---ネギ---
新学期…授業…散々だった。僕の準備不足を、生徒達はお見通しで、僕に対してカリキュラムの提案をしてくれた。
「先生は先生に出来ることをされれば良いんですよ」
放課後、自分の部屋で落ち込む僕を励ます真由美。
「先生、スキンケアの方法とかを教えてください」
「気流とは関係ないけど…」
「リンパマッサージとかは、少し関連がありますよね?」
「まぁ…」
「では、その方向で♪」
学内は論文コンペに向けて、慌ただしい。関係していない者にとっては、憩いな期間らしいけど。
「そうだ、リンちゃんのスキンケアをお願いします。彼女、舞台上で発表するんですから」
って…う~ん…あぁ、リンちゃんとは、市原 鈴音のことである。
「診療所に予約してくれ」
「はい、伝えますね。で、私もお願いします」
「お前はお前の家でしているだろ?」
七親父公認で、3姉妹にスキンケアを含めたトータルケアをしている。
「女は磨く程に良い女になるんですよ」
笑顔で言い放つ真由美…磨く箇所が違うと思うが…
------
週末、USNAに転移した。里奈にある場所の座標点を聞き、そこへ転移したのだ。そこで調べ物をした。あの黒いヤツの製造拠点を探す。軍内部でも秘匿情報なのか、なかなか見付からない。そして、ようやく見つけた。う~ん、駐日海軍基地の地下かぁ…どう、近寄ればよいかな?そこに烈はいるのだろうか?烈はいまだに発見出来ずにいたのだ。
帰り道に少し寄り道…バークレーにある魔法科高校に立ち寄った。そこに通う生徒、教師、事務員に至る迄、子種、卵の生産器官を、痛みを伴わないようにして、こっそりと破壊していった。
------
弁論大会、じゃなくて論文コンペの日を迎えた。全国の魔法科高校から、遠路はるばる横浜へ論文の発表者達が集まってくる。僕がテロリストなら、この機会を狙うんだけど…
達也は発表者なので、深雪達は会場で拝聴するそうだ。僕は、控え室で遥、響子達と共にまったりしている。教護班って、やることが無い気がするし。
「どう思います?仕掛けて来ますかね?」
って、響子。死んだことになっている彼女は、もう魔装大隊には所属していない。
「僕なら仕掛けるな。だって、有能な魔法師の卵がいるんだよ。纏めて始末するには良い機会だよ」
「ネギ君、テロリスト目線はダメだよ」
遥に窘められる。彼女は、様々なチャンネルの無線を傍受してくれている。響子は服の下にバトルスーツを着込んでいた。寿和アニキも警戒をしてくれて、私服刑事を多数配置してくれた。
「来るとすると、どこからかな?」
響子の元同僚の真田さんに訊かれた。
「陽動部隊は、潜入済みだろうね。で、本隊は海からかな。問題は横須賀から近いので、黒いヤツの大群が恐いなぁ」
製造工場は、横須賀の海軍基地の地下と判明しているのだけど、この国には捜査権が無い。治外法権エリアだから。里奈が密入国したのも、そこの軍港だそうだ。積み荷など、検査できる権限が無いので、どんなにヤバい物で、運び込めるらしい。
「遥、モフモフして♪」
暇だったので、遥にリクエストした。
「はぁ?傍受しながらは無理よ!響子さんにしてもらいないさい」
真田さんが苦笑いしている。響子は…あぁ、そんな目で見ないでください。反省しますから…って、お客さんが見えたようだ。
「真田さん、お見えです」
「どこだ?」
正面入り口の武装集団。気流術を用いて索敵をしていた僕。通常とは金属により、気流に乱れが起きていた。
「服部、十文字、お客様だ。そっちにはドールだと思う。ケダモノ化する前に心臓を抉れ。ケダモノ化したら、ハンターにまかせて、引けよ!」
「「了解!」」」
無線で守備隊のメンバーへ連絡した。
「洋史君、始まりそうだ。澪に伝えて」
「了解です!」
少数精鋭の仲間達へ、無線で連絡をしていく。
「響子、行くぞ。水波は遥を護ってくれ」
「わかりました」
響子は服を脱ぎ去り、バトルスーツに姿になり、僕達はロビーへと向かった。向かう途中で大きな爆裂音が数度に渡って響き渡った。
「号砲かな?」
「でしょうね」
ロビーでは戦闘が始まっていた。警察庁の特命チームと魔装大隊の合同チームが、正体の分からない武装集団と戦っていた。
「遥、戦況はどうだ?」
『魔法師協会の横浜支部が襲われています』
無線機から遥の声が聞こえた。
「だって、真田さん」
「わかった。こちら、真田。魔法師協会の横浜支部だ」
『了解』
真田さんは、魔装大隊の空挺部隊へ指示を出した。
---司波深雪---
観客席にいた生徒の何名かが、ドール化して、周囲の者を襲い始めた。
「時限装置付きか…大漢系だな」
お兄様が呟いた。十文字さん、服部さんなど、守備隊のメンバーが、ドール化した者達の心臓を破壊していくが、注射器を首筋に刺しだしたドール達。
「おい!引け!ハンターに任せろ!」
ドール化した者達の身体が大きくなっていく。まるでゴリラのようだ。胸板は鉄板のようになっていく。
「魔弾が弾かれるわ。退避してぇぇぇぇ~!」
真由美さんの声が響き渡る。一高の生徒達は、予め決めていた避難経路へと急ぐ。その間に、里奈さんが魔法を展開させていく。彼女の戦略級魔法『ヘヴィ・メタル・ブラスト』、重金属系をプラズマ化に変化させて気化させていく物で、これでゴリラたちの胸板の防御壁は気化されて行った。そして、お兄様の『術式解体』で固くなった心臓に刻まれた術式を解体していった。
「あーちゃん、地下通路を使って、シェルターへ避難して」
「はい。皆さん、落ち着いて、付いて来てくださ~い!」
あずささんを先頭に避難していく生徒達。
「四校が裏口から逃げたようだぞ!」
服部さんの声。お兄様達は、バックヤードに向かい、コンペで使った装置からデータを消去し始めた。盗難防止の為である。
「おい、お前ら、やけに手際が良いな」
三校の一条将輝さんが、お兄様に掴みかかった。
「こうなることを予見した教師がいたからな。万が一の際の手順を、予習して置いたのさ」
「あの時の教師か?」
あの時…たぶん九校戦のことだろう。
「あぁ、そうだ。おい、手伝ってくれ。お前達の学校のデータを消去してくれないか」
「わかった」
お兄様から離れて、データを消去し始めた一条さん達。
---ネギ---
賢者様に貰った新しい身体、結構丈夫だった。相手の放つ魔弾を受け流せる強度がある。そして、相手に近づき、首の骨を折り、確実に心臓を破壊していく。人形化されるとイヤだからね。響子も同じ戦法で相手を屠っていた。
「響子、スゴく嫌な予感がするんだけど」
会場の外に大砲を構えたヤツがいた。
「アレ、食らったらダメかもね」
だと思う。なので、気流を操り、大砲内の空気を二酸化炭素にして、発射用の爆薬が爆発しないようにした。そして、響子と二人で、大砲を構えた奴らを屠る。
「おぃおぃ、爆薬を満載したトレーターが4台、カミカゼアタックだよ」
「ネギ君…どうする?」
魔法を発動させるか。『ファイヤーストーム』で、近寄る前に燃やしてみた。しかし、爆風で会場内へと叩き込まれた僕と響子。
「響子、大丈夫か?」
「ネギ君…爆薬に炎はダメだよ…」
だね…反省する僕。
『抗戦しているけど、私の魔法が研究されているみたいで、効かないわ』
澪から悲痛な声。戦略級魔法の『アビス』が効かない艦隊らしい。
『澪、引いて!立て直そう』
『わかったわ。洋史とそっちへ行くわよ』
敵は僕達を研究しているようだ。そうなると、切り札は里奈だけかな。いや、待てよ!
『達也!澪と合流してくれ。澪単体ではダメらしい』
『了解だ。澪さんに連絡を取ってみる』
『遥、戦況はどうだ?』
『黒いヤツ、3部隊が、ここに向かっているわよ。魔法師協会ビルも苦戦しているみたいだよ~』
『十文字、魔法師協会ビルに行け!服部、シェルター組に護衛をつけろ。黒いのが向かってきている
『『了解!』』』
「アニキ!真田さん!引いてください。もうすぐ、アレが来る」
「「断る!」」
二人の指揮官が拒否のようだ。だけど…
「アニキ!付近の住民を護ってくれ。真田さんもだよ!黒いヤツの目的は僕の殺害だし」
「だから、放っておけないだろ」
「アニキ!黒いヤツは見境無く住民を殺すぞ。だから、目の付かない場所へ誘導してくれ。真田さんは、港をお願いします。澪が敗走しています」
「何!澪さんが…」
真田さんは、部隊を連れて、港へと急いで行った。後はアニキだ。
「アニキ!早く…」
アニキと見つめ合う僕。しばらくすると、僕から視線を外したアニキ。
「わかったよ。その代わり、もう死ぬなよ。死に慣れるなよ、ネギ!おい、行くぞ!野郎共!!」
警察庁の特命チームが裏口へと向かって行った。
「響子…」
「ネギ君…」
今度は響子と見つめ合う僕。響子は頷き、遥の元へと向かった。作戦の第二段階だ。
---司波深雪---
お兄様達が出て行かれた。残った私達で、この建物内にある、情報収集室へと向かった。頑強な作りの部屋で、多少の攻撃にも耐える設計だそうだ。途中で響子さんが合流した。そして、情報収集室に辿り着いた。
響子さんは、予め用意して置いた装置に、横たわった。彼女の新しい能力『ヴィジョネイル』を使う為だ。この装置から、電脳世界へダイブして、敵のシステムを破壊するそうだ。
私達は、彼女が生還するまで、この部屋を死守することになる。
「遥先生、現状はどうなっていますか?」
真由美さんが訊いた。
「良く無いよ~。戦える戦力が少ないから。国軍は魔装大隊しか応戦していないの。陸軍は敵の味方っぽいなぁ」
「海軍は?」
「澪さんの能力を使うから、出していないの。でも、澪さんも敗走中だし…」
ネギ先生は、そんな澪さんとお兄様に作戦を授けていた。水と熱…たぶん、水蒸気爆発系だろうな。
リーナとシルヴィさんも、応戦に出ていた。金属系の敵には有効であるから。問題はネギ先生の応対する黒いヤツらだ。どうするんだろ?もうカウンター攻撃は使えないそうだし。
「ネギ君の元に5部隊…50体も向かっている…」
遥先生の悲痛な声…
「50体も?どこから、湧き出たの?」
真由美さんが訊いた。
「わからない…予め、隠していたみたい…」
敵は用意周到に準備していたようだ。ネギ先生…生きて帰って欲しいけど…
---ネギ---
玄関前の駐車場スペースで、お客さんを待っていた。う~ん…深雪にドエスプレイをしていないのが、心残りである。50体もいるのか…って、気配を感じた。後5分程度で接触だな。響子ともっとしたかった。遥とモフモフしたかった。もう、後の祭りである。
「まったく、愚かすぎるだろ?そういうのは、遠慮せずにガンガンしないと」
僕の隣に賢者様が転移してきた。
「賢者様みたいに鬼畜三昧するには、鍛錬が足りませんよ」
「あぁいうのに鍛錬は必要無い。経験だけが命だよ」
賢者様が隣にいるだけで、平常心に戻っていく。
「しかし、この世界の人間は愚かな者を作り出したな。強制的に受精して、強靱化とはなぁ」
「魂は宿るんですか?」
僕の見知らぬ弟達のことを訊いた。
「宿らないよ。生物では無い。人工生成物だよ。魂を踏みにじる行為だよな。あぁ、そうそう紅い玉が出たそうだぞ。で、新しい精巣を手にいれたみたいだ。だから、お前とは異父弟も混じっているようだ」
新しい精巣?父さんの精巣は?
「遺伝子として細胞の1つ1つを保存したようだ。USNAと大亜の連合軍もエグいマネをしてくれるよな」
新しい精巣…まさか…
「おぉ、愚か者にしてはさえるな、ネギ。そうだよ、烈の精巣だ。九校戦のあの会場で、黒いやつらに攫われていたようだ。探しても、見付からない訳はソレだった」
もしかして…
「真夜さんの卵巣は?」
子供頃に誘拐されて以来、子供の産めない身体になった真夜さん。
「お前の父親の遺伝子で、卵子を強化させて、烈の精子で受精中だよ。お前の母親の卵巣も遺伝子として細胞の1つ1つにされ、保存し始めたようだ。次回からは、新型が出てくるぞ。この世界の最強の魔法師同士で交配した新型がな」
許せない…真夜さんを…母さんを…父さんを…僕の心は暴走していく。暴走した僕の心の振動は、黒いヤツらの心へ共鳴していく。そうだよな。お前達も悔しいよな。僕と一緒に地獄の始まりを壊そうよ。神でも無いのに人間を作り出した奴らを殲滅しようよ。関わった奴らを全員さぁ。ねぇねぇ、どうかな♪
------
僕と賢者様、そして、50体の僕の弟達と共に、生成現場へ乗り込んだ。逃げ惑う兵士、科学者達。敵の反撃…僕の弟達には効かない。人間の攻撃では倒せないようにしたのは、お前らだろ?
父さんと母さんの遺伝子を見つけた。総て、賢者様が引き取り、成仏させてくれるそうだ。そして、内臓だけで生きている烈…培養液を抜き去り、内臓を動物園のライオンの檻へと転移させた。
真夜さんの卵巣…賢者様が、大切そうにどこかへ転移させた。
「あれは、有るべき場所に戻そうと思う」
「お願いします。で、僕の弟達はどうなります?」
「魂は無いけど…君の本当の弟君の魂と同化させようか。魂が無いけど、家族と言う物を感じて、彼らの心は昇華し、魂の種となるかもしれない。でも、その前にもう一働きしてもらう。大亜連合とUSNAの心臓部に彼らを送り込む。きっと楽しいパーティーになるだろうな」
次の瞬間、生成工場から、僕の弟達が消えた。
「じゃ、ここは壊すよ。地盤沈下で潰すか」
次の瞬間、僕は駐車場へ転移していた。身体が重い…マインドロストのようだ。僕は何か柔らかい物に顔を埋めて、意識を飛ばした。
-------
気が付くと、病院のベッドの上にいた。幾つものチューブが身体に何かを送り込んでいるようだ。
「先生…大丈夫ですか?痛いところありますか?」
深雪が顔を覗かせた。
「ここは?」
「病院です。駐車場で倒れてしまって…どうやって倒したのですか?」
「倒していない…大亜連合とUSNAの心臓部へ転移させた」
「だから、マインドロストしたんですね」
里奈の声だ。
「戦況はどうなった?」
「護り切れましたよ。生徒も魔法師協会も」
「犠牲は?」
「まったくないとは言いませんが、一高の生徒は全員無事です。ネギの事前予測が的中して、助かったようだ」
って、達也。
「澪…響子…遥は、無事か?」
「みんな、マインドロストして、ベッドの上ですよ」
って、真由美。
「真田さん…アニキは?」
「両部隊とも怪我人はいますが、死者はいませんよ」
って、水波…
「乗り切れたのか…」
「先生のおかげです。早く元気になって、授業を再開してくれよな」
って、服部…護り切れたのかな…本当に…