「嗚呼、勿論だ、ガンダムシリーズだと少し勝手が違うけどな」
父さんは「閃光のハサウェイ」の本を本棚に入れた。
「卒業する理由は?つまらないと思ったの?」
「それも有る、背伸びしたくなったり……場合によっては時間帯や放送時間が変わるとかな」
「貴方やケイはネット配信やSNSで褒め合ったりしないで卒業してもらいたいものです」
ママの冷たい目が僕とパパに突き刺さる。
「ん……待てよ……そうかそう言うことか……」
バサッと本が落ちる、パパも倒れる。
「貴方!貴方どうしたの!」
「パパ!……透けてる!」
そこには半透明になっているパパがいた、抱きかかえようとするが、スルッと通過する、まるで幽霊のようだ……
「ママ、力を集中させよう」
「え……えぇ……」
「さっきまでの勢いはどうしたの!」
僕は大切なパパの為に声を上げた、するとママも力を集中されて二人で持ち上げる。
「この歳で介護されるとはな……」
「何馬鹿な事を言っているんだよ、説明してよ!誰か説明してよ!」
僕はレイズナー第一話のセリフを叫んでしまった。
「ああっ……♡いいわぁ……♡坊っちゃん来て……♡」
「坊っちゃんはやめろ」
「申し訳ございませんでした……タツ様♡」
俺はネーナ・トリニティの膣中に何度目かの射精をした後、流石に休む事にした。
「シャワーを浴びてきます……♡」
「嗚呼、構わんよ」
俺は高級ホテルの一室にある、冷蔵庫から買ってきたビールを取り出し、これを飲む。
「かー!美味いな!」
改変能力で大人になった為か、舌もそう感じる、ガキのままだったらこうはいかないだろう。
俺もシャワーを済ませる、二人共ガウンに着替えた、やはり彼女の胸は膨らんでいてそこに注目した。
「景気はどうだい?」
「戦う方?それともこっち?」
モビルスーツの操縦の仕草をした後、右手の人差し指で下を指した、つまりは娼婦としての仕事だ。
「後者の方だな」
「まぁぼちぼちって所ね……」
俺はビールの缶を指しだした、彼女はそれを飲む。
「やれ、仕事が辛いだの、奥さんに浮気されただの、勉強が苦しいから童貞を捨てたらスッキリすると思った男の人もいたわよ」
ケラケラと笑いながらそう言う、その笑顔は嘲笑ではなく、憐れみも入っているように思えた。
「地球のお客様だったか、もうゾクシュが存在しない!あんなものは特撮だ!なんて言いはる人もいたわよ」
「まぁここらへんのコロニーに関しては皆無だしな……くじら座では多いのだが……」
「たっぷりと抜いてやってあげたけどね!」
更に飲む、あんまりへべれけになるのもアレなのでさっさとチェックアウトした。
「えへへ、まるで恋人みたいだね」
「からかわないでくれ」
このネーナはこの世界に召喚されたというか作り出されたというか……
まぁいい、兎に角最初のネーナということにしておこう。
「寒くなってきそうだ……」
「このコロニーではね、ねぇ!あのぬいぐるみ欲しい!こねこ2つ欲しい!」
つまり親父のお下がりのオンナではあるが、お下がり玩具を気に入るように、嫌いではない。
「分かったよ、買うよ」
どうせ小遣いは潤沢にある、俺は買った。
「さっきの話だが……ゾクシュがいないと言うやつ」
「ああ、多いらしいな……」
トモおじさんとクーデリアやオルガなどのおエライさんの会話を社会勉強と称して許可をとって聞いてみたら、そう言う話があった。
「昔は、地球平面説というやつがあってな……」
「大昔の話でしょう、バカバカしいわね」
「それが人類がロケットを飛ばす時代になっても信じられていたという」
「あくまでも極少数派でしょ?」
ギュッとぬいぐるみが入った紙袋を抱きしめる。
「ああ、確かに少数派だ、アメリカには数万人いたらしい」
「……マジ?」
無論、コロニーの人口比率を考えても数万人はバカにならない数字だ。
この商業施設の多いコロニーにどのくらいいるかは分からないが。
「マジだ、1%でも信じるやつがいたらバカにならないからな」
「今も昔もバカはいるのね……」
「今も昔も聡明なやつはいるけどな、おまえのように」
「褒めても何も出ないわよ」
ニッコリと笑った、俺を懐柔したのは正解だ、ケイはヒーロー活動とアリサという少女に夢中で鉄血世界の後継者は俺だと言っても過言ではない。
「俺こそが聡明なる宇宙の王だ、ワハハ」
するとけたたましい、警報の音が鳴り響く。
「これは訓練ではありません、ゾクシュがきました、ゾクシュがきました!近くのシェルターに避難してください!」
大変だ!とばかりに人々は避難して行く、ネーナと俺も走る。
「ガンダムは?」
「勿論基地に置いているわ!」
彼女はポケットからシールのような物を取り出した、それを貼る。
「飲んだままモビルスーツに乗ってバレたら、あんたのママに叱られるからね!」
「ママっていうな、司令官と言え、司令官と」
「あ〜アルコールが分解されていくの分かるわ〜」
ネーナも長くこの世界にいて寵愛を受けたせいか、徐々に改変能力を得たようだ。
言うまでもなく、俺やケイ兄さんよりかは遥かに下だが。
「おっさんかよ、全く」
俺達は基地に戻り転移する、10歳の俺だが、背の高さから大人と同じくらいで、傍から見れば大忙しの軍人と同じだ。
そしてそれぞれの更衣室に行き、着替えてモビルスーツに乗り込む。
「未知のゾクシュです!どのような武器が通用するか分からないのでとりあえず持てる武器を持たせておきました!」
「ありがとう!勝ってくる!」
俺はメカニックの人に挨拶をして出撃する。
明らかにおかしい、ここのコロニーの襲撃なんて親父が見せてくれた表には無かったはず……
「このたぬき野郎!鍋にしてやる!」
ネーナはそう叫ぶ、そう目の前に映っていたのは巨大な狸だった。