「おーすごいすごい!立ったぞ!」
俺はベビーベッドの脇に座り、台所にいるめぐみんにそのことを報告している。
「また立てたのですか!こんな早く立てるなんて天才かもしれませんね!」
まだ生まれてから6ヶ月。
普通ならはいはいとか、それぐらいのはず。
そんな風なやり取りを、アクアとダクネスは。
「ねえ、カズマはロリコンだからしかたないとして、めぐみんまでああなるとは予想外なんですけど」
「案外めぐみんも親馬鹿だったんだな……」
俺を残念な人を見るように言いながら、めぐみんについて話しており。
「聞こえてますよ!そんなこというならダクネスとアクアの昼食は抜きです!」
それを聞いてめぐみんが反撃に出る。
「ええー!?それは流石に酷くない!?ダクネスからも何とか言ってよ!」
「めぐみん、流石にそれは酷くないか……いや、これはカズマが欲しいなら身体を売ってこいさもなくば飯は絶対にやらんという夫婦の連係プレイに……ふふふ」
「戻ってきてー!ダクネス戻ってきてー!」
ダクネスが妄想に浸り始めて、アクアが必死にその頬を叩いているが、アレはご褒美になってないか?
というか……そうだ!
「緊急会議をするぞ!」
「なんなんですかいきなり。今私達は昼ごはんを失う危機だっていうのに」
俺の発言に、相変わらず口を挟んでくるアクアは不意打ちでフリーズを使い黙らせた。
「どうしたんです?そんな血相を変えて」
俺の声が聞こえていたのか、台所から料理を運びながら顔を出すめぐみん。
「教育についてだよ。俺達がこのまま育てたら、ろくな事にならない気がしてな」
俺の発言に思い当たる節でもあるのか、ああといってめぐみんも真剣な面持ちになる。
「というわけでどうするか、というのを会議していく」
俺は目の前のサラダを頬張りながらそう宣言する。
「まずは言動ですね。これはカズマ、ダクネス、アクアに当てはまります」
「いや、めぐみんもだろ?」
「何を言うのです?私の発言に間違いでもありますか?」
「たまに挑発されたりすると問題になる」
そういうと、ぐっと堪えるように歯を食いしばるめぐみん。
「俺の口調は確かに直した方がいいだろうが……俺が常に丁寧に話すのも気持ち悪くないか?」
そういうと、皆目を逸らしやがった。
何て正直なヤツらだ。
あとでプレゼントを用意してやらねば。
「え、っと悪いことを考えているカズマはまあ、まだ大丈夫だとして、一番はダクネスよね?」
「おい、喧嘩売ってんなら買うぞ?お前は調子乗ってるときの煽り発言は控えるべきだ」
俺がアクアにそう言ってやると。
「ほーん?ニート風情が私に説教垂れるとはいい度胸ね!いいわ―」
「その喋り方が駄目だという話ですよ、アクア」
俺に反論しようとしたアクアだが、めぐみんにそう言われ押し黙る。
ダクネスは真面目な顔して、
「信頼がないようだけれど、私はこれでも自重するタイプだ。屋敷にいた頃は隠れてこっそり自虐をやっていたぐらいだからな」
やってたのかよ……。
ドン引きしている俺達を差し置いて、ダクネスは話を進め始めた。
「そんな口調云々より、教育自体そのものの方が大事だろう。礼儀作法、敬語、マナーなんかは私に任せてはくれないか?そこら辺は一応貴族の端くれ。私が一番適任なはずだ」
ダクネスが申し出てきたが、元からそこら辺はお願いするつもりだった。
「おう、ついでにこの世界の教養もめぐみんと一緒にお願いする」
「わかりました。よろしくお願いしますね、ダクネス」
「ああ」
「それで、魔術関係はめぐみんで決まりだろ?料理とかは俺とめぐみんで教えるとして……」
俺達の話を聞きながら、アクアが今か今かと目を輝かせている。
………こいつに任せるようなことあるか……?
そんな俺の様子を察したのか、めぐみんが。
「アクアにはそうですね……うーんと……そう!あやしたり、必ず味方でいてあげてほしいのです!」
「どういうことかしら?」
「私達は何かあって、叱らなくちゃいけなくなることもあると思うのです。その時に必ず受け止めてくれる、心の広い女神にしかできない仕事ですよ」
めぐみんが額に冷や汗をかきながらそれらしいことを並べている。
苦心して出したんだな、めぐみんも。
「そ、そんな大事な役目を私がやっても大丈夫なのかしら?」
柄にもなくそう呟くアクア。
めぐみんが最後の一押しに。
「アクアじゃないとできませんよ」
「わかったわ!任せておきなさい!」
………この時点で不安要素しかないっていうのも不思議なもんだが。
俺がアクアの宣言に恐々していると。
「そういや、どうするんだ?カズマは何を教えるんだ?」
ダクネスがそんなことを聞いてくる。
「俺はそうだな……物の作り方とか、相手が強い場合の立ち回り方とかだな」
「カズマ、お前の教育が一番心配になってきたぞ……」
心外な。
めぐみんやアクアまで頷いているが、いったい何が心配だというのか。
「カズマが戦いの立ち回りを教えなんてしたら、姑息な手しか教えないだろう?それはなぁ……」
「まともにやって勝てないと分かっている相手に、真正面から挑む方が馬鹿だろ、普通」
「……大きな不安要素ですね。私達では戦術のなんたるかを教えるには不足ですし……」
正論を言っているつもりなのだが、何故こんなに呆れられているのか。
めぐみんに至っては最早違う思考をし始めている。
「おい、どういうことだ、めぐみん。俺じゃ不足なのか」
ちょっと切れ気味にぼやくと。
「私達は覚えている技や能力、経験してきた戦闘方法が特殊すぎて、参考にならないという事ですよ」
「ダクネスなら異様な硬さ、めぐみんなら爆裂魔法、私なら女神の力、カズマなら……姑息、かしら?」
「おい、やっぱり喧嘩売ってるよな?」
生意気なアクアに掴みかかろうとして、すんでのところでめぐみんが口を開く。
「まあ、概ねそんなところですね。となると、戦闘について教えるのは私達では厳しいかもしれません」
基本的なことならば、別ですが……、と呟くめぐみんの傍ら、アクアが俺の掴もうとした腕から逃れて笑い始める。
後で絶対泣かせてやる。
そう思いながら、めぐみんの方を向く。
「となると、あれか。なんかしら人伝で教えてもらう形がいいというんだな?」
「ええ。それに習うより慣れろなところがありますからね。いくらか実践を交えるというのも必要ですから」
そうして俺とめぐみんが人選を考えていると。
「そんな先のことよりも、そろそろ食べ終えて欲しいのだが……」
ダクネスがそわそわしながらそんなことを言ってくる。
「ああ、すまん」
「わかりました」
少しめぐみんと目を合わせ、ささっと残りを食べきってしまう。
食べ終わった皿からダクネスがそそくさと台所へと持って行く。
「なあ、めぐみん」
「わかっていますよ」
めぐみんは俺のジェスチャーにすぐに気付いた様子。
めぐみんは席を立ち上がってダクネスの後を追う。
「手伝いますよ」
「それは助かる」
俺もその後ろに隠密で近づいていき、会話を盗み聞きする。
皿を洗い始める二人。
背後から見ても少しダクネスがるんるんしている感じがしなくも無い。
「ダクネス」
「なんだ、めぐみん」
「今日これから何か予定などあったりするのですか?」
めぐみんの問いにぎょっとしたように皿を洗う動作が止まるダクネス。
「な、何でそう思うんだ?」
「いえ、普段に比べてテンションが高いなと思いまして」
「……めぐみんに隠しても仕方ないな。実は近々我慢大会なるものが開催されるらしくてな。一体どんな催しが行われるのか楽しみで仕方ないのだ」
なんだ、気のせいだったか。
いつもと根本的に何か違う様子のダクネスに違和感を感じていたのだけれど。
そう思って俺はめぐみんに合図を出そうとし。
「…………」
めぐみんがとても訝しげな表情を浮かべダクネスを見つめている。
「はぁ……まあ毎回ダクネスはそうですよね」
「それは一体どういう意味だ?!」
大きくため息を吐き出すめぐみんに、突っ込みを入れるダクネス。
ダクネスはその際に力が入ったのか皿が軽く欠け、おろおろしだした。
「何やってるんですか、そんなんだからまだ料理を教えられないのではありませんか」
チラリと脇目で俺を見ながらそんなことを言うめぐみん。
ジェスチャーは……。
とりあえず戻ってていい、か。
「まったく、確かに最近手伝ってくれて助かってはいますけど、もう少し加減とか覚えてください」
「今のは私が悪いのか?!」
ダクネスのそんな声を聞きながら俺は居間へと戻っていった。
「また結界を破った上に私の屋敷に入ってきやがったわね、性悪悪魔!今日こそ浄化しきって見せるわ!」
「フハハハハ!貴様のようなヘッポコ女神に浄化されるような我輩では無いわ!」
俺が居間でゆっくりしていると、玄関のほうからそんな声が響いてきた。
傍迷惑な……。
「せっかく寝かしつけた後なんだから、騒ぐんじゃねぇ!」
居間から出て攻防を繰り広げているアクアとバニルに一喝する。
「あ、カズマ、いいところにきたわね!一緒に協力して、ひああああ!?」
ドレインタッチをアクアにかまし少し静かにしてもらい。
「さてと、わざわざこっちに来たってことは何か用事か?」
「話が早くて助かる。少々込み入っててな、説明をしながら店まできてくれまいか?」
バニルがそういうってことはそれなりに面倒なことっぽいが……。
「このクソニート!いきなり何するのよ!そっちがその気なら――」
「あーうっせー!あんまりしつこいとまた下水の浄化させるぞ!」
掴みかかってきたアクアにそう怒鳴りつけ、スタスタと玄関をくぐり。
「とりあえず話を聞いて決めさせてくれ」
俺の言葉に嬉しそうに頷くバニル。
「――つまり、ウィズの魔法具が暴走したせいで店舗の中に入り込めないからそれを何とかして欲しい、と?」
「我輩としても独力で解決したかったのであるが、少々厄介な状態になっておってな。魔法具の近くまでは辿り着けても触れられぬのだ。ウィズも店外に被害を出さぬよう尽力しているが、相性が悪くてな」
苦虫を噛み潰したような表情をするバニル。
どうやら悪魔除けの魔法具が誤動作してしまい、それが起動している間はその内部に悪魔を入れさせないが、その周囲に聖なるモンスターを呼び出し続けるというものらしい。
当然そのモンスター達も使用者を攻撃してくる上、大抵の悪魔より強いのであまりにも意味が無いアイテムなのだが。
「でもなんで俺なんだ?ダクネスやめぐみんでも……」
正直滅茶苦茶死にそうで嫌なのだが。
「あやつらに任せでもしたら、店が消し飛んでしまうわ。今でさえ店内は壊滅必至というのに……貴様なら隠密を使用し戦わずして無事魔法具まで辿り着けるであろう?」
「まあ……そうだろうけども」
「何、我輩とて対価を払わぬわけでもなし。貴様とて協力しない場合、不利益を被るであろう?」
「そうだけれど」
理不尽さを感じながらもウィズの店まで辿り着く。
「あっ、バニルさん、カズマさん!待っていました!」
所々焦げたように煙が上がっているウィズが店の前で真っ白なよく分からないモンスターを相手に取っ組み合いをしている。
「『バニル式殺人光線』!……今はどういった状況になっているのだ」
光線が当たったモンスターは溶けて消えてしまった。
「とりあえず封じ込めは出来ました、けどお店が……」
ウィズは店の中を見つめながらしゅんとしている。
「まったくである。まさかあんなものを仕入れるなど……いい加減にそのポンコツさを何とかするのである」
「流石にそこまで言わなくても……で、俺が入って魔法具を回収すればいいんだな?」
バニルの言葉でいっそう落ち込んでしまったウィズを庇うように告げ、ドアに手をかけようとし。
「駄目です!」
「うおっ?!」
ウィズに手を引っ張られ後ろにつんのめる。
「封じ込めたんです……とりあえずそこのドアを開けない限り中からモンスターが出てくることは無いんですけど…魔法具をどうにかしてもモンスターは残るので…」
「……つまりあれか?その魔法具を外から破壊して残ったモンスターは一匹ずつ片付けなきゃいけないってことか?」
俺がウィズに確認するとコクコク頷いた。
「場所なら把握してある。ここを弓で射抜けぬか?何、貴様の安全は保障しよう」
仕方が無いので弓をつがえ、窓に向かって構える。
「そ―」
「待て、我輩が良いというまで放つでない。まだ放ったとしてもモンスターに当たるだけである」
面倒だなぁ……
そんなこんなで弓を一時間ほどつがえたまま雑談しながら待ち続け。
「バニルまだか?」
「大人しく待つがいい」
……本当に大丈夫なんだろうな?
「カズマさん、上級魔法はどうですか?」
「思ったよりも使いにくいというか……」
動作が必要だったり、詠唱が長かったり、回数もそんなに使えず、その上俺の能力だと火力もそこまででもなく使いどころに困る。
……屈折魔法を悪用しようとし、めぐみんにこってり絞られたのはまた別の話だけれど。
「ところで、本当に殺人光線は覚える気はないのか?」
「……からかってるなら、そろそろ撃たせてくれよ……」
「フハハハハハ、悪感情美味である!……今である!」
「え、は!?」
急に言われ思わず手先が狂い斜め上に打ち抜いてしまった。
「フハハハ!相変わらず期待を裏切らぬな!」
どうやらそれを含め見通していたらしい。
バニルは愉快そうに笑いながら店のドアを開け。
「御用改めである!」
そのあとはモンスター達はバニルとウィズによって流れるように制圧された。
一通り店の内装の修復を手伝い終え。
「ふむ、一段落、か。それで対価であるが……」
「ああ、まあそれは別にいいよ。物を取り扱ってもらってるしな」
バニルの後ろで焦げているウィズをちらちら見ながら言うと、バニルは考え込むような様子を示し。
「ふむ……では貴様の娘の教育に良さそうな者や施設を紹介するなどはどうであるか?」
そういやこいつ、思ったより人脈広いんだった。
「それはありがたいけど、いいのか?」
「構わぬ。減る物でもないからな。必要になったならば情報を提供してやろう」
俺はバニルに礼をいい、店を去る。
屋敷へと戻り扉を開けるとダクネスが玄関の前で仁王立ちしていた。
「カズマ、折り入って話がある」
ダクネスの鬼気迫る表情にやや気圧されながら返答する。
「な、なんだ、改まって。急ぎじゃないなら後に――」
「私と結婚してくれないか」
………は?
大声でそう叫んだダクネスに面食らう。
俺の頭に大量の疑問符が浮かんだのと同時に、居間からめぐみんがダクネスに突撃をかまし押し倒す。
「おい、どういうつもりか話を聞こうじゃないか」
何故かめぐみんの部屋に俺やアクア共々連れて行かれる。
その上で俺とダクネスが床に正座させられ、めぐみんとアクアが椅子に座っている。
どうして俺まで……などと言おうものなら爆裂魔法がすぐにでも飛んできそうなほどめぐみんがお怒りのようなので渋々座っている。
「で、どういうことですか?事と次第によってはただじゃ済みませんよ?」
俺とダクネスを一瞥しながらそう告げるめぐみん。
事と次第も何も、既に殺気立っているんですが。
「もちろん分かっていりゅ!」
こいつ……下手しなくとも口を割る気ねえだろ。
「なあ、ダクネスどういうつもりなんだ?まさかまた貴族と結婚を強制させられそうになってる、とかか?」
一応殆ど一緒に暮らしてはいるし、だます分にはそれでいいかもしれない、などと高をくくっていると。
「違うぞ。交際を前提に結婚してくれ」
…………はあ?
あまりのことに訳が分からず頭を抱える。
順序も違う上に色々とおかしい。
「アクア、ダクネスに回復魔法を頼む」
「任されたわ。『セイクリッド・ハイネスヒール』!」
俺の言葉に応じてアクアが回復魔法を放ち、ダクネスが白い光に包まれる。
願わくはこれで元に戻ってくれますように。
「何故、私に回復魔法を掛けたのだ?それほど可笑しなことは言ってないつもりだったのだが」
「おかしいわ!何で交際を前提に結婚なんだよ!それに俺はめぐみんと結婚してるし、離婚するつもりなんてさらさらねーぞ!なんなんだ、一体!」
俺が突っ込むを、ダクネスははっと表情を変え。
「ああ、説明がまだだったな。近々新しい法律がここの地域限定で施行されるんだ。それで最近忙しかった」
唐突に関係無さそうな話を始める。
「そうでしたね。最近は何かと仕事の手伝いと言って屋敷にいませんでしたし」
無感情に返答をするめぐみん。
こういうのは初めてでとても怖いんですが。
そうした俺の不安を他所にダクネスは話を進めていく。
「それでな、その法律というのが多夫多妻制を認める、というものだ」
……………。
今、何と?
アクアやめぐみんも驚きからか開いた口が塞がらなくなっている。
「いや、多夫多妻制といっても色々と制約はあるのだが」
多夫多妻制?
そもそもなんでそんなものが……?
「ちょっ、ちょっと待ってください。もしかしなくてもダクネスまさか……」
めぐみんがふるふると肩を震わせながら呟く。
「ああ、かなり大変だったが何とか通せた。いや、中々説得するのに骨が折れた」
こいつが張本人か!
これで大義名分……なんて言って手を出したりしたらめぐみんに殺されるだろうしな……。
俺が悶々として考えていると。
「そういうわけでカズマ、結婚してくれないか」
「あ、はい」
「ちょっ、カズマ!?何普通に許可してるんですか!?駄目です、駄目ですよ!というかちょっと残念そうな顔しないでください!」
俺が思わずダクネスの求婚に返事をすると、めぐみんが慌てたように突っ掛かる。
「というかこういうのは既婚者の場合大抵そちらの許可も必要ですよね」
「ああ、まあな……だから、めぐみん許可してくれないか?」
「駄目に決まっているではありませんか!というか一回諦めたでしょう!?何で今更こういうことするんですか!?」
「それはだな、私はどうやら今でもカズマが好きなようでな」
「知ってますよ!でもそれとこれとは話が別です!」
めぐみんの徹底抗戦の構えにダクネスは少し苦笑いしている。
……ん?こちらを一瞬すまなそうに見た気が。
「いや、それだけじゃないんだ。カズマはもしかしたらめぐみんだけでは満足できてないのでは無いか、と思ってな。ほら、先日銭湯に入ろうとしただろう?それ以外にも細々とそういうものはあったわけだし」
「いや、ほんとうにすんません」
めぐみんの眼圧に耐え切れずその場で土下座する。
「そういうことされるぐらいなら、私が相手をしてやればいいということになるだろう?一挙両得ではないか」
「そういう考え方も出来るのか……」
「何一人で納得してるんですか!動機が不純ですし、許可できないですよ!カズマも地味に納得しないでください!」
まあ、ですよねー。
「しかし――」
「しかしも何もありません!カズマは私の夫です!いくらダクネスとはいえそういうのは許しません!」
めぐみんとダクネスが押し問答を始めて、ようやく俺は顔を上げる。
と、視界の端でアクアが机の前に座って何か書いているように見える。
「そもそも――」
「ねえ、これで提出すればいいのかしら?」
めぐみんが俺に怒りの矛先を変えようとしたところで、アクアがそんなことを……
………。
おい、手に持ってるあの書類、もしかしなくても……
「それ、なんです?」
「婚姻届よ?見て分からない?でダクネス。これでいいのかしら」
いつの間にか書類の欄が全て埋められていて、俺とめぐみん、そしてアクアの名が連なっている。
「ちょっ、ふざけんな!間違っても誰がお前と結婚するか!」
勢いよく立ち上がってアクアから書類を奪い取ろうとする。
「ちょっと!折角人が結婚してやろうっていうのにその言い草は酷くない!?女神と結婚できるなんて普通ありえないわよ!さあ、分かったらさっさと謝って!」
「私の話聞いていました!?アクアでも駄目です!しかも勝手に私の字まで真似て!」
めぐみんも婚姻届を取ろうと加勢する。
「めぐみん、別にいいじゃない。減るものでもないし」
「減りますよ!いいからそれをさっさとこっちに渡してください!」
めぐみんが加勢したおかげでアクアはあまり動けなくなっている。
いまなら……
「『ティンダー』!」
「ああっ!?」
狙い確かに書類に火がつき燃え始める。
アクアはその灰を必死にかき集めて、呆気に取られたせいかダクネスはダクネスで呆然としている。
「……ふぅ。カズマ、親が複数名と関係を持っているなんて知ったら子供がどう思うか想像できませんか?」
ひと悶着あって少し落ち着いたのか、めぐみんは俺にそんなことを言ってくる。
「普通に嫌だな」
「でしょう?それに教育にもよくありません。普通に嫌われますよ?」
「ぐ……」
娘に物凄い嫌われる未来を想像して思わず目頭が熱くなる。
うん、自制しよう。
俺が心で強くそう誓ったところでめぐみんが耳元でぼそりと。
「それに魅力が足りないというなら私ももう少し頑張りますから、覚悟しておいてくださいね」
色々とやばかったです。