お嬢様の葛藤 第一話
「おや、アクアがいませんね……」
私とめぐみんとゆんゆんが一緒にアクセルにテレポートで戻って来たわけだが、どういうわけだかアクアがいなかった。
「ど、どうしましょう!?私、私っ!」
顔を青ざめながらおろおろしだしたゆんゆんに、
「向こうにはカズマがいるし何とかするんじゃないか?」
と苦笑いを浮かべながら声をかける。
「そ、そうですよね……きっとすぐ帰ってきますよね……!」
「それにしても毎回面倒なことしますよね、アクアは」
「そうだな」
そうしてめぐみんとお喋りをしていると身体の傷が一瞬で治った。
驚いて周りを見渡すとエリス様が私達に回復魔法を掛けていた。
それによって、あの魔剣使いの息も吹き返しており、一緒にいた二人も落ち着きを取り戻している。
エリス様は私の視線に気付くと、直に近くの角を曲がって何処かへ行ってしまった。
どうしてか、エリス様には初めて会った気がしない。
誤魔化されはしたが、何処かクリスと似ている反応をしていた。
「めぐみん、エリス様に何処かで会った気はしなかったか?」
「私はそうは思いませんでしたけど……」
首を捻りながら思い出しているめぐみん。
彼女が首を捻るというなら、私の思い違いだろうか……
そうこうしていると、ようやくカズマがアクアを連れて戻ってきた。
「「お帰りカズマ、アクア」」
「おう」
私達がお帰りを伝えるとカズマは疲れたような表情で返事をする。
「うっ……ぐすっ……ただいま……」
その後ろから半泣きのアクアの返事が遅れてされる。
またカズマが何かをしたのだろうか。
めぐみんもそう思ったらしく口を開いていた。
「どうしたんです、アクアは?カズマ、また泣かせました?」
「またって……今回はちげーよ。帰り際にモンスターから魔法を食らいかけたところでのテレポートになったからな、そんなことよりもエリス様の姿が見えないんだが」
「全員に回復魔法を掛けた後急にいなくなったぞ」
そういえば、カズマは何回かエリス様に会っている。
きっと何か知っているかもしれない。
カマをかけてみようと呟く。
「……やはり、私の友人に似ていたと思うのだが……」
言葉を続けようと顔を上げると、カズマはそそくさと私の前から移動しており魔剣使いと話をしていた。
……本当に何か知っているのだろうか
その後ゆんゆんの提案にしたがって皆でギルドに向かった。
ギルドに入ると歓声と共に私達を出迎えてくれた。
カズマは面倒そうにしながらも律儀に皆の相手をしている。
素直じゃない男だ。
隠しているつもりなのだろうが、表情がいつもよりも柔らかい。
普段だったらからかいの一言でも放ってやるところだが、今日ぐらいはそんな野暮なことはしないでやろう。
めぐみんも同意見なのか私のほうを見て微笑んでくる。
「カズマは本当は優しいですよね。普段はヘタレなのに、こういう時はちゃんとしてますし」
「フフッ、めぐみんもカズマにプレゼントのお返しで城を…痛い痛い!なんで今髪を引っ張ったんだ?!」
少し魔王城での事を思い出し反撃してやろうと思って口を開いたが、急に三つ編みを引っ張られて声を上げてしまう。
「いいから行きますよ!カズマがギルドに報告するみたいですから!」
すたすた歩いていくめぐみん。
私も慌ててついていく。
受付の所に近づくとアクアが驚いたようにしていた。
「五十億?!凄いじゃない!やったわカズマ!このまま飲みましょう!」
「確かに凄い金額だが今日は飲まないぞ。正直お前以外結構ずたボロでさすがに身体が持たないだろ?それにまだ金が入ったわけでもない」
そんなカズマの言葉に皆頷いていたが、
「私は別にこのままでも良かったのだが……」
そう呟いたものの誰も聞いてくれていないのか相手にしてくれない。
新手の放置プレイなのだろうか。
流石にこういうのは単に悲しいだけだ。
少し涙目で立ち尽くしていると、カズマが思い出したかの様に口を開いた。
「っと、俺は一応ウィズ達に挨拶してくるから先に帰っていていいぞ」
「そうですか。では私達は先に帰っていますね」
「……うむ。夕食までには戻ってくるのだぞ」
私達の言葉にカズマはギルドから出て行った。
「それじゃあ私達も屋敷に帰りましょう!」
アクアが続いて出ようとしたところで、
「アクア様、お待ちください」
「何?ム、メ……?魔剣の人。私は早く帰りたいんですけど」
「僕はミツルギです……。いえ、それよりしばらく分の食料を差し上げたいと思いまして」
ミツルギがどうしたのかそんな事を言ってきた。
「何か裏でもあるのですか?」
めぐみんが少し疑った顔でミツルギを睨んでいると、
「いや今回、もし魔王を佐藤和真が倒していなければ、そしてエリス様を連れ帰っていなければ、僕はあのまま死んでいたかもしれないからだよ。正直彼に借りを作っておきたくないのもある。それに今手元にお金は殆どないらしいじゃないか。今回の功労者にあんまりひもじい思いもさせたくないからね。言ってくれればできる限りそろえてあげるよ」
いけ好かない相手だが、こういうところはあの男にも見習って欲しいと思う。
「そう?それじゃあお言葉に甘えようかしら!」
アクアがミツルギを引っ張って街へと出て行く。
その後ろをゆっくり歩く。
「なあ、めぐみん。アクアが何をせびると思う?私は高級酒だと思うのだが」
「その他にここら辺全部なんて言い出して、魔剣の人が顔を真っ青にするのも目に浮かびますね」
それはありそうな線だな。
笑いながら話をしていると目の前でお互いの予想していることが起きた。
何というか戻ってきたな……
「どうする、止めなくてもいいと思うか?」
「いいでしょう。本当に駄目でしたら本人が止めるでしょうし」
慌てふためいているミツルギを他所にアクアが大量に食料やら何やらを買っていく。
「二人ともー!私、もう持てないから持って頂戴!あ、おじさんこれも!」
「まいどー!」
苦笑いしながら荷物を持って屋敷へと戻っていった。
屋敷の中に入り、めぐみんと共に食料をしまっていく。
「これはそっちで、あ、それはこっちにしまいますのでください」
「うむ。これはここだな。これは…?」
「あ、それは私のだわ!……ありがと。そういえばゼル帝はどうしたのかしら……」
アクアが私の手からおやつの袋を受け取ると、悩み始めた。
「ああ、それなら――」
「まさか、あのニート食べちゃったんじゃ!?」
私が言い切る前にアクアが叫び、走って行ってしまう。
「最近誰も私の言葉を聞いてくれてない気がするんだが……」
「そんなことありませんよ。……それより、霜降り赤ガニも買っていたんですね」
荷物の中からカニを取り出し目を見張るめぐみん。
「今日はそれを食べるつもりなんだな?」
「そうですよ。こういうものは鮮度がいい内に食べるのが基本ですから。準備手伝ってください」
めぐみんの言うように手伝って、そのまま席に着く。
「あ、出来上がっているのね!あとはカズマが戻ってくれば食べれるわね!多分そろそろ戻ってくるわ!」
アクアがチラリと居間に顔を出し、すぐに玄関のほうに走っていく。
それから間も無くカズマが帰ってきて食卓に座った。
「おかえり。食べる準備はしてある。話でもしながらゆっくりしようじゃないか」
「こうしてこんなに豪勢なものを皆で食べるのは久しぶりですね」
「そうだな」
ゆっくり話すつもりだったが、皆カニに夢中になりそれどころではなさそうだな。
そんなことを思っていると、めぐみんが口を開いた。
「そういえばウィズ達はどうでした?何を話してきたのですか?」
「元気そうだったし、魔王を倒してきたと言ったら喜んでくれたよ。あと前に行ったダンジョンの残りの宝の回収と、新しい商品を持っていくって話になった」
新しい商品?
この男はいつの間に考えたのだろうか。
「新しい商品って何かしら?」
訊ねたアクアはがさごそとしており殆ど聞いていないようだ。
「風邪予防用のマスクってのを一応考えているんだ。この世の中には傷は治せても病気を防いだり治したりする魔法は無いからな。効果は気休め程度でも性能は確実にあるつもりだ。あとは素材があれば完成できる」
「ほう、そんなものを……何時の間に考えたんだ?まさか魔王との戦闘中ではあるまいな?」
私は再び甲羅の中に酒を注ぎながら尋ねる。
「前から少しは考えていたけど、インパクトに欠けるから作成してなかっただけだ。今までの経験から言って安定した収入源を見込めるならあるに越したことはないしな」
思うところでもあるのか、頭を少し掻きながら告げてくる。
「そうですね。確かにいくらお金を持っていても、急にカズマが貴族の恨みを買ったり、大量のマナタイトを買ったりしたらすぐになくなってしまいますからね」
カズマを茶化すように言うめぐみん。
不満そうにしながらも、
「それでもまあ、ちゃんとたまにはクエストも受けるさ。税金の件もあるけど、その、なんだ、たまに行く分には楽しいからな」
酒が入っているからだろうか。
それでもこの男が素直に言ってくるなんて珍しい。
嬉しくてつい口元が緩んでしまう。
それを見てかカズマが横を向き、私達から目を逸らした。
これだから、からかい甲斐がある。
やりすぎると拗ねられるから気をつけなければならないが。
その後アクアの宴会芸が行われ、魅入ってしまった。
食事もそこそこにカズマが魔王を倒した時の話を始めたので聞いていた。
爆裂魔法で倒したなんていうから、めぐみんがはしゃいでいたが、一つ気になることができた。
「しかし、それではカズマはあの時もう死んでしまったのではないか?」
カズマに訊ねると少し遠い目をして、
「魔王を倒した特典で生き返らせて貰ったからな」
「そういうことか……しかし女神といってもアクアの普段の様子からは全くそう思えないな」
ちらりとアクアに視線を向ける。
気持ち良さそうに机の上で寝る彼女は、見るからに普通の女性だ。
何が面白いのか、カズマは口元を緩めてアクアを見続けている。
めぐみんがそれをみて軽く微笑みながら立ち上がり、
「さてと、私はもう終わりにしますね。先にお風呂に入らせて貰います」
彼女の瞳が一瞬光った気がしたということは……
先に行動したほうがいいかもしれない。
「分かった。私は片付けを済ませてから入るからカズマが先に入ってくれ」
呆けているカズマに声をかけると首を傾げながら頷いてくる。
「……ん?ああ、じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ。めぐみん、酔ったままの風呂は危なかったりもするからあんまり長く入るなよ?」
「分かってますよ。カズマこそ今日は二回も死んでしまっているのですから気をつけてくださいね?」
「はいはい、いいから早く入って来い」
だるそうにめぐみんに返しているカズマは、何かに気付いている様子もない。
「……めぐみん大分テンション高くなかったか?」
……これに答えるのは何というか癪だ。
「カズマ、その理由が分からないならとてつもなく鈍感だぞ?」
ぼかして言うと苦虫を噛み潰したような顔で、
「似たようなことをバニルからも言われたな……」
あの悪魔の名を言い出した。
「バニルに?」
「とてつもなく鈍感で記憶力の悪い男……だったか、そんな事を言われたな」
「まあカズマが鈍感なことぐらい重々分かっていたのだが」
「おい、お前今何て言った?」
口から思わず出てしまっていたか。
知らないふりをして、
「私は皿を片付けてくるって言った」
机の上のものを片付け始めると、微妙な顔をされたが何も言わず暖炉の前に移動していった。
皿も洗い終えて、カズマが風呂に入っているので脱衣所に向かう。
急に風呂場に入っていったら驚くだろうな。
めぐみんには悪いけれど、強引に迫らせてもらおう。
あれでいてあの男は押しに弱いところがある。
結構長風呂だから今から入っても十分間に合うだろう。
そうして洗濯籠の前で服を脱ごうとして、
「……おい、何でいる」
突然カズマに声をかけられた。
「ん?皿を洗い終えたから風呂に入ろうと思ってな。カズマはもういいのか?」
飛び上がりそうになる身体を抑えて、俯きがちに、なるべく感情を含めないように告げる。
この男はどうして毎回間が悪いんだ!
毎回こいつは邪魔が入ると愚痴を言っていたが、半分くらいは自分で引き起こしてると思う。
当のカズマは微妙な表情を浮かべている。
「……お前、やっぱり痴女ネスだったのか」
「ちちち違――!なんでそうなるんだ!?」
「俺が入っているのを分かっているくせに風呂に入ってこようとすればそうなるだろ。それにもうあがるから」
「う、うう……」
自分でしようとしていたことを冷静になって思い出し恥ずかしくなってきた。
わ、私は……っ何をっ……!
カズマは私の横を通り過ぎ出て行こうとしていた。
あっ……これでは罵られただけでは無いか!
「待ってくれカズマ、今から何処に行くんだ?」
何でそんな事を聞くんだというように首を捻っているが、
「?とりあえず暖炉の前でしばらくぼーっとするつもりだ」
「そうか……」
めぐみんに先を越されることは無さそうだな。
手早く入って、カズマの部屋に行けばまだチャンスはありそうだ。
「何かあるのか?」
「ななな何も無いから気にするな」
これ以上深入りされると心の準備ができないので、無理やりカズマを脱衣所から追い出し、ドアを閉める。
ふう………。
いざ目の前にすると言いたい事が霞んでしまうな……。
私は風呂に入りながらどうしようかと思案していた。
風呂から上がり、カズマが広間に座っているのを確認して、カズマの部屋に入る。
服装も普段より少し薄着にしてある。
めぐみんには前にばれてしまったが、今回は仮に来られても大丈夫なように、いい雰囲気になったなら途中で邪魔してやろう。
ここ最近めぐみんには良いようにされてばかりだったから、これぐらいはいいだろう。
……………。
それにしても、部屋が案外綺麗に片付けてあるな。
旅に出る為に色々持ち出した割には小奇麗で意外だ。
私は手持ち無沙汰になり部屋の中を隈なく見渡す。
部屋の中を物色してやろうかなどと考えも浮かぶがカズマではあるまいしと首を振る。
いや、でもばれたら何か命令されるかもしれない。
普段だったら本気で嫌がる事を命令してきそうだが……
私がしおらしく謝れば……
密室で二人きりで、あの男に……
ゴクリ。
そういうのもいいかもしれないな……!
でも肝心な時にヘタレなあいつがそうするだろうか。
わ、私が誘導すればいいのだろうか。
そうと決まれば少し見てやろう。
私は部屋の中を探り始めた。
この戸棚には何を入れてるのだろうか。
開けてみると衝撃を与えると爆発するポーションが幾つかと、こまごました小物が入っていた。
無言でそっと戸棚を閉め、窓の外を見る。
想像していた物色とは何か根本的に違う気がしたのでやめる。
それにしても来るのが遅い。
一体どれだけ暖炉の前で呆けているのだろうか。
そのまま寝てたりするんじゃないかもと思い私はそっと広間に向かう。
チラリと覗き込んでみると、カズマが居なくなっていた。
………………。
めぐみんに先を越されたのか、前の如く夜遊びに出かけたのか。
前者なら乱入してやろう。
後者なら……何故私はホッとしているのだろうか。
「ダクネスー?そんなところで何してるの?」
「!?いや、なんでもないぞ!それよりアクアこそどうしたんだ?」
急に声をかけられ慌ててしまう。
アクアは不思議そうにしながらも。
「んーさっき起きて寝れないから、少しカズマさんと話でもしようかと思って探してたんだけど……ダクネスは心当たりある?」
「私も分からなくてな。めぐみんなら何か知ってるかもしれないが……」
「じゃあ、めぐみんの部屋に行きましょうか!」
アクアと共にめぐみんの部屋の前にやってきた。
思ったより静かだ……。
アクアが扉を強く叩きながら声をかけ始める。
「めぐみん起きてるー?ってあれ?鍵が締まってるわね。もう寝ちゃったのかしら。カズマがいないから何処にいるか聞こうと思ったのに」
鍵が……?
それで静かだという事はつまり。
私は安堵なのか呆れなのか自分でも分からない息を吐きながら、
「はぁ……あいつのことだ。昼間あんなこと言っておきながら夜遊びにでもいったのだろう。まったく、こっちが気合をいれて準備しておいたというのに……」
つい、本音まで漏れてしまった。
アクアが少し怪訝な顔をしてこちらを見てくる。
「ダクネス、今最後のほうなんて言ってたの?ねえ、赤くなってって、ちょっと待ってってば!走って逃げないでよ!」
恥ずかしくなり思わず駆け出してしまう。
その後私はアクアと少し話し、再びカズマの部屋に戻った。
万が一にも帰ってくるかもしれない。
というより、腹いせにここで寝てやろうと思っただけだ。
まさか帰ってきて初日にいなくなるなど、言語道断だ。
カズマの布団に包まりながら考える。
………………。
少しいい匂いがする気がするのは気のせいだろう。
あの男はたまにドキッとするようなこともしれっと言うことがある。
どうしてかこんな状況で少し興奮してきてしまっている自分に困惑している。
とりわけ私が望むようなシチュエーションでもないというのに。
………いや。
もし私がこんな格好でここで寝ていて、あの男が入ってきたら、間違えなくセクハラしてくるだろう。
もしかしたら強引に迫られてしまうかもしれないっ!
いや、寝ている間に犯されて、気付いた時には抵抗する間も無く全て終わってしまっているとか……っ!
無意識にそういう可能性を分かっていたからだな。
意識し始めたら身体が熱くなってきてしまったな……
私は妄想を広げながら布団の中で身悶えている。
でも、起きていたら確実にあの男は何もしないどころか、からかうだけだろう。
少し落ち着き私は寝ることにした。
「んっ………」
朝の日差しが差し込んできて目が覚める。
自分の身体を確かめてみるが、何もされた形跡もない。
結局帰ってこなかったのか……
がっかりしながら居間へ入る。
するとそこには何やらいじくっているカズマがいた。
私は不満も募っていたので、
「カズマ!一体昨日の夜は何処に行っていたんだ!探したが何処にもおらず心配したんだからな!」
責めるように口にすると気まずそうにそっぽを向きながら、
「悪い、ちょっとな」
誤魔化すように口にする。
「仕方が無い奴だな……」
私も少し後ろめたさがあり、そこまで追求する気も起こらず、そのまま向かい側に座る。
ちょうどそのタイミングでめぐみんが台所から食事を持ってやってきた。
「朝食ができましたよ。アクアはまだ寝ているんですか?ダクネス、アクアを起こしてくるのを頼んでもいいですか?」
「ああ、任せてくれ」
アクアを起こして居間に戻って食事をし始める。
朝食を口に運んでいるとめぐみんが手紙を取り出して
「そうです。ダクネスに手紙が何通か届いていましたよ?」
私に手渡してくる。
王家の手紙と、父からの手紙だが……どういうことだろうか。
封を切り中身を見てみると、王都での表彰と、父からは縁談……。
あれだけ縁談はしないと言い張ったというのに……。
私の表情を見てかアクアが興味津々な様子で聞いてくる。
「どんな内容なのかしら?」
「『貴族ダスティネス・フォード・ララティーナ卿。此度は王国貴族であるダスティネス家が魔王討伐に尽力なされ、魔王殺しの偉業達成の補助をしていたと聞き及んでおります。尽きましては近日中に王家からの使者を送り、貴殿の功績を称え、表彰したい旨を手紙にてお伝えしました。場所は、王城にて執り行う事となります。……』というのと、これは父からの手紙で、縁談の話らしい……」
私の言葉を聞き皆同情したような表情を浮かべる。
「すまない、今日は屋敷に帰り王都へ向かう準備をしなければならなさそうだ。それと縁談の話を叩き返してくる」
食事も切り上げ実家に戻ろうと準備を始めた。
「お父様、お見合いなら受けないと何回も申し上げたではありませんか。無理にというなら張り倒します」
私がこめかみに青筋を浮かべて告げると、慌てたように口を開く父。
「ま、待ってくれララティーナ!と、父さんも断れるなら断りたかったのだ!だが、相手が王族で断るに断れなかったのだ、すまない……」
王族……?どういうことだろうか……
「カズマ君が魔王を討伐した話は聞いている。それで貢献したということで、どうしてもララティーナに一目会って話がしたいと申されてな……。すまないが断る前提で構わないから付き合ってやってはくれないか?父さんとしてもこの話自体が不本意でな……」
疲れたような表情で話す父は嘘を言っているようには見えない。
「分かりましたわ。どちらにしろ王都には行くわけですし、お話だけというなら……」
「すまない、ララティーナ。大変だったろうに」
そうして私は置手紙を屋敷に書き残し、その晩には父とテレポートで王都へと発った。
なんとかイヴに投稿させて頂きました、番外編となっております。今回の内容もお楽しみいただけたでしょうか。どこら辺が葛藤なのかと聞かれても、現状だと何も悩んでいないのでお答えできませんが……。こちらは不定期更新になるかと思われますので、ご了承ください。