※この作品はR-18です。

新たな子   作:神座(カムクラ)

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 時間軸はレイムとアマツ(ユイ)が結ばれた翌日です。

 キョダイリュウノゼツメイニヨリデンセツハヨミガエル…

.


第3章 歪んだ嘆き
第1話 金獅子、現る


 「夜明け…ですか。美しいですが私には少し眩しすぎます。」

 

 そう言って嵐龍アマツマガツチはしばらく景色を眺めてから雲を呼び寄せた。

 

 「まぁそうだろうね。」

 

 仰向けでアマツマガツチを抱いていた奇形の祖龍は相槌を打つ。

 

 「おはよう、ユイ。」

 

 (そうだった。私の名前も…)

 

 「はい…重くありませんでした?」

 

 「いや全然。」

 

 「なら良かったです。…まだ実感がありません。本当に夢のようでした。」

 

 その確認をするように、もたげていた首を下ろしレイムの体に身を委ね、口付けを交わしてから浮き上がった。起き上がったレイムを見て

 

 「背中、汚れてしまいましたね。洗いましょうか?」

 

 「ん。頼んだ。」

 

 極々弱めの水ブレスを使って土を洗い流す。水って便利。

 

 「行くのでしょう?あの村ヘ。」

 

 「そうだね。君も来る?」

 

 「そうですね…この間別れたばかりですが…正直、恐ろしいのです。またあのときのように襲われるのではないかと思うと寒気がして…」

 

 「それならくればいいさ。竜舎もそのままだったし、それにもう力を制御出来てるみたいだし。」

 

 以前は小雨程度に抑えるのが精一杯だったのに、今はいとも簡単に晴天にもできる。ということで武具を両手で持った彼と共に再びユクモヘ向かうのだった。

 

 

 

 ラン「ナルガ達げんきー?」

 

 早朝、同じ飛竜のナルガクルガ達の様子を見るのが日課になっている。

 

 レイム「あ、ラン。大丈夫そうだよ。」

 

 「レイムさん!帰ってたんですか?」

 

 「今さっき。丁度これ着終わったところ。」

 

 よく見れば舎の中にアマツマガツチもいる。

 

 「あれ?雨どころか雲1つ無いけど。」

 

 アマツ(ユイ)「彼のお陰で完全に制御できるようになったみたいです。名前もつけて貰いました。ユイです。」

 

 「レイムさん何でもできるんだ…よろしくユイさん。」

 

 「いや、直接僕が何かやった訳じゃない。」

 

 「竜もまだ謎だらけってことですか…」

 

 ということで村長に報告。

 

 村長「ユイ…ですか。」

 

 レイム「えぇ。東の国の言葉で雨という意味があります。まぁ私達の言葉でも結ぶと書きますが。」

 

 郵便ネコ「レイムさんはいるかニャ?お手紙ニャー。」

 

 レイム「ありがとう…守人からの暗号文か…」

 

 ラン「なんて?」

 

 「これはまずいね。火山の近くの、火の国に属していた里が煌黒龍の武具を纏った者に襲われたらしい。かなりの犠牲が出て、王都まで来たけど兵士達に殺されたとか。そいつが身に付けていた物を全部ここまで持ってくるから村にいてくれって。」

 

 村長「ここへ、ですか?」

 

 「多分僕がこの村から離れないように気を使っているんだと思う。1度失敗したところに、前よりも準備を整えて来るなんてこともあるかもしれないからね。」

 

 ラン「この間のやつですか?」

 

 「分からない。煌黒龍の武器はいくつか存在するから、もしかしたらその数いるのかもね。」

 

 トール「なぁラン、久しぶりにクエストを受けないか?ちょうどその火の国からの依頼があるんだ。」

 

 「撃退か何かですか?」

 

 「あぁ。ブラキディオスが暴れまわっているらしい。きっとその襲撃で戦力も落ちたんだろうな…」

 

 カール「良いじゃねぇか。行ってこいよ。」

 

 ベイン「ブラキディオス!と言えば粘菌!…ちらっ」

 

 カール「…行ってこい。レイムさんに負担かけるのもあれだし一応ユクモ専属だからな。俺は残るよ。」

 

 「よしっ!じゃあ準備して受け付けに行くわよ!さぁ早く!誰かが受けてしまうかもしれない!」

 

 トール「俺がもう受けているから心配ないぞ。」

 

 そうしてこの3人は火山地帯へ向かった。その後農場で

 

 レイム「それにしても、君たちどうする?」

 

 ナルガ「そうだな。一段落ついたからそろそろ戻りたいところなんだが…またあの人間に襲われると思うとな…。」

 

 「こっちの問題も一段落ついてからのほうが良いかもね。」

 

 ナルガ亜種「悪いわね。なんだか。」

 

 「まぁ、もう獲物も自分達で獲ってるんだから別に迷惑ではないんじゃない?」

 

 

────────────────────

 

 タンジアでは守人ことガーディアンズギルド本部にて、ハンターズギルドとの合同会議を行っていた。

 

 守人幹部(以下守人)「我々の調査によれば、シュレイド国やその周辺の小国は我々が成そうとしていることに真っ向から背くようなことを企んでいるようです。」

 

 狩人幹部(以下狩人)「というと竜の絶滅ですか?」

 

 守人「最終的にはそうなります。本来ハンターのみに許されている竜から作った装備を軍に着けさせ力をつけたいということです。しかしシュレイドほどの軍を補うほどの装備を作ったとすれば、周辺の竜は絶滅に追い込まれるでしょう。」

 

 狩人「確かに先日無許可で古龍アマツマガツチと老山龍ラオシャンロンを討伐したという報告もあった。」

 

 守人「しかし問題なのは龍側も動いているということです。」

 

 狩人「それは我らも知っている。ギルドマスターが竜王への取り次ぎを竜人に頼んでいるのだが聞く耳を持ってくれない。このままだとまた浄化、なんてこともあり得るかもしれないな。」

 

 守人「この間火の国を襲撃した、煌黒龍の武具を纏った者のことだが、その他にも白鱗で作られた装飾品が見つかった。今幻月の守人に確認をしてもらうよう計らっている。龍側に関してできることはそれくらいだ。そしてそれはハンターズギルドに任せても良いか?我々は人間側を担当する。幻月の守人には龍側の対処を任せるが。」

 

 狩人「分かった。全力をつくそう。」

 

────────────────────

 

 火山にて

 

 

 サクラ「クーラードリンクを飲んだとは言え熱いのニャー」

 

 ピーター「僕も熱いのは苦手ですニャ。」

 

 ベイン「文句言ってないでさっさと終わらすわよ。天気もあまり良くないし。」

 

 ラン「これ…」

 

 爆発した後…近いわね。」

 

 それからおよそ10分。

 

 ラン「いた…」

 

 ベイン「知らないかもしれないから言っておくけど腕も地面に付いた物も含めて粘菌に触っちゃ駄目よ。もし付いたら全力で取るか防具を捨てなさい。」

 

 そしてベインの先手、岩影に潜み、ブラキディオスが接近したところでこちらが合図。至近距離で散弾を浴びせた。

 

 「今よ!」

 

 ブラキディオスの鉄拳を交わし、ベインが注意を引き付けている間にこちらも攻撃する。

 

 トールが尻尾に飛ばされたが、本人には悪いけどこの隙を利用させてもらおう。内膝に突きを入れて転ばせると攻撃を重ねる。起き上がると意外にも逃げ出した。

 

 ベイン「ブラキディオスってもっと好戦的だったはずなのに。まぁ、逃げる方が賢いけどね。」

 

 トール「追うか?」

 

 ラン「狩猟禁止区域に行くまで攻撃しよう。」

 

 「決まりね…とと、サンプルサンプル。」

 

 トール「爆発しないだろうな?」

 

 「氷結晶で冷やしておけば大丈夫!さぁ、追いましょう。」

 

 火山第5区域へ。すると今度は向こうから仕掛けてくる。角を地面に突き刺しえぐると直線的に爆発が広がりそれを回避、すると飛びかかってきてこれを思いっきりジャンプして避けると今までいたところが大爆発して冷や汗が出た。

 

 トールはその間にブラキディオスの足元へ潜り込み乱舞。ベインも通常弾で腕や角を狙い、確実にダメージを与えていく。と、

 

 ラン「ティガレックスだ!気を付けて!」

 

 突如ティガレックスが乱入し一行は散り散りになる。ピーターが閃光玉を投げ、サクラがこやし玉を投げて事なきを得たが完全に体勢を崩されてしまった。

 

 「一旦退きましょう!」

 

 トール「クソッこいつ…」

 

 トールがブラキディオスに追撃されて退却できない。ブラキディオスも回復してしまうのを覚悟で生命の粉塵をばらまき強引に闘いを再開させた。

 

 ラン「とぉぉりゃっ!」

 

 「すまんラン!」

 

 股をかいくぐって強烈なパンチを交わすとブラキディオスは角を地面に突き刺しそのまま動きを止め

 

 ベイン「離れてっ!」 

 

 しばらくすると辺り一帯が次々と爆発し始め、その爆風で吹っ飛ばされてしまったが素早く体勢を立て直し次に備える。

 

 「ラン!」

 

 「大丈夫!」

 

 ベインの援護で追撃を免れ、ブラキディオスは再び逃走した。

 

 ベイン「またか!でもそっちじゃない!」

 

 その時だった。

 

 ラン、トール「ベイン危ない!!」

 

 ベインの背後から角の生えた黒い猿のようなモンスターが襲いかかり、ベインは反応することができず小石のように飛ばされてしまった。

 

 ラン、トール「!!!!」

 

 全てがスローモーションに見えた。一瞬時が止まったかと思った。吹っ飛ばされたベインは…ベインは…落ちた。崖から落ちた方がまだ良かったかもしれない。声を上げることもなく、溶岩の海へ落ちていった。

 

 沈黙を破ったのはモンスターの勝利の雄叫び。

 

 トール「ちくしょぉぉ!!」

 

 封龍剣を振りかざし反撃にでるが、その黒い猿は光るブレスのようなものを吐いて新たな挑戦者を迎え入れる。そしてその獣は恐ろしいスピードで次々と攻撃を繰り出した。パンチを交わすと当たった大きな岩に深い亀裂が入ったので食らえばひとたまりもないだろう。するとあろうことかその岩を持ち上げて投げてきた。

 

 ラン「なんて力…!」

 

 交わしたのは良かったが、雷属性と分かるブレスを食らって一瞬体が動かなくなってしまう。

 

 トール「ラン!大丈─クッ」

 

 トールに向かって突進。トールは横にずれて回避しようとするが異常な身のこなしで切り返しトールを鷲掴みにしすると接近してきた猫達に投げた。

 

 ラン「トールさん!逃げましょう!」

 

 しかし馬鹿力と驚異的なスピードを持つそれから逃げるのは困難だった。ブレスは避けられても突進などは避けにくく、それに執拗に追ってくる。閃光玉もあまり効果はなく、こやし玉を当てる隙もない。

 

 ラン「ハァ…ハァ…サクラ…大丈夫…?」

 

 サクラ「はいニャ…」

 

 滅茶苦茶に攻撃され続け、やみくもに逃げてきたせいでトールとはぐれた上に狩猟許可区域などとっくに出て地図にない未知の場所に来てしまった。

 

 ラン「あの猿みたいなやつは一体…」

 

 サクラ「多分ラージャン…だニャ…」

 

 「知ってるの?」

 

 「角の生えた猿…凄く獰猛だから依頼以外なら逃げろって旦那さんが…旦那さん…」

 

 そうだ。逃げるのに必死過ぎて忘れてはいたが…

 

 「うぅ…だんニャさん…」

 

 込み上げてくるものを抑え、今は少しでも気を逸らそうと質問を重ねる。

 

 「他に特徴は知ってる?」

 

 「雷を使って、興奮すると全身が金色になることぐらいニャ…これから…どうするにゃ?」

 

 大粒の涙を溢しながら見上げてきてこちらも堪えきれなくなる。

 

 「分からない…どうしよう…狼煙なんか上げて気づかれたら…」

 

 「うニャ…」

 

 あんなに歯が立たないのは初めてかもしれない。荘厳で余裕のあるアマツマガツチとは違う。徹底的に殺しに来ている。

 

 「今は歩こう。止まっていたら見つかるかもしれない。」

 

 ゴロゴロ…

 

 「もう…見つかってるのニャ…?」

 

 雷鳴が聞こえ、冷や汗と共にこれまでにない緊張が走った。自分だけでは勝てない。逃げることもできない。次会えば確実に殺される。体が震え、心臓はまるで体から逃げたいとでも言うようにバクバクと動いて、そして──

 

 「き、来たニャ!」

 

 もはや戦意は削がれ泣き声で警告するサクラ。怯えるこちらの様子をみてラージャンは勝ち誇ったような雄叫びをあげると全身を金色に輝かせ、一層素早く重い攻撃を仕掛けてきた。

 

 「くそっ!くそっ!」

 

 必死に応戦するがまず当たらない。焦らすように周りを回って、時おり遊ぶように雷撃やブレスを吐いてくる。すでに限界だった体はすぐに悲鳴をあげ、ついに投げてきた岩に当たってしまった。するとここぞとばかりに鷲掴みにされると岩壁に向かって投げられ

 

 「ガハッ」

 

 サクラ「ランしゃん!」

 

 意識が遠くなり、ラージャンがこちらに飛びかかってくるのを最後に目の前が真っ白になる。遠くでラージャンの叫び声が聞こえた。

 

 

─────────────────────

 

 ユクモにて

 

 守人「これが身に付けていた武具と持ち物です。」

 

 レイム「武器は片手剣か…」

 

 守人「あぁそうそう。これをみてほしいと言われてきたんです。」

 

 「?」

 

 守人が取り出したのは美しい白鱗でできた首飾り。柔らかな毛に覆われたその鱗を見てレイムの顔色がさっと変わる。

 

 「何の竜かわかりますか?」

 

 手に取り、じっと見つめそして呟いた。

 

 「ヴェルサ…ノワ…?」

 

 

─────────────────────

 

 ぼんやりとした意識が徐々に回復してくる。

 

 ここは…どこだ…?

 

 全身がギシギシと痛む。

 

 「…う…サクラ…?」

 

 主人を失ったサクラが右腕に寄り添うように寝ていた。

 

 「ここは…さっきの場所か。」

 

 いたのは岩壁のくぼみ。死んだのか?とも思ったが痛みを感じる時点で違うだろう。

 

 ゴロゴロ…

 

 「…!」

 

 来るか。しかしもう体は動かせない。諦めた。諦めたのだが───

 

 ピシャアァン!!!

 

 「うっ…」

 

 目の前に雷が落ち、目が眩んで視界が真っ白になる。いや、これは…

 

 「あ…あ……」

 

 「意識が戻りましたか。良かった。」

 

 現れたそれは、小さめのドス鳥竜ぐらいの体格で白く輝く体に美しい鬣(たてがみ)を生やし、真紅の瞳を持つ馬のような古龍、幻獣キリンだった。黒ずんだ首飾りは確かに特定狩猟禁止生物の証。ただひとつ、折られた角は元通りの立派な蒼い角になっていた。

 

 「また遅れてしまいました。せめてあなたを救うことができて良かった。」

 

 サクラ「…あ、ランさん。気がついたのニャ?その幻獣が私達を───」

 

 「リン…どう…して…?」

 

 「偶然です。近頃はこの辺りに住んでいたんですが、つい最近金獅子がやって来たので移動しようと思っていたところだったんです。そうしたら金獅子が何かと戦っている時の雄叫びを聞いて、来てみたらあなたがいました。」

 

 「そうだ…あいつは?」

 

 「突き落としました。その死体を確認してきたところです。」

 

 サクラ「ランさんに飛びかかるところをこの幻獣が突進して角で刺して、そのままあそこの崖に落としたのニャ。…知り合いなのニャ?」

 

 リンの超加速は目視できないほど。鉄の鎧も貫く角がその速度で突き刺さればあのラージャンとてひとたまりもないだろう。

 

 「リン…うぅ…うわぁぁ!」

 

 ランは悲鳴を上げる体を無視して、まるで迷子の子供のようにリンに泣きついた。リンは全く動揺せず静かに受け止める。

 

 「…変わってないですね。あまり涙の付いた顔を私に擦ると目が感電するかもしれませんよ?」

 

 意外とがっしりしていて少しピリピリする懐かしいリンを抱き締め

 

 「ごめん…ごめんよぉ…俺…ガキで…一番辛いのは…傷ついてるのは…リンだって…分かってたのに…あんな…あんなこと…」

 

 「…あれは傷つきました。言葉もそうですが──」

 

 「会いにいかなかった…そう…慰めてやらなきゃならなかったのに…」

 

 ひとしきり泣くと

 

 「リン…番は?子供は?」

 

 「どちらもいませんよ、ラン。そもそも同族なんて数が知れてますから。」

 

 「戻ってきて…お願い…リン…」

 

 「どちらにせよ、その体では私がいないと人間たちのところへは戻れないでしょう?少し離れたところに街があります。」

 

 そう言ってラン達に背を向けると

 

 「乗ってください。」

 

 人とアイルーを乗せた幻獣はその辺の馬よりもずっと速く火山の麓の森を駆け抜け、ランとサクラの体調を気遣ってかこまめに休憩を取りながら人里をめざす。本当は休憩の間もリンに寄り添っていたかったのだがサクラを想って撫でるだけに留まった。再び走り出したときにふとリンが前足を僅かに引きずっているのに気がつき

 

 「リン…もしかして足…」

 

 「さすが、気づきました?さっきかなり無理な体勢で加速したのでその時に痛めたみたいです。大丈夫、走るのに支障はないですよ。」

 

 「回復薬は…俺に?」

 

 「えぇ。使えるものはあなたに使いました。あなたの方がよっぽど重傷でしたから。」

 

 サクラ「幻獣に乗ってるなんて…きっと旦那さんなら泣いて悔しがるニャ…」

 

 ラン「そうかもね…」

 

 そのまま進んでいくと不意に止まり、

 

 「飛行船です。狼煙を持っているなら合図してください。」

 

 見上げれば確かに少し離れたところにギルドの捜索飛行船が見える。

 

 「リン…一緒に来て…帰ろう…」

 

 その表情や狼煙を上げる前に言ったことから、狼煙を上げている間にどこかへ行かないでというニュアンスだとリンは理解し、

 

 「ここにいますよ。そして…そう。一緒に行きます。ユクモへ。」

 

 その言葉に安堵したランは救難信号を打ち上げた。すぐに返事の花火が放たれ、数分後、ちょうど開けていたその場所に飛行船は着陸して疲れきった顔をしたトールがリンをみて驚きつつ駆け寄ってくる。

 

 トール「ラン!サクラも!良かった…」

 

 しっかり抱き合い

 

 トール「そいつは?」

 

 ランが答えるまえに

 

 飛行船乗組員「白い体に蒼い一本角!もしかして最近森に迷いこんだ旅人や子供を街の近くまで案内したやつか!?」

 

 ラン「そうなんですか?」

 

 「あぁ!迷っていたら突然雷が鳴って、そして振り向いたらそいつがいて、ついていったら街の近くだったって噂になってるぞ!古びた特定狩猟禁止生物の証もつけていたって。」

 

 ラン「幻獣キリン…俺の…大事な…」

 

 その先は言えなかった。恥ずかしいというのもあったが、言って良いのかわからなかったのだ。

 

 トール「そいつがキリン?ってことは前に言ってたリンってそいつのことなのか?」

 

 「そう。リンが助けてくれたんだ…あのモンスター…ラージャンもリンが倒したって…」

 

 「そうか…ありがとう、リン。ランとサクラを救ってくれて。」

 

 「いいえ。もう一人を救えませんでした。サクラから聞いたわ。それに居合わせたのは偶然です。」

 

 ラン「それでもありがとう、リン。行こう。」

 

 飛行船の中で休めると思ったのは大間違いだった。捜索用の、個室もない飛行船では重苦しい雰囲気が流れる。きっとトールも、サクラも、ピーターもあの光景が頭から離れないのだろう。実際俺もそうだ。トールは独りでどこかへ遠くを見詰め、サクラとピーターは黙って並んで座り、俺はリンに寄りかかっている。リンも空気を読んだのか、ただ目を瞑り沈黙を守っていた。

 

 街に着くとリンは案の上注目の的になるが気にせず、とりあえず宿に落ち着くことに。サクラは気を使ったのかピーター、トールと同じ部屋に行きリンと二人きりになる。

 

 「リン…」

 

 「はい。」

 

 「また一緒に暮らしてくれる?」

 

 「えぇ。」

 

 「リン…ありがとう。」

 

 「もう良いですよ。さぁ休みましょう。お互い疲れました。」

 

 「うん。…リン。」

 

 「何ですか?」

 

 「大好き。」

 

 「私もですよ。」

 

 羞恥心が邪魔をして大好きと言うのが精一杯。遠慮がちにキスをすると応じてくれる。

 

 「ユクモに戻ったら…また──」

 

 「また契りを交わして、やり直しましょう。なにもかも。」

 

 「ありがとう…リン…」

 

 そして3年半ぶりに、悲しみを打ち消そうとするかのように寄り添って眠りについたのだが、その後リンが驚き、少し複雑な顔をしたのに気がつかなかった。

 

 

 数多の竜を駆逐せし時、伝説は甦らん…

 

 

            次回『幻獣と青年』




 第1章2話「一寸先は闇」を書いている時からすでにこの展開は思いついていたんです。やっと具現化出来た…。ラージャンが出てくる時点で察していた方もいたかもしれませんし、第1章1話で「この1人と1匹は後の戦いで大きく貢献する。」的なことを書いていたので、ストーリーからリンが消えるはずがないと思っていた方もいたかもしれませんね。ともかく、この1人と1匹のお話はまだまだ続きます。今後とも宜しくお願い致します。

 言い忘れてましたがこのキリン、MHFの特異個体のつもりでした。目が紅いのは私のミスですm(__)m(特異個体の目は青)。修正するとなると「幻獣と少年」からやり直さないといけないので、特異個体と同等の力を持った見かけは通常種キリン(通常種と特異個体の間に生まれた的な)とします。無理矢理でごめんなさい。

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