ダクネスが王都に発ってから一週間ぐらいたったある日、三人で昼食を食べていると、バンと思い切り玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ちょっと行ってくるぞ」
そう言って玄関に向かうとドレスを着たダクネスがこちらに向かって猛スピードで走ってくる!
「お帰り、どう――」
目の前で止まるかと思いきや傍をそのまま走り去り、二階への階段を駆け上がっていった。
恐らく自室に向かったのだろう。
唖然と二階を見つめていると、
「私はここにはいない!誰も見ていない!私はここに来ていないといって使者を追い返してくれ!」
そんな言葉が二階から聞こえてきた。
……そんなこと言われてもなぁ……
後ろを振り向くと、その発言を聞いて困った表情を浮かべる騎士二人と使者らしき男が、玄関の前で立ち止まっていた。
とりあえず使者の代表らしき男を連れ、めぐみんとアクアが居る居間に連れて行く。
二人は使者の男を見ると不審そうな顔をした。
「……王国の方ですよね?一体どうしたというのです?」
めぐみんがそう尋ねると男はため息を吐いた。
「今朝……ダスティネス家のご令嬢が喫緊で必要な物を取り忘れたと申されたので、私めらが取りに参りましょうと申し上げたのですが……」
男の顔は明らかに暗くどう説明したものかという様子だ。
「……私にしか分からないものだからテレポートでアクセルまで頼むと懇願され、こちらに来たのです。すると急にあのお姿のまま走り出され……」
今の状況になった、というわけか。
だがダクネスがそうやって逃げるということは、よっぽどのことがなければそんなことはしないだろう。
めぐみんも同じ考えに至ったのだろう、男に切り出す。
「ダクネス……いえ、ララティーナは滅多なことではそんなことはしませんよ。一体王城で何があったのですか?」
「我々からすると特に変わったことは……」
「ねーぇ、一応話してもらってもいいかしら?一体何を食べたりしたりしたのか気になるし。ダクネスは中々話してくれないから、あなたが話してくれると楽なのよ」
アクアは空気を読まない理由で男に聞く。
まあこの際聞きたいことは聞けそうだし理由は別によしとしよう。
「そ、そうですね。先日到着した時には会食と舞踏会を開き、各種高級料理と高級酒、王族お抱えの楽団によるオーケストラを演奏して、貴族の方々をもてなしておりました。その後も貴族同士の会談、お茶会、晩餐会などを行い、昨日に表彰が行われました。ダスティネス家はその際に新たな領地を与えられることになりました。その後各地の貴族から縁談の話が上がりまして……」
「それですよ!!その縁談のせいです!縁談の日程が今日だったりしたのではないですか?」
めぐみんがそう伝えると男はうろたえながらも頷いている。
「俺はダクネスに理由が本当にそれか確認してくるが、使者さんは諦めた方がいいと思うぞ?」
「そう言われましても、このまま帰ってしまえば、我々の首が飛んでしまいます!」
「そんなことより高級料理に何が出たのか言いなさいよ!」
背後でそんな悲痛な叫びと空気を読まないアクアの声が響いてきた。
「で、だ。使者の言っていたこのことって本当なのか?」
何回か扉を叩いたが鍵を開けてくれる様子はなく、仕方なく部屋の前でダクネスと会話をしていた。
「ああ。全く持ってその通りだ。私は何処の領主や貴族とも縁談に応じるつもりはない。だからさっさとそいつらを追い返してくれ」
さっきからずっと何か言う度に、追い払えだとか、テレポートで飛ばせだとか言うダクネス。
流石に使者達が可哀想になってきた。
「あのな、このままあいつらが帰ると首が飛ぶらしいぞ?断る前提で行けないのか?」
「ふざけるな!何日も何日も好みでもなんでもない奴らの相手などしていられるか!そんなんだったらまだ領主としての事務処理をしていたほうが格段に良い!」
……大分頭に血が上っているな、こいつ。
「はあ……なら、何かしら手紙でも文書でも書いて渡してやれよ?それで丸く収まるだろ?俺から説明しといてやるからさ。それ受け取ったら帰るようにってな」
そう提案すると、扉の向こうで呻る声が聞こえた。
「む……仕方あるまい……出来上がったら大声で呼ぶから取りに来てくれ」
「その時ぐらい出てこいよ?」
「不意打ちでテレポートされて連れ帰されたくはない」
この様子を見たら手を引きそうなものなんだがな……
使者を説得するべく仕方なく居間へ向かった。
居間に戻ると使者は何故かめぐみんとチェスとも将棋ともつかないボードゲームをしていた。
アクアはそのようすを面白そうにしながら見ている。
「くっ、なかなかやりますね!クリス以外に私とここまでこのゲームでやりあえる人がいるなんて思ってもいませんでしたよ!」
「いや、貴殿こそよくこのゲームの真髄を理解していらっしゃる!なかなかここまでの好敵手には恵まれなかったので嬉しい限りです!これならどうです、テレポート!」
物凄い白熱しているのだろう、かなり意気投合している。
……いや、普通自分の首が飛ぶかどうかの瀬戸際で遊ぶか?
「おい、ダクネスと話をつけてきたぞ」
「すまない、この試合が終わるまで待ってはいただけないか?いいところなので」
「くっ、これではエクスプロージョンが撃てないではありませんか!クルセイダーでそのオークを落とします!」
「いや、仕事中だろ。連れてきた騎士二人は暑い中外に立っているんだぞ。話ぐらい聞いたらどうだ」
その言葉に男はしぶしぶこちらを向いた。
「続きが気になるので手短にお願いできないだろうか」
……こいつ、もう首を飛ばされてもいいんじゃね?
「相手方への手紙を書くからそれを持ってさっさと失せろ、だってさ」
「そうか、ありがとう。……おおっと、そこをそう来ましたか。では……!」
ほぼ聞き流したようにすぐにゲームへ戻っていった。
俺は何か釈然としなかったので、とりあえず外の二人の騎士に先にこの使者の事を伝えておくことにした。
外の騎士は案の定、またですか、みたいな表情をし、流石に今回の件でクビでしょうな……と呟いていた。
その後ダクネスの大声が聞こえ、使者達に文書を渡し一段落ついた。
夕方になりようやくダクネスが部屋から出てきて、居間に顔を出した。
「「お帰りなさい、ダクネス」」
アクアとめぐみんはそろってダクネスにお帰りを言った。
ダクネスは行く前に比べて大分げっそりとしているように見える。
ちなみにダクネスが出てくるまで、延々とアクアからはダクネスの食べたものを食べたいと強請られ、却下し続け、めぐみんからはゲームの内容を聞かされ続けていた。
ダクネスはソファーに腰掛け、めぐみんが用意した紅茶を啜る。
「しばらく抜けて悪かった。明日何処かクエストでも受けて行こうか?」
「大丈夫ですよ。まだ魔王討伐の報酬は入っていませんし、連絡があるまではあまり遠出しないって話し合って決めてありましたから。それにまだ領主としてやることもあるのでしょう?そちらが一段落着いてからにしましょう」
めぐみんはダクネスにそう告げた。
アクアはちらりと外をみて何かに気付いたようで、ソファーで寝転がっている俺の袖を引く。
「手紙がまた届いているみたいよ?カズマ、取ってきて?」
「嫌だ。さっきお前らの話を聞いていて疲れたんだ、自分で取って来い」
「何よ、ヒキニート!私のありがたいお話を聞かせてもらえたっていうのにその態度はなんなのかしら。なんだったら天罰を下らせてもいいんだからね?」
何故か偉そうに威張るアクア。
「……思い出した。アクア、お前に帰ってきたらこってりお灸をすえてやるつもりだったよな?今すぐ謝って手紙も取ってくるなら、多少配慮してやらないこともないけど?」
「ほーん?一体ニート風情が何に灸をすえるつもりだったのかしら?カズマこそ今すぐ謝って手紙をとってきて、高級酒を私に献上すれば許してあげないこともないわよ?」
反省の色もなし……か、よし!
俺は懐から大量の香辛料を取り出した。
「今日の夕食係は俺だ。そしてこれらを使おうと思う。この意味が分かるか?」
「カ、カズマさん、カズマさんってとっても優しい人よね?何だかんだ言っても助けてくれるものね?」
「さてと、俺はさっさと料理でも作ってくるかな」
「わああああああーっ!ごめんなさい、謝るからそれだけは止めてえええええーっ!」
泣きついてきたアクア。
そのまま手紙を取ってこいと言うと大人しく取りに行った。
「いつもどおりですね……」
ほうと息を吐き、まったりとしながら紅茶を口に含むめぐみん。
「やはりこういうのが落ち着くな」
ダクネスも微笑みながらめぐみんと会話を始めた。
さて、さっさと作ってきますか。
食卓に料理を並べていく。
「なんですか、この料理は?」
「麻婆豆腐っていうものだ。豆腐とか片栗粉とか似たようなものがあるか結構探したが、使えそうなものが見つかったから試しに作ってみた」
「ほう、まーぼーどうふ、というのか。見かけ食べれそうな感じはしないが、食欲がそそられるな」
めぐみんとダクネスは珍しいようで自分たちの皿をしげしげと見つめている。
「ね、ねえ、私のだけ二つあるけれど、なんか片方はみんなのものの色と違くないかしら?とても赤いような気がするんだけど」
冷や汗をかきながらこちらを見るアクア。
「俺からの慈悲だ。その赤いほうをそのまま食べきったなら今回の件は水に流そう。捨てたり誤魔化したりしたら、そのときは次からお前の食卓は全て真っ赤に染まると思え」
「うう……分かったわよ、食べればいいんでしょ!その前に、はいダクネス。あなた宛よ」
アクアは涙目になりながらダクネスに手紙を渡した。
「とりあえず後で見よう。それよりも、これはどうやって食べるのだ?」
「スプーンを使ってすくって食べる」
言いながら見せるように食べた。
我ながら上出来だな。
続いてめぐみんとダクネスも口へと運ぶ。
「これは、辛味がいい感じに効いていてパクパク口に運びたくなる味ですね!」
「これも向こうの料理なのだな?なかなかいけるぞ」
大分好評のようだ。
手間はかかるがたまにはいいかもしれない。
「カズマさん……!カズマさん……!水ぐらいは飲んでもいいわよね!?」
一口赤いのを口に入れそんな事を言ってくる。
「水だけなら構わないぞ」
そういうとグラスに水をいれグビグビ飲み干していく。
「あ、食べ切れなかった場合もいろいろ考えてあるから、水でお腹を満たそうとはするなよ」
「!?」
アクアは泣きながら赤いものを次々と口の中にかきこんでいった。
「はゆまひゃん、はゆまひゃん、ふひのはははひはいんへふへほ?」
アクアは何とか激辛麻婆豆腐を食べ終えて、俺に何かを訴えてきた。
大概、口の中が痛いとかそんなとこだろう。
なのでアクアのことは放置し、夕食を食べ終わったダクネスに話を振る。
「で、手紙を読むんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんだが……物凄く嫌な予感がするのだ」
ダクネスは懐から手紙を取り出すと、ため息を吐いた。
「……やはり王国からのか。どうしても開けなければ駄目か?」
「駄目ですよ。どうせ見ようが見まいが向こうにとっては変わらないんですから」
ダクネスの手元からめぐみんがヒョイと手紙を抜き取る。
「あっ」
ダクネスがしまった、という表情を浮かべるが、めぐみんは気にせず封を切り、中身を読んでいる。
読み終えるとダクネスの肩に手を置きこう告げた。
「明日からもお見合いの為に国から使者が来るそうです。しばらくは何も出来ませんね?今のうちに仕事を任せに行った方が後々楽ですよ?」
ダクネスが物凄い涙目になったことは言うまでもないだろう。
翌日、ダクネスに頼まれウィズの店に売っていた人避けの首飾りを買ってきてほしいと言われた。
そのアイテムは人を寄せ付けない効果があるが、当然その首飾り自体が人を追い払うので、身に着けようにも買うことはおろか見ることさえも出来ないという欠陥商品である。
リッチーであるウィズ、悪魔のバニル、女神のアクアには効果がないらしく、普通に触れられたらしいが、大量の在庫を入れたためかしばらくアクア以外誰も来なくなったことがあったらしい。
ダクネスはアクアに強引に連れて行かれた為、見たことがあったようだ。
最も、バニルが返品しているだろうからもう残っていないだろう。
めぐみんはゆんゆんと何かすることがあるらしく来れないということだったので、アクアと共に来た。
ダクネスには気休めに何か別な物を渡してやろう。
そう思いながらウィズの店の扉を開ける。
珍しくバニルではなくウィズが商品を運んでいた。
店主なのだから珍しく、って言うのは変なのだろうが。
「あ、いらっしゃいませ!カズマさん、アクア様!ちょうど今良い物を仕入れたんですよ!」
ウィズの手にはアミュレットのようなものが握られていた。
「ふーん?どんなものなの?あ、お茶とお菓子頂戴ね」
「はいっ!」
ウィズは裏からお茶とお菓子を持ってきてアクアに渡す。
「それでですね、このアイテムはどんな相手からかけられる、どんな呪いでも全て防いでくれるという優れものなんです!悪魔やアンデットに対して有利になるんですよ!」
興奮気味に話すウィズ。
これだけなら悪くはないのだろうが……
「デメリットは?」
「あ、はい。ただしこれを身に着けると身に着けた人に死の宣告が掛かりまして、外して呪いを解かないと一週間後に死んでしまうんです」
カウンターの付近で商品整理をしているウィズ。
……死の宣告より重い呪いも防げるなら、効果的には悪くないのか?
「なあ、アクア。死の宣告を解除できるぐらいだとどれくらい呪いが解除できないんだ?」
「死の宣告が解けるぐらいなら大抵の呪いなんて解除できるわよ」
全く使えないな……
「そういえば今日は珍しくあの仮面悪魔はいないのね?私に恐れでもなして逃げていったのかしら?」
アクアがそんな事を言ったと同時に店の扉が開く。
「ただいま戻ったのである!ポンコツ店主!また何か……」
店の奥に並ぶ箱を見てバニルが顔を手で押さえる。
「あっ!バニルさ―」
「『バニル式殺人光線』!」
ウィズに問答無用で殺人光線を放ったバニル。
驚いたからか何か、ウィズはそのままカウンターに突っ伏し焦げた。
「いきなりは酷いだろ」
そう呟くと
「やや、二回目をしたいがどう誘っていいか切り出せず一人悶々としている小僧と構って女神ではないか!いらっしゃいませ!」
その発言を受けアクアが立ち上がった。
「構って女神ですって?たかだかリッチーと互角程度の悪魔がいい度胸じゃないの?女神としての能力を取り戻した私に勝てるとでも思ってるの?」
「フハハハハハ!魔王も一人でろくに倒せないビビリの女神に負けるわけあるまいて!」
「「……」」
「ちょっとまて、そんなことしに来たわけじゃないだろ」
緊迫した空気が流れ始めたので慌てて声だけかける。
「はあ、そうだったわね……今回はカズマに免じて許してあげるから感謝なさい?」
「フハハハハハ!そうやって毎回頼ってばかりのろくでなし女神なんぞに誰が感謝などするか!ブワハハハハハ!」
「バニルもやめろよ、せっかく在庫があるかどうか聞きに来たっていうのに」
アクアは先程のセリフを聞き、すぐにでも襲い掛かりそうだ。
「それは失礼した!ではお客様、何の在庫をお買い求めか?」
「人避けの首飾りってまだ取り扱いあるか?」
「一つだけ持ち合わせておるぞ。だが使わないほうがよかろう。大した額ではないしな。そんなものよりもこちらの我輩が仕入れた魔道具をオススメしてやろう」
そう言い取り出してきたのはブレスレットのようなものだった。
「これを身に着けると周りから認知されにくくなるという代物である。ちょうど今見合いを迫られやつれた娘が飛びつくこと請け合いである!」
「欠点は?」
「完全には見つからないわけでもなく、スキルを使用すればまずばれる。あとは使用期限があり、魔力を充填する必要があることぐらいか。大した量ではないので簡単に使用できるのだ。お一つどうだ?」
悪くはない。
それどころか代用品としてはだいぶいいだろう。
「いくらだ?」
「三万飛んで五百二十エリス」
財布を取り出し中身を出す。
……現状の俺の自由に出来る全額なんだがな。
「毎度ありー!」
「さて、カズマの用事も終わった事だし、あんたと決着を……!」
「いいから行くぞ?」
戦おうとするアクアの手を引いて店を出た。
帰り道ちらちらとこちらを見てきたアクアに、「何かやらかしたのか?言うだけ言ってみろ」と声をかけたら怒り出して、そのまま酒場に向かっていった。
……なんだったのだろう?
疑問に思いながらも屋敷につき、さっそくダクネスにブレスレットを渡した。
「人避けの首飾りではないのか?」
不思議そうに見るダクネスに効果を説明する、
「というわけで、使いたいなら魔力を充填する必要があるから、使いたいなら俺やアクア、めぐみんに頼めばいいというわけだ」
「確かに認知されにくくなれば国からの使者は気にせず街に出ることは出来るが……」
「それに首飾りの方をどう使いたいかは知らないが、入り口付近に置かれたりすると俺たちも外に出れなくなるって分かっていたんだよな?」
ふいっとそっぽを向くダクネス。
つまりそこまでは考えていなかったと。
バニルを押し切り買ってこなくて良かった。
「そういえば今日はもう来たのか?」
「ああ、どこぞの領主の部下と一緒にな。前のように断りの文書を書いて二階から投げつけてやった」
お嬢様のすることではないだろうな……
呆れながらも尋ねてみる。
「そういう対応していて大丈夫なのか?家の名誉とか……」
「好みでもない奴らの為に不自由するくらいなら、家の名誉などどうでもいい。それに魔王殺しの名誉を既にいたただいている。多少のことでは失われない」
こ、こいつ、前にダクネスの家で表彰受けた時は家のこと気にしていたというのに、自分のことが絡むとあっさりどうでもいいといいやがって。
親父さんが泣くぞ?
「では着けてどれだけ効果があるか試しに行ってくる。魔力を―」
「まだ魔力は入っているから着けていけば確認はできる。行ってこい」
ダクネスは頷きブレスレットを装着し外へと出かけていった。
誰も屋敷に居らず暇だったので居間でマスクや劣化マイトを作っていると、誰かが帰ってきたようで扉が開く音がした。
「ただいま帰りました。おや、カズマ一人ですか?ダクネスやアクアは?」
「ダクネスは街へ出てるよ。渡したブレスレットの効果確認っていう体で。アクアはなんか知らんが怒って酒場に行った」
「そうですか。ダクネスにはいい息抜きかもしれませんね」
そう言いながら近くのソファーに座りめぐみんはこちらを見てくる。
「そういえばまたゆんゆんと何かしているみたいだけど、一体何処で何してきてるんだ?」
しばらく疑問を抱いていた事をぶつけてみた。
「前に秘密と言ったではありませんか?」
めぐみんはクスクスと笑いながら教えてはくれなかった。
「まあ、いいけど。それでだなその、もう一つ話があってだな……」
昼間バニルに呼ばれた言い方が頭に過ぎりまごまごしだす俺。
そんな様子を受けてかめぐみんが優しく、それでいて何かを期待したような目で見つめてくる。
うわっ、言わざるをえなくなった!というか勘良すぎだろ!
「きょ、今日の夜、め、めぐみんの部屋に行っても、いいか?」
「どうぞ、来てください。では料理してしまいましょうか」
立ち上がって台所に向かおうとするめぐみん。
「ちょっと待ってくれ、暇だから手伝わせてくれ」
ちょうど居間に持ってきていた商品を作る素材が切れたので片付けてそう告げる。
めぐみんは驚いたようにこちらを見、そして微笑んだ。
「分かりました。今日の献立は鍋にしようと思いますので、野菜切っていただけますか?」
そうして二人で料理を始めた。
夜、風呂から上がりめぐみんの部屋に向かおうとしたのだが……
妙に誰かに見られ、つけられている気がする。
振り返ってみるが誰も居らず、敵感知も反応しない。
……なんなんだ?気のせいか?
しかし何かが引っかかるので走って角を曲がりその場で潜伏スキルを使用し様子を見る。
……するとダクネスが角から顔をだした。
「あ、あれ?確かこっちのほうに……」
「何してんだよ、お前は」
俺は通り過ぎたダクネスに声をかけた。
ダクネスはビクリとし恐る恐るこちらを見てくる。
「い、いや、このブレスレットの性能を確かめていただけだ!気にするな!」
顔を真っ赤にしながら言い訳してくるダクネス。
「しかし、どうして分かったのだ?しっかりと効果はあったように思えたのに」
「何となくだ。視線を感じたような気がしてな」
「そうだったのか。それよりカズマはこんなところで何をしているんだ?」
ダクネスは視線をこちらに合わせないままそう聞いてきた。
「いや、暇だったからバルコニーにでも行こうかなと思って。ダクネスもあんまり遅くまで起きてるなよ?」
ダクネスにそう言いそそくさと立ち去り、何とか見つからずにめぐみんの部屋の前に到着する。
「遅くなった、起きてるか?」
扉をノックしながら声をかけると、開いた扉の隙間からめぐみんが少しだけ顔を出した。
めぐみんは今回は普段着ている紅魔族ローブ姿だった。
「遅いですよ?早く入ってください」
めぐみんの部屋に入りベッドに腰掛ける。
すると隣に座りぴとっとくっついてくるめぐみん。
「どうして遅くなったんですか?」
「いや、ダクネスに途中でつけられて、振り切るのに時間がかかってしまったんだよ」
「ダクネスはやはり薄々何か気付いているのかもしれませんね」
めぐみんは微笑みながら嬉しそうに話す。
「で、どうしたんです?」
何のために来たのかを聞いているのだろう。
こちらのしたいことなど分かっているだろうに。
「めぐみんと寝ようと思って……駄目か?」
「駄目ならこんな時間に部屋に入れたりしませんよ?」
言いながらベッドの中に入り横になるめぐみん。
「ほら、カズマも入ってくださいよ」
横になった状態でぽんぽんと隣を叩いて入ってくるように言っている。
誘われるまま布団に入るとめぐみんがぎゅっと抱きついてきた。
めぐみんはそのまま耳元で、頬を少し赤く染めながら囁いてくる。
「二回目はもうしばらく後になるかと思ってました。今夜もいっぱいするんですか?」
だからそんな女性経験なんて殆ど無い俺にそんな言葉かけられても、この後どうすればいいかなんて分からないんですよ、めぐみんさん!
その発言だけで下半身が大変なことになってしまう。
内心そう思いながら、とりあえず抱きしめ返してみる。
「前よりは少しは積極的になりましたね」
めぐみんは俺の後頭部を愛おしそうに撫でている。
俺もめぐみんの背中を撫でて、しばらくそうやって抱き合っていた。
なんだろう、確かにドキドキしてヤバイのだけど、落ち着くと感じる自分がいる。
前回はそんな事を感じる余裕も無かったが ああ、好きなんだな……なんて、柄でもなく思える。
少し抱きつきを緩めて右手をめぐみんの頬に当ててキスをする。
うわ、唇柔らかっ!
緊張のせいで前回は触り心地を感じている暇もなかった。
口を離すとめぐみんが頬においてある俺の右手に左手を重ね合わせ、心地よさそうに目を細めていた。
その様子を見てめぐみんの上に覆いかぶさった。
こんな様子見せられて我慢できるわけが無い。
「ふふ、初めてではありませんが優しくしてくださいね?」
上目遣いでもじもじしながらそう言ってくるめぐみん。
「分かってるよ。嫌なら言ってくれ―」
「話だけなら聞く、ですか?」
可笑しそうに微笑みながら俺の言葉を先に言ってくる。
「……いや、優しくするから」
めぐみんの言葉を受け冗談ではなく本心を告げる。
頬を赤く染めるめぐみん。
……まあ俺も多分赤くなってるだろうな。
手をめぐみんの身体のラインに沿わせて動かし感触を楽しむ。
二回目ということもあり多少余裕がある。
めぐみんは俺の手が動くたびに少しくすぐったそうにしている。
もう一度キスをしながら胸の辺りに手をそえる。
「しっかり柔らかいんだよな……」
「私の胸のサイズに文句があるなら聞こうじゃないか」
ついポロリとこぼした言葉に噛み付いてくるめぐみん。
だが目は怒っているようには見えず、どちらかというと拗ねている感じ……だと思う。
「ごめん、別に文句があるわけじゃない。ただ、なんというか想像以上の柔らかさなものだから……」
「カズマらしい言い訳ですね」
言葉とは裏腹に嬉しそうに微笑んでくるめぐみん。
そのままローブに手をかけて脱がせようとする。
「あっ……、全く突然ですね。脱ぎますから少し待っててください」
めぐみんはもぞもぞとローブを脱いで下着姿になった。
「白なのか」
「そういったことは思っても口には出さないものですよ?さっきまでの雰囲気が台無しじゃありませんか」
不満そうにしながら俺の頭を自分の胸に導くように抱きしめてくる。
俺は少しめぐみんのブラをずらして胸の頂を舐め始めた。
「んっ……全くカズマらしいといいますか……」
そんな俺の頭を撫でながらブラを外すめぐみん。
その口からはたまに普段より高い声が漏れ、少しずつトロンとした顔になっていく。
ヤバイ、前回とは比べ物にならないぐらいめぐみんがエロく感じる!
「ふぅっ……ふふ、必死に吸っちゃって……んっ……可愛いですね……」
たまにぎゅっと俺の頭を強く抱きしめながらそう言ってくる。
下のほうを触るとパンツ越しにだが湿っているのが分かる。
胸から口を離し、
「下、脱がすぞ?」
と尋ねる。
めぐみんがこくりと頷いたので、パンツを脱がし、そこに指を沿わせる。
……大分濡れている。
そのまま指を滑らせ前を擦る。
「んんんうっ……!」
はたから見ても分かるぐらいに触れた瞬間にめぐみんは身体を震わせた。
そのまま中指を中に滑るように入れ刺激する。
「はあっ……!くぅ……!」
少し弄るだけでびくびくとしているめぐみん。
切なそうな表情を浮かべながら抱きついてきた。
限界が近いようで先程から中が小刻みに収縮している。
「か、カズマ、そろそろっ……!」
もう少しでイクのだろう。
そこで少し早く指を動かそうとしたところで、
扉がノックされた。
「「……っ!?」」
こんな間が悪く誰だ!
「めぐみん、起きているだろうか?少し話したいことがあってな」
扉の向こうからはダクネスの声が聞こえてきた。
俺はめぐみんからさっと離れどうしようかと慌てる。
それに対しめぐみんはもじもじしながらも小声で
「カズマはベッドの下で潜伏スキルを使ってください。私はこのままローブ着て出てきますので」
それに従い俺はベッドの下に移動し潜伏スキルを使用する。
「起きていますよ。ちょっと待ってくださいね」
めぐみんの声が聞こえた後にガチャと扉が開く音がした。
「すまない、夜遅くに」
「どうしたんですか話とは」
「実はカズマに関する話なのだが……めぐみん、顔と瞳が普段より紅いが大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。少し暑かっただけですから」
位置の関係でおなかより下しか見えないが、めぐみんの足は少し震えている。
だ、大丈夫だろうか。
ダクネスの話自体は少し聞きたい気もするが今はさっさと帰ってくれないかな。
お預けみたいで結構辛いんだよ。
「なあ、あいつは最近比較的まともな時間に生活しているが、何かあったのか?夜遊びに行くことも無ければ、遅くまで寝ていることも無いようだが」
なんで俺がまともな生活していると心配なんだよ。
何でそれだけで勘ぐられなきゃいけないんだよ。
「と、特に何もありませんでしたよ?」
少しうろたえた様に返すめぐみん。
確かに最近生活リズムがこう規則的なのはめぐみんと恋人の関係になったからというのも大きいとは思うけれど。
「あとそのヘアピンはどうしたんだ?前までは普段ヘアピンなんてつけていなかっただろう?」
「可愛かったのでちょっと買ってみたんですよ」
ここからでは表情がよくみえないがダクネスは納得している様子はなさそうだ。
というかよく見てるな。
「さっきカズマと出会ったんだが、何かを隠すように何処かへ行かれてしまった。確かに私が気になり後をつけたりしてたのもあると思うんだが……屋敷を探し回っても何処にもいないようなんだ。玄関の扉が開いた音は聞こえなかったし……」
「た、多分すれ違いになっているだけですよ」
「あの男がこんな遅くまで屋敷の中でやることなんて特にないだろうけども……」
こいつは何でこういう時に限って勘がいいんだよ!?
「カズマの部屋にもいないし、もしかしたらこっちに来ているかもしれないと思って来ては見たんだが……」
少しの間があり、
「私の思い違いだったか。すまない。調子も悪そうだし早めに寝るんだぞ」
「はい。おやすみなさい、ダクネス」
「ああ、おやすみ」
そういい出て行くダクネス。
足音が遠ざかるまでそのままで待った。
「ったく、ダクネスの奴、好き放題言いやがって」
そう呟きながらベッドの下からでる。
瞬間めぐみんが抱き付いてきてベッドの上に押し倒される。
「な、なんだ急に?ど、どうした?」
尋ねながら顔を見てみると、めぐみんは余裕のない切なそうな表情を浮かべていた。
「は、はやく続きをしませんか?」
その発言でふと思い当たる。
前の仕返しを少ししてやろうと。
「じゃあまずは一人でしてくれ、見てるから」
「さ、最低です!あそこまでやっておいてそれは最低ですよ!?」
瞬く間に真っ赤になるめぐみん。
「前まで俺は何回そういう気分になったと思っているんだ?」
そう告げると、うっ、と呻きながらも反論する。
「そ、それはすみません。でもあれはどれもカズマが……!」
「へぇー全部俺のせいにするんだー。なら今日はもうこのまま寝ようかな」
「分かりました、分かりましたから!」
めぐみんはベッドの上に横になり自分の秘所に指を這わす。
「んうっ……どうしてこういうことに……」
「ところで前に自慰をしたことって?」
「ある訳ないじゃありませんか!あとで覚えていてくださいね!」
真っ赤になりながら叫ばれてしまった。
ちょっと怖い。何されることになるんだろう……
下手したら、いや下手せずとも爆裂魔法の対象にされる可能性は……否定できないな。
「な、なあ、謝るからやっぱりやらなくていいぞ?」
俺がヘタレてそう告げると、めぐみんはトロンとした目のまま可笑しそうに笑う。
「ふうっ……心配しなくても、魔法の対象にはしませんよ……?それに別に嫌というわけでは、無いですし……」
それってどういう意味だと聞こうとしたら、突然口を塞がれてしまった。
激しく口の中を吸われ、思わず自然とこちらも舌を絡める。
「んむっ……!んむむむっ……!」
それと同時にめぐみんが大きく身体を震わせた。
くったりとこちらに寄りかかるように身体を預け息を整えるめぐみん。
背中を撫でてやっていると恥ずかしそうに
「さっきのは照れ隠しですよ……?だから本当に何かしたりはしませんよ…?」
と告げてきた。
何これ、可愛い過ぎるんですが!
仕返ししようなんて考えてすみません!ありがとうございます!
俺は耐えられずめぐみんにそのまま覆いかぶさった。
あっ……ローブどうしよう。
「……カズマ、そのままで大丈夫です。はやくきてください……」
潤んだ紅く輝く瞳で上目遣いで見てくるめぐみん。
俺はすばやくズボンを緩めソレを解放しそのままめぐみんの中に入れた。
「ふうぅ……!あっ……!」
入れた瞬間めぐみんはぎゅっと抱きついてきて身体を震わせている。
「……軽くイった?」
「っ!バカですかっ?!そんなこと聞かないで下さいっ!」
めぐみんは俺の頬を力なく、どこか拗ねたように横に引っ張ってくる。
普段の様子からはこんなことをしてくるなんて考えられず、自然と口角が上がるのが分かる。
「何ニヤついているんですか!恥ずかしいんですよ?!」
顔を真っ赤にしながら抗議してくる。
「いや、あまりに可愛かったから……」
「っ!?うううううぅ…………!何でこういう時に限ってはすぐそういう言葉が出てくるんですか!?普段へタレの癖に、あっ……!」
めぐみんは顔を両手で覆いながらそう言ってきたが、途中で俺が動き出したため言葉を途切れさせてしまった。
別にヘタレと言われたから動き出したわけでは無い。
正直ぎゅうぎゅうと締め付けてられて、そのままでも果ててしまいそうだったからだ。
少し動いただけでめぐみんは嬌声を上げだした。
「はあっ……!あうぅっ……!も、もうっ……!んんんんっ……!」
その声と共に抱きつき、ぎゅっと中が締まりめぐみんが身体を震わす。
ぐ、無理だ出る!
「う、うあぁっ、くうっ……!」
中で出した瞬間にめぐみんが更にぎゅっとしがみ付き、より大きく震えた。
「はあぁぅっ……!ふうっ……んっ!」
自分が吸い尽くされるような感覚になり背筋がゾクゾクとした。
イき終わりそのままめぐみんの上に倒れこむ。
めぐみんも余韻に浸っているらしく、ふわふわした表情を浮かべている。
きょ……強烈だった、色々と。
「おつかれさま……です……今日は落ち着くまでしばらくこうしてから、お風呂に入って寝ましょうか」
「そ、そうだな……」
そうして風呂に入りめぐみんと寝たわけだが、翌日から俺たち二人に向けるダクネスの視線がより疑いが篭ったものとなったのは当然だろう。
三話目投稿させていただきました、双碧というものです。早いこともう年末かーとしみじみ思いながら書き上げました内容ですが、今回もお楽しみいただけたでしょうか?二話目のあとがきのペンネームを「双璧」と間違えていたので修正しました。お恥ずかしい。今回も多くの方にご覧頂きましてありがとうございます!お気に召されましたら、どうぞ慈愛の篭ったまなざしで見守って頂ければ幸いです。