清衣ちゃんが書きたいというより、清衣ちゃんで遊ぶ晶とリメンバが書きたかった……!
ウィクロスシリーズをしばらく書いていく予定ですが、ウィクロス表記かWIXOSS表記、どちらがいいんだろう……
深夜の、誰もいない街中。
喧騒から遠く離れた廃倉庫の前に、水嶋清衣は立ち尽くす。
ここは、かつて相互利用の関係にあった少女、蒼井晶から指定された場所。
友人であるアミカを拉致され、人質に取られた清衣には従う以外の選択肢は存在しない。
深く息を吸い、シャッターへと手をかける。
軋んだ音とともにゆっくりと開いたシャッターを潜り、清衣は足を踏み入れる。
案の定、と言うべきか。
眼前には顔に大きな傷を負った少女、蒼井晶が独り立っていた。
清衣は覚悟を固めて、ここにやってきた。
人質を取られている以上、これから始まるバトルは清衣の必敗だ。
アミカを守るためならそれでもかまわないと、そう心に決めていたのだが。
「いやいや、そんなのじゃあつまらなくないですか?」
お互いにカードを掲げてバトルを行おうとした瞬間。
晶の持つカードから無邪気な声が流れた。
「リメンバ……?」
清衣の心が、困惑に揺れた。
リメンバも晶も、清衣には浅からぬ因縁がある。
二人の望みは水嶋清衣の破滅であると、そう思っていたのだが。
「ここで勝っても、それで終わりじゃないですか、私は清衣ちゃんで永遠に遊びたいんですよぉ!」
リメンバはニコニコと純真な笑顔を浮かべながら、歪んだ欲望を発露させる。
それを聞いた晶は、舌打ちをするとカードを反転させてリメンバへ問いかけた。
「あたしは今までの恨みを晴らしたいんだよ、そこまで言うなら良いアイデアでもあるだんろうな?」
「任せて下さい!」
清衣を置き去りにして、晶とリメンバは二人で会話を繰り返している。
その内容はどこまでも狂ったものだが。
「清衣ちゃんは友達思いの強い子です。バトルで無理矢理負かしても、彼女はそれを受け入れてしまいます」
かつて清衣のルリグであったリメンバは、断定の口調で言葉を紡ぐ。
「ですから、清衣ちゃんよりアミカさんに酷い事をしたほうが清衣ちゃんは傷つくと思うんです!」
「――――!」
悪魔のような提案に、清衣の体がビクリと震えた。
「へぇ……」
「ほら、効果はありそうでしょう?」
そもそも、二人の目的は近いようで異なる。
清衣の破滅を望む晶と、清衣を玩具にして楽しみたいリメンバ。
短絡的か永続的かの違いはあれど、根底は同じという奇妙な組み合わせ。
故に、清衣が苦しむという共通点を見つけた瞬間、この二人は嬉々として手を組むのだ。
「なら、アイツのところに戻って恥ずかしい写真でも撮ってやるとするか」
「やだぁ、晶ちゃんってば鬼畜ですねぇ」
彼女らは本気だ。
水嶋清衣を苦しめるためならば、どんな手段も躊躇わない。
「それ、だけは……!」
だから、水嶋清衣は逆らえない。
親友を守るために、この瞬間清衣はどこまでも汚れる覚悟を決めたのだ。
「なんでもするから、アミカだけは――!」
その宣言を待っていたと言わんばかりに、晶とリメンバの笑みは深く歪んだ。
「準備完了、っと」
どこからか運んできた大荷物を地面に置き、晶は気だるげに肩を回す。
大きく埃が舞い、ただでさえ空気の悪い廃倉庫内がより一層淀みを増した。
「前々から思っていたんですけど、清衣ちゃんってスタイルいいですよねぇ」
壁に立てかけるように置かれたリメンバが、この場に不釣り合いなほど明るい声を響かせる。
「晶ちゃんに頼んで衣装を沢山持ってきてもらったので、撮影会しましょうよ」
リメンバから伝えられた最初の要求に、清衣は怪訝な表情を浮かべた。
晶の恨みがその程度で収まるとも思えない。
だが、晶は黙って荷物の中から取り出したビデオカメラを配置している。
「着替えて、撮影するだけ?」
「はい! 時間はたっぷりありますし、最初の衣装は清衣ちゃんが選んでいいですよ?」
拍子抜けだ。
いや、当然想定より軽いのは喜ばしいことなのだが。
無駄に逆らって機嫌を損ねるのも不味いと、清衣は大型のバッグに詰め込まれた衣装を漁る。
最近流行りのブランド物から、普段着には適さないコスプレ衣装まで、中身は多種多様だ。
恐らくは晶の仕事で使用したものなのだろう。
「じゃあ、これ」
一通りざっと見て、清衣は一つの衣装を手に取った。
それはどこかの学校の制服を模した、よくあるデザインのセーラー服だ。
普段清衣が着ているものとは違い、白を基調とした色合いで、太ももが見えるほどにスカートは短い。
撮影映えする作りの、学生服のコスプレという印象が強いものだった。
「決まったんならさっさと着替えろよ、もうカメラは回してるから」
「ええ、分かった」
晶に急かされながら、清衣は早速着替えようと倉庫の隅へと歩き出す。
だが。
「違えよ、ここで、着替えろ」
「それ、は」
指定された場所は、カメラが捉える中心。
そういうことかと、清衣はようやく理解した。
「隠すなよ?」
「くっ……!」
女同士とはいえ、人前で着替えるというのはかなりの羞恥を伴う。
撮影までされているとなればなおさらだ。
ゆっくりと、清衣は衣服を脱ぎ捨てる。
顔は真っ赤に紅潮し、ボタンを外す手が小刻みに震えていた。
脱ぎ捨てられた衣服がパサリと小さな音を立て、地面に落ちる。
下着姿となった清衣を覆うように、埃が舞った。
「結構シンプルな下着なんですね。ダメですよ、女の子は見えない所もオシャレしないとぉ」
粘っこいリメンバの声にも、今の清衣は苛立たない。
それよりも早く、服を着たくて仕方がなかった。
セーラー服を手に取ろうとした清衣を、しかしリメンバと晶の声が制止する。
「でも大丈夫、下着も用意してますからね」
「ほら、感謝しろよ?」
黒色で布地の小さな上下一式の下着を投げられ、清衣は固まった。
しかし同時に納得もしている。こいつらならばこの程度と。
「カメラですよ、清衣ちゃん。笑ってくださいよー」
「ゆっくりと、時間をかけて着替えろよ? カメラによく映るようになぁ」
指示に従って、清衣はゆっくりとブラを外し、地面に捨てる。
小ぶりな乳房が露出され、清衣の顔はより一層赤く染まった。
下手に時間をかければ奴らを喜ばせるだけだ。
そう決意し、清衣は一息にショーツを脱ぎ捨てる。
「一糸纏わぬ姿の清衣ちゃんも可愛いですねぇ」
リメンバは満面の笑みを浮かべていた。
この女の場合、本心からそう思っているのが質の悪いところだ。
屈辱に塗れる清衣に愉悦を感じつつ、晶は隣の狂った女をそう分析した。
「――着替え終わったわよ」
未だに顔は紅潮しているが、毅然とした態度で清衣は立つ。
羞恥心を表に出せば彼女らは喜ぶだけだと理解しているからだ。
「清衣ちゃん、笑ってくださぁい」
二人の言われるがままのポーズをとり、清衣は黙って被写体となる。
下着の見えるポーズを要求もされたが、裸を撮られているのだ、今更その程度気にもならない。
ただ、清衣は不気味に思っていた。
リメンバは心から喜んでいるようだが、もう一人の内心が読めない。
蒼井晶。
アミカを躊躇いなく拉致監禁するような精神状態にあるのだ、この程度で満足するはずがない。
しばらく撮影を続けると、リメンバは満足したように、ふぅと息を吐いた。
そしてやはりというべきか、晶が動く。
「じゃあ次はぁ、セクシーな路線でいってみようか☆」
あきらっきー時代の、演技臭い口調で晶は新たな衣装を清衣に手渡す。
その様子に嫌な予感を感じながらも、清衣は黙ってその衣装を手に取った。
「ちょっと、これって……!」
「あ? さっさと着替えろよ」
一瞬で化けの皮は剥がれ、晶は再び高圧的な口調に戻る。
清衣は手渡された衣装をただ、黙ってみているしかできなかった。
「おお、似合ってますよ清衣ちゃん! 流石は読者モデルのコーデですねぇ」
新たな衣装は、先程以上に肌を露出するものだった。
肩は丸出しで、腹どころか下乳すら隠せていないチューブトップ。
さらにワンサイズ小さめなのか、パツパツに張った布地が胸の膨らみを誇張している。
下はそれ以上だ。
青地のホットパンツだが、その丈は異常なまでに短い。
通常の半分以下にまで切られたそれは、太股だけでなく尻の二割ほどが丸出しになっていた。
こんな衣装、アダルトビデオでしか見ることはないだろう。
ある意味全裸より劣情を煽りかねない服装に、清衣は耐えられずしゃがみこんでしまう。
「おーおー、似合ってる似合ってる。クソ野郎にはお似合いの衣装じゃねえか」
「これで、満足なの……」
「ハッ、まさか」
醜悪に顔を歪ませ、晶は笑う。
そして晶は懐から財布とメモを取り出し、清衣の前へと投げ捨てた。
「“清衣ちゃんで遊ぶ”ための道具が足りなくてなぁ。その格好でメモに書いてあるもの買ってこい。逃げんなよ?」
「────!」
清衣の悪夢は終わらない。
人質を取られ、全裸の動画を撮られた以上、彼女らが満足するまで清衣は二人の玩具なのだ。