※この作品はR-18です。

このすば後日譚(Web版世界)   作:双碧

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第十一話~この素晴らしい旅路に祝福を!前編~

 雪融けも進んできて季節は春が近づき。

 俺は旅行の支度を済ませて、商隊の馬車の集合場所で良さ気な馬車を一台丸ごと予約した。

 前にアクアが乗りたがった様な馬車ほどでは無いが。

 

 当然といえば当然だが、馬車の全体数は少なかった。

 ちなみにめぐみん達はまだ来ていない。

 なんでも皆色々準備があるとか。

 俺自身は、前回の紅魔の里への旅を思い出し、対策はばっちりしてある。

 

 荷物を確認していると、ゆんゆんがめぐみんと話しながらこちらに歩いてきた。

 

「おーい、こっちだ!」

 俺が声を上げると、手を振ってくる。

 

「カズマ、いい馬車取りましたね」

「カズマさん、お待たせしました」

 

 ゆんゆんとめぐみんは俺に軽く話しかけると荷物を荷台に乗せて、

「……いい?めぐみんは無茶はしないこと!今回の旅で走ったり、激しく動いちゃダメだからね!」

「分かりました。何かあった時は全部ゆんゆんに任せます。責任は全部取ってくださいね」

「え!?私が言ったのはそういう意味じゃ……!?」

 いつも通りじゃれ合っている二人。

 

「ゆんゆん、今回かなり頼りにしてるからな」

 俺がゆんゆんに声をかけると、

「あ、はい……!」

「私の時と反応が違いますね!どういうことでしょうか!」

「ひゃめ、はんへほほをひっはうほ!?」

 俺の念押しで緊張し始めたゆんゆんの頬を引っ張り出すめぐみん。

 

「めぐみん、お前も動き回りすぎるなよ?」

「分かっていますよ。それにしてもあの二人は遅いですね」

 めぐみんはゆんゆんの頬から手を離し、馬車の中に移動しながら呟く。

「ゼル帝を預けたりもしてるから仕方ないんじゃないか?」

 一応目印代わりに外に立って待つ。

 

 しかし出発まであと五分ぐらいになっても来る気配が無い。

「……あいつら、一体何してやがるんだ」

「大丈夫でしょうか……また何か厄介ごとに巻き込まれてたり……」

 イラつきながら辺りを見渡す俺と、心配そうに馬車から顔をだすゆんゆん。

 見回して遠くにアクアと思しき姿と……。

 

 

「なんだあれ」

 

 

 妙にでかく膨らんだ何か……多分ダクネスだろう……がこっちに向かってくる。

 

 

「おまたせ!さあ行くわよ!」

 

 

 生き生きとしたアクアがダクネスから荷物をとり、意気揚々とそんなことをのたまった。

 

「何が、さあ行くわよ!だ!遅い上にその荷物は何だ!」

「何よ?可愛い信者たちへのお土産に決まってるじゃない。それに時間前だからセーフよ」

 アクアは大きな荷物を無理やり荷台に載せようとしながら答えた。

 が、大きすぎる為かそのまま乗りそうも無い。

 

「……邪魔ね、この鞄」

「おい待てや」

 俺の鞄のうちの一つを下ろそうとしたのですかさず止める。

「さっきの話は終わってねーし。旅する上でそんな乗らない様な大きい荷物は不要だろ。いくらか置いてけ」

「はあ?カズマがもっと大きな馬車を予約しないのが悪いのよ。大体あんたの鞄なら一つなくなっても問題ないでしょ?自業自得よ!」

「なーにが自業自得だ!これでも大きいの予約してあったんだよ!おまえが無駄に持って来すぎなんだ!だいたいお前のための旅じゃねーんだ、そこまで言うなら馬車も全部自分で用意しやがれ!」

「いいわよ!そこまで言うならそうするわ!その代わり絶対にカズマには何かあっても回復魔法掛けてやらないから!」

 

 そう言って走り去っていくアクア。

 あいつ、絶対俺が回復魔法使えること忘れてるだろ。

 アクアを放っておいて馬車に乗り込み座る。

 

「……いいんですか、カズマ」

 めぐみんが少し怒ったような顔でじっと見てくる。

「別に?違う馬車に乗るだけだしな」

 俺がそう答えるも、そのまま顔を見続けられる。

 

 ………。

 ああ、もう。

 

「……分かったよ、一緒の馬車に乗るようアクアを説得してくればいいんだろ?」

 俺がめんどくさそうに立ち上がると、

「早くしませんと、時間になってしまいますよ?」

 めぐみんににこやかに微笑みながら促された。

 

 

 

 馬車の外に出ると、半泣きのアクアがこっちに向かってきていた。

「おいアクア、どうした。別な馬車に乗るんじゃなかったのか?」

「……他の馬車は満員だって言われて……その……」

 

 ……なるほど。

 時間帯と時期の問題か。

 

「さっきは何と言っていたんだっけな?」

 アクアはすっとぼけたようにそっぽを向きながら、

「ごめんなさい、さっき言ったことは謝るから乗せてちょうだい」

 

「……わかった。その代わり条件がある」

「えっ、いいの?」

 すんなり許可されたのが意外だったのか、驚いた様子を見せるアクア。

 

「荷物はでかいから荷台には乗らない。でも座席なら乗る。アクアは荷台でも乗る。言っている意味分かるな?」

「カズマさん、カズマさん、また荷台なんて嫌なんですけど!冗談よね?!」

「荷物を減らさないなら、そうなるよな?」

 

 俺がそう告げるとアクアは目の前で悩み始める。

「……わかったわ。減らせばいいんでしょ、減らせば!」

 置いていく物を取りだしていくアクア。

「……これで乗るわ。全部袋に入れなくてもいいなら乗りそうだけど……」

 アクアは恨みがましく置いていく物を見つめている。

 

 …………しょうがねえなあ。

 

「……ほれ」

「何よ?……袋?」

 俺が袋を手渡すとアクアは不思議そうに首を傾げる。

「荷物入れてさっさと馬車に乗れよ」

 ぶっきらぼうに言いながら先に馬車に乗り込む。

 

 中から様子を窺っていたのか三人の視線が生温かい。

 ダクネスが口を開き、

「素直じゃないな、カズマは」

「うるせえ」

 

 

 

 出発から数刻。

 俺はまだ所々雪が融けきっていない街道を馬車の窓から眺めている。

 他の女性四人は到着後の話題でで談笑中だ。

 たまにダクネスがちらちら外を見たりしてはいるが。

 

 夜になったらアンデットは寄ってくるだろうが、幸い今までモンスターに遭遇はしていない。

 前と同じたたらは踏まないように計画した甲斐はあった。

 

 ……大体こういう時は何か厄介なことが起こると知っていながら。

 俺は、そんな風にうぬぼれていました。

 

 

 

「は、白狼の群れがこっちに突っ込んでくるぞ!!」

 

 

 

 のどかな時間を破ったのはその一言だった。

 

 

「なっ……!?何が来るって!?」

「お客さん、白狼ですよ。多分雪の減少による縄張り移動だろうかと思います。群れの中央にさえ居なければ何て事は無く通り過ぎていきますんで。馬車を止めますからそのまま待っていてくださいね」

 御者のおじさんは慣れているのか、驚く俺を軽くあしらい、森の中に上がる雪煙を見ながら馬車の位置を整えている。

 

 俺も雪煙に視線を向け……。

 ……あれ、こっちに向かって来てないか?

 

「すいません、白狼でしたっけ。そいつら何かこっちに向かってきているみたいなんですけど、大丈夫なんですかね?」

 慌てたように聞き返すが、

「いざとなれば冒険者の方々に護っていただけますが……」

 心なしか冷や汗をかいているように見える。

 

 なんで毎回こんな似たような目に遭うんだよ!

 内心叫びながら仲間達を見渡す。

 

「カズマ!白狼がこっちに真っ直ぐ向かってきている!このままだと群れに揉みくちゃにされ、見るも耐えない姿にされてしまうのではっ……!!」

 

 ……今回はこいつではなさそうだが。

 めぐみんやゆんゆんではないだろうし……

 

 そのままアクアに目を向ける。

「……おい、アクア。何か思い当たることはないか」

「なんで何かあると私なのよ!?それこそカズマが原因でしょ!何とか言ってみなさいよ!」

「はあ?だいたいこういうことが起こるときはダクネスかお前だって相場が決まって……おい、それなんだ?」

 

 逆切れしたアクアに反論しかけて、その手元にきらりと輝く何かがあることに気が付いた。

 

「この指輪?ウィズから貰ったのよ。お守りだって」

「それだー!!」

 とっさにアクアの手から指輪を奪い取り外に投げ捨てる。

 

「ちょっと!?クズニート何してくれるのよ!」

「アレが原因で白狼がよってきてるに違いねーんだよ!ウィズがくれるアイテムが色々いわくつきなのは知ってるだろうが!」

 四人から非難の視線を浴びながらも、白狼に目を向ける。

 

 ………。

 

「とにかく、今回も俺達が招いた事態みたいだから、めぐみん以外戦うぞ!」

「ちょっと、私あんなヤツと戦いたくないんですけど!!」

「つべこべいうな!一番の張本人が!」

 ごねるアクアの髪を引っ張りながら馬車の外に出る。

 

「私は出なくていいのですか?!いざとなれば爆裂魔法の一つや二つ……!」

「身ごもってんだから無理すんじゃねー!大体速度の速い白狼相手じゃそんな大技、分が悪いだろーが!いいから引っ込んでろ!」

 馬車から顔を出しためぐみんを一喝して雪煙に視線を向ける。

 

「お客さん!お金払って乗っているんですから安全な場所に隠れてください!」

 

 なんか本当にすみません!

 

「冒険者の先生方!お願いします!」

 

 以前の護衛よりも屈強そうな冒険者達が、商隊のリーダーの様な人の声を受け、武器を手に馬車から出てくる。

 

「……正直白狼の習性はしらんが、とりあえず馬車に突っ込まないように前で止めるぞ!ダクネス、頼んだ!」

「うむ」

 ダクネスは商隊と雪煙との間に仁王立ちし、白狼の群れが襲ってくるのを待つ。

 アクアは支援魔法を俺達に掛け、俺とゆんゆんはダクネスの後方に構えている。

 

 準備が終わるか否かの段階で白狼たちが森の中から姿を現した!

 

「おい、あんたら!護衛とは関係ないんだから下がって俺達に任せておけよ!」

 護衛の誰かが俺達に気付くと同時に、白狼たち数匹がダクネスに襲い掛かる!

 数匹が足に食らいつき、数匹は腕に、また他の奴が胴に体当たりしているが。

 

「ふはははははは!その程度か!」

 

 噛み付いている白狼をそのままにして剣をふるい、動けない奴を仕留めていく。

 それを援護するように、

 

「狙撃狙撃狙撃狙撃ーーっ!」

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

 俺達がダクネス付近の白狼を攻撃する。

 

「本来客の、護衛料の一つも貰っていない冒険者ばかり、危険な目に遭わせるわけにもいかないだろ!皆、援護するぞ!」

 他の冒険者も一呼吸遅れて戦闘に参加し始めた。

 それに気圧されてか徐々に白狼の狙いがダクネスからそれはじめた。

 

 それが原因かどうか、

「しまっ……!馬車のほうに数匹行ったぞ!」

 その声に振り向くとめぐみんの乗っている馬車の方に走っていく白狼の姿が見えた。

 

 ヤバイヤバイヤバイ!

「く、狙撃ッ!」

 

 体の向きをかえ一匹は仕留められたが、

 そのまま数匹が馬車のほうに突っ込み……!

 

 

 

 

 

 アクアの鞄を掻っ攫っていった。

 

 

「……は?」

 

 

 あまりにも予想外のことが起きたので一瞬間の抜けた声を上げてしまった。

 

「ちょっ!?白狼ごときが私の鞄に触ろうだなんていい度胸じゃないのよ!」

 

 視界の隅に白狼に向かって駆け出していくアクアを捕らえた。

 

 ああ。

 

 大体これから先は予想したとおりの流れになるのだろう。

 

 ゆっくりと弓を下ろし、剣を抜き。

 アクアを追いかけ……。

 

 

「ちょっとまてや、この駄女神!!」

 

 

 

 

 戦闘後再び馬車を走らせ始めて。

 

「ふああああ、私の今晩のお酒のつまみがぁぁ……!」

 

 あの後アクアの鞄を取り返し、中に入っていた干し肉や生ハムなどを森のほうにぶん投げてやったら、白狼達は引いていった。

 指輪のほうもどうやら集団の支持を得られるだったらしく、その種族は問わないとかなんとか。

 

「自業自得だろうが。指輪で群れがひきつけられ、肉の匂いで襲い掛かってきたんだから」

「でもっ、でもっ!」

「でもじゃねーよ!安全に旅行したいんだよ!少しは我慢しやがれ!」

「カズマ、そこら辺にしておいてあげましょう?」

 めぐみんに宥められ、はあ、と大きくため息をつく。

 

「まあ今回は前みたいにマッチポンプみたいな状況にはならなかったからいいけどもさ」

 街の冒険者が何名か混じっていたというのもその要因の一つだった。

 半分くらい説明を聞いてはくれなかったが、伝えておくとのことだから問題は無さそうだ。

 

「それにどうせ夜になったらなったでアクアのせいでアンデットが寄ってくるだろうしな」

「そんなこと言われても知らないわよ!」

 半泣きのまま鞄の中に視線を戻すアクア。

 

「でもまあ悪くなかったぞ、白狼に群がられるのも」

 満足げに呟くダクネス。

 

 もう好きにしてくれ。

 

 付き合いきれずに窓の外に視線を移そうとして、ゆんゆんと視線が合う。

「カズマさん、どうしてこの時期だったのですか?他にもう少し安全な時期もあったはずですけど……」

 不思議そうに、それでいて少し申し訳無さそうに尋ねてくる。

 

「前に紅魔族の村に行った時期だとまた走り鷹鳶に襲われるからで、それより後だとめぐみんの身体が心配だろ。となると今ぐらいかなって」

「そうでしたか……」

 俺が説明すると妙に納得した表情を浮かべている。

 

「カズマはああ見えてしっかり考えてますからね」

 めぐみんはゆんゆんに誇らしげにそんなことを言うと、ゆんゆんは微笑んでいる。

「めぐみん、それはどういう意味だ?」

「褒めてるんですよ?」

 めぐみんはいい笑顔でそんなことを言う。

 

 これだから全く……。

 

 

 

 一晩野営をし、温泉の街ドリスに到着した。

 

 馬車が去っていくのを尻目に街の中へと入っていく。

「……さてと、俺とめぐみんは一旦宿屋行った後観光するが、お前らはどうする?」

 

 俺が三人に尋ねると、アクアが目を輝かせながら。

「すぐにアルカンレティアに行くわ!私の可愛い信者達が待ってるもの」

 ダクネスもそれに同意するが如く頷いている。

 

 ……多少息が荒いが。

 

「え、ええっと。私はその……。一緒に宿屋に泊まれると……」

「分かってますよ。カズマ、元から部屋を取ってあるんですよね?」

「ああ」

 一応何かあった時に心強いという理由で、部屋を広めに取っている。

 それを聞いてゆんゆんは顔を安心したように綻ばせる。

 

「それじゃあ一月後か。ダクネス、アクア。何かやらかしても自己責任だからな?」

「別れ際に言うセリフがそれか?!カズマ、一体私達を何だと思っているんだ!?」

 俺が荷物を持ちなおしながら言った言葉に、ダクネスが突っ掛かる。

 

「厄介ごとを持ち込む仲間、ってところだろ?」

「最近はそんなこと無かったじゃない!ねえ、ダクネス!……どうして目をそらすのよ?」

 アクアは不思議そうにダクネスを見つめるが、ダクネスは何か思い当たる節でもあるのだろう、目を合わせようとはしない。

 

「ま、それじゃあな」

 

 最後に一言かけて俺達は宿屋に向かった。

 

 

 

「こういうことは初めてですね」

「そうだな」

 

 宿屋に荷物を置き、めぐみんと手を繋ぎゆっくり歩きながら街を周っていた。

 誰かと観光で他の町を周るのはこっちに来てから初めてかもしれない。

 

 ちなみにゆんゆんは別行動している。

 まあ、そうなるだろうけど。

 

 そして俺達は。

 名物の饅頭を買ったり、小物を見たり、名所を見たりと観光を楽しみ。

 今は静かなところにあったベンチで休んでいる。

 

「あとで温泉に入りましょう」

 めぐみんがぎゅっと手を握りながらそんなことを言ってくる。

「……まあ、いいけども。あんまり長く入るなよ?」

「カズマがしっかりしていればいいのですよ、それは」

 

 ……………。

 

「意味、分かってんの?」

「むしろ何で分かってないと思ったんですか?」

 

 唐突に何言い出しちゃってるんでしょうか、この娘は!

 

「あのなあ、流石に久方ぶりだから、そういうのは厳しいんだってば」

 俺が諭すようにめぐみんに言うと、

 

「………言わせないでくださいよ」

 

 少し赤くなりながら目を逸らしてきた。

 

 えっ……。

 

「それこそ大丈夫なのかよ?」

「………時期的には大丈夫です」

 

 …………。

 

「止めだ止め。この話は止めだ!」

 外でする話ではないと思って打ち切る。

 

「誰も周りに居ないから振ったんですけどね」

 

 してやったりみたいな顔をするめぐみん。

 

 ぐむむ………。

 

「さて、一日に全部回ってしまうのももったいないですし、帰りましょうか」

 俺が何か仕返しをしようと考えている間にめぐみんが立ち上がり手を差し出してくる。

 

 ……しょうがない、また何か考えておくか。

 

「そうだな」

 

 

 

 俺達は宿に戻り夕食を取った。

 久しぶりに温泉に浸かれるというのもあり、自室でうきうきしながら準備をする。

 

 少し無茶を言って混浴を貸切にしてもらった。

 丁度観光客が少ない時期でもあるらしく、お金を払うと言うとすんなり許可をもらえた。

 

「カズマ、まだですか?」

 部屋の前からめぐみんの声がかかる。

「もう少し待っててくれ」

 部屋はめぐみんとゆんゆんでと俺がひとりでとなっている。

 

 何かあってダクネスやアクアが戻ってきてもいいように、という配慮からだ。

 

 着替えの服を持ち部屋の外に出る。

「すまん、待たせた」

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

 俺達は脱衣所に入り着替えを置き。

 俺はささっと着替えて温泉に向かう。

 手早く身体を流して肩まで温泉に浸かる。

 

「ふう………」

 

 大きく息を吐き出す。

 最近忙しかったせいか、疲れが取れていく感覚がある。

 

「あーーー……」

 

 意味も無く声を発して……。

 

 これ、おっさんくさいな。

 そう思いながら顔にお湯をすくってかける。

 

「ちょっとぐらい待っててくれてもいいではありませんか」

 

 温泉の入り口辺りからめぐみんにそんなことを言われる。

 

「こういうところでカズマは思いやりが足りないんですよ」

 めぐみんは呆れた表情を浮かべながら身体を洗いに歩いていく。

「すまん」

「まあいいですけど」

 そう言いながら俺に背を向けて椅子に座り身体を洗っていくめぐみん。

 

 久しぶりに見たなぁ……

 

 妙な感慨に浸りながらまじまじと見続けていると。

「……あの、いくらなんでも見過ぎではありませんか?」

 めぐみんが少しこちらをチラリと見ながら恥ずかしそうにそんなことを言う。

 

「いやその、久しぶりに全裸なんて見たから、見惚れてたというか……」

「……少しぐらい誤魔化したりしてください」

 顔を赤く染めながらそういうめぐみん。

 

「……善処する」

「………でもまあそう言ってもらえるのは嬉しかったりもするんですけど……」

「なんだ?」

「なんでもありません!」

 

 俺が言葉を返すと同時に、何かぼそぼそと呟いていためぐみんだが。

 聞き返すとそっぽ向いてしまった。

 

 一体なんなんだ……。

 一人何を言っていたのか思い出そうとしていると、

 

「入りますね」

「おう」

 めぐみんが身体を洗い終え温泉に入ってきた。

 

 ……すぐ隣に。

 

「……なぜ隣?」

「むしろ夫婦のくせに離れて入っているほうがどうかと思いますが」

 

 ……確かにそれもそうか。

 だが、めぐみんの柔肌が密着し気持ちがいい……ではなく。

 水に濡れしっとりとした白肌がやけに興奮させる……でも無く!

 

「……カズマ、気が早くはありませんか」

 めぐみんがチラリとこちらの下半身を見ながら言う。

「しょうがないだろ!!」

 こんな状況で落ち着いていられるほうが不思議だ。

 

 俺が明後日の方向を向きながら返すと。

 

「……仕方ありませんね。優しく、だったらいいですよ?」

 めぐみんが肩に顔を乗せ、体重を預けてきた。

 俺はそれに応じて手をめぐみんの胸に這わせる。

 

「少し張ってるんで、あまり強くしないでくださいね?」

「確かに弾力がある」

 気になって強めに揉むと。

「そういうのは言う事では……痛い、痛いですって!カズマ、人の話は聞いてください!」

「すまん、つい好奇心で」

 

 俺が軽い感じで謝ると、めぐみんはため息を吐きながら。

「まったく……どうしてこの男はダメという事をするのでしょうか」

「そういうものじゃないのか?」

「ありませんよ!そんなことなら今日はダメです!」

「すみません、もうしないのでお願いします」

 

 即座に謝りなおした。

 これでお預けは結構辛いからな。

 

「……どうしましょうか」

「本当にお願いします」

 

 めぐみんが白けた目で見てくるが、気にせず頼み込む。

「……はぁ、冗談ですよ。前戯はいいので好きにしてください」

 めぐみんがペタンと目の前に座りながらそう言った。

 

「え……いいのか?」

 

 あまりのあっけなさに思わず聞き返してしまう。

 めぐみんはすこし頬を赤くしながら。

 

「いいって言ってるではありませんか。それともしないほうが良かったですか?」

 

 そう言われて動かないわけにはいかない。

 指をめぐみんの秘所に沿わせる。

 

「ふっ……」

 

 湯の中でも分かるくらいの湿り気はあるみたいだった。

 そこで俺はめぐみんの身体の脇に手を入れ。

 

「え、ちょ、何するんですか!?……んう」

 慌てるめぐみんを持ち上げて、背を腹に密着させるようにした。

 

 いわゆる背面座位というやつだ。

 

「これなら湯の中であったまりながら、かつ、身体に負担がかからないだろ?」

「それはそうかもしれませんが……」

 

 めぐみんは少し不満そうにこちらを見てくる。

 

「……久しぶりですし向き合ってしたかったのですが……」

「そのお腹じゃ少し難しいだろ」

「……それもそうですが……んぅ」

 

 不満げに言うめぐみんを説得しながら、動き始める。

 浮力のお陰か身体を動かすのがそこまで辛くは無い。

 そのまま片方の手で胸を、もう片方を肉芯に伸ばす。

 

「きゃう!?これって…ふぅ……こうしたかったからでは、ありませんか?」

「さあ」

 めぐみんの質問を流し弄り続ける。

 徐々に嬌声も漏れ始め、頬や耳が紅くなっていくのが分かる。 

 

「う……はぁっ!……あんまり……激しいと!っ!」

 めぐみんも昂ぶってきたのか中の締め付けが強くなってきた。

 それに応じて俺も限界も近づき。

 

「ぐ、出る!」

「ふ……あっっ!!」

 

 そのままくったりとめぐみんは俺にもたれ……

 あれ?

 なんで向かい合ってるのだろう。

 

「久しぶりですし、まだいけますよね?」

「え、ちょっと休みたいんだけど」

「いいですよ?温泉から上がってください」

 

 めぐみんの言葉に少し冷や汗をかきながら湯から上がる。

 と同時に押し倒された。

 

「ちょ、めぐみん?!」

「出すの早すぎです。イキ損ねました」

 

 ああ、これがエロ漫画とかなら目がハートなんだろうけれど。

 

 爛々と目を紅く光らせながら馬乗りになられてるのは。

 

 すこし怖いです。

 

 

 

 それからしばらくめぐみんにいいようにしてやられました。

 

 

 

 また身体が汚れてしまったので、俺達は身体を洗いなおして再び温泉に浸かりなおしている。

 

「……めぐみん」

 

 俺の声にめぐみんは肩をびくりと震わせる。

 

「ごめんなさい、先程のことは忘れてください」

「忘れられるか!」

 

 俺はため息を吐きながら。

「だいたい激しくは駄目だったんじゃないのか?あれはセーフなのか?」

「び、微妙です」

 先ほどとは打って変わっておどおどしているめぐみん。

 

 とはいえ密着はしているのだが。

 

「……まあしてしまったことはしょうがない。それよりドリスに居るうちに名前でも決めようか」

 俺がそう提案すると、めぐみんは元気を取り戻した。

 

「ならば男の子なら、ぱっそーに、女の子なら、ほむほむ、とかどうでしょうか?」

 案の定紅魔族丸出しの名前を挙げるめぐみん。

 

 それも得意げに。

 

「いや、流石にそれはないわ」

 即座に否定するとめぐみんは半眼で睨みつけながら。

「私のネーミングセンスに文句があるなら聞こうじゃないか」

 

 ……この返しは想定内だ。

 

「めぐみんのセンスを否定してるわけじゃない。だけど現実問題、紅魔族風の名前をつけると、恐らくアクセルだと苦労するぞ。それは身をもって分かってるだろ?」

「紅魔族は紅魔族ですよ?その程度で屈しては駄目ですよ」

「俺としては、子供になるべく苦労して欲しくない。名前を弄られるなんてごめんだからな」

「それは確かにそうですが……」

 

 俺の話に同意する点あるからか、めぐみんからは最初の勢いはなくなってきている。

「ただでさえ、鬼畜王とか、ハーレム野郎とか言われている俺や、名前じゃなく、頭のおかしい奴とかよばれてるめぐみんの子供の扱いになるんだ。少しはアクセルの街に馴染むのをつけてやらないとぐれるかも知れないぞ」

「……何か釈然としませんが、否定はできないですね」

 

「だからといってめぐみんはあまりにありきたりな名前はつけたくはないわけだ」

「当然です。我が子ですよ?特別になってほしいではありませんか」

「それで、だ。俺がある程度リサーチしてきた名前と、俺が考えた名前の中からめぐみんがいい奴を選ぶ、というのはどうだ?一応ダクネスやアクアの意見も混ぜてある」

 

 俺の提案に、しばらく悩んでいるめぐみん。

「よさそうな名前をさらにもじるのもありなら、いいですよ」

「分かった。もじりすぎなら却下するぞ?」

 俺の返しにめぐみんが頷く。

 

「さて、そろそろ上がりましょうか」

 俺達は温泉から上がり部屋へと戻っていく。

 

 

 

 その後数日かなりの時間をかけて名前を決めようとしたが、中々意見が合わなかった。

 




大変お待たせいたしました。第十一話を投稿させていただきました、双碧という者です。季節をまたいで書き上げました内容でしたが、お楽しみいただけたでしょうか?お待ちいただいていた方々、並びにご覧いただいた方々に感謝です!もしよろしければ今後も木漏れ日のごとく優しく、温かく見守って頂けると幸いです。
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