「海寺さんに、井下さん、炭焼さんね……」
「おまたせいたしました」
注文した料理が運ばれる、店内を見ると名前は確かに変わっているが、街にどこにでもある、しかしオシャレな喫茶店で、ジャズが流れていた。
「熱々そうだね……」
「そうですね……うむ美味いですね!」
熱い上にパリッした皮の中はトロトロな中身とタコが入っていた。
「こっちも甘くて美味いや」
タツもそう言いながら舌鼓をしていた。
「僕達は作家を目指しているんだ、同じ高校の同級生なんだがね」
「私は絵本作家です」
それは知っている。
「僕はサッカーなどのスポーツ小説を書いたけど、鳴かず飛ばずでね……スポーツ用品店で働いているよ」
「キャプテン翼みたいものを書けば良いのに」
「僕はああいった作品を書きたいわけじゃないんだよ」
ムッとしたまま、彼はコーヒーを飲んだ。
(どうやら、かなり気難しい性格みたいだぜ?)
僕もそれは思った、映画館で喧嘩をしたのを見ると
「具体的にどういう物を書きたいんだ?」
テレパシーで僕に伝えつつ、タツは質問をした。
「もっとこう、リアルで……魔球とかが出てこない……地に足をつけた作品をさ」
「ふうん、そうなんだ」
テキトーな返事をしてから飲み物をすすった。
(確かに、荒唐無稽な話のカンベ・ヘイジロウシリーズだけど、スポーツの描写は丁寧なんだよな……)
(俺も読んでみようと……)
僕達はテレパシーで会話をしながら、3人の会話に注目した。
「私の作品はね……こういうの」
彼女はカバンから同人誌らしきものを取り出した。
「彼女の作品はねちょっと変わっていてね……」
「サイコロやタロットカードなどで決めるんだよ、展開を」
「それは興味深い書き方ですね」
ペラペラと見ると、確かにホラーというかなんというか、幸運な事や理不尽な事も次々と起こる読んでいて疲れそうな作品ではある。
「彼女はね、良い所のお嬢様なのよ」
おばあちゃんがそういう、若い頃の。
コーヒーカップを右手で持ち、左手でソーサーを持ち、持ち手に指を入れないで飲んだ。
確かに礼儀作法はしっかりしている。
「神様っていると思う?」
「「いますね」」
僕達は即答した、実際にみたし。
「もし、いるとしたら、きっと理不尽極まりないものだわ……」
「そんなものですかね?」
「昔ね、私は川が増水して流された事があるのよ」
一瞬で空気が変わる、シリアスな空気だ。
「幸い助けて人がいて、その人が言ったの、私達は運がよかったって」
「運がよかった……」
僕は真剣に彼女の話に耳を傾けていた。
「私はこう思ったの、運命は神様が決めているって」
「……つまりは小説家を目指しているのも運命?」
「ええ、そう、色んな職業のカード選んで、そこから引いたの」
「そんな人生楽しいですか?」
「ああ、俺も理解出来ないな……」
僕は率直に聞いた、何もかも価値観が違う。
「楽しいわ……すっごく!」
彼女は笑顔でそう語った。
「ごめんなさい……この子お金持ちのお嬢様だからちょっと変なのよ……」
ちょっと変なところが丁度いい。
「人生なんて一冊の本だ、俺の人生は俺が決める、だが何が起こるか分からないけどな」
「前々から考えていたことがある、俺に能力を与えたのは誰か?アルファか?サクラさんか?それとも貴方なのか?それとも未来の俺か?見知らぬ誰かか?」
「いや答えは関係ない!俺の人生は俺が決める!名作か駄作かなんて関係ない!」
嘗てパパが神に対して啖呵を切った言葉を思い出した。
「僕や父さんの考えとは違うけど、まぁ他人の執筆スタイルにどうこう言える立場じゃないから……」
タツも頷いた、恐らく暖簾に腕押しになると踏んだのだろう。
いつの間にか、たこ焼きはやや冷めていて、丁度いい感じになっていたので、僕は食べた、喉も乾いたのでお冷も飲んだ。
「坊ちゃん達も作家を目指しているんでしょう?」
スキンヘッドのマスターがお冷のおかわりをしてくれた。
「「えっ?」」
僕達は困惑するしかなかった。
(ワタシに話を合わせてください)
(貴方は一体何者何ですか?)
(それは後で話します)
「……そ、そうですね!僕達も書いているんです、アハハ」
「まだまだ、完結でないので、お見せ出来ないな!ハハハ!」
三人は「そうなんだ……」という顔をした。
「私の描いた作品はこれです」
おばあちゃんこと、率子さんの作品はやはり手書きの絵本だった。
(未来ではパソコンも使えるようになるのだから、成長しているというか、変化していると言えるだろうか……)
僕はぼんやりとそんな事を考えてしまう。
「えーと話題を変えましょうか?好きな作品とかありますか?アニメや本、漫画でもいいです」
「私はね、伝説巨神イデオンが好き!理不尽な神のような力に振り回される人々のドラマがもうたまらないの!」
両手を顎につけ、フリフリと頭を回す、美しい髪の毛もフワッ舞う、カワイイ。
「僕もイデオンは好きです、あの音楽が素晴らしいですよね、いつかあの音楽を担当した人はゲーム音楽にも参加すると思うんですよ」
三人はキョトンとした顔をした。
「僕はイデオンをあまり見たことがないのだが……」
「ゲーム音楽?」
「何言っているのよ〜チープなビデオゲームにそんな大層なものが使われるわけないじゃないの……」
クスクスと笑いながらコーヒーを飲んだ、ああしまった、未来の話は極力しないようにしよう。
「僕はズッコケ三人組だな、アレは子供達が生き生きとえがかれている」
「はれときどきぶたとか色々とキン肉マンとかも漫画も好きね」
ああギャグが好き……パパと似ているかも。
「俺はパタリロとあさりちゃんが好きです」
その後も取り留めのない話をワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤとした。
「ところで君たちは一体どこに住んでいるんだ?」
「坊ちゃん達はこの店の上に下宿しているのです、これが電話番号です」
このマスター……まさか……タツも気づいたようだ。
「コーヒーのおかわりなどは僕たちが奢りますので」
海寺さんは複雑な表情をしていた……しかしこう返事をした。
「済まないね、今月金欠でさ!」
片手でごめんね、のポーズをした。
彼らの電話番号を貰い、帰ってもらった。
「閉店ガラガラ」
そう言いながら、マスターは「閉店中」と扉の表示にして、内側に鍵をかけた。
「あんたなにもんなんだ!協力者か?」
「恐らくはそうだろうね、でもあまりにも馴れ馴れしい……」
実力的には恐らくはマスターの方が上だが、「坊ちゃん」連呼は勘弁して欲しい。
二人がかりならギリギリのラインでなんとかなりそうだが……
「実は昔……もといアルファ様とベータ様の戦いに巻き込まれたものです、その前にインチキ宗教をしてました」
「戦争って……太平洋戦争……じゃなくて、親父や師匠が巻き込まれたアレか?」
「ああ、思い出した、確か……」
僕はこめかみに指を当てた、その光景はパパが見たものだが、確かにあった。
「ゾイドとかトランスフォーマーに仲間が変身して戦ったアレか……読者も覚えてないのでは?」
「……そんな事を言わないでくださいよ」
マスターはそう言いながら、コーヒーを運んできた、三人前だ。
「さっきも言った通り、二階にそれぞれに部屋をあててます」
2つ鍵を出してきた、なるほど。