エッチなシーンがなくて本当にすいません。
「俺、才能がないかもなぁ」
「そんな事無いよ」
「何を今更……」
二人は俺を慰めてくれた、気持ちを切り替える為に窓の外をチラッと見た。
「しっかしど田舎だなぁ……」
「日本にもまだまだこんなところがあるんですね」
ケイ兄さんの言うとおりだ、俺達は現実世界の日本すら知らないのだ。
「こういう世界も守らないといけないのが僕達の役割だよ」
師匠はしみじみとそういった。
森、トンネル、古い看板、海、河、橋、どんどん色んなものが流れている。
「田舎にはなにもないというのはアレは半分ウソだな」
俺はポツリとそういった。
「ところで師匠、この二周目の世界でいつ目覚めたですが?」
「小学校時代の病院のベットだよ、当時は病弱だったからね」
俺は驚いた、師匠がそんな過去を秘めていたなんて……
「じゃあ、みんな小学校時代あたりなんですか?」
「いや、そうではない、何事にも例外があるというか、曖昧というか20代後半でも覚醒するという事はある」
「ふーん、俺達にはまだピンときませんね……」
「君たちは能力で大人になったり子供になったり色々とし過ぎなんだよな……」
師匠は呆れながら、ペットボトルのお茶に手をつけた、飲んだあとに更に追加でこういう。
「そして記憶も融合するんだよ」
「ベータ世界の人間もそんな感じなんでしょうか……」
「ベータの人間もそんな感じだよ、ただシグマ世界になると話は別だよ」
ケイ兄さんは真剣に話を聴いていた、俺も聞いておこう。
「そもそも、シグマ世界はアルファとベータと違って、かなり流通している作品が違うからね」
「うーむ、観光で来ている連中はそういうものを買っているってことが……」
「あるんだよ、彼らは貴金属を換金して、こちらのお金を手に入れているからね、合法だよ」
「それをシグマ世界で楽しんでいるのかな?」
「こちらで転売ヤーや違法コピーすれば話は別だよ、しかし彼らはやらないしね」
「倫理観高いなぁ……」
俺は独り言のようにつぶやいた。
「嘗て、シグマと争っていたのに今は平和だからそれでいいんだよ」
そういう事をワイワイ話しながら俺達は駅で乗り換える事にした。
「石碑だ……」
兄さんがそう言いながら駅の近くにあるそれに近づいた。
「嗚呼、昔ここら辺で土砂災害があってね、痛ましい事故だったそうだよ」
「事故……」
彼はそう言いながら石碑に触れた、沈黙が流れる。
「行きましょうか、海寺さんがいた高校に」
「嗚呼、そうしよう」
「もしかしたら卒業アルバムはないかもしれない」それは杞憂だった。
サクラ師匠が時を止めて関係者をなんとかし、漸くアルバムを見つけられた。
「……ない」
おばあさまと海寺さんの名前は見つける事が出来たが、井下さんの名前を見つける事は出来なかった。
「……どう言うことだこれ」
「あの女は幽霊ってことか?」
「違う……能力者なんだ……いや……能力者になったんだ……」
「ええ、海寺さんはここら辺では有名ですよ、ここで良くお酒を購入したり、ほらそこにサインがあるでしょ?」
確かに古いが彼の色紙があった。
それよりも兄さんが真剣に何かを考えている、俺は黙っておいたほうがいいと思った。
そこの酒屋でお菓子と飲み物を買い、帰路につこうとした。
「……アレはアリサさん」
後ろ姿でもハッキリと分かるとは大したものだ……彼女は花束を置いていた。
師匠のスマートフォンに電話がかかる、彼は「はい、はい」と言いながらも真剣な顔をしていた。
「海寺氏の現在の行方が分かった」
俺達は瞬間移動した。
白髪交じりで丸顔、着ているスーツからしていて高級感溢れるものを着ており、ひと目見ただけで会社の偉い人なんだなって分かった。
「二度目のはじめましてになりますね、私も組織の者です、西川実と申します、直ぐに車を用意したしますので」
名刺を差し出してくれた、○山出版社という会社に属しているらしい。
俺達はタクシーでそこに向かった、やはり組織に属している病院だった、海寺のおっさんは手術を受けていた。
「……おい、嘘だろ……日本一の児童文学作家になりたいって言ってたじゃないか……」
「奥様が見つけていなかったら危ないところでした」
なんでも酒の飲み過ぎで頭をぶつけたことが原因らしい、そういえばバカスカ昔から飲んでいたもんな……
自称カンベ・ヘイジロウが記憶喪失になり、頭を抑えていたのもそういうことだったのか……
「安心してください、我々組織がなんとかしているので……」
俺はボロボロと泣いていた、嗚呼、俺はアイツに友情を感じていんだ……そして続きが読みたかったんだな……
俺は無力だ、だけど組織の大人がなんとかしてくれる。
「早く過去に行ってください、そして若い頃の私に出会ってください」
「行こうか!」
「嗚呼兄さんの言うとおりだ!」
「まず、辻褄合わせをしないといけないと思う」
過去に戻り、俺達はたこ店長の店の2階に戻って話し合った。
「東京タワーでの写真、アレは僕達と井下さんが本来写っていたと思う」
「明らかに不自然だもんな」
「誰が写したのだと思う?」
「うーん、そこらへんの誰かじゃない?」
「たぶんね、まぁ自動でシャッターを切るカメラもあると思うし……」
「いやちょっと待てよ……」
そんなこんなでテキトーに理由をつけて俺達は写真を取ることにした。
その前に、○山出版社に向かった。
「……君たちが未来から来て、組織の一員……」
「一度目のはじめましてになりますね」
白髪もなく、まだ若い彼は半信半疑で俺達を見ていた。
「確かに私も組織の者です、しかしいきなり現れたあなた達を信用するというのがどだい無理な話ですね」
「確かに、ではどうすれば信用してもらえますか?」
「……今日競馬があります、3つレースを当てたら私も信用しましょう、更に!」
「「更に?」」
「あなた達はノストラダムスの大予言をご存知で?」
「あんなもの未来ではデタラメだと分かっているだけどなぁ」
俺はそういった、兄さんもうなずいた。
「そうですか、少しホッとしました、ではあなた達には本物の予言書を書いてほしいのです」
「本物の予言書……」
「ちょっと待てよ、そんなもので何をするつもりなんだ!」
「悪用はしません、私達組織の中で使うのです」
「なるほど、人を助ける為に使うですね」
流石に俺は突っ込んだ。
「兄さんは甘すぎる!人を助けると言って、その助けた相手が悪人だったらどうするんだ!」
「それはこの時代の組織の人達に任せれば良いんだよ」
「……それでやるのですか?」
「やります、但し条件があります、一種の暗号の様にするのです、もしかしたら組織と関係ない人間が読むかもしれません、あくまでも小説としてフィクションということにして、組織の皆さんには暗号解読の表を渡します」
「具体的には?」
「岡山県を岡本県という風に架空の都道府県にしたり、日にちをずらす……などなど男女を入れ替えたりと……」
「なるほど……」
西川氏は腕を組んで考えた、すると肯定してくれた。
「俺からも注文させてくれ、タイトルは『希望の王国』にする」
「それはどうして?」
「ハッキリ言って未来はろくなもんじゃない、83年のあんたたちにとっては信じられないような出来事を俺達は知っている、地震、火事、津波、台風、誘拐、殺人、戦争、パンデミック、毒ガス、テロ……有名な人だって亡くなる……」
二人共真剣に聞いていた。
「だけど、良いことだって色々ある、医療の発達、コンピューター技術の進歩とか、色々と面白い作品も生まれる……だからこそ『希望の王国』という名前をつけたいんだ!野望や絶望じゃなくて希望……」
「さっそく帰って書こうか!」
「あ、その前に三人を呼ばなくちゃ!」
「競馬場も忘れないでくださいね」
こうして俺達は東京タワーで写真を取ることにした。
競馬では勝ったが、「ウマ娘プリティーダービー」のことを話してもピンときてなかった。
僕達はさっそく『希望の王国』の執筆に取り掛かった。
「主人公は親父をモデルにしたほうがいいな……」
「引きこもりはこの時代の人には分からないから、魔法少女にしょうか?」
「いいなそれ、師匠もそうしよう、親父がまどかなら師匠はほむらだな……」
「地震怪人の3ヶ月後に毒ガス怪人襲来と……」
「誘拐怪人のことも忘れないでね」
「巨大な橋のロボットと……」
「暗号表の一部がデキたぞ!」
「この年のアニメも書かないといけないし……」
いつの間にか、僕達はぐったりしていた。
「休むか……」
「そうしよう……」
ぐったりと資料の中で眠っていた……
何時間寝たのだろう、師匠から通信が入る。
「彼女が凄く五月蝿いだよ……」
「アリサさんからか……」
「師匠が能力で追い返せばいいんだよ」
タツくんはそう言う、しかしながら僕はこう答えた。
「不可能に近いか、やろうとしてもかなり時間がかかるよ、なぜなら彼女は本来師匠に匹敵するかそれを超える人間だよ」
「「え……」」
「彼女と決着をつけに行く」
「勝てるのかよ……」
「我に勝機ありってね……」
そこは閑静な住宅街で彼女の家は新築だった。
周りには犬を散歩している人や子供を連れている親子など、余りにも平和だった。
「こういう平和を守らないとな……」
そう言いながら僕は家のドアを開けた。
「おかえりなさい……じゃなかった、こんにちは~」
そう言いながら、彼女は出迎えてくれた。
玄関やリビングの段階で既に違和感はあった。
「新品ばかりだね……」
机や椅子、テレビやニンテンドースイッチなど全て新しいものばかりであった。
「どこで買ったの?」
「師匠がクレジットカードで買ってくれたの」
そもそも師匠がいるのかどうか分からないし、お金なら彼女はなんとかなるだろう。
「わぁ、唐揚げだ!」
「大好物でしょう?」
恐らくはテレパシーか過去で僕に聞いたんだろうな。
「まずは君が食べてよ」
「えっ……」
流石に彼女も戸惑ったようだ、何か毒を入れている可能性がある。
「頂くわ、うん美味しいわ」
「悪いけど、頂く訳にはいかないよ、能力で解毒したんでしょう?」
「……意地悪……♡」
僕はふと横にある本棚を見た、やはりどれも新しい本ばかりだが、かなり分厚く長いシリーズの本だけボロボロだ。
「希望の王国……」
「そんな本よりも一緒に遊びましょう?このSwitchで『メガトン級ムサシ』とかテレビで持ってきたヤマトやマクロスの新作を……」
「そうだね、昔のアニメのレインボーマンも見たいよ」
「ええ、ええ、そうしましょう……」
「引っかかったな、アニメのレインボーマンは現在版権の都合上見るのは不可能だ」
「え……」
「優れた作品であろうと、諸般の事情で見る事が出来なくなる、駄作の方が逆に見れたりする……」
「もう茶番はここまでに、アリサさん、いや、井下美雪さん」
「……どうして分かったの?」
「バレバレだよ、寧ろ、どうして強力な能力を使わなかったの?」
「飽きるのよ……何もかも上手くいくと……」
理解できないな……いや分かる気もするが……
「君は列車事故に巻き込まれて、恐らくはその際に能力に目覚めたんだろう」
「正解よ」
「そして何らかの事情によりシグマ世界の人間になった」
「……アルファとのくだらない争いよ」
「……そう、そしてアルファ世界とベータ世界の戦いを見ていた」
「え、ええ……本当にくだらない戦いよ……」
自虐気味に笑った、シグマ世界もそういう争いがあったのだろうか。
「僕のお父さんが過去に戻り、君も戻った何故?」
「アルファ世界の過去の私が羨ましかったのよ……」
どうも理解できない、しかし爆弾処理の様な繊細なモノが求められる。
「なぜ?」
「あなたにあったから……エキセントリックな貴方と過ごす日々は嫉妬したわ……」
「そりゃあどうも……」
流石に頭を掻いた。
「恋ってそういうものよ……大したものではない人間に対して嫉妬したり……」
「そういうものなのかな?まだ13歳ぐらいだから分からないよ……まだ過去世界では一年も立ってないと思うけど……」
「お子様ね……でもいいわ……何故列車に乗ったと思う?」
「……何か家に事情があって呼び出されたの?」
「そうよ、かつての私は親は神様みたいなものだったのよ」
親が神様……理解できる……
「でも力を手に入れたからは大した事ないわ……」
クスクスと笑いながらクルクルと回る、それは魔女か女神か……