―――とある男の話をしよう。
男は神を信じていた。その男は敬虔な信徒だった。男は日々の恵みを神に感謝し、生きる男だった。良い妻に恵まれ、そして子供に恵まれ、男は幸せな人としてささやかに生きていた。男には突出した才能があった訳でもない。男には突出した特技があった訳でもない。その為、飛び抜けて裕福な暮らしを家族にさせてあげられた訳でもなかった。それでも家族は幸せだった。幸せでいた。
このまま幸せであっただろう―――何もなければ。
だがある日、男の日常は変わった。
男から妻が消え、子供が消えた。生まれた、出会った、その事実さえも消え去り、誰も男の生活を知らなかった。男は走り、駆け巡り、そして話を聞いてその数十年間、一人暮らしである事を教えられた。そんな事はあり得なかった。男の手には家族のぬくもりがあったのだ。家族の記憶があった。家族の記録があった。男は今見ている現実こそが偽物であると叫び、狂人だと思われた。
だが男は正気だった。男は心が強かった―――この前でも絶望せず、家族が存在したという証拠がなくても、諦めない程度には。
―――素晴らしい。実に素晴らしい。
神は男をそう称えた。お前は
だから神は男に言った。お前から家族を奪ったのは戯れだった。暇だった。何か面白いものが見たかった。そして諦めずに頑張る姿は実に良かった。だからお前の願いを叶えてやろう。幸せな家庭を返してやろう。妻を返そう。子を返そう。再び幸せな生活に戻ると良い。お前は試練に打ち勝ったのだ、と。神はそう告げて満足していた。そしてその神に対して、敬虔な信徒はこう答えた。
男は敬虔な信徒だった。男は妻を愛していた。男は子を愛していた。男は日々を神に感謝していた。だが男の答えはNO、Fuck You、地獄に落ちろ、うるせぇカスが。このポークビッツめ黙っていろ。思いつく限りの罵倒を口から吐き出し、男は笑っていた。神を相手に見下しながら宣告したのだ。
妻も子も、お前に与えられたものではなく、男が自分の人生、自分の手で手に入れたものである、と。男が自分の力で口説き、養い、家庭を作り、そして作り上げたのがあの家族だった。それが消えたとして、それが一瞬で取り戻せる物か?
否、否、否―――そして否。
貴様ごときがそうやってあっさりと引きずり出せるような無価値なものではないのだ。自分の家族がそんなものである筈がない。神の恩寵等要らぬ。神の慈悲等要らぬ。黙って眺めていろ、神よ。
お前は不用意に人の生活に踏み入った―――だからお前は人に負けたのだ。
男は家族を失った。それは最初から存在しないという事実に入れ替わった。故に男は永遠にその家族を取り戻せない。神がそれを男に説明し、男はそれを理解し、それでも、と言った。男は幸せだった。男は自分の手で作ったこの人生を愛していた。たとえ理不尽で奪われたとしても、男はそれを嘆き、苦しみつつも受け入れる事が出来る。なぜならそれが生きるという事だからだ。
男は神との対峙で一種の悟りを得ていた―――そしてその結果、神の誘惑に打ち勝った。
そう、男は勝利してしまった。神が差し出してくるあらゆる誘惑、甘言、それに乗る事はなく自分の人生は自分の物であると、奪われ殺されたとしてもそれで満足が出来るのだと言ってしまったのだ。本来はあり得ない、人による神の否定。それは何でもない事であり、当然の事でもあり、また同時に、
絶対にやってはいけない事だった。
当然、神は怒った。男を殺して、生き返らせてはもう一度殺して、苦しめるだけ苦しめてから殺し、再び殺し、また殺し、そしてさらに殺して殺して殺し尽くし―――それでも敗北したという事実は覆らなかった。それが神を怒らせ、そして同時に、酷く冷静にさせた。だったらそう、この余興を続ければいいのだ、と。
男は伝えられた。
これからも男の様に、過去を失う人間が出てくるだろう。或いは世界そのものが過去を変えられるだろうと。男は良く楽しませてくれた。だけど一回だけじゃ勿体ない。他にも友人を呼び、そして一緒に観賞するから
それが地獄と無勝利の始まりだった。
「……男は自分の代で現実を元に戻す方法を、同じ現実の変化を観測できる概念能力持ちの仲間と共に見出した。それを使って神々が広げる理不尽なゲームに対して挑み、元に戻す事で敗北から逃れる。そしてそれを次の世代へと繋いだ。繋いで、繋いで、繋ぎ、継承し、勝利の存在しない不毛なゲームを何度も何度も繰り返し―――」
「―――そして、今に至る、と」
「ま、そういう事だ」
家、リビングに怪盗一味の関係者が集まっていた。
ユーノ、トーマ、リリィ、エリー、オリヴィエがここに居る。ハイディ、クラウス、ヴィヴィオに関しては聖王教会が今の所忙しすぎてどう足掻いても面会する事が不可能だった為、また後日になる。ともあれ、今は話の出来る面子を全員集め、説明を行っている。つまりはユーノとトーマ、リリィを相手に説明しているという事だ。自分の正体は、そして本当の怪盗としての目的は、という部分だ。
だからユーノは眼鏡を持ち上げながら成程、と声を零す。
「現実改変による事実編纂による影響を解く為の怪盗、か。確かにアレクの能力の特性を考えると不可能ではないよね。そもそもアレクの能力自体がかなり異質だし。ただプロセス的には納得いくものだね。そもそも現実改変の核として人間の妄念や執念、幻想を利用するという手法が僕には意味が解らないけど」
「昔は《悪意の種》とか呼ばれていたらしいけど、もっぱら最近の言い方、ドクに言わせりゃあ《イベントトリガー》って呼び方の方が遥かに解りやすいと思うね」
「あぁ、成程。根本的に見方が違うのか。本当に僕らをテレビの向こう側を眺めている様な感覚でセッティングしているのか。そして特定の条件を満たした時に発動する様に設定して……本当にイベントのトリガーだからまんまじゃないか……」
「そう伝えられてるから俺は神って呼んでるけど、ドクとか情報屋の旦那とかはアレ、神を嫌ってるから上位存在、高次元存在、Fourth Dimentionの人という事からFD人とか呼んでるな」
「あぁ、成程。確かに其方の方が便宜的には解りやすいから。四次元存在か。確かに的を射ているなぁ……」
ユーノの疑問に答えながら一通り話し終わった所で、ユーノが納得していた。やはり天才、というか頭の回転力がまるで違う。此方の話した事を自分なりに即座に解釈して飲み込み、話と話を繋げて理解して行く。この男に対する説明は細かくしなくてもいい所が非常に便利な所で、話を聞いていたトーマはその間、
ずっと首を傾げていた。それを見て、リリィがトーマに説明する。
「つまり悪い神様が好き勝手世界を変えてるのを、アレクさんだけが解ってるからこっそり文字通り世直ししてる、って事だよ」
「成程。なんで性癖歪みフェレットもノンケレズ怪盗もそう説明しないんだ?」
「口の利き方には気を付けろよ童貞」
「お前にもフェレットの良さを教えてやろうか」
「ひぇっ」
ユーノの脅しに一瞬でトーマがリリィの背後に隠れる。リリィはそれを見て、溜息を吐きながらもトーマの頭を良し良し、と撫でている。間違いない、リリィは間違いなくダメンズ系だ。ダメなトーマ可愛いとか思っているタイプだアレ。いや、まぁ、そういう趣味なら別に文句は何もないのだが。ただその道は荊の道だぞ―――主にトーマの方が。
「ま、まぁ、それはそれとして!」
「フェレット……」
「小声で脅すのほんと止めろ」
ユーノがニヤリ、と笑みを浮かべているのをトーマが受け流しつつ、再び声を放ってきた。
「なんで黙ってたんだよ」
「お前らじゃ変化そのものを認識できないからな。連れて来たところや説明したところで戸惑ってばかりだろうしな」
「実際、私には初対面対応でしたしねー」
オリヴィエがクッキーを口で咥えながら呟いていた。その腕には当然のように義腕は装着されていない。そもそも、この女、腕を与えると際限なく自分でやろうとするという事が解っているので、しばらくは腕に関しては完全に没収、封印する方向性で決めていた。そしてそんなオリヴィエの言葉にユーノは頷くが、トーマがちげぇよ、と言葉を吐いた。
「そういう事じゃねぇよ。解らなくて、困惑するかもしれないし、というか今でも混乱してるわ。なんだよ、現実改変ってよくわかんねぇよ。だけどんな事どうでもいいんだよ。お前が俺の友達、保護者で、んで恩人で仲間だって事実があるんだからさ」
頬を軽く掻きながら、言葉を続ける。
「……その、ぶっちゃけ、訳が分からなくても。仲間の為なら別に、全力で手伝ってやるに決まってるじゃん」
「良く言えたね、トーマ」
トーマの頭を撫でて甘やかしているリリィを見ているとトーマの未来が危ぶまれる。まぁ、でも時々毒舌でバックスタッブしているし、丁度いいバランスなのだろうか? 苦笑しつつそんな事を考え、軽く息を吐き、ユーノへと視線を向ければ、ユーノも眼鏡を取りながら、
「ま、僕が言いたい事は全部言われちゃったからね。ただもうちょっと、仲間を信じてくれても良かったんじゃないかっては思うよ」
「おっしゃる通りで」
ぐうの音も出ない正論だった。だからここは正直に、偽る必要もない。
そのまま頭を下げた。
「見くびってた。解らないだろうからって見下していたフシもある。正直すまん」
「じゃあ許す」
「超許す」
いえーい、と声を零しながら三人でハイタッチを決める。それを見てオリヴィエが首を傾げる。
「男の人の友情は不思議ですねー」
「男の友情というよりはこの三人の頭がおかしいだけだと思います」
「失礼な、アレクが一番おかしいですよ」
「フォローになってないぞエリー」
「……?」
突発的にポンコツになるのは何かの不調なのだろうか? と、そう言えばそろそろエリーとリリィをメンテナンスしなくてはいけないな、そう思いだしながらソファに深く座り込む。そうすると当たり前のようにオリヴィエが股の間を独占する様に座り込み、視線であれが食べたい、とクッキーを向けて来るので、片手で摘まんでそれを持ち上げ、オリヴィエの口元まで運んで行く。
それを見ていたユーノとトーマが服の裾を掴んでそれをパタパタとジェスチャーし始めるが、トーマが即座にリリィに捕まって、同じことを求められて滅茶苦茶テンパっている。これだから恋愛糞雑魚族はダメなのだ。煽る時はまず自分を顧みなくてはならない。
「さて、珍しい謝罪の言葉をアレクから引き出す事に成功したから良いとして―――次の話をしようか」
「次の話? 気になる! 俺それ超気になります! 気になるから! だからね、リリィね、また今度って事で!」
「また今度、という事はしてくれるんだよね?」
あいつ、墓穴を綺麗に掘るのが上手いなぁ、と顔面蒼白になるトーマを無視してユーノの言葉に―――オリヴィエが続いた。
「つまりはこれからの怪盗活動に関する指針ですよね? 今までのターゲットは現実改変を可能とする《トリガー》以外も含めて来ました。そしてユーノさんやトーマさんはそういうのを相手にしてきましたが、これから《トリガー》を相手にするかどうか、その事を考えなくてはいけないという事ですね」
えっへん、と人のセリフを奪って無い胸を張っているオリヴィエの口の中にクッキーを三つ押し込んで黙らせる。それを受けてユーノがそうだね、と言葉を漏らす。
「話の大前提として変化を認識できるのが数名だけだから、場合によっては僕やトーマが正しく認識できない結果、仕事に完全に身を入れられない場合があるんだよね。僕個人は正直、君のいう事だったら信じる覚悟はある―――だけどその大前提そのものを崩すのがこの現象の一番恐ろしい部分だと見た」
「えーと……それはつまり、俺とフェレットが根本的にアレクを信じられない風に現実が変わってしまう場合がある……って事だよな?」
「場合によっては裏切り者になっている事もある。そして何よりも怖いのは僕と恋愛弱者ではそれが正しくないって事を認識できない事だ」
その言葉にトーマが腕を組み、首を傾げ、天井を見上げ、そしてゆっくりと視線を下ろし、
「……詰んでね?」
「ま、普通だったらね。ただ僕が想像する限りならそこらへん、アレクなら割と判別つくと思うんだけど?」
その言葉に頷く。元々の現実、或いは真実とも言える領域の認識、それが問題なく行えるのが自分の特権だ。だから一切の問題なくそこら辺は出来る。たとえユーノとトーマが裏切り者として情報を改竄されても、自分であればそれを即座に察知する事が出来る。なので信頼できるかどうか、それを即座に理解できるのだ。
その返答にじゃあ、ってトーマが言葉を放ってくる。
「益々俺達を放置する意味ねーじゃん」
「本当におっしゃる通りで」
「まぁ、アレクにもアレク側の悩みとかあったんだしね? そこら辺は考慮するけど本当に次回は呼んでよー、もー」
「気持ち悪いからその言い方止めろ」
まぁ、そういう訳で―――次回があるなら、確実にトーマとユーノは味方として頼らせて貰う事にする。そしてもし二人が信用できない状況になっていれば外す。そういう風に今回は話し、そして決める事となった。それで一旦、この話に関しては閉める事にする。とりあえず今回の怪盗に関してはこれで既に決着がついているのだ。反省して、次は誘う事にして、それで知っている事を共有して、話は一旦切る。
そうなってくると、浮き上がってくる問題は、
「―――うん? 私がどうかしましたか? 見惚れてもいいですけど私、アレク専用ですからね?」
こいつの事だった。正確にはオリヴィエとベルカ教会関連の話だった。問題は自分がクラウスに正体がバレた事、オリヴィエという忘れられた聖王の血筋が生み出された事実、そして彼女の存在は世間に公表出来ないという事実であり、クラウスとの接触はつまり、オリヴィエを再認識させるという事でもある。真面目な話、オリヴィエの存在は生きている爆弾だった。だからといって見捨てるという選択肢は欠片も存在しないのだが。
ユーノがこっちを見ながら口を開く。
「……ちゃんと飼えるの?」
「あ、心配なら首輪とリード装着してもいいですよ。所有感ありありでちょっと興奮します」
「性癖の話はまた今度ねー」
「でも高貴な血筋を奴隷やペットのように扱うのってロマンはあると思う」
ユーノとオリヴィエがたぶん天才的な頭脳だと思えるようなもので通じ合ってアイコンタクトを決めている。頼むからその頭脳を異次元の方向へと発揮させないで欲しいなぁ、と思うけど無駄なのでさっさと諦める。喋らせれば喋らせるほど残念になって行く王女様―――なんでもない、庶民で、責任とか義務とか、そういう環境から完全に開放されて漸く見られる姿なので、
それを見ていて呆れつつも安心してしまう自分も、結局は彼女にやられてしまっているのだろう。
だがそれはそれとして、少し黙らせる為に口にクッキーを近づければ、それに噛みついてくる。そしてそれを食べた所で、喉が渇いた、と視線で主張して来る。まぁ、確かにクッキーを口の中に詰め込み過ぎたのは事実だ。だから用意しておいたミルクの入ったコップを取って、それをオリヴィエの口元へと運ぶ。それを飲むのをオリヴィエが受け入れて、ゆっくりと口の中にミルクが入り込んで行く。
「ふぅ、やっぱりクッキーには牛乳ですね。胸は育ちませんけど」
「今更育っても困るだけだろ? そのままのお前でいてくれ」
「君たち二人には色々と言いたい事もあるけど、なんかもういいや……」
ユーノの諦めの声にそうか、と小さく声を零しつつ、まぁ、と言葉を続ける。心配する必要はそこまでないのだ、ぶっちゃけ。
「俺が昔囲っていたのは事実だし、その間は時々売り飛ばされそうになるだけでそこまで大きな問題には発展しなかったからな」
「基本、ここに住んでいる人たちに信仰心という概念はありませんからね。それに私もアレクも隠れて住む事も、こうやって介護される事もかなり慣れているので問題ありませんよ。ぶっちゃけ、A級次元犯罪者まででしたら私も腕がないまま圧殺する事出来ますし、心配する必要はありません」
まぁ、定期的にやってくる管理局の捜索とかに関しては気を付ける必要があるが、それはそれ、今住んでいる拠点は廃墟都市の中層、その地下で魔法では見つけられないアジトの中なのだから、管理局がどれだけ探そうともアルカンシェルでもぶっぱなさない限りは見つける事が出来ない様になっているのだ。
心配した所で無駄なのだ。
一体俺とオリヴィエが何年間あの劣悪な環境で生きていたと思っているのだ。もう自分の家の裏庭の様に知り尽くしているのだから、他人が心配する所で無駄だと主張しておけば、そうか、とユーノが息を吐き、それじゃあ、と声を零す。
「僕の主観では一応、僕とオリヴィエさんは初対面って形になるんだ」
「はい、そうですね」
「で、聞いた話オリヴィエさんは古代ベルカの事も記録してらっしゃるとか」
「えぇ、一応は。そういう設定ですので」
「設定という言い方はやめろ」
「じゃああの時代の生活とか失われた文化とかに関する事も勿論知っているよね? 個人的に聖王とかどうでもいいけどそっちの方が興味あるんだよね!」
流石オタク……、と苦笑しながら、とりあえずまず話し合わなければならない事を話し終わったため、空気が緩くなった。はぁ、と息を吐きながら後ろへと倒れる様に背中をソファに預ければ、それに従うようにオリヴィエも此方に倒れ、背中を預けて来る。再びこうやって彼女をこの両手で抱けるようになるとは、少し前までは考えもしなかっただろうなぁ、と思う。
良い意味で、自分も変われたのだろう。
後はヴィヴィオだけだ。あいつも聖王教会に居るべきではない。なるべく近いうちにあの教会から盗み出す。もう預けている、何て事は言っていられないからだ。だけどそれが終わって、アジトで騒がしい共同生活が始まったら、そうだ、
「―――一味で慰安旅行に行くか」
「お、いいねぇ。有休が消化できずにいるから僕の方は余裕だよ」
ユーノは乗り気だった。そもそも旅行という概念さえ忘れているレベルで普段は働いているのだから、当然と言えば当然だった。まぁ、俺も旅行なんて久しくしていない。子供の頃に数度、家を出る前にという形で、此方へと流れついてからは一度もそういう機会はなかった。となると割と楽しみになってくる。
「温泉とかいいよなぁ」
「あー、冬だしねー。冬に温泉はいいよ。僕は経験なんてないけどね! 管理局のお偉いさんが楽しそうに自慢してたよ!」
「悲しい話はやめろ」
でも温泉は悪くない。個人的にもゆっくり温泉に浸かりながら酒を飲むというのもちょっと興味がある。暇な時にいい場所をリストアップしておくか、と考えておく。と、そこでトーマが口を開く。
「旅行って言うけどさ、海外に出られるの? 俺達?」
「密入国すりゃあいいんだぞ」
「やっぱりそうなるかー」
「まぁ、今回の件のお詫びって事で費用は俺が全持ちするから、それで許してくれ」
「超許す」
「許した。それとリリィさん? あの、ちょっと密着がですね……」
「何か問題あるのトーマ?」
「はい! 何もありません!」
オリヴィエの真似をしているのか、リリィがトーマの股の間を占領する様に座っていた。それを滅茶苦茶恐れているというか、ドギマギしているトーマがソファの奥に座り込もうとするが、それを追いかける様にリリィが更に距離を詰めて来る。あの二人、見ていると楽しいよなぁ、と思いながらオリヴィエを餌付けし、
なんとか、反省会を終わらせた。
これでしばらくは日常へと戻れる。
ごめんなさいが出来るのはちゃんとした大人の証。失敗を認めて反省出来る奴が大人とも言える。
という訳で後はヴィヴィオをどうにかして連れ出すのだ! その前にお話しとかあるけどね!