原作後期では有能な場面もありましたが、初期は完全にセクハラ要因でしたね……
ステファニー・ドーラは極めて優秀な人物である。
容姿端麗、才色兼備、謹厳実直、博識多才……。
先代国王の孫姫として英才教育を受け、多くの知識と豊かな教養を磨き上げた。
ただ一つの欠点を除けば、完璧超人と呼んでも差し支えないほどだ。
「うぅ……」
そう、彼女はどうしようもなく純粋無垢な人物である。
無論誉め言葉でもあるのだが、このディスボードにおいては致命的な欠点だ。
相手の裏を読み騙し合うゲームにおいて、心優しい精神は致命的な欠点となる。
ゲームで全てを決める世界において、彼女は騙し合いだけは最弱だった。
この日も、人類最強の兄妹に勝負を挑み、ものの見事に全敗。
代償に服を剥がれ、行動を制限され、彼女の純情な心は完膚なきまでに汚された。
これは毎日のように繰り返されていることだし、今更な話ではあるのだが。
ただ、その日だけはいつもと違う部分があった。
いつものように市街地での勝負に敗北し、彼女は“おすわり”を命じられた。
その後なにやら用があると言って、兄妹はステフを置いてどこかへ行ってしまった。
戻ってくるまで待っていろと、盟約によって逆らえない命令を残して。
そして、それから小一時間が経過していた。
「これ、完全に忘れられてますわよね……!」
膝を開いてしゃがみ込んだ体勢で、ステフは恨み言を呟いた。
人気のない路地裏だ、彼女の声は誰にも届かず虚しく消えていく。
「足も痛くなってきましたし、私服も返して欲しいのですけど……」
ステフの恰好は、控えめに言っても他人に見せられるものではなかった。
一言で言うならば、犬耳裸エプロンとでも呼べるだろうか。
一度目の敗北で上下の下着を剥かれた。
二度目の敗北で鎖付きの首輪で引きずられ町中を散歩させられた。
三度目の敗北でエプロン以外の衣服を奪われた。
四度目の敗北で犬耳と尻尾を取り付けられた。
セクハラの多重効果により、今のステフは特殊な性癖を持った変態のような格好になっている。
いつもなら限界近くで満足した兄妹……特に妹が命令の破棄を宣言するのだが……。
「……どうしましょうか、これ」
待つように命令されたステフは、己の意思で動くことができない。
ゲームの勝者であるあの兄妹が命令の破棄をするまで、永遠にこのままだ。
「……うぅ」
最近は慣れてきたとはいえ、ステフにも人並みの羞恥心はある。
こんな格好を見知らぬ誰かに見られでもしたら、羞恥で死に至る自信があった。
唯一の衣服であるエプロンは、ただ立っているだけでも太股が丸見えになる小ささだ。
膝立ちの現状では、すこし風が吹いただけで正面から秘部が露出しかねない。
下着を穿いていない状態でそんなことになれば……想像しただけで顔色が青くなる。
「……あら?」
それから更に数十分後、突如体の自由を取り戻したステフは訝しげに己の体を検分する。
四肢は動く、立てるし座れる。
自由に歩いて動けるし、完全に身体の主導権を取り戻していた。
なぜ急に、と疑問に思ったのは一瞬だった。
あの兄妹が忘却していた命令を思い出し、破棄したのだ。
そして同時に、なぜ迎えに来なかったのかと疑問がステフの脳内に沸き上がり。
そして瞬時に理解してプルプルと震えだした。
「ああ、勝手に帰ってこいと。そういうことですのね……」
今のステフの恰好も忘れているのではないかと、彼女は大きくため息をついた。
一秒でも早く文句を言いたい新年で、ステフは自由になった足を動かし始める。
「──とは言ったものの、どうしましょうか……」
王城まではさほど距離があるわけでもなく、最短距離を進めば十数分で帰れる距離だ。
だが、この恰好を人前に晒せるほど、ステフは羞恥心を捨ててはいない。
右手が自然と、唯一の衣服であるエプロンを下へと引っ張る。
前かがみになればなんとか秘部を隠せるが、そんな事実はなんの慰めにもなっていなかった。
脳内の地図を必死に参照し、人通りの少ない路地を中心に進む。
乱雑に捨て置かれたゴミなどの死角に隠れながら、ステフは潜入任務を行うスパイのような足取りで到着目標である王城を目指して足を動かし続けた。
「――っ!」
会話の声が進行方向から聞こえた瞬間、反射的にステフは脇に置かれたゴミ箱の影に身を隠す。
数名の若者が他愛もない話をしながら、先程までステフが向かっていた道を歩いて行った。
「はぁ、はぁ……!」
恐怖や羞恥、焦りや戸惑いが混じりあい、ステフの顔は茹だったように真っ赤に染まった。
気づかれなかった幸運を喜び、ステフは己の体を支えるように両手で抱きしめる。
「はぁ……えっ?」
ふと、そこでステフは疑問を抱く。
自分が座り込んだ地面が、僅かではあるが奇妙に濡れていた。
「い、いやいや、まさか……」
嫌な予感が、ステフの脳内を満たす。
それだけはありえないと、何度も何度も首を振る。
だが、その予想は的中していた。
「嘘、でしょう……?」
認めたくはない。
だが、右の指を這わせて確かめたステフの股は、僅かではあるが確かに濡れていたのだ。
「あ、あぁ……」
人前にはしたない姿を晒しかけ、ステファニー・ドーラは性的な興奮を覚えていた。
荒い息も、真っ赤な顔も、すべてはそういうこと。
自身の変態性を強制的に自覚させられ、ステフは今すぐにでも叫びだしたいほどの混乱に見舞われる。
すんでのところで口を押えその衝動には耐えたものの、荒れ狂った精神は一切落ち着かない。
「そんな、そんなこと――」
うわ言のように、口は否定の言葉を並べようとする。
だが確かに、興奮を抱いていたのだという自覚も同様に胸の奥から湧き出ていたのだ。
聡明であるが故に、否定の根拠がないことで絶望を叩きつけられる。
戸惑いのままにステフは一刻も早くその場を立ち去ろうとして――
「これ、は」
誰かがゴミとして廃棄した、一つの張形を見つけてしまった。
男性器を模した鉄製のそれは、土と埃によって強く汚れている。
なのに、ステフはそれを手に取るという欲望に耐えられなかった。
もう、己が変態であるという事実を否定する材料はない。
ならば、無理をして我慢する必要などどこにもないのではないか?
そんな誘惑が、少しづつステフを惑わせていく。
「うぅ……」
ごくり、とステフの喉が唾を飲み込む。
手に持った張形は非常に長く、太い。
本物など見たことはないが、普段の自慰に使用する指とは比較にならない。
その大きさに、ステフは一瞬だけ気後れした。
だが、一瞬だ。
興味が遥かに勝った結果、ステフは張形を己の股へとゆっくり近づけ始める。
息はどんどんと荒くなり、触れてもいない秘部は愛液を外へと吐き出しだす。
「んっ――!」
張形の先端が触れ、小さな水音と共にステフの秘部へと吸い込まれていった。
極めてゆっくりとした速度で、ステフの股は鉄の肉棒を飲み込んでいく。
「はぁ、ん、ふぅ、うぅ、んんっ……」
ステフは右手で張形を押し込んでいき、左手で漏れ出る声を必死に抑えている。
目を強く閉じ、背のゴミ箱に体重を預けて、時間をかけて奥まで挿入した。
「ふぅ、ふぅー……!」
息を長く吐いて全身の力を抜くことで、張形は根元までステフの体内へと飲み込まれた。
強い圧迫感と痛み、そして快楽を感じてステフは脳内を蕩かせる。
こうなってしまっては止まらない。
転がり落ちるように、ステフは欲望へ正直に堕ちていく。
「ぅ、あぁ……んぅ、んっ――!」
沸き上がり続ける快楽に声を抑えきれなくなったと同時、ステフは張形の隙間から多量の愛液を噴き出しながら絶頂した。
糸が切れた人形のようにバタリと倒れ、電気を流された動物のように痙攣を繰り返す。
瞳は墨汁で染めたように光を失い、大地に口づけした口端からは涎が漏れている。
「あ、ひ、あぁ……」
脳内に過剰分泌された幸福感に包まれながら、ここが市街地であることも忘れてステフは快楽に溺れ続ける。
奇跡的に目撃者はいなかったために、この後ステフは誰にも目撃されることなく帰ることに成功した。
しかしこの事故が癖になってしまったステフはこれから一人、この新たな趣味を繰り返すことになるのだった。