「……うっ……あぁ……ぅあ、ん……」
窓から差し込む、昼下がりの柔らかな陽の光。
白く静謐な光に満たされた、町外れの落ち着いた宿屋の一室。
その穏やかな空間には今、微かな水音と共に、微かな喘ぎが木霊していた。
布擦れと、木の揺り椅子が軋む音。
そして酷く切迫した、熱く震える吐息。
きしり、とまたひとつ椅子が軋むと、途端に息を呑む音と、小さな、しかし酷く切羽詰まった様な嬌声が上がる。
「ひ、ぃ……! ひぁ、あぁう……!」
小さな小さな啜り泣きと、堪えきれないといった体で零れる喘ぎ。
澄んだ鈴の音の様でありながら、溢れ出る様な艶めかしさを湛えたそれ。
その声の主のとなる少女の姿は、ゆっくりと揺れる椅子の上にあった。
苦し気な呼吸を小刻みに繰り返しながら、椅子が僅かに揺れる度に小さな喘ぎを漏らす。
「あっ……っう、ん……んは……」
時折ぶるりと震える身体は、常日頃から彼女が纏っている若草を思わせる翡翠色の衣服、言わずと知れたアマゾネスの戦装束に覆われている。
日頃と異なる点とすれば、秋の麦穂の如く黄金色に輝く金髪を引き立てる羽根飾り付きの兜や、いつもは額に据えられている大振りな翡翠の結晶が、取り外されて近くのテーブル上に置かれている事。
同じく新緑色の肩当てや革の手甲も、今は部屋の一角に纏めて置かれている事くらいだろうか。
付け加えるならば、革靴も寝具の側に揃えて並べられ、今や彼女は戦いに必須となる武具の全てを外していた。
防具を外し、ただ翡翠色のアマゾネスの装束のみを纏った少女。
だが、彼女がその身から離したものは、それだけではなかった。
「んぅ……あ、あぁ……あぁぁん……」
甘い声を漏らす少女。
透き通った白い肌も剥き出しのまま、時折、何かを拒み堪えんするかの様に、互いを擦り合わせんばかりに寄せられもどかしげに揺らめく両膝。
それらは、びくり、と跳ねた後に硬直、そして痙攣する時もある。
その少し上、太股の半ばより更に上の辺り、花弁の様に広がった戦装束の下、繊細な意匠を施された桃色のレースのスカートの合間から、別の薄い桃色の生地が覗いていた。
本来ならば、脚の付け根に当たる肌に密着し、少女の秘めやかな部位を覆っている筈の布。
少女の肌着、秘所を隠す為のそれ。
しかし今は、常の位置から僅かばかり摺り下げられ、秘所を覆うという意味では本来の役目を果たしてはいなかった。
ただ、他者からの視線を遮るという点では、戦装束とスカートとを併せ、辛うじて意味を為してはいる。
尤も、今この場で彼女の秘所を覗き込もうとする可能性のある者など、唯1人しか居ないのだが。
「くぁっ!? っ、ぁあぅ……ッ!」
「……辛い?」
椅子が揺れ、その拍子に甲高い悲鳴を上げる少女。
固く閉ざされた眦の縁に、見る見る内に涙の粒が生じる。
これまでにも散々に溢れてきた熱いそれは、先に零れ落ちた滴の後を追って、鼻の縁や頬へと滑り落ちてゆく。
その背後から掛けられる、青年のものらしき幾分低い声。
浅い呼吸を小刻みに繰り返し、その度に衣服に覆われたままの慎ましやかな胸を震えさせながら、少女は気怠げに首を振る。
極力、身体に振動を伝えないよう、左右へと僅かに。
弱々しくもはっきりとした否定に、安堵したかの様に小さな吐息が少女の首元に掛かる。
その感覚に、またもぶるりと震える少女の身体。
「あ……あっ……!」
「っ……ごめん」
少女の反応に、此方も切羽詰まった様な声色で紡がれる謝罪の言葉。
少女の反応は決して純粋な苦痛から来るものではなかったが、明らかに別種の感覚でありながら、時には行き過ぎて苦痛に近しいものを伴う事すらあった。
それを察していたからこそ、背後の青年は謝罪の言葉を口にしたのだろう。
だが、その事実は余計に、少女の胸の内を焦がす羞恥の炎を更に大きく燃え上がらせた。
「い、いやっ……い、や……嫌あっ」
「くっ……!」
「あ、あ、あ……だ、め……だめ、だめぇっ!?」
耐え切れなくなり、知らず大きく首を振ってしまう少女。
陽の光を受けて輝く汗と、涙の粒が飛ぶ。
しっとりと濡れた身体が捩れ、反射的に折り曲げた膝を交差させるようにして擦り合わせてしまう。
途端に、その身体へと奔った衝撃は彼女の全身を駆け回り、今この瞬間に最も過敏となっている箇所へと集約した。
僅かに摺り下げられた肌着の奥、戦装束の端とレースに覆い隠された密やかな園。
白く艶やかですらりとした脚の付け根、瑞々しく張りのある太腿に挟まれた薄闇の奥。
少女の下で、揺り椅子に腰掛けたまま彼女と『繋がる』青年、その徴に奥底まで貫かれたままの蜜壺へと。
「いあっ、あああぁっ!?」
「ぐっ……!」
そう、少女はずっと、それこそ2時間程も前から、その未だ少女と女性の境を抜け切らぬ発育途上の身体へと、青年の剛直を受け入れていた。
兜も、羽根飾りも、手甲も、靴も。
日頃身に着けている殆どを外し、翡翠色のアマゾネスの戦装束のみを残して、彼女はその身を青年へと預けた。
揺り椅子に腰掛け、同じく普段着のまま剛直だけを露わにした青年の上に、自らも服を着たままショーツを太腿の半ばより上ほどまで摺り下げ―――あまりの羞恥に、完全に脱ぎ去る事はできなかった―――自らを消し去ってしまいたい程の羞恥と、認め難い興奮と期待とが綯い交ぜになった感情が燃え上がる中、割り入ってくる青年の質量と熱、余りに大きく、熱く、固いそれに苦悶しながらも、窮屈に過ぎる自らの肉壺へと、どうにか彼の分身を迎え入れたのだ。
身に纏う全てを脱ぐ事はしない。
防具を外し、屋内ならば靴も脱ぎ、しかし服は着たまま、繋がる。
これが、少女と青年が身体を重ねる際の、いつもの光景だった。
立ったままなら背後から青年が覆い被さり、ベッドなら仰向けになった少女を下にして正面から、或いはうつ伏せになった彼女の背後から。
椅子ならば形にもよるが、腰掛けた青年の上に少女が対面で跨がるか、或いは背から全身を預ける形で座り、下から貫かれる。
回数こそ漸く両手の指に達するかという頃、どの体位も1度か2度経験した程度ながら、それでも幾度か身体を重ねた2人であるにも拘わらず、彼等は互いの秘所以外は、無用に肌を晒す事を意図して避けていた。
少女は、青年の外に男を知らない。
彼女にとって色艶事の全ては、青年が初めての相手だった。
経験では絶対に敵わないと理解しているが、それでも青年が自身の欲望を徹底的に押し込めて、此方を気遣ってくれている事は明確に理解できる。
初めて身体を重ねた夜から、幾度目かの交ぐわいとなるこの瞬間に至るまで、青年が自らの欲望のみでもって少女を翻弄した事は一度もない。
彼は常に少女の身体への負担に配慮し、自らが快楽を貪る事は決してしなかった。
ゆっくりと、時間を掛けて少女の緊張を解し、これまたゆっくりとその身体に自らの怒張を割り入らせる。
勢い任せに突き入れたり、遮二無二蜜壷の内を荒らし回ったりはしない。
青年の巨大な陰茎では、どうあっても華奢な少女の身体に負担を掛ける事は避けられないが、それでも殊更ゆっくりと、掛け替えのない宝物を慈しむかの様に、細心の注意を払いつつ彼女の内へと潜り込んでくるのだ。
だが、幾ら慈愛に満ちた行為とはいえ、少女がそれに相応しく平静でいられるかといえば、全くそんな事はなかった。
「ぁうっ、あうぅぅっ!……ぅううぅぅぅんっ!? くふぅぅぅぅ……っ!」
今回も、これまでも。
青年を受け入れる際はいつだって、少女は身も心も翻弄され尽くしてきた。
火炎の谷の底、赤く煮え滾る溶岩の様に熱く、それでいて巌の様に固く、少女の細い腕よりも逞しいのではないかと思う程に太く、大きく、長い。
そんな、凶悪という表現でも足りない代物がおぞましく脈動しながら、少女の未成熟な身体、その中でも取り分け窮屈で異物の侵入を強固に拒む花弁の中へと、必死に押し返そうとする肉壁をその切っ先で無理矢理押し広げ、抉じ開けて挿入ってくるのだ。
青年がどれほど優しく彼女の花を開こうとも、少女の身体に掛かる負荷は想像を絶するものだった。
青年に貫かれる際は毎回、少女は悲鳴と共に身を捩って苦しみ藻掻き、止め処なく涙を零す。
紅潮した全身から汗を滲ませ子犬の様に震え、堪え切れぬ衝撃に仰け反り、青年や木や壁、或いはベッドのシーツに縋っては、手に掴める何かを必死に握り締めてどうにか声を押し殺そうと奮闘し、それでも堪え切れずに苦悶の声を漏らし、啜り泣くのだ。
可憐な花を蹂躙する、焼けた鉄の心棒。
鉄がどれだけ花を慈しもうと、散らしてしまう事に変わりはない。
故に、行為の始まりから二人が完全に繋がるまでの長い時間、その場には少女の抑え込もうとして果たせなかった悲鳴と、苦悶と共に啜り泣く声が響き続ける事となる。
尤も、少女自身も気付いてはいない、否、気付かない振りをしている事だが。
幾度目かのまぐわいから、その悲鳴に含まれるものは、決して苦痛ばかりではなくなっていた。
彼女にとっては認め難く、たとえ気付いたとしても必死に否定するであろう事が明白な感覚。
押し入ってくる巨大な脈動する異物、その焼ける様な熱と巌の様な質感、擦れ合う粘膜と粘膜、はしたない場所を割り開かれ貫かれる感覚に対する、あまりにも淫らで受け入れ難いそれ。
少女は悲鳴を上げる事で、必死に自らへと言い聞かせていた。
(違う……わ、わたし……私ぃ……!)
押し入ってくる彼の感覚に、悦びを覚えてなんかいない。
彼の分身に淫らな部位を、自分の身体を割り開かれる事を待ち焦がれてなんかいない。
自分の奥深くまで彼が押し入ってくる事、身体の中が彼に満たされる事、破裂しそうな程に窮屈な自分の中に彼を受け入れ、深く深く貫かれている事に、歓喜してなんかいない。
奥底で荒れ狂う彼の存在感に、彼の熱に支配される事に、安堵なんかしていない。
彼の熱が自分の中から去って行く事に、寂しさなんか覚えていない。
彼の一部が去った後、ぽっかりと空いた淫らな穴に流れ込んでくる空気の感覚に、胸が締め付けられたりなんかしない。
腹が小さく膨れる程に奥底へと吐き出された大量の熱、その圧迫感を堪え切れず外へと溢れさせてしまい、酷い喪失感に襲われたりなんかしていない。
(嫌ぁ……っ!)
『感じて』なんかいない。
『心地良い』なんて思っていない。
「『リース』」
「っ! っあ、ぅあああああぁんッッ!?」
ぞくり、と震える少女の背。
名を呼ばれた、唯それだけの事で、鼓膜から貫かれている箇所まで、甘く堪え難い痺れが電流となって背筋を奔る。
青年を締め付ける肉壁は、瞬間的に更に密度を増し、不埒な侵入者を容赦なく締め付けた。
背後の青年から、くぐもった声が漏れる。
びくり、と跳ねる『リース』と呼ばれた―――風の王国ローラント、その王女にしてアマゾネス軍団を統べる―――少女の細い身体。
その動きが伝わり、またしても椅子がきしりと揺れる。
これまでの中でも、最も大きな揺れ。
青年の身体を通して伝わるそれは、即ち彼の上に腰掛けた少女、リースの肉壺の奥深くまで貫く剛直を通じ、彼女の花弁の最奥を容赦なく抉った。
「ッ―――!?」
瞬間、リースは固く閉ざされていた目を限界まで見開き、その蒼い瞳を露わとする。
宙へと投げ出された視線は何物をも捉えておらず、見開かれた双眸の端からは透明な雫が次から次へと溢れ、止め処なく頬を伝う。
溢れ出しそうな許容し難い自らの声、それを堪える為に歯を食い縛っていた口は予想外の衝撃に呆けた様に開かれ、その瑞々しい薄桃色の唇は小刻みに震えており、同じく震える熱い吐息を零していた。
ほんの僅かに下顎から浮かび上がった小さな舌が、唇と同じく小刻みに痙攣している。
椅子の手摺を掴み、木が軋む程に強く其処を握り締めて震える手。
青年に預けられた背は腰を起点に大きく仰け反り、リースの後頭部は彼の喉元近い胸板へと押し付けられ、彼女の身体が痙攣する度に鍛え抜かれた筋肉をぐりぐりと圧迫していた。
すらりとした両脚はそれぞれが異なる角度で内股に折り曲げられ、激しく痙攣しながらも膝と膝、太腿と太腿をもどかしげに擦り合わせている。
そして、その姿勢が故に彼女の重みの殆どを支える事となった腰、其処に位置する肉壺は、リース自身の重み―――羽根の様に軽いとはいえ、その身体をより沈み込ませるには十分な―――に任せて、青年の剛直をより奥へ、より深くへと飲み込んでゆく。
その衝撃がリースの身体を兎の様に跳ねさせ、その動きが椅子を揺らしてしまい剛直がより大きく深く肉壺を抉り、結果として花弁の更に奥までを彼に許してしまう。
その衝撃がまた身体を跳ねさせ―――
「ひっ……ぃ、あ……あ、ぁ、あ……ッ!」
「く、うっ……!」
「ッ!? あっ、あっ、あっ……ぁああああああああッッ!?」
「っ、リースッ!」
「っあ―――」
繰り返される淫らな責め苦の果て、リースの意志とは裏腹に、彼女の花弁が急激に収縮する。
それまででさえ剛直を噛み千切らんばかりの圧であったというのに、それを上回る力で青年を締め付けたのだ。
その瞬間に襲い掛かってきた―――彼女自身は必死に否定しようとするが―――暴力的な快感に、リースの意識は白く塗り潰された。
だが快楽は、その程度で彼女を解放してはくれない。
強烈な締め付けに耐え切れなかった青年もまた、リースが達すると同時に限界を迎えたのだ。
自らの意思を離れ、勝手に締め付けを強める肉壁の中、激しく脈動する青年の分身。
「あっ……あ、あ……?」
光の中に融け掛けた意識が、自らの内より生々しく伝わる、異物が脈動する感覚によって強制的に呼び覚まされる。
途端、覚醒した意識に過ぎる、覚えのある感覚。
それによって齎される衝撃を思い起こし、彼女の表情は見る見る内に蒼白となってゆく。
其処にあるのは戦慄と、僅かな期待。
そしてリースの中、深く深く、奥底まで貫かれた花弁の先の、更に奥。
其処で、剛直そのものよりもなお熱い何かが爆発した。
「ぐ……ッ!」
「ぁ……ッ―――!?」
奥底に叩き付けられる、溶岩の様に熱い奔流。
その勢いは衰えるどころか、寧ろ二度、三度と続くそれは最初の爆発にも増して強く、激しくなってゆく。
腹の内を満たし、破裂させんばかりの勢いに、リースは声にならない声で絶叫した。
だが、灼熱の奔流は止まらない。
「―――っ!? ―――!」
止まらない。
「―――! ―――ッ!」
止まらない。
「―――! ―――ッ!? ―――ッッ!」
それは、僅か十数秒の間であったかもしれない。
だが、リースにとっては5分、或いは10分にも思われる程に長い時間だった。
脳裏に過ぎる、意味を為さない言葉の群れ。
熱い
灼ける 深い
駄目 いっぱい 溢れる
弾ける もう駄目 止めて 許して
温かい 熱い 嬉しい 止めないで 幸せ
終わり イヤ 行かないで 此処にいて 中にいて
もっとして
「ホー……ァィ……ッ」
―――離さないで
激しい脈動と奔流が、漸く収まった頃。
力の限りに仰け反っていたリースの身体はぐったりと脱力し、再び全身を青年へと預けていた。
露わとなっている肌も、衣服を纏っている部分も、滲む汗にぐっしょりと濡れてしまっている。
彼女の全身から放たれ部屋に立ち篭める、花の様に可憐でありながら淫らな香り。
先程まで必死に縮こめられていた両脚は、今や力なく投げ出され、青年の両脚を軽く挟む様にして小さく痙攣を繰り返していた。
腕は手摺を掴む力さえ残されておらず、青年の身体に沿う様にしてだらりと垂れ下がっている。
小刻みに乱れた呼吸は時折引き付けを起こし、それに合わせて上下するのは衣服に覆われたままの控えめな乳房。
頭は首の力が抜け、青年の肩口へと凭れ掛かる様にして横を向いている。
放心し開かれたままの口からは、顎へと伝う一筋の涎。
未だ涙を零し続ける蒼い瞳は酷く虚ろで、力ない視線は唯々その先の窓の外を見つめるばかり。
そうして、あらゆる力を使い果たしたリース、そのアマゾネスの衣装に覆われた下腹部は、心なしか行為の前よりも膨らんでいる様に見える。
それが気の所為でない事を裏付けるかの様に、未だ青年を飲み込んだままの奥底から、ごぽり、と生々しく響く、淫らな音と振動。
「……ぁ……ぅ……」
「リース……リース……ッ」
放心したままの彼女の名を呼びながら、青年が彼女の身体を背後から優しく、しかし何処かしら堪えきれないといった体で抱き締める。
抱擁と、それによってまた体内を掻き乱され抉られる感覚に襲われるリースだが、しかしそれに大きく反応するだけの力など最早なかった。
一度だけ僅かにびくりと、後は小さく震えるのが精一杯である。
ただ、ひとつだけ変わった事があった。
「リース……ごめん、辛かったよな」
「ぅ……」
「ごめん、ごめんな」
ずっと涙を零し続けていた目は、未だその透き通った奔流を止めてはいなかった。
だが、その涙の理由は、先程までの行為によって齎らされた淫らな衝撃、それによるものからは大きく変遷していたのだ。
今のリースが零す涙は、ただ苦悶と羞恥と、淫らで甘い感覚に翻弄されたが故に溢れるものではない。
彼女が涙を流すのは、偏に『哀しみ』によるものだ。
「こんな事……望んじゃいないだろうに。ごめん、ごめんリース……ごめん」
(違うのに)
何故か、自らに言い聞かせるかの様に、謝罪の言葉を繰り返す青年。
それに対し答える事すら儘ならず、たとえ口が利けてもそれを伝える勇気を持たない少女は、心の内で青年の言葉を否定する。
(望んでいないなんて……そんな事、ある筈がないのに)
青年に淫穴を貫かれたまま、哀しみの涙を零し続けるリース。
その力なく投げ出されたままの脚、太腿と太腿の間の奥。
傍らのサイドテーブルに置かれた金属製のトレイ、その隣に折り畳まれて積まれた、数枚の上質な厚手のタオル、その一枚を手に取った青年の腕が、そっと股間へと差し込まれた。
僅かに摺り下げられたショーツと、花弁の様に広がった衣装とレースのスカート。
その隙間へと、薄い桃色のタオルが差し入れられる。
そして、タオルが塗れた陰部へと触れた瞬間、またもリースの身体はびくりと跳ね上がった。
「あ……ぃ、あ……ぁぅ……」
「楽にして、リース……」
そっと、タオルの上から押さえる様に軽く力を加え、リースの陰部へと押し付ける青年。
いつの間にか、汗とは別の体液によってぐっしょりと塗れていた其処。
柔らかく乾いたタオルの生地が、幾分か粘つく透明のそれを吸い取ってゆく。
敏感な箇所に生地が軽く触れるだけで、リースの身体には電流にも似た衝撃が奔るが、今は叫ぶ事も身を捩る事もできない。
唯々、青年が自分の淫らではしたない蜜壺、其処から溢れ出したいやらしい体液を拭うに身を任せる事しかできなかった。
が、タオルの生地が小さなルビー色の淫核、微かな刺激の連続に却って敏感となってしまっていた其処へと幾度も触れる内、抑え切れない衝動がリースの内に込み上げてくる。
(そ、そんな、また……い、嫌っ……嫌ぁっ)
「……はっ、はっ、はっ……!」
「……リース?」
突然、またも呼吸を荒くし、力の入らない身体を必死に捩ろうとするリースに、怪訝な声を漏らす青年。
しかし、すぐにその理由に思い至ったか、片腕はリースを優しく抱き締めつつ、陰部へとタオルを押し当てる手に力を込める。
そして穏やかな声で、彼女の耳元に告げた。
「大丈夫だよ、リース。分かってる、ちゃんと分かってるから」
「あ……あ……!」
「ただの生理現象だよ。君はふしだらなんかじゃない、仕方のない事なんだ……」
「ぃ……ゃぁ……」
少女の身体が、ぶるぶると震え出す。
駄々をこねる子供の様に、力の入らない首をどうにか動かして、いやいやと頭を振るリース。
哀しみからのものだけでなく、堪え難い羞恥からの涙を零しながら、彼女は言う事を聞かぬ身体を必死に動かして、身体の内より溢れようとするものを堪えるべく脚を閉じようとする。
だが無情にも、力の入らない脚は彼女の望み通りに動いてはくれない。
僅かに膝が内股に寄った位で、下腹部の内に高まる圧を押し留めるには到底至らなかった。
そして―――
「あ、あ……あぁぁ……!」
諦観と絶望が滲んだ、震える悲嘆の声。
それと同時、温かいものがリースの股間に広がりゆく。
受け入れたままの剛直と熱の奔流からの圧迫に弾けそうな淫穴とは裏腹に、徐々に広がりゆく下腹部の解放感。
陰部に優しく押し当てられた柔らかいタオルが、放出される熱い液体を吸って徐々に湿ってゆく。
その感覚に、リースは羞恥と自身の腑甲斐なさに、小さく嗚咽を漏らす。
「ふ……うぅ……」
また、堪えられなかった。
こうならないよう、此処に来る前に一度は済ませてきたというのに。
その為か量こそ多くはないが、少ないからといってそれが慰めになる訳ではない。
多い少ないではなく『想い人』の前で、しかも当のその人が自ずから秘所に手を添えているという状況であるにも拘わらず、堪えきれずに粗相をしてしまった。
彼に見られた事、それ自体は初めてではないとはいえ、消えてしまいたい程に恥ずかしく、惨めである事に変わりはない。
「うっ……あっ……ぁ……」
もはや時折、僅かに痙攣するだけの身体。
自らの意思で放出を止める力さえ無く、リースは小水を零し続ける。
やがて、湿りゆくタオルから雫が垂れる前に止まりはしたものの、それでも厚手のそれはぐっしょりと濡れていた。
ゆっくりと、タオルを掴んだ手が股間から引き抜かれ、僅かな湯気を上げる濡れたそれがそっとトレイに置かれる。
そして、別のタオルを手にした腕が、再び脱ぎ掛けのショーツと衣服とに隠された股座の奥へと差し込まれた。
全てを出し尽くしたリースの、様々なもので淫らに濡れた股座を、優しく労る様に拭う手つき。
今度こそ何ら反応を返せなくなったリースの腹の奥で、また、ごぽり、と音がした。
「……頑張ったね、リース」
返事はない。
暫しの沈黙の後、青年は続ける。
「後の事は何も心配しなくていい。ケヴィンとシャルロットは今夜の祭りで遅くまで戻ってこないし、あの2人も……今日は、戻ってこないだろうし」
その言葉にも、リースは何ら反応を示さない。
段々と落ち着いてきた呼吸音が時折、不規則に乱れるだけだ。
「リース……」
幾度目かの彼女の名を呼ぶ声は、悔恨と悲痛に満ちていた。
それを耳にしながら、リースは霞かかった様に不透明な意識の中で、ぼんやりと思う。
(……どうして、こうなってしまったんでしょう)
そんな事を考えながら、彼女の心は軋みを上げる。
それは王女として、アマゾネス軍団を統べる者として、長年に亘って彼女の内に抑え込まれていた、唯の少女としてのリースの慟哭だった。
(これで、また終わり……そう、それだけ。それ以上なんて、望む余地さえ無いのに)
この後にする事は決まっている。
繋がったままの身体、其処から彼が去ってゆく際の衝撃にまた翻弄され、そして襲い来る堪え難い喪失感に苛まれながら、彼が去った場所に『アレ』を受け入れるのだ。
その後もう一度、彼自身によって『アレ』を奥深くまで押し込まれ、そして汗と彼の痕跡を湯浴みで流し、ベッドに戻って眠れぬ夜を過ごす。
一月ほど前から、数日於きに繰り返している事だ。
仕方のない事と理解してはいるのだが、この行為の意義を思い起こすと、去来する空虚さを抑えきれない。
(……これが、本当の『まぐわい』なら良かったのに)
リースの瞳から、また一粒の雫が零れ落ちる。
それは、彼女の股間を弄る彼の腕、砂漠の民特有の浅黒い肌へと落ちて跳ねた。
未だリースと深く繋がったままの彼、その手は彼女の蜜壺から溢れ出す淫液を優しく拭き続ける。
僅かに開いた大陰唇、その奥に覗く可憐な膣口。
時折、呼吸するかの様に『開く』其処から溢れ出る愛液と、尿道口から飛び出す飛沫を。
つまり―――
(こんな……こんな歪な形でなんて……)
―――リースの純潔は、未だ何者の侵入をも許してはいなかった。
「泣かないでくれ、リース……ごめん、本当にごめん」
(違うんです、違うの……本当に、謝らなければならないのは―――)
涙を零し続けるリースに、自らがその原因だと思い詰めているのか、苦しげに顔を伏せる青年。
リースを貫く彼の―――どちらかといえば小柄な彼女が受け入れるには、あまりにも太く、長く、固い―――陰茎は、未だ彼女の内にある。
だがそれは、本来それが収まるべき場所には、影も形もなかった。
純潔を保ったままの蜜壺、小さく可憐な膣口は、愛液を噴き出す際を除けば、僅かに開いた大陰唇と小陰唇の奥で、固く閉ざされたままだ。
歪に反り返った巨大なそれを、根本近くまで飲み込んでいるのは―――
(―――こんな、不浄の場所でしか貴方を受け入れられない、淫らな私なのに)
―――彼女の『菊座』だった。
(……最低だ、私)
普段であれば、誰も受け入れた事のない膣口にも負けず劣らず固く閉ざされている、同じく何者の侵入をも許した事のない、染み一つ無い小さな桜色の花弁。
本来、排泄の為に存在し、外部から異物を受け入れるようにはできていない、可憐な穴。
其処は今や、三又槍を自らの手足の様に振るうとは到底思えない程に細い―――それでも、彼女自身が受け入れる対象の比喩としては、あまりに太い―――腕ほどもある青年の陰茎を、その奥底の壁を突き上げられる程にまで飲み込んでいた。
限界を超えて広げられた菊座はあまりに痛々しく、引き攣って赤く火照った周囲の表皮は、今にも張り裂けんばかりだ。
ごく僅かな抽送の際に、きつく締め上げる穴の縁で肉棒からこそげ落ちたのだろう。
潤滑剤として用いたごく少量のポトの油と、抽送に合わせて引き摺り出された甘い香りの腸液、それらが入り交じった滑りが、菊門だけでなくリースの臀部までをも濡らしている。
しかし、青年が注ぎ込んだ大量の精は、その一滴たりとも零れ出してはいない。
青年の陰茎が大き過ぎる事に加え、リース自身の意図しないきつい締め付けが、腹が膨れる程に注ぎ込まれた大量の精を、直腸の更に奥底へと封じ込めているのだ。
それはリース自身に強烈な圧迫感と苦痛、収まる事のない排泄欲求を齎すものであったが、しかしこれ以上に拡がる余地のない菊門と直腸、彼女の意図を離れた身体は、青年の痕跡を一滴たりとも零すものかと、より彼への拘束を強めていた。
その事自体が、彼が離れる際の苦痛と喪失感を、より強めてしまうと知りながら。
(私の所為なのに……貴方には、何の咎も無いのに)
自らの奥底に広がる、溶けた鉛の様に熱く重い、大量の精。
身体を内より灼かれる様な灼熱感、臓腑の全てが下へと引っ張られているかの様な不快感。
今すぐにでも体外に出してしまいたい、恥も外聞もなく排泄してしまいたい、この苦しみから一分一秒でも早く解放されたい。
そう思う程に身体は苦痛を訴えてくるというのに、リースの心はそれを望んでいない。
寧ろ心の何処かでは、この熱さと重々しさがいつまでも消えなければ良いのにと、そんな馬鹿げた事を望んでさえいた。
(素直に……伝えられたなら……)
臆病であるが故に、伝えられなかった想い。
もし、素直にそれを交わす事ができていたのなら。
きっと今、これが注ぎ込まれていたのは、この不浄の穴などではなかった。
彼以外に開くつもりなど毛頭ない蜜壺の奥、この胎の内を隙間なく、彼の熱さで満たされていただろうに。
でも、そうじゃない。
臆病な自分は、土壇場で踏み止まってしまった。
歪な形で―――つまりは、この不浄の穴で―――身体を重ねる事となったとはいえ、想いを伝えていれば別の形となっていた筈だ。
だが、現実は違う。
2人とも、決して必要以上に肌を晒さない。
互いの陰部でさえ、行為の際は下着をずらして隙間を作るだけで、結合前に菊座を解しポトの油を塗り込む際、繋がる際と離れる際くらいしかそれらを視界に入れる事はなく、それでさえ最小限に止めようと互いが振る舞っていた。
繋がっている最中でさえ自分は服を脱ぐ事もないし、彼の手は精々が軽く此方を抱き締めるか、慰める為に頭を撫でるか、先程の様に溢れ出す諸々の体液を拭う事しかしない。
ほんの僅かでも自分に欲情してくれている事を行為で示して欲しいと、恥知らずな願望ばかりが胸の内に込み上げてくるというのに、彼の手は控えめな膨らみの其処に、服の上からでさえ触れようともしない。
衝動の儘に突き上げてくれるのなら、情欲に任せて幾度も注ぎ込んでくれるのなら。
この、腹部の内から破裂しそうな程に身体を圧迫される苦しみ、それを上回るであろう苦痛も喜んで受け入れられるだろうに、彼にはその素振りすらない。
どれもこれも、この行為には必要ない事だからだ。
彼の分身が猛り立っている事は、元よりこの行為に必要であるが故に、彼自身が本心から此方に欲情しているとの証明にはなり得ない。
彼の肉棒を菊座へと受け入れ、直腸へと精を注ぎ込んで貰う事が、この行為の目的だからだ。
その為に、彼が道具屋や酒場などで売られている、そういった薬―――所謂、精力剤の類―――を飲んでいたとしても不思議ではない。
普段は何処か軽薄な空気を纏っていたとしても、たとえこの行為に虚しさを覚えていたとしても。
本当の彼は、責任感の強い人だから。
仕方なくであっても、私を抱く事に、汚らわしい場所に精を注ぎ込む事に、手を抜く事はしないだろうから。
(だってこれは……恋人同士の、甘い睦事なんかじゃなくて―――)
リースの、虚ろなままの瞳が『それ』を捉える。
重なったままの2人、そのすぐ傍らにあるベッド。
純白のシーツの上に広げられた若葉色のハンカチ、その上に鎮座する、琥珀色の透き通った卵形の結晶。
(ああ……)
リースの胸中に生じる、更に色濃い諦めと虚しさ。
見事なまでに透き通った、拳大ほどもある結晶。
卵形のそれの表面は、人の手で磨かれたものではあり得ない滑らかさであり、摩擦など殆ど無いであろう事が容易に見て取れる。
そのこと自体は、リースもこれまでに『身を以て』知っている。
何も知らない者であれば、十人が目にすれば十人ともが魅了されるであろう美しさだ。
(これも……これも、結局……)
だが、リースにとってのそれは忌まわしく、色濃い諦観を齎すものでしかない。
どれだけ、彼と身体を重ねようとも。
どれだけ彼に翻弄されて、どれだけ彼の熱を注ぎ込まれたとしても。
それを目にする度に、この行為の本質、目的を突き付けられるからだ。
そう、この淫らで、歪な身体の重ね合いは。
(―――ただの『治療』なんだから)
単なる『医療行為』に過ぎないのだから。
そしてリースは、この行為に巻き込んでしまった仲間、必要のない呵責に苛まれる青年。
繋がったままの背後の想い人の名を、掠れた声で口にした。
「……ホー、ク……アイ……」
不定期連載どす。
じゃあ俺、コーネリア防衛しに戻るから(棒読み)