思った以上に清衣ちゃんで遊ぶのが楽しいのでもう少し続く予定。
知らず知らずのうちに、歩幅が小さくなる。
足は内股になり、縮こまった姿勢が崩せない。
水嶋清衣は周囲の人影から隠れるように、路地裏を歩いていた。
日本ではまず着ている人を見かけない、露出過多なチューブトップにホットパンツ。
空想かアダルトビデオの中だけの存在かと錯覚するそれは、清衣の顔を紅潮させるには十二分だ。
晶による“改造”が施されているせいで、胸も尻も一部が露出してしまっている。
周囲には誰もいないというのに、清衣の足は完全に竦んでしまっていた。
「──っ」
路地裏の影で立ち竦んでいた清衣の携帯が震えた。
電柱の影に隠れ、内容を確認する。
案の定というべきか。
晶からのメールが届いた形態を、清衣は震える指でゆっくりと操作する。
本文はなし。
画像が一枚添付されただけのそれは、清衣の瞳を濁らせる。
「くっ……!」
そこは、清衣のいた廃倉庫とは別の場所。
縄で縛られたアミカの写真が、携帯には映し出されていた。
これは脅しだ。
そしてその脅しは、清衣にとってなによりも強力に作用している。
震える足を、一歩ずつ前へと進める。
姿勢を正し、出来るだけ堂々と。
すれ違う人々の視線が、囁きが、清衣の心を羞恥で満たす。
だが、歩みを止めれば犠牲になるのはアミカだ。
その一心で、清衣は町中へと己の肌を晒しに行く。
大通りに出た清衣は、指定された店へと歩き出した。
足を進めるごとに、すれ違う人々の視線を敏感に感じ取る。
視線の内容は、好奇、困惑、軽蔑、欲情、エトセトラ。
AVの撮影と勘違いしてカメラを探す者まで現れる始末。
自分がとんでもない恰好をしていることを自覚させられ、清衣は無意識に胸元へ手をやった。
目的の店にたどり着いた清衣は、駆け込むように中へと入る。
小さな店舗には清衣以外の客はいない。
店員が驚きの表情を向けるが、外で大勢に見られるよりは万倍もマシだった。
清衣が買いに来たのは、おもちゃ屋だ。
ただし、大人の。
狭い店内にアダルトグッズやAVが詰め込まれた空間。
初めての空気に一瞬怯んだ清衣だが、やがて店内を物色し始める。
メモに書かれた商品を手に取りながら、清衣の脳内では晶の言葉が反芻されていた。
晶は、清衣で遊ぶための道具と言っていた。
つまりは、そういうことなのだろう。
噛み締めた奥歯が軋む。
流れそうになった涙を押し殺し、会計を済ませると清衣は足早に店を出た。
「あら、遅かったですね清衣ちゃん?」
なんとか買い物を済ませて廃倉庫へと戻った清衣を、リメンバの気楽な声が出迎える。
ただでさえ癇に障るトーンの言葉だが、清衣の関心は別の場所に向いていた。
「アミカは、どうしたの」
先程添付されたアミカの写真。
その真意を問うために、清衣は晶へと向き合った。
「帰ってもらったよ、別にアタシらはアイツに興味ないし」
ぞんざいに、晶は携帯を操作しながら返す。
晶にとって、アミカは人質でしかない。
既に清衣が従っている以上、監禁し続ける理由は存在しなかった。
「まあ、保険は打たせてもらったがな」
再び、清衣の携帯が震える。
同じく送信元は晶で、内容も画像が一枚。
「──晶!」
清衣の怒鳴り声が、倉庫に響く。
画像の内容は先程と同じだ。
ただ、アミカの服が全て剥ぎ取られていたことを除けば。
「保険だよ、保険。今度はこの画像が人質代わりってことだ」
「ちなみに、清衣ちゃんのヌードはアミカちゃんへの交渉材料にさせて頂きましたよぉ」
清衣が裏切れば、アミカの写真が流出する。
アミカが裏切れば、清衣の写真が流出する。
友情を最大限に利用した晶とリメンバに、清衣は握った拳を震わせる。
「ちゃんと言うこと聞いてくれればなにもしないからさぁ……分かってんだろうな」
清衣に許されるのは、胸の内で怒りを震わせることだけだ。
晶の声に、清衣はただ俯くだけだった。
人から玩具になった清衣。
どこまでも堕ちる清衣の尊厳は、次々と破壊されていく。
今、清衣は晶の椅子となっていた。
四つん這いになった清衣の背中に、晶は一切の容赦なく全体重をかけて座っている。
平均体重よりは軽い少女とはいえ、人間一人分の体重が背中に集中する状態は肉体的にも相当な苦痛だ。
「ぐっ、うぅ……」
「随分と辛そうだなぁ、清衣ちゃん?」
「……本当に悪趣味ね、あなた」
両腕がプルプルと震え、今にも崩れそうになっている状態。
だが清衣は必死に耐え、軽口を叩いて見せた。
それは意趣返しなどではなく、心の平穏と保つための行為。
だが、今の晶には逆効果だっただろう。
「あ?」
「──ぐ、がぁっ……!」
一瞬で不機嫌になった晶の手が、清衣の首を絞める。
正確には片手で気道を圧迫するような状態だが、その力は全力だ。
ヒュウヒュウと細い呼吸音が、必死に酸素を求めていることを示している。
酸素欠乏と純粋な痛みが、二重の苦痛となって清衣を苦しめた。
結果、椅子は容易く崩壊。
清衣はそのまま崩れ落ちると、荒い呼吸音を響かせた。
「はい、罰ゲーム」
「うわぁ、想像以上の鬼畜っぷりですねぇ」
リメンバすら、目の前の光景に軽く困惑している。
ドン引きです。といいつつも、その口元は笑っていたが。
「んー、どうすっかなぁ。リメンバ、アイデアあるか?」
「そうですねぇ……」
ゼイゼイと息を荒げる清衣を尻目に、二人は清衣でどう遊ぶかを相談しあう。
「じゃあ、今度は三人で一緒にお散歩しましょう!」
拒否権はない。
清衣はただ俯いたまま、その言葉を聞いていた。
「やっぱり外に出ないと、いつまでも廃倉庫の中じゃ気分も滅入りますしね」
「折角玩具も買ってきてもらったしな」
晶はそう言うと、紙袋の中から先程清衣が買ってきたアダルトグッズを取り出す。
「晶ちゃん、それとか清衣ちゃんに似合いそうです!」
「ん、これか?」
着せ替え人形で遊ぶように、二人は清衣を玩具にしていた。
玩具が壊れるまで、二人の遊びは終わらないのだろう。
「……どこへ行くの」
「考え中」
外へ出た清衣と晶は、少し距離を取って同方向へ歩いている。
晶が前を歩き、数メートル後ろを清衣が追従する形だ。
清衣の服装は、先程と変わっていない。
だが、いくつかの“アクセサリー”が付属している。
「うん、ここでいいか」
晶は清衣を手招きすると、裏路地の中へと消えていく。
誰も見ていないことを確認し、清衣も後に続いた。
「脱げ」
「……ええ」
簡潔な命令に、清衣は声を低くして答える。
布地の少ない服装とはいえ、野外でそれを手放すのは非常に心細い。
躊躇いながら、清衣は衣服を脱ぎ捨てた。
裸となった清衣だが、なにも身に着けていないわけではない。
両の胸には先程装着されたローターが、簡素なテープで張り付けられている。
秘部には細いバイブが挿入されており、頼りなさげにぶら下がっている状態だ。
「――あ、あぁ、ん……!」
「五分、そのまま一歩も動かなかったら今日は返してやるよ」
バイブとローターのスイッチが入れられ、生き物のように清衣を刺激する。
ケラケラと笑い、晶は路地の奥へと消えていった。
「ご、五分、耐えれ、ば、あぁ……」
自慰すら縁遠い清衣にとって、性具による刺激は初体験だ。
くすぐったいような快楽に、抗うことは困難だった。
「フゥ、フゥー……!」
声を上げれば、誰かに見つかってしまう。
人通りは少ないとはいえ、周囲の店舗は絶賛営業中だ。
不審な音が響けば確認に出てくる人間がいるだろう。
「ぐ、んん、あぁっ」
唇を噛み締め、漏れ出る声を必死に押さえつける。
目尻には涙が浮かび、足は赤子のように震えていた。
「――っ!」
限界は早かった。
初めての感覚に達した清衣は、そのままその場に崩れ落ちる。
止まらない刺激に体は小刻みに痙攣を繰り返す。
口はだらしなく開き、涎が零れている。
晶に敗北したという屈辱。
初めて感じる快楽。
その双方が混じりあい、清衣の心は本人すらも把握できない感情に埋め尽くされていた。
「三分四十秒、はい残念」
「清衣ちゃんってば、こんなに早くイッちゃうなんて。案外エッチな子だったんですねぇ」
背後からの声に、清衣は振り向けない。
今度はどんな扱いを受けるのか、それだけが恐怖として清衣を支配していた。