ドリスの宿にて。
「だからそれだと紅魔族丸出しだって言ってるだろ!」
「そんな事言っても在り来たりの名前ばかりではありませんか!」
俺とめぐみんは言い争っていた。
何を?
当然子供の名前についてである。
どうも事前に用意した名前をどれも気に入ってはくれなかったようで。
かなり捩った名前ばかり提案してくる。
「だー!もういい!俺一人で考えるぞ!いいな!」
あまりに決まらないのでそんなことを言ってしまう。
めぐみんは肩を震わせ、目を紅くしながら。
「カズマだってあんまりネーミングセンスないではありませんか!」
「めぐみんほどじゃないけどな!」
「なにおう!一体何処がないというのですか!さあいってみなさい!」
売り言葉に買い言葉。
憤りに任せて言葉を吐き出す。
「ああいいだろうさ!何だ、けろみんとか、ゆみりんとか、どりのすけとか!一体何をどうもじったらそうなるんだよ!おかしいだろ!」
「かっこいいではありませんか!」
「何所がだ!」
「それこそカズマの方こそ!アリアとか、カーネロとか普通すぎるんですよ!」
「いいだろ、普通で!」
「普通すぎるんです!どれだけ居ると思ってるんですか、その名前!」
どんどんヒートアップしていく口論。
争点は名前から逸れ始め。
「だいたいいつもカズマはセクハラしすぎなんです!」
「べ、別にセクハラしてるわけじゃねーし!めぐみんこそ結構ねちっこいよな!」
「ねちっこいとはなんですか!カズマに比べたら――」
「あ、あの……」
「「うるさい!」です!!」
「ひいっ!ごめんなさいっ!!!」
部屋に入ってきたゆんゆんについ怒鳴りつけてしまった。
そのまま涙目でへたり込むゆんゆん。
「あ、すまん……」
「すみません……つい」
俺達は一緒に謝る。
「あの、その。カズマさん、一旦休憩したらどうでしょうか?めぐみんもその方がいいよ?」
ゆんゆんはおずおずと提案してきた。
確かにこのまま続けてもいい結果は望めそうにも無い。
考えが煮詰まる以前の方向にもなりかけていたわけだし。
「そうだな。めぐみんもそれでいいか?」
「ええ、散歩にでも行きますよ」
ゆっくりと立ち上がり、伸びをするめぐみん。
「爆裂魔法を撃つつもりなら遠くまで行かなきゃだめだからな」
「分かってますよ。ゆんゆん、付き合ってください」
「まあ、いいけど………って袖を引っ張るのは止めて!服が伸びちゃう、伸びちゃうから!」
めぐみんはゆんゆんを爆裂散歩に付き合わせ、もとい強引に引っ張っていき。
俺も街に散歩しに行こうと準備する。
……さて、どうしたものか。
名前を決めるにも、今までの候補では納得してはくれなさそうだ。
かといってめぐみんの決める名前はなぁ……。
どうにかして俺が提示した名前に納得してもらわなければ。
だとしてもそうポンポン名前を思いつけるわけでもないし……。
堂々巡りの思考を一旦止め、街を散策する。
違う街だからか、観光が盛んだからか、アクセルの街とは並んでいる店も異なる気がする。
前は観光メインの通りを歩いていたが、今は人通りが少ない方を進んでいる。
食料品や、衣服、花なんかも売っている。
と、ふとその先に宝石店があり、そこで展示されているケースの札に目が留まる。
「石言葉……?」
あまり興味も無かったので素通りしかけたが、ふと思いつき足を止める。
これならば説得できるかも知れない。
やってみるだけの価値はありそうだ。
ケースの言葉を覚えながら、帰途に着いた。
めぐみんが満足げに宿に帰ってきて。
「ふふ、今ならカズマを納得させる名前も思いつきそうです」
「奇遇だな。実は俺もめぐみんを納得させられそうな名前を思いついたんだ」
振り向きながら答える。
めぐみんは試すような表情で。
「私を納得させるんですよね?それ相応のレベルで無いと駄目ですよ?」
その脇で少しゆんゆんがうずうずしている。
「まあ、俺が言うのは、ゆんゆんがどうしたのか聞いた後でもいいか?」
俺がそう言いゆんゆんに視線を向けると、ゆんゆんはおどおどした様子で。
「えと……私も一つ名前思いついたので、いいかなって……」
「構いませんよ。早く言っちゃってください」
めぐみんがそれを促す。
「えーと、その……。ゆみゆみとか……どうですか?」
「却下だな」
即座に拒否すると、ゆんゆんは少し涙目になる。
「これは私もだめです。なんで地味にゆんゆんと似せてるんですか」
「ち、違うもん!めぐみんのお母さんに似せただけだし!」
顔を真っ赤にしながら否定するゆんゆんだが、あの母親に似られてもなぁ。
少し身内に似て欲しくない気がする。
ゆんゆん似ならまだ育て方で救いようもありそうだが。
そんなことを考えていると。
「さて、ではカズマの考えた名前を聞かせていただきましょうか」
めぐみんが催促をしてきた。
「分かったよ。じゃあ―――」
その名前が通ったことは言わずもがなだった。
「しかし、本当にカズマの名前に納得させられるとは思いませんでした」
「意味がかっこよかったよね!」
ゆんゆんとめぐみんがそんなことを言う。
「ま、発想の勝利ってやつ、かな」
「そういう反応は欲しくありませんが」
俺が感慨にふけっていると、冷めるようなこと言うめぐみん。
「む、なら俺を納得させるような名前を思いついてから言って欲しいね」
「こうやってすぐ調子に乗るんですから……それで何回痛い目見ました?」
ぐ、ド正論できやがった。
「まあ、いいですけど。それよりその、そろそろ行きませんか?」
もじもじしながらそんなことをいうめぐみんだが。
「えっと、何処に?」
「紅魔の里にですよ」
どういう風の吹き回しだろう。
「いや、予約は………そうか。爆裂魔法を撃ちやすくするためだな?この街だとそうもいかないから」
「違いますよ!確かにそう思うところもありますが!」
違うのか。
ならどうしてだろう。
首を捻って考えているとめぐみんが改めて。
「ええとですね。大体妊娠してから今四ヶ月ってところではありませんか」
「そうだな」
俺はめぐみんの言いたいことが分からずとりあえず頷いておく。
「五ヶ月目に入るとお腹が今以上に大きくなります」
「まあ、そうだな」
「当然走ったりとかは難しくなります」
なるほど。
紅魔の里までは危険だから走らざるおえなくなる場合も増える。
その時に荷物になりたくないと。
「あと、この時期なら多少無理しても流産はしにくいのですよ」
「めぐみん、だからってしちゃ駄目だからね!」
「必要ならするって言う意味ですよ」
「それでも!」
ふむ、確かにめぐみんの移動のことを考えるとその方がいいのか。
「分かった。それじゃあ後数日したら出ようか」
その後数日、俺達はまだ見ていない場所の観光に耽った。
閑話を投稿させて頂きました、双碧という者です。ゆっくりと書き上げた内容でしたが、お楽しみいただけたでしょうか?私の中では一応候補はあったりもするのですが、子供の具体的な名前は皆様の想像にお任せしようかと思います。ご覧いただいている皆様に感謝です!もしよろしければ今後も森になびくそよ風の如く、優しく見守って頂けると幸いです!