※この作品はR-18です。

ジ・アンブレイカブル・ハート   作:SAMICO

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Chapter2:先輩と後輩~士官学校で~

信頼できる『友達』など、誰もいない。

そんな中で結衣は、国防軍士官学校に入学した。

結衣が一番最初に受けた印象は、「自由なところ」だった。エ(・)リ(・)ー(・)ト(・)を(・)目(・)指(・)す(・)場(・)所(・)とは思えない。

エリートを競う者達が他者を蹴落とす。そんなイメージで、入学して来たのだ。

そんな彼女が、一番最初に出会ったのが、対番として面倒を見ることになる、上原麻衣だった。

「こんにちは、高菜さん。初めまして。上原麻衣と言います」

「高菜結衣です」

おっとりして、どこかぽんやりした、のんびり屋さんの先輩。必要なものは、全て麻衣が買ってくれた。

結衣は、俯瞰的にものを見過ぎて、麻衣のことを疑っていた。裏(・)が(・)あ(・)る(・)と。

麻衣は、入学式前日、リネン室に結衣を連れて行った。

「高菜さん……『頑(・)張(・)っ(・)た(・)ね』……そして『ご(・)め(・)ん(・)な(・)さ(・)い(・)』……」

「……え?」

結衣は、驚いた顔をして麻衣を見ていた。

おっとりした彼女は、少し悲しそうな顔をしていた。

「……高菜さんは知らないと思うけど、私同郷で、一つ上……高菜さんのことは、ずっと知ってた。でも、何もできなかった……ごめんなさい」

おっとりさんの麻衣が、涙をポロポロ零していた。

「きっと、強い高菜さんはここに来るだろう、って、先に来て待ってたの……対番もどうしても、って山本校長に直訴して、お願いしたの。何も出来なくて……何も出来なくて、ごめんなさい」

結衣は、その誠実な彼女の涙に、今までの氷に閉ざされた心が、溶けていくような思いを感じた。

「麻衣先輩……っ!!!」

結衣は、麻衣に抱きついて泣き続けた……

その時に、麻衣は泣きながら、笑顔で告げた。

「自由に、生きて良いんだよ。私が、何(・)時(・)で(・)も(・)い(・)る(・)よ」

おっとり、のんびりとした彼女のその言葉に、結衣も頷いた。

 

 

結衣は、今までの束縛から解放されたように、自由に奔放に生きた。

その度に、対番である麻衣は被害を被ったが、麻衣はいつもニコニコ、一緒に罰を受けている。

「先輩、ごめんなさい」

「ふふ、結衣ちゃんの側には、私がちゃんといるから」

おっとり、にっこりは彼女にも伝播していった。

マイペースで、いつも自分の余裕を崩さない。物事を俯瞰的に見て、壊れず堅く、粘り強い心を持つようになった。

安藤龍という先輩にも出会った。彼は気難しそうな、孤高で目的意識が高いが、面倒見も良い先輩だった。

彼と麻衣は、文学同好会で知り合ったそうだ。読書が大好きな麻衣と、物書きを趣味としている、想像力豊かな秀才である龍。

結衣は、麻衣と一緒に龍の書いた『空想世界』の読書を通して、想像力と言うものを学んだ。

龍は、常々語っていた事があった。

「高菜君。目的というものは、道標(みちしるべ)だ。そこに向かう為には、どのような手段も用(・)い(・)る(・)べ(・)き(・)だ。だが、時には回り道もすることも肝要だ。大事なのは、『目的』を見失わないこと」

「最短距離を突っ走るのが、『手段を選ばない』こと、じゃないんですね」

結衣がそう問うと、龍は笑みを向ける。

「優秀な我が後輩よ―――そのとおりだ。『急がば回れ』大事なのは、確実に目的に辿り着くことだ。その為には、自身さえも傷つけねばならぬ時もあるだろう。君(・)の(・)父(・)上(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)」

「………」

その言葉に、押し黙る結衣。その顔を見ながら、龍は続けた。

「私が軍を志したのは、偏に彼の強さを知っていたからだ。彼等の犠牲のおかげで『人間でも、奴等に何かできる』事がわかった。メディアの下らぬ戯言(でっち上げ)など、私は信じなかったし、矢部大臣があの肉声を公開した時、私は間違っていなかった、と確信した。私は、彼の強さに憧れて軍に入った。上原くんは、きっと君がここに来る。何もできなかったことを悔み続け、そして彼女もまた、『君を迎え入れる』という目的の為に戦ってきた。私と、君と、上原くんは『高(・)菜(・)直(・)樹(・)准(・)将(・)』と(・)い(・)う(・)縁(・)で(・)結(・)ば(・)れ(・)た(・)『戦(・)友(・)』ということだ」

「……『戦友』……」

結衣の瞳から、涙が溢れていた。

「戦友として忠告しよう。君は、自由奔放でいるべきだ。私は何でも熟せる天才だが、君のような『常識の枠』に囚われない柔軟さは、持ち合わせていない。そこが、私の限界だ」

「安藤先輩は、全ての成績トップじゃないですか。結衣は……」

結衣は、上位をキープしてはいたが、まだこの時は、次席ではなかった。

「指(・)標(・)とは、成績だけではない。君のような柔軟な思考の人間が活きるのが、これからの乱世だ。この世の中は、『そうであることを、そうであるように』受け入れた、にすぎない。君の持論だったね」

結衣は、この文学同好会で『平行世界』について真剣に議論をしていた時に言ったのだ。

『艦娘という存在を、『そうであるように』受け入れたのが、今の世界だ』と。

これは、矢部晋太郎の持論でもあった。

『解らないものなら、そうであるようにそのまま受け入れれば、道は開ける』

これは『未知であることを、未知であるま(・)ま(・)に、既(・)知(・)と(・)し(・)て(・)認識する』ということだ。

「叔父さんは、こう言ってました。戦艦三笠や艦娘は、『そういうものだ』と認識すれば、ただの可愛くて強くて美人の、国防軍の仲間だ。ならば艦娘と共生する社会も、難しいことではない……と」

結衣は、大きな溜め息を吐いた。

「結局、パパの名誉が汚されたのも、艦娘を受け入れる社会ができたのも、『皆がそう言ってる、あるいは言うようになった』からなんです。だから、晋太郎叔父さんは、『皆が、艦娘は日本の国民だよ』と言える社会を作る為に戦い続けたんです。いやあ、皆単純(バカ)なんですよ。そう思ったら、今までは、『パパのやってきたことが無駄になるから、何かを恨んじゃいけない』から『こんな連中の為に恨むなんて、馬鹿馬鹿しい』に、変わったわけですね。結衣には、もっと楽しいことが待ってますから。今は先輩の中(・)二(・)病(・)の(・)炸(・)裂(・)し(・)た(・)読(・)み(・)物(・)を読むのが、楽しみです」

にへらっと笑う結衣に、龍は激昂する

「中二病とはなんだ!私は、この作品を作るに当たってだな、色々な作品を熟読した上で……」

龍がクドクド説教をしているのを、全く聞いていない結衣。そんな様子を、ちょうどやって来た麻衣が、ニコニコと眺める。

三人だけの、小さな小さな同好会の日常だった。

結衣は、主席の天才龍と、上位成績者のおっとりさんの麻衣から、色々なものを学んだ。

結衣は、要領だけは良かった。とにかく学校という戦場で生き残る為に、要領良く賢く生きてきたのだ。

そこに、「自由奔放」が加わった彼女は、いわば『無敵』だった。問題は起こすが、取り返しの付く問題で済ませてる。

結衣に敵対しようとする相手は、容赦なく叩き潰した。賢く、狡猾なやり方で。

そんな一年間を過ごし、二学年になった結衣は、彼(・)女(・)と、出会うことになる。

 

高梨湊という少女と。

彼女と出会った印象は、『お人形さん』だった。

結衣は、とんでもなくヤバイ子の、世話をしなければならない、という事実を目の当たりにしていた。

 

「先輩。結衣の対番、ヤバイ子が当たっちゃいましたよぅ」

「結衣ちゃんが珍しいね」

「ヤバイ、とはどういうことかね?」

いつもの課外の文学同好会。麻衣の趣味である、ハーブティの香りが広がる多目的室で、結衣が愚痴を零した。

「心がない……結衣も上手く言えないんだけど。なんか笑顔は可愛いんだけど、目が死んでるの。お人形さん」

「ふむ……どこぞの誰か(高菜君)みたいな、娘だな」

その指摘に、ふっと自身を俯瞰的に見つめ直す。確かに、氷に包まれて目が死んでいた自分が、いたかもしれない。

「なるほど……今度が結衣が、麻衣先輩みたいにやれば良いんですね?」

「その通り。だが君では『共感』は出来ても、その殻を破るのは難しいだろう。……ふむ。私の知り合いに、最高学年の草加拓哉、という先輩がいる。彼は、型破りで有名な男だろう。彼の『熱さ』なら、共に殻を破れるやも知れぬ」

噂は聞いたことがあった、一学年の時に、三年に『優秀だが、型に囚われない自由な、常設主席成績者(常にトップの超天才)』がいる、と。

「困ったら、私が相談に乗りますよ。なにせ結衣ちゃんの対(・)番(・)ですから」

「先輩、今まで困らせたお返しですかぁ?」

膨れっ面の結衣に、麻衣は笑顔を見せる。のんびりした口調の麻衣は、笑いながら、

「心の鍵を開けたら、あとは殻を破るだけ。結衣ちゃんの得意なこと」

「はぁぁ……あの子の対人トラブルは、皆結衣の連(・)帯(・)責(・)任(・)ですね。へいへい、それを噛み締めつつ、麻(・)衣(・)大(・)明(・)神(・)様(・)に三度三度拝みますとも」

大きな溜め息を吐いて立ち上がった結衣は、安藤から言葉をかけられる。

「なんでも、草加先輩は卒業前にバンドをやりたいそうだ。ロックバンドでも、一緒にやったらどうかね?」

「安藤先輩は、他人事みたいに……」

そう噛み付くと、龍は笑いながら答える。

「他人事だからな」

と。

 

結衣は、高梨湊という候補生には、とにかく手を焼いた、人当たりは良いのに、毒を吐いたらもはや猛(・)毒(・)ガ(・)ス(・)なのだ。

更には頭が良く、なんでも知っている。戦略戦術に至っては『無敵』である。

その時問題が起こった。

湊は、艦娘戦術戦略シミュレーションで、高天原智子という候補生を、徹底的に完膚なきまでに痛めつけ、叩き潰していた。

その時に智子の発した、「今までの努力が……」という悔しさの言葉に、

「大した事ない、努力でしたね」

と、湊が言い放ったのだ。一瞬頭が真っ白になった智子は、大きく泣き崩れた。

「ちょっと!高梨さん!」

智子と同郷で、一緒に士官学校に入った大村奈緒が、噛み付いた。

それを間に入ると、奈緒の両肩をポンポン叩いて、

「待った待った!結衣が、高梨には言っておくから。大村は、高天原ちゃんのケア。はよ!」

「……わかりました」

不承不承で従うと、それを人当たりのいい笑顔で見つめる、湊の両肩を掴んで、

「湊ちゃん、言い過ぎ!」

「何でですか?」

不思議な表情を浮かべた湊に、結衣は異質な感じを覚えていた。でも、何(・)か(・)を、目で訴えかけていた。

 

結衣は寮長に、何処かでサ(・)シ(・)で(・)話したい、と願い出た。寮長はその前に、麻衣からも頼まれていた為、

教官や校長に、掛け合ってくれた。

寮長は、心ゆくまで話しなさい。消灯時間も無視して構わない、と言ってくれた。

 

そこで、無理矢理連れて来た、夜のリネン室。

「……先輩、何の用ですか?」

「取り敢えず、座ろっか」

シーツ類を床に敷くと、二人並んで座った。

「言いたいこと、全部結衣に話してご覧。ここには、『大(・)人(・)の(・)目(・)』は、ないよ」

「えっ?」

驚いた顔をする湊に、結衣は笑みを零す。

「よかよか、よかよ。結衣は、そーゆう湊ちゃんすいとーちゃ(好きだよ)」

「……」

大きく溜め息を吐くと、湊は話し始めた。

「私は御存知の通り、艦(・)娘(・)ハ(・)ー(・)フ(・)です。ですから、艦娘の艤装を付ける為に、調(・)整(・)さ(・)れ(・)た(・)人間です。ですが、私は失敗作。出(・)来(・)損(・)な(・)い(・)だったんです。殴られたし、蹴られたし、何度も罵られてきました。それで終わるのは嫌だから、絶対に誰(・)か(・)に(・)負(・)け(・)る(・)こ(・)と(・)は許されないんです。学校には行けなかったし、行きたくなかった。大検をパスして入学しました。私(・)は(・)失(・)敗(・)作(・)な(・)ん(・)か(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)。そんな必死にやって来た努力、あんな、何の不幸もない奴に、負けるつもりはありません」

その言葉に、結衣はあ(・)る(・)種(・)の(・)共(・)感(・)を覚えた。

「結衣のパパは、硫黄島で死んだの。たくさんの部下と一緒に。日本の民間人を、一人でも多く逃がす為に。でもね、その部下の遺族から恨まれ罵られて、パパのないことないこと、新聞やテレビ、週刊誌に言いふらされて、不正を隠す為に深海棲艦を利用した、とまで書かれたの。それを信じた国民は、高菜家を社会から抹殺しようとした。それを恐れたパパの両親は、関係ないと言い張って縁を切って、加害者側に回った。積極的にテレビや新聞の取材を受けて『息子は酷い奴だった。あんな外(・)道(・)を息子と思いたくない』なんて言ってたね」

その言葉を、湊は黙って聞いている。

「ママは、地方へ地方へ逃げながら、結衣を育ててくれたんだけど、ある日から、幻聴が酷くなった。見えないものが見えるようになった。そして、『結衣のことが解らなくなった』……病院に運ばれて、精神科に入院することになったよ。今で言う『統合失調症』。精神障害者一級で、何も社会生活が出来ない。ご飯も食べられない、体は動くんだけど、精神がそれをできなくなってるから、おむつが要るし、点滴で栄養を取らないといけない。今も、あの時からずっと時が止まったまんま。ある意味『死んじゃった』んだろうね」

「酷い……」

湊の言葉に結衣も頷いた

「酷いよね。結衣は、学校では敵(・)だ(・)ら(・)け(・)だった。すごいよ、入学式の翌(・)日(・)からいじめが始まるんだよ。戦闘開始。結衣はバカじゃなかったし、自分で「矢部姓」にしなかったんだから、覚悟の上よ。小学校の時は、まあマシだったかな。中学の時はやばかったね。『殺される』以外のことは全部やられた。……って言えば、女の子の湊ちゃんは、察してくれるかな?」

「……はい」

湊が小さく答えると、結衣はニコッと、笑顔を向けた。

「よかよか、いい子。だからさ。そういうの、今ここで、捨てちゃおっか?『失敗作』とか、『部下殺しの娘』とか、『いじめられっ子日本一』とか」

「えっ……」

驚きの声を漏らす湊に、結衣は続ける。

「今までの湊ちゃんは、今日ここで死んだ。明日からは、「ニュー湊ちゃん」になる。肩肘張らなくても、友達をいっぱい作って、皆と楽しく。それで、今まで悲しかった分を、取り戻そうよ?」

「………」

ふっと、湊は目(・)を(・)伏(・)せ(・)る(・)。

「湊ちゃんは、本当はいい子だと思うの。ちょっと、人の接し方とか距離感とか?結衣と一緒に、覚えていこっか?」

「……はい」

結衣が、湊をギュッと抱き締めると、とうとう耐えきれず、泣き出した。

「よかよか。結衣の胸の中で、泣きたいだけ泣きなさいな。結衣はね、血は流し尽くしたし、涙も流し尽くして、もうな(・)い(・)ん(・)だ(・)。だから、湊ちゃんが結衣の代わりに泣いてくれる。それでよか」

湊の頭を撫でながら続ける。

「もう一つ。高天原ちゃんには、謝ること。あの子もきっと、『何かを背負って』ここに来た。結衣は、俯瞰的にものを見る癖がついてて、何(・)と(・)な(・)く(・)分かるんだ」

「……はい」

こくりと頷いた湊に、結衣はぽふぽふと、頭を軽く叩くように撫でる。

漸く、湊は笑顔になった。

「いい子いい子」

「……ありがとうございます」

 

 

翌日結衣は、大村奈緒の訪問を受けていた。

何か、難しそうな顔をしていた為、伝(・)統(・)の(・)リネン室に連れて行った。

「さて。結衣に何か用?」

少し逡巡したあと、奈緒が口を開いた。

「私は、父が軍高官をしています。高梨さんのされていたことも、大体聞きました。父からは「高梨湊さん」と友達になってくれ、と頼まれました。でも、あんな嫌な女、友達になりたくありません」

はっきりとした、この直情型の少女の言葉に、結衣はにへらっと笑った。

「よかよか。嫌なら、それでも良いんじゃないかな。でも、湊ちゃんはいい子だよ。あの子はねぇ、人との付き合い方を勉強中なんだ。湊ちゃんがされてきたことを、少しでも理解している大村ちゃんが、一緒に手伝ってくれるなら心強いよ。ダメなものはダメ、って言ってあげるのも友達だよ?」

「むぅ……」

困ったような顔をする奈緒。

「結衣はね、性格ひん曲がってて、感情をストレートに出すのが苦手なんだ、色々あったからー。だから、奈緒ちゃんみたいに感情をまっすぐ出せる娘がそばにいると、もっといい子になるんだけどなぁ」

その、おだてるような結衣の言葉に、

「分かりました。先輩がそこまで言うなら、あたしは高梨さんの側にいます。でも、高天原さんには……」

「謝ってたよ。酷いこと言って、ごめんなさいって。高天原ちゃんも「嫌な女」って言いながら、許してくれたらしいよ。あの娘はあの娘で、背(・)負(・)っ(・)て(・)る(・)も(・)の(・)があるからね」

「……わかりました。」

結衣は、この真っ直ぐな後輩にちょろいな、と思いながら少し羨ましいな、とも思っていた。

 

 

それから、少し経った頃だった。

湊に、草加拓哉という最上級生が、戦略シミュレーションを挑んで返り討ちに遭い、

そしてほぼ拉致のように、バンドに誘った、という話を聞いた。ガチガチのヘ(・)ビ(・)ー(・)メ(・)タ(・)ル(・)バ(・)ン(・)ド(・)である。

「ロ(・)ッ(・)ク(・)とメ(・)タ(・)ル(・)は違うんですよ!」

という結衣の抗議に、龍は、

「似たようなものだろう。どちらも喧しい」

と答える。この男、音楽はクラシックしか興味のない、文学青年なのだ。後に、ライブを見に行った際「私は間違っていた」と、他ジャンルの音楽も聞くようになるが……

ピアノも得意だったから、龍も誘ってみたが、その時は興味が無い、と断られた。結衣は一応参加したが、文学同好会もある。

たまーに顔を出して、サイドギターをやる程度、に留めておいた。

奈緒と湊は、お互い本音を曝け出せるようになって、仲良くなっていった。お互いを、名前で呼び捨て合える様になったという。

そこに智子や恵一郎も加わり、彼等を中心に仲間の輪が広がっていった。

ちなみに、草加の卒業前のラストライブには、龍もキーボードとして、一度だけ参加することになる。

 

「よかよか」

静かに文学同好会の部屋で、アコースティックギターを弾きながら、その様子を眺めていた。

今は、安藤のリクエストにより「シェイプ・オブ・マイ・ハート」を弾いている。

「随分、お姉さんになったではないか」

龍にからかわれるも結衣は、

「いやあ。特(・)徴(・)的(・)な(・)先(・)輩(・)方(・)に、ご指導いただいたお陰ですよぅ」

 

こうして結衣は、数々の問題行動を起こしながらも、次席卒業生となった。

彼女は、同期からこう呼ばれた。『空前絶後の問題児次席卒業生』と。

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