※この作品はR-18です。

このすば後日譚(Web版世界)   作:双碧

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第五話~この素晴らしき仲間達にお仕置きを!~

「おーい、開けてくれよ!軽い冗談のつもりだったんだってば!」

 

 ドンドンと屋敷の扉を叩く。

 その扉の向こうから、

「冗談と言えばなんでも済まされるわけではないわよ!しばらくの間この屋敷への出入りを禁じます!どうしても入りたいなら、アクア様ごめんなさいと土下座して、毎日高級酒を貢物として捧げ、女神である私に一日三回崇め奉る祈りを捧げること!それができないのなら、入ってこようとしないで!ほら諦めなさい!めぐみん、ダクネス!このクズニートが窓を割って入って来れないように板で窓という窓を閉めてしまいましょう!」

 

 アクアがそんな舐めた事を言いながら、一番近い窓から早速ダクネスやめぐみんにより板が貼り付けられていく。

 今なら入れるかもしれないが……怒りが収まっていない状況で入ったところでアクア達が支援魔法を使って、取り押さえられまた放り出されるのが関の山だ。

 

 どうしたものか。

 かといって、あのバカに何故俺が殴られた上に土下座までしなくてはいけないのか。

 とりあえず夜も遅いし何処か落ち着ける場所で今後を考えようか……

 適した場所を思いつく。

 

 ちょっと久しぶりにエリス様に会って来ますか!

 

「『テレポート』ッ!」

 

 

 

 ちょっとエリス様と世間話してきたわけだが、まあ今回の件は俺も悪いところがある。

 とはいえここまですることでは無いと思うので仕返しをしようと思う。

 エリス様は、行った時は大分慌てていて、云々かんぬん色々と言っていたが、最後には『祝福』をかけてくれた。

 女神って言うのはやはりこうあるべきだと思う。

 

 それに比べてうちの駄女神は……

 

 今回は長期戦に持ち込むつもりだから今のうちに食料を大量に買っておいて屋敷の前で寝てやろう。

 そう考え、リュック、食料、暇つぶし用にマスクの原料、それとマナタイトを購入し、屋敷の扉の真ん前で寝た。

 

 

 

「おーい、開けるつもりは無いのか?」

 

 朝になり再び扉を叩く。

 すると二階からアクアがこちらを見る。

 

「何クズニート?もしかしてその荷物私に貢ぐために持ってきたのかしら!ならさっさと土下座して謝りなさいよ!そうしたら入れてあげるわ!」

「ふざけるな!なんで俺がお前に土下座しなければならないんだ!お前らがその気なら俺だって考えがある!『クリエイト・ウォーター』!『フリーズ』!」

 アクアに反発しながら俺は屋敷の扉を氷で固めていく。

 

「あははははは!このニートとうとう頭がおかしくなったんですけど!プークスクス!自分で扉凍らせちゃって、入れて欲しいんじゃなかったのかしら!ちょーうけるんですけど!クスクス、プークスクスクス!」

 アクアは大笑いしているが、多分俺の行動の意味を理解していないんだろうな。

 そのまま屋敷の中にアクアは姿を消した。

 恐らく朝食でも食べに行ったのだろう。

 俺もティンダーを使い簡易かまどを作成し料理をして食べた。

 

 

 

 昼頃。

 

「ね、ねえ、何時までそこにいるつもりなのかしら?」

 

 そんな風に俺が食べているものを物欲しげに見てくるアクア達。

「ん?お前らが屋敷の中に居座り、俺を追い出したかったみたいだから仕方なく俺は屋敷の敷地で我慢してるだけだぞ。前みたいに警察に通報しても良かったがそれだと可哀相だからな。俺が屋敷に入れない代わりにお前らはこの敷地に入れないって形で手を打ったんだよ」

 時折クリエイト・ウォーターとフリーズで扉を固め直している。

 

 多分アクアのことだ、こんなことになるとも思わず昨日の夜に大盤振る舞いし、今日の朝分までしか食料を残さなかったのだろう。

 三人が何やら小声で話し始めたので、俺は盗聴スキルを使用した。

 

『どうしましょう、あの匂い嗅いでるとお腹がどんどん空いていきます……』

『耐えるのよめぐみん!あのニートのことだからそんなに長続きするわけ無いわ!』

 

 ほう、結構俺はマジなんだが。

 正直一週間ぐらいこのままでもやってやるつもりなんだが。

 

『なあ、いっそ何処か窓を開放して……』

「開放したら俺が侵入できるな。当然開けてくれたということで今回のことは水に流すんだよな?」

 ううっというような表情でこちらを見てくるダクネス。

 俺は食べたものを片付けてマスクを作り出す。

 

 二階から覗いてくる三人はどうしたものかという表情をしていた。

 

 

 

 夕刻。

 

「カズマさん、カズマさん。少し話し合いをしましょう?」

「俺を問答無用で追い出した奴が何を言っているんだ?それにそっちは俺が屋敷に入って欲しくない。こっちは屋敷の敷地で我慢している。これでお互い納得してるよな?話し合う余地なんてないじゃないか」

 俺は香りがいい肉などを焼き、スープを温めて飲んでいる。

 

 二階には半分泣きそうなアクアと、ぐったりとしているめぐみん、頬を赤く染めているダクネス。

「これはきっとあれだ!食べ物が欲しいならばその身体を好き勝手に食わせろとか、そういうことなんだな!?カズマ、そうなんだろう!?」

 

 ……あの変態はもう手遅れだな……

 

「ちげ-よ!ハーレム発言は軽い冗談だって言っただろ!」

 

 三人はまた小声で話し出したので盗聴スキルを使い、話している内容を把握する。

『アクア、もういいではありませんか……お腹が減って限界です……頭も回りません……爆裂魔法も撃てませんでしたし……確かにあれは軽い冗談の時の言い方でしたし、もう、入れてあげてもいいではありませんか……』

 

 う……弱っているめぐみんの言葉を聞いていると少し心が痛む。

 

『うぅ……でもっ、でも!』

『アクア、すまないが私もそう思うぞ。あいつの荷物を見てみろ、どう考えても今日一日で無くなる量でもない。流石の私だって何日ああやって居座られるか分からない状態で食べ物がないのは辛い。反省もしているようだし謝って許してもらったらどうだ?』

『うぅ……うん……』

 

 アクアが謝るならまあいいか。

 

「カズマ、今回私も悪かったわ。許してあげるから扉の氷の壁を何とかして、食べ物をくれないかしら。もう食料が残ってないのよ」

 

 ……前言撤回。反省の欠片もしてねーじゃん。

 

「嫌だ。もしかしたら溶かした瞬間に支援魔法で強化して殴りかかってきて、食料だけ持っていかれるかもしれないし」

「わああああああっ!カズマ様許してください!もうお腹が減って限界なの!何でも言うこと聞くから!扉の鍵も、窓も全部開けるから!」

「今、何でも言うことを聞くって言ったな?」

 アクアはその言葉を聞き、ためらいながらもおずおずと頷く。

 

「おい、二人もそれでいいのか?」

「一回だけ、一日だけに限るならいいです……」

「むしろ望むところだ!」

 めぐみんとダクネスはそれぞれ頷いた。

「交渉成立だな。俺もそこまで鬼じゃない。命令は一回だけ、効力は一日中に限り守るというなら扉の氷も溶かすし食べ物も分けてやる。まず先に扉の鍵や窓の板を外してくれ。その間にじわじわティンダーで溶かしていくから」

 二階の三人はすぐさま一階で活動を始めた。

 

 その日の夕食は三人とも俺が作った料理を美味しいと言ってがっついて食べていた。

 

 

 

 翌日、俺は居間でゼル帝を愛でていたアクアに声をかけた。

 お仕置きタイムだ。

 

 アクアは俺の声を聞くなりビクッとした。

「な、なにかしら?」

「お前に昨日言っていた命令を一つしようと思ってな」

「カズマさん、確かに昨日はそんなこと言っていたけれど、私たち仲間よね?そんなこと冗談よね?」

 ちらりと脇目で見るとダクネスはハアハアと荒い息を吐き、めぐみんは少し怯えたようにソファーに身を隠している。

 

「……もし昨日言っていたことが嘘だというなら、俺はお前らにそれぞれ問答無用で一番嫌がるだろうことをするぞ?アクア、お前なら普段着ている羽衣を売っぱらい、ゼル帝を焼き鳥にし、うおっ?!」

 言ってる傍から掴みかかってくるアクア。

「ああああああっ!カズマ様、言うことなら聞くから、絶対っ、絶対にそんなことしないで!!」

「分かった、分かったから、掴みかかってくるな!」

 そう言うとアクアは正座した。

 

「お前には今日一日布教活動をしてもらう。それもわざと入るように仕向けたり、脅したり、そういったことは無しでだ。たまには女神らしいこと、アークプリーストらしいことをしろ。最近は大抵飲んでいるか寝てるかだろ。一人でもそれで入ったのなら褒めてやる。今日一日努力をしたのなら完全に許してやる」

「……そんなことでいいの?」

 アクアがおずおずと聞いてくる。

 ダクネスやめぐみんも意外そうな顔をしている。

「ああ。あと俺達へ入信を薦めるのはノーカンだからな。まあ入らないが」

「分かったわ!準備してくる!」

 そう言い飛び出していくアクア。

 

「カズマ、思ったよりも優しいじゃないか。見直したぞ」

「どういう風の吹き回しですか?」

 まともに聞こえた内容で驚いているダクネスとめぐみん。

 

 アクアはアクシズ教の女神だ。

 エリス教徒が多いこの町でとてもじゃないが入る奴はいないだろうし、最後には女神としての自信を失って帰ってくるのが手に取るように分かる。

 これで少しは懲りるだろう。

 

 ダクネスとめぐみんにどう思っているか確認すべく聞く。

「あのアクアに布教が上手くいくと思うか?」

 二人ともふいと俺から目を逸らす。

 

 素直でよろしい。

 

「ま、やらかされても困るから俺は付いていくけどな。どう考えても泣いて帰ってくるだろ。夕食は少し高価なものにしておいてくれ」

「なんだかんだ言って優しいですよね、カズマは」

「べべ別に!落ち込まれたままだとめんどくさいからだし!そんなこというなら命令厳しめにするからな!」

 

 なんか最近こんなんばっか!

 

「じゃあ行って来るわ!」

 布教用の入信書を沢山持ってくるアクア。

「おい、まて、俺もついていく」

「あ、私もついて行きますよ」

 ダクネスが寂しそうに屋敷から見送った。

 

 

 

 街の大きな通りでアクアが入信書を持って叫んでいる。

 

「アクシズ教!アクシズ教!アクシズ教はいかがですか!入れば芸達者になりアンデットモンスターに寄られやすくなりますよ!今ならばおまけでこの、女神の作った聖水もお付けします!そこの体型で悩んでいそうなお兄さん、いかがですか!」

 

 言われた男性は迷惑そうにしながらも素通りしていく。

 俺達は近くの喫茶店から駄弁りながらその様子を見ていた。

 

「アクア、けっこう張り切ってますね」

 ジュースを飲みながら呟くめぐみん。

「あいつが張り切った時に上手くいった試しなんてないけどな。それより今日はいいのか、こっち来てて?爆裂魔法撃ちに行くんじゃなかったのか?」

「少し気が変わったのです。後でも撃てますしね」

 

 どういうことだろう?

 

「……なあ、言った俺があれなんだが一人でこのまま様子見てもらってていいか?少し寄りたい場所があってな」

「いいですよ、それなりに早く戻ってきてくれるならですけど」

 俺はめぐみんにアクアを任せ洋服屋へと向かった。

 

 

 

「あのー、芸が上手くなれたりと、不思議な特典があるアクシズ教はいかがですかー?」

 

 戻ってきてみるとアクアの雲行きが怪しくなってきていた。

「ただいま、どうだった?」

「見ての通りですよ」

「誰かー興味はありませんかー?戒律もあまり厳しくありませんよー?」

 

 誰も足を止めさえしてくれないのか。

 なんか少し可哀相に感じてきた。

「あ、カズマ、そろそろ私は行きますのでアクアをお願いしますね。夕飯の用意もしておきますから」

 めぐみんはそういうと席から立ち上がった。

「おう、じゃあまた後でな」

 

「そのー……。あのー……」

 

 めぐみんを見送る端でアクアは少し半泣きになりながらも声をかけていた。

 

 

 

「……ぐすっ……。……ぐすっ……アクシズ教に…………。誰か……ぐすっ……」

 

 日が暮れ始めた頃には、アクアには最初の勢いなどなく、泣きながら突っ立っているようになっていた。

 

 これ、想像以上に心が痛むな……

 

 通る人全員が素通り、それどころかアクシズ教と聞くだけで少し離れて通り過ぎていく。

 アクアが近づけばそれを迷惑そうな顔をして避けていくだけ。

 アクアに飴をあげていく冒険者と思しき女性もいたが。

 こうなることは分かっていてやっていたからか良心が軋む。

 

「アクア、すまなかった。もうおしまいでいいぞ?日も暮れてきたし」

 泣きながらこちらを見るアクア。

 

「……ぐすっ……カズマさん……アクシズ教って……なんですか……?」

 

 物凄くこじらせててめんどくせえ!

 

「こ、こういうのは一日ですぐ結果が出るものでもないだろ?帰ったらめぐみんが作った夕食もあるしな?帰るぞ?」

「………うん……」

 

 

 

 屋敷に着くとアクアはそのまま風呂に入ると言い出して行ってしまった。

「アクア、あの後大分酷い感じになったのですね」

「正直やりすぎたと思う。アクシズ教って何って?女神が聞いちゃ駄目だろ……」

 俺がアクアを許す云々よりアクアに対する罪悪感が半端じゃない。

「それは……まあアクアのせいというよりアルカンレティアでの勧誘の仕方が原因だとは思いますが……」

 めぐみんは少しアクアに同情しているようだった。

 

「頼んでいたように高価なものにしてくれたか?」

「はい、ちゃんとご馳走にしておきましたよ。アクアが上がってきたら皆で食べましょう」

 アクアは食卓に並んだ夕食をみて機嫌が良くなり、俺が風呂から上がってきた頃には昼間のことは何処吹く風だった。

 

 

 

「くぅ……!私にこんな場所でこんなものを着させて、こんなものまで持たせるなんて、カズマ!私がどうなってもいいんだな!?」

 

 アクアにお仕置きしてから数日後、俺とダクネスはある場所に来ていた。

 当然現在命令実行中である。

 

「いいからさっさとしろ。待ってるんだから」

「ううううぅ……!こんなことさせられるなんて……!屈辱だっ!」

「いいからさっさと魚をさばけ!言った料理を知らないからってもう手順は教えただろ!さばき方まで分からないのかお前は!」

 

 そう俺達は今ダスティネス家のキッチンにいる。

 命令は『親父さんに手料理を作り、あーんで食べさせて素直な感想を聞くこと。料理はこちらで指定する』というものだ。

 最初、再教育してやると言った時は頬を赤らめハアハアと息を荒げていたが、そう告げると、顔を青くしていた。

 ダクネスから『どうしても、しなければだめか?』と聞かれたので、断るならもっと嫌がる事をさせるぞといったらしぶしぶ要求を呑んでいた。

 それ故ダクネスは普段着の上にエプロンをつけている。

 

 指定したのはつみれ汁で、材料は俺が全部買ってそろえたのだが、料理がどういうものか分からないと言うので、紙に書いて流れを説明したのだが……

 

 ダクネスは左手で魚の尾っぽを、右手で包丁を持ったままおろおろとしていた。

「食べれる魚とは、こう、こんなものではなく……その……」

「普段食べてるあれか?!あれは切り身だ!これをさばいたのがああなるんだよ!」

 命令のつもりがさっきから突っ込みまくりで疲れてきた。

 

「分かった……では切るぞ!」

 そう言いながらダクネスは魚を片手で持ち上げたまま包丁を剣のごとく振り下ろした。

 

 ちょっ……!

 

 ダクネスの手から包丁がすっぽ抜け壁に刺さっていた。

 

「む……失敗してしまったか」

 

 次の包丁を取り出そうとしているダクネスを止める。

「む……失敗してしまったか、じゃねーよ!食材くらい切ったことあんだろ!何で持ったまま切ろうとすんだよ!置けよ!唯でさえ動かないものも切れない不器用すぎるなんちゃってクルセイダーなんだから難易度高い事をわざわざしようとすんな!」

「な、なんちゃってクルセイダーとかいうな……。不器用なのは認めるが……」

 しょんぼりしながらようやくまな板の上に魚を置く。

 ダクネスは刺さっていた包丁を抜き、水で洗い両手で構えた。

 

「おい、そのあとどうするつもりだ」

「ん?そのまま振り下ろして切ろうかと」

「魚はギロチンみたいにしてさばかねーよ!お前、前に俺に料理作ったときもそうやって切ってたのか?!」

「そうだが……」

 そんな調子で危ない事を色々やらかすダクネスに恐々しながらも、料理を作っていくのを見守る。

 

 米を洗う際に洗剤を使おうとするという定番は勿論、つみれの中に魚の背骨までごろっと入ったまま作ろうとしていたときは流石に止めた。

 

「これで完成だな」

「……ダクネス、味見してみろ」

 そう言うとダクネスは不思議そうに見てくる。

 

「どうしてだ?食べさせるものだろう?」

「確かにそれはそのまま親父さんに食べさせるが、普通は作ったものは味見してから大丈夫なら出すもんだ!流石にここまで何も知らねーとは思わなかったぞ!世間知らずにも程があるだろ!」

「うう……」

 ダクネスは涙目になりながらもつみれ汁を啜ると、う、というような顔をした。

 

「なあ、これをそのまま出すのか?作り直しては駄目か?」

「作り直すにも、材料も時間もねーだろうが!というかお前、味見する前はそのまま出そうとしていたよな?あーんで食べさせて素直な感想聞いて来い!それが終わったら俺は先に帰るからな!」

 しぶしぶといった様子で料理を運ぶダクネス。

 

「俺は扉の前で会話だけ聞いているからな。もししていなかったとしても分かるからバカなことは考えるなよ?」

 そういうと嫌そうな顔をして扉を開け入っていくダクネス。

 俺は盗聴スキルを使って内部の声を拾う。

 

『おお、ララティーナ、父さんのために料理を作ってくれたのだな!美味しく食べさせて頂くよ』

『え、ええ。そ、それではお父様。口を、お、お開けください……はい、あーんです……』

『あ、あのララティーナが、あーん……!このワシに……っ!』

 その後むせ返るような反応があったので俺はそのままダスティネス家を後にして、洋服屋で受け取るものを受け取り屋敷へと戻っていった。

 

 俺が居間でゆっくり寛いでいると、扉がバンと開く音と共に、

 

「カズマ!どこにいる!ぶっ殺してやるからでてこい!」

 ドタドタと走ってくる音が聞こえる。

 

 なんだなんだ?

 

「そこか!」

 居間に入ってくるなり走りながら殴りかかってくるダクネス。

 

 スキルの自動回避が働き受身で避けたが、さて、どういうことだ?

「いきなりなんだよ?何があったんだよ、一体?命令だっただろ?」

 また殴りかかってきたので腕を掴んでそう聞く。

「どう考えてもやられたことと釣り合わないから殴らせろ!父が私の料理を食べて、天国と地獄を一緒に見たようだったといいながら、自分の部屋で寝込んでしまったし、私なんてずっと地獄みたいなものだったぞ!一発、いいや父の仇も含めて十発ぐらい殴らせてもらえねば気が済まない!」

 

 んな理不尽な!

 

「お前がちゃんとそこそこレベルには料理が出来ていれば、親父さんも地獄を見なかっただろうし、お前だってそこまでならなかっただろ!俺だってここまでの世間知らずだとは思わなかったよ!全部俺のせいにすんじゃねー!」

 

 俺とダクネスは言い合いながら取っ組みあっていると、

「二人ともうるさいですよ!もう日も暮れ始めているんです!少しは静かにしていてください!」

 台所から料理中のはずのめぐみんが顔を出していた。

 その一声で取っ組み合いを止め俺とダクネスは向かい合ってソファーに座る。

 

「全く……二人は目を離すとすぐにこれですから……ダクネスは私の料理の手伝いでもして少しは料理について知ってください。カズマは夕食を並べられるようにテーブルの上を片付けてください」

 俺がテーブルの上を片付け、綺麗に拭いている間にも、台所から何回かめぐみんの慌てたような声が聞こえてきて、その後落ち込んだ様子のダクネスが戻ってきた。

 

「めぐみんにしばらく包丁を持つのを禁止された上に、料理をするなら必ず私と一緒の時に限り、台所では良いというまでただ見ているだけにしてくださいと言われてしまった……。そんなに私のやり方がダメだったのだろうか……」

 

 それほどのもんですよ、間違いなく。

 

 

 

 夕食後めぐみんが一人で居間にいるところを見計らって声を掛ける。

「?どうしたんですか、カズマ」

「今晩俺の部屋に来るか?」

「?はい、そのつもりでしたけど……どうかしたのですか?」

「いや、なんでもないぞ」

 俺はそれだけ告げると部屋に戻り、次の商品案などを考えながらめぐみんを待つ。

 

 すると扉がノックされたので、

「入ってもいいぞ」

 そう言いながら扉を開けると、

 

「カズマ!いい話があるわ!」

 

 アクアが入ってこようとしたので、即座に扉を叩き閉め鍵を掛けた。

 

「いっ!?痛いじゃない!入っていいって言ったくせに何するのよ!せっかく旅行に行こうって話をしに来たのに!」

 扉の向こうで喚くアクア。

「おい、めぐみんの両親が旅行に行くって言って、近々こめっこを預かる予定だろ?どうせめぐみんとダクネスにも渋い顔されたんじゃないのか?」

「確かにそうだけど!一緒に連れて行けばいいだけじゃない!」

 

 ……連れて行くのが危ないから、めぐみんの両親も預けていったんだろうが

 

「あのなぁ、まだこめっこは小さいんだ。万が一にも危ないことには遭わせたくはない」

「そういえばあんたはロリコンだったわね……ロリマの近くに置いておく方が危ないわね」

「ロロ、ロリコンじゃねーし!小さな子が好きなだけだし!大体お前もこめっこの面倒を積極的に見てたじゃねーか!旅行ならまた時間がある時に計画練っていけばいいだろ?今回こめっこのことしっかり面倒見るなら考えといてやるからさっさと立ち去れ!」

 何時めぐみんが来てもおかしくないのでそう言い放った。

 

「本当?面倒見たら考えてくれるの?」

「ああ、本当だ。もう用は済んだだろ。さっさと自分の部屋に戻れ」

「ええ、分かったわ。じゃあおやすみね」

 そのまま足音が遠ざかっていく。

 

 念のため盗聴スキルで音を追う。

『あら、めぐみん、こんな時間にどしたの?カズマに用?』

『あ、はい。カズマに呼び出されて。たぶん両親の件だと思いますが』

 

 めぐみんも大分言い訳が上手くなっている。

 ここしばらくめぐみんが来ようとした時はアクアに、俺が行こうとすればダクネスに間が悪く遭遇することが多く、最初のうちは言い訳などや巻き方などもドギマギしていたが、それなりにやり過ごせる程度にはなってきた。

 

『ふーん、この時間にあの変態と一緒にいると危ないだろうから付いていってあげようか?』

 

 あんのアマー!また余計な事を言いやがって!

 

『大丈夫ですよ。ちょっと長い話にもなりそうですし、もし何かあったら翌日爆裂魔法の相手にしますから。その場合の蘇生をお願いしますよ』

 

 ……え、大丈夫かな俺……

 

『そう、分かったわ。それじゃあおやすみね。気をつけてね』

『はい、おやすみなさい』

 その後パタパタと駆けてくる音がしたので扉の鍵をあけてめぐみんを招き入れる。

 めぐみんがベッドに向かって歩いていくのを見ながら扉に鍵をかけなおす。

 

「なあ、……あんまり聞くつもりはなかったんだが……」

「アクアとの会話で爆裂魔法の件ですね?出任せですよ?それに今更ではありませんか」

 こちらの事などお見通しだと言わんばかりに告げるめぐみん。

 

 たまにはその余裕を壊してみたくなる。

 

「それもそうか。じゃあお前に命令するな」

「はい……え?いえいえ!確かに今更とは言いましたけれども!一体鍵まで閉めて私に何をさせるつもりですか?!」

 

 俺はクローゼットの中に入っていた紙袋を取り出し言う。

「めぐみんには今晩中着せ替え人形になってもらう」

 

 

 

「うううぅ……一体こんな恥ずかしい見たことも無い服をどこでそろえてきたんですか?」

 

 俺はめぐみんに修道服から始まり巫女服、ナース服、猫耳つきメイド服、チャイナ服など、様々な服を着せていった。

 少しずつ過激な服装にしていき、今はサキュバスの服を着せている。

 当然布面積の関係上下着は身に着けておらず、その服のみである。

 ちょっと動けば上も下も見えてしまいそうなぐらいであり、背中のほうは布という布が無い。

 めぐみんは恥ずかしそうに大事な場所を腕や手で押さえながら、身悶えている。

 

「うう、本番はヘタれるのに、どうしてセクハラになるとここまで躊躇いが無いのでしょうか……」

 

 ちなみにどの服もオーダーメイドで作ってもらった物だ。

 今着させているサキュバスの服はその中でもとっておきで、俺が握っている魔法石に魔力を一定量流し込み、その後魔力供給のコントロールを行うと、着ている人を発情させてとろとろにさせるというものだ。

 かなり無茶を言ったのだが、お金に糸目をつけないで頼み込んだら、何とか形にしてみるとか言って、完成させてくれた。

 効力は期待してるだろうよりは薄く即効性ではないし、相手が乗り気じゃないと意味は成さないといわれたが。

 

 お金の無駄遣い?知るか!

 だって見てみたいじゃん!めぐみんが乱れている様子とか!

 正直他の服はこれを着せるために用意したようなものだ。

 

「うう、なんかこの服、変ではありませんか……?」

 もじもじしながらそんな風に言ってくるめぐみん。

 

 流石に気付くか……?

 

「そうか?とてもエロいだけだけどな」

 あくまでしらを切りじっくりめぐみんを見つめている。

「あんまりジロジロ見ないでくださいっ!ほんと迂闊でしたよ……っ!?」

 言葉をいい終えるかそこらで軽く身震いしためぐみん。

 その瞳は大分潤んでおり、とても扇情的だ。

 

 まだ、我慢だ我慢。

 

「どうしためぐみん、寒かったか?」

「っ~~~!分かってて言ってるでしょう!?というかその手にある石はなんですか!?わかりました、それが原因ですね!?」

 

 急に近づいてきて俺の手の中にある魔法石を奪い取った。

 

「あ、ちょっ!今取ったりしたら!」

「っあぅっ!?!?!?!?」

 めぐみんは盛大に痙攣し始め俺にしなだれかかり、困惑した表情のまま口をぱくぱくさせている。

 

「っあ、はあっ、かはっ、はあっ……」

 

 めぐみんは呼吸が不規則になり、時折震えながら、苦しそうに上目遣いで見てくる。

 

「ごめん、言っておけば良かったよな。確かにその魔法石と服でめぐみんを発情させようとしてました。魔力供給量の調節でそうしてたけど、急に使用者の手から離れると魔力が暴発して色々危険なことが起こるらしいんだ。魔法石には魔力を残したまま手から離れると、ボンッとなったり、服の着用者に強い衝撃が生じたりする……本当にすみませんでした」

 めぐみんがまだ寄りかかっているので、そのまま謝る。

 

 めぐみんの呼吸も少し落ち着いてきた。

「はあっ……全く、何をしているかと思えば、そんなことでしたか……私も、短絡的だったとは、思いますが、死ぬかと思ったんですよ?」

 怒ったような、拗ねたようなふうにそう言いながらベッドに腰掛けるめぐみん。

 

 怒っているほうだよな、多分。

 俺は即座に土下座しながら謝る。

 

「返す言葉もございません」

 

「ふう……カズマらしいやり方といえばやり方ですが……」

 奪った魔法石をしげしげと見ながら、

「そんなに発情した私が見たいんですか?」

「凄くみ……いや、これ素直に言ったりしたら大変な目に合わすとか、絶対にしてやらないとかそういう奴だよな?謝るから機嫌直してくれないか?」

 

 顔をあげ、思わずめぐみんの微笑みにつられてそのまま頷こうとしてしまったが、それはダメだろうと雑念を追い払い謝る。

 

「……機嫌なら別にいいですよ?」

 

 えっと……つまりどういうこと?

 

 正座したまま俺が困ったような表情を浮かべていると、

「カズマは雰囲気とか女心とか分かりませんもんね」

 めぐみんは可笑しそうにしながらそう告げる。

 

 確かに分からないが……

 その発言に少しむっとした。

 

 そんな俺の耳元に顔を近づけ、

「見たいなら、見せてあげますって事ですよ?」

 熱い吐息を滲ませながらそう囁いてきた。

 

 このタイミングで魔性のめぐみんが降臨した!?

 

 

 

「ふうっ……そうだったんですね……ダクネスがそこまで……」

 俺とめぐみんはベッドの上で横になりながらぐだぐだと喋っていた。

 

 めぐみんが魔法石を持ち、自分で具合を調節しながら。

 一応サキュバスの服の全ての説明はしておいた。

 まさか自分でやると言い出すとは思わなかったが。

 時折、熱い息を吐き出し目が物凄いトロンとして身体が小刻みに震える。

 

 色々とヤバいんですが!

 

「ふふ……今後は少しずつ……ダクネスに、料理を教えてあげなきゃいけませんね……」

「そうだな……なあ……」

 俺が少し耐えられなくなり、露出しているめぐみんの肩に触れると、

 

「ふああぅっ……!」

 

 それだけでピクピクと痙攣し、こちらを潤んだ瞳で見てくる。

 

「だめですよ……?まだ、触れちゃ、だめです……あと少し、だけっ……」

 

 いや、もう十分すぎるんだけど!

 さっきから下半身がヤバいんですが!

 むしろ焦らされてるみたいで辛いんだけど!

 

「あ、ああああぁっ……!ふううっ……!」

 

 突然めぐみんがこちらに抱きついてきて、ギューッとしがみつきながら盛大にその身を震わせ始める。

 

「お、おい大丈夫か?」

 あまりに急すぎて、心配でそう声をかけてしまう。

「カズマっ……!」

 震えたまましがみつきながら、紅い瞳を潤ませながらめぐみんは声を出した。

 

「な、なんだ?」

「早く……きてください……!熱くて、切なくてもう……っ!」

 

 その一言で一瞬俺の思考は止まった。

 思わず手を服の上からめぐみんの秘所に這わせる。

 

「くああっ……!んむぅ……!」

 

 もう服自体が機能を果たしていないレベルで濡れていた。

 その上軽く触れただけで嬌声を上げるめぐみん。

 それを確認したらさっさといれられる体勢になる。

 

「いれる……っ?!」

「あううぅ……!ふううぅ……っ!」

 

 いれようとした瞬間に下にいためぐみんの方が動いたらしく、気付いた時には全部入ってしまっていた。

 めぐみんはガクガクと痙攣し続けているが、その表情は満ち足りているようで、瞳は潤んでいるもののしっかりと俺を見つめている。

 

 中の収縮もとても……っ!?

 うお、締め付けやばっ!無理っ!

 

「ぐぅ……!」

 

 意識した瞬間に達してしまった。

 そのままめぐみんの上に覆いかぶさる。

 

「ど、です、か?あっ……っ~~~!へあ……乱れ、てるの、は?」

 蕩けた表情で達しながらもそう聞いてくるめぐみん。

 

 もう、後悔が無いってぐらいに凄いとしか……

 

「めぐみん、ぐ、これ、やばいな……」

「そ、ですね……あっ~~!あっ!」

 イった瞬間に力が抜けたのか、めぐみんの手から魔法石が零れ落ちる。

 

 あっ!?

 

「ふっ……!?っ!!!~っ!!んむっ!!」

「ちょっ!?ぐぅっ!?あぐうぅぅ!?」

 

 再びガクガクと盛大に痙攣するめぐみん。

 それにより吸われるように圧迫された。

 

 

 

 ある程度収まりめぐみんの中から何とか抜き取る。

 

「あぅ…………うあ………」

 

 めぐみんはいまだ余韻から抜け出せないらしかったので、服を着替えさせて紅魔族ローブを着させてやった。

 

「め、めぐみん、これは今後封印しておこう」

 俺はサキュバスの服をたたみ、洗ってからしまおうと思い告げる。

 めぐみんはコクコクと頷いていた。

 

「だ、大丈夫、か?」

「だいじょうぶでは、ありませんよ……ここまでとは、おもいませんでしたから」

 少し呂律が回っていないようだ。

「風呂、連れて行こうか?」

「からだ、ながしたいので、おねがいします……まだうごけそうにないので」

 

 

 

 風呂場までめぐみんをおぶって運び、湯を先に沸かす。

 脱衣所に戻ってみるとふらふらしながらもめぐみんが立ち上がり、バスタオルを巻いた格好で寄ってきた。

 

「今回は本当にやり過ぎたと思う……すまなかった」

「いえ、いいんですよ。それに最後のは私のせいですし。そんなことより早く入りましょう」

 そのまま引っ張られ風呂へと入っていった。

 

 

 

 少し何か食べようということになり、風呂から上がった後二人で台所に立つ。

「それじゃあ軽くおつまみでも作りますか」

 俺は肉を取り出し燻りっていく。

「では、私は生野菜のサラダでも用意しますね」

 めぐみんはレタスなどをちぎって盛り付けていく。

 

「なあ、関係がこうなってもあんまり変わってないよな」

 唐突にそう聞いてみた。

 現に皆で面白おかしく暮らしている。

 気付いていないからかもしれないが。

「そうですね。思ったよりも変わらずですね」

 めぐみんは嬉しそうにこたえる。

 

「このまま皆で楽しくクエストを受けたり、厄介ごとに巻き込まれたりしながらも生活していきたいですね……」

 少し言葉を翳らせながらそう告げるめぐみん。

 

 確かにそれは希望論だ。

 どうしてもいつかはばれる。

 だが、俺もそんな生活がいい。

 直接言ったりはしないが、この関係が気に入っている。

 

「ま、厄介ごとは御免だが」

 俺の茶化すような発言にクスクス笑うめぐみん。

「カズマといると色々考えてるのが馬鹿らしく感じますよ」

「それは馬鹿にしてるのか?俺だって色々考えてるんだ。流石に泣くぞ?」

「別に馬鹿にしてはいませんよ。気が楽になるってことですよ?」

 そんな風ににこっと笑ってくる。

「そ、そうか」

 

 俺、この笑顔に弱くなったなぁ……

 

「そいじゃ、そろそろ本格的に結婚の話でも考えるか?」

「ついでみたいに話すなら却下です!というか今日のところはその話は無しです!」

 顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。

 

 まあ、いいか。時間ならまだまだあるんだし。

 

「こっちは出来たぞ?」

 俺がめぐみんに声をかけた瞬間二階のほうから、

 

「カズマあああっ!め、めぐみんに何をしたあああっ!!?ぶん殴ってやる!!」

「あっちから肉の焼けた匂いがするわ!きっとカズマが何かやっているのよ!」

 

 げ、アクアがダクネスに何か言ったんだな!

 

「カズマ、大丈夫ですよ、私も止めてあげますから」

 なんかめぐみんの優しさが染みる……

 

 その後俺は出会いがしらにダクネスに二、三発ぶん殴られたが、めぐみんの説明のおかげで逆に謝られた。

 なお、おつまみは翌朝のゼル帝の餌になりました。

 

 




第五話目投稿させて頂きました、双碧というものです。聖なる日が近づいてきてる中、ちまちま書きました内容ですが、お楽しみいただけたでしょうか?気付くとUA数がなんと10000を超えていました!正直こんな短期間でこれだけ見ていただけるとは思ってもいませんでした。閲覧いただいた皆様に感謝です!これからも精進していきますので、もしよろしければ夜空に瞬く星々のごとく静かに暖かく見守って頂ければ幸いです。
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