※この作品はR-18です。

愚かな復讐者   作:もっち~!

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ドールテイマー

 

---藤林響子---

 

朝、目覚めるとネギ君が隣にいなかった。帰れないのか…消えたのか…不安になる。しかし、

 

「おはよう、響子♪」

 

キッチンから笑顔の彼が出て来た。どうしたんだ?

 

「夏休みだって…仕事が休みだったんだよ~」

 

あっ!そう言えば、昨日出勤したわよね…バツが悪そうな顔をしている彼。

 

「で、夏休みの間だけ、朝食を作ろうと思う。あまりレパートリーがないけど…」

 

食卓へと向かうと、トースト、ベーコンエッグ、珈琲が置いてあった。

 

「今、サラダを作っているんだ。もう少し待ってな」

 

「うん♪」

 

食事…おいしかった。これから毎日、こんなことができるんだ。心が弾む。

 

「そうそう、これ!」

 

彼が、私の指に指輪を嵌めた。この指は婚約…

 

「生徒に訊いたら、プレゼントするなら、指輪って言われて…」

 

「ありがとう…ネギ君♪」

 

「もしもの時…形見にしてくれ」

 

少し寂しそうな彼。そんな彼に抱きつく私。

 

「消えないで、いなくならないで…お願い…」

 

彼と口づけを交わらせて、出勤をした。

 

 

職場では、仲間に祝福された。

 

「そうか…彼から指輪か…寿は近いのか?」

 

真田君に訊かれた。

 

「まだまだだよ。出逢ってまだそんなでもないし」

 

「で、指輪か?まぁ、振られないようにしろよ」

 

「だね♪」

 

会話が一段落を迎えた頃、インターフォンが鳴った。職場に緊張感が漂う。

 

「はい。藤林ですか。はい、すぐに向かわせます。おい、幸せ女、第3会議室から呼び出しだ」

 

「わかったわ。なんだろう?」

 

呼び出しをされる原因に、身に覚えの無い私は怪訝な気持ちで、会議室へと向かった。

 

 

 

---ネギ---

 

図書館で調べ物。培養液、成長促進剤を作っていそうな製薬会社にあたりをつけていた。そんな時、情報端末に響子からメールが届いた。なんだろうか?いつもするように、メールを開くと…

 

『藤林響子は預かった。添付の地図の場所へ、根岸太郎一人で来い!誰にも言うなよ!』

 

と…何?響子が攫われたのか…急いで添付ファイルを開いて、場所を確認した。そこは九校戦を行っていた場所であった。烈のヤツか?なんで、響子なんだ?

 

急いで、達也の家に行く。行く途中で、達也に連絡をした。

 

「達也、バイクを貸してくれ」

 

「ネギ、どうした?」

 

「デートだ」

 

「誰と?」

 

「言えない」

 

「どこで?」

 

「遠くだよ。だから、バイクが…」

 

通話を切り、届いたメールを達也に送った。直ぐに、

 

『用意をしておく』

 

と、達也から返信が来た。達也の家に付くと、ナビ付きのバイクを用意してくれていた。

 

「それが、あれば、迷子にはならない」

 

「ありがとう。乗り捨てかもしれないが、借りるぞ!」

 

「あぁ」

 

僕はバイクに跨がり、指定された場所へと急いだ。

 

--------

 

九校戦の会場は、静まり返っていた。レセプション会場だった場所へ向かった。荒れ果てた室内。あの時のままだ。違うのは中央部に誰かが椅子に座っていた。身構える僕。戦いたくない相手だった。バトルスーツを着た女性。僕を認識するなり、僕に襲い掛かってきた。それは響子の身体の誰かだった。気流を使い探査をする。響子は…くそぉぉぉぉ~!

 

涙が零れていく。目の前の響子の身体は、既に死体であった。なのに、生きている様に動いている。心臓は萎み硬くなっており、響子の魂で術式が刻まれ、人形にされていた。

 

響子だった者の攻撃、カウンターで返せない。響子の死体に傷を付けたく無いから…クソ!なんで、こんな惨いことを…戦闘術で響子だった者の攻撃を受け流していくと、響子だった者は僕から距離を取り、何らかの薬液を首に注入した。その途端、響子だった者の身体が増強されていく。しなやかだった手足は、大木のように太さになり、吸い付くような質感で柔らかかった乳房は、手で引きちぎられて、鉄板のような胸板が現れた。顔だけ響子のまま…死体を冒涜か…許せない。

 

変貌した響子だった者の動きは、素早く力強いものになっていた。フルカウンターでダメージを受けないようにする。響子を取り戻さないと…相手と同化し、響子の固くなった心臓を奪い取った。体内から術式が消えたことで、響子だった者の動きは止まった。次の瞬間、あの黒いヤツが10体現れた。僕は響子の心臓から術式を取り除き、大切にポケットにしまった。

 

身も心もボロボロになっていく。響子の心臓を護りながら、同時に10体は無理があった。僕のカウンターの盲点、2発以上同時にカウンター出来無いのだ。同時に攻撃が撃ち込まれ、響子の心臓を護る為のカウンターをする。残りの攻撃は僕の身体を斬り裂いていく。

 

『賢者様…僕は…愚か者な僕はどうでもいい。だから…響子だけでも救ってください』

 

もうダメだと思い、賢者様に念を送った。最後の一手…光の粒子状になった僕は自決した。僕が自決したことで極小のブラックホールが発生して、黒い奴らを吸い込んでいく。僕が僕であるのはここまでだった。

 

 

 

---司波深雪---

 

お兄様とネギ先生の後を追っていく。そして、あのレセプション会場に着いた。そこには…響子さんがいた。心臓を撃ち抜かれて死んでいるように見えたが、その身体は生前の彼女とは思えないほどに変貌していた。

 

「肉体増強薬を投与されたようだ…」

 

胸に空いた穴をチェックするお兄様。

 

「これは…人形にされていたのか…大動脈と大静脈が萎んで硬くなっている…」

 

私はネギ先生の痕跡を探す。しかし、何も残って…何か光輝く物を見つけ、手に取ると、指輪だった。裏面を見ると『NtK』と彫られている。『凪から響子』と脳裏で、先生のお姉様の声がした。先生と響子さんの形見なのか…手で握りしめ、大切にしまっておく。

 

外からヘリの音が多数聞こえ、たくさんの軍人さんが現れて、私達は現場から排除された。国軍が現場を封鎖したのだ。

 

「国絡みの陰謀ってことだ、深雪」

 

しばらくすると私達は、遅れてきたお兄様の知り合いの軍人さんに保護された。

 

「特尉、何が遭ったんだ?」

 

「真田さん…響子さんが人形にされた上、能力増強剤を打たれたようです」

 

「響子君が?まさか…まだ、職場にいるはずだが…」

 

真田さんは、職場へ連絡を入れた。

 

「そうか…帰宅した痕跡は無いんだな?わかった…職場内で拉致されたようだ」

 

「軍内部にネギの復讐相手がいるってことですね」

 

「あぁ…」

 

先生はどこに行ってしまったのだろうか…

 

 

 

---ネギ---

 

意識が覚醒していく…ここはどこだ?見覚えの無い場所にいた。

 

「目覚めたか…どうだ、新しい身体は…」

 

声の主…誰だっけ…う~んっと…そうだ!賢者様だ。新しい身体?

 

「愚か者か?言ってあっただろ。自殺と人有らざる物は聖域に戻れないと!」

 

うん?う~ん…そうだ、最後の手段で自決をしたんだ。

 

「お前は愚かさも大概にしろよ!自殺も自決も同じだぞ!」

 

そうなんだ…やらかしてしまった…

 

「まったく…お前ときたら…でだ!お前はもう聖域の戦士はクビだ」

 

えっ!クビ…ショックだぁ…

 

「もう聖域とは関係無いからな」

 

あの世でも捨てられたのか…僕はどこに放置されるのだろうか?

 

「しょうが無いので、うちで引き取るから♪」

 

うちって…

 

「幽玄龍騎士団だよ。お前のセフレも引き取った。人形にされたから、聖域に行けないんだよ」

 

へ?あの噂で聞く鬼畜な部隊?

 

「ようこそ、鬼畜の集う部隊へ♪」

 

賢者様が喜んで僕を迎え入れてくれた。僕、鬼畜じゃ無いんですけど…

 

「これから、なればいい♪」

 

地獄でツンツンと責められる方が楽だよ~。

 

「あぁ、そうかもな。地獄よりもハードだからな」

 

新しく貰った身体…転生ドラゴンという種族の物だった。響子もそうらしい。

 

「見た目は、以前と同じ人間形態であるけど、耐性、攻撃力はドラゴン並だ。能力は『癒やし』と『気流』だ。カウンターはもう使えない。同化もだ」

 

あの2つは聖域で借りた物だものな。

 

「響子の方は『ヴィジョネイル』、電脳世界へのダイブ能力にしてある。で、立場は、根岸太郎、響子の姉弟で、ネギは一高の教師のままだ。住処は用意してある。もう、消滅の危機に怯えなくていい。思いっきり復讐をしてこいよ♪」

 

幽玄龍騎士団として関われるので、嬉しそうな賢者様。それに対して、とても不安な僕。次の瞬間、知らない場所にいた。広いリビングのソファに僕と響子がいた。

 

「ここは?」

 

響子に訊かれた。

 

「賢者様の用意してくれた住処…僕達の復讐の拠点だよ」

 

「復讐…そうだ…職場で何かされて…」

 

「思い出さないでいい。僕も響子も、人間では無くなったから」

 

「転生ドラゴン?あれって、夢では無いの?」

 

「現実だよ。賢者様は嘘をつけない」

 

「そう…」

 

二人で住処を探索した。間取り…どこかで知っている間取りなのだが…表に出てみる。見たことのある風景…デジャブか?ふと隣の家に目をやると『司波』って書かれた表札が…はぁ?達也の家の隣?あぁ、同じ建て売りだから、間取りがほぼ同じなのか。なんとなく納得。

 

隣の家のインターフォンを押した。

 

「どちら様ですか?」

 

水波の声。

 

「隣に越してきた者ですが…」

 

「ちょっとお待ちください」

 

ドアの施錠が解除される音がしてドアが開くと、深雪が顔を出した。

 

「え?ネギ先生?ネギ先生ですか?ねぇ!」

 

僕のエリ首を掴む恐い形相の深雪。頷く僕。

 

「生きていたんですね…」

 

今度は泣いて僕に抱きついてきた。

 

「なぁ、あれから、どの位経ったんだ?」

 

「1週間です…」

 

初七日が終わったから、戻れたのかな。

 

「達也は?」

 

「連日、お知り合いの方達と、何かを調べています。ネギ先生はどこにいたのですか?」

 

深雪を僕達の家に連れ戻った。

 

「響子さん…」

 

響子の顔を見て、幽霊でもみたような表情になった深雪。まぁ、死んだのだから、それが正しい表情ではある。

 

「深雪さん♪」

 

深雪はポケットから何かを取りだして、響子へ手渡した。

 

「形見です…」

 

それは、あの日、響子にプレゼントした指輪だった。

 

「ありがとう…見つけて置いてくれたんだ…」

 

指輪を両手で包み込み、涙ぐむ響子。

 

「で、どういうことですか?先生!」

 

僕は僕達に起きたことを、深雪に話した。

 

「だから、僕と響子は、美優や姉さん達と聖域に戻れない。ごめんね、愚か者で…」

 

「先生…」

 

深雪が僕に抱きつき、僕の心を宥めてくれる。昔、姉さんがそうしてくれたように…

 

「今生では僕と響子は姉弟だ。よろしくな、深雪♪」

 

「はい♪」

 

 

 

---千葉寿和---

 

達也君から連絡が来た。ネギが戻って来たらしい。そして、軍が隠した事実の内容を、ネギが話したそうだ。あの一高を襲った黒いヤツは軍の装備らしいそうだ。盗まれた訳では無かったようだ。

 

そして、ドールテイマー、所謂人形遣いの存在。そして、増強剤のこと、様々な事実が俺達にも伝わってきた。早速上司に報告した。

 

「そうか…国絡みか…警察では、ここまでだ。残念だが…」

 

国への捜査権は警察には無い。政治家の犯罪は捜査できるが、国策となると無理があった。だから、事件にならなかったのか…国の政策だったから…

 

「だが、国家反逆罪となれば、別だ!いいか、千葉警部を筆頭に、この国の誰が、どの国と手を組んだのかは、捜査を続けろ。凪君の件は、ここまで、一旦終了する」

 

上司は『一旦』という言葉を使い、含みをもたした。

 

「で、九島烈の行方は?」

 

部下に訊いた。

 

「公安も探しているようですが、依然潜伏場所がわかりません」

 

九島烈が関わっているのは、確かだと思う。九校戦のアノ一件以来、消息が掴めないのだから。

 

「引き続き、頼むぞ。そこが突破口かもしれない」

 

 

 

---千葉エリカ----

 

久しぶりにアニキが帰宅をした。連日、捜査が手一杯らしく、泊まり込みの日々のようだ。

 

「なぁ、アニキ。なんで、ネギはアニキのことを、アニキ呼びしていたんだ?」

 

プールでの一件の時のことを訊いた。

 

「うん?そうだったか?最近、ネギに会っていないかなら、覚えていないなぁ」

 

惚けるアニキ。

 

「何を隠しているんだよ?」

 

「ネギが気になるのか?」

 

うっ…耳が熱い…気になる。とっても気になるんだよ~。

 

「ネギは止めておけ。お前が不幸になる姿は見たく無い」

 

不幸?何で?

 

「どういう意味だよ?アニキはネギの何を知っているんだよ?」

 

「忠告はした。後は、お前の判断にまかせる。じゃ、仕事に行って来るよ」

 

そう言い残し、アニキは仕事へと出て行った。どういう意味だよ?

 

 

 

 

 

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