※この作品はR-18です。

この世界で今日も生きる   作:鎌鼬

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幻想の世界・6

 

 

「で、何か言い訳は?」

 

「無いッ!!」

 

「あらやだ男らしい」

 

 

ミラが俺の事を婚約者だと発言してくれたおかけで、ミラが予定していた通りに学園の男から決闘を申し込ませる事には成功した。あちらは直ぐに始めるつもりだったが俺が召喚魔が回復していない事を理由にして決闘の時間を夜に設ける事になった。今が昼間なので大体7、8時間後くらいになる。それだけ時間があれば全員が戦えるくらいにまでは回復出来るはずだ。

 

 

ちなみに男はその後に不愉快だと言いながら別れの挨拶もなしに帰って行った。代わりに護衛の2人が呆れながらにも頭を下げていたのだが。

 

 

「てか訂正しておけよ。ヒュールさんが咽び泣いたかと思ったらどこかにソニックバード飛ばしてるんだけど?絶対にあれ、俺の事をどこかに報告してるよな?」

 

 

学園からの使者が居なくなり、ティミスさんが決闘の見届け人を引き受ける事を約束してから帰った後にヒュールはその場に崩れ落ちて泣き出した。身体中の水分を全て流すんじゃないかと心配になる程に号泣し、涙の後始末をした後に手紙を書いてそれをスピードだけならばトップクラスの召喚魔のソニックバードに持たせて飛ばしていた。

 

 

予想はしていたが、ヒュールさんもサマナーだったらしい。阻止しようと妨害を試みたのだが、どれもが軽く流されてしまったのだ。老いて一線は引いているのだろうが、それでも俺よりも強いと分かってしまうほどの力量差を見せつけられる結果となった。

 

 

「あぁ、恐らくはお爺様に報告したのだろう。お爺様は兄弟の中で誰よりも私の事を気に入ってくれていてな、私の婚期が遅れている事を酷く悲しんでおられた」

 

「あ、また厄介事の予感がする」

 

 

体感で俺と同等クラスであると察することが出来るミラの祖父だ。少なく見積もってもティミスさんクラス、下手をすればそれ以上だとしてもおかしくは無い。

 

 

「お嬢様、バレル様からお返事が届きました。婿殿の顔を見てみたいとの事です」

 

「おい、おい待ておい……!!婿殿ってなんだよ……!!しれっと身内扱いしてんじゃねぇよ……!!」

 

「タツキ様、真面目な話ですがお嬢様は行き遅れだと言われても仕方がないような年齢です。まぁ、それもお嬢様の日頃の行いとバレル様の行き過ぎた過保護が原因なのですが……そんな中でお嬢様が自分の口から婚約者だと告げたのです。ならば、ティーラルド家執事長として、この婚姻を何としてでも成立させなければならないのです……!!」

 

「力説しているようだけどそれってただの自業自得だろうが……」

 

 

ミラの事情など俺からしてみれば他人事以外の何でもない。好みだ、気に入っていると割と好意を抱いているのは事実なのだが、だからと言って結婚を決断出来る程のものでは無い。精々困っているのなら助けてやろうかな程度のものでしか無いのだ。

 

 

「お逃げになられても結構ですが、バレル様にはすでにタツキ様の名前と顔は伝えてあるので有る事無い事を吹き込んでチェイサーに仕立て上げます。王国の将軍を務めておられますから私情で騎士団を動かしてくるかもしれないですねぇ……」

 

「おぅ……もう詰んでるじゃねぇか……」

 

 

ミラの祖父が誰なのか分からなかったが、高齢で王国の将軍と言われれば心当たりが1人だけある。

 

 

バレル・ウィンブルド・ティーラルド将軍。複数いる王国の将軍の中で最高年齢で英雄様が登場するまでは王国最強と言えば彼の名が出る程の強者。名実共にこの世界の最強格の1人に数えられる実力者で、師匠からも昔に何かあったのかバレル将軍とは揉め事を起こすなと泥酔していたはずなのに素面に戻りながら耳が痛くなる程に念を押されている。

 

 

ここから逃げ出したらそんな化け物がチェイサーとして追いかけてくる。しかも将軍職な為に後で責任を取らされるだろうが私情で王国騎士団を動かすことも容易いだろう。

 

 

創作物の中では騎士団や兵士というのは弱く描かれているが、王国の盾であり剣でもある彼らが弱いはずがない。最低でもレベルは60を超えていて、それでいて対人戦のエキスパートなのだ。もしも俺が騎士団たちと戦ったとしても、負ける未来しか想像出来ない。

 

 

冗談だと信じたくてミラの方を見たが、彼女は満面の笑みを浮かべながらサムズアップをしてヒュールさんの言葉を肯定した。

 

 

未来がほぼ確定してしまった事を悟り、両手で顔を覆い隠した。

 

 

「……むっ、もうこんな時間か。雑談を楽しみたかったのだがそうは言っていられない様だな」

 

 

ミラの言葉に窓から太陽を確認すれば確かに正午に確認した時よりも沈んでいる。あと二、三時間もすれば夕暮れ時になるだろう。決闘の時間まではまだ時間があるが、異常増殖(スタンピード)に備えてやらなければならないことは山ほどあって時間は足りないくらいだ。

 

 

「タツキ、召喚都市に行くぞ。何か必要な物があれば褒賞金とは別に経費で出すが、どうする?」

 

「犬とお呼びくださいお嬢様」

 

『タツキ……』

 

『サマナー……』

 

『ンンンッ!!清々しくなる程の変わり身ですねぇ!!でも理解は出来ますよ?金は天下の回り物と言いますし、お金は貯めておいて損はありませんからねぇ』

 

 

召喚機の中からリーエルと伯爵が呆れた様子で俺のことを呼んでいるが仕方がない事なのだ。

 

 

基本的にサマナーという職業は出費が激しい。召喚に使う媒体や強化に使う素材に始まり、召喚機や武器のメンテナンスなどで簡単に金なんて消えるからだ。一般的にはサマナーは良く金を稼いでいる様に思われている。実際にサマナーがサマナーとして働く時にはその仕事の危険度や難易度に応じて報酬は跳ね上がる。しかし、報酬の殆どはそう言ったことに消えてしまうので一般的に思われている程に稼げないというのが真実だ。

 

 

これがもしもどこかの組織に所属しているサマナーならばその組織から経費として支給され、報酬を貯めることが出来るのだろうが、俺の様なフリーのサマナーにはそれが無いのでほとんど自転車操業に近い暮らしとなる。だからと言ってフリーのサマナーが少ないという訳では無い。

 

 

組織に所属すれば金銭面では楽になるかもしれないが、失い難い人材と思われるか重要な役職にでも付かない限りは基本的に使い捨てとして扱われる事になる。その上、下される命令に拒否権は存在しないので納得出来ない、やりたく無い様な仕事でもやらなければならなくなり、組織に束縛される事になる。それを嫌ってフリーのサマナーを続けている者もいるのだ。

 

 

「つうか、召喚都市に行けるって事はやっぱりミラもサマナーだったんだな」

 

「やはりということは気づいていたのか?」

 

「感覚的には」

 

 

スマホにインストールしてある〝アナライズ〟のアプリを使えば対象の詳細な情報を知ることが出来る。しかし師匠からはいつでもアプリの〝アナライズ〟が使えるとは限らないから、それ以外の方法で最低でも対象の実力を把握出来るようになれと言われていた。なので臆病者特有の恐怖心で相手の強さを測り、観察眼を磨いて相手がどんな戦い方をするのかを見抜けるように努めた。その結果、ミラはサマナーであるかもしれないと考えたのだ。

 

 

確信が持てたのは召喚都市に行くという発言をした時。召喚都市は名前の通りにサマナーでしか立ち入ることが出来ず、サマナー以外の立ち入りを認めていない。仮にサマナーで無い者が召喚都市に向かったとしても辿り着くことは出来ず、入れたとしても1時間後には路地裏で血の跡だけを残して死ぬ。故にそんな場所に行けるとすれば認められているサマナーしか居ないのだ。

 

 

「召喚都市に使えそうなサマナーがいれば良いのだがな。〝龍の異界〟の方に呼ばれていていないかもしれない」

 

「最低でもレベル70代が10人は欲しいところだな」

 

 

俺が〝アナライズ〟した対象のオークとオーガは60代だったのでそのくらいの質と量は欲しくなる。レベルが60代でも構わないが、その場合は30人はいないと量の差で押しつぶされる事になる。〝龍の異界〟の方に取られて目ぼしい者は残っていないかもしれないが、それでも探す以外の選択肢は無いのだ。

 

 

ミラが剣に手を伸ばし、近くにあったドアにその切っ先を沈める。するとドアは一瞬にしてメルヘンチックな装飾の施されたそれに変わり、ミラがドアを潜ると元のドアに戻ってしまった。

 

 

それに習うようにして召喚機にインストールしてあった扉のアプリを起動させると先程と同じ様にドアがメルヘンチックな装飾の物に変わる。

 

 

そして外には別世界が広がっていた。

 

 

まるで急いで設えた様な滅茶苦茶な造りをした建物と乱雑に並べられた石畳、そして老若男女様々な人々が視界に入る。道端に敷物を敷いて商品を並べて露店を開いている者がいれば、それに興味を持って足を止める者も、興味を持つ事なくそのまま立ち去って行く者もいる。酒でも飲んでいたのか顔を真っ赤にしながら喧嘩をしている者がいれば、酔い潰れた者が路地裏に引きずり込まれそうになっているのも見える。屋敷にいた時は昼間だったのに、空を見れば星空に赤色と青色の二色の月二つが浮かんでいる。

 

 

ここが俺たちの目的地であった召喚都市。外の様な法律が秩序を齎している治安都市では無く、無法と暴力が複雑に絡み合って秩序を齎している混沌都市とでも言うべき街だ。

 

 

ミラの姿を探せばすぐに見つかった。アクセサリーを売っている露店の前で真剣な顔をして商品を品定めしている。

 

 

「なんか良いものはあったのか?」

 

「必要かと聞かれれば回答には困るのだが興味深い物は見つけたぞ」

 

 

そう言いながらミラが手に取ったのは犬と猫の尻尾が模されたアクセサリー。なんだかもうこの時点で嫌な予感しかしなかったが、まだ大丈夫だと自分で自分を励ましながら視線を横にズラせばーーー予想していた通りに尻尾の根元にはビーズが並んでいる。

 

 

「これを穴に挿すと魔力に反応して装着者の思う通りに動くらしいぞ……!!」

 

「そんな良い笑顔して俺に報告しないでくれ……!!」

 

「お、ニイちゃん、彼女さんか?凄えな。〝攻撃半減〟とか〝物理耐性〟とかの付属してあるアクセサリーを無視して真っ先にこれに飛びついてったぞ」

 

 

露天商がニヤつきながら話しかけてくるがそれに反応する余裕は無い。結局ミラは犬と猫の両方の尻尾を購入していた。完全に俺とのセックスで使うつもりだ。

 

 

『なぁ、アイツ処女って言ってたよな?それなのにアナルプラグ買うって……』

 

『サマナーを落とす気満々ですねぇ!!まぁ、状況的にはサマナーはほとんど落ちるしか選択肢が無かったりするんですけど』

 

『男を楽しませる気概は持ち合わせているか、良い女では無いか』

 

「ごめん、ちょっとお腹痛くなってきた」

 

 

ミラからは悪意は感じられず、好意を向けられているのは感じている。だけどそれを馬鹿正直に信じられるわけがない。顔を合わせて数時間程度でここまで好意を向けられているには何かあるに違いない。罠に嵌めようとしている様には見えないが、そんなことでは不信感は無くならない。一体何を考えているのかと考える、そのストレスで胃がキリキリと痛んできた。

 

 

「む、どうしたのだ?腹部を抑えて」

 

「考え過ぎで胃が痛くなっただけだ。すぐに落ち着く」

 

「そうか……済まないな。私のせいでストレスを抱えさせてしまって」

 

「そう思ってるのなら行動に移さないで欲しいんだけど」

 

「それは無理だ!!」

 

「無駄に男らしいなぁオイ……!!」

 

 

でも確かに、簡単に注意されたくらいで改める様な性格はミラらしくないと、たった数時間の付き合いだが考えてしまうのだった。

 

 

 





よくある設定かもしれないけど、サマナー職は基本的にお金こそが最大の敵。触媒やらなんやらで簡単にお金は吹き飛ぶので常に節約を心がけなければ速攻で破産するぞ!!なのでサマナーたちは以下にして最小限の消耗で最大限の効率を上げようか必死になって考えてる。

召喚都市とはサマナーの、サマナーによる、サマナーの為に作られた街。サマナーの助けになる様な物は一通り集まってるし、表では出せない様なブラックな物も並んでる時もある。サマナーには優しいかもしれないけど、サマナー以外には優しくない街。
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