公式で夫婦扱いだったり、同棲して一緒にお風呂に入って一緒のベッドで寝て……
こんなの確実にHもしてますよ、絶対。
音の無い深夜。
立花響と小日向未来は、いつものように二段ベッドの上段で就寝の準備をしていた。
下段には荷物を収納しているので、一つのベッドに二人が入る形。
元は狭い寮のスペースを有効利用するためという理由があった。
今の部屋はそんな心配が無いほどに広々としているのだが、当人たちはこの形式を崩さない。
今日も二人は寝具に着替え、ベッドに入る。
おやすみ。と片方が言い、もう片方がそれに答える。
そして電気を消し、暖かな布団と暖かな人の温もりに抱かれて眠りに落ちる。
それは毎日変わらない、暖かな一日の終わり。
「……響?」
だが、今日という一日はまだ終わらなかった。
モゾモゾと、落ち着きなく布団が動く。
響の右手が、未来の腰を引き寄せる。
自然と二人の体は密着し、未来の背中に響の柔らかな胸が当たった。
それは、二人の間だけで伝わるサイン。
夜の営みを希望する、両者の合図だった。
「んっ……」
響の左手が、未来の肌を優しく撫でる。
パジャマの中にするりと入り込み、ゆっくりと未来の胸元へと移動した。
揉むのではなく撫で回すような手つきで、未来の乳房が刺激される。
小さくとも膨らみのある胸は響の指によって柔らかく形を変えた。
「ん、ちゅっ――」
響は未来の上に跨り、馬乗りの体制を取る。
左手は胸から離さないまま、荒々しく唇を奪った。
「フゥー、んんっ……」
荒々しい息が両者の口端から漏れ、獣の唸り声のような音が暗闇に響く。
口内ではお互いの舌が絡み合い、クチュクチュといやらしい音が断続的に鳴り続いている。
「ぷはっ」
酸欠直前まで続いたキスは反射行動によって終わりを告げた。
酸素を求めた響の肉体が仰け反り、二人の頭が距離を取る。
口端からは唾液が糸を引き、ポタポタと雫が落ちていく。
「ハァ、ハァ……」
陸に上がった魚のように、意識を薄れさせながら響は呼吸を繰り返す。
顔はほのかに赤く染まり、力が抜けたのか両の手はだらりと垂れ下がったままだ。
「わっ?!」
しかし、そんな小休止を未来は許さない。
先ほどの仕返しとばかりに、上の空な響を抱き寄せると全身を強制的に密着させる。
二人の顔が再び接近し、お互いの視界は相手の表情で埋め尽くされた。
「み、未来……?」
自然と、響の声は震えていた。
目の前の未来の表情から伝わる感情は、どう見ても怒りであったから。
頬は膨れ、口は真一文字に引き結ばれて。
どちらかというと可愛らしいその表情は、むくれるといった言葉が適切だろうか。
「ずるいよ、響。わたしだって……」
そう言って未来は、お互いの唇を重ね合わせる。
今度は未来自身の意思で、ほんの数秒ほど。
「熱が欲しいのは、響だけじゃないんだから」
「……うん」
そうして、二人は抱き合った。
足を絡ませ、腕を腰に回し。
触れ合う箇所を少しでも多くしようと。
相手の体温を、できるだけ感じるために。
「――あったかい」
「私もだよ、未来」
それは、ただの抱擁だ。
一切の不純なき、純粋な接触行為。
だが、二人の興奮はどんどん高まっていく。
顔だけでなく、全身の熱が物理的にも精神的にも上昇を続けている。
「お願い、響の手で」
「……わかった」
ゆっくりと、響の手が未来の服を脱がせにかかる。
まずは上。そして下。
そしてそれでは止まらない。
ホックを外し、ブラジャーを外す。
未来の小さな乳房が露出し、僅かに揺れた。
「未来……」
己も同じようにショーツのみを残して脱ぎ捨てた響は、そのまま未来の肌へと手を伸ばす。
「んっ……!」
愛する者の手で刺激されるたび、未来の口からは嬌声が漏れる。
必死で堪えようとするそんな姿に、響の興奮は高まる。
そして愛撫はより激しさを増し、漏れ出る声と快感は大きくなっていく。
「ハァ、ハァ……響?」
そして急に、響は胸への愛撫を止める。
かといって責めを止める訳ではない。
「あっ……!」
胸から離れた手は下腹部に。
唯一纏ったショーツへと伸びた。
「未来のここ、もう濡れてる……」
「だ、だって……あっ、ん……!」
ショーツ越しに秘部を刺激され、未来の口から艶やかな声が漏れた。
すでにショーツの中心は愛液で染みが出来るほどに濡れており、その上を指でなぞるたびに水音が小さく響く。
割れ目を何度も指先でなぞると、徐々に染みは大きくなる。
響は空いた左手で胸への愛撫を再開した。
「んっ、あっ、あぁっ……!」
押し寄せる快楽に、未来は声を堪えきれない。
必死に押さえようとして、そして盛大に失敗している。
「あぁっ、んっ――!」
だから、物理的に塞いだ。
興奮状態にある響がそう考えていたのかは定かではないが、重ねられた唇によって声量は確かに小さくなる。
しかし、それは声が漏れ出なくなったというだけの話。
激しい興奮状態にある二人のキスは、唇を重ね合わせるというだけで済むはずもない。
「んん、んっ……」
舌を絡ませあい、相手の唾液を絡め取る。
生き物のように蠢く舌が口内を蹂躙する様子は、それ自体が一種の性交だ。
「――――ッ!」
その結果として当然のように、絶頂を迎えた未来の体が反射的に跳ね上がった。
一度大きく仰け反った後、未来は全身の力が抜けてぐったりとベッドに倒れ伏す。
その瞳は焦点が合わず虚ろになっており、体は小刻みに痙攣を繰り返していた。
秘部からは洪水のように愛液が噴き出し、響の右手を手首までぐっしょりと濡らしている。
そしてそんな様子に、響は理性の糸を断ち切った。
「ま、待って響……もうっ――」
「ごめん、未来……我慢できない……」
響は未来のショーツを乱暴に脱がせると、剥き出しになった秘部と己の秘部を接触させる。
一度達した未来とは違い、響の興奮は未だ冷めてはいないのだ。
溢れ出る愛液が潤滑剤となり、二人の性感帯が摩擦によって刺激される。
挿入のない性交は、まるで響が未来を犯しているようだった。
「んっ、あっ、あぁっ……!」
一度絶頂にまで達した未来の快感は、沈静化することなく続いていた。
熱した鉄が外気程度では冷めないのと同じこと。
新たな熱を絶え間なく注がれ、狂いそうな悦楽の海に溺れ始めている。
唾液と愛液と汗によって、シーツはすでにじっとりと濡れている。
ベッドの上は淫猥な香りと奇妙な熱気に満たされ、その場所だけが異界にでもなったかのようだ。
「あっ――――!」
「んっ――――!」
同時に、二人は絶頂を迎えた。
ビクリと一瞬体が硬直し、そして全身の力が抜ける。
幸福な虚脱感に脳まで満たされ、組み合わさったまま数瞬の時間を二人は過ごす。
「んっ……」
「あ、んっ」
だが、二人の欲望はとどまることを知らなかった。
薄れる意識と震える体をゆっくりと動かし、再度二人は唇を重ねる。
虚ろな意識ではもはや鮮明な認識はできていない。
ただ、目の前の快楽を求める獣として、二人は性交を繰り返す。
この愛に満ちた営みは、結局夜が明けるまで続くこととなった。