※この作品はR-18です。

Stealing The Reality   作:てんぞー

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Beyond The Truth Ⅳ

 このベルカという世界はもう終わりなのかもしれない。

 

私は長年聖王家に仕えて来た。だが今、その求心力が下がっている所を初めて目撃する。始まりは大いなる祖たる聖王から始まり、聖王家は常に栄え、ベルカという次元世界のみならず数多くの次元世界を制覇するこの時代の覇者であった。だがその威光も今では陰りを見せ始めた。こんなことは初めてだ。一体どこで間違えたのだろうか?

 

それはルーゼンが独立を宣言した所からだろうか? カウダルフが平等主義を掲げた事からだろうか? それとも王子がグレンガルドを殺した事だろうか……あの宮廷魔術師は何故死なねばならなかったのだろうか? あの事件は未だに闇が深く、私には見通せない。だが長年、この聖王家に仕えて来た兵長たる私の身からすれば近年のベルカと周辺諸国は何かがおかしいとしか言えない。何か、見えない何かに少しずつ時計の針を動かされている様な焦燥感を空気に感じるのだ。

 

偉大なる現聖王陛下がこの程度の事、お気づきにならない筈もない。私は考える。聖王陛下もきっと、お気づきになっているのだろう。だがきっと、気付いたところでどうしようもない所に今のベルカがあるのだろうと思う。長い平和の日々がついに終わり、そしてベルカは再び戦乱の機運を呼んでいる。あのジェイクでさえ最近は神経質に剣を磨いている。私は長年仕えて来た事が誇りであったが、今一度この信念を曲げて家族と共に辺境へと疎開する事を考えた……手遅れになる前に逃げるべきではないかと、そう感じるが故に……。

 

「うーむ、内容は面白いが外れ……か?」

 

 確かめているのは古代ベルカ時代に生存していたとある兵長の日誌だった。つらつらと日常の事が語られており、その中にはオリヴィエの名前が何度か出現してくる。だが出てくる情報は基本的に既に知っているモノばかりで、新しい情報が出てこなかった。こうなるとやはり外れか、というちょっとした残念があった。とはいえ、主を疑う様な言葉が出てくる内容は面白かったが。とはいえ、読み終わった所で新しい情報が出てくる所はなかった。残念、と思いながら日誌を読み終わった本の上に重ねる。

 

 これで43冊目だった。

 

 すぐ横に視線を向ければ積み上げられた本の山が出来ていた。無限書庫の美フェレットメイドフェチからオリヴィエという名前が出る書物、年代は古代ベルカ中期を範囲に指定した書籍を借りられるだけかたっぱしから借りて、アジトへと持ち帰って来た。そしてその中からオリヴィエの過去、或いはどういう人物だったのかを把握する為にひたすら乱読を繰り返している。その内容は全てが聖王家に対する賛美であり、そして疑う様なものはなかった。今の兵長の日誌も逃げる事は考えていても、ベルカの正義を疑う事はないし、それに一言もオリヴィエに関する否定的な言葉が出てきていなかった。

 

 それは明らかにおかしい。

 

 そんな、完(・)璧(・)な(・)聖(・)人(・)が(・)こ(・)の(・)世(・)に(・)存(・)在(・)す(・)る(・)訳(・)が(・)な(・)い(・)のだ。人間はどれだけピュアに見えていても、その根っこでは集合無意識、或いは無垢心領域(ES)によって繋がっている。他人という存在がその世界にあるだけで少なからず思想や領域のコンタミネーションが発生する。完璧なる聖人を生み出す為には完全に他者との心が遮断されている上に、一切汚いものに触れない無菌室の様な空間で育てるしかない。

 

 だがオリヴィエ・ゼーゲブレヒトはたびたび人前に訪れ、そして触れ合いながら痛みを労わる事の出来る女性であったと多くの手記や日誌では描かれていた。

 

 無菌室で育てられ、他者と遮断された人間とは究(・)極(・)的(・)に(・)言(・)え(・)ば(・)白(・)痴(・)の存在なのだ。他者と繋がらないから他者が理解できず、他人を認識しないから自分の事さえも見えない。つまり知識という繋がりが存在しないから白痴であり、言葉を喋られるかさえ怪しい。少なくとも賢く、そして王位を得た女なのだから、白痴というのはあり得ない筈だ。

 

 だからオリヴィエには一点の穢れが存在する。

 

 だが遺される書物にはそれが描かれていない。つまり情報封鎖があったか、或いはそれを隠し通したか。そのどちらかだ。意図的な隠蔽があった場合、一番それを行っていそうなのが聖王教会、次にイングヴァルト家……後はエレミアだろう。だがイングヴァルト家にそんなものがないのはハイディを見ていれば解る。となると聖王教会が禁書を保管しているのか、或いはエレミアの伝承に隠されているか。

 

 ……どっちかだろうか?

 

 とはいえ、まだすべての本に目を通したわけではない。まだまだ読み込めるのは多い。となるとここで考えていてもしょうがない、情報収集の続きをするべきだろう。では次のを、と思ったところで横にホロウィンドウが出現し、探査の完了を示すホロウィンドウが出現した。それを片手で横へと退けながら、丁度読み終わった所だしナイスなタイミングだったな、と呟く。

 

「内臓系は損耗3%未満、と。これなら新しく入れ替える事を考えなくてもいいな。んじゃ次は神経系か」

 

 頭に装着していたメカニカルゴーグルを下ろして装着する。ホロウィンドウで大体の事が出来る時代ではあるが、やはり専用の道具があった方が遥かに捗るのは事実だ。その上で操作用グローブを装着し、そして積まれた本から体を背け、横の方にある淡い色を放つ機構へと視線を向ける。

 

 そこにあるのは調整槽。複数並んで存在するその内二つの中には水が流し込まれており、そしてそこに浮かぶ姿が見える。裸のまま、体を隠す事もなく調整槽の中で浮かんでいるのはリリィとエリーの姿である。無論、無意味に辱めている訳ではない。

 

 なんてことはない、定期的なメンテナンスチェックだった。

 

 エリーはレアな融合デバイスであり、そしてリリィは恐らく世界に二つと存在しない専用デバイス、の様な存在だ。どちらも人間の姿をしており、人間と同じ機能を完全にトレースできるだろう。その為に口や眼といった人間の基本的な機能から食道、胃が存在し、排泄機能は存在しないが性機能を搭載していて膣や子宮が存在する。本当に孕める訳ではないものの、人工子宮として機能させる事は十分可能な肉体として出来上がっている。

 

 つまり、人間の姿をしているが、一応は機械なのだ、この娘二人は。

 

 とはいえクローニング、再生治療による部位欠損を埋める事の出来るこの時代ではデバイスに人型の外装を用意し、それで人型デバイスを作る事は難しくはない。というかそれに近い物体なら既に市販されている。

 

―――そう、あの美フェレットメイドフェチに目覚めてしまった腹黒暗黒社会系眼鏡フェレットのユーノ・スクライアが保有する自動人形の様に、自動人形の外装にデバイスを入れてしまえばそれで人型デバイスは作れる。とはいえ、それではインテリジェントからは程遠く、インテリジェントデバイス用のAIコアはそれだけで数百万レベルの物を要求する。

 

自動人形用のAIルーチンも比較的に高価だが、魔法を使う事を前提としないので、インテリジェントコアと比べればやっぱり安くなる。逆に言えばマルチタスクと演算代用に独自思考ルーチンと行動予測に自動最適化、進化型AIを搭載するインテリジェントコアの中身が馬鹿にならないのだが。

 

 話は戻すが、見た目だけなら人間として整えるのは簡単なのだが、融合騎(ユニゾンデバイス)と呼ばれる人機一体型のデバイスともなると、それぞれの構成パーツが単純な機械部品ではなく、人体との融合を全体とした特殊パーツで構成する必要がある他、他にも人間と同じ機能を持たせつつ融合先の体を破壊しないようにする為に―――等と、かなりの技術と金を必要とする。その上で基本的にデ(・)バ(・)イ(・)ス(・)の(・)パ(・)ー(・)ツ(・)は(・)消(・)耗(・)品(・)で(・)あ(・)る(・)のだから、

 

 まぁ、当然の話だ。人間が医者を必要とする様に、デバイスもデバイスマスターが必要となる。だがエリーとリリィはその性質上、他の人間に見せる事が出来ない。その上で話を進めると両方共、貴重な融合デバイスである為、定期的なメンテナンスを行わないと融合した時に融合事故を起こして体が爆発を起こしかねない。

 

 たとえば内臓系。先ほどのチェックでは問題ないと出た。これが損耗率30%の時に融合したりすると、融合解除した時に15%ほどの損傷が人間の身体に残る。ぶっちゃけ、生存性は人間よりも遥かに高く、内臓全てが腐った所で融合デバイスは死なない。だが人間は違う。

 

 それが致命傷に繋がるのだ。

 

 彼女たちの手入れは自分の明日の命へと繋がる。その上で話をするなら両者共に、そう簡単にメンテナンスに出せる存在ではない。レアすぎるのが一つで、もう一つが金(・)が(・)か(・)か(・)り(・)す(・)ぎ(・)る(・)という事実になる。管理局や聖王教会に所属していれば保険が降りる上に技師まで紹介してくれるのだが、組織的なバックアップが存在しない場合、当然ながらそんな紹介も保険もない。その上で裏のデバイスマスターにでも面倒を見せたらワームでも仕込まれて潜脳から寝取られる可能性が出てくる。

 

 そんな事、当然ながらごめんである。

 

 ならどうするのか?

 

 当然、全部自分でやるしかない。

 

 そういう訳でリリィとエリーの定期的なチェックとメンテナンスは自分の義務だった。自分が盗み出してモノにしたエリーは当然、俺の所有物なのだから面倒を見るのは当然だった。そしてリリィはこれ、出来る事ならトーマにやらせたいのが本音だったが、調整の間はリリィを全裸にしておく必要がある、それにトーマが耐えられない他、リリィはエクリプスウィルスの感染源だった。

 

 ぶっちゃけ、変に感染拡大されても恐ろしい為、自分で対処するのが一番楽だった。エクリプスウィルスの感染という概念を掴んで握り潰せる人間は、片手で数えられるぐらいしか存在しないのだ。トーマはまだ、それをコントロール出来ていない。

 

 その為、こうやって定期的に二人のメンテナンスを行っていた。装着しているゴーグルもグローブもその為の道具であり、調整槽は元々禁忌兵器のメンテナンス用の設備を師匠が盗んで設置したものをデバイス用の工房として再利用しているものだった。まともに設備を整えようとすればそれこそ天井知らずの値段がかかるから、一切笑えないのだが。

 

「と……リリィの方はちょい神経損耗しているな。新しく入れ替えた方が良さげだな、こっちは。おーい、トーマー」

 

 横の空間を軽く拳で殴ってホロウィンドウを表示させ、暇そうにソファに座って待っていたトーマに通信を繋げると、トーマがソファから起き上がった。

 

『ん? なんだ?』

 

「6番倉庫に突っ込んであった神経ケーブル、残りどれぐらいか確かめてくれねー?」

 

『あぁ、ちょっと待っててくれ』

 

 神経系のパーツは反応速度に関連するから割と重要な部分でもある為、なるべく損耗の低い状態を維持したいのが本音だ。通常のペースだとこれが大体3カ月に1度の交換になる。トーマに見に行かせているのは比較的頻繁に使うから家で凍結保存してある神経ケーブルのストックだった。こればかりはストックしておかないと辛いんだよなぁ、と呟きつつ、その他にも色々と調査を進めて行く。

 

 リリィの分は正直据え置きを再生治療とクローニングで同じパーツを修復して使い回しているのが現状なので、エリー以上にある意味メンテナンスに気を使う。ぶっちゃけ、エリーの体内パーツなどに関しては古代ベルカベースのもので、此方はまだ現代でも通じる規格のものがある上、一部は師匠の残した施設で複製可能であるという事がまだ救いだ。融合デバイスの中ではレアではあるが存在しない類ではない。

 

 だがリリィは完全に一点もの。それも専用パーツでのみ構築されている。エクリプスウィルスに関連する制御などに関する様に全てのパーツが向けられている。神経はまだ良い。だが内臓とかになると流石に替えが利かなくなる。場合によっては内臓を抜いて、複製して、新しく入れ直すまでの作業に3日かかる場合さえも存在する。それだけ、リリィという存在はデリケートだ。本当はトーマにやらせたいのだが、

 

 ぶっちゃけ駄目だ。というか無理だ。金、技術、手間と安全性を考えると全部俺一人でやるのが合理的なのだ。

 

 指を動かし、調整槽内部を遠隔操作すれば、エリーの背中から今までは隙間さえも見えなかった背中が開き、そこから内部の機構が見えてくる。

 

 一般人であれば100年の恋さえも醒めてしまいそうな光景だが、何度も見て来た、見慣れた光景でもあった。消耗したパーツのチェックと交換でもうちょい時間がかかるなぁ、と思いながら作業を進めた。

 

 

♦

 

 

「ふぅー……今回は神経系の交換だけで終わって良かったわ」

 

 首を軽く回せばゴキリ、と音が鳴る。それでも片手には本。調整室から脱出したところで、エリーとリリィは交換したパーツを馴染ませる為にも一晩は調整槽の中で時間を過ごさなくてはならない。事前に作り置きして貰っているから生活面で困る事はないのだが、少しだけ寂しさを感じる。

 

 アジトの居間、ソファに沈み込みながら再び本を読んでいる。テーブルの上には大量に積まれた本を転がし、足は真っ直ぐソファの上で、3人用のソファを占領する様に寝転がりながら読んでいる。これでエリーがここに居れば多少は怒られたのだが、今はそうするエリーは調整中でいない。束の間の自由だった。

 

「うー……リリィがいないのに何で勉強しているんだろ、俺……」

 

「頑張れ、勉強は将来的に役立つからな。つか自分の手でリリィを整備できるようになりたければ、勉強できなきゃ無理だぞ」

 

「解ってるけどさぁ! だけど俺よりもハチャメチャな癖に勉強できるのは納得がいかない!!」

 

「あー……」

 

 目頭を軽く揉みながらトーマの言葉に苦笑する。トーマはトーマの方で、別のテーブルで教科書を広げて、ホロウィンドウから流れて来る自宅学習プログラムを使って勉強の最中だった。

 

 ミッドチルダにおける学業とは少し前までは主に小等部の事を告げる。まだ年齢が一桁前後の時は義務として教育を受ける必要があり、それを卒業する事で社会的に就職する権利が生まれる。これは《管理局負のシステム》と一般的には呼ばれている。管理局の開拓偏重の思考は社会に多くの雇用を生み出し、一時的に環境を管理局の雇用で埋め尽くす事となった。だがそれでも人事が常に不足する事態が発生し、それで子供まで就職させるという事が可能になっている。これは凡そ50年以上前の話になる。無論、そこから学業に関連するシステムは変わってきている。

 

 50年経過した今では学業に関するシステムが一新され、基本的に中等部までの学業に関しては義務で、援助金が出るシステムになっている。その為、孤児であっても何らかの組織に所属するか、或いは将来的に所属する事が出来れば、援助金を貰って学校に行くことが出来る。どこかに所属するだけの能力がない場合は、それでも金を借りて、ローンとして支払い返す事である程度身分を束縛されるが、勉学を行う事が出来る。

 

 なおトーマはその前に死亡判定が出ているので学校に通えていない。

 

 だが学校というコミュニティを嫌い、自宅学習する子も少なくはない。その為のプログラムは存在する。面倒なのはその場合、公的に学習を終えたという証拠をテストという形で機関に提出しなくてはならないのだが―――まぁ、ここでそれをする必要はない。使用しているプログラムも基本的に違法品だし。一々申告する必要もないだろう、使えるだけの知恵が身に付いたのなら。

 

 それで確か俺が賢い、という話だったか。

 

 当然だろ、と言葉を零す。

 

「俺は金のある家の出だぞ。ガキの頃から人の使い方、金の使い方、金の稼ぎ方、人との喋り方とかを勉強してたんだぞ? 金のある所には良い人材が育つんだ。覚えておけよ」

 

「確かにそうだけど釈然としない」

 

「育成、勉強には金がかかるんだよ。俺はその金を注がれた。以上」

 

「解ってるけど納得したくない」

 

 だってさ、とトーマが此方を指さす。そんな此方の恰好を確認する。

 

 上半身裸。

 

 下にはトランクス一丁。

 

 つまりパンツ一枚状態。

 

 我が家、或いはアジトで人目を気にせずにいられる時にしている、基本的な恰好である。外に出る時は印象やら変装やら恰好の事を考えなくてはならずに面倒なので、アジトや家に居る間ぐらいはそういう煩わしい事を考えずに居たいと思った結果、こんな格好になる。

 

「まぁ、俺も良い子ちゃんだった時代があるし多少はね?」

 

「は?」

 

「なんだよその正気かお前って感じの表情。俺にだってまだ多少正気はあった時代はあるんだよ!! つか俺がグレたのは家を出た後だよ。その前は本当に成績優秀、運動抜群、コミュ能力高く人気者でクラスの中心にいるイケメンだったんだぞ」

 

「それが今じゃ暗黒イケモンと」

 

「誰がモンスターじゃ。まぁ、間違ってねぇけど」

 

 苦笑しながら本を捲り、これも違うな、と読み終わった本に纏める。適当に次の本を手に取り、それをぱらぱらと頁を進ませながら中身を確認して行く。此方は城に勤めていた名もない騎士の記録だった。

 

 まぁ、と声を零す。

 

「俺は学校の方でちょいキレて傷害事件を起こしちまってな。その責任を取る為に家を出たんだよ。親父も揉み消せるだろうけど立場があるしな。妹の将来を陰らせる訳にもいかねぇし。さっさと俺が責任取って出て行くのが一番早かったんだわ」

 

「へぇー……人に歴史あり、とは言ったもんだな」

 

「そうだな」

 

 もはや何年も前の事だが、思い出そうとすれば思い出せる。怒りのままに拳を振るい、そして雷を振るい、数人纏めて神経を焼き切って植物人間にしてやった時の事を。そうした事に一切の後悔はない。それだけ怒りを覚えていたからだ。だけどそれとは別に、果たしてあの時、自分が怒りのままに暴れなければ、どうしたのだろうという考えだった。

 

 あの頃の自分は、今の自分の姿が嘘かの様に理知的だった。

 

 品行方正という言葉が似合う青年。基本的に敬語口調で、今の様に適当な姿で転がっている事なんてありえなかった。そういう態度や言葉遣いを身に着けたのはやっぱり―――事件を起こして、自分の中で守って来たルールを壊してしまった事からだろう。一回、そうやってルールを壊してしまえば後は簡単だった。そこからは走り抜ける様に言葉遣いを崩して、そして家を出て行った。

 

 日常的に図書館に籠って勉強して、ブロイエ・トロンべを振るう為に庭で体を動かし続けた。父と母に褒められる事を一番の喜びとして、妹に対して誇れる兄であろうと考えていた。

 

 それが今では女をコマす事しか考えてないのだ。

 

 人間、どんだけ頑張っても落ちる時は落ちるものだ。

 

 それはそれとして、

 

「勉強はどんな環境であっても絶対に活きるからな。俺がどうであってどうなったか、というのはお前が勉強するのに関係ない。ほら、何時までもリリィのメンテを俺に任せてていいのか? 色んな意味で他人には触れさせたくないんならちったぁ気合を入れて勉強をしろ。それが中等部3年分の勉強が終わったら今度はデバイスマスターの技術を叩き込んでやるからな」

 

「ほんとなんでこんな奴が優秀なんだよ……」

 

 げらげらと嗤いながら読み終わった本をスタックする。これもまた外れ。トーマの言葉に笑いながら息を吐く。

 

「頑張れ、超頑張れ。ただし適度にな。突き抜けてフェレットみたいな賢い奴にはなるなよ。俺でもあれは理解出来ない」

 

「アイツ……ケモナーになるなんてな……」

 

「美少女に見慣れたからあっちのが良いって理論が理解できない」

 

「アイツをネタにするだけでしばらくは笑えそうだけど笑えない」

 

「わかる」

 

 ユーノ君は遠くへ行ってしまった……。性癖とかの意味で。流石にフェレットフェチは擁護不可能だと思う。

 

「あいつはなー。生まれはエリートの癖に自分からドロップアウトコースへと飛び降り自殺している辺りが凄い」

 

「真似したくないけどな」

 

「それな」

 

 真似は欠片もしたくはない。というか今度、情報収集に無限書庫へと向かうのが少し恐ろしく感じている。アレ、もしかして進化しない? いつの間にかメイドが全部動物系になっていてわくわく無限ランドとかにならないだろうか。流石に管理局側でノーが出るだろうからそれを信じよう。

 

 信じよう、浄化された管理局を。

 

 だが信じきれないのでユーノの声を使って彼の幼馴染を無限書庫に送り込もう。修羅場を作ってやる。たぶんげらげら笑える。

 

 そんな事を考えながら頁を捲ったところであっ、と声が漏れる。それを聞いたトーマがどうした? と視線を向けてくるが、何でもない、と手を振る。

 

「どうせならこの前見た乳パーツを購入しようかなぁ、って。数百万するんだけど人間では決して到達できない極上の触り心地になるとか」

 

「お前ほんと勉強妨害するの止めろよ」

 

 悪い悪い、と呟きながら小さく笑い声を零し、読んでいた本を確認する。これは城に勤めていた侍女の日記の様なもので、ヴィルフリッド・エレミアが拘束され、拘束中の彼女に食事を運んでいたという事が書いてあった。

 

 確かエレミアとはオリヴィエの盟友であり、オリヴィエにあの銀腕を与えた本人だった筈だ。だとしたら何故、ヴィルフリッドという名前のエレミアは拘束されていたのだろうか? そんな記録は読んだ事がない。

 

 ……となると鍵となる情報を知っているのはエレミアか?

 

 ジークリンデ? 知っている可能性は確かにあるが、もっと上の人間を問い質したほうが良いかもしれない。場合によっては忍び込む事も考えて。

 

「となるとやっぱり、デートか。うーん、予定を聞かなきゃなぁ」

 

「こいつ女の話から別の女の話に移ってる」

 

「これが特定の恋人を持たない、刺される覚悟を持った人間だけが行える遊びだ。真似するんじゃねぇぞ」

 

「絶対しないから安心して刺されろ」

 

 トーマの呪詛の様な言葉に笑いながら本を閉じて、放り投げた。そのまま腕を頭の下に組んで、目を閉じる。ジークリンデの予定を聞き出して、そしてエレミアの一族居留地へと向かう必要がある。行ったことはないのだが連中、今でも傭兵仕事で食っているから異常に強いんだよなぁ、と頭を悩ませながら、

 

 オリヴィエという人物を知る為の道が一つ、繋がった。




 デバイス、教育、設備、福祉。世界観を考えるとどんどん埋めて行くのだ。共通認識がやがて世界観を生み出すとか言いつつ次回、ジークを誘う。

 個人的に人型デバイスは自動人形あるのならそこまで珍しくないのでは? 実用性なしならば、という感じで。流石にリリィやエリーレベルとなると次元違いだろうけど。

 今までヒャッハーを描いて来たことはあるけど、ちゃんと情報収集するてんぞーヒャッハーは割と珍しいのでは?
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