予定では昨日に投稿したかったけど大掃除して、気がついたらガキ使が始まっていたので断念したクソザコ作者です。
それはそうとあけましておめでとう。今年もよろしくね!!
紙巻のタバコを口に咥え、指先に魔法で火を灯してタバコの先に近づける。肺にしっかりと煙を留め、それを溜息と一緒に吐き出した。タバコは吸うのだが体力が落ちたり、匂いが原因でモンスターに見つかりやすくなったりするので頻繁に吸う事はしない。だが、ストレスが溜まってしまうのでその捌け口として今は吸っているのだ。
ミラから貸し与えられた部屋の窓から空を見上げれば夜の帳が降りていて、満点の星空と赤と青の二つの月が優しくも煌々と輝いている。
夜が来た。それは学園の奴との決闘の時刻になったことを意味している。
本音を言えば強めの酒を飲んでそのまま寝たいのだがそうはいかない。今のうちに学園の動きを封じておかなければ、明日の間引きに支障を来たす可能性がある。勝手に自分たちで特攻して行って、オークとオーガの餌になるくらいなら構わない。最悪なのは俺たちが間引きをしている最中にやって来て、滅茶苦茶に引っ掻き回されることだ。今日やって来た程度のレベルの集まりならば直接的な被害は出ないかもしれない。だが、俺たちが学園に気を取られた瞬間にモンスターが一気に攻勢に出てくるかもしれないのだ。可能性の話だとは理解しているのだが、そうなった時のことを考えるだけで頭が痛くなってくる。
タバコがフィルターまで燃え尽きたので灰皿に押し付けることで火を消し、新たに火をつけようとした時に部屋の扉がノックされた。返事をして入ることを許可すると、失礼しますという言葉と共にヒュールさんが入ってくる。
「タツキ様、学園の者たちがお見えになられました。準備の方は宜しいでしょうか?」
「了解」
火がつけられなかったタバコをケースの中に戻し、念の為にコートの中に仕込んでいるナイフの不備がないかどうかを確認する。パッと見たところでは分からないような位置に隠してあるし、隠してある事を悟らせぬような歩き方を自然と行なっているのだがヒュールさんレベルになってしまえば看破されてしまうらしく、感心するような呆れるような目で見られてしまった。
「よくもそこまでの量の刃物を隠しますね」
「俺は根っからの臆病者なものなんでね、最悪を考え過ぎて何もかもが怖いんだよ。絶対に安全だと確信している時なら兎も角、今日初めて会った奴の家とか怖くて怖くて堪らないんだ。失礼な事だってのは自覚してるけどな」
「いえいえ、警戒して然るべきだと思いますよ。タツキ様ほどの強さに至れば、大抵の者は助長して慢心や油断をしてしまうのが普通です。まぁ、警戒しすぎだとは思いますけどね」
要するに警戒している事は感心するが、その警戒が強過ぎる事に呆れているのだろう。ミラが俺の事を婚約者だと言った時から屋敷で働く者たちから向けられていた警戒心は無くなり、敵意を抱かずに好意的に接してくれているのは理解している。
だけど、だからと言って俺が警戒しない理由にはならない。世の中には敵意や悪意を隠して振舞っている連中なんてごまんと居るのだから。俺が警戒を解いた瞬間に後ろから刺されるなんて事もあり得るのだから。
何を言っても無駄だと悟ったのか、ヒュールさんは少しだけ悲しそうな顔をするだけだった。そして彼に案内され、決闘の舞台へと向かう。
数分ほど歩いて辿り着いたのはティーラルド家の保有している訓練場。明るい内ならここで兵士たちが訓練しているのだが、日が落ちた今では俺とヒュールさんに学園の者たち、そして学園の者たちと離れた場所に見届け人を務めるティミスさんと見物に来たであろうミラだけしか姿が見えなかった。
そして姿が見えないだけで誰かが隠れているのを知覚する。
スマホには誰か達の反応は表示されていないのでジャマー系統の魔法でも使って隠れているのだろう。しかし、臆病者気質から来る気配察知能力は師匠から天賦の才だというお墨付きを頂いている俺には分かる。恐らくはミラの部下達が学園の者たちの行動を警戒しているのか、訓練場を囲う様に配置されている。訓練場から離れた場所にもここの事を観察している者たちの気配があったが、手出しをするつもりは無さそうなので放置しておく事にする。
敵である学園の方に行く理由は無いのでティミスさんとミラの方へと向かう。特に気配を消す事もしていないので2人はすぐに俺の存在に気がついた。
「来たか」
「正直いうとすぐに寝たいんだけど」
「その場合、どうなるのか考えたらどうだ?」
「どう考えても死ぬ以外の未来が見えないからこうして来てんだよ……!!」
決闘を無視してこの街から逃げる事は出来なくも無い。しかしそれをした場合、ヒュールさんが言っていた通りにバレル将軍がチェイサーとしてやって来るのだ。そうなればいずれは追いつかれ、拷問でもされてから死ぬのは目に見えている。だから面倒だと思いながらもちゃんとこの場に来ているのだ。
「まぁ、結果さえ出してくれれば私からは言うことは無いさ。タツキが負けるとは思えないがな」
「お前の俺に対する無条件な好感度は一体何なの?何で今日会ったばかりなのにそんなに好意的なんだ?」
記憶の中を探してもミラの姿は見つからない。忘れているという可能性もあるが、ここまで強烈なキャラをしている上にここまで好感度が高い彼女の事を忘れるとは思えない。後は俺は知らないがミラだけが知っている場合くらいか。それにしたって貴族のくせに処女を渡しても良いと言うのは異常なのだが。
「覚えていないのか……いや、そんな余裕が無かっただけなのかもしれんな。兎も角、私はお前の事を知っている。そしてお前を愛している、それだけを分かってくれ」
「お腹痛い」
好感度が高過ぎる理由が分からなくて胃が痛くなって来た。思わずその場に腹部を押さえながらしゃがみ込めば、勝手に召喚機から出て来たリーエルが無言で俺の頭を撫でて慰めてくれる。
「えっとミラ、だっけ?せめて理由くらい話してやったらどうだ?このままだとタツキの胃袋がストレスでボロボロになってしまうんだけど」
「タツキの召喚魔か……別に構わないがゆっくりと話したいんでな、悪いが異界の間引きが終わるまで待ってくれ」
「出来ることなら簡単にでも教えて欲しいんだけどな……ほら、タツキ。そろそろ決闘だから立ち直れよ」
「うん……」
リーエルに励まされながら、胃の痛みを堪えて立ち上がる。訓練場の中央にはミラにちょっかいをかけていた学園の男が腕を組みながら立っていたのだが、その顔は不機嫌そうに歪められていた。
立ち上がるときに〝アナライズ〟で強さを調べると予想していた通りの強さだった事に安堵の息を吐く。もしもこれで俺たち以上の強さだったら切り札を出すしか無かったからだ。
そして俺よりも弱いという時点で勝利を確信する。レベルが絶対と思われ、実際にその通りのこの世界なのだが、それは正面から同数で無策に戦った場合に限る。
自分よりも相手の方がレベルが高いと理解し、性能差を埋める様な装備を整え、押し潰せるだけの物量を用意し、相手に何もさせずに封殺出来る作戦を揃えて戦えばぶっちゃけた話、20くらいのレベル差なら倒すことが出来る。当然格上と戦う経験を積んでいなければならないのが最低条件なのだが、熟練のサマナーならば自然とそういう経験を積んでいるので問題にならない。
もちろん、相手がサマナーか人間並みの知性を持っていて思考出来るのならそういう事はさせずに蹂躙される可能性があるのだが、それでも勝てる可能性があるというのは大きい。
それを踏まえて相手を見てみよう。
こちらの方がレベルが高いとは理解しておらず、
性能差を埋められるような装備を整えておらず、
押し潰せるだけの物量を用意しておらず、
俺に何もさせないで封殺出来る様な装備を揃えていない。
それら全てがこちらを油断させるための演技であるという可能性もあるが、あの根拠がないくせに自信満々な顔を浮かべている辺り演技には見えない。
つまりーーー格下、俺よりも弱い雑魚だ。
そう考えただけでさっきまでゼロだったやる気が少しずつ湧き上がってくる。死ぬかもしれない同格、格上との戦いなんて真っ平御免なのだが、油断や慢心がない限りは負ける事のない格下との戦いは大好きだ。
所詮、負け犬根性の臆病者である俺に出来ることなんて、弱い者イジメくらいしか無いのだから。
「それでは、2人とも準備はいいかしら?」
ティミスさんが確認をとり、タイチはとっくに出来ていると口にして俺は頷きで返す。
「それでは、これより決闘を始めます。2人とも互いにサマナーであるので召喚魔の使用は認められています」
ティミスさんが召喚魔の使用を認めると言っているが、決闘においてサマナーは召喚魔を先出ししておく事は認められていない。あくまで用意ドンの合図をしてから召喚魔を召喚しなくてはいけない。相手もそれを分かっているのか、召喚機と思われる携帯端末をポケットから取り出すだけで召喚しようとしていない。
「貴様……俺のことを舐めてるのか!?」
対する俺はコートのポケットに手を突っ込んだまま。タイチの様に召喚機を取り出す事も。武器を構える事もしていない。極々自然体を装いながら立っているだけだ。
「始まるまでは俺の好きにして構わないだろ?お前に文句を言われる筋合いはねぇよ」
「同郷のよしみとして言ってやる。傲慢は足元を掬われるぞ」
「そのまま打ち返してやる。それに、これは傲慢なんかじゃなくて余裕って言うんだよ」
同格の相手が言った言葉ならば重みがあるし、余裕なんて持つ事は出来ない。しかしレベルが50しかないのに格上との戦いに備えておらず、自分の事を棚に上げている奴との戦いならばこれでいいのだ。
俺の態度が余程気に入らないのかタイチは顔を真っ赤にしながら召喚機を持つ手に力を込めている。それでも理性は残っているのか、召喚機は砕けていない。これくらい煽っておけば大丈夫だろう。
「それではーーー始め!!」
ティミスさんが高く掲げた手を振り下ろし、決闘の開始を宣言する。タイチは召喚魔を喚び出す為に召喚機に手を伸ばしながらも俺への視線は外していない。一応サマナーの最大の隙である召喚の際の警戒は怠ってはいない様だ。
それでも、関係無いのだが。
ティミスさんの開始の宣言と同時に銃声が響き渡り、タイチが額に穴を開けて仰け反りながら倒れる。俺の手の中には銃口から煙を開ける銃が握られていた。
臆病者で負け犬根性だと自覚している俺が戦いの場で無警戒にポケットに手を突っ込んでいるだけなはずがない。コートのポケットには前もって細工を施して穴が開けられていて、コートの下に吊るしてある銃に手が届く様になっているのだ。
完全な不意打ち仕様で正々堂々を好き好んでいる奴からしてみれば文句を言われそうなのだが、俺からすれば馬鹿正直に真正面から戦う奴の方が気が知れない。隙を突いて何が悪い、不意を打って何が悪い。死にたく無い、痛いのは嫌だ。だからこそ先手で必殺を狙う。それに用意ドンはすでにされているのだから、これに反応出来ない方が悪いのだ。
ポケットから手を出して普通に銃を握り直しながら背中から地面に倒れるタイチの姿を見て、これで済んでくれれば弾の節約になるのだがと希望的観測を抱くのだが残念ながらそうはいかなかった。
何かが砕ける様な音が響き渡り、額に開いていた穴が一瞬にして消え失せて無傷の額に変わる。
それを目撃してもあぁやっぱり、と納得するだけで驚く事はしない。どうせ蘇生の概念の込められたアクセサリーでも持っていて、所有者の死に反応して発動したのだろう。この世界では時間と手間、それと資金さえ惜しまなければRPG御用達の蘇生系のアイテムやアクセサリーは手に入る。しかし、そのどれもが身体の何割かが残っている事などの蘇生の条件が設定されているので万能であるとは言えないのだが、死んでも大丈夫だという安心感が手に入る。高価で使い捨てではあるが上位のサマナーからすれば必需品である。
死んで、蘇生した。つまりまだ生きている。だと言うのにタイチは起き上がろうとせず、泡を吹いて痙攣しているだけだ。
「どうだ、頭が痺れる様だろ?……ま、実際に脳みそに麻痺弾ぶち込んだだけだけどな」
タイチが蘇生系のアイテムやアクセサリーを所持している可能性は決闘をする事になった瞬間から考えていて、ただ殺すだけでは駄目だと思っていた。なので、最初に麻痺弾を撃った。蘇生系のアイテムやアクセサリーの欠点として、蘇生したとしても状態異常までは完治しないという物がある。麻痺弾を撃って殺されたとしてもただ蘇生するだけで、麻痺弾の効果は残り続けている。
状態異常の耐性が高くてレジストされる可能性もあったので用意した麻痺弾の効果は通常の10倍。状態異常への無効耐性でも無ければ完全に防ぎきれないという極悪なシロモノだ。掠っても効果のあるそれを直接脳みそに撃ち込まれたとなればとんでもない事になるだろう。
実際にタイチは泡を吹いて白目を剥きながら痙攣し、さらに失禁と脱糞までしていた。
それだけには止まらずに射精でも決めているのか糞尿の臭いに混じっていか臭さまで鼻に付く。近寄りたくは無いし、出来るのならこのまま放置したかったのだが決闘は相手が降参するか、相手を
銃に装填されている弾が炸裂弾であることを確認してから、頭めがけて引き金を引いた。着弾と同時に弾ける炸裂弾によりタイチの頭部が石榴の様に弾け飛び、再び砕ける様な音と共に無傷の姿に戻る。
そして再び引き金を引く。
タイチが生きていて、降参を宣言出来ないので決闘を終わらせるためには彼を死ぬまで殺し続け無ければならない。人を殺し続ける事によって発生する苦痛なんて感じない。
無感動に、無慈悲に引き金を引き続け、弾が無くなったら新たな弾を装填して引き金を引く。格下とはいえ学園という組織に所属しているだけの事はあり、何度殺しても蘇生する。だが、麻痺を決めていて何も出来ない以上、無抵抗に殺され続ける事しか出来ないのだが。
そうやって3度目のリロードを終わらせ、再び殺し続ける作業を始めようとした時、
「ーーーあ〜ちょっとちょっと、ストップしてもらっても良いかな?」
そんな気の抜けた声が制止を求めてきた。
決闘だけど正々堂々戦わなければいけないなんて決まりは無いんだよ!!どんな卑劣な手だろうが用意ドンの後では全て合法!!反応出来ない奴が悪い!!
RPG御用達の蘇生系のアイテムやらアクセサリーやらが存在するんだけど、作ろうとしたらメッチャ金やら時間やら掛かるので基本的にはダンジョン的なところでのドロップ。死体が何割か残っていないといけないとか、状態異常までは回復しないとか欠点はあるけど、五体満足で蘇生出来るのだからそれだけで充分なんだよなぁ。