ユーノ・スクライアという青年は天才だ。
まだ少年の時分でユーノは単身で無限書庫という時空管理局が保有している巨大な知識の貯蔵庫、それを効率的に管理する方法を編み出した。それまでは腐っていたとされる無限書庫の管理、アクセス方法を個人で改革する事を完了させたユーノがそのまま自然と勧誘され、無限書庫へと就職するのは想像するのが難しくはない話だった。ユーノ自身、過去の話や記録を見るのは趣味の一環であり、スクライア一族の為にもなると非常に乗り気で無限書庫の司書へと就職した。つまり、ユーノの管理局入りでもあった。だが話はこれでは終わらなかった。
若くして改革してしまったユーノは完全に他の司書や司書長から敵として認識されてしまった。当然の話だ。ユーノが単身で、そして一瞬で無限書庫を活用可能な段階まで整えてしまったのだ。だったらそれまで管理していた人間をどう見る? 当然、無能の集団としてしか理解されないだろう。そうやって生み出された敵意がユーノへと向けられた。
妨害による足の引っ張りが始まった。それだけではなく、ユーノという存在を貶める為の計画さえ用意された。偽の証拠を偽装し、それでユーノという少年から信用を奪うという計画が用意された。その悪意に対する用意がユーノには―――無かった。当然、そんな事を考えもしなかったし、理解も出来なかった。それを偶然知ったユーノは酷く狼狽え、しかし助けを求める事さえ出来ずに破滅が待っていた。
自分という怪盗と出会わなければ、という言葉が付くが。
簡単に言えば、ユーノ・スクライアを悪の道へと引きずり込んだ主犯は俺だった。偶然知ってしまい、そしてどうすれば良いのかというユーノの言葉に対してハメられたのなら、ハメ返せばよいのだと教えてしまったのだ。それを天才が正しく認識に至ればどうなるのか? 認識から学習が始まり、そしてそれが理解へと至る。
つまり、その一言が原因でユーノ・スクライアはやられる前にやれ、或いはやられたら盛大にやり返せという言葉を理解してしまったのだ。そもそも頭脳労働を得意とする少年、一度ラインを超えてしまえばアクセルを踏み切ってしまう性質を兼ね備えていたようで出来る事を認識した瞬間、
指示を出す腹黒眼鏡が生まれた。
言葉を与えてから誕生するまでにかかった時間僅か5秒。葛藤さえなかったゴッドスピード覚醒だった。お前本当にそれでいいのか、と叫びたくなるような道の踏み外し方だった。誘惑とかそんなものはなく、勝手にアイデアを掴んだらそのままスキップして道から飛び出したイメージだった。そうやって、怪盗一味の参謀であるユーノという生物は誕生した。
此方に指示を出して指定した人物から不正や偽装の証拠を押収し、それをユーノが利用して告発、そうやってユーノ・スクライアは無限書庫における安全を完全に掌握したのだった。そしてその上で最後に放った言葉が最高にイカレていた。
ある意味、身内の中で一番ぶっ飛んでいるというか倫理観大丈夫? 君二桁程の人間から職業を奪ったばかりだよ? 再就職絶望的だよ? と、聞きたくなるような頼もしい味方の誕生だった。そんなユーノはあまりアジトの方には顔を出さず、家の方にも顔を出さない。ユーノの覚醒とでも表現すべきXデーが原因で、大量に首切りされた司書が生み出され、それで無限書庫というカオスから人手が大きく消えてしまったのだ。
ユーノが無限書庫の有用性を示して利用される様にし、そして人手が消えた結果、無限書庫に空前絶後の超ブラック環境が構築されてしまった。というか一種のダイナミック自殺だったのではないか、と昔を振り返りながら思う事がある。
そういう事実もあり、次期司書長が次上がる人間がいないという事もあって半ば確定しているユーノは、基本的に無限書庫で寝泊りしている。偶の休日に家に帰って寝るという程度の割とやばい生活を送っている。溜まった有給は怪盗団の活動用に温存し、それ以外では大体無限書庫で生活している。その為外で見かける様な事は滅多にない。
ただ、その代わりに、ユーノは表向けの仕事……というよりはアルバイトを用意してくれる。カバーとかそうじゃなくて、ちゃんとした仕事を、だ。日常的にあまり関われない分、家賃代わりの感覚で割の良いアルバイトを此方へと回し、無限書庫へと呼び寄せて一緒に仕事をするのだ。
それが、俺とユーノ・スクライアという青年のコミュニケーションだった。
「や、いらっしゃい」
「お前、それ何徹目だよ」
「まだ3徹目だから大丈夫。君が仕事を終わらせてくれれば二日程ゆっくりできる時間ができるしね」
「お前はさー、本当にもうさー」
無限書庫の扉を開くと、無重力の領域でぷかぷかと浮かび上がる、ややぼろぼろのユーノが迎えてくれた。髪の毛が徹夜の影響でボサっとしている様子は、どこか疲れている様にさえ感じる。まぁ、社会的に成功していることが必ずしも幸せにつながるという事ではないのは、目の前のユーノの姿が何よりも雄弁に語っていた。
呆れながらも無限書庫の中に踏み込めば、飛行魔法を使わなくても自然と体が浮かび上がる。飛行魔法の適性が完全に0であるだけに助かる。何せ、無限書庫内部は基本的に完全な無重力状態になっている。無限、とも表現できるだけの膨大な書籍が無限書庫には収められている。《始まりの本》と呼ばれる一冊がこの無限書庫の最奥には存在し、それが無限に存在する情報をランダムに本にして、無限書庫に登録しているという事実があるからだ。
つまり、その一冊をどうにかしない限りは本が無限に増え続けるのだ、ここは。
だがそれとは別に、探せば絶対に見つかるという事実でもある。
《始まりの本》の影響で無限の本が増え続けるこの空間は、本同様に勝手に改築し、無限に広がって行く図書館でもある。その為、管理と把握の手間が異常であり―――望んでいない本の類まで紛れ込む。それらを全て納めるこの空間はその重量を支える為に無重力状態となっている。
飛行魔法が使えれば移動は更に楽になるが、無重力状態なので壁となっている棚を蹴って移動する事が出来れば全く問題なく利用する事が出来る。飛行魔法の適性が存在しない自分は、そうやって棚を足場代わりにして移動している。これがまたコツが必要であり、失敗するとくるくると無重力空間で無限回転し続ける事もあるらしい。少なくとも入った瞬間にコツを掴んだ自分はそんな経験をしなかった。
ともあれ、促される様に中に入れば、そのまま鎖が出現する。ユーノが移動補助用に生み出した一時的な足場だ。その上に足を乗せて軽く空間の反発を生み出し、鎖を押し込む。
「えーと、何時もの所で良いんだよな?」
「うん、そっちの方に集めているから」
「あいよ。じゃあさっさと移動するか」
そう言葉を告げてから鎖の反発を利用し、一気に加速して矢の様に飛び出した。無限書庫の中を高速で抜けて行きながら棚の縁を蹴り方向転換しつつ一気に素早く移動を繰り返す。怪盗の時も基本的には重力を軽く遮断したビル壁を蹴った加速跳躍がメインの逃亡移動法なのだが、コツはそれと一緒なので、困る所はない。目的地までのルートは何度も通った事があるので理解しているし、そもそも飛行するユーノが一緒である為、迷子になる事もない。
そうやって数分間、少し入り組んだ書庫の中を進んで行けば、空間が微妙に揺らめき、不安定な無限書庫内部で、存在がはっきりとしている扉の前に到着する。その扉を開けて、向こう側へと抜ける。
そこは無限書庫内部に組み込まれた、外付けのセーフルームだった。不安定で少し、混沌としている無限書庫内部でも安全に休める様に生み出された、存在として固定化されている部屋。ここでなら書庫内部の不思議な領域に干渉されずに休み、仕事が出来る様になっている。
この部屋の主はユーノであり、盗聴対策等も施されている他、怪盗の仕事用にある程度改造もされており、ここから仕事のサポートが出来る様になっている。
また、ここが自分の仕事場でもあった。遠慮なくユーノと怪盗の話をしながらアルバイトが出来る場所である。そんな部屋の中には100ではすまない本が積み上げられていた。その姿にうげぇ、と声を漏らす。本来であればそれなりに広い部屋ではあるのだが、今は本によって埋め尽くされていた。
「どうにかならなかったのか、これ」
「君みたいな技能持ちは少ないからなー、どうにもならないからこうやってバイトで呼んでいるんじゃないか。とりあえず僕は休んでるから、何時も通りお願い」
「お前、休むって言いながらマルチタスクを1個仕事に割いているよな」
「うん? 休んでるでしょ?」
もういい、休め。本当に休めお前。そう言いたくなってくるのも仕方がないが、ユーノ本人は無限書庫が厳しいのは今だけ、だとか言っている。今は人員が減っているから辛いのであって、無限書庫の人的問題が解消されれば後はプログラム化された管理を行ってこの忙しさも改善される予定であるらしい。少なくともあと1年か2年あればそこまで持ち込めるとの事。
やっぱり、思考派天才の考える事は解らない。なお、ヴィヴィオは感覚派天才なので割と人語を喋っている方ではある。
外行き用の眼鏡を外して胸のポケットの中にそれを押し込みながら、何時も座っているデスクの前に椅子に座り、横の本の山から一冊本を抜く。タイトルは《君にも出来る! 完全犯罪マニュアル》だった。それを近くにある、暖炉の中へと投げ捨てた。
「呪い」
暖炉の中に投げ込むのと同時に本が一瞬で灰すら残さずに完全燃焼された。本に宿っていた呪いもそれと共に燃焼され、消え去った。悲鳴のような声が聞こえるが、音を奪ってしまえば死に際の絶叫も聞こえなくなる。大半の呪い本は燃やされて消去される時、その呪いを残そうとする。だがそこらへん、扱いのプロフェッショナルである怪盗としては対処が余裕なので、処置しながら完全破壊する。
そうやって二冊目を手に取って、それも呪い本だったので暖炉の中に叩き込んでこの世から消し飛ばす。それを見ながらユーノがうーん、と唸る。
「いつ見ても見事な手際。やっぱりウチに就職しない?」
「俺のキャラじゃねぇよ、こんな場所。バイトじゃなきゃ来ねぇよ」
「酷い事を言うなぁ……あぁ、でも僕もここで好きに本が読めるって条件が無ければ間違いなく働かなかっただろうなぁ」
「本狂いだよなぁ、お前本当に」
「そうかな? まぁ、でもやっぱりそうかもしれないね。根本的に僕、読むのが好きだしね。知識を蓄えるってよりは根本的に読むって事そのものが好きって感じなんだけれど。おかげで何とか僕もこのブラック環境に付き合えているよ」
自覚している社畜程恐ろしいものはない。そう思いながら本物、と書かれたボックスの中に本を投げ入れて仕分けする。次に来る本は呪い本なので再び暖炉へ。次は本物なので箱へ。次は偽物なので暖炉の中へ。そうやって本を手にし、カバーを確認し、そして一瞥しただけで仕分けして行く。
「だけどそれを抜きにしても君のその技術は羨ましい」
「爺仕込みの怪盗法さ。怪盗たるもの、物の真贋程度一瞬で見抜けなくてはならないからな。たとえばそれが1秒以下の時間であっても、目にした瞬間にはそれが本物か否かを見極める程度の事が出来ないとなー」
例えばこれ、と新しい本を持ち上げる。
「これは偽物。見て真っ先に解るのは気持ち悪さすら感じる本物へと似せようとする執念。いや、違うな。これはそっくりそのまま、本物と全く同じものを作った時に生み出される気持ち悪さだ。つまりこれは偽物だ。作成の時点で本物を確認しながら作ったという記録がこの存在そのものに残されている。だから偽物」
暖炉の中へと放り込む。なんで偽物を破棄しなきゃいけないかは良く解らないが、なんでも無限書庫に流れて来る本は本物か偽物、或いは呪い本の三種類であり、偽物は呪いの本の様な直接的な被害はないらしいが、それでも存在するだけで無限書庫をダメにして行く癌の様なものらしい。なので次の本を持ち上げる。これは呪いだ。
「これは目に見えて呪われているって解る。そもそもすさまじいまでの情念が込められている。殺意、悪意ってのが文字として浮かび上がっているのが目に見える。完全に有害物質の塊。正直、手に持っているだけでもダメなタイプ。触れた瞬間に読みたくなる衝動を抑えきれなくなるから心が強固な奴か、或いは精神防壁張れる奴でもないと無事じゃなくなる。俺? 怪盗なのでノーカン」
暖炉の中に投げ捨て、次の本を取る―――今度は本物。
「こいつは素敵だ。込められている思いが本物だ。真っ白なページに新しいインクで一文字一文字自分の想いを込めて物語を綴っているのを感じられる。タイトルはえーと……《昼下がりの公園、無職の父を乳で慰める》なんてタイトルだ……」
完全にエロ本じゃねぇか。こんなものまで保管してるのかよ無限書庫。でもちょっと気になる。ともあれ、箱の中に投げ込んでおく。
「100%感覚的なもので全く参考にならない……!」
「怪盗センスのレベルが足りんな、レベルが。もっと美術品とそれに込められた想念と向き合え。それを見れば虚現の違いが見えてくる。無限書庫とかそれが見えてくると気持ち悪いぞ。どこもかしこもあやふやで。正直虚数内を歩いている様な感覚だぞ、ここ」
「僕も大概人語で喋れって言われるけど、君も割と同類だよね」
「俺もお前もトーマも、最終的には違う分野、違うスタイルの才人だからな」
まず一番解りやすいのがユーノ、理論派の天才である。言語化するし、言葉として完全に説明できる、理解して解析してのタイプだ。社会的に一番ありがたがられるタイプの天才であり、一番わかりやすく凄い、という奴でもある。基本的に才能のある人間でイメージされるのがユーノの様なタイプになる。そしてこういう連中が一つ上の理論や発想を言語化し、大衆が理解できるような形に落とすのだ。
次が自分やヴィヴィオの様な感覚派の天才であり、社会的に全くありがたがられないタイプである。根本的に感じているモノをそのまま表現しているタイプであり、他人が理解できる前提が存在しない。根本的に異質であり、同時に他人が理解できるようにしようとも思っていないので、単体で完全に完結している存在でもある。ある条件下であれば、感覚派は同じ感覚派を理解する為、感覚派同士は相性が良かったりする。
そして三つ目、トーマの素質的な才能になる。完全に理解する事も説明する事も出来ず、本人そのものでさえ上手く理解できていない、という一番危険な才能のスタイルだと表現できる。根本的にどこまで、何が出来るというのを上の二つとは違って、本人自身が理解できていない為、一番のブラックボックスと表現できる才能でもある。その結果、破滅したり歴史的な起爆剤となって技術革新を起こしたり、不安定だが一番影響力のある才能の形でもある。
ユーノ、俺、そしてトーマ。方向性は違うが、才能のある人間がこうも揃ったのだから不思議だ。
「うわっ、なんだこれ」
「え、何か面白そうなの見付けた?」
「この本、タイトルは《ミッドチルダの歴史》ってシンプルなものだけど、巧妙に隠しているだけでカバーに隙間なく《死ね》ってしか書かれてないぞ。やべー、中身ちょっと気にな―――おっと、これは焼却だな……」
誘惑されかけたな、今。少しだけ反省して暖炉の中に本を投げ込めば、暖炉の方からミッドチルダに対する怨嗟の声が無限に溢れだしそうになる。音を奪って完全遮音し、怨嗟の声を一滴たりとも流れ出さない様に封鎖しつつ、焼却を完了させる。そのまま、次々と本を仕分けていく。ユーノたちがこの作業をやるのであれば専用の術式に、対呪術防御を必要とするのだが、
「ほんと、君が居ると1冊1時間かかりそうな作業がバイト代と君一人を半日拘束する程度で終わるからいいよね。やっぱり就職しない?」
「止めてくれよ、俺は自由を楽しんでいるんだから」
「自由という名の女遊びじゃないか、大半は」
「悔しいならお前も恋人の一つでも作ってみろよ」
「えー、僕がぁ?」
ユーノがベッドに腰掛けている状態で、腕を組み、作業を停止させながら考える様な素振りを見せる。それがなんだか面白く、此方も作業を停止させ、両足をデスクの上に乗せてくつろぎながら、じゃあそうだな、と声を置く。
「これからお前に対して、面識のある女の名前をあげる」
「うん」
「そいつらに対して採点と評価をしよう。それでイケるかどうかを考えよう」
「限りなく発想がクズのそれだけどなんか面白そうだしそのままGOで」
よっし、まずは初手ストレートだ。
「高町なのは」
「60点の無理。根本的に僕も彼女も仕事には妥協できないし仕事をし続けるタイプだから恋人になってもお互いに時間が取れずに別れるのが目に見えている。何よりなのは、僕をフェレットモードのまま風呂に連れ込んだりしたおかげでお互いにそういう意識がさぁ……うん、僕も問題はあったけど根本的に未だに人類として見られていない事のショックがあるかなぁ……」
そう言うとユーノがフェレット姿になって落ち込んでいた。見ている分には面白いので続行する。
「フェイト・ハラオウン」
「40点の無理。あのバリアジャケットのセンスの女って無理でしょ」
「笑わせるなよ」
フェレットの率直な言葉に爆笑した。却下の理由が致命的すぎた。ゲラゲラと笑いながら、フェレットがいやね? と言葉を付け加えるのを聞く。ベッドの上でフェレット姿のまま、ゴロゴロと転がりながら言葉を放つ。
「フェイトは良い子だって解るんだよ? 時々ポンコツなのが普段のキリっとしている部分とのギャップで凄く可愛いし。というかアレで家事とかちゃんと出来ているって話だし、たぶん付き合ったら凄く尽くしてくれそうだし。あ、いやでもプレシア・テスタロッサの件でちょっと愛が重そうな感じがあるよね」
「だがバリアジャケット」
「ほんとそれ。あのセンスはない。脱げば早くなるって事に気付いたって言われた時は無限書庫の発狂治療チームに連絡入れようと思ったよ、僕。後、彼女、あの過激な恰好のせいで知り合いとかがオカズにしているってのを知っているとちょっと無理……」
「本人一番関係ない所で酷いのが出たな」
でも週刊誌でのエース級魔導士の特集を見ていると、かなりきわどいショットとかあるんだよなぁ、と思い出す。飛行中とか偶にだがスカートの中が見えて居たり飛行中で食い込みを直せなかったりで、そういうのが原因でかなり危ないショットが週刊誌に乗る場合がある。それで本当に酷い時はご本人が襲撃して社屋を消し飛ばして行く。
ミッドチルダでは良くあることだった。
だがとりあえず、先ほど二人がダメだった理由は解った。じゃあ次のユーノに近い人物の名前を上げよう。
「八神はやて」
「……70点」
「お、これは高評価。これはこれはー?」
「……ちょっとアリかも?」
「来るのか来るのかー?」
「あー、でもはやてってなんか、20台に入って少し熟れた感じが始まってからのが本番、って感じありそうだなぁ。やっぱなしで」
「お前、根本的に俺と同類だよな」
「えー、そんな事ないよー」
こういう話に迷う事無く乗ってついて来れるだけで間違いなくそうだと思っている。知り合いの女に点数を付けている時点で言い訳は出来ない。ユーノも、立場と趣味で自制しているだけであって、大義名分があれば俺並みに暴れるんじゃないだろうかこいつ? とは常々思っている。何せ、自分からホップステップジャンプで此方側に飛び込んできたのだ。不思議とその姿が想像できたのだ。
「でも僕は君程節操がないって訳じゃないし、話しだけに収めるからなぁ」
「俺の場合、コネ繋ぎと情報収集って意味でも女の相手繋げてるしな。まぁ! 個人的な趣味があるのは間違いがないけどね! 高貴な子を自分好みに仕立て上げて行くのとかとても興奮するぞ!」
「そういう意味では君の妹とかかなりタイプなんだけど」
「は? 殺すぞフェレット?」
「あ、声が本気だ」
「ヴィクトーリアを嫁に貰おうとする奴が出てくる時はな、その時だけは親父と結託するって前々から決めているんだ。俺と親父、その両方を乗り越えない限りはヴィクトーリアを任せる事なんて出来ないぞ」
「お、処刑宣告かな」
現役の聖騎士団副団長と、現役の超次元怪盗。このコンビを乗り越えられたらヴィクトーリアを心の底から預けても良いと思える。このコンビに勝利出来るなら大体、どんな相手であろうと生きて行けるというだけの自信がある。まぁ、その時はその時だ。あんまり考えたくはないが。なるべくヴィクトーリアの連れて来た男を信じよう。
理性が残っている間は。
「というかお前の周りに居る美人がダメって事は誰が良いんだよ。ないのか? 具体的な条件とかタイプとかさ」
「うーん、僕? 仕事に理解があって、合わせてくれるような子だったら嬉しいんだよね。根本的に僕は無限書庫勤務を変えるつもりはないし。正直、恋愛に向けるエネルギーがあるなら、その分を研究と趣味に回したほうが人生楽しいだろうなぁ、って思っている部分はあるよ」
「お前、青春を間違いなく溝に投げ捨てているぞ……」
勿体ねぇ、と呟くとそうかなぁ、とユーノが呟き、フェレットのままベッドの上を転がる。相変わらず自分に関しては鈍感というか、どこか雑な青年だった。それがユーノへの印象だった。とはいえ、トーマと比べてユーノはだいぶ
何せ、今ある罪状でもかなりやばいのだ、このペットは。
窃盗罪、共謀罪、偽証、クラッキング、傷害。数え始めたらキリがないレベルで既に犯罪を重ねているくせに小動物の様な表情で管理局の中枢に繋がる様なコネクションを握って今も普通に働いているのだ。
一味の三人の中で、一番の胆力があるのはこいつかもしれない。
「仕事に理解があって定期的に会いに来る為に時間を作ってくれて、身の回りの世話をしてくれる女の子が欲しいかな、僕は。別にエリーやリリィみたいに甲斐甲斐しく世話をしてくれる枠が欲しい訳じゃないけどさ、正直ロマンというか、やっぱお世話されたい。管理局で働く僕の心を癒してくれるような天使はいないの? あ、痴女だったり砲撃魔だったりするのはなしで」
「メイドでも雇えよ」
その言葉にユーノが動きを止めた。ぽふん、と音を立てながら人間の姿に戻り、そして眼鏡をかけ直しながらビシリ、と此方へと指先を向けた。
「それだ」
「えぇー……」
「メイド出張サービスやろう」
「正気かよお前」
「お金なら腐るほどあるんだ。休日なんて今はほとんどないし、溜まっているお金だってほとんど君のバイト代にしか使ってない。だったらここは職場でも出来る癒しに投資するのが一番じゃないかな? 良し、メイドさんを雇おう。大量に雇おう。そして無限書庫をメイドさんの楽園にしよう」
「女なんて犬の様なもんだから、ちゃんとした餌とケアさえ与えれば勝手に媚びてくるもんなのになー……」
「君と僕を同じ生物にするな」
俺もフェレットと同じ生き物扱いされたくはない。とはいえ、なんだかんだでユーノもユーノで元気が出てきた様子だった。無限書庫での勤務は大変そうだが、楽しそうには見える分、まぁ、良いんじゃないかなぁ、と無限書庫でのバイトを進ませながらそんな事を考えていた。
ついにユーノ君までヨゴレになってしまったんだなぁ、って。
基本的に反社会的活動をする奴が完全ないい子ちゃんなんて事はあり得ないので、主人公を中心とした事情を知る連中、或いは活動に加担している連中は基本、性根がどこか螺子曲がってる。
断言するけど、怪盗関係者からまともな善性を期待してはならないのだ。