第131話
舞台は83年に戻る、僕達は原稿の修整確認、即ち著者校をしていた。
「うーん……これで良いのかな?」
「まぁ良いんじゃねぇの?」
「なんで小説書いているんだろうって時々思ったけど、こうしてみるとなかなかのものだね!」
「自画自賛かよ」
タツくんは飽きれた顔をしながら、ドテッと倒れた、彼も色々とあって疲れていた。
「3人の笑顔が見れたらいいなぁ……」
しかしながら翌日そう上手くいかないということを痛感した。
否定、中立、肯定、海寺さん、若き日のおばあさま、井下さんと見事に分かれた。
ただ心の底ではそうだろうな……とおもっていた。
「……まあ好みの問題もあるし、私としてはすっごく楽しかった!」
美雪さんに慰められて良かった……その後クドクドと海寺さんの説教臭い説教を聞かされたが能力でミュートにした。
「ところで君たちはアルバイトをしているのか?」
「……あ、ないです」
「それは大変だね、良い職場を教えよう」
こうして僕達はアルバイト先をそれぞれ教えてもらい働くことになったが、話の本筋に関係ないので割愛する。
「……あー疲れた……」
タツは肉体労働の仕事、僕はレジ打ちの仕事だが、夕方に帰ってそれぞれ疲れてしまった。
「坊っちゃん達も断れば良いのに、能力を使って」
マスターは僕達の為に温かいココアと大きな鯛焼きを用意してくれた。
「そういう訳にもいかないよ」
「嗚呼、おかげで性格はわかったよ」
「気難しい性格で、先輩風を吹かせるタイプ……」
「喧嘩早いところもあるな……ところでさ……」
タツくんは自ら起こったことを話してくれた。
「ええ、ええ、それは重要そうなヒントになりそうですね……」
マスターがそういったその刹那通信が入る、師匠からだ。
「実はその事なんだが、発信機をつけたのは正解だと思うが……」
腕時計から一つの映像が流れる、巨大な遊園地で遊ぶ子どもたちだ。
「自称カンベ・ヘイジロウが作り出した世界だ、ここがベースで間違いない」
パパでいう鉄血世界みたいなものか……
「子どもたちの身元は既に確認している、家庭環境に問題があったりする子供もいるが、至って問題はない」
「強力な力は?」
「ボチボチと言ったところだ」
「うーん……ガキを洗脳しているとかでもないのか?まぁそんな性格ではなさそうだったしな……」
タツは聞いた実際に見た彼の方が詳しいだろう。
「ないね、寧ろこれを見たまえ」
画面には必死に戦う、巨大な野球選手やサッカー選手、サラブレッドと戦うカンベ・ヘイジロウがいた。
「正義の味方か……」
「だめだ、完全にふりだしに戻った……」
寝ながら鯛焼きを食べつつ、「もうどうにでもな~れ」という顔をしている。
「この巨人達の正体はやはりカンベ・ヘイジロウシリーズに出てくるものだが、最近は凶暴性が増している」
「まじかよ……」
あぐらになって、ココアをぐいと彼は飲んだ。
「原因は勿論不明だが、卒業した弟子たちがなんとかしている」
「鍵はやはり海寺氏か……」
「自称カンベ・ヘイジロウがいない時にも発生するから犯人ではないと思う」
「そもそも主人公がこういうことをするのってイメージが悪くなるし、未来の海寺氏=自称カンベ・ヘイジロウというのはおかしくないか?」
師匠の推測は当たっていると思う。
「動機も意味不明だ、それに我々に害をなすものだったら最初から凶暴なやつを送ればいい」
害をなすもの、でも思い出した、シグマのことだ、僕は聞いてみた。
「うーん僕も詳しくは知らないし、引き継ぎの際の資料で見ただけなんだが……昔ベータではなく、シグマと言われる別の平行世界の人間がちょっかいを出してきたらしい」
「関係ないだろ、それ」
「ええ……」
すると下の階から電話がかかってきた、慌ててマスターが行く。
「はいはい、分かりました」
僕が呼ばれる、下に降りて受話器を取る、
ああ、なんて不便な時代なんだ。
「ねぇ後くん!今度出来たディズニーランドにみんなで行ってみない?」
「えっ!?ディズニーランド?」
井下さんの提案はあまりにも唐突だ、ディズニーランドは確かに83年に建てられたものだ。
タツくんも降りて、話を聞く。
(チャンスだ!海寺のおっさんと井下を結ばせるんだ!そうすれば海寺のおっさんはグランドクソババアに手を出さなくなり、親父の消滅は無くなる!)
人権無視のメチャクチャな事を言い始めた。
「あ……うん……そうだね、うん行きます……」
そう……分かっていたんだ……井下美雪さんは過去の人で僕が好きになってはいけない人なんだ……
「ありがとう!小説の話とか構想とか聞きたいな!次回作とか!」
その後他愛のない世間話をして終わった。
「まるでお通夜みたいな面じゃないか……」
「坊ちゃま!あまりそういうことは……」
「マスターは優しいね……でもタツくんの言うことは間違ってないよ」
「……ああ、さっさとこんな時代おさらばするんだ……」
タツくんも複雑な顔をしている。
僕は部屋に戻った、パパに定期的な連絡をしよう。
原稿のプロットを書きながら通信のボタンを押した。
「人を好きになるってこんなにも辛いことなんだ……」
「まぁ、俺もガキの頃に東村さんという好きな子がいたけどな……」
パパも複雑な顔をしている、分かっている、分かっている、パパは良いよ、二次元の女性である、フミタン・アドモスと結婚出来たんだから……
「しかし、海寺のおじさんは確かに結婚しているが、美雪って名前の人だったかな?」
「え!?」
「うわぁ〜!リーゼントの人がいるよ!」
ディズニーランドで僕達は遊びに来た、タツはお上りさんになっている。
「今時、リーゼントの人なんてどこにでもいるわよ!バカね〜」
若き日のおばあさま意外と毒舌だね……
「じゃあ、あのジェットコースターに乗りましょう!くじ引きで!」
(これなら確実に井下さんと海寺さんをカップルに出来るぞ!)
無論能力によるインチキである、しかしタツくんの計略はアッサリと破綻する。
「いやよ!そんなの!ケイくんと一緒に行く!」
僕は強引に手を引かれ、彼女の相手をされることになってしまった。
「キャー!ミッキーマウスよミッキーマウス!写真撮りましょうよ!」
これで良いのかな?と思いつつ、ミッキーマウスも彼女もカワイイ存在である。
ふと、彼女の周りを見る、初めてであった時に宇宙戦艦ヤマトの乗組員のコスプレをしていた男がいたが、気づかないふりをしよう……
何が
「キャー!ミッキーマウスよミッキーマウス!写真撮りましょうよ!」
だよばかばかしい。
そんな調子で、三次元クソオンナは終始、自分の行きたい所に行き楽しんでいて、なんの為に俺がついていったのか分からない。
「ごめんなさいね、タロットか何かで吉と出たらしいのよ」
「いつもの事だ、安心したまえ僕もうんざり気味なんだ」
と、グランドクソババアと海寺のおっさんはそういった。
……あ、これは二人共うんざりしている。
俺はテレパシーで兄さんと会話した。
(兄さん、俺達はこっちで楽しむ……というか二人を見守るよ)
(そうか、かたじけない、おや……?これは『いる』感じだな……)
『いる』感じ、つまりは能力者がいるという事だ。
俺達はおでこに指を当てつつレーダーを探る。
……確かにいる、しかも十人以上はいる。
(……なんか変だ、警戒はしておこう)
(了解!)
幸いな事に遊園地では何事も起こらなかった。
「あー楽しかった!」
そりゃ三次元クソオンナのあんたはイケメンである、ケイ兄貴と楽しんでいたからまぁいいさ。
帰りの電車で女性陣がぐーすか寝ている間に俺はこういった。
「彼女達を連れて帰ったら、男二人で飲みません?」
彼もうなずいた。
パクパクモグモグムシャムシャ、更にゴキュゴキュと海寺のおっさんは良く食べる。
「遊園地ではあんまり食べなかったのによく食いますね」
「単純に高いからな」
そう言うと焼き鳥をグイッと口と右手で引き抜いて食べていた。
「まぁ、今日は俺のおごりって事で」
「それはいけないな、せめてワリカンにしよう」
「……そうしましょう」
この男の機嫌を損ねるのは危険だ、未来では能力に目覚めているからな……
うん?ちょっと待てよ……未来っていつ頃から目覚めたんだろうか?今度師匠に聞いてみるか……
「まぁあんなところは一年に一回か人生でも一回という人は多いでしょうね……」
未来ではこの人も能力で自分の世界に遊園地を作っているのだが。
「そこだよ、そこ!」
彼は机をドンと叩いた、少し皿やジョッキが揺れる。
「僕が作家をやっているのは、子供達に安く娯楽を提供したいんだよ!」
……こいつ酔っているな、こういう時はハイハイ言っておけば良いだろう。
「ホラ、学校の図書室や図書館で子供達が楽しんでいるのを見たいんだよ!」
「……」
「ゲームやアニメに負けないモノを作りたいんだよ!」
「……なんで作家になりたいと思ったんですか?」
しまった、ついうっかり言ってしまった、長くなりそうだな……
「ああ、僕は高校生までサッカーをやっていたんだ」
そういえばそんな話を聞いていたな。
「恥ずかしながらね、怪我で挫折してしまってね、エヘヘ」
体格の良さを見るとゴールキーパーかディフェンダーか……
「じゃあ、スポーツ用品店で働いているのは……」
「それもある、怪我で暇だった時に、本を読んでね、これなら自分でも書けると思ったんだ」
意外な事に話は短く終わった、そこから小説の勉強をする為に大学受験をし、卒業して今に至ると。
「僕は日本一の児童文学作家になりたいんだ、ワハハ!!!」
ディズニーランドでストレスが溜まっていたその反動で笑顔になった。
結局、焼鳥の味や酒の味よりもそっちの方が印象に残り、俺は帰路についた。
「只今、帰ってきた」
俺は兄貴の部屋にノックして入った、
畳の上で雑魚寝をしていた。
「……どうだった?」
「……彼の小説家としてのルーツを知ったよ」
「そう、今日は大変だったね……またデートの約束をされたよ」
しみじみと彼はそう語った。
「あのなぁ、俺達の世界を守る為にやっているんだぜ?それがデートって!」
俺は怒りそうになった、しかしケイ兄さんはこう続けた。
「一旦、未来に帰ろう、そして海寺氏の故郷に行こう」
「……えっまじかよ」
「大マジだよ、前に君が会ったカンベ・ヘイジロウそっくりの少年、海寺氏という推理は外れではないと思うよ」
「あ、嗚呼、誰だって分かることだろ?」
「でも、動機が分からない」
「ミ、ミステリーは苦手なんだよな……」
ツーツー、そこに通信が入る、師匠からだ。
「二人共大丈夫か?」
「ええ大丈夫です」
兄弟子はそう答える、俺も問題はないと答えた、アルコールを抜く絆創膏を貼りつつそういった。
「こっちでも、シグマの連中が彷徨いていてね……君たちのお父さんの世界にも入っているんだが……」
「それでどうしているんですか?」
「……何もしてない、不思議な事に彼らは観光に来ていると言っていて、別に害をなしているわけじゃない」
「そうですか、こっちのほうがなんか争っている感じなんで」
「巻き込まれてはいないみたいだね」
「当たり前です、そもそも俺達は歴史を変えないために動いているんですから、こうして大人しく部屋にいるんです」
「動いているのかいないのか、どっちかハッキリしたまえ」
「すいません、またそちらに戻って調べたい事があるのですが……」
俺達は簡単に説明をした。
「私も行こう」
本当に引き継ぎの仕事が上手くいっているのか、それとも現実逃避したいのか……
ユーフェミア・リ・ブリタニアの目の前にいたのは、ギャグボールや拘束器を纏っている脂ぎった中年の男だった。
カッターはポケットからリモコンを取り出しスイッチを押す。
「グワワワワ!!!!メスだぁ!!♡♡」
「フフフ、人間というよりまるでケダモノだな……」
カッターはそう言い、立ち去った。
たじろぐユーフェミアに対して容赦なく襲いかかる太った獣。
ドスドスと足音を立てて彼女に迫る。
「いやっ!いやっ!いやっ!」
必死に逃げようとして足がもつれて転んでしまう。
「うへへへ!!!」
彼女の下着が剥ぎ取られて犯されようとしていた。
獣の彼は前戯もなしに挿入をし、彼女に精子を放った。