※この作品はR-18です。

Stealing The Reality   作:てんぞー

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Free Choice Ⅷ

「死んでも家庭に俺が入ると思うなよ……!」

 

 結婚したら納税の義務が生まれる。今までの様な自由な生活が出来なくなる。恋愛? よろしい。だが特定の恋人? 家庭? 絶対にアウトだ。自由な生活はなくなるし、家庭に縛られるし、納税しなくちゃいけないし、表の時間が拘束されるし、裏で出来る事が制限されてしまう。第一、父親になんて成れるわけがない、自分が。家族とか家庭とか、そんな概念から最も縁遠い男なのだから。

 

 だからザ・聖王姫とハイディをそっくりそのままクラウスに渡して、帰って貰った。

 

 というか帰って貰わないと困る。そういう訳で無理やりにでも帰って貰った。そしてそれから準備や考える事が多い上に、確認しなきゃならない事も増えてしまったので、アジトへと追い出してから帰る事にした。

 

 アジトまでの帰り道は妙に黄昏ていた気がする―――が《境目》からは流石に警戒する必要もあるので、腑抜けた意識を一瞬で本来の状態へと覚醒させ、なるべく気配を殺しながら追跡、尾行されない様に入り組んだ廃墟都市の廃墟を抜け、越え、潜りながら進んで行く。そうやって浅層とも呼べる範囲を抜けて中層、そして深層の合間と呼べる狭間に到着したところで、一応無駄に距離を稼いでから、アジトの入り口の一つへと向かい、入り込んだ。

 

 地下にあるアジトへの入り方は一つ―――専用に構築されている《影路》を抜ける事だけになる。そもそもの設計からして、ネメシスの後継者のみが入れるように設計されているのだ。それ以外の侵入、脱出手段は物理的に大地を突き破る以外に存在しない。転移に関してはそれ専用の対策も施されているため、一種の地下要塞でもある。

 

 そうやってアジトにやっと、帰ってこれた。おかしい。朝にはシャワーを浴びて、良く睡眠をとったのにそれでも物凄い疲労感を感じていた。いや、その原因の大体は解っているのだが。それでも肩を軽く叩きながら、漸く帰ってこれたアジトの中で、

 

「うーい、戻って来たぞ家畜共。歓迎の声はどうしたー」

 

 と、帰還の声を放った。なんてひどいデートと帰郷になってしまったのか。これを短く表すには難しい。ただ一つ、今回の出来事を言葉にするのであれば、

 

 因果応報。それに尽きるんじゃないだろうか?

 

「ん? お、アレクじゃねぇか。お帰りー」

 

「よぉ、まだ生きてたか。まぁ、大量に飯を運んであるんだから当然だけどさ」

 

「お、そうだな」

 

 トーマのその返答を聞いて、数秒間、トーマを眺めながら無言を作り、懐に手を伸ばしつつ、銃身の長い、ハンドガンを引き抜いてそれをトーマの額に突きつけた。それを見て、トーマが汗を思いっきり流している。

 

「ん? トーマきゅん? なんでそんなに焦ってるのかな? なーにーをーかーくーしーてーるーのーかーなー!」

 

「な、なにも隠してないっすよ。何も。何もォ!」

 

「隠しても無駄なんだよぉ! その手の嘘の察知は特技だつってんだろぉ!! ただでさえ心に余裕がねぇんだからオメェ、あんまり俺をキレさせんなよ!」

 

「理不尽だぁ!」

 

 楽には死なせんぞお前、とトーマを脅迫していると、奥の方からエリーが出て来た。眼帯エプロン姿の彼女は片手に懐中時計を持っており、それが使用されたという事実にえー、と声を零す。銃を溶かして消し去りながら、トーマから視線を外してエリーの方へと視線を向けた。

 

「待って、時計案件だったの?」

 

「お帰りなさいアレク。そして答えは肯定になります。ECウィルスに感染した食料がどうやら保管していたロストロギアの方と反応を起こしてしまい、食糧庫を改造してしまいました。問題を処理しておきましたが、確認の方を宜しくお願いします」

 

 もしかして俺は夢を見ているのだろうか? なんか知らない内にアジトが消滅する直前だったとかいう報告を自分は今、エリーから受け取っている気がする。しかも何やら食糧庫がダンジョン化していたらしいとか。なんか、俺、悪い事をしたのだろうか? 朝から正気をゴリゴリと削られ続けている気がする。休もうと思っているのにそんな暇なく精神を削られている。

 

「そっかー。ダンジョンかー」

 

「うん……なんかECアルカンシェル・シュールストレミングドラゴンとかが出て来たヨ。最終的にはディバイド耐性取得されたりしてすっごい大変だったわ」

 

「すげぇな、逆にちょっと見たかったわ。というか携帯型空間歪曲弾そこにあったのか……前掃除した時に無くしたと思ってたんだけどなぁ……生物融合しちゃってたかぁー」

 

「もうやだこのアジト、なんてものを保存してるんだよ……」

 

 はぁ、と溜息を吐いて元凶のトーマを持ち上げ、バックブリーカーを軽くぶち込んでからその姿を床に放り投げて、蹴り転がしてリリィへと渡す。ちゃんとこの馬鹿を管理しておけよ? と言葉を送れば勿論、とサムズアップが帰ってくる。最初は自我の薄い子だったのに、こんな環境に囲まれて育っているせいか、物凄くキャラが濃くなってきている気がする。まぁ、それは頑張れ、トーマ。心の中でエールを送っておく。ただ個人的には特定の恋人を作ると女遊びが出来なくなって辛いぞ、という真理を教えてあげたい。

 

 それはともあれ、食糧庫へと到着する。中に入って確認すると、本来の姿を既に取り戻す様に処理されているらしいが、ちょくちょく、エクリプスウィルスが潜伏状態で部屋の中に漂っているのを心の目でとらえた。これがそれ以上悪さをする前に、掴む様に手を振るい、手の中に集めて圧縮し、それを指で弾いて虚数空間へと廃棄する。やはりトーマのECウィルス関連の制御は急務だ。数日空けているだけでこんなことになるのだから、オチオチデートにも出かけていられない。

 

 いや、今回はなんか、物凄い勢いを感じたけど。

 

「とりあえず、後でトーマの馬鹿はグランツ博士ん所に投げ込んでおくとして、あー……こことここ、ちょっとやばいか」

 

 ECウィルスの影響を受けている物が何個かあるので、それに近づこうとすると変異した植物が此方を食らおうとして来る。素手でそれを掴んで、そのまま虚数空間に投げ捨てて処理する。やっぱり、ECウィルスに感染した存在はどうやらその根幹が歪められ、生物兵器として改造されるように見える。流石禁忌兵器の名前には負けないよな、と思う。戦時だったらEC感染者を国の中に放り込んで軽く旅をさせるだけで、たぶんその国が生物兵器の苗床となって滅ぶだろうなぁ、というのが目に見えている。

 

 まぁ、自分がそれに対処、無効化できる技能持ちで良かった。なかったら出会った時点で詰みだっただろう。まぁ、そんな所だった。エリーが申告したように、食糧庫の異変については既に対処済みだったらしい。それでも幾つか、自分にしか認識できない部分の問題があるので、それを綺麗さっぱり処理した所で食糧庫から出る。

 

 それではぁ、と溜息を吐いて眼鏡とコートを適当にラックに引っ掛けて、そのまま上着を脱いで、居間のソファにそれを叩きつけたら自分の専用ソファに座り込んで倒れ込む。ふぅ、と息を吐きながら天井を見上げる。

 

 これからどうしよう、と。

 

「見ろよリリィ、あの人生に疲れたおっさんみたいな姿を」

 

「トーマのまるで学習しない姿勢、私好きだよ」

 

「す、好きとか人前で言うなよ……」

 

 トーマのあの姿勢には恐怖すら感じる。人間、あそこまで恋愛に純粋で居られるのだろうか……? 俺には到底無理である。気が付けば新しい子を探して口説いているのはもはや習性に近いのだから―――まぁ、それはともかく、漸く、漸くあの長い数日からこのアジトへと戻ってこれた。

 

 もう、一か月近く戻っていないような気分だった。やはりここが一番落ち着く。自分の居場所という物だろか、本能的な縄張りがここに設定されているのだ。だからここに来ると心が少し落ち着く。いや、実家も悪くはなかったのだ。ただ絶対に逃がさない、というすさまじいまでの気迫とヴィクトーリアの事を本当にどうしようというアレで心がやや休まらなかったというか。

 

 まぁ、それはまた今度だ。

 

「俺は疲れたよ……」

 

「そういやぁデートの後で実家に帰ったんだっけ? 何かお土産ないの?」

 

「俺に婚約者が出来そうって話がお土産だ。喜んで受け取れ」

 

「この人間の屑に婚約者とかそいつ正気かよ」

 

「それに関しては完全に同意するけど少しは考えてから喋ろよこいつ」

 

 何時も通りの軽口を交わしている、漸く戻って来たという感覚がして、落ち着いてくる。トーマもリリィと一緒に別のソファに座って、此方が家に帰っている間に土産話を求めて来る。居間には普通のソファとは別に、それぞれの専用のソファが用意してあり、大体それを定位置として座っている。トーマとリリィもそれぞれのソファに座り、そして此方へと視線を向けて来る。

 

「いや、ただ単に俺も貴族社会に居れば嫁を持たなきゃいけない年齢になったってだけだよ」

 

「小説とかではそういう話を聞くけどさ、実際、リアルだとそういう所どうなんだよ?」

 

 トーマの言葉にんー、と曖昧な声を零しつつ、昔学んだことを思い出す。まぁ、と言葉を置く。現代ベルカ社会は一言で言えば結構複雑な部分がある。なぜなら現代の価値観を備えている上で古代的な貴族的社会構築をしているのだ。現代の思想、理想、概念が存在しているのに封建社会や王政等を理解し、そして受け入れる事の出来る種族なのだ、どこかおかしいに決まっている。まぁ、貴族社会やその特徴はベルカの中でも目立つ一角だと言える。

 

「前にベルカの現代社会は昔管理局に貢献した現代貴族たちがベルカ復権を成し遂げた事で構築された、って話をしたよな?」

 

「あぁ、いつぞやの授業だよな?」

 

 トーマの言葉にソファに座りなおしながら頷く。実はこうやって他人にちょっとしたウンチクを説明するの、好きだったりする。

 

「現代社会に貴族という地位は名誉的なものであり、公的な力は持たない……と思うよな?」

 

「うん」

 

「あるんだな、これが」

 

「えっ」

 

「いや、だってホラ見ろよ、貴(・)族(・)は(・)基(・)本(・)的(・)に(・)聖(・)王(・)教(・)会(・)の(・)要(・)職(・)に(・)食(・)い(・)込(・)ん(・)で(・)る(・)んだぜ? 現代ベルカの社会的管理は管理局が3割、7割は聖王教会によって行われている。そして聖王教会は宗教組織と見せかけておきながら、その始まりはベルカ復権を行った貴族たちが構築した組織になっている……ここまで話しをすればまぁ、色々と見えてくるよな?」

 

「そう言えば当たり前に感じていたけど、聖王教会と現代ベルカの貴族って結構ずぶずぶだよね」

 

 リリィの言葉にそう、貴族と聖王教会はかなりずぶずぶなのだと説明する。そもそも貴族のほとんどが古代ベルカの貴い血筋の者たちから来ているのだから、聖王の周辺を固めていた血筋とか、割と聖王教会でも重要なポストを支配していたりする。まぁ、一族経営というレベルまでは行かないが、それでも古代ベルカの血筋はなるべく残しつつ聖王教会の運営に関わり続けている。

 

「真面目な話をすると、一般的、というか表向きにはないけど、古い血筋と新しいベルカの血筋では割と差別というか格差が存在する。そして古い家であればあるほど、昔の価値観をベースになるべく自分の血筋を保存しようとする。当然、一族単位で聖王教会に携わっていて、それでいて一族の血筋と名前がキーとなって関わり続けているんだから、なるべく血筋を古いままにして美味しい思いをしたいじゃん?」

 

「社会の闇を聞かされてる……」

 

 まぁ、聖王教会はそこら辺、身内経営が滅茶苦茶激しい部分はあるが、その理念や思想自体は真面目にクリーンなのだ、これ。だからこそ今までこの経営状態でも大丈夫だったのだが。まぁ、聖王の聖遺物が盗まれた、とかそんなスキャンダルが出てくるような事があれば話は変わるのだろうが、今の所割とそう言う問題は起きていないし、問題はない。

 

「まぁ、そういう訳でベルカの貴族社会においては多産と貴族間の婚姻は割と推奨されている、というかダビスタ感覚で次男や長女は家の結びつきを深める為にも送り出される。まぁ、探せばうちの血筋もどっかの別の家に混じってるんじゃねぇの? ってアレだけど」

 

 それにまぁ、それだけじゃないのだが。

 

「割と真面目な話、優秀な血を混ぜる事で優秀な子が生まれるってのは間違いじゃないんだよな。少なくとも資質、素質、才能の類は血縁で継承される事は割と多い。それを成長させられるかどうかというのは成長する環境による部分が多いけど、根本的な血統ってのは才能の土台とも言える部分を構築する為のもんだ……ほら、前俺が才能とかスイッチの話をしただろう? アレをダビスタで伸ばそうって発想だよ」

 

「理屈は解るけど、現代でそれを続ける意味が解らないってのが個人的な意見かな」

 

 まぁ、それを言っちゃおしまいって奴だ。ある意味、これが現代貴族の義務かもしれない。明確な義務というものはないが、それでもベルカは古くから文化を大事にしてきた。そして現代では多くの利権を手にしている階級でもある。それでも反発が少ないのは貴族が率先して夢(・)を守っているからだ。

 

 クリーンな組織、騎士という憧れ、それに触れる機会、そして騎士として、理想の貴族として振る舞う姿。そういう伝統と文化的な物を貴族は率先して守っている。その代わりに地主だったり、多少儲けていても目こぼしされていたり、そういう諸々の特権を行使出来ているのだ。

 

「普通に考えろ。聖騎士団の団長に俺と同い年の奴がなれるか?」

 

「……いや、あぁ、うん。普通は無理だよな」

 

 それを少しだけ考えてからトーマが答えた。じゃあなぜか、というのを続けてトーマへと聞けば、トーマが答える。

 

「周りが納得しないもんな、若すぎるって。団長って多くの人の上に立つ職業だし、普通に考えて若い奴が上に立っても文句が絶対に出るよな、実力があっても」

 

「正解。貴族という地位と立場はそういう不満を封じ込める意味でもあるし」

 

 言葉を止め、数秒ほど考えてから言葉を続ける。

 

「まぁ、親父からしたらそういう団長(クラウス)を支える意味もあったんだろうなぁ。次女と家とは半分縁を切った長男との婚姻、家に対する干渉はお互い受けないで済むし、義理の家族関係が団長と副団長の間では結ばれる。歳も実績もある親父がそうやってバックに家族関係であるってのは安心させる要素だし、公私でもフォローしやすくなる」

 

 まぁ、それが狙いなんだと思う。それ以外にも細かい事はあるのだろうが。例えばダールグリュンに王族の血筋との関係があるという実績を作るとか。イングヴァルト側でも俺が持つダールグリュンの資質変換の遺伝子を自分の家に取り込みたいという思惑があるのだろうなぁ、とは思う。

 

「昔はこういうの、あんまり本人の意思とか関係なくやってたらしいけど、現代は自由恋愛推奨から子供の頃からお見舞いとか交流会で面識を持たせて恋愛に発展させやすくしてるんだけど―――まぁ、今回にかぎっては俺のお手付きだし。ハイディ自身満更でもないというか割と乗り気だし。どこを向いても損のない話だからお見合い段階が刹那で婚約まで発展する訳だ」

 

「聞いてる限りアレクの墓場行きが決まっただけなんだけど大丈夫?」

 

 リリィの鋭い言葉に大丈夫じゃない、と溜息を吐く。

 

「結婚するって事は正式に家庭を持つ事だし、そうしたらまともな家に住む必要があるし、まともな職業で定期的な収入を入れて、納税の為にそれを証明する必要が地域の管理政府か組織に示す必要があるから今までの様にアジトで暮らしたり、お金を誤魔化したりするのがめっちゃ難しくなってくるんだよ……」

 

「致命傷じゃねぇか!」

 

 うん、そうなんだよ。結婚したらまず間違いなくトーマの面倒が見れなくなってしまうのだ。しかもそれだけではなく怪盗活動の時間さえも奪われてしまう。だからマジでやばいのだ、今回に限っては。ぶっちゃけ、ハイディは嫁としては割と良い、というか理想的な女なのだが―――まぁ、怪盗を止める事は出来ないので、残念だが結婚は出来ない。

 

「何より結婚したり特定の恋人作ったら俺のフリーセックスライフが終わる」

 

「やっぱお前結婚して死ねよ」

 

「やだぁ! 拙者納税したくない! したくなぁい!」

 

「納税したくないとのたまう18歳」

 

 最近、リリィの毒舌がパワーアップしている感じがする。まぁ、それはそれとして、結婚なんて冗談ではないので、しばらくは実家から完全に逃げる必要がある。というかクラウスに今の《外》での住まいがバレてしまったので、あそこもしばらくは寄り付きにくい。父の事だ、俺を見つけたら気絶させてでも式場に連れて行くに違いない。断じてそんなところへと向かう訳にはいかないので、全力で逃げ回る所存である。

 

 つまり、しばらくはアジト生活になる。

 

 聖王姫の事もそうだが、家庭の事も、何故こうも問題は重なってくるのだろうか。非常に困る、このタイミングは。とはいえ、対処できるのは一つの事だけだ。だから一つ一つ、冷静に見て、考えて、そして判断する必要がある。

 

「ま、そんな話さ。実家に戻ったら今度こそ睡眠薬でも飲まされて強制的に出荷されそうだし、あっちには近寄らないってだけ」

 

「幸せなのか、そうじゃないのか複雑なラインだよな……」

 

 ま、それまでの話だ。とりあえず土産話は終了。ここからはそろそろ、真面目に考える必要がある。自分が何をどう行動すべきか、その判断の所だ。ソファに座り込みながらどうするべきか、と悩みこむ様に片手で頭を抱えて考える。数秒ほど悩んでいると、マグカップを片手にエリーが出て来た。

 

「疲れているようでしたのでホットチョコを」

 

「ありがたい」

 

 エプロン姿のエリーからマグカップを受け取り、その中の溶けたチョコレートを口の中へと運んでゆく。喉を通して体の内側から暖かくなって行く甘い味に、糖分が補給されるのを感じられる。ちびちびとそれを口に運びつつ、一旦情報を整理する事にした。

 

 問題A、オリヴィエとヴィヴィオの状況。

 

 この問題はオリヴィエとヴィヴィオがお互いを認識する形で共存しているという事にある。これは本来はあり得ない事である。その特異性は継承した記憶でも目撃されていない。それ故に今までのケースとは大いに違う状況が構築されている。

 

 問題B、二人の主張。

 

 前の問題から引き続き、オリヴィエとヴィヴィオはお互いを認識している。そしてそのせいなのか、お互いの心を理解している部分がある様に見える。そしてそれと同時に、二人がお互いの主張を否定している。お互いの主張を否定し、そして自分自身こそが消える人物であるべきだと主張している。そのせいで楽に終わらせられるところが、複雑化している。どちらか一方を決めれば、もう片方が協力して、もう片方が邪魔をするだろうというのは見えている。

 

 問題C、俺がどうしたいのか。

 

 オリヴィエ、そしてヴィヴィオは共に心を許した女であり、どちらが先、どちらが後というのは関係のないレベルで入れ込んでいるのは事実であり、どちらか一方が消えなくてはならないという事実に対して心が悲鳴を上げそうになるほど、苦しみを感じている。だが問題解決の為、そしてネメシスの名を貶めない為にも、絶対に怪盗をしなくてはならない。その放棄はゲームの放棄でもある。それは認められない。

 

 問題D、タイムリミット。

 

 最終的には怪盗を行い、盗み出して幻想を幻想へと戻さなくてはならない。だがこれにはタイムリミットが存在し、今月中に決着を付けなくてはならない。だから悩む時間は極限までない。行動を起こすのであれば、今から動き出さなくてはならない。

 

 ……とはいえ、困ったことに、ど(・)ち(・)ら(・)も(・)選(・)び(・)た(・)く(・)な(・)い(・)と自分の心が告げているのが解る。それはあり得ない選択肢なのだ。ヴィヴィオも、オリヴィエも、どちらも今でも好きだ。愛していると断言できる。

 

「……」

 

 考える……今、決めるべきなのは俺の判断であり、そして同時に知るべきなのはヴィヴィオとオリヴィエの内心だ。

 

 何故オリヴィエは自分が消えるべきだと判断したのだ? 何故ヴィヴィオは自分が消えるべきだと宣言したのだ? オリヴィエもヴィヴィオも、どちらも自分に素直なタイプだ。自分の欲求は素直に口にするタイプの女……だからこそ、この廃墟の中で生きて行けたのだ。そうじゃなきゃずっと前に死んでいる。そこら辺の欲望は素直に強い筈なのだ。

 

 なにせ、俺(・)を(・)フ(・)っ(・)て(・)聖(・)王(・)教(・)会(・)に(・)行(・)っ(・)た(・)女(・)共(・)なのだから。

 

 だからこそ解せない―――何故あんな風に乗り込んできたのだろうか?

 

「……うーん、やっぱ潜る必要あるか」

 

「うん? どっか行くのか?」

 

 此方の呟きにテレビを見ていたトーマが反応したので、あぁ、と答える。何よりも今回はオリヴィエとヴィヴィオの心を知らなくては話にならない。とはいえ、普通にデートに行っただけでもあの二人がそれを口にするとは思えない。だとしたら裏技に近い方法でその心のガードを剥がさなくてはならない。

 

 直接心にその想いを聞き出さなければならないだろう。

 

 となると向かう場所は一つだ。

 

「海に行くか」

 

「……へっ?」

 

 呆ける様なトーマの表情に小さく笑い声を零しつつ、あの聖王姫二人、その真意を問いただす為に、自分はまず、

 

 その心に潜らなくてはならない。

 

 潜脳の時間だった。




 ベルカ周りに社会的なお話。こういう事をなんか真面目に考えたり作ったりするお話しって少ないよね、大体ベルカに関連する二次ってDSAAメインばかりだし。

 まぁ、原作を完全破壊してここまでベルカするのがてんぞーぐらいなのだが。某所ではアイツベルカばっかりやってるなぁ! とさえ言われている。好きなキャラがベルカなだけだったもん!

 という訳で次回、心の海へ。
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