「準備は出来たか?」
「はい」
「大丈夫ですよ」
俺達は観光を満喫し、予定の日よりも半月ほど早く宿を出た。
荷物を纏めテレポートサービスセンターに向かい。
時期か時間の関係か人は大分少なかった。
俺は受付の人に近づき。
「こちらアルカンレティア行きのテレポートサービスです。……どうしましたか?」
「テレポートをお願いしたいのですが……」
受付の方がこちらを見ながら困ったように頭をかき。
「あー……。すいませんお客さん――」
「少しお尋ねしたいことがありまして」
恐らく人数の話だと思われるので遮って改めて聞く。
「なんですか?」
「一人妊婦なので、別に一人でテレポートってできませんか?料金は別途で払うので」
「そうでしたか……少々お待ちください」
受付の人はそういうと相談しに行くのか小走りに去っていく。
「申し訳ありません。妊婦の方は一番最後まで待ってもらって、という形になります」
戻ってきた受付の人は申し訳無さそうにそう告げる。
「あの……マナタイトもこちらで用意する、ならばしていただけますでしょうか?」
「それならば構いませんが……」
鞄の中から用意しておいたマナタイトを取り出し手渡す。
「ではお願いします」
料金を払い、めぐみんが先に魔方陣の上に移動して。
術者は珍しそうにマナタイトを握りながら魔法を詠唱し始め。
「あ、そうですカズマ」
めぐみんがこちらを振り向きながら。
「わかってますよね?」
「えっ!?何を?!」
意味深な事を言ってきた。
聞き返そうにも、同時にテレポートしてしまい。
………。
「……ゆんゆん。何か分かったりするか?」
「えと……私に聞かれても……」
だよなぁ……。
頭を捻りながらも。
「とりあえず俺達もテレポートしてしまうか」
料金を支払ってアルカンレティアにとんだ。
とんですぐに寄ってきたアクシズ教の信者達を振り切ったまではよかったのだが。
「何処に行ってしまったのでしょう、めぐみんは……」
そう、この短い時間の間で見失ってしまって。
いや、正確には着いた時には姿さえ見つけられず。
「一体何処に……」
「……あの、もしかしたらなんですが、アクシズ教徒の皆さんが教会に運んでいった、とかありえませんか?」
俺が周りを探していると、ゆんゆんがそんなことを……
「……どうしてそう思うんだ?」
「いえ、アクアさんならそういったこと言ってしまってたりして……その、ありうるのかな、と」
可能性は高いかもしれないな。
……どちらにしろ教会には向かうつもりだったわけだし。
そう思いアクシズ教の教会へ足を運ぶ。
「ようこそいらっしゃいました。アクア様がお待ちです」
何時ぞやのお姉さんが入り口で俺達を待っていたらしい。
そのまま誘導されて中に入っていくと。
何故か台座の上で横たわらされているめぐみんと。
その前で何やら呟いているアクアがいた。
その周囲には何名かアクシズ教の信者と思しき人が居る。
よくみるとめぐみんの顔が少し青ざめてるようだ。
「……おい、アクア。何してんだ」
つかつかと近くまで歩いてゆき声をかける。
と同時にめぐみんがホッとした様子になる。
「何って、女神のありがたーいお言葉を授けていたのよ?そんなことより遅かったわね、カズマ」
いつも通りのアクアの反応が返ってきたが。
「いや、答えになってないし。めぐみんは何でこうなってるんだ?」
「えっと……そう!立っていると辛いだろうから寝かせてあげようって!」
一瞬アクアの言葉がよどみ、目が逸れた。
「……正直に言え。いや、やっぱいいわ。めぐみん、何してきたんだアクアは?」
「お腹の中の子にアクシズ教の言葉を説こうとしていました。気持ちは分かりますが、どうかとは思いましたけど」
抵抗するわけにもいかずって感じだったわけだ。
アクアをジト目で見てやると。
「だっていままで私が勧誘しても入ってくれないし。だったら身内から固めてくしかないかなって……」
人騒がせな。
とりわけ被害も無かったのでため息を吐く程度で堪えて。
「だからってすることじゃないだろ。ったく……それでダクネスは?」
「今は多分街を散策してるわよ?それより何かあったの?私はもう半月ぐらいここで過ごしたいんだけど」
「いや、一通り観光もしたし、めぐみんの身体が落ち着いているうちに紅魔の里までいってしまおうかなと思ってな」
お腹が大きくなってくると動くのに支障が出るから、なるべく早めの方が良い。
「ふーん……まあ帰りに寄ってくれるなら考えなくもないわよ?」
「馬鹿言え。テレポートで直帰だ、直帰。わざわざ危険な目に遭ってまでここに寄りたくもねーよ」
そういうとアクアがあーだこーだ喚き始めたが、とりあえず無視。
「ダクネスが戻ってきたら出発、って感じになるか」
「そうですね」
ゆんゆんとめぐみん、二人とこれからの話を纏める。
アクアも信者の手前か、そこまで食い下がらなかったようだ。
「そういやアクア、セレナには会ったか?」
「ああ、あれ?下っ端としてこき使ってるわよ?物凄い恨めしそうに睨まれたりするけど」
……自業自得とはいえ、まあ、そうだよな。
「その度にゼスタって人がセクハラと、年月を増やすとかなんとかしてるわね」
これを聞いて同情しか覚えないというのも不思議な感じがするが。
「それより休憩室にでも居たらどうかしら?私はこれから信者達の懺悔を聞いて、導かなくちゃいけないのよ」
「分かった。そうするか」
めぐみんとゆんゆんもそれに同意し、休憩室に移る。
「ところでめぐみん、テレポート間際のあれってなんだったんだ?」
疑問だった一つを解消すべく言葉を投げかけてみる。
「いえ、単にアルカンレティアに着いたら何か起こりそうだったので、一応と思って」
「本当にそれだけか?」
「ええ」
俺の念押しにめぐみんの目は少し逸れてる……気がする。
言うつもりはないみたいだから、気付けと?
さっぱりわからん。
そんな風に悶々としながら、しばらく時間が経ち。
「あれ、どうしたんだ?まだ予定の日では無いはずだが」
身体中ボロボロになったダクネスが休憩室に入ってきた。
妙に生き生きしているが。
理由は……まあ、聞くまでもないけど。
「めぐみんの体調を鑑みてって所だ。本当は今すぐ出たいが……その前にお前の鎧修復しておいたほうがいいな」
「いや、表面が軽く擦れて汚れているだけだから気にしなくていい。自分で磨く」
「そうか」
となると、後はアクアを引っ張ってくれば出れる。
休憩室から出ようとし。
「お前っ……!」
角を曲がってすぐのところから凄い形相でこちらに走ってくるプリーストが。
そのままこちらの胸倉に掴みかかり。
「てめえのせいで……!てめえのせいで……!」
「どうやら元気そうだな」
「どうしたらそう見える!!」
そのプリースト、セレナは怒ったような、泣きそうな顔で恨みごとを呟き始める。
「あの後連れられ罰と言われながらセクハラされ、挙句貞操まで狙われるわ、つかいっぱしりで、あのおっさんと町を転々としなくちゃいけないわ、事あるたびにセクハラされるわ、女教徒からはいびられるわで散々だったんだよ!」
「それはまあ……なんというかご愁傷様」
容易にその状況が想像できてしまうのが怖いな。
「おまけに少し口の利き方が悪いだけでこの扱いを伸ばすとか、どうなってんだよ!どれもこれもお前のせいだ!お前がいなければ!」
セレナが俺の首を絞めようとして、堪えるように手を戻していく。
「……あのアクアって女神がいるからこいつを殺してもこの扱いの期間が延びるだけだ……落ち着けあたし……」
セレナは独り言を呟きながら息を整えている。
「まあ、大変だってことは分かった。で、そのアクアは今何処にいる?」
「ああ?忌々しい女神様なら裏の湖の方に……げっ!」
セレナが喋っている途中で何かに気付いたらしく、顔を青ざめさせている。
視線を追うと、休憩室の窓の外にアクシズ教最高責任者であるゼスタの姿が。
「今の話、全て聞かせていただきましたよ、セレナ」
ゼスタは窓から強引に部屋の中に入ってきた。
俺達が唖然として見守る中ゼスタは。
「さて、カズマ殿。アクア様は教団の数名と湖の方へ散策に向かわれました。そちらをお探しになられればと」
俺に対してにこやかにそう告げ。
「そしてセレナ。先ほどアクア様を、忌々しい女神様、と言いましたね?」
「え、いやその、それは。そう言葉のあやです、ゼスタ様!」
無表情で話し出すゼスタに、俺の時とは打って変わって丁寧な口調で話し始めるセレナ。
しかしその顔中から冷や汗が湧き出ている。
「いえ、確かに言いました。そうでしょう、ダクネス?」
先ほどまでのやり取りを静かに見守っていためぐみんが突如口を開いた。
「え!?いや、まあ……」
急に振られたダクネスはしどろもどろになりながらも頷き。
「だ、そうですが。何か言い訳はありますか?」
「………ありません……」
「では私に着いてきてください。皆様、思う存分ゆっくりしていってくださいね」
ゼスタはうなだれたセレナを連れて何処かへと去っていった。
その後アクアを連れ戻し、アルカンレティアから紅魔の里に向かう。
馬車を借りようかとも迷ったが止めた。
言う事を聞かないなんていうのはもうこりごりだ。
アクアに任せるのも不安が残るわけで。
とにかく歩きで街道を進んでいる。
色々やっているうちに時間がかかってしまっていて、もうすぐ日が暮れそうになっている。
「以前ならともかく、魔王城を攻略してきた私達なら余裕よね!」
「アクア、ほんっとお前って嫌なフラグ立つようなこと言うよな」
調子に乗ったように言うアクアに皮肉で返す。
「今は走って逃げるというのが出来ないからな。出会ったら必ず戦える……ふふふふ」
その隣では不敵に笑みを浮かべるダクネス。
本当に嫌な予感しかしない……。
いくらレベルが上がっていて、ゆんゆんもいるとはいえ、不安要素は沢山ある。
今のところ順調に進めてはいるけれども。
「……大丈夫ですよ、カズマ。何かあったらゆんゆんに放り投げれば大抵何とかなります」
「ちょっとめぐみん!?」
俺が険しい表情をしているのを気遣ってか、めぐみんがそんなことを言う。
この緊張感の欠片も無い感じで歩いて……
はあ……
敵感知を効かせながらそろそろ野宿するのに丁度良さそうな場所を探す。
幸いすぐに千里眼でこの先に幾つか良さそうな場所は見つけられている。
「日も暮れてきたし、そろそろ野宿の準備するぞ」
そうして、街道脇の林で野宿の準備をし始めた。
以前ほど緊急では無いので、早く着く、というよりは、なるべく安全に、が目的だ。
まだ歩けなくも無いが、体力を温存しながら進むべきと判断した。
今は焚き火の薪を用意したり、夕飯の準備をしている。
「しかし本当に便利だよな、上級魔法って」
ゆんゆんが光を屈折させる上級魔法を使うのを見てしみじみ呟く。
「ゆんゆん、絶対カズマに今使った奴だけは教えちゃ駄目よ」
アクアがこそこそとゆんゆんに言うが。
「聞こえてるぞ。……どういう領分だか聞いてやる」
「ヒキニートのことだから、それ覚えてもどうせ覗きに使うだけでしょ?」
確かにそんなことを思ってた時期もあったけども。
「……なんで今更そんなことしなくちゃいけないんだよ」
「今更って……前にそういうこと思ったことはあるのね、やっぱり!」
「はあ!?そ、そんなことねーし!」
アクアとそういった感じで言い合ってると。
「あんまりうるさくしないでください。一応音でもモンスターは寄ってくるんですから。……と、夕食できましたよ」
めぐみんが呆れたように忠告と、夕食を差し出してきた。
「お、さんきゅ」
「ところで、オークの縄張りを通る策は考えてあるんですか?夫が捕まるなんて嫌ですよ?」
「あー……まあ、一応な」
ゆんゆんの上級魔法と隠密の重ねで何とかなるだろうとは踏んでいる。
「それならいいんですけど……場合によってはカズマごと爆裂魔法で……」
「怖い事いうなよ。正直俺だって自信は無いんだからさ」
舐めてかかってどうにかなった覚えなど無いから、流石に油断はしない。
これ以上オークに追い回されたくも無いわけで。
「まあ、どうにかなりますよ」
柔らかく微笑みながら、めぐみんは手に持っていたスープを啜る。
「どうにかなるか……?それより本当にそろそろ昼間の意味を教えて欲しいんだけど」
「仕方ありませんね……何かあったら私は自分の身を優先するって事ですよ。大したことではありませんでしたし。意味的にはついでです」
なんだ、そんなことだったか。
「はあ……考えすぎて損した」
ため息を吐く俺をみてめぐみんがクスクスと笑う。
「お前達は本当に仲がいいよな」
ダクネスが羨ましそうに脇から茶々を入れてきた。
「そう見えるか?ゆんゆんとめぐみんほどじゃないだろ」
「ええっ?そう、かな……?」
「カズマ、一体何を言うのですか?ゆんゆんなんて比べ物にならないくらい私達は仲がいいでしょう?」
俺が照れ隠しで言った言葉を真に受けるゆんゆんと、何か思いついた顔で言うめぐみん。
「ええっと、まあ、そうだよね……」
「ええ、そうですよ。アクアやダクネスとだって、ゆんゆんは敵いません」
その言葉を聞いて少しうなだれるゆんゆん。
「そろそろゆんゆんをいじめるの、やめてやれよ…」
その後の旅は俺が想定していたよりも順調だった。
上級魔法と隠密、そして千里眼に敵感知。
稀にモンスターに出会うも、ダクネスとゆんゆんだけで事足りる状況。
こんなものだったかと拍子抜けしながら歩を進めている。
「何処かのニートと違ってゆんゆんは本当に役に立つわね!」
「その言葉そっくりそのままお前に返すぞ」
ゆんゆんは褒めちぎられ顔を真っ赤に染めながら歩いている。
現状、平野でありながらもこれだけ悠々とおしゃべりが出来ているのも、そういったわけで。
だからこそ、気付けなかったのだろう。
いつの間にか包囲されているという事に。
「おい、何か様子が変だぞ。囲まれてないか、これ」
「ここはオークの縄ば……そうですよ!匂いです!いくら魔法やスキルでもそこまでは消せません!」
めぐみんのその言葉を聞きゆんゆんは魔法を、俺はスキルを解除する。
しかし……って事はまた俺ピンチなの!?
及び腰になって後ろを振り返るも、退路は無さそうで。
そのオークの中から一匹こちらに歩いてくる。
「ボウヤ達、久しぶりね」
そのオークは見るからに変わった姿をしていた。
豚と犬と猫と蛇……他にも幾つかの特徴を持っていて、他のオークとは一線秀でているように見える。
だが、そんな奴に会った覚えなどない。
「どちら様ですか。もしよろしければ通していただけると助かるのですが」
「あら、駄目よ。あんたたちには恨みもあるしね」
あっさり交渉は決裂。
というか、本当にどういうことだ?
「……忘れたとは言わせないわ。紅魔の里でのあの仕打ち。アタシは魔王軍幹部シルビアよ!」
そういえば、そんなこともあったような……。
「いい?誰も殺しちゃ駄目よ?女の方は私が頂くから、残ったのは好きにしていいわ」
そのシルビアの言葉で、周囲のオークたちの目の色が変わった。
「カズマ、また逃げ回ってもらう形になりそうです」
ちらりと周りを見ながらめぐみんがそう呟く。
「カズマさん、すみません。シルビアを何とかしたら必ず助けに行きますので、それまでは!」
ゆんゆんも、流石にこれだけの数を一度に相手は出来ないと踏んだのか、そう告げてくる。
囮になりうるのは俺だけとも分かっている。
だが……
「物凄い嫌です」
「こういう時こそ男を決めたらどうだ!」
「むしろ男だから嫌なんだよ!」
「いくら嫌だといっても、向こうは聞いてくれそうもありませんよ?」
ぐっ……
とにかく逃げ回って時間を稼ぐしかないってか。
冗談じゃない。
舌なめずりしてたり、息を荒くしていたりする輩だっていうのに。
しかし、策が思いつくわけでもなく。
「いい加減諦めて、いつものように逃げ回ればいいのよ。ほら『スピードゲイン』!『パワード』!ほら、いってらっしゃい!」
アクアが支援魔法をかけて、追い払うような仕草をしている。
ああ、もうしょーがねえ!
「やばくなって、助けにこれなそうだったら俺だけテレポートで逃げるからな!」
捨て台詞みたいに言葉を吐き。
「『フラッシュ』!」
「「ぐっ!逃がさないわよ!」」
オーク達とシルビアのそんな声を聞きながら、一人包囲の外へと逃げ出す。
どうしてこうもツいてないんだ。
以前みたいに追い掛け回され、つい思う。
遠くでは火柱が上がったりしている。
恐らくゆんゆんの攻撃魔法だろう。
早くそれが終わってくれるように祈りながら。
「前は捕まえ損ねたもの!今度こそ逃がさないわっ!」
何回もオークを撒いた筈だが、それでも執拗に追いかけてくる。
追いつかれかけて、フラッシュをかましたり、足元にフリーズで足止めしたりしたというのに。
レベルが上がっているからか、すぐに追いつかれることは少ない。
むしろ先回りされることが多い。
急に前に出られるたびに、ぎゃああああ、と悲鳴を上げる羽目になっている。
「いい加減諦めろください!どんなに迫られても、応えるつもりなんてありませんから!」
「やっぱり生きがよくていいわ!絶対に捕まえてあげる!」
前の経験を生かされて、ただ走って逃げるだけでは撒ききれなくなってきた。
気付けば遠目に包囲されなおされているのに気付く。
どうする、どうする!
逃げようものにも、もうこっちの手は通じそうにもないし。
戦う、しかない。
まだこの距離なら弓で……!
構えて……
「狙撃!」
「効かないわ!」
俺が放った矢を、オークは素手で受け止めた。
って、何でもありかよ!?
どんだけ運動神経と動体視力いいんだよ!?
諦めず狙撃し続けるが、仕留めるには至らず。
包囲網がどんどん近くなって……。
いっせいに襲い掛かってき――
かけて、目の前のオークが真っ二つに切れた。
その様子を見て他のオーク達はとっさに引き下がる。
「大丈夫ですか!カズマさん!」
「ゆ、ゆんゆん……!」
見るとゆんゆんを筆頭に仲間達が駆けつけていた。
俺は半泣きになりながら、急いで仲間達の元へと走る。
「大丈夫でしたか、カズマ。酷い目に遭いましたね」
腰が抜けて立てない俺の頭を撫でるめぐみん。
どうしようか迷っている様子のオーク達に、ゆんゆんは少し恥ずかしそうにしながらも。
「我が名はゆんゆん。アークウィザードにして、上級属性魔法を操る者。紅魔族でも五指に入る魔法の使い手。やがては紅魔族の長となる者……! 紅魔の里の近くに集落を作るオーク達。貴方たちを仕切っていたシルビアは集落に逃げ帰ったわ。もしこれ以上こちらを狙うつもりなら容赦はしないわ」
そんなゆんゆんの言葉を聞いて、オーク達は悩んだ末、引いていく。
た、助かった……
その夜、オークの平原地帯を抜けた先の森のような場所で野営をすることにした。
俺自身ここまでトラウマになっているとは思わなかったが、未だにめぐみんの傍で震えている。
めぐみんは優しく手を握ったり、頭を撫でたりしてきてくれて、俺も少しずつ落ち着いてきてはいる。
他の三人は気を使ってか少しはなれた位置にいる。
「もう、ここを通らなくて済むように、テレポート先、紅魔の里に一つ登録しよう…」
「そうですね。何かあった時にもその方が便利ですし」
温かいスープを啜りながら呟くようにめぐみんと会話をする。
「しかし、シルビアが無事だったとは……思いもしなかった」
「何やら壮絶だったらしいですよ。取り込むことで上手くいったらしいですが」
本当に苦労したんだな……アイツも。
敵ながらよく耐えていたと感心せざる終えない。
「瀕死の時に魔王とその娘も討伐したと告げたら、一旦引くと、逃げ帰っていったのですよ」
まあ、絶望的になりもするだろう。
「……やっぱり、整った顔立ちしてるよな……」
「い、いきなりなんです!?別に褒めても何も出ませんよ!?」
しみじみ俺が呟くとめぐみんは慌てたようにしながらも、頬を赤く染める。
「そ、それより寝なくていいんですか?今日ぐらい私達が見張りをしますよ」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
そうしてめぐみんの肩に寄りかかり眠りについた。
そしてオークの縄張りの平原地帯を抜けた後は特に問題なく里まで歩くことが出来。
出発から四日後、無事に紅魔の里に到着したのだった。
第十二話を投稿させて頂きました、双碧という者です。急激に暑くなりバテながら書いた内容でしたが、お楽しみいただけたでしょうか?何といいますか、怒涛の如く内容を進めてしまった気がします。終わりも見えてきてしまいましたが、もしよろしければ、さざなみの如く静かに優しく見守って頂ければ幸いです。