---七草真由美---
あと一歩って処で、ネギに逃げられた。次こそは訊き出してやる。翌日、生徒会室に行くと摩利がいた。
「あれ?あなた、指名手配されているけど、何をしたの?」
「え?あぁ。アレは手違いだったようよ」
手違い?摩利に気を取られて、背後が疎かになっていた。背中にチクりとした痛みがして、意識が遠のいて行った。
---渡辺摩利---
真由美に麻酔薬が投与された。その場で意識を飛ばし、倒れた彼女。奥の会長室に運び込み、施錠を施した。修次さんが真由美の衣服をはぎ取り、意識の無い真由美と抱き合った。
「どうだ。本能のままに動く男は?」
私の修次さんを人形にした術師に訊かれた。
「興味無いわ。獣と一緒でしょ」
三矢家の分家筋だったとは知らなかった。本家に行った両親を人質に取られ、三矢家の言いなりになった私。いや、三矢家自体が、この術師の手中にあった。
命令に背けば、両親は人形にされてしまう。命令通り、千葉家の次期当主である修次さんを人形にする手伝いをした。そして、今度は真由美である。
「ほら、親友が人形になったぞ」
見た目は変わらない。でも…人形は自分の意志を持たない、言葉を喋らないなど行動に差異があるのだ。しかし、戦い方は生前と同じである。いや、それ以上の能力を秘めているそうだ。そして、どしても勝て無い相手に遭遇すると、肉体増強薬が注入して、化け物に変化するそうだ。もう、修次さんも、真由美も人間には戻れないのだ。
術師からテレパシーで命令を受けて、行動する人形。目の前の2体の人形は服を着た。
「じゃ、使える能力を持つ生徒達を人形にしようかな♪」
え?いきなり、2体の人形に両手を押さえられて、背中に麻酔を打たれてしまった。私も?
---ネギ---
何の手がかりも掴めないまま、週が明けてしまった。学校へ向かう。
「先生、大変だ!」
服部が走り寄って来た。
「どうした?」
「二科生の千葉エリカが何者かと抗戦している。桐原とか壬生がアシストしているが、三人掛かりでもダメかもしれない」
修次さんか…そうなると、
「おい、服部。二人一組で行動しろ、人形遣いが入り込んだかもしれない」
「え?ドールテイマーか?わかった、みんなに知らせるよ」
僕だけで現場へ向かう。
「兄上!私です。何か言ってください!」
エリカが必死に語り掛けるが、人形はエリカ達に刃を振りかざしていく。
「桐原!そいつはドールだ。壬生と一緒に術者を探せ!」
「わかった!」
「ここは引き受ける」
「ネギ、頼むぞ!」
桐原と壬生が引いた。エリカとドールの間にダイヤモンドウォールを発現させ、エリカに接触した。
「あれは、もうお前の兄じゃない。引け!」
「何言っているんだよ。アレは兄上の剣筋だよ」
「お前の親父を殺した剣筋だぞ!」
「えっ?」
一瞬出来たエリカの隙を突き、エリカの意識を刈り取った。そして、ドールの目の前に瞬動術で移動して、心臓を撃ち抜くと、術式を刻まれた心臓を失ったドールはその場に倒れた。
エリカの元へ戻り、エリカを家に連れ帰った。
「どうしたの?」
響子とシルヴィが近寄って来た。
「コイツを家から出すな。学校にドールテイマーが入り込んだ。僕は学校へ戻る。この家の警戒レベルをあげてくれ」
僕はそう言い残すと、学校へ戻った。正門を入って、目の前の広がる風景を見て固まった。深雪が人形にされたようだ。凍り付いている校舎…氷像になっている生徒達…達也と里奈は無事か?遥は?まず、遥の部屋に向かう。そこには、鼓動を感じ無い遥と交わる、鼓動を感じ無い服部…背後に何かの気配を感じた。背中に何かを刺された痛み、その針にドラゴンのオーラを叩き込む。
「うごっ!」
燃え上がる人間。術師のようだ。背中に刺さった針を抜く。麻酔薬が塗られ、ドール化にする為の術式が刻まれていた。でも、僕には効かない。僕はもう死んでいるから。術師が死んでも動いている人形2体。命じられた命令は術師を殺しても、キャンセル出来無いのか?
「遥…ゴメン…服部…済まない」
二人を『地獄の業火』で灰にする。普通の火とは違い、人間の業らも燃やして灰にしてくれる業火である。燃え上がる遥と服部…無事な生徒はいるのか?
1年A組に向かう。戦闘に役立つ能力者達の死体は無かった。いや、死体と呼べる物は、ここには無い。砕けた凍結された肉片が散乱しているだけだ。深雪がやったのか…
愚かな僕は、深雪すらも救えないのか…
1年E組に向かう。そこは何も無かった。総てが燃えきっていた。達也の術だ。教室があった痕跡すら無い。あの時、エリカを連れ帰らなければ…くそっ!
家に帰る。警戒レベルが上がって無事なはずなのだが…瀕死の状態の響子が、エリカに覆い被さっていた。
「響子…何があったんだ?」
「水波ちゃん…澪さんが…暴走して…何かの術式を埋め込まれていたみたい」
あ…調整体にするときにか…ノーチェックだった。くそっ!
「エリカちゃんは護ったよ…たぶん…」
響子の意識が途絶えた。鼓動は微かに動いている。エリカは…響子の背中から銃弾が打ち込まれていて、エリカの腹部まで貫通していた。意識はあるものの、意識は混濁しているようで、ドールにされた兄を呼び続けていた。
くそっ!
賢者様…どうすれば良いですか?藁にも掴む思いで賢者様に祈りを捧げたが、賢者様から返答は無い…愚か過ぎて見捨てられたのかもしれない。
「エリカ…響子…ごめんな、愚かで…」
二人も『地獄の業火』で灰にした。ドールにされると困るから。
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七親父に助けを求めに、七草家に向かった。しかし、手遅れだった。
「あっ!ネギ太郎…」
「親父!誰にやられたんだ?」
親父を抱き起こす。
「真由美が…ドールに…」
「家から出したのか?ここにいれば安全だったのに…」
「ごほっ…」
親父は口から吐血している。もう長く無い。身体中に魔弾が撃ち込まれている
「ネギ太郎の忠告…護らなかった…すまな…」
僕の腕の中で息絶えた親父。実の娘にやられたのか…くそっ!
僕の願い通りの展開になっているのに、心が痛い。なんで、護りたい者ばかり、こんな目に遭うんだ。僕の家族もそうだ…僕が元凶なのか?
今までに見たことの無い記憶の映像が、脳裏に浮かび上がった…なんてことだ…僕が真夜さんの卵子に烈の精子が受精した子供だったのか…
『愚か者よ!気づいたのか…罪深き子供よ』
僕が元凶なのか…なんで、僕をアシストしてくれたのですか?
『お前に自分の愚かさを身を持って知らせる為だ。お前の望んだ復讐は、どうだ?満足か?』
な訳ないでしょ?
『魔法師達が死んでいく…子孫を残すことをせず、殺戮に走る魔法師達…お前の望みを叶えたぞ』
そうだけど…でも…
『私は愚かなお前は嫌いでは無い。だが、お前は選択ミスをした。許せないミスをな』
許せないミス?
『エリカを殺した。響子を殺した。まだ、鼓動があった者達を『地獄の業火』で焼き殺した。これは許せない行為だ。お前は勘違いをしている。あの業火で焼かれると、苦しみや痛みが濃縮して、焼かれた者へフィードバックするのだ。安楽死ではなく、激痛を受け続けて死んでいく術だぞ』
えっ!そうなんなぁ…
『愛した女性への最後のプレゼントが激痛だとはな。愚かで済まない問題だ。お前は愚か者では無く、無知な殺戮者風情だ。無知は凶器にも狂気にもなる。お前はクソ魔法師達の造りだした狂気な道具だよ』
そんな…
『この星はリセットする。お前の死をもってだ。お前の不死属性は無価値にした。ケリをお前がつけろ』
身体が変貌していく。ドラゴンの力が消えたようだ。昔のようなひ弱な身体付きに戻っていく。逞しさはもうないようだ。
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深雪達を探す。探査能力もあまり残っていないのか、深雪のオーラが読み取れない。
僕だけ、魔法師の糧にされなかったのは、僕が四宮家の養子だったから…僕だけ、魔法師の能力が無かったから…家に戻った。灰になった響子とエリカ…二人の灰を袋に詰めて、自分の身体に包帯で巻き付けた。一緒にいて欲しいから。今更、何?っていわれるかもしれないけど。
ドールは聖域に旅立てない…妹も姉も母も旅立てないのだろうか…
家を出ると街全体が氷漬けであった。一般の人達が、氷像のようになっている。深雪はどこにいるんだ?
「ネギ!」
僕を呼ぶ声がした。声の主を探すと、幹比古、レオ、美月がいた。
「生き残りはこれだけか?」
「救える者は救って、シェルターへ連れて行った。これはどういうことだ?」
知っていることを教えてた。学校にドールマスターが入り込み、生徒達がドールにされしまったこと。調整体達は、術者の死亡がキーとなり、新たな行動に出たことなど…
「え?達也さんと深雪さんって、調整体だったんですか?」
「あぁ。で、新たな行動が何かはわからないが、人類を殲滅方向であるのは、見ての通りだ。これは深雪の能力だ。いや、雫とほのかであ可能かもしれない」
「先輩達はどうなんったんだ?」
レオに訊かれた。
「遥と服部と真由美はドールだ。前者2名は処分した」
「うっ!」
幹比古の声。幹比古の頭部が炸裂した。
「真由美だ。逃げるぞ!」
レオと美月と共に逃げる。いや、レオが逃げない。
「ネギ!美月を安全な場所へ連れて行け!ここは俺が時間を稼ぐ」
「レオ!逃げろ!」
手遅れだった。摩利と十文字がレオの身体を粉砕していく。僕は美月に見せない様にして、その場から逃げた。あの二人もドールなのか…
生徒を護れていない…せめて、美月だけでも護らないと…
どこをどう逃げたのか分からないが、凍り付いていない山小屋を見つけた。
「ここで暖を取ろう」
「はい…」
美月と山小屋に入り、暖炉に火を起こし、薪をくべていく。身体の芯まで冷えているのか、震えている美月。
「大丈夫か?」
「えぇ…先生…」
僕に抱きついてきた美月。彼女に押し倒される僕。
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美月の身体は柔らかくて気持ちが良い。胸は思っていた以上に大きく、これも気持ちが良い。そして、あそこは吸い付くように僕の身体を蕩けさせていく。
「先生…どうですか?」
「気持ちがいいよ…」
「そうですか…コレが最後の晩餐ですから、味わって下さいね♪」
へ?耳を疑うようなことを今言わなかったか?最後の晩餐って?うっ…身体がきり裂かれていく…みつき…み??こいつも三か?
「気づくの遅いですよ。愚かなネギ先生♪」
僕の身体から精巣が取り出されていく。それを冷凍保存する深雪…みゆき?こいつも3か…みなみも?愚かではなく無知だったのか…
きり裂かれた身体で、3人から距離を取る。
「達也…」
気配を感じ、後を振り向くと、達也がいた。無表情で僕に
『マテリアル・バースト』
達也の術が僕に向かって発動された。灼熱により身体が燃えていく。
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「どう?焼かれる気分は?」
誰かの膝枕で寝ている。誰だっけ?
「記憶まで灰になったの?愚かにも程があるでしょ?」
あぁ、響子だ。
「響子?」
「そうだよ、覚えていなさいよね!指輪をあげた女性の名前くらいは」
そんなこともあったよね。
「ここは?」
「煉獄…地獄にも天国にもいけない魂のたまり場よ」
「なんで、響子が?」
「愚か者♪あなたの傍にいる為だよ。だって、あなたは天国にも地獄にも行けないでしょ?」
楽しそうに言う響子。そうだっけ?
「私以外の女と寝て、精巣を盗まれるなんて愚か過ぎるわよ!」
あぁ、なんとなく思い出した。美月に腹を切り開かれて、達也に術を食らったんだ。
「3の野望って感じね。まさか、4に3の者が混ざっていたとは…」
「そうなると、深夜も3なのか?」
「の、可能性がある。どこかで入れ替わった可能性があるそうよ」
そこまで見抜けなかった。
「あの後どうなったの?」
「まったく、愚か者って言われる訳だわ。言われたんでしょ?賢者様にさぁ。ネギの死を以て世界をリセットするって♪」
あぁ、言われたねぇ。
「今、前文明を破壊している処よ。火山の噴火、海水面の隆起によって、地形を再構成中なの。大自然の力の前では、魔法師だってノミと一緒。右往左往しているわよ」
そうなんだ。
「これから、どうなるんだ?」
「ここでネギと過ごすわよ♪」
「ここで?」
「そう。愚かのネギのせいで、ここから出たら、もう会えなくなるから…私はここを出られないのよ!おい、ネギ!責任を取りなさいよ!」
え?そうなの?
「天国とか地獄へ行けば、転生のチャンスはあるけど、ここにはそんな特典は無いそうよ。どうしてくれるのかな?ネギく♪ん♪」
悲壮感はなく、唯々楽しそうな響子。これでいいのかな?
「知恵熱ですから、考え無いでいいのよ♪ネギの願った結末になったから良しにしなさいって、賢者様がいっていたわよ」
そうなのか…では良しにするかな。