今までの話と何の脈絡も無いアクア回です、というよりもアクア目線です。
冬。
それも結構な雪が降り、外出する気など起こらないレベルの天気。
カズマさんは冒険者ギルドからの呼び出しというか、そういった類のなんかで、この寒い中朝からずっとお出かけ中で。
私はめぐみんとダクネスとお酒を交わしながら他愛も無い話をしていた。
コタツに入ってぬくぬくしながら。
なんて至福なのかしら……。
「そういえば、カズマが転生してきた詳しい理由とか知らないんですよね」
「そういえばそうだな。めぐみんも聞いてないのか」
「ええ、何回か聞いてみようとしてはぐらかされまして」
めぐみんが私の方をチラチラ見ながらそんなことを言う。
「私なら一通り知ってるわよ?」
ちょっともったいぶって言ってみる。
そんな私の反応にめぐみんは少しむくれて。
と思ったら、ふと遠い目をして。
「久しぶりに懐古するのもいいですね。カズマに出会ったとき辺りからやりますか」
「それはいいな。ちょっと気になるところもあるしな」
ダクネスも嬉しそうに口を開く。
……って、これ無視されてない!?
「ちょっ、ちょっと!いいの?カズマの転生した理由とか原因とかどんな世界からとか」
慌てて私が口を開くと。
「分かってますよ。それじゃあアクアからお願いしますね」
「そうね……確かトラクターに轢かれそうになった恐怖で、失禁しながら気を失って、本来絶対に間違っちゃいけない系の薬を打たれて……だったかしら。まあとにかく情けない理由で死んじゃって私と出会ったのは確かだったわ」
何とか覚えている範囲で言ってみる。
というか今思い出してもメチャクチャ笑えるんですけど。
私の言葉を聞いてめぐみんやダクネスも呆れたように笑ってるし。
「よく分かりませんが、元々のカズマの世界でそれは普通なのですか?」
「そんなわけ無いじゃない。この世界で言うならそうね……ジャイアントトードをみて気絶して、その後間違って棺おけに入れられて埋葬されるぐらいありえないわ」
「まあ、何と言うか、カズマらしいといえばカズマらしいのかもしれないな」
「まーそれはさておき、転生した理由はこの世界の人口を増やすためだったわね。その時にとってもむかつくことに私を引きずり込んでくれちゃったわけ」
全く、今だから寛大な私は許してるけど……って、なんで二人は苦笑いしているのかしら。
「何と言うか、本当に出会った頃からアクアとカズマは変わってないんですね」
「そうだな」
「それで、「二週間ぐらい土木工事のバイトをしたうえで、ジャイアントトードを狩りにいったんだよな、アクア?」
突然のカズマの声に思わず身体をビクつかせてしまう。
恐る恐る振り向くと、とっても笑顔なカズマさんが、大量の雪を頭に乗せたままこっちを見てる。
というか、青筋が浮かんでるような……
「えっと、カズマさん、どこから……?」
「確かトラクター辺りから全部だよ?」
聞かれちゃいけない場所全部聞かれちゃってる!?
「えっと、その、そう!めぐみんとダクネスがどうしてもって」
「その話は前に、きつーくするなって何度もいっただろ?」
とりあえず思いっきり目を逸らしてみる。
「いひゃいいひゃいいひゃい!」
「まあそれはまだいいんだ」
頬がめちゃくちゃ痛いんですけど!
こんな仕打ちしておいて、まだいいって、どうしてくれようかしら!
「何するのよこのクソニート!」
「何するの、はこっちのセリフだこの駄女神が!器物破損や営業妨害で訴えられてんぞ!」
「え?どういうことかしら?」
思わず聞き返してみると般若のような顔したカズマさんが。
「心当たりが無いとはいわせないからな。まずは酒場だ。酔っ払って定期的に酒瓶を片っ端から水に換えたとか」
「わ、私じゃ…」
「一体お前以外に誰が酒を水に変えられるんだよ!」
頭に血が上っているわね……
「それにもう一つ、これは冒険者ギルドからだ。宗教勧誘をギルド入り口付近でやるのをやめろと」
「何よ、減るもんじゃないしいいじゃない」
「減ってんだよ!ギルド利用者がな!」
「何、カズマさん。キレ芸ですか?流行らないから止めた方がいいわよ」
「違うわ!……とりあえずだな。その尻拭いでちょっとしたクエストを受けて来たんだよ」
「クエストですか?」
めぐみんがカズマに訊ねると、こくりと頷き。
「何か知らないが、最近アクセルの街付近に洞窟が出来たらしくてな。それの調査らしいんだが……めぐみん安心しろ、今回お前は活躍間違いなしだ」
洞窟と聞きめぐみんがそっぽを向こうとして。
「……どういうことです?」
「いや、下見で今日ちょっと行ってきたんだが、大分広い、というか、ちょっと構造がおかしいんじゃないかというくらいの広さの洞窟でな。そして結構モンスターが密集しやすいみたいなんだ」
「それは実にそそられるな」
あれ、二人ともとっても行く気満々じゃないかしら。
「ねえ、私は行かなくてもいいかしら?」
「お前は強制参加だ」
「なによー!絶対でてやらないんだから!」
私はコタツに入り込み隠れる。
こんな寒い日に外になんて出たくないし。
「……アクア、お前が出ないつもりなら、とりあえずお前の秘蔵の酒を酒場に提供するつもりだが」
「!?それだけはだめー!」
ついていくことになりました。
「ね、ねえカズマさん、カズマさん。こことっても嫌な感じがするんですけど」
女神本来の力を手にした私でも、とってもヤバイというか……。
ダクネスも若干辛そうな表情……いえ、喜んでる表情を浮かべている。
「フラグを立てるようなことを言うんじゃねえ……この洞窟ちょっとおかしくてな、聖属性というか、そういった類に負担がかかるらしい」
なんでそんな重要なことを先に言わないのかしら。
そうとわかっていれば何が何でも来なかったのに。
一方で楽しそうなめぐみん。
「見た感じまだまだ先は長そうですね!」
内部はいたるところで水晶が明るく光っている感じ。
でも触ってみると冷たいから、多分氷なんだろうけど。
床に関しても氷で出来ていて、滑りそうで怖いし。
「あんまり先に行くなよ?……で、回復魔法もあまり効果が強く出にくいらしい。テレポートは有効だからいざという時は脱出だからあうおっ!?」
カズマさんがそう言いながら振り返った瞬間大きくこけた。
「プークスクス!あうおって何かしら!あー可笑しい!」
「てめー!怯えまくってた奴が何を言いやがる!」
「しっ!どうやらモンスターがこっちに近づいてきているみたいだぞ」
ダクネスの制止に一旦口を紡ぐ。
「スライム……?それもあんなに多く?」
めぐみんが不思議そうに呟く。
そういえばおかしいわね。
生息地としてスライムなんて強力なやつはここら辺には殆どいないはずだし……。
「スライムって確か物理が殆ど効かないんだよな?というか、話に聞いていたやつと違うというか、大分色がおかしいんだけど……」
カズマさんのいうとおり、異常なほど黒いスライムが大量に生息していた。
「とりあえず気付いていないみたいですし、爆裂魔法でぶっ飛ばしますか?」
「いや、それよりも「頼むぞめぐみん」
ダクネスが突っ込んでいこうとするのを遮って止めるカズマさん。
でも、黒いのってどこかで見たような気がするのよね……
「『エクスプロージョン』ッ!」
通路から放たれためぐみんの爆裂魔法が炸裂し、黒いスライムたちは散り散りに吹っ飛ばされた。
その破片はダクネスの足元まで広がっていた。
「ああ……せっかくのスライムが……」
「でも黒いスライムなんて聞いたことがありませんね」
「!?気をつけろ、まだ、生きてるみたいだ!」
カズマのその声と同時に、ダクネスの足元のスライムの破片がダクネスに襲い掛かる。
「んなっ!?」
スライムが一瞬でダクネスの鎧の中に入り込んでしまった。
「んあっ!カズマ、これは凄いぞ!んんう、このスライム、力が強いだけじゃなく、感触まで不思議な気分にさせてくるぞ!」
「んなこといってる場合か!」
慌て始めるカズマさん。
えーと、私も巻き込まれないように。
ぷにん。
え?
恐る恐る足元を見ると大きめの黒いスライムが……
「いやあああああああ!」
私は大声を上げながら全身をスライムに覆い尽くされた。
「はあはあはあはあ………」
ダンジョン入り口。
肩で息をするカズマさんの隣で私は横たわっている。
なんでって……
「ふあああああぁあ!ああああああ!」
ぎりぎり結界をはれたお陰でなんとも無く済んでるけど。
何というか大事なものを失った気分で…
「ああもううるせえ!とりあえずテレポートでスライム剥がせたんだからいいだろ!」
あの後スライムをカズマさんがテレポートで飛ばして、即座に私とめぐみんを抱えて脱出してきた。
ダクネスは名残惜しそうについてきてたけど……。
その脇ではめぐみんがとても死んだような目で俯いている。
「私の自慢の爆裂魔法が殆ど効いてないなんて……」
あまりにもショックだったようでへたり込んでしまっている。
「あんまり落ち込むなよ……とりあえずこのことを報告しに一旦戻って、進入禁止にしてもらうか」
私はカズマさんがそういうのに相槌を打つ。
こんな危なっかしいダンジョンなんてこりごりよ。
そもそもお金に困ってるわけでもないし。
裁判も最悪お金でなんとか……。
「なあ……少し気になったことがあるんだが……」
皆帰ろうと腰を上げたところでダクネスが呟く。
「なんだ?スライムを飼うとかなら他当たれよ?」
「違う!いや、そういうことじゃなくてだな……スライム自体の攻撃力というか、それはあんまり強くなかったような気がするのだ」
「……単純にダクネスが硬くなりすぎただけじゃないか?」
「失礼な!」
そんなやり取りをしながら、チラリと私を見てくるカズマ。
「なーに?早く帰りましょうよ?早くコタツで鍋を食べたいわ」
「……なあ、アクア、調子はどうだ?」
………?
「別になんとも無いわよ?」
私の言葉にカズマが悩みだす。
「どしたの?」
「いや、ダクネスの言う通りかもって思ってな。どうも爆裂魔法を受けて無事なレベルのモンスターにしてはあまりにも攻撃力が低いというか」
「まあ、そういうこともあるんじゃないの?それより早く帰らない?寒いんですけど」
私が少し退屈そうにしてそういうと、カズマも頭を掻いて話を切り上げようとして。
「でも、なんで私の爆裂魔法に耐えれるくせに、カズマのテレポートは効いたのでしょう」
あれ、そういえば変ね……。
どう考えてもめぐみんの爆裂魔法に耐えられるようなモンスターなんていないでしょうし、何よりへなちょこなカズマさんのテレポートが有効だなんて。
と、私も少し考え始めていると。
「……おい、アクア。心当たりは無いか?」
「なんで毎回私のせいみたいに聞くのよ?今回の件に関しては何も知らないわよ」
どうしてこのニートは毎回毎回私を疑うのかしら。
ちょっと本気でお仕置きしてやろうかしら。
「……ちょっと前にウィズの店の手伝いしてたよな?」
…………?
「そうね。それがどうしたの?」
「その時に店の使えないものの廃棄をお前がやったって、ウィズから聞いたのを思いだしてな」
ああ、そういえばそんなこともあったわね。
ウィズが困ってたから暇つぶし程度に付き合ってあげたやつ。
「んで、街中で廃棄できないような、強力な魔道具とかも含まれてて、解除とか含めてやってくれたと」
……ん?
「そんな面倒なことしてないわよ?街の中じゃ駄目だっていうから……あ」
えっと、とてもカズマさんがやばい表情してるんですけど。
じゃなくて、これ…えっとその。
「続けろ」
「はい……その、ちょっと街の守衛さんの目が届かないだろう所まで行って、雪の中に埋めてきました……」
「やっぱりお前が原因かよ!何で毎回こうも面倒ごとを持ち込むんだよ!」
頭を抱えて悶絶し始めるカズマ。
「どういうことです?」
めぐみんが不思議に思ったのかそう告げると。
「どうもこうも、このダンジョンもあのモンスターも魔道具が原因である可能性が極めて高いってことだよ!というか、モンスターに限ってはほぼ確定じゃねーか!絶対あの餌食って育っちゃったとか、そういうアレだろ!この駄女神!さっさと今知ってる内容を全部吐け!」
カズマにがくがくと大きく揺さぶられ。
抵抗してみても、この寒い冬の水の中に沈められたいかと脅され。
私は泣く泣く全部話した。
「……つまりもともとはバニル用のダンジョンを作るためにウィズがそろえたんだけど趣旨に合わなかったから破棄しなきゃいけなく、お前がわざわざ代わりにやると言いながら、面倒がって、ダンジョン生成のための道具とあの餌をそのまま埋めた、と。それでスライムだけの階層の浅い無駄に超巨大ダンジョンができた……そういうことか?」
私は無言で頷く。
「で、ウィズの話によればダンジョン自体は春になると消滅するみたいだから……あのスライムをどうやって消すかが問題になる」
ウィズの店に確認に行って戻ってきたカズマには何か考えがあるのかしら。
「一旦最奥まで潜ってみるぞ」
「じゃあ私は入り口で待ってますね。居ても何もできませんし」
今日は撃ち止めのめぐみんは近くの岩に荷物を置いて座る。
「ダクネスも一緒に待っててくれ」
「なんでだ!?私は多分役に立つぞ!?」
「正直見に行くだけだから人数要らないし。それに絶対スライムの集団の中に突っ込んでいくだろお前」
カズマの視線を受けたダクネスは明後日の方向を向きながら。
「………そんなことない」
「いいから残りますよ」
「ひゃぁっ!?めぐみん何をするんだ!」
めぐみんがダクネスの首筋に雪の塊を当てて、すくみあがった瞬間に手を引いて座らせる。
「それじゃあ私も……」
「お前は行くんだよ!」
流れでそのまま残ろうとしてむんずと腕を掴まれる。
「離しなさいよクソニート!人数要らないんでしょ!ほらさっさといって!」
「おい、何全部俺に押し付けようとしてんだ。元はといえばお前が撒いた種だろ。お前が来なくてどうすんだよ。ほら行くぞ」
「いやよ!だって絶対酷い目にあうでしょ、こういうの!」
「何なら今から酷い目にあわせてやろうか!いいから行くぞ!」
あの後しばらく私は抵抗したんだけど、ニートにこの寒い中全裸に剥いてやるなんていわれたら付いていくしかない。
正直本気でやりあっても良かったけど、私に悪い面があるのは確かだし。
でも、本当に一緒に行く必要なんてあったのかしら。
前に進んだところまで到着し、先の様子を窺っているカズマにはなしかける。
「ねえ、私本当にいる?」
「……一応ダンジョンなんだし、回復役は必要だろ。それに……」
カズマはそんなことを言いながら先を見て。
「スライムって潜伏の効果が無さそうだよな」
ニートがこんなことを言うってことは……
「まさか私を囮にして進むつもり!?」
「違うわ!ならダクネスについて来るように言ってるわ!支援魔法だよ!走って抜けるぞ」
私はその言葉に一安心し一通りの支援魔法をかける。
「それじゃあ1、2の3で行くからな?」
「1、2の3ね?不意に行かないでよ?」
「ああ分かってる」
カズマは私の方をチラッと見て……
「ヤバイ、もう行くぞ!」
いきなり駆け出して滑りながらも先に……って。
「不意に行かないでって言ったでしょ、このクソニート!」
慌てて私も駆け出す。
「バカ、後ろ見ろ!」
「なによ……!?」
私のすぐ後ろにはスライムの壁が迫っていた。
「ちょっ……!?何でこんなことになっているのよー!?」
「知るか!大概お前が余計な罠なんかを作動させたんだろ!」
カズマと言い争いながら大急ぎで広間や細い通路を駆け抜けていく。
後ろからは足音に感化されたのか黒いスライムの群れが。
少しずつ撒いているものの、ちょっと怖い。
急いで進んでいくとT字路がある。
「どっちに行く!?」
「私だったら迷わず右ね!」
「なら左だな!」
「なんでよー!」
「なんならバラバラに行くか!?俺は最悪テレポートで脱出できるけどな!」
「分かったわよ!左に曲がればいいんでしょ!」
私は仕方なく、そう仕方なく左に曲がった。
曲がった先には扉が。
「助かった!!」
私がそう思って駆け込もうとし。
「待てアクア!敵感知にビンビン来てる!」
扉に触れるか触れないかというところで腕を引っ張られる。
その瞬間。
バグンッ!
私の髪飾りを食らって咀嚼し始めた。
あまりに衝撃的だったので呆然としてしまう。
「ダンジョンもどきだったみたいだな」
「ちょっと!分かってるならもう少し早く止めなさいよ!私の大切な髪飾りが食われちゃったじゃない!」
「命が助かっただけでもいいと思え!……ってこんなことをしている場合じゃない」
私の相手もそれなりにして走り出すカズマ。
スライムに追われているから仕方ないけど。
私もぶつぶつ文句を言いながらその後を追う。
「最初から私の言った通りに右に曲がればよかったじゃない!」
「はいはい悪かったよ!と、こっちの扉は大丈夫そうだな」
そのまま扉を勢いよく開けて、急いで閉める。
「ふぃーー……ここまで走りっぱなしで来るとは思わなかったぞ」
カズマはそんなことを言いながら座り込む。
「ダンジョンが浅くて良かったというか……それより、あれどう思う?」
指差す先には少し濁った大きな水溜りのようなものが出来ている。
「見た感じ何かが溶けてる感じね」
「んなこととは見りゃ分かるわ。何で最奥に水溜りなんだ?」
「そんなこと私に聞かれても知らないわよ」
何となく近づいていくと、小さなスライムがその水を吸収しているのが見えた。
「ねえねえ、小さなスライムが水飲んでるわよ!これぐらい小さいと可愛いのにね」
そう言ってる間にスライムの色が黒く変色していく。
「あれ、さっきは透明だったのに黒くなってるわ」
「……アクア、その水を浄化しろ」
「冷たいからしたくないんですけど」
「お前を置いて脱出してもいいんだぞ?」
そう言いながらテレポートの詠唱を始めるカズマ。
「分かったわよ……」
しょうがないから私は水溜りに手を付いて浄化し始める。
なるべく早く終わらせたいから浄化魔法を使用して。
「手がかじかんじゃったんですけど」
大げさにカズマさんの目の前で見せ付ける。
これで多少は何かしてくれるでしょ。
「終わったか、それじゃテレポートで脱出するぞ」
そんな私を無視してテレポートを唱え始めるカズマ。
ちょっとしたことじゃ最近相手にされない気がするんですけど。
もうちょっと何かしなきゃ駄目なのかしら。
そんなことを考えながらダンジョンから脱出した。
後日。
カズマがギルドに報告を済ませて、危険だからという理由でダンジョンを進入禁止にしてもらい。
ついでというか余計なことながら事のあらましなんかを言ってしまい。
「何で私がこんなことをしなきゃならないのかしら」
「仕方ありませんよ。許してもらえるんだから良いではありませんか」
いくらか私の問題についてカズマやダクネスが交渉していたみたいで。
結果誰かの付き添いの元、ギルドで清掃を一ヶ月ぐらいすることになった。
今日はめぐみんで、昨日はカズマで、明日はダクネスの予定。
「ほら手が止まってますよ。まだまだやらなきゃいけない場所もあるんですから」
朝早く起きなきゃいけないし、寒いし、手は荒れそうだし疲れるし。
女神である私にやらせるようなことじゃないと思うの。
「ねえめぐみん。手伝ってくれは「駄目です」
私の言葉を遮ってため息を吐きながら言うめぐみん。
「私はあくまで監視役ですし、一応ギルドの職員の方々も見てますからね」
「……帰っちゃ駄目かしら」
「駄目ですよ」
ぶつぶつ文句を言いながらテーブル、床、壁などを綺麗に拭いていく。
丁度入り口付近を掃除しているとカズマとダクネスが入ってきた。
「アクアはちゃんとやってるかー?」
「ええ、ちゃんとやってますよ」
入ってきて早々にめぐみんに確認を取るカズマ。
「ちょっと!今ここで掃除してるじゃない!ニートはとうとう目も悪くなっちゃったのかしら!」
「昨日散々ズルしようとしてたお前を見てもなぁ……」
「カズマが色々邪魔してきたからそうなったんじゃない!水の女神は伊達じゃないんだからね!掃除の一つや二つお手の物よ!」
「おーそうかそうか。じゃあそのまま続けろよ」
なんか適当にあしらわれた気がするけど。
とりあえず私は黙々と掃除を続ける。
「それよりこんな寒い日に出かけてくるなんて珍しいではありませんか」
「いや、たまには外で食事もいいなと思ってな」
酒場の席に座りメニューを眺め始めるカズマ。
そーっと近づいてその目の前にちゃっかり座ろうとして。
「アクア、あと一区画だけなのですから終わらせましょう」
めぐみんに咎められ渋々端のほうに。
……何というかいい匂いも流れてきて集中できない。
カズマ達は楽しそうに談笑なんかしちゃってるし。
「もういいー?お腹減っちゃったんですけど!もう一緒に座って食べてもいいー?」
「そうですね。アクアの分も注文しておきましたから来てください」
私が掃除用具をしまいながら聞いた私にめぐみんがそう返す。
ちゃんと用意してくれている辺りカズマとは大違いね。
近づいていくとカズマの口から。
「アクアを選んだときのあの女神っぽさからの崩れようは本当に見ものでな」
「ああああああっ!何勝手にそんなこと話してるのよー!天罰食らわすわよ!」
……返り討ちにされました。
番外編を投稿させて頂きました、双碧というものです。急激に冷え込んできてそこそこ体調も崩しながら書いた内容でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか?要望にあった転生についての話を中心に書こうとした結果、沿っているような?……多分沿ってないような話になってしまいました。
感想にありましたほかのご要望についても同時並行で執筆中だったり、そうでもなかったり。
とにもかくにも、ご覧頂いた皆々様がお楽しみいただけたのであれば幸いです。